(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記補助制御回路には、前記動作モード設定信号を入力するための外部接続端子と、前記短幅パルスを外部に出力し、又は前記処理手段が観測対象とする前記所定の短幅パルス信号を入力するための外部接続端子とが設けられた請求項1記載のスイッチング電源装置。
1台の前記マスタ電源と1台以上の前記スレーブ電源とで電源システムを構成し、少なくとも1台の前記スレーブ電源の前記第四基準時間が、前記第二基準時間に前記クロック信号の周期の(1/2・A)倍の時間を加算した時間に設定され、その他の前記スレーブ電源の第四基準時間が、前記第二基準時間に、それぞれ前記クロック信号の周期の(0/2・A)倍の時間、前記クロック信号の周期の(1/2・A)倍の時間、前記クロック信号の周期の(2/2・A)倍の時間の何れかを加算した時間に設定されている請求項3又は4記載の電源システム。
1台の前記マスタ電源と2台以上の前記スレーブ電源とで電源システムを構成し、少なくとも2台の前記スレーブ電源の前記第四基準時間が、前記第二基準時間に、それぞれ前記クロック信号の周期の(1/3・A)倍の時間、前記クロック信号の周期の(2/3・A)倍の時間を加算した時間に設定され、その他の前記スレーブ電源の前記第四基準時間が、前記第二基準時間に、それぞれ前記クロック信号の周期の(0/3・A)倍の時間、前記クロック信号の周期の(1/3・A)倍の時間、前記クロック信号の周期の(2/3・A)倍の時間、前記クロック信号の周期の(3/3・A)倍の時間のうちの何れかを加算した時間に設定されている請求項3又は4記載の電源システム。
1台の前記マスタ電源と3台以上の前記スレーブ電源とで電源システムを構成し、少なくとも3台の前記スレーブ電源の前記第四基準時間が、前記第二基準時間に、それぞれ前記クロック信号の周期の(1/4・A)倍の時間、前記クロック信号の周期の(2/4・A)倍の時間、前記クロック信号の周期の(3/4・A)倍の時間を加算した時間に設定され、その他の前記スレーブ電源の前記第四基準時間が、前記第二基準時間に、それぞれ前記クロック信号の周期の(0/4・A)倍の時間、前記クロック信号の周期の(1/4・A)倍の時間、前記クロック信号の周期の(2/4・A)倍の時間、前記クロック信号の周期の(3/4・A)倍の時間、前記クロック信号の周期の(4/4・A)倍の時間のうちの何れかを加算した時間に設定されている請求項3又は4記載の電源システム。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、この発明のスイッチング電源装置及びそれを用いた電源システムの第一実施形態について、
図1〜
図9に基づいて説明する。第一実施形態の電源システム10は、
図1に示すように、1つの入力電源12から電力の供給を受け、1つの負荷14に所定の直流電圧及び電流を出力するシステムであり、この中に第一実施形態のスイッチング電源装置16が2台使用されている。2台のスイッチング電源装置16は、入力電源12から受けた入力電圧を所定の出力電圧に変換する同一構成の装置である。
図1では、説明の便宜のため、2台のスイッチング電源装置を16(1),16(2)の符号を付して表わし、各スイッチング電源装置に関係する構成についても符号の末尾に(1),(2)を付して区別している。
【0019】
スイッチング電源装置16(k)(kは、任意の自然数であり、1ないし複数台の同様のスイッチング電源装置各々を指す。)は、
図2に示すように、電力変換部を構成するインバータ回路18(k)と整流平滑回路20(k)とを備えている。インバータ回路18(k)は、主スイッチング素子22(k)と主トランス24(k)とを備え、入力端子+IN(k),−IN(k)端子の間に、主トランス24(k)の1次巻線24aと、NチャネルのMOS型FETである主スイッチング素子22(k)とが直列に接続されている。入力端子+IN(k),−IN(k)端子の間に入力電圧Viが入力されると、主スイッチング素子22(k)がオンオフすることにより、一次巻線24aの両端に入力電圧Viを断続した電圧が印加され、二次巻線24bの両端に巻数比に応じた交流電圧が発生する。整流平滑回路20(k)は、2つの整流素子と平滑用のインダクタ及びコンデンサとで構成され、二次巻線24bの交流電圧を整流平滑することによって、直流の出力電圧Vo(k)を生成し、出力端子+OUT(k),−OUT(k)端子の間に出力する。
【0020】
図2では、インバータ回路18(k)と整流平滑回路20(k)とで成る電力変換部として、シングルエンディッドフォワードコンバータの構成を例示しているが、主スイッチング素子のオンオフによって電力変換を行うものであれば、他のON/ONコンバータ、ON/OFFコンバータ、あるいは非絶縁型のチョッパ回路等であってもよい。
【0021】
主スイッチング素子22(k)のオンオフを制御する制御部は、出力電圧検出回路26(k)、主制御回路28(k)、補助制御回路30(k)で構成されている。出力電圧検出部26(k)は、出力電圧Vo(k)又はこれに対応する電圧を検出し、出力電圧信号Vo1(k)を出力する。「これに対応する電圧を検出する」とは、出力電圧Vo(k)を間接的に検出することをいい、例えば、主トランス24(k)に三次巻線を設け、三次巻線の電圧を整流平滑することによって、出力電圧Vo(k)に略比例した電圧を検出する回路等が考えられる。
【0022】
主制御回路28(k)は、出力電圧検出回路26(k)から出力された出力電圧信号Vo1(k)を受け、出力電圧信号Vo1(k)が一定に保持されるように主スイッチング素子22(k)のオン時間ton及びオフ時間toffを決定する。そして、主スイッチング素子22(k)をオンさせるときにハイレベル、オフさせるときにローレベルとなる矩形波状の駆動パルスV22(k)を生成し、主スイッチング素子22(k)の駆動端子に向けて出力する。駆動パルスV22(k)の周期tsw(k)は、主スイッチング素子22(k)のスイッチング周期である。駆動パルスV22(k)の1周期が開始するタイミング(ここではオン時間が開始するタイミング)は、後述するスイッチング信号Vsw(k)によって規定される。主制御回路28(k)は、コンパレータ素子等を用いてアナログ制御を行う構成してもよいし、デジタル演算素子を用いてデジタル制御を行う構成にしてもよい。
【0023】
補助制御回路30(k)は、矩形波状のパルスであるスイッチング信号Vsw(k)を生成し、主制御回路28(k)に向けて出力する回路である。外部接続端子として、動作モード設定信号Vmo(k)が入力されるMO(k)端子と、相手方のスイッチング電源装置16(k)の補助制御回路30(k)との間で短幅パルスVsy(k)をやりとりするためのSYN(k)端子とが設けられ、内部には、クロック発生手段32(k)、処理手段34(k)、分周手段36(k)を備えている。
【0024】
クロック発生手段32(k)は、一定周期tck(k)のクロック信号Vck(k)を発生し、処理手段34(k)、分周手段36(k)に供給する。
【0025】
処理手段34(k)は、CPUやメモリなどを備え、クロック信号Vck(k)を受けて動作する。処理手段34(k)には、あらかじめ、基本分周数A(Aは、2以上の自然数)と、クロック信号Vck(k)の周期tckにAとB(Bは、2以上の自然数)とを乗じた時間である第一基準時間taと、第一基準時間taよりも短い第二基準時間tbとが設定されている。さらに、処理手段34(k)には、あらかじめ、第一基準時間taと等しい第三基準時間tcと、クロック信号Vck(k)の周期tckの(1/2・A)倍の時間に第二基準時間tbを加算した時間である第四基準時間tdと、分周数変更定数a(aは、正又は負の整数)とが設定されている。
【0026】
また、処理手段34(k)は、入力された動作モード設定信号Vmo(k)により、短幅パルス出力モード又は短幅パルス検出モードのいずれかの動作モードに設定される。動作モード設定信号Vmo(k)は、電源動作中にハイレベル又はローレベルに固定される信号であり、MO(k)端子からデジタルI/Oポート38(k)を通して処理手段34(k)に入力される。ここでは、
図3に示すように、動作モード設定信号Vmo(k)がローレベルの場合に短幅パルス出力モードになり、ハイレベルの場合に短幅パルス検出モードになる。
【0027】
また、処理手段34(k)は、矩形波状のスイッチング信号Vsw(k)を、ローレベルからハイレベルにロジック反転させるタイミングを決定する働きをする。ここでの決定の方法は、処理手段34(k)が短幅パルス出力モードと短幅パルス検出モードのいずれに設定されているかによって異なる。短幅パルス出力モードと短幅パルス検出モードの違いについては、後で詳しく説明する。
【0028】
分周手段36(k)は、処理手段34(k)から、スイッチング信号Vsw(k)をローレベルからハイレベルにロジック反転させるタイミングの指令、及び、分周数の指令を受け、その分周数でクロック信号Vck(k)を分周して成る繰り返し周期を持つスイッチング信号Vsw(k)を生成し、主制御回路28(k)に向けて出力する働きをする。スイッチング信号Vsw(k)の周期は、クロック信号Vck(k)に分周数を乗じた時間であり、そのまま駆動パルスV22(k)の周期tsw(k)となり、主スイッチング素子22(k)のスイッチング周期となる。分周手段36(k)の構成としては、例えば、カウンタとコンペアレジスタとを設け、カウンタでクロック信号Vck(k)をカウントし、カウント値がコンペアレジスタの設定値に達すると出力のロジックを反転させる構成から成る。
【0029】
上記のクロック発生手段32(k)、処理手段34(k)及び分周手段36(k)は、互いに独立した回路として設けてもよいし、同一チップ上に集積して設けてもよい。
【0030】
ここで、短幅パルス出力モードにおける動作と、短幅パルス検出モードにおける動作の違いについて説明する。短幅パルス出力モードに設定された場合、処理手段34(k)は、第一基準時間taごとに、デジタルI/Oポート40(k)を通じてSYN(k)端子から、短幅パルスVsy(k)を出力する。さらに、分周手段36(k)に向けて、「短幅パルスVsy(k)を出力してから第二基準時間tbが経過したタイミングで、スイッチング信号Vsw(k)をローレベルからハイレベルにロジック反転をさせる旨(繰り返し周期の先頭)」、及び、「当該ロジック反転後のスイッチング信号Vsw(k)の周期を決定する分周数をAとする旨」の指令を出す。そして、分周手段36(k)は、この指令に基づいてスイッチング信号Vsw(k)を生成し、それを受けた主制御回路28(k)が、上記ロジック反転のタイミングで1周期tsw(k)が開始する駆動パルスV22(k)を出力する。
【0031】
一方、動作モードが短幅パルス検出モードに設定された場合、処理手段34(k)は、第三基準時間tcごとに、デジタルI/Oポート40(k)を通じてSYN(k)端子を短い期間観測する。そして、ある観測期間内に所定の短幅パルスが検出された場合、処理手段34(k)が、分周手段36(k)に向けて、「当該観測期間から第四基準時間tdが経過したタイミングで、スイッチング信号Vsw(k)をローレベルからハイレベルにロジック反転をさせる旨(繰り返し周期の先頭)」、及び、「当該ロジック反転後のスイッチング信号Vsw(k)の周期を決定する分周数をAとする旨」の指令を出す。
【0032】
それに対して、ある観測期間内に短幅パルスが検出されなかった場合、処理手段34(k)が、第三基準時間tcを、次回に限ってta+a・tckとするように設定変更すると共に、分周手段36(k)に向けて、「当該観測期間から第四基準時間tdが経過したタイミングで、スイッチング信号Vsw(k)をローレベルからハイレベルにロジック反転をさせる旨(繰り返し周期の先頭)」、「当該ロジック反転後のスイッチング信号Vsw(k)の周期を決定する分周数を(A+a)とする旨」、及び、「さらにその次の周期における分周数をAとする旨」の指令を出す。
【0033】
上記の指令を受けた分周手段36(k)は、この指令に合致するスイッチング信号Vsw(k)を生成し、それを受けた主制御回路28(k)が、当該ロジック反転のタイミングで1周期tsw(k)が開始する駆動パルスV22(k)を出力する。ここでは、当該ロジック反転のタイミングでハイレベルが開始する駆動パルスV22(k)を出力する。
【0034】
次に、上記のスイッチング電源装置16を2台使用した電源システム10について、
図1に戻って説明する。ここで、スイッチング電源装置16(1),16(2)は、同一の出力電圧Voを出力するように設定され、クロック信号の周期tck、分周数A、及び第二基準時間tbが、それぞれ同じ値にデフォルト設定されている。
【0035】
スイッチング電源装置16(1),16(2)は、±IN(1)端子,±IN(2)端子がそれぞれ入力電源12の両端に接続され、±OUT(1)端子、±OUT(2)端子がそれぞれ負荷14の両端に接続され、入力側と出力側のいずれも並列の関係になっている。SYN(1)端子とSYN(2)端子は、接続線を介して互いに接続されている。
【0036】
MO(1)端子,MO(2)端子には、それぞれモード設定回路42(1),42(2)が接続されている。モード設定回路42(1)は、処理手段34(1)を短幅パルス出力モードに設定するため、MO(1)端子をローレベルに保持する回路であり、例えば、MO(1)端子とグランド電位との間に抵抗を接続し、MO(1)端子をプルダウンする構成が考えられる。一方、モード設定回路42(2)は、処理手段34(2)を短幅パルス検出モードに設定するため、MO(2)端子をハイレベルに保持する回路であり、例えば、MO(1)端子と所定の直流電源との間に抵抗を接続し、MO(2)端子をプルアップする構成が考えられる。従って、
図3に示すように、スイッチング電源装置16(1)がマスタ電源となり、スイッチング電源装置16(2)がスレーブ電源となる。
【0037】
次に、電源システム10の動作について、
図4〜
図9に基づいて説明する。
図4、
図5はマスタ電源16(1)の動作を、
図6、
図7はスレーブ電源16(2)の動作をそれぞれ時系列に表わしたフローチャートであり、各々の動作が並行して行われる。スレーブ電源16(2)の動作には、
図6のフローチャートに示すように、判断を行うステップS24があり、判断が「YES」の場合はステップS251に進み、「NO」の場合は、ステップS256を行ってからステップS251に進む。
【0038】
まず、ステップS24で「YES」と判断される場合の電源システム10の一連の動作について、
図8のタイムチャートに基づいて説明する。
【0039】
入力電源Viが投入されると、マスタ電源16(1)は、
図4のステップS11に進み、処理手段34(1)がローレベルの動作モード設定信号Vmo(1)を受け、短幅パルス出力モードに設定される。さらに、ステップS12に進み、処理手段34(1)が、分周手段36(1)に向けて、「スイッチング信号Vsw(1)がハイレベルにロジック反転するタイミングを、短幅パルスVsy(1)の出力後、第二基準時間tbが経過した時とする旨(繰り返し周期の先頭)」、及び「当該ロジック反転後のスイッチング信号Vsw(1)の周期を決定する分周数をAとする旨」の指令を出す。
【0040】
一方、スレーブ電源16(2)は、入力電源Viが投入されると
図6のステップS21に進み、処理手段34(2)がハイレベルの動作モード設定信号Vmo(2)を受け、短幅パルス検出モードに設定される。さらに、ステップS22に進み、処理手段34(2)が、分周手段36(2)に向けて、「スイッチング信号Vsw(2)がハイレベルにロジック反転するタイミングを、SYN(2)端子を観測した後、第四基準時間tdが経過した時とする旨(繰り返し周期の先頭)」、及び「当該ロジック反転後のスイッチング信号Vsw(2)の周期を決定する分周数をAとする旨」の指令を出す。
【0041】
次に、マスタ電源16(1)は、ステップS13に進み、所定のタイミングで処理手段34(1)の指令により、SYN(1)端子から最初の短幅パルスVsy(1)が出力される。短幅パルスVsy(1)のパルス幅tsy(1)は、
図8のタイムチャートに示すように、スイッチング周期tsw(1)に比べて十分に短く、例えば、tsw(1)の1/50〜1/100程度が好ましい。その後、マスタ電源16(1)はスイッチング制御ステップS14に進む。
【0042】
一方、スレーブ電源16(2)は、ステップS23に進み、所定のタイミングで短い時間、処理手段34(2)がSYN(2)端子を観測する。すなわち、観測時間tsy(2)内に、短幅パルスVsy(1)が発生しているか否かを観測する。観測時間tsy(2)は、あまり長くすると、後述するインターリーブ動作の精度が低下するので、短幅パルスVsy(1)のパルス幅tsy(1)の1〜3倍程度の長さに設定するとよい。ここでは、
図8のタイムチャートに示すように、マスタ電源16(1)が短幅パルスVsy(1)を出力するタイミングとスレーブ電源16(2)がSYN(2)端子を観測するタイミングとが一致しているので、スレーブ電源16(1)は、ステップS24で「YES」と判断し、スイッチング制御ステップS25に進む。
【0043】
マスタ電源16(1)は、スイッチング制御ステップS14に入ると、
図5のステップS141に示すように、短幅パルスVsy(1)が出力され、第二基準時間tbが経過した時、分周手段36(1)がスイッチング信号Vsw(1)をハイレベルに反転させる。そして、ステップS142に進み、スイッチング信号Vsw(1)がハイレベルになったのに伴って、主制御回路28(1)が駆動パルスV22(1)をハイレベルに反転させ、主スイッチング素子22(1)がオンする。オンがしばらく継続した後、ステップS143に進み、出力電圧信号Vo1(1)を一定にするためのオン時間ton(1)が経過したタイミングで、主制御回路28(1)が駆動パルスV22(1)をローレベルに反転させ、主スイッチング素子22(1)がオフする。主制御回路28(1)は、出力電圧信号Vo1(1)が所定の基準値よりも低いときには、出力電圧信号Vo1(1)を上昇させるため、オン時間ton(1)を長くする制御を行い、出力電圧信号Vo1(1)が所定の基準値よりも高いときには、出力電圧信号Vo1(1)を低下させるため、オン時間ton(1)を短くする制御を行う。その後、ステップS144に進み、分周手段36(1)が、スイッチング信号Vsw(1)をローレベルに反転させる。このロジック反転のタイミングは、駆動パルスV22(1)の挙動に影響しないようになっており、スイッチング信号Vsw(1)がハイレベルに反転した後、(A・tck)の時間が経過する前の適宜のタイミングであればよい。その後、ステップS145に進み、先にスイッチング信号Vsw(1)がハイレベルに反転したタイミングからtsw(1)の時間(すなわち、A・tckの時間)が経過した時、分周手段36(1)がスイッチング信号Vsw(1)をハイレベルに反転させる。
【0044】
その後は、もう一度ステップS142に戻り、ステップS142〜S145を繰り返す。このようにして、マスタ電源16(1)の主スイッチング素子22(1)が、一定のスイッチング周期tsw(1)=A・tckでオンオフを繰り返す。
【0045】
一方、スレーブ電源16(2)は、スイッチング制御ステップS25に入ると、
図7のステップS251に示すように、SYN(2)端子を観測してから第四基準時間tdが経過した時、分周手段36(2)が、スイッチング信号Vsw(2)をハイレベルに反転させる。ここで、第四基準時間tdは、tb+1/2・A・tckなので、
図8に示すように、スイッチング信号Vsw(2)がハイレベルに反転するタイミングが、マスタ電源16(1)の1周期tsw(1)の中間のタイミングとなる。そして、ステップS252に進み、スイッチング信号Vsw(2)がハイレベルになったのに伴って、主制御回路28(2)が駆動パルスV22(2)をハイレベルに反転させ、主スイッチング素子22(2)がオンする。このオンがしばらく継続した後、ステップS253に進み、出力電圧信号Vo1(2)を一定にするためのオン時間ton(2)が経過したタイミングで、主制御回路28(2)が駆動パルスV22(2)をローレベルに反転させ、主スイッチング素子22(2)がオフする。主制御回路28(2)も、出力電圧信号Vo1(2)が所定の基準値よりも低いときには、オン時間ton(2)を長くする制御を行い、出力電圧信号Vo1(2)が所定の基準値よりも高いときには、オン時間ton(2)を短くする制御を行う。その後、ステップS254に進み、分周手段36(2)がスイッチング信号Vsw(2)をローレベルに反転させる。このロジック反転のタイミングも、駆動パルスV22(2)の挙動に影響しないようになっており、スイッチング信号Vsw(2)がハイレベルに反転した後、(A・tck)の時間が経過する前の適宜のタイミングであればよい。その後、ステップS255に進み、先にスイッチング信号Vsw(2)がハイレベルに反転したタイミングからtsw(2)の時間(すなわち、A・tckの時間)が経過した時、分周手段36(2)がスイッチング信号Vsw(2)をハイレベルに反転させる。
【0046】
その後は、もう一度ステップS252に戻り、ステップS252〜S255を繰り返す。このようにして、スレーブ電源16(2)の主スイッチング素子22(2)が、マスタ電源16(1)と同じスイッチング周期tsw(2)=A・tckでオンオフを繰り返す。このとき、
図8に示すように、スレーブ電源16(2)のオン時間ton(2)が開始するタイミングが、マスタ電源16(1)のオン時間ton(1)が開始するタイミングに対して、常に180度ずれるので、2台のスイッチング電源装置16(1),16(2)の間で理想的なインターリーブ動作が行われる。
【0047】
その後、マスタ電源16(1)は、
図4のステップS15に進み、先に短幅パルVsy(1)を出力してから第一基準時間taが経過したタイミングで、処理手段34(1)の指令により、SYN(1)端子から次の短幅パルスVsy(1)が出力される。ここで、第一基準時間taは、周期tsw(=A・tck)にBを乗じた時間なので、上記のステップS142〜S145が繰り返される回数はB回となる(
図8の場合は3回)。ステップS15の後は、再度スイッチング制御ステップS14に戻り、上記と同様にステップS14〜S15を繰り返す。
【0048】
一方、スレーブ電源16(2)は、
図6のステップS26に進み、先にSYN(2)端子を観測してから第三基準時間tcが経過したタイミングで、上記の短い時間tsy(2)、処理手段34(2)がSYN(2)端子を観測する。ここで、第三基準時間tcも、周期tsw(=A・tck)にBを乗じた時間なので、上記のステップS252〜S255が繰り返される回数がB回となる(
図8の場合は3回)。ステップS26の後は、ステップS24に戻って「YES」と判断され、上記と同様にステップS24〜S26を繰り返す。
【0049】
このように、マスタ電源16(1)とスレーブ電源16(2)との間で、第一基準時間ta及び第三基準時間tcごとに、互いのスイッチング周期tswの位相のチェックを行い、狙いのインターリーブ動作が維持されていることを確認する。
【0050】
次に、スレーブ電源16(2)におけるステップS24で、「NO」と判断される場合の電源システム10の一連の動作について、
図9のタイムチャートに基づいて説明する。ここで、マスタ電源16(1)の動作、及びスレーブ電源16(2)のステップS21〜S23の動作は上記と同様なので省略し、スレーブ電源16(2)のスイッチング制御ステップS24〜S26の動作を中心に、
図6、
図7のフローチャートに沿って説明する。
【0051】
図9のタイムチャートに示すように、スレーブ電源16(2)があるタイミングでSYN(2)端子を観測した時(
図9における1回目の観測)、マスタ電源16(1)の短幅パルスVsy(1)が検出されず、観測期間tsy(2)の後で短幅パルスVsy(1)が出力されている。短幅パルスVsy(1)が出力されるタイミングと観測期間tsy(2)がずれるのは、例えば、入力電圧Viを投入して電源システム10が起動するときや、電源システムの定常運転中にノイズ等の外乱が加わってクロック信号Vckが一時的に変動したとき等である。
【0052】
スレーブ電源16(2)は、ステップS24で「NO」と判断し、スイッチング制御ステップS25に進む。そして、
図7のステップS256に示すように、処理手段34(2)が、第三基準時間tcを次回に限ってta+a・tckとするように設定変更すると共に、分周手段36(2)に向けて、「後で行うステップS252〜S255の繰り返しのうち、1回目の分周数を(A+a)に変更し、その後は分周数をAに戻す旨」の指令を出す。なお、ここでは「1回目の分周数」としているが、B回の繰り返しの中の何回目でもよい。
【0053】
まず、1回目のステップS251〜S255を説明する。ステップS251に入ると、SYN(2)端子を観測してから第四基準時間tdが経過した時、分周手段36(2)が、スイッチング信号Vsw(2)をハイレベルに反転させる。第四基準時間tdは、上記と同様にtb+1/2・A・tckであるが、観測期間tsy(2)と短幅パルスVsy(1)のタイミングとがずれているので、
図8と異なり、スイッチング信号Vsw(2)がハイレベルに反転するタイミングがマスタ電源16(1)の1周期tsw(1)の中間のタイミングにならない。そして、ステップS252に進み、スイッチング信号Vsw(2)がハイレベルになったのに伴って、主制御回路28(2)が駆動パルスV22(2)をハイレベルに反転させ、主スイッチング素子22(2)がオンする。このオンがしばらく継続した後、ステップS253に進み、出力電圧信号Vo1(2)を一定にするためのオン時間ton(2)が経過したタイミングで、主制御回路28(2)が駆動パルスV22(2)をローレベルに反転させ、主スイッチング素子22(2)がオフする。その後、ステップS254に進み、分周手段36(2)が、スイッチング信号Vsw(2)をローレベルに反転させる。その後、ステップS255に進み、先にスイッチング信号Vsw(2)がハイレベルに反転したタイミングからtsw(2)の時間が経過した時、分周手段36(2)がスイッチング信号Vsw(2)をハイレベルに反転させる。ここでは、分周数が(A+a)に指定されているので、周期はtsw(2)=(A+a)・tckとなり、直前の周期tsw(2)=A・tckに比べて時間(a・tck)だけ変化する。
図9では、a=+1に設定されているので、周期tsw(2)が時間tckだけ長くなる。その後はもう一度ステップS252に戻り、ステップS252〜S255を繰り返す。
【0054】
2回目以降は、ステップS255を行った結果が異なる。すなわち、先にスイッチング信号Vsw(2)がハイレベルに反転したタイミングからtsw(2)の時間が経過した時、分周手段36(2)がスイッチング信号Vsw(2)をハイレベルに反転させる、という動作は同じであるが、ここでは、分周数がAに戻り、周期はtsw(2)=A・tckとなる。従って、
図9に示すように、直前の周期tsw(2)=(A+1)・tckよりも短くなる。
【0055】
その後、スレーブ電源16(2)は、
図6のステップS26に進み、先にSYN(2)端子を観測してから第三基準時間tc=ta+a・tckが経過したタイミングで、短い時間tsy(2)の間、処理手段34(2)がSYN(2)端子を観測する。ここでは、
図9に示すように、第三基準時間tcが前回よりも時間tckだけ長くなり、その分だけ、観測期間tsy(2)のタイミングが遅れることにより、マスタ電源16(1)が出力したVsy(1)が検出される。従って、その後、ステップS24に戻って「YES」と判断され、以降は、
図8で説明した理想的なインターリーブ動作が行われるようになる。
【0056】
図9における1回目の観測の時、短幅パルスVsy(1)が出力されるタイミングと観測期間tsy(2)とのずれが時間tckよりも大きいとすれば、
図9における2回目の観測では「YES」と判断されないが、上記のステップS24、S256、S251〜S26の動作を何回か繰り返すことによって、やがて「YES」と判断され、以降は、
図8で説明した理想的なインターリーブ動作が行われるようになる。この繰り返し回数は、分周数変更定数aを変更することにより調整できる。
【0057】
以上説明したように、第一実施形態のスイッチング電源装置16によれば、主スイッチング素子22の位相を制御するシンプルな構成の補助制御回路30により、マスタ電源16(1)とスレーブ電源16(2)との間で理想的なインターリーブ動作を行うことが可能になる。また、マスタ電源16(1)とスレーブ電源16(2)は、同一構成の2台のスイッチング電源装置16を用いて実現できるので、電源システム10の組み立て工場において、スイッチング電源装置16の調達や在庫管理が容易である。また、動作モードを短幅パルス出力モードに設定すれば、単体(1台)でも使用できるという利便性がある。
【0058】
また、第一実施形態の電源システム10によれば、2台のスイッチング電源装置16(1),16(2)の間を結ぶ接続線の数が1本と少なく、配線が非常に容易である。また、この接続線に外来ノイズが混入したとしても、その影響は、主スイッチング素子22(1),22(2)がオンオフする位相の設定に僅かな誤差が生じる程度であり、出力電圧Voが著しく変動する等の重大な異常が発生したり、主スイッチング素子22(1),22(2)が故障したりする心配がない。しかも、一時的に位相の設定に誤差が生じたとしても、その誤差が自動的に補正され、ごく短時間のうちに正常なインターリーブ動作の状態に戻ることができる。また、スイッチング電源装置16(1),16(2)のクロック信号Vck(1),Vck(2)の周期tck(k)にばらつきがあると、スイッチング周期tsw(k)がばらつくので、従来であればインターリーブ動作が困難なところ、上記と同様の動作により自動的に補正され、良好なインターリーブ動作を行うことができる。
【0059】
なお、周波数変更定数aは、正負のどちらでもよく、適宜選択することができる。上記の説明では省略したが、電源システム10の場合、入力電圧Viを投入した後、マスタ電源16(1)が最初の短幅パルスVsy(1)を出力するタイミング(ステップS13)が、スレーブ電源16(2)が最初にSYN(2)端子を観測するタイミング(ステップS23)よりも僅かに後になるように設定され、かつ、分周数変更定数aを正の値(ここでは+1)に設定されている。従って、上記の動作により、入力電圧Viを投入してからごく短時間のうちに正常なインターリーブ動作の状態になることができる。これに対して、最初の短幅パルスVsy(1)とSYN(2)端子の観測のタイミングとが反対の場合は、分周数変更定数aを負の値にするとよい。その場合、入力電圧Viを投入してから所定の期間、分周手段36(k)から主制御回路28(k)へのスイッチング信号Vsw(k)の出力を停止させ、所定の期間が経過した後で出力させるようにすれば、正常なインターリーブ動作が可能になった時点で主スイッチング素子22(k)のオンオフを開始させることができる。
【0060】
また、上記マスタ電源16(1),16(2)の主制御回路28(1),28(2)は、スイッチング信号Vsw(1),Vsw(2)がハイレベルからローレベルにロジック反転する動作については、無視する形で駆動パルスV22(1),V22(2)を生成している。しかし、このロジック反転を他のアプリケーションに利用することも可能である。例えば、主制御回路28(1),28(2)が、スイッチング信号Vsw(1),Vsw(2)の当該ロジック反転のタイミングで駆動パルスV22(1),V22(2)を強制的にローレベルに保持する機能を付与すれば、駆動パルスV22(1),V22(2)の最大オン時間を規定する制御が可能になり、主トランス24(k)の磁気飽和を防止し、主スイッチング素子22等のパワー半導体の故障を容易に回避することができるようになる。
【0061】
次に、この発明のスイッチング電源装置及び電源システムの第二実施形態について、
図10〜
図13に基づいて説明する。ここで、上記実施形態と同様の構成は、同一の符号を付して説明を省略する。第二実施形態の電源システム44は、
図10に示すように、1つの入力電源12から電力の供給を受け、4つの負荷14に対してそれぞれ異なる直流電圧及び電流を出力するシステムであり、この中に第二実施形態のスイッチング電源装置46が4台使用されている。4台のスイッチング電源装置46は、入力電源12から受けた入力電圧を所定の出力電圧に変換して出力する装置であり、それぞれの出力電圧の違いに基づいて電力変換部の構成が異なっている。
図10では、説明の便宜のため、4台のスイッチング電源装置46(k)(kは1〜4)を表わし、各スイッチング電源装置に関係する構成についても符号の末尾に(1),(2),・・・を付して区別してある。
【0062】
スイッチング電源装置46(k)は、
図11に示すように、インバータ回路18(k)と整流平滑回路20(k)とで構成された電力変換部を備え、さらにインバータ回路18(k)は、主スイッチング素子22(k)と主トランス24(k)とで構成されている。4台のスイッチング電源装置46(k)は、各出力電圧Vo(k)の設定値が異なるので、主トランス24(k)の巻数が異なっている。例えば、出力電圧Vo(k)の設定値が高いものは、二次巻線24bの巻数が多くなっている。ただし、出力電圧Vo(k)の設定値の差が比較的小さい場合は、同一巻数の主トランス24(k)を使用しても構わない。
【0063】
主スイッチング素子22(k)のオンオフを制御する制御部は、出力電圧検出回路26(k)、主制御回路28(k)、補助制御回路48(k)で構成されている。従って、
図2で説明したスイッチング電源装置16(k)とは、補助制御回路30(k)に代えて補助制御回路48(k)が設けられている点で異なる。
【0064】
補助制御回路48(k)は、矩形波状のパルスであるスイッチング信号Vsw(k)を生成し、主制御回路28(k)に向けて出力する回路である。外部接続端子として、2つの動作モード設定信号Vmo1(k),Vmo2(k)が入力されるMO1(k),MO2(k)端子と、相手方のスイッチング電源装置46(k)の補助制御回路48(k)との間で短幅パルスVsy(k)をやりとりするためのSYN(k)端子とが設けられ、内部には、クロック発生手段32(k)、処理手段50(k)、分周手段36(k)を備えている。従って、
図2で説明した補助制御回路30(k)とは、動作モード設定信号が2つのMO端子に入力される点、及び、処理手段34(k)に代えて処理手段50(k)が設けられている点で異なる。
【0065】
処理手段50(k)は、CPUやメモリなどを備え、クロック信号Vck(k)を受けて動作する。処理手段50(k)には、あらかじめ、基本分周数A(Aは、2以上の自然数)と、クロック信号Vck(k)の周期tckにAとB(Bは、2以上の自然数)とを乗じた時間である第一基準時間taと、第一基準時間taよりも短い第二基準時間tbとが設定されている。さらに、処理手段50(k)には、あらかじめ、第一基準時間taと等しい第三基準時間tcと、クロック信号Vck(k)の周期tck(k)のA倍の時間よりも短い所定時間に第二基準時間tbを加算した時間である第四基準時間tdと、正又は負の整数である分周数変更定数aとが設定されている。ここでは、各処理手段50(k)に、「tb+1/4・A・tck」、「tb+2/4・A・tck」、「tb+3/4・A・tck」という3通りの第四基準時間tdが設定され、MO1(k),MO2(k)端子に入力された動作モード設定信号Vmo1(k),Vmo2(k)に応じて、いずれかの第四基準時間tdが選択される。詳しくは、後で説明する。
【0066】
また、処理手段50(k)は、動作モード設定信号Vmo1(k),Vmo2(k)により、短幅パルス出力モード又は短幅パルス検出モードのいずれかの動作モードに設定される。動作モード設定信号Vmo1(k),Vmo2(k)は、電源動作中にハイレベル又はローレベルに固定される信号であり、MO1(k),MO2(k)端子からデジタルI/Oポート38(k)を通して処理手段50(k)に入力される。ここでは、
図12に示すように、動作モード設定信号Vmo1(k),Vmo2(k)の双方がローレベルの場合に短幅パルス出力モードになり、それ以外の場合に短幅パルス検出モードになる。さらに、動作モード設定信号Vmo1(k),Vmo2(k)には、第四基準時間tdを指定する情報が含まれ、
図13に示す要領で、2つの信号のロジック(ハイレベル又はローレベル)の組み合わせにより、上記の3通りのうちのいずれかの時間tdが選択される。
【0067】
また、処理手段50(k)は、
図2の処理手段34(k)と同様に、矩形波状のスイッチング信号Vsw(k)を、ローレベルからハイレベルにロジック反転させるタイミングを決定する働きをする。ただし、ここでは、スレーブ電源に設定された場合、それぞれ、動作モード設定信号Vmo1(k),Vmo2(k)により指定された個別の第四基準時間tdに基づいて、当該ロジック反転のタイミングを決定することになる。
【0068】
次に、上記のスイッチング電源装置46を4台使用した電源システム44について、
図10に戻って説明する。ここで、各スイッチング電源装置46(1)〜46(4)は、クロック信号の周期tck、分周数A、及び前記第二基準時間tbがそれぞれ同じ値にデフォルト設定されている。
【0069】
スイッチング電源装置46(1)〜46(4)は、±IN(1)端子〜±IN(4)端子がそれぞれ入力電源12の両端に接続され、±OUT(1)端子〜±OUT(4)端子がそれぞれ別個の負荷14(1)〜14(4)の両端に接続され、入力側のみが並列の関係になっている。SYN(1)端子〜SYN(4)端子は、互いに接続されている。
【0070】
MO1(1),MO2(1)端子〜MO1(4),MO2(4)端子には、それぞれモード設定回路42(1)〜42(4)が接続されている。モード設定回路42(1)は、処理手段50(1)を短幅パルス出力モードに設定するため、
図12の「k=1」の欄に示すように、MO1(1),MO2(1)端子の双方をローレベルに保持する。モード設定回路42(2)〜42(4)は、処理手段50(2)〜50(4)を短幅パルス検出モードに設定すると共に、それぞれ異なる第四基準時間tdに設定する回路であり、
図12の「k=2〜4」の欄に示すように、MO1(2),MO2(2)端子〜MO1(4),MO2(4)端子をハイレベル又はローレベルに保持する。
従って、スイッチング電源装置46(1)がマスタ電源となり、スイッチング電源装置46(2)〜46(4)がスレーブ電源となる。
【0071】
第二実施形態のスイッチング電源装置46によれば、第一実施形態のスイッチング電源装置16と同様の作用効果を得ることができ、さらに、スレーブ電源46(k)に設定された場合、動作モード設定信号Vmo1(k),Vmo2(k)により第四基準時間tdを個別に指定できるので、マスタ電源46(1)の主スイッチング素子22(1)のオンが開始されるタイミングを基準として、スレーブ電源46(k)の主スイッチング素子22(k)のオンが開始されるタイミングを個別に設定し、各主スイッチング素子の位相を自在にずらすことができるという利点がある。
【0072】
例えば、第二実施形態の電源システム44のように、スレーブ電源46(2)〜46(4)の第四基準時間tdを、それぞれ、第二基準時間tbにスイッチング周期tsw(=A・tck)の1/4倍の時間、2/4倍の時間、3/4倍の時間を加算した時間に設定することによって、マスタ電源46(1)を含む4台の間で位相を90度ずつ均等にずらすことができ、理想的なインターリーブ動作を行うことができる。
【0073】
ここで、
図11における補助制御回路48(k)は、MO1(k),MO2(k)端子、2つのデジタルI/Oポート38(k)及び処理手段50(k)の構成が、デジタル信号である動作モード設定信号Vmo1(k),Vmo2(k)に対応した構成になっているが、
図13(a)の変形例に示すように、1つのMO(k)端子、1つのA/Dコンバータ52(k)及び処理手段50(k)を設け、アナログ信号である動作モード設定信号Vmo(k)に対応した構成にしてもよい。この場合、動作モード及び第四基準時間tdの指定は、例えば
図13に示すように、動作モード設定信号Vmo(k)の直流電圧レベルの違いによって行うことができる。
【0074】
なお、この発明のスイッチング電源装置は、上記実施形態に限定されるものではない。
例えば、上記実施形態では、第二基準時間tb又は第四基準時間tdが経過した時にスイッチング信号Vswがローレベルからハイレベルにロジック反転し、当該ロジック反転のタイミングで主スイッチング素子22のオン時間を開始する、という制御を行っているが、これに限定されず、第二基準時間tb又は第四基準時間tdが経過した時にスイッチング信号Vswが所定方向にロジック反転し、当該ロジック反転のタイミングで主スイッチング素子22の1周期が開始する、という制御がされるものであればよい。従って、例えば、第二基準時間tb又は第四基準時間tdが経過した時にスイッチング信号Vswがハイレベルからローレベルにロジック反転し、当該ロジック反転のタイミングで主スイッチング素子22のオフ時間が開始する、という制御にすることができる。
【0075】
また、動作モード設定信号により短幅パルス出力モードを選択すれば、単体(1台)での使用も可能になる。また、複数台を組み合わせて使用する場合、マスタ電源として使用されるスイッチング電源装置は、処理手段に、基本分周数A、第一基準時間及び第二基準時間が設定されていればよく、スレーブ電源に必要な第三基準時間、第四基準時間、及び分周数変更定数aの設定、及びこれに関連する演算処理を省略することができる。これにより、マスタ電源が有する処理手段の負担が軽減され、動作を高速化することができる。
【0076】
また、この発明の電源システムについても、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、
図1の電源システム10に、スイッチング電源装置16(1),16(2)と同一のスイッチング電源装置16(3)を追加して、これをスレーブ電源としてインターリーブ動作を行うことができる。この場合、マスタとして動作しているスイッチング電源装置16(1)の主スイッチング素子22(1)に対して、スレーブとして動作しているスイッチング電源装置16(2),16(3)の主スイッチング素子22(2),22(3)の位相が180度ずれる形で、インターブ動作が行われる。
【0077】
また、例えば、
図10の電源システム44に、スイッチング電源装置46(2)と同じモード設定信号Vmoを入力するスイッチング電源装置46(5)、スイッチング電源装置46(3)と同じモード設定信号Vmoを入力するスイッチング電源装置46(6)、スイッチング電源装置46(4)と同じモード設定信号Vmoを入力するスイッチング電源装置46(7)の3台を追加し、これに加えて、新たな第四基準時間td=tb+4/4・A・tckに設定されるスイッチング電源装置46(8)を加えて、インターリーブ動作を行うことができる。この場合、マスタとして動作しているスイッチング電源装置46(1)の主スイッチング素子22(1)に対して、スレーブとして動作しているスイッチング電源装置46(2),46(5)の主スイッチング素子22(2),22(5)の位相が90度ずれ、スレーブとして動作しているスイッチング電源装置46(3),46(6)の主スイッチング素子22(3),22(6)の位相が180度ずれ、スレーブとして動作しているスイッチング電源装置46(4),46(7)の主スイッチング素子22(4),22(7)の位相が270度ずれ、スレーブとして動作しているスイッチング電源装置46(8)が同位相で動作する形で、4つの位相に対して2台のスイッチング電源装置が一組となって、インターリーブ動作が行われる。
【0078】
また、
図10の電源システム44のスイッチング電源装置46(k)は、
図12に示すように、1周期tsw(=A・tck)を4分割し、各スレーブ電源46(2)〜46(4)の第四基準時間tdを、マスタ電源46(1)の第二基準時間tbに対して(1/4・A・tck)ずつ差をつけて設定することよって、4つの主スイッチング素子22(k)の位相を90度ずつ均等にずらしている。1周期tswの分割数4は、使用するスイッチング電源装置の台数に応じて、2又は3にしてもよいし、5以上にしてもよい。例えば、3台のスイッチング電源装置46(1)〜46(3)を用いた電源システムの場合、分割数3が好適であり、2台のスレーブ電源46(2),46(3)の第四基準時間tdを、マスタ電源46(1)の第二基準電圧tbに対して(1/3・A・tck)ずつ差をつけて設定することよって、3つの主スイッチング素子22(k)の位相を120度ずつ均等にずらすことができる。また、5台を超えるスイッチング電源装置46を使用する場合、分割数を5以上にすれば、同様の考え方で位相をずらすことができる。その場合、4種類以上の第四基準時間tdをデジタル信号である動作モード設定信号Vmoを用いて指定することになるので、適宜、モード設定信号Vmoの数を増やし対応するMO端子の数を増設する。
図13のようなアナログ信号である動作モード設定信号Vmoを用いる構成の場合は、MO端子を増設しなくても、ソフト的に対応が可能である。ただ、定常動作中の主スイッチング素子22のオン・デューティが25%以上の場合、分割数を5以上にして制御を複雑にしても、インターリーブ動作によって得られる効果は、分割数が4のときに比べて大きな差はない。
【0079】
また、電源システム10,44のモード設定回路42(k)は、スイッチング電源装置(k)ごとに個別に設けられているが、1つのモード設定ユニットに機能を集約し、各スイッチング電源装置(k)の動作モードを集中管理する構成にしてもよい。また、そのモード設定ユニットを、いずれかのスイッチング電源装置の内部に設けてもよい。