(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
積層した状態で固定される複数の被固定物のうち最下層に配置される第1の被固定物に形成され積層方向に突出する突出部に第1の貫通孔が設けられ、前記複数の被固定物のうち最上層に配置される第2の被固定物に第2の貫通孔が設けられ、前記突出部が前記第2の貫通孔を通った状態において、第1の貫通孔と前記第2の被固定物との間に収容可能なクリップ本体を備え、
前記クリップ本体に想定されるとともに前記クリップ本体が前記第1の貫通孔に収容された状態において前記第1の貫通孔の貫通方向に沿う仮想直線に沿って前記クリップ本体の両端部のそれぞれに設けられて他方側に延びる変位部と、
前記変位部の先端側に設けられて前記クリップ本体に対して突出する係合部であって、前記クリップ本体を前記仮想直線が前記第1の貫通孔の貫通方向に沿う姿勢で前記第1の貫通孔内に収容された係合可能状態から引き抜く際に前記突出部に係合する係合部と、
前記クリップ本体において当該クリップ本体に対する前記係合部の突出側に対して反対側の前記仮想直線に沿う両端部にそれぞれ設けられて前記クリップ本体に対して突出する湾曲突出部であって、前記クリップ本体を前記係合可能状態から引き抜く際に前記第2の被固定物に形成される湾曲する角部に係合するとともに前記両端部のうち他端部に向かって湾曲状に突出する湾曲突出部と
を備え、
前記変位部は、前記クリップ本体に対する前記係合部の突出量が小さくなるように前記クリップ本体側に弾性変形可能である
ことを特徴とするクリップ。
積層した状態で固定される複数の被固定物のうち最下層に配置される第1の被固定物に形成され積層方向に突出する突出部に第1の貫通孔が設けられ、前記複数の被固定物のうち最上層に配置される第2の被固定物に第2の貫通孔が設けられ、前記突出部が前記第2の貫通孔を通った状態において、第1の貫通孔と前記第2の被固定物との間に収容可能なクリップ本体を備え、
前記クリップ本体に想定されるとともに前記クリップ本体が前記第1の貫通孔に収容された状態において前記第1の貫通孔の貫通方向に沿う仮想直線に沿って前記クリップ本体の両端部のそれぞれに設けられて他方側に延びる変位部と、
前記変位部の先端側に設けられて前記クリップ本体に対して突出する係合部であって、前記クリップ本体を前記仮想直線が前記第1の貫通孔の貫通方向に沿う姿勢で前記第1の貫通孔内に収容された係合可能状態から引き抜く際に前記突出部に係合する係合部と、
前記クリップ本体において当該クリップ本体に対する前記係合部の突出側に対して反対側の前記仮想直線に沿う両端部にそれぞれ設けられて前記クリップ本体に対して突出する第1の突出部であって、前記クリップ本体を前記係合可能状態から引き抜く際に前記第2の被固定物に形成される角部に係合するとともに前記両端部のうち他端部に向かって突出する第1の突出部と
前記クリップ本体において当該クリップ本体に対する前記係合部の突出側に対して反対側に設けられて前記クリップ本体に対して突出する第2の突出部と、
を備え、
前記変位部は、前記クリップ本体に対する前記係合部の突出量が小さくなるように前記クリップ本体側に弾性変形可能である
ことを特徴とするクリップ。
前記変位部において前記係合部よりも前記先端側に設けられて前記クリップ本体に対して前記係合部側に突出し、前記先端に向かうにつれて前記クリップ本体側に延びる第1の部分を具備し、
前記湾曲突出部において当該湾曲突出部に対して反対側の湾曲突出部側の端部には、前記反対側の湾曲突出部側に進むにつれて前記クリップ本体側に延びる第2の部分が設けられる
ことを特徴とする請求項1に記載のクリップ。
前記変位部において前記係合部よりも前記先端側に設けられて前記クリップ本体に対して前記係合部側に突出し、前記先端に向かうにつれて前記クリップ本体側に延びる第1の部分を具備し、
前記第1の突出部において当該第1の突出部に対して反対側の第1の突出部側の端部には、前記反対側の第1の突出部側に進むにつれて前記クリップ本体側に延びる第2の部分が設けられる
ことを特徴とする請求項2に記載のクリップ。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の第1の実施形態に係るクリップを、
図1〜8を用いて説明する。
図1は、本実施形態のクリップ30が、第1の板部材10と、第2の板部材20とを互いに固定している状態を示す斜視図である。第1,2の板部材10,20は、互いに固定する複数の被固定物の一例である。
図2は、第1,2の板部材10,20からクリップ30が分離された状態を示す斜視図である。
図3は、第1,2の板部材10,20が分解された状態を示す斜視図である。
【0013】
図1〜3に示すように、第1,2の板部材10,20は、互いに板形状である。
図1,2に示すように、第1,2の板部材10,20は、互いに重ねられた状態でクリップ30によって互いに固定されている。
図3に示すように、第1の板部材10は、第1,2の板部材10,20の積層方向に沿って一端に配置され、第2の板部材20は、積層方向に沿って他端に配置される。
【0014】
本実施形態では、積層方向Aに沿って第2の板部材20から第1の板部材10に向かう方向を下方向とし、逆に第1の板部材10から第2の板部材20に向かう方向を上方向として上下方向を定める。本実施形態では、第1の板部材10は、最下層に配置され、第2の板部材20は、最上層に配置されることになる。
【0015】
図3に示すように、第1の板部材10には、突出部11が形成されている。突出部11は、第1,2の板部材10,20の積層方向Aに平行に突出している。突出部11は、略直方体形状である。突出部11を突出方向に垂直な方向(後述する貫通方向B)に見る正面形状が略四角形である。第2の板部材20には、第1の板部材10に重ねられたときに突出部11が通る第2の貫通孔21が形成されている。
【0016】
第2の貫通孔21の平面形状は、突出部11が嵌る略四角形である。突出部11が第2の貫通孔21に収容された状態では、第2の貫通孔21の内面と突出部11との間に隙間がなく、または、第2の貫通孔21内に突出部11を挿入する際に必要な小さな隙間が形成されている。
【0017】
図2に示すように、突出部11は、先端部12が第2の貫通孔21から出る大きさを有している。突出部11には、第1の貫通孔13が形成されている。第1の貫通孔13は、突出方向に垂直な方向に突出部11を貫通している。
図3に示すように、第1の貫通孔13は、略四角形である。第1の貫通孔13の上面14は、上下方向につまり積層方向Aに垂直な平面である。また、突出部11の周面15は、上下方向に平行な平面である。
【0018】
図8は、第1,2の板部材10,20がクリップ30によって互いに固定された状態において、第1,2の板部材10,20の一体物を下方からみた状態を示す下面図である。
図1,8に示すように、第1,2の板部材10,20は、クリップ30によって互いに固定された状態では、第1の板部材10の下面16と第2の板部材20の下面20aとが互いに面一になる。
【0019】
図2,3に示すように、第2の板部材20は、第1の板部材10に重なる積層部23と、第1の板部材10に対して並ぶ並列部24とを有している。第2の貫通孔21は、積層部23に形成されている。
図8では、第1の板部材10の下面16と並列部24の下面24aとが互いに並んでいるとともに面一である状態を示している。なお、下面24aは、下面20aの一部である。
【0020】
このため、第2の板部材20において積層部23と並列部24とは、第1,2の板部材10,20の積層方向に互いに異なる位置に配置されている。具体的には、積層部23は、並列部24に対して上側に位置している。積層部23と並列部24とを連結する連結部は、積層部23の上面23aと並列部24の上面24bとの間に積層方向に段差を形成する段差部25となっている。上面23a,24bは、上下方向つまり積層方向Aに垂直な平面である。
【0021】
図3に示すように、積層部23の周縁部23bにおいて、第1の貫通孔13の貫通方向B、つまり第1の貫通孔13の内面の延びる方向に第2の貫通孔21を挟んで両側の部分は、段差部25の縁部23cと、この縁部23cと対向する縁部23dである。縁部23dは、縁部23cに向かって突出するように湾曲している。縁部23cは、縁部23dに向かって開くように湾曲している。本実施形態では一例として、縁部23d,23cは、互いに平行である。第2の貫通孔21の中心P1は、縁部23c,23d間の中心である。縁部23c,23dは、ともに、角部の一例である。
【0022】
図4は、クリップ30を示す斜視図である。
図4に示すように、クリップ30は、クリップ本体40と、一対の腕部50と、第1のリブ60とを備えている。クリップ本体40は、平面形状が略長方形状であり、一方向に長い形状である。本実施形態では、クリップ本体40が延びる方向を第1の方向Cとする。
【0023】
クリップ本体40の内側には、第1の方向Cに沿って中心部に、後述する第1のリブ60が設けられており、第1のリブ60を挟んで第1の方向Cの両側に、それぞれ貫通孔61が形成されている。貫通孔61は、クリップ本体40を厚み方向に貫通している。
【0024】
腕部50は、腕部本体51と、第1の傾斜部52と、係合部53とを備えており、クリップ本体40において第1の方向Cに沿う両端部41,42に1つずつ設けられている。言い換えると、クリップ本体40に対して第1の方向Cに平行な仮想直線Vを設定すると、腕部50は、クリップ本体40において仮想直線Vに沿う両端部に形成される。
【0025】
一方の腕部50と他方の腕部50とは、第1のリブ60を挟んで互いに対称な形状をしている。このため、クリップ本体40において第1の方向Cの一端部41に形成される腕部50を代表して説明する。なお、クリップ本体40の他端部42に形成される腕部50においても同一の符号を付す。
【0026】
図5は、クリップ30を、
図4とは異なる角度から示す斜視図である。
図5は、クリップ30の下部を示している。
図4に示すように、腕部本体51は、クリップ本体40において第1の方向Cに沿う一端部41に設けられている。腕部本体51は、一端部41から貫通孔61を通って第1のリブ60に向かって突出している。クリップ本体40において第1の方向Cに沿う縁部62と腕部本体51との間には、それぞれ、隙間S1が形成されている。
【0027】
腕部本体51の第1のリブ側の端部は、第1のリブ60に近づくにつれてクリップ本体40から離れるように、言い換えるとクリップ本体40において腕部50が設けられる端部に対して反対側の端部に向かうにつれてクリップ本体40から離れるように、クリップ本体40の貫通孔61の貫通方向に対して傾斜している。貫通孔61の貫通方向は、第1の方向Cに対して垂直な方向であり、第2の方向Dとする。本実施形態では、腕部本体51がクリップ本体40から離れる方向を上方向としてクリップ30の上下方向を定める。
【0028】
図4に示すように、第1の傾斜部52は、腕部本体51の先端部に形成されている。第1の傾斜部52は、第1のリブ60に対して離れている。言い換えると、第1の傾斜部52と第1のリブ60との間には隙間S2が形成されている。第1の傾斜部52の上面は、第1の傾斜面52aになっている。第1の傾斜面52aは、第1,2の方向C,Dに対して垂直な第3の方向Eに平行な平面であるとともに、上下方向つまり第2の方向Dに対して第1のリブ60に向かうにつれて下がるように傾斜している。言い換えると、第1の傾斜面52aは、先端側に向かうにつれてクリップ本体40側に延びる。
【0029】
係合部53は、第1の傾斜部52の上部に形成されている。第1の傾斜部52は、腕部50において、係合部53よりも腕部50の先端側に位置している。係合部53において第1のリブ側に面する面は、係合面53aになっている。係合面53aは、第1の方向Cに対して垂直な面である。腕部50の上面50aは、クリップ本体40の一端部41に向かうにつれて下がるように第2の方向Dつまり上下方向に対して傾斜している。
【0030】
腕部50は、第1の傾斜部52を下方に押し込むと、腕部50においてクリップ本体40との連結部など第1の傾斜部52以外の部分が弾性変形することによって、第1の傾斜部52と係合部53とが下方に変位する。つまり、係合部53と第1の傾斜部52とは、クリップ本体40に対して弾性的に変位可能である。第1の傾斜部52を下方に押し込む荷重が取り除かれると、腕部50の弾性力によって、第1の傾斜部52と係合部53とは、元の位置に戻る。本実施形態では、クリップ30は、樹脂で形成されているため、第1の傾斜部52は、弾性変位しやすい。
【0031】
図6は、
図1に示されるF6−F6線に沿って示す、クリップ30と第1,2の板部材10,20の断面図である。
図6は、クリップ30と第1,2の板部材10,20とを、突出部11の第1の貫通孔13において積層方向Aと貫通方向Bとに垂直な幅方向Fの中心P2を通る貫通方向Bに平行な断面線にそって切断している状態を示している。
【0032】
図6に示す状態では、クリップ30の上下方向と第1,2の板部材10,20の上下方向、つまり積層方向Aと第2の方向Dとが一致している。さらに、クリップ30の第1の方向が第1の貫通孔13の貫通方向Bに平行であり、かつ、クリップ30の第3の方向Eが突出部11の幅方向Fと平行な状態である。
【0033】
図5,6に示すように、クリップ本体40の下端部55において第1の方向Cの両端部56,57には、第2の傾斜部58が形成されている。第2の傾斜部58は、クリップ本体40に対して下方に向かって突出している。第2の傾斜部58は、第2の傾斜面58aを有している。第2の傾斜面58aは、第2の傾斜部58において他方側、つまり、当該第2の傾斜部58に対して他方側の第2の傾斜部58側の面である。第2の傾斜面58aは、貫通孔61に向かって延びている。より詳しくは、他方の第2の傾斜部58に近づくにつれて上方つまりクリップ本体40に向かうように上下方向つまり積層方向Aに対して傾斜している。
【0034】
また、第2の傾斜面58aは、他方の第2の傾斜部58側に向かって突出するように湾曲している。つまり、第2の傾斜面58aは、上記のように積層方向Aに対して傾斜するとともに、他方の第2の傾斜部58側に向かって突出する形状である。
図7は、クリップ30を下方から上方に向かって見た状態を示す下面図である、
図7に示すように、第2の傾斜面58aは、他方の第2の傾斜部58に向かって突出している。
【0035】
第2の傾斜面58aの形状をさらに具体的に説明する。
図6に示すように、第2の傾斜面58aが切断された状態では、第2の傾斜面58aを示す線は、直線となる。同様に、第2の傾斜面58aにおいて
図6に示す以外の部位は、いずれの箇所も、
図6と同様に切断された状態では、
図6に示すように直線となる。また、
図7に示すように、第2の傾斜面58aは、第3の方向Eに沿う中央部が、他方の第2の傾斜部58側に向かって突出する形状である。
【0036】
ここで、クリップ本体40の大きさ、腕部50の大きさについて、説明する。
図6に示すように、クリップ30は、突出部11が第2の貫通孔21に嵌合した状態で、第1の方向Cが第1の貫通孔13の貫通方向Bと平行になる姿勢で第1の貫通孔13の上面14と第2の板部材20との間に挿入されることによって、第1,2の板部材10,20を互いに固定する。
【0037】
クリップ本体40は、第1の方向Cに、一方の第2の傾斜部58の第2の傾斜面58aが第2の板部材20の縁部23d上に配置されるとともに、他方の第2の傾斜部58の第2の傾斜面58aが段差部25の縁部23c上に配置される大きさを有している。
【0038】
腕部50は、一方の第1の傾斜部52が下方に変位した状態でこの第1の傾斜部52の第1の傾斜面52aが第1の貫通孔13の上面14の縁部14aに当接するとともに、他方の第1の傾斜部52が下方に変位した状態でこの第1の傾斜部52の第1の傾斜面52aが第1の貫通孔13の上面14の他方の縁部14aに当接する大きさを有している。
【0039】
このように、
図6に示される状態では、第2の傾斜面58aは、第2の板部材20の縁部23b,23cに当接しており、第1の傾斜面52aは、第1の貫通孔13の上面14の縁部14aに当接している。そして、第1の傾斜部52は、下方に変位しており、それゆえ、腕部50の弾性力によって上方に付勢されている。このため、第1の傾斜面52aは、縁部14aに対して下方から付勢された状態で当接している。
【0040】
また、縁部23c,23dは湾曲しているが、第2の傾斜面58aが他端側に向かって突出する形状であることによって、第2の傾斜面58aのいずれかの位置と、縁部23c,23dとが接触する。言い換えると、少なくとも、第2の傾斜面58aのいずれかの1点と、縁部23c,23dのそれぞれのいずれかの部分に接触する。
【0041】
図7中、第2の傾斜面58aに接触する縁部23c,23dを2点鎖線で示している。
図7では、第2の傾斜面58aが、湾曲する23c,23dに接触している状態を示している。
【0042】
図4に示すように、第1のリブ60は、クリップ本体40の第1の方向Cの中心に設けられており第3の方向Eに延びている。第1のリブ60の両側には、腕部50の第1の傾斜部52が上下方向つまり第2の方向Dに変位する際に、第1の傾斜部52に接触しないよう考慮された凹部63が形成されている。
図6に示すように、クリップ30が第1,2の板部材10,20を互いに固定している状態では、第1のリブ60は、第1の貫通孔13内に嵌合される。
図1に示すように、クリップ本体40の第3の方向Eに沿う幅L1は、第1の方向Cに沿っていずれの位置でも一定であり、
図3に示すように第1の貫通孔13の幅方向Fに沿う幅L2と同じである、または、クリップ30を第1の貫通孔13内に挿入することを考慮して幅L1は第1の貫通孔13の幅L2に対して若干小さい。第1のリブ60においても、第3の方向Eに沿う幅は、L1となる。このように、第1のリブ60が第1の貫通孔13に嵌合するとは、本実施形態では、上記のように、L1=L2、または、L2がL1に対して若干大きいことである。また、第1のリブ60は、クリップ本体40に対して上方に突出している。
【0043】
つぎに、クリップ30を第1の貫通孔13に組み付ける動作の一例を説明する。まず、
図2示すように、第1の板部材10の突出部11を第2の板部材20の第2の貫通孔21内に嵌合させる。
【0044】
ついで、クリップ30の姿勢を調整する。具体的には、クリップ30の上下方向と第1,2の板部材10,20の上下方向とを合わせるとともに、クリップ30の第1の方向Cと第1の貫通孔13の貫通方向Bとを合わせてクリップ30と第1の貫通孔13との位置を合わせる。
【0045】
ついで、クリップ30を第1の方向Cに沿って第1の貫通孔13内に押し込む。このとき、両腕部50のうち押し込み方向に沿って前に配置される腕部50の上面50aが第1の貫通孔13の上面14の縁部14aに当接する。当接した状態からさらにクリップ30を押し込むと、腕部50は、縁部14aに下方に押圧されることによって、下方に弾性変形する。言い換えると、腕部50が下方に押し込められる。クリップ30を第1の貫通孔13に押し込むにつれて、腕部50がさらに下方に押し込められる。
【0046】
また、押し込み方向に沿って後ろに位置する腕部50では、第1の傾斜部52の傾斜面52aが第1の貫通孔13の上面14の縁部14aに当接するようになる。この状態からクリップ30が第1の貫通孔13内にさらに押しこまれると、押し込み方向に沿って後ろの腕部50では、第1の貫通孔13の縁部14aが第1の傾斜面52aを下方に押し込むようになるので、押し込み方向に沿って後方に位置する腕部50は下方に押し込まれる。
【0047】
そして、
図6に示すように、第1の貫通孔13の上面14の縁部14aが押し込み方向に沿って前に位置する腕部50の係合部53を乗り上げると、押し込み方向に沿って前に位置する腕部50は、腕部50の弾性力によって、第1の貫通孔13の上面14の縁部14aが第1の傾斜面52aに当接するまで上方に戻る。
【0048】
なお、上記したように、
図6に示す状態では、両腕部50は、第1の貫通孔13の上面14の縁部14aに押されることによって下方に変位している状態であり、それゆえ、両第1の傾斜面52aは、腕部50の弾性力によって第1の貫通孔13の上面14の縁部14aを下方から上方に向かって付勢している。
【0049】
クリップ30は、押し込み方向に沿って前に配置される腕部50の第1の傾斜面52aが第1の貫通孔13の上面14の縁部14aを上方に付勢することによって、縁部14aが第1の傾斜面52aに沿って下方にガイドされるようになり、クリップ30は押し込み方向に進むように付勢される。
【0050】
一方、押し込み方向に沿って後ろに配置される腕部50の第1の傾斜面52aが第1の貫通孔13の上面14の縁部14aを下方から上方に向かって付勢されることによって、縁部14aが第1の傾斜面52aに沿って下方にガイドされるようになり、クリップ30は、押し込み方向とは反対方向に進むように付勢される。
【0051】
両腕部50の構造は同じであり、それゆえ、両第1の傾斜面52aにおける第1の貫通孔13の上面14の縁部14aに対する付勢力も同じとなるので、クリップ30は、突出部11に対して、上記の挿入方向に進むように付勢する付勢力と、挿入方向に対して反対方向に進むように付勢する付勢力とが均衡する位置に位置決められる。つまり、クリップ30は、第1のリブ60が第1の貫通孔13内に嵌合する状態に位置決められる。
【0052】
なお、クリップ30の形状は、第1のリブ60を挟んで第1の方向Cに対称な形状であるので、クリップ30において第1の方向Cの両端部41,42のどちらからでも第1の貫通孔13に挿入することができる。
【0053】
図6の状態からクリップ30を引き抜こうとすると、引き抜き方向に沿って後の腕部50は、第1の傾斜面52a上を第1の貫通孔13の上面14の縁部14aが相対的に係合部53に向かって進むように、下方に押し込まれる。
【0054】
そして、係合部53の係合面53aが突出部11の周面15に第1の方向Cに当接する。係合面53aと周面15とは、互いに平行である。このため、係合面53aは、引き抜き方向に周面15に当接することによって周面15に係合するため、クリップ30がそれ以上引き抜かれることが防止される。このように、クリップ30を引き抜こうとすると、係合部53の係合面53aと突出部11の周面15とが係合する状態は、本発明で言う係合可能状態の一例である。
【0055】
つぎに、クリップ30を第1の貫通孔13から引き抜く際の動作の一例を説明する。まず、両腕部50のうち一方の係合部53を、係合面53aが引き抜き方向に第1の貫通孔13の周面15に接触しない位置まで押し込む。ついで、押し込んだ状態のまま、クリップ30を引き抜く。このことによって、係合部53の係合面53aと周面15とが引き抜き方向に係合することが解除されているので、クリップ30を引き抜くことができる。
【0056】
このように構成されるクリップ30では、第1の板部材10に突出部11を形成し、第2の板部材20に第2の貫通孔21を形成するだけで、当該クリップ30を用いて第1,2の板部材10,20を互いに固定することができる。このため、第1,2の板部材10,20に対して複雑な形状を要求せずに、第1,2の板部材10,20を互いに固定することができる。
【0057】
例えば、自動二輪車のカウルを構成する2つの部材をクリップ30を用いて互いに固定する場合であっても、カウルを構成する2つの部材の一方に突出部11と同様の突出部を形成し、他方の部材に第2の貫通孔21と同様の貫通孔を形成するだけで、これら2つの部材をクリップを用いて互いに固定することができる。さらに、突出部と貫通孔を形成するだけであるので、カウルの外観の美観を損なうことがない。
【0058】
このように、複数の被固定物を互いに固定することによってできる一体物を多色成形することがないので、多色成形に要求される高い技術に起因する一体物のデザインの幅が狭まるということがない。
【0059】
また、係合部53がクリップ本体40に対して弾性的に変位可能に支持されることによって、つまり、腕部50が弾性変形可能であることによってクリップ30を第1の貫通孔13から引き抜く際には、係合部53を押し込むだけでよい。そして、クリップ30が第1の貫通孔13から引き抜かれたあとは、腕部50の弾性力によって、係合部53の位置は、元の位置に戻る。このため、クリップ30の引き抜き動作を簡単にすることができる。なお、腕部50は、係合部53を突出部11の周面15との係合が解除される位置まで変位する際の変位範囲は、弾性変形の範囲である。このため、腕部50に塑性変形が残ることはない。
【0060】
また、第1の傾斜部52が第1の貫通孔13の上面14の縁部14aに対して下方から上方に向かって付勢されることによって、反作用によりクリップ本体40は下方に付勢される。このため、第2の傾斜部58の第2の傾斜面58aが第2の板部材20の縁部23b,23cに対して押し付けられるように付勢されるので、第2の傾斜面58aと縁部23b,23cとが常に互いに接触する状態が保たれる。このため、クリップ30が第1,2の板部材10,20に対してがたつくことが抑制される。
【0061】
また、クリップ本体40において第2の板部材20に当接する部位を第2の傾斜面58aにすることによって、両第2の傾斜面58aは、縁部23b,23cの間隔に応じて縁部23b,23cとの接触箇所を変更することによって同時に縁部23b,23cに接触することができる。このため、第1,2の板部材10、20に対してクリップ30ががたつくことがより一層抑制される。
【0062】
また、第2の傾斜面58aが、他方の第2の傾斜部58に向かって突出する形状を有することによって、縁部23c,23dが湾曲する状態であっても第2の傾斜面58aの少なくとも1点が縁部23c,23dに接触するようになる。なお、本実施形態では、縁部23c,2dは、一例として、互いに平行であるとしたが、縁部23c,23dが互いに平行でない場合であっても、第2の傾斜面58aの少なくとも1点が縁部23c,23dの接触することができるので、第2の傾斜面58aと縁部23cまたは縁部23dに接触することがなくクリップ30が不安定になることがない。
【0063】
第1のリブ60が第1の貫通孔13内に嵌合することによって、第1,2の板部材10,20間に相対的なズレが生じることを抑制できる。この点について、具体的に説明する。
【0064】
第1,2の板部材10,20の幅方向Fに沿う相対的なズレに対しては、第1のリブ60が第1の貫通孔13の内面に接触することによって、ズレが大きくなることを抑制している。第1のリブ60は、第1の貫通孔13内に幅方向Fに嵌合しているので、第1,2の板部材10,20の幅方向Fに沿う相対的なズレが大きくなるこがより一層抑制される。第1,2の板部材10,20の上下方向に沿う相対的な位置ズレは、第1のリブ60が第1の貫通孔13の上面14に接触することによって、ズレが大きくなることが抑制される。第1のリブ60は、クリップ本体40に対して上方に突出している。このため、第1のリブ60と第1の貫通孔13の上面14との間の隙間を小さくできるので、第1,2の板部材10,20間の相対ズレをより一層小さくすることができる。
【0065】
さらに、第1のリブ60が形成されることによりクリップ30の剛性が向上するとともに、第1,2の板部材10,20間に相対ズレが生じた場合、ズレの原因となる荷重がクリップ30において剛性が高い第1のリブ60に作用することにより、クリップ30の変形を小さく抑えることができるので、第1,2の板部材10,20の相対的なズレをより一層抑制することができる。
【0066】
つぎに、本発明の第2の実施形態に係るクリップを、
図9〜13を用いて説明する。なお、第1の実施形態と同様の機能を有する構成は、第1の実施形態と同一の符合を付して説明を省略する。本実施形態では第1,2の板部材10,20と、クリップ30とが、第1の実施形態と異なる。
【0067】
図9は、本実施形態のクリップ30が第1,2の板部材10,20を互いに固定している状態を示す斜視図である。
図10は、第1,2の板部材10,20からクリップ30が分離された状態を示す斜視図である。なお、
図10では、第1,2の板部材10,20は互いに組み付いた状態であり、第1の板部材10の突出部11が第2の板部材20の第2の貫通孔21を通っている状態を示している。
図11は、第1,2の板部材10,20が互いに分離した状態を示す斜視図である。
【0068】
図9〜11に示すように、第1の板部材10は、第1,2の板部材10,20が互いに積層されたときに第2の板部材20側に向かって開口するように湾曲する形状である。第2の板部材20は、第1の板部材10にならって湾曲する形状である。ここで言うならう形状とは、第1,2の板部材10,20が積層されたとき、積層方向Aに第1の板部材10と第2の板部材20との間に隙間ができないように、互いに面接触する形状であることを示す。このため、第2の板部材20の上面23aは、上方に向かって開口するように湾曲する形状である。
【0069】
また、第1,2の板部材10,20の縁部23c,23dが第1の実施形態と異なる。本実施形態では、縁部23c,23dは、突出部11の第1の貫通孔13の貫通方向Bに対して垂直、つまり第1の貫通孔13の内面の延びる方向に対して垂直に直線状に延びている。貫通方向Bは、積層方向Aに垂直な方向である。縁部23d,23cは、互いに平行である。また、第2の貫通孔21の中心P1は、貫通方向Bに沿って縁部23c,23d間の中心である。第1,2の板部材10,20において上記以外の点は、第1の実施形態と同じである。
【0070】
図12は、本実施形態のクリップ30を、下方から見た状態を示す斜視図である。
図12に示すように、クリップ30は、突出部90を備えている。突出部90は、第1のリブ60の下方に設けられている。突出部90は、下方に向かって湾曲状に突出している。
【0071】
図13は、クリップ30が第1,2の板部材10,20を互いに固定している状態であり、クリップ30が第1,2の板部材10,20を固定している状態を第1の実施形態の
図6と同様に切断して示す断面図である。
図12,13に示すように、突出部90の内部には、空間Rが形成されている。本実施形態では、一例として、空間Rは、クリップ本体40の第1の方向Cに沿って2つ形成されている。なお、突出部90は、クリップ本体40の第1の方向Cに沿う中心を挟んで対称な形状である。
【0072】
両空間Rは、突出部90を、第3の方向Eに沿って貫通している。このため、空間Rは、突出部90の第3の方向Eに沿う両端面に開口している。突出部90内に一対の空間Rが形成されることによって、突出部90は、比較的薄い壁部91によって空間Rを囲む構造を有する。
【0073】
このため、突出部90は、外側から力が作用すると、当該力に対して壁部91が変形する。なお、突出部90は、クリップ本体40と同じ材料で形成されており、一例として樹脂で形成されている。このため、突出部90は、弾性変形しやすい。空間Rは、突出部90が外部から入力される力によって、破壊または組成変形することなく、弾性変形できるように考慮された大きさを有している。
【0074】
また、本実施形態では、クリップ30は、第2の傾斜部58の第2の傾斜面58aの形状が第1の実施形態と異なる。本実施形態では、第2の傾斜面58aは、貫通孔61に向かって延びており、第3の方向Eに平行な平面であるとともに、他方の第2の傾斜部58に近づくにつれて上方つまりクリップ本体40に向かうように上下方向つまり積層方向Aに対して傾斜している。
【0075】
クリップ本体40は、第1の方向Cに、一方の第2の傾斜部58の第2の傾斜面58aが第2の板部材20の縁部23c上に配置されるとともに、他方の第2の傾斜部58の第2の傾斜面58aが段差部25の縁部23b上に配置される大きさを有している。
【0076】
クリップ30は、第2の傾斜面58aと突出部90以外は、第1の実施形態と同じである。
【0077】
図13に示すように、クリップ30が第1の貫通孔13内に収容されて第1,2の板部材10,20を固定している状態では、クリップ30の30の下面が第2の板部材20の上面23aに対向する。
【0078】
突出部90は、下方に向かって突出しているため、
図13に示すように、クリップ30が第1の貫通孔13内に収容されて第1,2の板部材10,20を互いに固定する状態では、突出部90の突出側先端部は第2の板部材20の上面23aに接触する。
【0079】
クリップ30は、腕部50の付勢力に対する反作用により、下方に付勢される。さらに、突出部90は、上記したように、弾性変形可能に形成されている。このため、突出部90は、クリップ30と第2の板部材20の上面23aとの間の隙間内に収容するように、変形する。
【0080】
突出部90が変形することによって、突出部90の弾性力により、クリップ30は、上方に向かって付勢されるので、クリップ30による、第1,2の板部材10,20の固定力がさらに増大する。なお、
図13中、変形する前の突出部90を、2点鎖線で示す。
【0081】
また、第2の板部材20の上面23aは、上方に向かって開口するように湾曲している。このため、第2の傾斜面58aが縁部23c,23dに接触した状態では、クリップ30の下面と第2の傾斜面58aとの間の隙間が大きくなる。
【0082】
しかしながら、クリップ30と第2の板部材20の上面23aとの間の隙間内に突出部90が収容されることによって、クリップ30と第2の板部材20の上面23aとの間の隙間が大きくなることに起因してクリップ30の姿勢が不安定になることを抑制することができる。
【0083】
なお、第2の実施形態で説明した突出部90は、第1の実施形態のクリップ30に用いられてもよい。
【0084】
また、突出部90は、内部に空間Rが形成されることによって、弾性変形可能に形成されている。他の例としては、例えば、突出部90が弾性変形可能なゴムなどの部材で形成されることによって、弾性変形可能に形成されてもよい。なお、第2の実施形態のように、内部に空間Rを形成することによって弾性変形可能にすることによって、突出部90をクリップ本体40と一体に形成することができるので、より好ましい。
【0085】
第1の実施形態では、第2の傾斜部58は、本発明で言う突出部の一例である。第2の実施形態では、第2の傾斜部58は、本発明で言う第1の突出部の一例であり、突出部90は、第2の突出部の一例である。
【0086】
第1,2の実施形態では、第1の傾斜部52は、本発明で言う第1の部分の一例であり、第2の傾斜面58aは、本発明で言う第2の部分の一例である。
【0087】
第1,2の実施形態では、互いに固定される被固定物の一例として、第1,2の板部材10,20が用いられたが、被固定物は、2つに限定されるものはない。クリップ30は、複数の被固定物を固定することができる。また、第1,2の実施形態では、第1の板部材10は、本発明で言う第1の被固定物の一例であり、第2の板部材20は、本発明で言う第2の被固定物の一例である。
【0088】
この発明は、上述した実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上述した実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより種々の発明を形成できる。例えば、上述した実施の形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除しても良い。さらに、異なる実施形態の構成を組み合わせてもよい。