特許第5764535号(P5764535)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5764535
(24)【登録日】2015年6月19日
(45)【発行日】2015年8月19日
(54)【発明の名称】熱交換器
(51)【国際特許分類】
   F28D 7/16 20060101AFI20150730BHJP
   F28F 1/02 20060101ALI20150730BHJP
   F28F 1/04 20060101ALI20150730BHJP
   F28F 1/06 20060101ALI20150730BHJP
【FI】
   F28D7/16 A
   F28F1/02 A
   F28F1/04
   F28F1/06
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-157261(P2012-157261)
(22)【出願日】2012年7月13日
(65)【公開番号】特開2014-20608(P2014-20608A)
(43)【公開日】2014年2月3日
【審査請求日】2014年3月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000138521
【氏名又は名称】株式会社ユタカ技研
(74)【代理人】
【識別番号】100067356
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 容一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100160004
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 憲雅
(74)【代理人】
【識別番号】100120558
【弁理士】
【氏名又は名称】住吉 勝彦
(74)【代理人】
【識別番号】100148909
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧澤 匡則
(74)【代理人】
【識別番号】100161355
【弁理士】
【氏名又は名称】野崎 俊剛
(72)【発明者】
【氏名】久永 徹
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 こずえ
(72)【発明者】
【氏名】後藤 勇人
(72)【発明者】
【氏名】菱沼 淳子
【審査官】 鈴木 充
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−048536(JP,A)
【文献】 特開2011−214786(JP,A)
【文献】 特開2009−281696(JP,A)
【文献】 特開2007−225190(JP,A)
【文献】 特開2010−144723(JP,A)
【文献】 実開昭63−086567(JP,U)
【文献】 特開昭62−252891(JP,A)
【文献】 特開2003−028586(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0161206(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28D 7/16
F28F 1/02
F28F 1/04
F28F 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空であり断面の縦寸法が横寸法より大きい細長断面の熱交換チューブと、この熱交換チューブを複数重ねて収納するコアケースと、前記コアケースの一端に設けられ隣り合う前記熱交換チューブの間に向かって第1熱媒体を流入させる第1熱媒体導入管と、前記コアケースの他端に設けられ前記第1熱媒体を排出させる第1熱媒体排出管とからなり、
前記熱交換チューブの外周に流される第1熱媒体と、前記熱交換チューブの内周に流される第2熱媒体とによって熱交換を行う熱交換器において、
前記熱交換チューブには、隣り合う前記熱交換チューブに向かって突出する凸部が、前記第2熱媒体の流れ方向に沿って連続的に形成され
前記凸部は、前記第1熱媒体導入管に重なる位置から前記第1熱媒体排出管に重なる位置まで形成されていると共に、少なくとも、前記熱交換チューブの幅方向の両端部に形成されていることを特徴とする熱交換器。
【請求項2】
前記熱交換チューブは、波板で構成されるコルゲートチューブであることを特徴とする請求項1記載の熱交換器。
【請求項3】
前記熱交換チューブは、波板の谷部が、前記第2熱媒体の流れ方向を基準として、上流から下流に向かって連続的に深くなっていることを特徴とする請求項記載の熱交換器。
【請求項4】
前記熱交換チューブには、前記第2熱媒体の流路に向かって凹むと共に対向する面に接触する接触凹部が形成されていることを特徴とする請求項1〜請求項のいずれか1項記載の熱交換器。
【請求項5】
前記熱交換チューブは、共に断面視略コ字状の第1チューブ半体と第2チューブ半体とからなると共に、これらの第1チューブ半体及び第2チューブ半体を重合わせてなり、
前記第1チューブ半体及び第2チューブ半体は、共に底部と底部の両端から立ち上げられる起立部とからなり、
高さ方向を基準として、前記第1チューブ半体の起立部と前記第2チューブ半体の起立部とは、半分以上が重合わされていることを特徴とする請求項1〜請求項のいずれか1項記載の熱交換器。
【請求項6】
前記熱交換チューブ内には、伝熱面積を大きくするためのフィンが収納されていることを特徴とする請求項1記載の熱交換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換チューブの外周に流される第1熱媒体と、熱交換チューブの内周に流される第2熱媒体とによって熱交換を行う熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
熱交換チューブの外周に冷却水を流すことにより、熱交換チューブの内周を流れる排気ガスが冷却される熱交換器が、EGR(Exhaust Gas Recirculation)クーラに採用されている(例えば、特許文献1(図2及び図3)参照。)。
【0003】
特許文献1を図12に基づいて説明する。
図12(a)に示されるように、EGRクーラ100は、コアケース101に複数の熱交換チューブ102が収納され、コアケース101には、冷却水が導入される冷却水導入管103及び冷却水が排出される冷却水排出管104が取付けられている。
【0004】
矢印で示されるように、冷却水導入管103から導入された冷却水は、冷却水排出管104に向かって最短距離の流路を流れる。このため、一点鎖線で示されるように、熱交換チューブ102の外周には冷却水の流量の少ない部位が発生する。このような問題点を解消するために、引用文献1の発明によれば、熱交換チューブ102の外周に向かって複数の突起を形成した。詳細を図12(b)に基づいて説明する。
【0005】
図12(b)に示されるように、EGRクーラ110は、熱交換チューブ112に外周に向かって突出する複数の突出部115を形成した。突出部115が水の流れに対して抵抗となるため、突出部115を迂回するようにして水を流すことができる。即ち、水の流れを突出部115により規制することにより、熱交換チューブ112の外周の全体に冷却水を流すことができる。
【0006】
しかし、EGRクーラ110によれば、突出部115を形成して冷却水を蛇行させているため、冷却水が流れる際の抵抗が大きい。抵抗が大きいため、例えば同じ出力のポンプによって冷却水を循環させた場合に、冷却水の流量が減少する。冷却水の流量が減少することにより、排気ガスとの伝熱効率も低下する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−177060公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、伝熱効率の高い熱交換器の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る発明は、中空であり断面の縦寸法が横寸法より大きい細長断面の熱交換チューブと、この熱交換チューブを複数重ねて収納するコアケースと、前記コアケースの一端に設けられ隣り合う前記熱交換チューブの間に向かって第1熱媒体を流入させる第1熱媒体導入管と、前記コアケースの他端に設けられ前記第1熱媒体を排出させる第1熱媒体排出管とからなり、
前記熱交換チューブの外周に流される第1熱媒体と、前記熱交換チューブの内周に流される第2熱媒体とによって熱交換を行う熱交換器において、
前記熱交換チューブには、隣り合う前記熱交換チューブに向かって突出する凸部が、前記第2熱媒体の流れ方向に沿って連続的に形成され
前記凸部は、前記第1熱媒体導入管に重なる位置から前記第1熱媒体排出管に重なる位置まで形成されていると共に、少なくとも、前記熱交換チューブの幅方向の両端部に形成されていることを特徴とする。
【0011】
請求項に係る発明では、熱交換チューブは、波板で構成されるコルゲートチューブであることを特徴とする。
【0012】
請求項に係る発明では、熱交換チューブは、波板の谷部が、前記第2熱媒体の流れ方向を基準として、上流から下流に向かって連続的に深くなっていることを特徴とする。
【0013】
請求項に係る発明は、熱交換チューブには、前記第2熱媒体の流路に向かって凹むと共に対向する面に接触する接触凹部が形成されていることを特徴とする。
【0014】
請求項に係る発明は、熱交換チューブは、共に断面視略コ字状の第1チューブ半体と第2チューブ半体とからなると共に、これらの第1チューブ半体及び第2チューブ半体を重合わせてなり、
前記第1チューブ半体及び第2チューブ半体は、共に底部と底部の両端から立ち上げられる起立部とからなり、
高さ方向を基準として、前記第1チューブ半体の起立部と前記第2チューブ半体の起立部とは、半分以上が重合わされていることを特徴とする。
【0015】
請求項に係る発明では、熱交換チューブ内には、伝熱面積を大きくするためのフィンが収納されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に係る発明では、第1熱媒体の流路を規制する凸部は、第2熱媒体の流れ方向に沿って連続的に形成されている。
第2熱媒体は、直線的に流れるので、この流れに沿って形成される凸部も直線的に形成されている。即ち、凸部は、第1熱媒体の流れに対して抵抗とならないよう、直線的且つ連続的に形成されている。凸部が抵抗とならないため、第1熱媒体の流量を多くすることができる。流量を多くすることにより、効率的に熱交換を行うことができる。
【0017】
さらに、請求項に係る発明では、凸部は、第1熱媒体導入管に重なる位置から第1熱媒体排出管に重なる位置まで形成されていると共に、少なくとも、熱交換チューブの幅方向の両端部に形成されている。第1熱媒体導入管から導入された第1熱媒体は、凸部の端部を避けるようにして、熱交換器内へ導入される。また、熱交換器内を流れた第1熱媒体は、凸部の端部を迂回してから第1熱媒体排出管へと導かれる。即ち、凸部が第1熱媒体導入管に重なる位置から第1熱媒体排出管に重なる位置まで形成されていることにより、第1熱媒体が最短の流路を流れることを抑制している。整流板等の部品を追加することなく、第1熱媒体をコアケースの全体に流すことができる。
【0018】
請求項に係る発明では、熱交換チューブは、波板で構成されるコルゲートチューブである。熱交換チューブが波板によって形成されることにより、大きな伝熱面積を確保することができる。伝熱面積が大きいことにより、さらに伝熱効率を高めることができる。
【0019】
請求項に係る発明では、熱交換チューブは、波板の谷部が、第2熱媒体の流れ方向を基準として、上流から下流に向かって連続的に深くなっている。即ち、上流において流路面積を広く確保すると共に、下流に向かうに連れ伝熱面積が大きくなる構成とされる。熱交換が行われる前の上流では、熱交換が行われた後の下流に比べ、第2熱媒体の温度が高い。第2熱媒体の温度に比例して、第2熱媒体の体積流量が多くなる。体積流量が増加すると圧力損失は増加する。一方、圧力損失は流路面積が広くなることで減少する。
第2熱媒体の温度が高い上流では、流路面積を大きくすることで、圧力損失を低下させる。圧力損失を低下させることで、流量を多くすることができ、伝熱効率を高めることができる。
なお、上流では第1熱媒体と第2熱媒体との温度差が下流に比べて大きい。下流より伝熱面積を小さくしても、下流と同等の伝熱効率を得ることができる。
下流では上流に比べ第2熱媒体の温度が低い。第2熱媒体の温度が低いと、第2熱媒体の体積流量が少なくなる。体積流量の少ない下流では、流路面積を小さくしても、上流と同程度の圧力損失とすることができる。第2熱媒体の温度が低い下流では、上流に比べ伝熱面積を大きくすることで、伝熱効率を高める。
即ち、圧力損失を抑えつつ、伝熱面積を広くすることで、伝熱効率を高めることができる。
【0020】
また、熱交換チューブの波状の谷部が第2熱媒体の流れ方向を基準として上流から下流に向かって連続的に深くなっていることにより、スムーズな除変断面になり、下流側でも流速が維持されるので、煤が堆積しにくい。
【0021】
請求項に係る発明では、熱交換チューブには、第2熱媒体の流路に向かって凹むと共に対向する面に接触する接触凹部が形成されている。接触凹部が対向する面に接触していることにより、第1熱媒体から受ける圧力に対して熱交換チューブの剛性を高めることができる。また、接触凹部を対向する面に接合した場合には、第2熱媒体から受ける圧力に対して熱交換チューブの剛性を高めることができる。
【0022】
請求項に係る発明では、高さ方向を基準として、第1チューブ半体の起立部と第2チューブ半体の起立部とは、半分以上が重合わされている。熱交換チューブの隅は、形状が大きく変化する部位であり、熱交換チューブの中でも特に高い応力が生じる。第1及び第2チューブ半体をそれぞれ大きく重ね合わせることにより、これらが互いに補強し合い、熱交換チューブの剛性を高めることができる。
【0023】
請求項に係る発明では、熱交換チューブ内には、伝熱面積を大きくするためのフィンが収納されている。フィンが収納されていることにより、伝熱面積が大きくなる。伝熱面積を大きくすることにより、伝熱効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】実施例1による熱交換器をEGRクーラに採用した際の模式図である。
図2図1に示されたEGRクーラの左側面図である。
図3図2の3−3線断面図である。
図4図2に示されたEGRクーラの断面図である。
図5図4に示された熱交換チューブの平面図である。
図6図5に示された熱交換チューブの斜視図である。
図7図5に示された熱交換チューブの断面図である。
図8図5の8−8線断面図である。
図9図5の9矢視図である。
図10】実施例2による熱交換器に用いられる熱交換チューブの平面図である。
図11】実施例3による熱交換器に用いられる熱交換チューブの斜視図である。
図12】従来の技術の基本構成を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
【実施例1】
【0026】
まず、本発明の実施例1を図面に基づいて説明する。
図1に示されるように、EGR(Exhaust Gas Recirculation)クーラ20(熱交換器20)は、車両用のディーゼルエンジン10に形成されている吸気口11及び排気口12に接続されて使用される。
【0027】
より具体的には、排気口12から排出された排気ガス(第2熱媒体)の一部がEGRクーラ20内に送られる。送られた排気ガスは、冷却水(第1熱媒体)によって冷却され、EGRクーラ20から排出される。冷却された排気ガスは、空気と共にディーゼルエンジン10内に再び送られる。ディーゼルエンジン10内に送る空気の酸素濃度を低下させることにより、NOx(窒素酸化物)の発生を抑制する排気ガス再循環装置である。
【0028】
なお、EGRクーラ20が取付けられるのは、ディーゼルエンジンに限られず、ガソリンエンジンにも適用可能であり、これらのものに用途は限定されない。
EGRクーラ20の詳細を図2に基づいて説明する。
【0029】
図2に示されるように、EGRクーラ20は、排気ガスが導入される排気ガス導入部材21(第2熱媒体導入部材21)と、この排気ガス導入部材21に接続されている上流側エンドプレート22と、この上流側エンドプレート22に接続されている略角筒形状のコアケース23と、このコアケース23の下流側の端部に取付けられている下流側エンドプレート24と、この下流側エンドプレート24に接続されている排気ガス排出部材25(第2熱媒体排出部材25)と、この排気ガス排出部材25近傍においてコアケース23の上面に取付けられ冷却水を導入する冷却水導入管26(第1熱媒体導入管26)と、この冷却水導入管26から導入された冷却水を排出するためにコアケース23の上面に取付けられている冷却水排出管27(第1熱媒体排出管27)とからなる。
【0030】
冷却水導入管26及び冷却水排出管27は、共にコアケース23の同じ面に取付けられていると共に、排気ガスの流れ方向を基準として、それぞれ逆側の端部に取付けられている。
【0031】
コアケース23は、断面略コ字状の下部ケース半体31に断面略コ字状の上部ケース半体32を重合わせ、接合されてなる。上部ケース半体32の上面には、冷却水導入管26が差し込まれる冷却水導入口32a(第1熱媒体導入口32a)と、冷却水排出管27が差し込まれる冷却水排出口32b(第1熱媒体排出口32b)とが形成されている。
【0032】
排気ガス導入部材21及び排気ガス排出部材25には、それぞれ他の部品へ取り付けるためのフランジ21a,25aが取付けられている。
コアケース23の内部について、詳細を図3に基づいて説明する。
【0033】
図3に示されるように、EGRクーラ20の内部には、熱交換チューブ40が7つ積層されている。熱交換チューブ40は、縦辺が横辺よりも長い断面略矩形の角筒状の部材であり、コアケース23の軸線CCに沿って水平方向に向かって延びている。
【0034】
内部に排気ガスが流される熱交換チューブ40は、断面視略コ字状の第1チューブ半体50と第2チューブ半体60とからなり、これらの第1チューブ半体50及び第2チューブ半体60を接合してなる。接合の方法としては、溶接やろう付け等任意の方法を選択することができる。
【0035】
冷却水導入管26の軸線FCは、鉛直方向に向かって延びており、コアケース23の軸線CCに略直交する。熱交換チューブ40の縦辺は、冷却水導入管26の軸線FCに沿って延びている。
【0036】
第1チューブ半体50は、波板状の底部51と、この底部51の両端から立ち上げられる起立部52とからなる。第2チューブ半体60も同様である。即ち、第2チューブ半体60は、波板状の底部61と、この底部61の両端から立ち上げられる起立部62とからなる。熱交換チューブ40は、互いの起立部52,62が重合わされ、接合されているコルゲートチューブである。
【0037】
熱交換チューブ40が波板によって形成されることにより、大きな伝熱面積を確保することができる。伝熱面積が大きいことにより、伝熱効率を高めることができる。
【0038】
図5も参照して、第1チューブ半体50の底部51には、隣り合う熱交換チューブ40に向かって突出する凸部51aと、熱交換チューブ40の内部に向かって凹むと共に対向する面に接触する接触凹部51bとが形成されている。接触凹部51bは、排気ガスの流路に向かって凹んでいるということもできる。
【0039】
第2チューブ半体60も同様である。第2チューブ半体60の底部61には、隣り合う熱交換チューブ40に向かって突出する凸部61aと、熱交換チューブ40の内部に向かって凹むと共に対向する面に接触する接触凹部61bとが形成されている。
互いの接触凹部51b,61bは接触すると共に接合されている。
【0040】
熱交換チューブ40の外周を流れる冷却水によって、熱交換チューブ40の内周に向かって水圧がかかる。接触凹部51b,61bが対向する面に接触することにより、水圧による熱交換チューブ40の変形を防ぐ。即ち、接触凹部51b,61bが対向する面に接触していることにより、冷却水から受ける圧力に対して熱交換チューブ40の剛性を高めることができる。
【0041】
また、熱交換チューブ40の内周を流れる排気ガスによって、熱交換チューブ40が開く方向に圧力がかかる。接触凹部51b,61bが対向する面に接合されていることにより、排気ガスによる熱交換チューブ40の変形を防ぐ。即ち、接触凹部51b,61bを対向する面に接合した場合には、排気ガスから受ける圧力に対して熱交換チューブ40の剛性を高めることができる。
【0042】
加えて、第1チューブ半体50及び第2チューブ半体60のそれぞれ対向する位置に接触凹部51b,61bを形成し、互いの接触凹部51b,61bを接触させることが望ましい。通常、第1チューブ半体50及び第2チューブ半体60は、プレス成形によって形成される。仮に、第1チューブ半体50にのみ接触凹部51bを形成し、第2チューブ半体60に接触させることとした場合には、接触凹部51bの深さが非常に深くなる。接触凹部51bが深いことにより、接触凹部51bが形成される部位のみ第1チューブ半体50の板厚が薄くなる。板圧が薄いことにより、接触凹部51bの強度が他の部位に比べて弱くなる。この点、互いの接触凹部51b,61bを接触させる場合には、板厚の極端に薄い部位が生じない。即ち、熱交換チューブ40を高い強度に保つことができる。
熱交換チューブ40の詳細を図4に基づいて説明する。
【0043】
図4に示されるように、凸部51aは、冷却水導入管26に重なる位置から冷却水排出管27に重なる位置まで、排気ガスの流れ方向に沿って連続的に形成されている。凸部51aが重なる長さは、冷却水導入管26に重なる長さの方が冷却水排出管27に重なる長さよりも長い。即ち、冷却水の導入側において凸部51aの重なる長さが長く設定されている。凸部51aが形成されていることにより、冷却水の流路が狭められ、冷却水は流路を規制される。
【0044】
冷却水排出管27の軸線RCは、冷却水導入管26の軸線FCに平行に、且つコアケース23の軸線CCに垂直に延びている。即ち、冷却水排出管27の軸線RCは、鉛直方向に延びている。
【0045】
コアケース23の軸線CCに、排気ガス導入部材21の中心、及び排気ガス排出部材25の中心が一致している。また、熱交換チューブ40の高さ方向中央の部位もコアケース23の軸線CCに一致している。
凸部51aの詳細を図5に基づき説明する。
【0046】
図5に示されるように、熱交換チューブ40の高さ方向を基準とした場合に、凸部51aと凸部51aとの間の長さL1は、凸部51aから端部までの長さL2に比べ、長い。即ち、冷却水の流路の面積は、凸部51aから端部までの部位に比べ、凸部51aと凸部51aとの間の部位の方が広く形成されている。
本発明によるEGRクーラの作用を図6に基づいて説明する。
【0047】
図6に示されるように、熱交換チューブ40の外周に導入された冷却水は、矢印(1)で示されるように、凸部51aによって3つの流路に分けて流される。導入された冷却水は、凸部51aに沿って流れ、矢印(2)で示されるように、排出される。このとき、白抜き矢印で示されるように、熱交換チューブ40の内周には、排気ガスが流されている。排気ガスは、熱交換チューブ40の外周を流れる冷却水によって冷却される。即ち、熱交換チューブ40を介して、排気ガスと冷却水とで熱交換を行う。
【0048】
凸部51aは、冷却水の流れに対して抵抗とならないよう、直線的且つ連続的に形成されている。凸部51aが抵抗とならないため、冷却水の流量を多くすることができる。
【0049】
加えて、凸部51aは、冷却水導入管26に重なる位置から冷却水排出管27に重なる位置まで形成されていると共に、熱交換チューブ40の幅方向の両端部に形成されている。冷却水導入管26から導入された冷却水は、凸部51aの端部を避けるようにして、コアケース内へ導入される。また、コアケース内を流れた冷却水は、凸部51aの端部を迂回してから冷却水排出管27へと導かれる。即ち、凸部51aが冷却水導入管26に重なる位置から冷却水排出管27に重なる位置まで形成されていることにより、冷却水が最短の流路を流れることを抑制している。整流板等の部品を追加することなく、冷却水をコアケースの全体に流すことができる。
【0050】
また、幅方向両端の凸部51a(図面上下端の凸部51a)により、高温となる排気ガス導入部(図4、符号21)に向けて多量の冷却水を流すことができ、冷却水が沸騰することを抑制できる。
【0051】
導入される排気ガスは、高い温度で熱交換チューブ40内に導入される。高温の排気ガスは、冷却水によって徐々に冷却される。特に、熱交換チューブ40の幅方向中央且つ排気ガスの流れを基準として上流側の部位P1は、高温の排気ガスが多量に流れる。このような部位P1においては、冷却水が沸騰しやすい。冷却水の沸騰は、冷却水の円滑な流れを阻害する。冷却水が円滑に流れないと、熱交換効率が低下する。本発明によれば、凸部51aによって冷却水をコアケースの全体に流すことができるので、このような冷却水の沸騰が生じやすい部位P1にも多量の冷却水が流れ、冷却水の沸騰を抑制することができる。
【0052】
図4も参照して、凸部51aは、冷却水導入管26に重なる位置から冷却水排出管27に重なる位置まで形成されている。冷却水導入管26がコアケース23の一端に形成され、冷却水排出管27がコアケースの他端に形成されているため、凸部51aは、コアケース23の両端部に渡って形成されている。凸部51aが両端部に渡って形成されているため、冷却水をコアケース23の全体に流すことができる。
本発明によれば、冷却水の流量を確保しつつ、冷却水をコアケース23の全体に流すことができる。即ち、伝熱効率の高いEGRクーラ20ということができる。
【0053】
さらに、冷却水の流路は、高さ方向の中央において広く形成されている。即ち、コアケース23の中心となる位置に合わせて冷却水の流路を広く確保し、冷却水を多く流すことのできる構成としている。コアケース23の軸線CCに沿って、多くの排気ガスが流れる。排気ガスの流量の多い部位に合わせて冷却水を多く流すことにより、より効率よく熱交換を行うことができる。
熱交換チューブ40について、さらに説明する。
【0054】
図7及び図8に示されるように、熱交換チューブ40は、波板の谷部51cが、排気ガスの流れ方向を基準として、上流から下流に向かって連続的に深くなっている。
なお、図7(e)に示されるように、熱交換チューブ40の最下流の部位は、エンドプレート(図4、符号24)に接合されるため、谷部51cが浅くなっている。
【0055】
熱交換部材は、流路面積が、下流に比べて上流の方が大きくなり、伝熱面積が、上流に比べて下流の方が大きくなる。
【0056】
熱交換が行われる前の上流では、熱交換が行われた後の下流に比べ、排気ガスの温度が高い。排気ガスの温度に比例して、排気ガスの体積流量が多くなる。体積流量が増加すると圧力損失は増加する。一方、圧力損失は流路面積が広くなることで減少する。
【0057】
排気ガスの温度が高い上流では、流路面積を大きくすることで、圧力損失を低下させる。圧力損失を低下させることで、流量を多くすることができ、伝熱効率を高めることができる。
【0058】
なお、上流では排気ガスと冷却水との温度差が下流に比べて大きい。下流より伝熱面積を小さくしても、下流と同等の伝熱効率を得ることができる。
【0059】
下流では上流に比べ排気ガスの温度が低い。排気ガスの温度が低いと、排気ガスの体積流量が少なくなる。体積流量の少ない下流では、流路面積を小さくしても、上流と同程度の圧力損失とすることができる。排気ガスの温度が低い下流では、上流に比べ伝熱面積を大きくすることで、伝熱効率を高める。
即ち、圧力損失を抑えつつ、伝熱面積を広くすることで、伝熱効率を高めることができる。
【0060】
図9に示されるように、高さ方向を基準として、第1チューブ半体50の起立部52と第2チューブ半体60の起立部62とは、半分以上が重合わされている。
【0061】
熱交換チューブ40の隅は、形状が大きく変化する部位であり、熱交換チューブ40の中でも特に高い応力が生じる。第1及び第2チューブ半体50,60をそれぞれ大きく重ね合わせることにより、これらが互いに補強し合い、熱交換チューブ40の剛性を高めることができる。
【実施例2】
【0062】
次に、本発明の実施例2を図面に基づいて説明する。
図10は実施例2による熱交換器に用いられる熱交換チューブの平面図を示し、上記図5に対応させて表している。
【0063】
図10に示されるように、熱交換チューブ40Aの第1チューブ半体50Aには、接触凹部51Abが排気ガスの流れ方向に沿って連続的に形成されている。
第2チューブ半体(図9、符号60)についても同様に、接触凹部が排気ガスの流れ方向に沿って連続的に形成されている。
このことにより、熱交換チューブ40Aは、第1チューブ半体50Aに形成されている接触凹部51Abと、第2チューブ半体に形成されている接触凹部とが、排気ガスの流れ方向に沿って連続的に接触している。
【0064】
このように構成した熱交換チューブ40Aを用いた場合にも、本発明所定の効果を得ることができる。
加えて、熱交換チューブ40Aは、外周を流れる冷却水から内周に向かって水圧を受ける。即ち、水圧は、熱交換チューブ40Aを潰す方向に作用する。第2チューブ半体に接触する接触凹部51Abが、排気ガスの流れ方向に連続的に形成されていることにより、冷却水の水圧に対する熱交換チューブ40Aの強度を高めることができる。
【0065】
さらに、第2チューブ半体にも接触凹部を形成し、第2チューブ半体の接触凹部に第1チューブ半体50Aの接触凹部51Abを溶接することができる。溶接した場合には、第1チューブ半体50Aと第2チューブ半体とをはく離させようとする方向に加わる排気ガスからの力に対して、熱交換チューブ40Aの強度を高めることができる。
【実施例3】
【0066】
次に、本発明の実施例3を図面に基づいて説明する。
図11は実施例2による熱交換器に用いられる熱交換チューブの斜視図を示し、上記図6に対応させて表している。
【0067】
図11に示されるように、熱交換チューブ40Bは、それぞれ平坦な板状から形成されている第1チューブ半体50Bと、この第1チューブ半体50Bに接合される第2チューブ半体60Bとからなる。このような第1チューブ半体50B及び第2チューブ半体60Bにそれぞれ凸部51a(第1チューブ半体50Bの凸部51aのみ示す。)が形成されている。熱交換チューブ40Bには、排気ガスの熱を効率的に奪うためのフィン70が収納されている。即ち、フィン70が収納されていることにより、伝熱面積を増加させている。このように構成した熱交換チューブ40Bを用いた場合にも、本発明所定の効果を得ることができる。
【0068】
尚、本発明の熱交換器は、EGRクーラ以外にも排熱回収装置に搭載される熱交換器にも適用可能であり、また、車両以外にもコージェネレーションシステムへの適用も可能であり、これらのものに用途は限られない。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明の熱交換器は、ディーゼルエンジンに接続されるEGRクーラに好適である。
【符号の説明】
【0070】
20…EGRクーラ(熱交換器)、23…コアケース、26…冷却水導入管(第1熱媒体導入管)、27…冷却水排出管(第1熱媒体排出管)、40,40A,40B…熱交換チューブ、50,50A,50B…第1チューブ半体、51…(第1チューブ半体の)底部、51a,61a…凸部、51b,61b,51Ab…接触凹部、51c,61c…谷部、52…(第1チューブ半体の)起立部、60,60B…第2チューブ半体、61…(第2チューブ半体の)底部、62…(第2チューブ半体の)起立部。
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