【実施例】
【0052】
実施例
導入
LDP−02は、α4β7インテグリンに結合するヒト化IgG1モノクローナル抗体であり、ほとんどのTおよびBリンパ球の表面上に存在する細胞表面糖タンパク質である。α4β7は、ホーミング受容体MAdCAM−1との接着相互作用を介して、胃腸粘膜および腸関連リンパ組織へのリンパ球輸送を媒介する。α4β7−MAdCAM−1相互作用を遮断することにより、LDP−02は、血管系から胃腸粘膜への白血球の漸増を阻害し得、したがって、潰瘍性大腸炎およびクローン病などの炎症性腸疾患(IBD)を罹患する患者における炎症性活性に有利な効果を有する。
【0053】
この段落は、完結した2つのLDP−02臨床試験からの情報を示す。これらの試験は、健康な被験体において行なわれた1つの完結した相Iの研究(研究L297−007)および潰瘍性大腸炎(UC)を罹患した患者における1つの完結した相Ib/IIa試験(研究L297−006)を含む。表Iは、各研究を説明する。
【0054】
【表1】
【0055】
実施例1:研究L297-007
「健康な男性ボランティアにおける皮下および静脈内経路により投与されたLDP-02の耐容性、薬動力学および薬物動態学を調査するプラセボ−対照、二重盲検、上昇用量研究」と題された研究L297-007は完了しており、最終的な結果をこのセクションで示す。
【0056】
研究設計
研究L297-007は、健康な男性ボランティアにおける無作為化、二重盲検、プラセボ−対照、上昇単一用量研究であった。全ての封入(inclusion )/排除(exclusion )判定基準に適合する18〜50歳の健康な男性ボランティアを、研究グループにより経時的に研究に登録し、各研究グループ内で、LDP-02またはプラセボ(すなわち、等張性クエン酸ナトリウム緩衝液)を無作為に割り当てて与えた。被験体の危険性を最小にするために、安全性および耐容性を次の用量レベルに増大させる前に各用量レベルで再検討した。治療グループおよび研究のために計画された被験体の数を表2に示す。
【0057】
【表2】
【0058】
研究1日目に、LDP-02またはプラセボを、大腿へのSC(グループ1 SC 用量のみ)または30分間一定速度でのIV注入のいずれかで投与した(グループ1〜4)。安全性評価には、有害事象の記録、身体検査、生命徴候、臨床検査(すなわち、血液学、血液化学、および尿検査)、血漿サイトカインレベル、および12リード心電図(ECG )が含まれた。さらに、これはLDP-02の最初の臨床試験であったので、連続心臓モニタリングを投薬前から投薬の4時間後まで行った。血液サンプルを得て、LDP-02に対する抗- 抗体応答、サイトカインレベル、血清LDP-02濃度(薬物動態学)、およびα4 β7 レセプターおよびリンパ球サブセットの飽和および結合部位占有(薬動力学)を評価した。研究評価を、治療の36日後までの特定の時間に行った。36日目の薬物動態学的および薬力学的(免疫学的)分析の結果の後、プロトコルを修正し、LDP-02を与えた被験体に対してさらに採血できるようにした。これらの採血を用いて、定量できなくなるまで(すなわち、定量の限界未満[BLQ] )LDP-02血清レベルを追跡し、α4 β7 飽和および記憶細胞集団がベースライン(投薬前)レベルに戻ったことを確認した。この修正は、終末相動力学の特徴が36日までに十分に確立されていない高用量グループで特に重要であった。
【0059】
研究結果
薬物動態学
血清LDP-02のアッセイを、確証された細胞ベースアッセイを用いて行った。標準およびサンプルを、α4 β7 抗原を発現する標的細胞株(HUT-78)とともにインキュベートした。洗浄の後、蛍光標識ポリクローナル抗ヒトIgG1を添加した。蛍光強度をフローサイトメトリーにより測定し、LDP-02標準の蛍光強度と比較した。次いで、LDP-02の効果的な血清濃度を、サンプルと既知の濃度のLDP-02で作成した検量線との比較により規定した。
【0060】
LDP-02血清濃度を決定するための血液サンプルを、投薬前、投薬の1、1.5 、3、8、12および24時間後、ならびに3、5、7、8、15、22、および36日後に収集した。LDP-02が36日目に依然として検出可能であることが知られていた場合、レベルがアッセイの定量の限界未満に低下するまでLDP-02を与えた被験体から採血した。LDP-02を与えた14名の被験体の内の13名が、投薬の最大226 日後までの追跡調査採血に関して回復した。
【0061】
個々の患者による時間経過におけるLDP-02濃度およびLDP-02用量グループによる平均薬物動態学的パラメータは、研究L297-007の付録に示す。時間経過における平均LDP-02血清濃度を、全ての治療グループの最終採血に対して
図6にプロットする。
【0062】
【表3】
【0063】
4つの用量グループについて平均単一用量IV薬物動態学的パラメータの値を得た(C
max 、t
1/2z およびAUG )。追跡調査サンプル(すなわち、36日を超えて採取したもの)は、病巣が安全であった場合、濃度−時間プロフィールのいくつかのさらなる特徴付けを可能にした。約10日の2つのより低い用量グループ(0.15および0.5mg/kg)とより高い用量グループ(1.5 および2.5mg/kg)との間のt
1/
2z 値における差異は、より高い用量グループの「真の」終末期が特徴付けられなかったことにおいて説明され得た。より低い用量のLDP-02(0.15および0.5mg/kg)の非区画(non-compartmental)薬物動態学は、充分に特徴付けられ、用量が2.5mg/kgに上昇したときに非線状薬物動態学が明らかになった。
【0064】
LDP-02の薬力学的効果の評価
蛍光活性化細胞分取(FACS)解析を用いて、LDP-02投与の前および後の末梢血リンパ球上のα4 β7 部位の存在を測定した。抗体によって認識されるα4 β7 を検出するために、ビオチン標識ACT-1 、LDP-02のマウスホモログを患者血液サンプルに加え、PE- ストレプトアビジンを用いて検出した。標準化した平均等価可溶性蛍光(MESF)は、検出可能α4 β7 部位の数に比例する。
【0065】
時間経過における血清α4 β7 結合(MESF値および投与後の各時間点でのベースラインのパーセンテージ)は、個々の被験体および研究L297-007の付録の治療グループによって示される。
【0066】
FACS分析により測定されるように、各治療に関する時間経過における(すなわち、36日目まで)リンパ球上のα4 β7 インテグリンの平均飽和を
図7に示す。
図7から理解されるように、全てのLDP-02用量の投与後、少なくとも2週間、リンパ球上に遊離α4 β7 結合部位は検出されなかった。約7日目〜22日目に、0.15mg/kg のIV用量グループおよび0.15mg/kg のSC用量グループのα4 β7 シグナルは、ベースラインに戻り始めた。22日目〜36日目に、0.5mg/kgのIV用量グループのα4 β7 シグナルはベースラインに戻り始めた。より高い用量のLDP-02研究(1.5 および2.5mg/kg)でのα4 β7 シグナルの喪失は、単一IV投薬後36日よりも長く持続した。2.5mg/kg用量グループに関して、α4 β7 結合飽和は70日目まで続いた(研究L297-007の付録のデータを参照)。
【0067】
リンパ球上の遊離α4 β7 結合部位がベースライン(投薬前)レベルに戻っていることを確認するために、約200 研究日までの追跡調査採血を行った。遊離α4 β7 部位の最初の再現は、LDP-02血液濃度が検出不可能になったときに起こるようであった。
【0068】
結論
健康な男性被験体への0.15、0.50、1.50および2.5mg/kgのIV用量ならびに0.15mg/kg のSC用量でのLDP-02の投与は良好に耐容性を示した。
【0069】
全てのLDP-02用量の投与の後、リンパ球上の遊離α4 β7 結合部位は投薬後約2週間検出されなかった。α4 β7 結合部位の飽和は、0.15mg/kg のIVグループについて投与後約2週間および0.15mg/kg のSCおよび0.5mg/kgのIVグループについて投薬後約3週間継続した。効果の持続期間は、1.5mg/kgのIV用量で1ヶ月以上持続し、2.5mg/kgのLDP-02のIVで約70日目まで継続した。36日後に得られた追跡調査サンプルは、遊離α4 β7 結合部位の発現がベースライン(投薬前のレベル)に戻ったことを示した。LDP-02に対する抗イディオタイプ抗体は惹起されず、体液性免疫応答を開始しないことを示した。用量を2.5mg/kgまで増大させると、より低用量のLDP-02(0.15および0.15mg/kg )の非区画薬物動態学は明らかになった。
【0070】
研究L297-007の付録
治療グループによる被験体による時間経過におけるLDP-02血清濃度。
個々の被験体からのデータを表4〜9に示す。
【0071】
【表4】
【0072】
【表5】
【0073】
【表6】
【0074】
【表7】
【0075】
【表8】
【0076】
【表9】
【0077】
研究L297-007:個々の患者からの治療グループデータによる平均薬物動態学的パラメータを表10〜14に示す。
【0078】
【表10】
【0079】
【表11】
【0080】
【表12】
【0081】
【表13】
【0082】
【表14】
【0083】
L297-007:治療グループによる被験体による時間経過における血清α4 β7 結合。個々の患者からのデータを表15〜20に示す。各被験体について、血液サンプリングの時間、サンプルのMESFおよびベースライン(投薬前)MESFの%を示す。
【0084】
【表15】
【0085】
【表16】
【0086】
【表17】
【0087】
【表18】
【0088】
【表19】
【0089】
【表20】
【0090】
実施例2.研究L297-006
「中程度に重篤な潰瘍性大腸炎を有する患者におけるLDP-02の安全性、耐容性、薬動力学、薬物動態学、および有効性を測定するための単一用量フェーズIb/IIa、プラセボ対照、無作為化、二重盲検研究」と題された研究は完了しており、ある最終的な結果をこのセクションで示す。
【0091】
研究原理
健康なボランティアにおけるフェーズI試験(実施例1.研究L297-007)からの結果は、0.15mg/kg のSCおよびIV、0.5mg/kgのIV、1.5mg/kgのIV、および2.5mg/kgのIVの用量のLDP-02が安全であり、充分に耐容性であることを示した。さらに、0.15mg/kg のIVまたはSC、および0.5mg/kgのIVの用量は、約100 〜130 時間のt
1/2 を有することを示し、フローサイトメトリーデータは、未結合のα4 β7 が投薬後約2週間で0.15mg/kg の用量グループに再び現れ始めることを示した。これらのデータに基づいて、0.15mg/kg のSC、0.15mgのIV、0.5mg/kgのIV、および2.0mg/kgのIVのLDP-02用量を、潰瘍性大腸炎を有する患者における初期の研究において使用するために選択した。LDP-02の各用量が、次の用量レベルへの増大の前に、安全であり、良好に耐容性であることを決定するためにこの研究を設計した。
【0092】
研究設計
前記研究は、中程度に重篤な潰瘍性大腸炎を有すると診断された患者における無作為化、二重盲検、プラセボ−対照、上昇単一用量研究であった。肛門縁から25cm程度の最小の疾患を有すると潰瘍性大腸炎の診断を考証された患者が、潜在的に研究に適格であった。Truelove-Witts判定基準(Br Med J; 2: 1042-1048 (1955) )により規定されるような重篤な潰瘍性大腸炎を有する患者は除外した。全ての封入/排除判定基準に適合した潰瘍性大腸炎患者を、4つの研究グループに経時的に登録し、各研究グループ内で、LDP-2 またはプラセボ(すなわち、0.9 %塩化ナトリウム緩衝液)を無作為に割り当てて与えた。治療グループおよび登録された被験体の数を表21に示す。
【0093】
【表21】
【0094】
研究投薬(LDP-02またはプラセボ)を、大腿へのSCまたは30分間のIV注入のいずれかにより1日目に投与した。安全性評価には、有害事象の記録、身体検査、生命徴候、臨床検査(すなわち、血液学、血液化学、および尿検査)、血漿サイトカインレベル、およびECG が含まれた。血液を種々の時間点で採取し、LDP-02血清濃度を測定し、末梢血リンパ球上のα4 β7 結合レセプターを飽和し、ブロックするLDP-02の有効性を評価した。大腸の炎症を減少させるLDP-02の有効性を、臨床疾患観察、内視鏡外観、組織病理学、および免疫組織化学により測定した。
【0095】
研究結果
患者整理および個体グループ統計学
中程度の重篤度の潰瘍性大腸炎を有する29名の患者を研究に参加させ、28名が試験を完了した。1名の患者は、スクリーニング時にClostridium difficile 毒素陽性であることが見出されたが、検査結果の報告が遅れたため、前記患者を試験に参加させ、2.0mg/kgのIVのLDP-02を与えた。研究室結果が得られてから、患者を抗体で処置し、他の患者と交替させた。研究を中止した患者は他にはいなかった。患者を時間経過にともなって研究に補充したので、ベースライン潰瘍性大腸炎病歴に関して治療グループを平均化する試みは行なわなかった。このようにして、潰瘍性大腸炎疾患の重篤度および持続期間ならびに潰瘍性大腸炎の以前の薬物治療は、患者間および治療グループ間で異なっていた。これらのデータを表22に示す。
【0096】
【表22】
【0097】
疾患測定
これは、本来、用量範囲安全性および薬物動態学研究であったが、治療の効果を評価するために種々のパラメータを測定した。有効性評価には、改変Baron (内視鏡検査)スコアリングシステム、Mayo臨床疾患活性指数スコア、Powell-Tuck 疾患活性指数スコア、便通の頻度、および炎症性腸疾患質問票が含まれた。これらのパラメータに関するベースラインから30日目までの変化を表23に示す。30日目の評価がない患者については、得られた最後のベースライン後観察を30日に進ませて行った。
【0098】
【表23】
【0099】
表23に示される結果から理解されるように、種々の治療グループ間で応答に変動があった。0.5mg/kgのIVを与えた患者は、最高の応答を有しているようであった;中央内視鏡重篤度スコアは、2グレード減少し、Mayo臨床スコアは、便通頻度の減少とともに10ポイント減少した。0.5mg/kgのIVを与えた5名の患者の内の3名は、改変Baron S字結腸鏡検査スコアにおいて2ポイントの改善を有しており、内視鏡的応答と考えられた;2.0mg/kgのIVおよび0.15mg/kg のSCのグループの両方において1名のみの患者(1グループ当たり治療した総数5名と比べて)が内視鏡的応答を有していた。プラセボグループもまた、S字結腸鏡検査スコアおよびMayo臨床スコアにおける改善を経験したが、両方とも0.5mg/kgのIVグループと比べると規模は小さかった。8名の患者の内の2名は内視鏡的応答を経験した。
【0100】
30日目の改変Baron S字結腸鏡検査スコアおよびMayo臨床スコアにおいてゼロとして規定した、完全に寛解した患者の数を表24に報告する。
【0101】
【表24】
【0102】
プラセボグループの患者は誰も完全な寛解を経験せず、一方、LDP-02を与えたグループの2名の患者は完全な寛解を有していた。2名の患者は両方とも、同じグループであった;両方の患者には0.5mg/kgのLDP-02を単一投与した。前記患者の一方は、メサラミン治療を同時に与え、他方には低用量コルチコステロイド(1日当たり経口で20mgプレドニゾン)を同時に与えた。
【0103】
薬物動態学
血清におけるLDP-02のアッセイを、以前に記載されるようにCytometry Associates, Inc.により行った(研究L297-007)。注入の完了する前および直後(1日目)、および2、3、5、10、14、21、30および60日目に血液サンプルを収集し、LDP-02の薬物動態学的プロフィールを評価した。
【0104】
個々の患者による時間経過におけるLDP-02濃度およびLDP-02用量による平均薬物動態学的パラメータを研究L296-006の付録に示す。
【0105】
図8から理解されるように、0.15mg/kg のIVおよびSCグループのLDP-02の血清レベルは、投薬の約20日後に<1.0 μg/mLに低下する。2.0mg/kg用量グループに関して、LDP-02レベルは、約60日目まで上昇したままであった。表25は、治療グループによる重要な薬物動態学的パラメータを示す。
【0106】
【表25】
【0107】
これらの用量は、LDP-02の最大濃度に関する用量およびIV投与の後に測定された曲線下の領域と直線性があるようである。クリアランスおよび終末排除半減期(terminal elimination half life)は、投与されるIV用量には依存しないようである。分布の容積は、IVのLDP-02の用量の増大と共にわずかに減少するようである。
【0108】
LDP-02の薬力学的効果の評価
血液リンパ球上のα4 β7 部位の存在を測定するためのFACS分析を以前に記載した(研究L296-007)。時間経過における血清α4 β7 結合(すなわち、MESF値および各投与後時間点でのベースラインのパーセンテージ)は、個々の患者および研究L297-006の付録における治療グループにより示される。
【0109】
全ての治療の時間経過におけるベースラインMESFの平均パーセントを
図9に示す。
図9から理解されるように、ベースラインMESFのパーセントは、用量に依存する効果の持続期間とともにLDP-02のSCおよびIV投与の後に約10%に迅速に低下する。約10日目に始まって、α4 β7 シグナルは、0.15mg/kg のIVおよびSC用量グループについてはベースラインに戻り始めた。しかし、α4 β7 シグナルは、0.5mg/kgのIVおよび2.0mg/kgの用量グループについては30日から60日までの間にベースラインに戻り始めた。
【0110】
結論
中程度の重篤度の潰瘍性大腸炎を有する患者への0.15mg/kg のIVおよびSC、0.5mg/kgのIV、および2.0mg/kgのIVの用量でのLDP-02の投与は、良好に耐容性を示した。
【0111】
潰瘍性大腸炎を有する患者からの薬物動態学的および薬力学的なデータは、健康なボランティアで見出されたものと一致した。これらはLDP-02の最大濃度に関する用量およびIV投与の後に測定された曲線下の領域と直線性があるようである。クリアランスおよび終末排除半減期は、投与されるIV用量には依存しないようである。分布の容積は、IV LDP-02 の用量の増大と共にわずかに減少するようである。ベースラインMESFのパーセントは、用量に依存する効果の持続時間とともにLDP-02のSCおよびIV投与の後に、約10%に迅速に低下した。0.15mg/kg のIVおよびSC用量グループに関して、ベースラインMESFのパーセントは、投薬の約10日後にベースラインに戻り始めたが、0.5mg/kgのIVおよび2.0mg/kgの用量グループは、それぞれ約30日および約60日に生じ始めた。
【0112】
研究L297-006の付録
治療グループによる被験体による時間経過におけるLDP-02血清濃度。個々の被験体からのデータを表26〜30に示す。表26〜30に示されるデータはμg/mLである。
【0113】
【表26】
【0114】
【表27】
【0115】
【表28】
【0116】
【表29】
【0117】
【表30】
【0118】
治療グループによる薬物動態学的パラメータ。個々の被験体から得られたデータを表31〜34に示す。
【0119】
【表31】
【0120】
【表32】
【0121】
【表33】
【0122】
【表34】
【0123】
治療グループによる被験体による時間経過における血清α4 β結合。個々の被験体から得られたデータを表35〜40に示す。各被験体に関して、血液サンプリングの時間、サンプルのMESFおよびベースライン(投薬前)の%を示す。
【0124】
【表35】
【0125】
【表36】
【0126】
【表37】
【0127】
【表38】
【0128】
【表39】
【0129】
【表40】
【0130】
本発明をその好ましい態様に関して詳細に示し、記載してきたが、形態および詳細における種々の変化が特許請求の範囲により含まれる本発明の範囲から逸脱することなくなされうることを当業者は理解する。
【0131】
本発明の態様として、以下のものが挙げられる。
[1]非ヒト起源の抗原結合性領域およびヒト起源の抗体の少なくとも一部を含有する、α4 β7 インテグリンに対する結合特異性を有するヒト化免疫グロブリンまたはその抗原結合性断片の有効量を、粘膜組織の白血球浸潤に関連する疾患を有するヒトに投与することを含み、ここで該免疫グロブリンまたは断片は、初回投与の後、1回以上引き続き投与され、2つの投薬の最小の間隔はいずれも少なくとも約1日間であり、体重1kg当たり約8mg以下の免疫グロブリンまたは断片が約1ヶ月間に投与される、粘膜組織の白血球浸潤に関連する疾患を有するヒトの治療方法。
[2]前記免疫グロブリンまたは断片がα4 β7 インテグリンのα4 鎖に結合する、[1]記載の方法。
[3]前記免疫グロブリンまたは断片がα4 β7 インテグリンのβ7 鎖に結合する、[1]記載の方法。
[4]前記免疫グロブリンまたは断片がα4 β7 複合体に対する結合特異性を有する、[1]記載の方法。
[5]前記ヒト起源の免疫グロブリンの一部がヒト定常領域に由来する、[1]記載の方法。
[6]前記抗原結合性領域が齧歯類起源である、[5]記載の方法。
[7]前記抗原結合性領域が齧歯類起源の相補性決定領域を含有し、前記ヒト起源の抗体の一部がヒトフレームワーク領域に由来する、[1]記載の方法。
[8]前記抗原結合性領域が、以下のアミノ酸配列:
軽鎖:CDR1 配列番号:9
CDR2 配列番号:10
CDR3 配列番号:11
重鎖:CDR1 配列番号:12
CDR2 配列番号:13
CDR3 配列番号:14
の軽鎖可変領域の3つの相補性決定領域(CDR1、CDR2およびCDR3)の内の少なくとも1つおよび重鎖可変領域の3つの相補性決定領域(CDR1、CDR2およびCDR3)の内の少なくとも1つを含有する、[1]記載の方法。
[9]前記抗原結合性領域が、以下のアミノ酸配列:
軽鎖:CDR1 配列番号:9
CDR2 配列番号:10
CDR3 配列番号:11
重鎖:CDR1 配列番号:12
CDR2 配列番号:13
CDR3 配列番号:14
の軽鎖可変領域の3つの相補性決定領域(CDR1、CDR2およびCDR3)および重鎖可変領域の3つの相補性決定領域(CDR1、CDR2およびCDR3)を含有する、[8]記載の方法。
[10]前記ヒト化免疫グロブリンまたはその抗原結合性断片が重鎖および軽鎖を含有する、[1]記載の方法であって、
該軽鎖は、α4 β7 に結合する非ヒト起源の抗体に由来する相補性決定領域およびヒト起源の軽鎖に由来するフレームワーク領域を含有し、ここで各々の該相補性決定領域(CDR1、CDR2およびCDR3)は以下のアミノ酸配列:
軽鎖:CDR1 配列番号:9
CDR2 配列番号:10
CDR3 配列番号:11
を含有する;かつ
該重鎖は、α4 β7 に結合する非ヒト起源の抗体に由来する相補性決定領域およびヒト起源の重鎖に由来するフレームワーク領域を含有し、ここで各々の該相補性決定領域(CDR1、CDR2およびCDR3)は以下のアミノ酸配列:
重鎖:CDR1 配列番号:12
CDR2 配列番号:13
CDR3 配列番号:14
を含有する、方法。
[11]前記ヒト化免疫グロブリンまたはその抗原結合性断片が配列番号:6の重鎖可変領域を含有する、[10]記載の方法。
[12]前記ヒト化免疫グロブリンまたはその抗原結合性断片が配列番号:8の軽鎖可変領域を含有する、[10]記載の方法。
[13]前記投薬の各々が独立して体重1kg当たり約0.1 〜約8mgの免疫グロブリンまたは断片を含有する、[1]記載の方法。
[14]前記投薬の各々が独立して体重1kg当たり約0.1 〜約5mgの免疫グロブリンまたは断片を含有する、[1]記載の方法。
[15]前記投薬の各々が独立して体重1kg当たり約0.1 〜約2.5mg の免疫グロブリンまたは断片を含有する、[1]記載の方法。
[16]前記投薬の各々が独立して体重1kg当たり約0.15、約0.5 、約1.0 、約1.5 または約2.0mg の免疫グロブリンまたは断片を含有する、[1]記載の方法。
[17]投薬の間隔が少なくとも約7日間である、[1]記載の方法。
[18]投薬の間隔が少なくとも約14日間である、[1]記載の方法。
[19]投薬の間隔が少なくとも約21日間である、[1]記載の方法。
[20]投薬の間隔が少なくとも約28日間である、[1]記載の方法。
[21]投薬の間隔が少なくとも約30日間である、[1]記載の方法。
[22]前記投薬の各々が、独立してa )循環リンパ球上のα4 β7 インテグリン結合部位の約50%以上の飽和および/またはb )循環リンパ球の細胞表面上のα4 β7 インテグリン発現の約50%以上の阻害を達成するのに充分な量の免疫グロブリンまたは断片を含有し、ここで該飽和および/または阻害は該投薬の投与の後少なくとも約10日間維持される、[1]記載の方法。
[23]前記投薬の各々が、独立してa )循環リンパ球上のα4 β7 インテグリン結合部位の約60%以上の飽和および/またはb )循環リンパ球の細胞表面上のα4 β7 インテグリン発現の約60%以上の阻害を達成するのに充分な量の免疫グロブリンまたは断片を含有する、[22]記載の方法。
[24]前記投薬の各々が、独立してa )循環リンパ球上のα4 β7 インテグリン結合部位の約70%以上の飽和および/またはb )循環リンパ球の細胞表面上のα4 β7 インテグリン発現の約70%以上の阻害を達成するのに充分な量の免疫グロブリンまたは断片を含有する、[22]記載の方法。
[25]前記投薬の各々が、独立してa )循環リンパ球上のα4 β7 インテグリン結合部位の約80%以上の飽和および/またはb )循環リンパ球の細胞表面上のα4 β7 インテグリン発現の約80%以上の阻害を達成するのに充分な量の免疫グロブリンまたは断片を含有する、[22]記載の方法。
[26]前記投薬の各々が、独立して該飽和および/または阻害が該投薬の投与の後少なくとも約14日間達成および維持されるのに充分な量の免疫グロブリンまたは断片を含有する、[22]記載の方法。
[27]前記投薬の各々が、独立して該飽和および/または阻害が該投薬の投与の後少なくとも約20日間達成および維持されるのに充分な量の免疫グロブリンまたは断片を含有する、[22]記載の方法。
[28]前記投薬の各々が、独立して該飽和および/または阻害が該投薬の投与の後少なくとも約25日間達成および維持されるのに充分な量の免疫グロブリンまたは断片を含有する、[22]記載の方法。
[29]前記投薬の各々が、独立して該飽和および/または阻害が該投薬の投与の後少なくとも約30日間達成および維持されるのに充分な量の免疫グロブリンまたは断片を含有する、[22]記載の方法。
[30]前記投薬の各々が、独立して該飽和および/または阻害が該投薬の投与の後少なくとも約60日間達成および維持されるのに充分な量の免疫グロブリンまたは断片を含有する、[22]記載の方法。
[31]前記投薬の各々が、独立して体重1kg当たり約0.1 〜約8mgの免疫グロブリンまたは断片を含有する、[22]記載の方法。
[32]前記投薬の各々が、独立して体重1kg当たり約0.1 〜約5mgの免疫グロブリンまたは断片を含有する、[22]記載の方法。
[33]前記投薬の各々が、独立して体重1kg当たり約0.1 〜約2.5mg の免疫グロブリンまたは断片を含有する、[22]記載の方法。
[34]前記投薬の各々が、独立して、体重1kg当たり約0.15、約0.5 、約1.0 、約1.5 または約2.0mg の免疫グロブリンまたは断片を含有する、[22]記載の方法。
[35]投薬の間隔が少なくとも約7日間である、[22]記載の方法。
[36]投薬の間隔が少なくとも約14日間である、[22]記載の方法。
[37]投薬の間隔が少なくとも約21日間である、[22]記載の方法。
[38]投薬の間隔が少なくとも約28日間である、[22]記載の方法。
[39]投薬の間隔が少なくとも約30日間である、[22]記載の方法。
[40]ヒト化免疫グロブリンが投与され、前記投薬の各々が、該投薬の投与の後少なくとも約10日間、少なくとも約1μg/mLの免疫グロブリンの血清濃度を達成し、維持するのに充分な量の免疫グロブリンを含有する、[1]記載の方法。
[41]前記投薬の各々が、独立して該投薬の投与の後少なくとも約14日間、前記血清濃度を達成し、維持するのに充分な量の免疫グロブリンを含有する、[40]記載の方法。
[42]前記投薬の各々が、独立して該投薬の投与の後少なくとも約20日間、前記血清濃度を達成し、維持するのに充分な量の免疫グロブリンを含有する、[40]記載の方法。
[43]前記投薬の各々が、独立して該投薬の投与の後少なくとも約25日間、前記血清濃度を達成し、維持するのに充分な量の免疫グロブリンを含有する、[40]記載の方法。
[44]前記投薬の各々が、独立して該投薬の投与の後少なくとも約30日間、前記血清濃度を達成し、維持するのに充分な量の免疫グロブリンを含有する、[40]記載の方法。
[45]前記投薬の各々が、独立して該投薬の投与の後少なくとも約60日間、前記血清濃度を達成し、維持するのに充分な量の免疫グロブリンを含有する、[40]記載の方法。
[46]前記投薬の各々が、独立して体重1kg当たり約0.1 〜約8mgの免疫グロブリンを含有する、[40]記載の方法。
[47]前記投薬の各々が、独立して体重1kg当たり約0.1 〜約5mgの免疫グロブリンを含有する、[40]記載の方法。
[48]前記投薬の各々が、独立して体重1kg当たり約0.1 〜約2.5mg の免疫グロブリンを含有する、[40]記載の方法。
[49]前記投薬の各々が、独立して体重1kg当たり約0.15、約0.5 、約1.0 、約1.5 または約2.0mg の免疫グロブリンまたは断片を含有する、[40]記載の方法。
[50]投薬の間隔が少なくとも約7日間である、[40]記載の方法。
[51]投薬の間隔が少なくとも約14日間である、[40]記載の方法。
[52]投薬の間隔が少なくとも約21日間である、[40]記載の方法。
[53]投薬の間隔が少なくとも約28日間である、[40]記載の方法。
[54]投薬の間隔が少なくとも約30日間である、[40]記載の方法。
[55]1以上のさらなる治療剤の有効量を投与することをさらに含む、[1]記載の方法。
[56]前記治療剤が、ステロイド、免疫抑制剤、非ステロイド性抗炎症剤および免疫調節剤からなる群より選ばれる、[55]記載の方法。
[57]前記治療剤が、アザチオプリン、6- メルカプトプリン、スルファサラジン、5- アミノサリチル酸、プレドニゾンおよびプレドニゾロンからなる群より選ばれる、[55]記載の方法。
[58]粘膜組織の白血球浸潤に関連する前記疾患が、炎症性腸疾患、膵炎、インスリン依存性糖尿病、乳腺炎、胆嚢炎、胆管炎、胆管周囲炎、慢性気管支炎、慢性静脈洞炎、喘息および対宿主性移植片病からなる群より選ばれる、[1]記載の方法。
[59]前記粘膜組織の白血球湿潤に関連する疾患が炎症性腸疾患である、[1]記載の方法。
[60]前記炎症性腸疾患が潰瘍性大腸炎である、[59]記載の方法。
[61]前記炎症性腸疾患がクローン病である、[59]記載の方法。
[62]非ヒト起源の抗原結合性領域およびヒト起源の抗体の少なくとも一部を含有する、α4 β7 インテグリンに対する結合特異性を有するヒト化免疫グロブリンまたはその抗原結合性断片の有効量を、炎症性腸疾患を有するヒトに投与することを含み、ここで該免疫グロブリンまたは断片は、初回投与の後、1回以上引き続き投与され、2つの投薬の最小の間隔はいずれも少なくとも約1日間であり、体重1kg当たり約8mg以下の免疫グロブリンまたは断片が約1ヶ月間に投与される、炎症性腸疾患を有するヒトの治療方法。
[63]前記ヒト化免疫グロブリンまたはその抗原結合性断片が重鎖および軽鎖を含有する、[62]記載の方法であって、
該軽鎖は、α4 β7 に結合する非ヒト起源の抗体に由来する相補性決定領域およびヒト起源の軽鎖に由来するフレームワーク領域を含有し、ここで各々の該相補性決定領域(CDR1、CDR2およびCDR3)は以下のアミノ酸配列:
軽鎖:CDR1 配列番号:9
CDR2 配列番号:10
CDR3 配列番号:11
を含有する;かつ
該重鎖は、α4 β7 に結合する非ヒト起源の抗体に由来する相補性決定領域およびヒト起源の重鎖に由来するフレームワーク領域を含有し、ここで各々の該相補性決定領域(CDR1、CDR2およびCDR3)は以下のアミノ酸配列:
重鎖:CDR1 配列番号:12
CDR2 配列番号:13
CDR3 配列番号:14
を含有する、方法。
[64]炎症性腸疾患が潰瘍性大腸炎である、[63]記載の方法。
[65]炎症性腸疾患がクローン病である、[63]記載の方法。
[66]非ヒト起源の抗原結合性領域およびヒト起源の免疫グロブリンの少なくとも一部を含有する、α4 β7 インテグリンに対する結合特異性を有するヒト化免疫グロブリンまたはその抗原結合性断片の有効量をヒトに投与することを含み、ここで該免疫グロブリンまたは断片は投薬で投与され、投薬の最小の間隔は少なくとも約7日間であり、体重1kg当たり約8mg以下の免疫グロブリンまたは断片が約30日間に投与される、ヒトにおける静止状態の炎症性腸疾患の再発および/または回帰を阻害する方法。
[67]静止状態が内科的療法または外科的療法によって誘導されている、[66]に記載の方法。
[68]前記炎症性腸疾患が潰瘍性大腸炎である、[66]記載の方法。
[69]前記炎症性腸疾患がクローン病である、[66]記載の方法。