特許第5764512号(P5764512)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5764512
(24)【登録日】2015年6月19日
(45)【発行日】2015年8月19日
(54)【発明の名称】洗濯機
(51)【国際特許分類】
   D06F 39/00 20060101AFI20150730BHJP
   D06F 39/12 20060101ALI20150730BHJP
【FI】
   D06F39/00 F
   D06F39/12 B
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-56620(P2012-56620)
(22)【出願日】2012年3月14日
(65)【公開番号】特開2013-188334(P2013-188334A)
(43)【公開日】2013年9月26日
【審査請求日】2014年6月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】399048917
【氏名又は名称】日立アプライアンス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100310
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 学
(74)【代理人】
【識別番号】100098660
【弁理士】
【氏名又は名称】戸田 裕二
(74)【代理人】
【識別番号】100091720
【弁理士】
【氏名又は名称】岩崎 重美
(72)【発明者】
【氏名】小林 敏美
(72)【発明者】
【氏名】依藤 正人
(72)【発明者】
【氏名】宗野 義徳
【審査官】 芝井 隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−125426(JP,A)
【文献】 特開2010−069192(JP,A)
【文献】 特開2002−292192(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0043499(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06F 39/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
衣類を収容する洗濯槽と、
この洗濯槽を内包する外槽と、
運転内容の設定を行うダイヤルと、
このダイヤルに取り付けられ、前記ダイヤルの回転に伴い信号を出力するロータリエンコーダと、
運転内容に対応して点灯する表示素子を備えた洗濯機において、
前記ロータリエンコーダと前記表示素子とが、共通の基板に配置され、
前記ロータリエンコーダの周方向を全体に渡って覆う仕切り壁を有し、
前記基板の上に、前記仕切り壁の外側から内側にかけて樹脂が充填され、
前記仕切り壁の内側の樹脂の高さの方が、外側の樹脂の高さよりも低く、
前記ロータリエンコーダの先端側が覆われるよう、前記仕切り壁に樹脂浸入防止部品が装着された状態で、前記樹脂は前記基板の上に充填されたものであることを特徴とする洗濯機。
【請求項2】
衣類を収容する洗濯槽と、
この洗濯槽を内包する外槽と、
運転内容の設定を行うダイヤルと、
このダイヤルに取り付けられ、前記ダイヤルの回転に伴い信号を出力するロータリエンコーダと、
運転内容に対応して点灯する表示素子を備えた洗濯機において、
前記ロータリエンコーダと前記表示素子とが、共通の基板に配置され、
前記ロータリエンコーダの周方向を全体に渡って覆う仕切り壁を有し、
前記基板の上に、前記仕切り壁の外側から内側にかけて樹脂が充填され、
前記仕切り壁の先端側に着脱部品を保持するための係合部が設けられており、
前記仕切り壁は、前記樹脂の表面の高さから前記係合部の高さまで、空気が漏れないように隙間無く構成され
前記ロータリエンコーダの先端側が覆われるよう、前記仕切り壁の前記係合部に樹脂浸入防止部品の係止部が嵌合された状態で、前記樹脂は前記基板の上に充填されたものであることを特徴とする洗濯機。
【請求項3】
請求項において、
前記係合部にゴムパッキンが取り付けられていることを特徴とする洗濯機。
【請求項4】
運転内容の設定を行うダイヤルと、
前記ダイヤルの回転に伴い信号を出力するロータリエンコーダと、
所定の運転内容に対応して表示する表示素子を、洗濯機の操作パネルに取り付ける取付方法において、
前記ロータリエンコーダと前記表示素子を共通の基板に配置し、
前記ロータリエンコーダの先端側が覆われるよう、前記ロータリエンコーダの周方向を全体に渡って覆う仕切り壁に、樹脂浸入防止部品を装着し、
前記仕切り壁の外側から樹脂を充填した後、前記樹脂浸入防止部品を取り外し、
前記ロータリエンコーダと同軸に前記ダイヤルを装着することを特徴とする取付方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗濯機に係り、特にダイヤル式のコントローラに施す防湿処理に関するものである。
【背景技術】
【0002】
洗濯機等の操作パネルに設けられたダイヤル式のコントローラにおいては、一般に、基板実装部品の端子等の腐食防止のため、ウレタン樹脂等を用いて防湿処理を行っている。例えば、下記特許文献1には、ダイヤルの内側に組み込まれたロータリエンコーダと、LEDからなる表示素子とを、それぞれ別々の基板に設置し、表示素子を設置した基板に樹脂を用いて防湿処理した、洗濯機の操作パネルの構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−136221号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来の操作パネルでは、ロータリエンコーダと表示素子とが別々の基板に設置されているため、両基板を接続する配線が必要であり、また、両基板それぞれに防湿処理も必要となり、生産性が高くない。
【0005】
本発明の目的は、防湿を図りつつ生産性を高めた設定ダイヤルを備える洗濯機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
衣類を収容する洗濯槽と、この洗濯槽を内包する外槽と、運転内容の設定を行うダイヤルと、このダイヤルに取り付けられ、前記ダイヤルの回転に伴い信号を出力するロータリエンコーダと、運転内容に対応して点灯する表示素子を備えた洗濯機において、前記ロータリエンコーダと前記表示素子とが、共通の基板に配置され、前記ロータリエンコーダの周方向を全体に渡って覆う仕切り壁を有し、前記基板の上に、前記仕切り壁の外側から内側にかけて樹脂が充填され、前記仕切り壁の内側の樹脂の高さを、外側の樹脂の高さよりも低くし、前記ロータリエンコーダの先端側が覆われるよう、前記仕切り壁に樹脂浸入防止部品が装着された状態で、前記樹脂は前記基板の上に充填されたものである
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、防湿を図りつつ生産性を高めた設定ダイヤルを備える洗濯機が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施例に係るドラム式洗濯機の外観を示す図であり、(a)は平面図、(b)は正面図である。
図2】本発明の実施例に係るドラム式洗濯機の操作パネルを拡大した図である。
図3】本発明の実施例に係るドラム式洗濯機の操作パネルの分解図である。
図4】樹脂注入直前における基板上の構造の詳細を示す図である(樹脂注入補助キャップ装着状態)。
図5】樹脂注入直後における基板上の構造の詳細を示す図である(樹脂注入補助キャップ装着状態)。
図6】樹脂注入後、樹脂注入補助キャップを取り外し、コース設定ダイヤルを装着した状態における、基板上の構造の詳細を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施例について、図面を用いて説明する。
【0010】
図1は、本実施例に係るドラム式洗濯機100の外観を示す図であり、(a)は平面図、(b)は正面図である。
【0011】
図1に示すように、ドラム式洗濯機100は、外郭が鋼板と樹脂成型品とを組み合わせて構成された外枠1を有している。外枠1は、ベース1fを備えており、左右の側板1a、1b、前面カバー1c、背面カバー1d及び上面カバー1eが、ベース1fの上方に取り付けられて、箱状の外枠1が形成されている。
【0012】
前面カバー1cの略中央には、衣類等の洗濯物をドラム内に出し入れする投入口が形成されており、この投入口を介して洗濯物を出し入れする際に開閉されるドア7が、ヒンジ機構により開閉可能に取り付けられている。ドア7の右側には、ドア7のロック機構を解除するための取手7aが設けられている。取手7aを手前に引くことで、ロック機構が外れてドア7が開き、ドア7を前面カバー1cに押し付けることでロックされて閉じるようになっている。
【0013】
また、外枠1の上部には、洗剤や仕上げ剤等を投入するための引出し式の洗剤ボックス(洗剤投入部)11が配置され、この洗剤ボックス11の右側には、操作パネル6が設けられている。
【0014】
更に、図示しないが、ドラム式洗濯機100の外枠1内に、衣類を収容する洗濯槽としてのドラムと、このドラムを内包する外槽とを備える。そして、ドラムに結合されたシャフトを駆動モータで回転することで、洗い工程、すすぎ工程、脱水工程などを行うことが可能となっている。尚、本実施例では、ドラム式洗濯機について述べるが、当然ながら乾燥機能の付いたものであっても良い。
【0015】
この操作パネル6は、図2図3に示す通り、電源スイッチ2、操作スイッチ3、コース設定ダイヤル4及び液晶表示部5等を備えている。ここで、操作スイッチ3は、洗い時間やすすぎ回数などを適宜変更するためのボタンであり、コース設定ダイヤル4は、念入りコースや毛布コース等の運転内容を適宜選択するものである。このコース設定ダイヤル4を回転させると、対応する運転コースが次々と切り替わり、該当する運転コース内容を示す場所にあるLED等の表示素子8が点灯することで、利用者に知らせるようにしている。
【0016】
また、コース設定ダイヤル4はロータリエンコーダ9と同軸に設置されており、コース設定ダイヤル4の回転に伴ってロータリエンコーダ9の回転部が回転すると、ロータリエンコーダ9の検出部がそれを検出する。このロータリエンコーダ9は、回転部に設けられた接点と出力端子に接続された接点とが接触することにより、位置信号を出力する。
【0017】
次に、ロータリエンコーダ9等が設置される基板10の構造に関し、図6を用いて説明する。
【0018】
図6に示す通り、LED等の表示素子8の他、ロータリエンコーダ9や支持部材11の底面が、共通の基板10に配置されている。支持部材11は、複数の表示素子8を挿入して支持するための素子装着部11aと、ロータリエンコーダ9の外周側に位置してその軸方向へ延びる環状壁面11bと、この環状壁面11bの先端側に設けられて着脱部品を保持するための係合部11cを有する。この支持部材11の凹状の係合部11cには、ゴムパッキン13が取り付けられているので、コース設定ダイヤル4の奥側からロータリエンコーダ9に対して水が浸入するのを防ぐことが可能である。
【0019】
次に、図4図6を用いて、基板10上に樹脂14を充填し、実装部品を防湿するための処理に関し、説明する。
【0020】
まず、表示素子8、ロータリエンコーダ9及び支持部材11を、基板10上に取り付ける(ステップS1)。
【0021】
続いて、図4に示す通り、支持部材11の係合部11cに、樹脂浸入防止部品としての樹脂注入補助キャップ15の係止部を嵌合して、ロータリエンコーダ9の先端側を覆う(ステップS2)。
【0022】
その後、図5のように、環状壁面11bよりも外周側であって、支持部材11の上面に設けられた樹脂注入口11d(図示せず)から、ウレタン樹脂を注入する(ステップS3)。注入後、樹脂14が基板10の上面全体に行き渡り、支持部材11の環状壁面11bの底端と基板10との隙間から、支持部材11の環状壁面11bの内周側へも樹脂14が浸入する。しかし、支持部材11の環状壁面11bは、その底端から先端の係合部11cまで隙間なく仕切り壁が形成されており、また、係合部11cには、樹脂注入補助キャップ15が装着されている。このため、樹脂14の表面の高さ位置から樹脂注入補助キャップ15にかけて空気の漏れが防止され、仕切り壁の内側へ浸入する樹脂14の液面高さは、仕切り壁の外側の液面高さと比べて低くなる。つまり、ロータリエンコーダ9が存在する仕切り壁内側の領域は、気密状態となっているため、樹脂14の液面が極端に上昇し難い。具体的には、樹脂注入時に、仕切り壁の外側の樹脂14の高さがロータリエンコーダ9の台座の接合部よりも高くなっても、仕切り壁の内側の樹脂14の高さがロータリエンコーダ9の台座の接合部よりも低く抑えられる。
【0023】
ここで、台座の接合部からロータリエンコーダ9の部品内部に樹脂14が浸入した場合、回転部に設けられた接点と出力端子に接続された接点との間の導電が妨げられ、ロータリエンコーダ9としての性能を損なってしまう可能性がある。しかし、上述のように仕切り壁の内側を気密状態とすることで、ロータリエンコーダ9の部品内部に樹脂14が入り込むのが防止され、結果としてロータリエンコーダ9の信頼性が高められる。
【0024】
次に、樹脂注入補助キャップ15を取り外し、代わりにゴムパッキン13を、支持部材11の係合部11cに装着する(ステップS4)。
【0025】
最後に、図6に示す通り、コース設定ダイヤル4の係止部を、支持部材11の摺動面部に当接させながら支持させ、コース設定ダイヤル4の底面中央凹部を、ロータリエンコーダ9の先端側の回転部に嵌合させる(ステップS5)。
【0026】
上述のように、本実施例によれば、表示素子8とロータリエンコーダ9とが共通の基板10に設置されるため、表示素子8とロータリエンコーダ9とを接続する配線が不要であり生産性が向上するだけでなく、軸出し調整の精度も高まる。また、表示素子8とロータリエンコーダ9とを共通の基板10に設置した上で樹脂14による防湿処理を施す場合でも、ロータリエンコーダ9の周方向を全体に渡って覆う仕切り壁を設けたので、ロータリエンコーダ9の部品内部に樹脂14が浸入するのを防ぐことが可能となる。
【符号の説明】
【0027】
1 外枠
2 電源スイッチ
3 操作スイッチ
4 コース設定ダイヤル
5 液晶表示部
6 操作パネル
7 ドア
8 表示素子
9 ロータリエンコーダ
10 基板
11 支持部材
12 洗剤ボックス
13 ゴムパッキン
14 樹脂
15 樹脂注入補助キャップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6