特許第5764496号(P5764496)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5764496偏光板用粘着剤組成物およびこれを利用した偏光板
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5764496
(24)【登録日】2015年6月19日
(45)【発行日】2015年8月19日
(54)【発明の名称】偏光板用粘着剤組成物およびこれを利用した偏光板
(51)【国際特許分類】
   C09J 133/14 20060101AFI20150730BHJP
   C09J 133/02 20060101ALI20150730BHJP
   C09J 175/04 20060101ALI20150730BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20150730BHJP
   C09J 7/02 20060101ALI20150730BHJP
   G02B 5/30 20060101ALI20150730BHJP
【FI】
   C09J133/14
   C09J133/02
   C09J175/04
   C09J11/06
   C09J7/02 Z
   G02B5/30
【請求項の数】8
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2011-541907(P2011-541907)
(86)(22)【出願日】2010年11月15日
(86)【国際出願番号】JP2010070260
(87)【国際公開番号】WO2011062127
(87)【国際公開日】20110526
【審査請求日】2013年8月30日
(31)【優先権主張番号】特願2009-261506(P2009-261506)
(32)【優先日】2009年11月17日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000202350
【氏名又は名称】綜研化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000590
【氏名又は名称】特許業務法人 小野国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】須田 薫
【審査官】 西澤 龍彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−037927(JP,A)
【文献】 特開2007−119667(JP,A)
【文献】 特開2010−209229(JP,A)
【文献】 特開2009−132752(JP,A)
【文献】 特開2009−132751(JP,A)
【文献】 特開2003−154797(JP,A)
【文献】 特開2003−138206(JP,A)
【文献】 特開2009−251281(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00−201/10
G02B 5/00− 5/32
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)および(B)
(A)少なくともカルボキシル基含有モノマー1〜8質量%及び水酸基含有(メタ)アクリル系モノマー0.05〜1質量%を共重合してなる重量平均分子量が30万〜150万である(メタ)アクリル系ポリマー 100質量部
(B)イソシアヌレート構造を有するトリレンジイソシアネート系化合物 6〜20質量部
を含有し、以下の測定方法によって求められるゲル分率が75〜90%である偏光板用粘着剤組成物。
<ゲル分率の測定方法>
偏光板用粘着剤組成物を乾燥後の厚みが20μmになるように剥離処理したポリエステルの表面に塗布し、乾燥させた後、もう一方の面に剥離処理したポリエステルフィルムを貼り合わせて、23℃、50%RHで1日間熟成させて、試験片を作製する。試験片から粘着剤約0.1gをサンプル瓶に採取し、酢酸エチル30ccを加えて24時間振とうした後、該サンプル瓶の内容物を200メッシュのステンレス製金綱でろ別し、金綱上の残留物を100℃で2時間乾燥させて、乾燥重量を測定し、次式より求める。
ゲル分率(%)=(乾燥重量/採取した粘着剤重量)×100
【請求項2】
さらに成分(C)トリレンジイソシアネート系架橋剤(イソシアヌレート構造を有するものを除く)、エポキシ系架橋剤およびアジリジン系架橋剤よりなる群から選ばれる1種または2種以上の架橋剤を含有する請求項1記載の偏光板用粘着剤組成物。
【請求項3】
成分(C)がトリレンジイソシアネート系架橋剤(イソシアヌレート構造を有するものを除く)であって、成分(C)の成分(B)に対する配合比が1:3〜3:1である請求項2記載の偏光板用粘着剤組成物。
【請求項4】
さらに成分(D)シランカップリング剤を含有する請求項1ないし3のいずれかの項記載の偏光板用粘着剤組成物。
【請求項5】
支持体の少なくとも一方の面に請求項1記載の偏光板用粘着剤組成物から形成される粘着剤層を設けてなる偏光板用粘着シート。
【請求項6】
偏光フィルムの少なくとも一方の面に請求項1記載の偏光板用粘着剤組成物から形成される粘着剤層を設けてなる偏光板。
【請求項7】
次の成分(A)および(B)
(A)少なくともカルボキシル基含有モノマー1〜8質量%及び水酸基含有(メタ)アクリル系モノマー0.05〜1質量%を共重合してなる重量平均分子量が30万〜150万である(メタ)アクリル系ポリマー 100質量部
(B)イソシアヌレート構造を有するトリレンジイソシアネート系化合物 6〜20質量部
を含有する粘着剤組成物から形成される以下の測定方法によって求められるゲル分率が75〜90%である粘着剤層を偏光フィルムの少なくとも一方の面に設けた偏光板を液晶セルの基板表面に設けることを特徴とする液晶素子の製造方法。
<ゲル分率の測定方法>
粘着剤組成物を乾燥後の厚みが20μmになるように剥離処理したポリエステルの表面に塗布し、乾燥させた後、もう一方の面に剥離処理したポリエステルフィルムを貼り合わせて、23℃、50%RHで1日間熟成させて、試験片を作製する。試験片から粘着剤約0.1gをサンプル瓶に採取し、酢酸エチル30ccを加えて24時間振とうした後、該サンプル瓶の内容物を200メッシュのステンレス製金綱でろ別し、金綱上の残留物を100℃で2時間乾燥させて、乾燥重量を測定し、次式より求める。
ゲル分率(%)=(乾燥重量/採取した粘着剤重量)×100
【請求項8】
次の成分(A)および(B)
(A)少なくともカルボキシル基含有モノマー1〜8質量%及び水酸基含有(メタ)アクリル系モノマー0.05〜1質量%を共重合してなる重量平均分子量が30万〜150万である(メタ)アクリル系ポリマー 100質量部
(B)イソシアヌレート構造を有するトリレンジイソシアネート系化合物 6〜20質量部
を含有する粘着剤組成物から形成される以下の測定方法によって求められるゲル分率が75〜90%である粘着剤層を偏光フィルムの少なくとも一方の面に設けた偏光板を液晶セルの基板表面に設けることを特徴とする液晶表示装置の光漏れ低減方法。
<ゲル分率の測定方法>
粘着剤組成物を乾燥後の厚みが20μmになるように剥離処理したポリエステルの表面に塗布し、乾燥させた後、もう一方の面に剥離処理したポリエステルフィルムを貼り合わせて、23℃、50%RHで1日間熟成させて、試験片を作製する。試験片から粘着剤約0.1gをサンプル瓶に採取し、酢酸エチル30ccを加えて24時間振とうした後、該サンプル瓶の内容物を200メッシュのステンレス製金綱でろ別し、金綱上の残留物を100℃で2時間乾燥させて、乾燥重量を測定し、次式より求める。
ゲル分率(%)=(乾燥重量/採取した粘着剤重量)×100
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光板用粘着剤組成物に関し、更に詳細には、短期間の熟成により優れた光学適性を備えた粘着剤層を形成し得る偏光板用粘着剤組成物およびこれを用いた偏光板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶素子は、液晶材料が2枚の基板間に挟まれた構造を有しており、この基板の表面には粘着剤層を介して偏光板が貼着されている。近年、液晶素子は、車両搭載用、屋外計器用、パソコンのディスプレイ、テレビ等用途が拡大しており、それに伴い使用環境も非常に過酷になってきている。
【0003】
偏光板は異種材料の多層構造を有しており、構成する材料の特性から寸法安定性に乏しい。特に高温、高湿熱の使用環境下においては、偏光板の収縮により応力が集中し、偏光板の複屈折を誘発するとともに、粘着剤自身も応力集中によって配向して複屈折が生じるため、応力の集中する端部で色ムラ(光漏れ)が起こり、表示品位が低下する。また、このような環境下では、偏光板とガラスとの界面での発泡や偏光板の剥がれなどの不具合も生じやすい。したがって、偏光板用の粘着剤には優れた光漏れ防止性と耐久性が要求される。
【0004】
一方、偏光板に粘着剤層を形成するにあたって、上記光漏れ防止性と耐久性を発現させるためには、偏光板に粘着剤組成物を塗工した状態で、例えば室温で1週間程度の熟成工程を設けて硬化させる必要があったが、このような長期の熟成期間により、生産性が低下したり、在庫量が増大するという問題が生じていた。
【0005】
この問題に対し、水酸基含有アクリルポリマーとイソシアネート系架橋剤の混合物において、水酸基含有アクリルポリマー中にさらにカルボキシル基を含有させることによって、硬化を促進させる方法が提案されている(特許文献1)。しかしながら、この技術では、イソシアネート系架橋剤の添加量が少なく、短期間の熟成により十分な光漏れ防止性や耐久性を得ることができなかった。また、水酸基とカルボキシル基を含有するアクリル系ポリマーと、脂肪族系または脂環族系の多官能イソシアネート系またはイソシアヌレート系化合物を含有し、養生期間が短縮された表面保護フィルム用粘着剤組成物が開示されている(特許文献2)。しかしながら、この粘着剤組成物で使用されるアクリル系ポリマーはカルボシキル基の量が限定されており、偏光板とガラスとの貼り合わせに使用する用途には適していない。仮に本発明のカルボキシル基が1部以上の粘着剤に上記脂肪族系または脂環属系の多官能イソシアネート系またはイソシアヌレート系化合物を添加した場合には、ポットライフが短くなる傾向があり、実用上使用できないものであった。
【0006】
その他に、カルボキシル基を有するアクリル系ポリマーにイソシアネート系化合物を添加した光学フィルム用の粘着剤組成物が開示されている(特許文献3および4)。しかしながら、これらの技術は、リワーク性や光漏れ防止性の向上を志向するものであって、熟成期間の短縮化については何ら考慮されていない。したがって、これらの文献に開示された粘着剤組成物は、いずれも短期間の熟成により十分な光学適性を得ることはできないものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−156513号公報
【特許文献2】特開2005−247909号公報
【特許文献3】特許第4136524号公報
【特許文献4】特開2008−144126号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、短期間の熟成により、優れた耐久性と光漏れ防止性を備えた粘着剤層を形成し得る偏光板用粘着剤組成物が望まれており、本発明はそのような偏光板用粘着剤組成物を提供することをその課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、架橋剤として、イソシアヌレート構造を有するトリレンジイソシアネート系化合物を用い、これを特定範囲の分子量を有するカルボキシル基含有アクリル系ポリマーに対して比較的多量に配合することによって、短期間の熟成でも、優れた耐久性および光漏れ防止性を有する粘着剤層を形成し得ることを見出し本発明を完成させるに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、
次の成分(A)および(B)
(A)少なくともカルボキシル基含有モノマー1〜10質量%を共重合し てなる重量平均分子量が30万〜150万である(メタ)アクリル系 ポリマー 100質量部
(B)イソシアヌレート構造を有するトリレンジイソシアネート系化合物
4〜20質量部
を含有することを特徴とする偏光板用粘着剤組成物である。
【0011】
また本発明は、偏光フィルムの少なくとも一方の面に上記偏光板用粘着剤組成物から形成される粘着剤層を設けてなる偏光板である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の粘着剤組成物は、これを偏光板に用いることにより、高温高湿条件下でも光漏れの発生を有効に防止し、また優れた耐久性を有し、粘着剤層の発泡や剥がれ等の発生を抑制することができる。さらに、硬化速度が速く、熟成期間の大幅な短縮が可能であるため、生産性を著しく向上し、在庫量を低減させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の偏光板用粘着剤組成物に用いる成分(A)のアクリル系ポリマーは、少なくともカルボキシル基含有モノマーを共重合して得られるものである。
【0014】
上記カルボキシル基含有モノマーとしては、(メタ)アクリル酸、2−カルボキシエチル(メタ)アクリレート、3−カルボキシプロピル(メタ)アクリレート、4−カルボキシブチル(メタ)アクリレート、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸及び無水マレイン酸などを挙げることができる。
【0015】
成分(A)アクリル系ポリマーの構成モノマー全体に対するカルボキシル基含有モノマーの含有量は1〜10質量%(以下、「%」で示す)であり、好ましくは2〜8%であり、より好ましくは2〜6%である。1%よりも少ないと凝集力が得られにくく、10%よりも多いと凝集力が高すぎたり粘着力が上昇するために好ましくない。
【0016】
成分(A)のアクリル系ポリマーの他の構成モノマーとしては、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、水酸基含有モノマー、ベンゼン環含有モノマー、(メタ)アクリル酸アルコキシエステル、アミノ基含有モノマー、アミド含有モノマーなどが挙げられる。
【0017】
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、炭素数1〜12の分岐していてもよいアルキル基を有するものが好ましく、具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレートが挙げられる。これらのうち、ブチルアクリレート、メチルアクリレートが粘着力と耐久性のバランスが良好であるため好ましく用いられる。
【0018】
成分(A)アクリル系ポリマーの構成モノマー全体に対する(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有量は、10〜99%であり、好ましくは50〜98.5%である。10%よりも少ないと粘着力と耐久性のバランスがとれない場合があり、99%よりも多いと耐久性が悪くなる場合がある。
【0019】
上記水酸基含有モノマーとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、クロロ−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、アリルアルコール等が例示でき、このような水酸基含有モノマーを共重合させることによりゲル分率をより高くすることができる。これらのうち、2−ヒドロキシエチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレートが(メタ)アクリル酸アルキルエステルとの共重合性が良好であるため好ましく用いられる。
【0020】
成分(A)アクリル系ポリマーの構成モノマー全体に対する水酸基含有モノマーの含有量は、0〜1%であり、好ましくは0.05〜1%である。1%よりも多いとゲル分率が高くなりすぎて、接着性が低下し、高温、高湿熱条件で剥がれ等が生じるおそれがある。
【0021】
上記ベンゼン環含有モノマーは、正の固有複屈折を有しており、これを共重合させることにより、(メタ)アクリル系ポリマーの複屈折を低減することができる。具体的には、フェニルアクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル化β−ナフトールアクリレート、ビフェニル(メタ)アクリレート、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等が挙げられる。これらのうち、ベンジルアクリレート、フェノキシエチルアクリレートが(メタ)アクリル酸アルキルエステルとの相溶性、共重合性がよく透明性を低下させないため好ましく用いられる。
【0022】
成分(A)アクリル系ポリマーの構成モノマー全体に対するベンゼン環含有モノマーの含有量は0〜40%であり、好ましくは0〜30%である。40%よりも多いと、適切な粘着力を得られない場合がある。
【0023】
上記(メタ)アクリル酸アルコキシエステルとしては、(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−エトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−メトキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−メトキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−メトキシブチル、(メタ)アクリル酸4−メトキシブチル等が例示できる。成分(A)アクリル系ポリマーの構成モノマー全体に対する(メタ)アクリル酸アルコキシエステルの含有量は0〜90%であり、好ましくは0〜80%である。
【0024】
上記アミノ基含有モノマーとしては、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル等が例示できる。
【0025】
上記アミド含有モノマーとしては、(メタ)アクリルアミド、(メタ)N−メチロールアクリルアミド等が例示できる。これらアミノ基含有モノマー、アミド基含有モノマーの使用量は、成分(A)アクリル系ポリマーの構成モノマー全体に対して0〜1%程度である。
【0026】
本発明の成分(A)は、上記モノマー成分の混合物を、溶液重合法、塊状重合法、乳化重合法、懸濁重合法等の従来公知の重合法により重合させることにより製造することができる。これらの中でも、乳化剤や懸濁剤等の重合安定剤を含まない溶液重合法や塊状重合法により製造したものがより好ましい。
【0027】
上記のようにして得られる成分(A)の重量平均分子量(Mw)は30万〜150万であり、好ましくは40万〜120万である。重量平均分子量が30万未満であると、耐久性が悪化し、150万よりも大きいと粘度が高くなり、取り扱いに不具合が生じる。なお、本明細書において重量平均分子量とは、実施例中に記載した測定方法により求められる値を意味する。
【0028】
また、成分(A)のアクリル系ポリマーは、ガラス転移温度が0℃以下であることが好ましく、−20℃以下であることがより好ましく、−80〜−30℃が特に好ましい。ガラス転移温度が0℃よりも高いと、得られる粘着剤の基材への密着性や粘着剤層の可撓性が低下し、基材からのハガレや浮きが生じる場合がある。なお、本明細書において、ガラス転移温度は下記のFOXの式によって算出される値である。
【0029】
(FOXの式)
1/Tg=Wa/Tga+Wb/Tgb+・・・
Tg:共重合体のガラス転移温度
Tga,Tgb,・・:単量体a,単量体b,・・・のホモポリマーのガ ラス転移温度
Wa,Wb,・・・・:単量体a,単量体b,・・・の重量分率
【0030】
本発明に用いる成分(B)のイソシアヌレート構造を有するトリレンジイソシアネート系化合物は、トリレンジイソシアネートが3量化して形成されるイソシアヌレート環をその構造中に含む化合物であり種々の変性体も包含される。成分(B)の化合物は、特開平8−193114号公報、国際公開第2006/137307号に記載された方法等により得ることができ、成分(B)に該当する化合物としてコロネート342、コロネート2030(いずれも日本ポリウレタン工業社製)等が上市されている。
【0031】
本発明の偏光板用粘着剤組成物における成分(B)の配合量は、成分(A)100質量部(以下、「部」で示す)に対して、4〜20部であり、好ましくは6〜15部である。4部よりも少ないと光モレ性能が良くなく、20部よりも多いと凝集力が高くなりすぎるために好ましくない。
【0032】
また本発明の偏光板用粘着剤組成物には、上記成分(B)以外の架橋剤を併用することができる(成分(C))。このような架橋剤として、トリレンジイソシアネート系架橋剤(イソシアヌレート構造を有するものを除く)、エポキシ系架橋剤、アジリジン系架橋剤が挙げられ、これらの1種または2種以上を使用することができる。
【0033】
上記トリレンジイソシアネート系架橋剤(イソシアヌレート構造を有するものを除く)としては、トリレンジイソシアネートおよびこれをトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の多価アルコールと付加反応させたイソシアネート化合物、ビュレット型化合物、更には公知のポリエーテルポリオールやポリエステルポリオール、アクリルポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオール等と付加反応させたウレタンプレポリマー型のイソシアネート化合物等の誘導体を挙げることができる。このようなトリレンジイソシアネート系架橋剤(イソシアヌレート構造を有するものを除く)を併用することにより、基材に対する密着性が向上し、剥がれ等を抑制することができる。これらの中でもトリレンジイソシアネート、トリメチロールプロパントリレンジイソシアネート等が好ましい。
【0034】
本発明の偏光板用粘着剤組成物において、トリレンジイソシアネート系架橋剤(イソシアヌレート構造を有するものを除く)は、成分(B)に対する配合比が1:3〜3:1となるように配合することが好ましい。配合比がこの範囲外であると、熟成に長期間を要し、また高温、高湿熱条件で剥がれ等が生じる場合がある。
【0035】
上記エポキシ架橋剤としては、ビスフェノールAエピクロルヒドリン型のエポキシ系樹脂、エチレンジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリン、ジアミングリシジルアミン、N,N,N',N'−テトラグリシジル−m−キシリレンジアミン、1,3−ビス(N,N'−ジアミングリシジルアミノメチル)シクロヘキサン等の分子中に2個以上のエポキシ基を有する化合物が挙げられる。これらのエポキシ系架橋剤を併用することにより、ゲル分率をより高くすることができる。これらの中でもN,N,N',N'−テトラグリシジル−m−キシリレンジアミン、1,3−ビス(N,N'−ジアミングリシジルアミノメチル)シクロヘキサンが好ましく用いられる。
【0036】
本発明の偏光板用粘着剤組成物におけるエポキシ架橋剤の配合量は、成分(B)に対して0〜1%であり、好ましくは0.05〜0.5%である。配合量がこの範囲外であると、熟成に長期間を要し、また高温、高湿熱条件で剥がれ等が生じる場合がある。
【0037】
上記アジリジン系架橋剤としては、1,1'−(メチレン−ジp−フェニレン)ビス−3,3−アジリジル尿素、1,1'−(ヘキサメチレン)ビス−3,3−アジリジル尿素、2,4,6−トリアジリジニル−1,3,5−トリアジン、トリメチロールプロパン−トリス−(2−アジリジニルプロピオネート)等が挙げられる。これらのアジリジン系架橋剤を併用することにより、ゲル分率をより高くすることができる。
【0038】
本発明の偏光板用粘着剤組成物におけるアジリジン系架橋剤の配合量は、成分(B)に対して0〜1%であり、好ましくは0.05〜0.5%である。配合量がこの範囲外であると、熟成期間が長くなり、また高温、高湿熱条件で剥がれ等が生じる場合がある。
【0039】
本発明の偏光板用粘着剤組成物には、更に、成分(A)のアクリル系ポリマー中に含まれるカルボキシル基と反応する基を含有するシランカップリング剤(D)を配合することが好ましい。これを使用することにより、粘着剤をガラスに対し強固に接着することができ、湿熱環境下で剥がれを防止することができる。具体的には、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ含有シランカップリング剤、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ基含有シランカップリング剤等が挙げられる。
【0040】
本発明の偏光板用粘着剤組成物におけるシランカップリング剤(D)の配合量は、成分(A)100部に対して、0.05〜1部であり、好ましくは0.1〜0.5部である。0.05部よりも少ないと湿熱環境下において剥がれが発生しやすくなり、1部よりも多いと高温環境下においてシランカップリング剤がブリードし、逆に剥がれが生じやすくなってしまうため好ましくない。
【0041】
本発明の偏光板用粘着剤組成物の調製は、上記成分(A)、(B)と必要により成分(C)、(D)やその他の任意成分を配合し、これらを常法に従って混合することによって行われる。使用可能な任意成分としては、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、帯電防止剤等が挙げられ、これらは本発明の効果を損なわない範囲で配合することができる。
【0042】
かくして得られた偏光板用粘着剤組成物から本発明の偏光板用粘着シートを得るには、支持体上の少なくとも一方の面に常法に従って当該粘着剤組成物を塗布し、塗工後、乾燥、熟成して粘着剤層を形成させる。乾燥は、通常80〜110℃、2〜10分程度で行われる。一方、本発明の粘着剤組成物は、従来のものよりも大幅に熟成期間を短縮することが可能であり、例えば、23℃、50%RHの条件で1〜3日程度の熟成により十分に硬化が行われ、良好な粘着力と光学適性を備えた粘着剤層が得られる。熟成後の粘着剤層のゲル分率は60〜90%であることが好ましく、65〜85%であるとより好ましい。この範囲外であると耐久性に劣り剥がれやすい場合がある。なお、本明細書においてゲル分率とは、実施例中に記載した測定方法により求められる値を意味する。支持体としては、表面に剥離処理されたポリエステルフィルムを使用することができる。粘着剤層の厚みは、通常10〜30μm、好ましくは、15〜25μm程度である。
【0043】
また、上記偏光板用粘着剤組成物から形成される粘着剤層を、偏光フィルムの少なくとも一方の面に設けることによって、本発明の偏光板を得ることができる。偏光フィルム上に設けられる粘着剤層の厚みは、通常10〜30μm、好ましくは、15〜25μm程度である。
【0044】
偏光フィルム上に粘着剤層を設けるにあたっては、偏光フィルム上に粘着剤組成物を塗工し、乾燥、熟成させるか、または支持体に塗工し乾燥させた塗膜を偏光フィルム上に張り合わせ、これを熟成させることにより粘着剤層を形成させることができる。乾燥、熟成の条件やゲル分率の範囲等は上記と同様である。
【0045】
また、本発明に使用される偏光フィルムとしては、他の機能を有する層が積層されていてもよく、具体的には、楕円偏光フィルム、位相差フィルム等も含まれる。
【0046】
上記のようにして得られる本発明の偏光板を液晶セルの基板表面に設けることにより液晶素子が製造される。本発明の偏光板が用いられる液晶素子のタイプとしては特に限定されるものではなく、TNモード、VAモード、IPSモード、OCBモード等のいずれであってもよい。この液晶素子にバックライトなどの構成部品を適宜取り付けることにより、光漏れを低減した液晶表示装置が製造される。
【0047】
本発明の偏光板粘着剤組成物は、短期間の熟成により、優れた光漏れ防止性と耐久性を具備する粘着剤層を形成し得るものであるがその理由は次のように考えられる。
すなわち、粘着剤にイソシアネート系化合物を過剰量添加すると、イソシアネート系化合物由来のポリ尿素が生成すると言われている。このポリ尿素が粘着剤の主ポリマーとからみ合って物理的結合を生じ、一般の粘着剤と同様の編み目構造を持つが、イソシアヌレート構造を有するトリレンジイソシアネート系化合物の場合にも、同様の絡み合いによる網目構造を持つと考えられる。イソシアヌレート構造を有するトリレンジイソシアネート系化合物由来のポリ尿素によって高弾性となり、併せて複屈折も制御できるため、光漏れ防止性が良好となり、さらに、イソシアヌレート構造を有するトリレンジイソシアネート系化合物は、他のイソシアネート系化合物と比較して反応性が高く、架橋反応やポリ尿素の生成反応が早いことから、熟成期間を大幅に短縮できるものと考えられる。
【実施例】
【0048】
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に何ら制約されるものではない。
【0049】
製 造 例 1
アクリル系ポリマーの製造:
撹拌機、窒素ガス導入管、温度計および還流冷却管を備えたフラスコに、ブチルアクリレート97質量部、アクリル酸3質量部、酢酸エチル100質量部、ノルマルドデシルメルカプタン(NDM)0.04質量部を仕込みフラスコ内に窒素ガスを導入しながらフラスコの内容物を60℃に加熱した。次いで、十分に窒素ガス置換した重合開始剤アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.1質量部を攪拌下にフラスコ内に添加した。フラスコ内の内容物の温度が60℃に維持できるように、加熱及び冷却を10時間行い最後に酢酸エチル100部を添加してアクリル系ポリマーA1溶液を得た。このアクリル系ポリマーA1について、重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)を下記GPC測定条件に従って測定し、分散度(Mw/Mn)を求めた。また、不揮発分(nV)および粘度についても下記方法により測定した。測定結果をモノマー組成と併せて表1に示す。
【0050】
<GPC測定条件>
測定装置:HLC−8120GPC(東ソー社製)
GPCカラム構成:以下の5連カラム(すべて東ソー社製)
(1)TSK−GEL HXL−H (ガードカラム)
(2)TSK−GEL G7000HXL
(3)TSK−GEL GMHXL
(4)TSK−GEL GMHXL
(5)TSK−GEL G2500HXL
サンプル濃度:1.0mg/cmとなるように、テトラヒドロフランで希釈
移動相溶媒:テトラヒドロフラン
流量: 1ml/min
カラム温度:40℃
【0051】
<不揮発分の測定方法>
精秤したブリキシャーレ(n1)にアクリル系共重合体溶液を1g程度入れ、合計重量(n2)を精秤した後、105℃で3時間加熱した。その後、このブリキシャーレを室温のデシケータ内に1時間静置し、次いで再度精秤し加熱後の合計重量(n3)を測定した。得られた重量測定値(n1〜n3)を用いて下記式から不揮発分を算出した。
不揮発分(%)=100×[加熱後重量(n3−n1)/加熱前重量(n2−n1)]
【0052】
<粘度の測定方法>
B型粘度計を使用して、室温にて測定した。
【0053】
製 造 例 2〜6
表1に示すモノマー組成に代えた以外は製造例1と同様にしてアクリル系ポリマーA2〜A6溶液を得た。このポリマーのMw、Mn、不揮発分、粘度を製造例1と同様にして測定した。結果を表1に示す。
【0054】
比 較 製 造 例 1〜4
表1に示すモノマー組成に代えた以外は製造例1と同様にしてアクリル系ポリマーB1〜B4溶液を得た。このポリマーのMw、Mn、不揮発分、粘度を製造例1と同様にして測定した。結果を表1に示す。
【0055】
【表1】
【0056】
実 施 例 1
粘着剤層を有する偏光板の作製:
(粘着剤組成物の調製)
製造例1により得られたアクリル系ポリマーA1溶液のアクリル系ポリマーA1(固形分)100質量部に対して、トリレンジイソシアネート(TDI)系のイソシアヌレート変性体であるコロネート342(日本ポリウレタン社製)5質量部、シランカップリング剤としてKBM−403(信越化学工業株式会社製)0.2質量部を添加し、これらを充分混合して粘着剤組成物を得た。
【0057】
(偏光板の作製)
泡抜け後、ドクターブレードを用い剥離処理されたポリエステルフィルムに塗工し、すぐに90℃で3分間乾燥した。乾燥後、偏光板に張り合わせ、室温23℃、湿度50%の条件で静置して熟成させて粘着剤層を有する偏光板を得た。熟成期間は、1日、3日、7日とした。
【0058】
実 施 例 2〜12
アクリル系ポリマーおよび架橋剤を下記表2のように代えた以外は実施例1と同様にして粘着剤組成物を得た。また、得られた粘着剤組成物を用い、実施例1と同様にして粘着剤層を有する偏光板を作製した。
【0059】
比 較 例 1〜11
アクリル系ポリマーおよび架橋剤を下記表3のように代えた以外は実施例1と同様にして粘着剤組成物を得た。また、得られた粘着剤組成物を用い、実施例1と同様にして粘着剤層を有する偏光板を作製した。
【0060】
試 験 例 1
実施例1〜12および比較例1〜11で得た偏光板のうち、熟成期間が1日と7日のものについて、耐久性、光漏れ防止性を以下の方法により評価した。これらの結果を表2および3にまとめて示す。
【0061】
<耐久性の評価方法>
粘着剤層を有する偏光板を、150mm×250mmの大きさに裁断し、ガラス板の片面にラミネーターロールを用いて貼着し、次いで、50℃、5気圧に調整されたオートクレーブに20分間保持して、試験板を作成した。同様の試験板を2枚作成し、温度60℃、湿度95%RHの条件下(耐湿熱性)及び温度85℃の条件下(耐熱性)で500時間放置し、以下の基準でハガレの発生等を目視で観察し評価した。
(基準)
○:発泡、ハガレ、きれつは見られない
△:発泡、ハガレ、きれつがやや見られる
×:発泡、ハガレ、きれつが全面に見られる
【0062】
<光漏れ防止性の評価方法>
粘着剤層を有する偏光板2枚を、19インチワイドTNモニタ(型番:BenQ FP93VW)の表裏面に相互に直交ニコル位になるようにラミネーターロールを用いて貼着し、次いで、50℃、5気圧に調整されたオートクレーブに20分間保持して、試験板を作成した。作成した試験板を、70℃の条件下で500時間放置し、光漏れを目視で観察し、以下の基準で評価した。
(基準)
○:光漏れが見られない
△:光漏れが一部見られる
×:光漏れが全面に見られる
【0063】
【表2】
【0064】
【表3】
【0065】
試 験 例 2
実施例1〜12および比較例1〜11で得られた熟成1、3、7日の粘着剤層を有する偏光板について、以下の方法により粘着力を評価した。また実施例1〜12および比較例1〜11で得られた粘着剤組成物により形成される粘着剤層について、以下の方法により熟成1、3、7日におけるゲル分率を評価した。これらの結果を表4に示す。
【0066】
<粘着力の測定方法>
粘着剤層を有する偏光板を70mm×25mmの大きさに裁断し試験片を作成した。試験片からポリエステルフィルムを剥離し、ガラス板の片面にラミネーターロールを用いて貼着した後、50℃、5気圧に調整されたオートクレーブ中に20分間保持した。次いで23℃、50%RH環境下に1時間放置した後、90°方向に300mm/minの速度で引っ張り、剥離強度を測定した。
【0067】
<ゲル分率の測定方法>
得られた粘着剤組成物を乾燥後の厚みが20μmになるように剥離処理したポリエステルの表面に塗布し、乾燥させた後、もう一方の面に剥離処理したポリエステルフィルムを張り合わせて、23℃、50%RHで1、3、7日間熟成させて、試験片を作製した。試験片から粘着剤約0.1gをサンプル瓶に採取し、酢酸エチル30ccを加えて24時間振とうした後、該サンプル瓶の内容物を200メッシュのステンレス製金綱でろ別し、金綱上の残留物を100℃で2時間乾燥させて、乾燥重量を測定し、次式より求めた。
ゲル分率(%)=(乾燥重量/採取した粘着剤重量)×100
【0068】
【表4】
【0069】
比較例1〜11の偏光板は、常温熟成1日では、光漏れ防止性および耐久性が十分なものが得られないのに対し、実施例1〜12では、熟成1日で光漏れ防止性および耐久性が良好なものとなり、また粘着力およびゲル分率も熟成1日で安定し、これらの性能が安定して維持されることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明の粘着剤組成物は、短期間の熟成により、光漏れを有効に防止するとともに、優れた耐久性を有し、高温高湿条件においても発泡や剥がれ等の発生を抑制し得る粘着剤層を形成することができる。したがって、このものは偏光板用の粘着剤組成物として好適に利用可能である。