特許第5764570号(P5764570)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5764570プロセス工具の多帯域の圧力を制御する方法及び制御するための装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5764570
(24)【登録日】2015年6月19日
(45)【発行日】2015年8月19日
(54)【発明の名称】プロセス工具の多帯域の圧力を制御する方法及び制御するための装置
(51)【国際特許分類】
   C23C 16/52 20060101AFI20150730BHJP
【FI】
   C23C16/52
【請求項の数】15
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-542109(P2012-542109)
(86)(22)【出願日】2010年11月29日
(65)【公表番号】特表2013-513028(P2013-513028A)
(43)【公表日】2013年4月18日
(86)【国際出願番号】US2010058156
(87)【国際公開番号】WO2011071706
(87)【国際公開日】20110616
【審査請求日】2012年7月13日
(31)【優先権主張番号】12/632,514
(32)【優先日】2009年12月7日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】592053963
【氏名又は名称】エム ケー エス インストルメンツ インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】MKS INSTRUMENTS,INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】ディング,ユンフワ
【審査官】 村岡 一磨
(56)【参考文献】
【文献】 特表2007−528603(JP,A)
【文献】 特表2009−524147(JP,A)
【文献】 特表2002−520847(JP,A)
【文献】 特開2007−243015(JP,A)
【文献】 特表2007−528556(JP,A)
【文献】 特表2008−534925(JP,A)
【文献】 特開2009−076807(JP,A)
【文献】 特表2009−543061(JP,A)
【文献】 米国特許第05453124(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0050326(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0243060(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0000530(US,A1)
【文献】 国際公開第2004/055855(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 16/00−16/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセス工具の少なくとも2つの帯域へ流れるガス又は蒸気の圧力を制御するための多帯域圧力制御装置システムにおいて、
前記プロセス工具の対応する帯域へ前記ガス又は蒸気の流れを提供するように構成及び配列されており、前記多帯域圧力制御装置システムが入口から受け入れた前記ガス又は蒸気の流れを分割する少なくとも2つの流路であって、それぞれの流路が、(i)各々の流路のガス又は蒸気の前記圧力を制御するように構成及び配列されており、それぞれの流路の質量流量センサであって、当該関連付けられている前記流路を通る流れの関数としての質量流量信号を提供するように構成及び配列されている質量流量センサと、制御弁とを有する質量流量制御装置と、(ii)前記質量流量制御装置の下流に位置し、前記流路からのガス又は蒸気の漏れ速度を提供するように構成されている漏らし(leak-by)オリフィス又はノズルと、(iii)前記質量流量制御装置の下流に位置し、前記流路内の圧力を測定して下流圧力信号を提供する下流圧力変換器とを含んでいる、流路と、
前記下流圧力変換器が提供する前記下流圧力信号と前記質量流量センサが提供する質量流量信号とを受け取り、前記プロセス工具のそれぞれの帯域のための真の流れについての情報、及び、前記プロセス工具の室から出るガスの真の漏れ速度を確定するように構成及び配列されており、前記質量流量制御装置の前記制御弁を制御する制御装置と、
上流圧力信号を前記制御装置に提供するために、入口の上流圧力を測定するための上流圧力変換器であって、前記上流圧力信号が、前記制御装置によって、各流路の質量流量制御に及ぼす上流圧力外乱の効果を低減するべくそれぞれの流路について前行制御を講じるために使用される、上流圧力変換器とを備えている多帯域圧力制御装置システム。
【請求項2】
れぞれの帯域のための前記真の流れについての情報は、対応する前記質量流量信号の関数である、請求項に記載の多帯域圧力制御装置システム。
【請求項3】
各帯域のための前記真の流れについての情報は、対応する漏らしオリフィス又はノズルを通る各流れの関数である、請求項に記載の多帯域圧力制御装置システム。
【請求項4】
前記漏らしオリフィス又はノズルは、チョーク流れ条件下に作動するように構成されている、請求項に記載の多帯域圧力制御装置システム。
【請求項5】
前記漏らしオリフィス又はノズルは、チョーク流れ条件下及び非チョーク流れ条件下に作動するように構成されている、請求項に記載の多帯域圧力制御装置システム。
【請求項6】
前記漏らしオリフィス又はノズルの下流圧力を測定するための圧力変換器を更に含んでいる、請求項に記載の多帯域圧力制御装置システム。
【請求項7】
前記制御装置は、それぞれの漏らしオリフィス又はノズルについて流量対圧力の較正表を含んでいる、請求項に記載の多帯域圧力制御装置システム。
【請求項8】
前記制御装置は真の流れについての情報を、以下の関係式、即ち、
【数1】
に基づいて計算し、ここで、
chamber,iは、流路iについての前記プロセス工具へ流入する流量であり、
mpc,iは、流路iにおける前記質量流量制御装置の前記流量センサによって測定された流量であり、
leakby,iは、流路iにおける前記オリフィス又はノズルの特性に基づいて計算され、
また、
【数2】
であって、
C’は、オリフィスについての排出係数であり、
iは、オリフィスの断面寸法であり、
d,iは、流路iにおける下流圧力変換器によって測定された下流圧力であり、そして、
f(γ,M,T)は、ガス関数、即ち、ガスの比熱比γと、ガスの分子量Mと、ガスの温度Tの関数であり、
そして、
【数3】
は、流路iの前記圧力変換器によって測定された下流圧力Pd,iの変化率と、流路iについての前記制御弁と前記プロセス工具の間の下流体積Vd,iと、測定されたガス又は蒸気温度Tと、の関数であり、Tstpは、標準温度、即ち273.15Kであり、Pstpは、標準圧力、即ち1.01325×10Paである、請求項に記載の多帯域圧力制御装置システム。
【請求項9】
前記上流圧力信号は、圧力の影響を受けにくい流量の制御が前記少なくとも2つの流路のガス又は蒸気の流れに提供されるように、前記制御装置によって、生の流量センサ信号への上流圧力外乱を補償するために使用される、請求項1に記載の多帯域圧力制御装置システム。
【請求項10】
プロセス工具の室の少なくとも2つの帯域へ流れるガス又は蒸気の圧力を制御する方法において、
入口からガス又は蒸気の流れを受け入れ、当該流れを少なくとも2つの流路に分割する工程と、
質量流量制御装置の下流で、それぞれの流路からの流れの一部を、前記流路からのガス又は蒸気の漏れ速度を提供するように構成されている漏らしオリフィス又はノズルの使用によって分流させる工程と、
前記質量流量制御装置の質量流量センサから、それぞれの流路を通る流れの関数としての質量流量信号を制御装置に提供する工程と、
前記質量流量制御装置の下流に位置する下流圧力変換器により前記流路内の圧力を測定して下流圧力信号を前記制御装置に提供する工程と、
制御装置により、質量流量制御装置の制御弁を制御して、前記少なくとも2つの流路のそれぞれからプロセス工具の室の各帯域へ導入されるガス又は蒸気の圧力を、設定点と前記測定された圧力の関数として制御する工程と、
上流圧力変換器において、前記少なくとも2つの流路のそれぞれからガス又は蒸気の圧力を制御するための上流圧力信号を前記制御装置に提供するために前記プロセス工具の入口の上流の上流圧力を測定する工程であって、前記上流圧力信号が、各流路の前行制御のために使用されて各流路の質量流量制御に及ぼす上流圧力外乱の効果を低減する、上流圧力を測定する工程と、
前記制御装置で、前記プロセス工具のそれぞれの帯域のための真の流れについての情報を確定し、前記室における真の漏れ速度を確定する工程とを有する方法。
【請求項11】
前記それぞれの帯域への真の流れについての情報は、対応する前記質量流量信号の関数である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記真の流れについての情報は、対応する前記漏らしオリフィス又はノズルを通る流れの関数である、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記漏らしオリフィス又はノズルは、チョーク流れ条件下に作動するように構成されている、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記漏らしオリフィス又はノズルは、チョーク流れ条件と非チョーク流れ条件のどちらの条件下にも作動するように構成されている、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記制御装置は、それぞれの漏らしオリフィス又はノズルについて流量対圧力の較正表を含んでいる、請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本出願は、2009年12月7日出願の米国特許出願第12/632,514号に基づくものであって、同特許出願に対する優先権を主張し、その内容全体をここに参考文献として援用する。
【0002】
本開示は、多帯域圧力制御装置に関し、より詳しくは、真空堆積室の様なプロセス工具の多帯域の圧力を制御する改善された方法及び制御するための改善された装置に向けられている。
【背景技術】
【0003】
製造される半導体ウェーハの大型化に伴い、真空堆積室の様なプロセス工具へガス又は蒸気を送達するためのシステムには、それぞれのウェーハの均一堆積と高品質加工を保証するために、堆積プロセスで使用されるガス又は蒸気をプロセス工具の1つより多くの帯域へ同時に導入することが求められている。所望の成果を実現するには、それぞれの帯域への入力流れの圧力を所望圧力に維持することが必須である。而して、ガス又は蒸気の流れを別々に制御される流路を通してプロセス室の2つの帯域の中へ制御された圧力で提供するものとしてデュアル帯域圧力制御装置が知られている。ウェーハ寸法が大きいほどなおいっそう望ましいとされつつあることから、ガス又は蒸気の圧力を制御するための多帯域圧力制御装置は、ガス又は蒸気をプロセス室の2つより多くの帯域へ制御された圧力で提供するように設計されねばならない。しかしながら、帯域の数が増加すれば、より多くの帯域を制御する必要性が当然ながら出てくることから、多帯域圧力制御装置の製造費用を縮減する必要がある。また、これらの制御装置によってもたらされる物理的空間制限を軽減するために更なる努力が講じられねばならない。
【0004】
実施においては、ウェーハは、ウェーハ支持体上に配置され、真空によって所定場所に保持される。より大きなウェーハの場合、ウェーハは自身とウェーハ支持体の間の接触区域の周りに完全なシールを形成することができないかもしれない。結果として、これらの接触区域の1つ又はそれ以上での多少の漏れが生じて、帯域のそれぞれへ導入されるガスの圧力を制御するのが困難になる可能性がある。現在のところ、ウェーハ支持体とウェーハの間の接触区域の漏れにもかかわらずそれぞれの帯域への流入流れの所望圧力が維持されるようにするためには、それぞれの帯域へのガス又は蒸気の流入流れ圧力を調節することができるように、それぞれの流路の対応する帯域への流入流れから流れの一部を部分的に分流させるためのニードル弁(「漏らし(leakby)」弁と呼称)が採用されている。
【0005】
而して、漏らし弁は、確実に、それぞれの帯域への流入流れが所与の同じ圧力設定点について流路間で一致するように、それぞれの流路を微調整するのに使用することができる。こうして、室の様々な帯域へ流入する流量は、様々なニードル弁を微調整することによって均等化させることができる。しかしながら、ニードル弁は、高価であり、大抵は範囲の限られている製造区域の空間を物理的に奪ってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献1】 国際公開第2004/055855号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示の態様及び実施形態は、これまでに指摘されている欠点について、真空堆積室の様なプロセス工具の少なくとも2つの帯域へ流れるガス又は蒸気の圧力を制御する方法及び制御するための多帯域圧力制御装置システムによって、その解決を図る。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本システムは、プロセス工具の対応する帯域へガス又は蒸気の流れを提供するように構成及び配列されている少なくとも2つの流路であって、それぞれの流路が、各々の流路のガス又は蒸気の圧力を制御するように構成及び配列されている圧力制御装置と、流路からのガス又は蒸気の漏れ速度を提供するように構成されている漏らしオリフィス又はノズルとを含んでいる、流路と、室における真の漏れ速度を確定することができるように、プロセス工具のそれぞれの帯域への真の流れについての情報を確定するように構成及び配列されている制御装置と、を備えている。
【0008】
本開示の他の特徴及び利点は、ここに記載されている例示としての実施形態の詳細な説明を図面を参照しながら読み解いてゆけば理解されることであろう。
本開示の態様は、次に続く説明を添付図面と併せて精読することからより深く理解されるものであり、図面は本質的に説明を目的としたものであり制限を課すものではないと考えられたい。図面は、必ずしも縮尺が合っているわけではなく、むしろ開示の原理に重点を置いている。
【0009】
図面には、或る特定の実施形態が描かれているが、当業者には、描かれている実施形態は説明目的であり、示されている実施形態並びにここに記載されている他の実施形態の変型が本開示の範囲内で想起され実践され得ることが理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】 真空堆積室の多帯域へのガス又は蒸気の流入流れの圧力を制御するための多帯域制御装置の1つの実施形態の部分概略部分ブロック図である。
図2図1の多帯域制御装置の1つの流路の部分概略部分ブロック図である。
図3】 真空堆積室の多帯域へのガス又は蒸気の流入流れの圧力を制御するための多帯域制御装置の第2の実施形態の部分概略部分ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
先に説明されている様に、本開示の実施形態は、多帯域圧力制御のための改善された解法を提供するためのシステム及び提供する方法に向けられている。本システム及び方法は、上流圧力外乱に対応した、改善された圧力制御性能を提供している。具体的には、本システム及び本方法については、一方では上述のデュアル帯域圧力制御装置の材料、製造、及び性能についての費用を縮減しながらも、真空堆積室の様なプロセス工具の多帯域への真の流れについての情報を提供するように、システムは構成及び配列されており、方法は施行されている。
【0012】
特に、本システムは、それぞれのニードル弁を、それぞれの流路の圧力制御のための漏らしラインを提供するオリフィス又はノズルで置換している。その様なオリフィス/ノズル構成は、多帯域圧力制御装置の購買者及びユーザーには望ましいことに、費用、材料、及び空間を縮減する。但し、オリフィス/ノズルを単独で採用しようとすれば、当該オリフィスを、現行装置の既存のニードル弁セットアップに適合させるために機械加工する際に極めて厳しい公差が要求されることになろう。そうなれば、システムに甚大な費用が加算されることになり、それぞれのニードル弁をより単純な装置と置き換えることによって費用を削減しようという目的が挫かれてしまうことであろう。
【0013】
本発明の1つの態様によれば、多帯域圧力制御装置は、オリフィス/ノズルのニードル弁との差し替えを、対応するニードル弁用の置換物としてのオリフィス/ノズルの構築及び採用時の製造公差を容認され得る公差に留めながら、提供するように配列及び構成されている。
【0014】
別の態様によれば、システムは、何らかの上流圧力外乱を感知するように構築及び配列されている。これは、上流圧力を感知する圧力変換器又はセンサを採用することによって遂行されるのが望ましい。圧力変換器は、多帯域圧力制御装置が圧力の影響を受けにくい(PI:pressure insensitive)流れ制御を提供するために使用することのできる情報を提供する。上流圧力外乱があり、質量流量制御装置のセンサに偽の流量信号があれば、システムはそのことを上流圧力変換器の出力のおかげで知り、偽の流量信号を取り消す。多帯域圧力制御装置は、更に、上流圧力情報を使用して、上流圧力外乱が下流圧力の制御に影響を及ぼす前に前行制御を講じることができる。而して、記載されているシステム及び方法は、製造者及び顧客らにとって少ない費用でより優れた制御性能を提供する。
【0015】
図1及び図2を参照すると、多帯域圧力制御装置システム10の1つの実施形態は、ガス源14からのガス又は蒸気を受け入れる入口12を含んでいる。システムへ流入する流れの速度は、Qtで示されている。上流圧力Pu部16が、システムへ流入するガス又は蒸気の圧力を感知し、上流圧力測定値を表す信号を制御装置26へ提供するように、接続されている。システムは、入口から流れを受け入れ、流れを複数(2つ又はそれ以上)の流路18a、18b...18n間で分割する。それぞれの流路は、質量流量制御装置(20a、20b...20nで表示)を含んでいる。それぞれの質量流量制御装置20は、質量流量センサ22と制御弁24を含んでいる。質量流量制御装置20のセンサ22は、対応する流路18を通るガス又は蒸気の流量を感知し、感知された流量を表す信号を制御装置26へ提供するように、構築及び配列されている。制御装置26は、ユーザーインターフェース(UI)を通して、ユーザーからデータを受信したりユーザーへデータを送信したりするように配列及び構成されている。それぞれの流路18には、更に、対応する流路の圧力を感知するための圧力変換器(28a、28b...28nと表示)が設けられている。それぞれの変換器28によって測定された圧力を表す信号が制御装置26に提供される。
【0016】
上述の様に、ニードル弁は高価であり、また、大きな空間を奪う。従って、それぞれのニードル弁を、実質的に安価であり対応するニードル弁よりも空間を奪わないオリフィス/ノズルと置換するのが望ましい。但し、ニードル弁を排除すれば、システムを細かに調節するために個々の流路を微調整する能力がなくなる。これは、それぞれの流路を通る流れが一致するようにオリフィスと弁では性能を厳しい公差内で相等しくさせること、という高度な要件を生じさせる。その様な厳しい公差は、費用をつり上げ、結果的にニードル弁の排除によって手に入る蓄えを失わせることになる。
【0017】
本発明の1つの態様によれば、関心対象の真の測定値は、「漏らし」オリフィス/ノズルを通る流れに関わりなく、それぞれの流路を通ってプロセス工具の各帯域へ流入する蒸気又はガスの真の流れであることが判明している。このやり方では、そうでなければ要求されるであろう厳しい公差の懸念なしに、それぞれの流路に、各々の流路からの漏らしを提供するためのオリフィス/ノズル32a、32b...32nを設けることができる。漏らしオリフィス/ノズル32を含む漏らしラインは全て、圧力制御のために流路からガス又は蒸気を引き出すための真空ポンプ34に接続されている。
【0018】
このやり方では、プロセス工具36のそれぞれの帯域へ送達されるガスの圧力は、精確に制御されることになる。それぞれの下流変換器28は、対応する流路内の圧力の測定値を提供していて、測定された圧力の関数としての信号を制御装置26へ生成する。制御装置26は、測定された圧力を設定点の圧力と比較し、流路と関連付けられている制御弁24に信号を提供して、測定された圧力と設定点が同じに保たれるように、流れに対する何らかの調節を施させる。
【0019】
システム10のそれぞれの流路を通ってプロセス工具36へ流入する真の流れを提供するために、それぞれの流路は、各対応する流路を通る流れの速度を制御するための質量流量制御装置20を含んでいる。それぞれの質量流量制御装置20のセンサ20の生の流量センサ信号は、典型的には、プロセス工具診断のために使用されている。しかしながら、何らかの上流圧力外乱は、流量センサに偽の流量信号を生成することであり、少なくとも幾つかの用途ではプロセス工具の診断中に偽の警報を引き起こす原因となろう。更に、生の流量センサ信号は、室内のウェーハの周りの漏れについての十分な指標とはならない。
【0020】
従って、システム10の制御装置26は、それぞれのセンサ22と上流圧力変換器16とそれぞれの下流圧力変換器28からのデータを使用して、それぞれの流路を通ってプロセス工具36へ流入する真の流れを以下の関係式、即ち、
【0021】
【数1】
に従って測定及び制御するように構成及び配列されており、ここに、
chamber,iは、流路iについてのプロセス工具36へ流入する正味又は真の流量であり、
mpc,iは、質量流量制御装置20の流量センサ22によって測定された流量である。当該流量は更に、それが圧力の影響を受けにくい流量となるように、流路iの上流圧力変換器16によって補償されるものであり、
leakby,iは、流路iのオリフィス/ノズル32の特性に基づいて計算される。図1の実施形態では、それぞれのノズル/オリフィス32は、それぞれのノズル/オリフィスを通るチョーク流れ条件―測定することができるか又は当該ノズル/オリフィスの特性に基づいて計算することができる―が存在するように構築されており、そして最後の項、即ち、
【0022】
【数2】
は、流路iの圧力変換器28によって測定された下流圧力Pd,iの変化率と、流路iについての制御弁24とプロセス工具36の間の下流体積Vd,iと、測定されたガス/蒸気温度Tと、の関数である。Tstpは、標準温度、即ち273.15Kであり、Pstpは、標準圧力、即ち1.01325×10Paである。
【0023】
流路を通って流れるガス又は蒸気が既知であるなら、Qleakby,iを計算する場合の唯一の変数は下流圧力Pであり、下流変換器28を用いて測定することができる。よって、
【0024】
【数3】
であり、ここに、
C’は、オリフィスについての排出係数(典型的な値は0.7から1.0)であり、
iは、オリフィスの断面寸法であり、
d,iは、流路iにおける変換器28によって測定された下流圧力であり、そして、
f(γ,M,T)は、ガス関数、即ち、ガスの比熱比γと、ガスの分子量Mと、ガスの温度Tの関数である。
【0025】
図2を参照して、Qchamber,iは、プロセス室の帯域iにおけるウェーハの周りの真の漏れを示している。これは、それまでプロセス工具診断に使用されてきた変数Qmpcr,iよりも精度が高く有意である。ウェーハの周りの漏れ速度を診断するのにQchamber,iの使用が受け入れられることで、その結果、漏らしオリフィス/ノズルに課せられる厳しい公差要件の必要性は排除され、従ってそれぞれのオリフィス/ノズルの費用は軽くなる。成果は、本システム及び方法は、(a)多帯域圧力制御用途での優れた制御性能と、(b)多帯域圧力制御装置からの圧力の影響を受けにくい流れ出力情報と、(c)プロセス工具診断のための、室の様なプロセス工具への真の流れについての情報と、を提供し、なお且つニードル弁の必要性を排除する、というものである。
【0026】
成果は、多帯域圧力制御用途のための優れた解法であり、即ち、上流圧力外乱に対応した制御性能の改善、並びにプロセス工具診断のための、プロセス室への真の流れについての情報の提供である。
【0027】
以上に指摘されている様に、図1に示されている実施形態は、それぞれのノズル/オリフィス32が、それぞれのノズル/オリフィスを通るチョーク流れ条件―測定することができるか又は当該ノズル/オリフィスの特性に基づいて計算することができる―が存在するように構築されることを要件としている。図3を参照すると、多帯域圧力制御装置システム40は、それぞれのノズル/オリフィス42a、42b...42nがチョーク流れ条件と非チョーク流れ条件のどちらの条件下でも作動することができるように構築及び配列されているものである。具体的には、圧力変換器44が、漏らしオリフィス/ノズルを通る流れがチョークしていなくても漏らし流量を計算することができるように、漏らしラインの下流圧力を測定するよう接続及び配列されている。それぞれのオリフィス/ノズルを通る漏らし流れは、2つの方法のうちの1つ、即ち(1)数式か、又は(2)圧力変換器28によって測定されるノズルの上流圧力と下流圧力変換器44によって測定されるノズルの下流圧力の関数としてのQleakby,iの様々な値を有するルックアップ表、のどちらかによって計算することができる。
【0028】
当業者には、本開示の実施形態は、電気分解を制御するため制御アルゴリズム/ソフトウェア/信号を含めて、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、又はそれらの何らかの組合せに実装でき、また1つ又はそれ以上のネットワークを介して実装できることが理解されるであろう。
【0029】
ここでは一部の特定の実施形態を説明してきたが、当業者には、本開示の方法、システム、及び装置は、本開示の精神から逸脱することなく他の特定の形式に具現化され得ることが理解されるであろう。例えば、記載されているシステム及び方法は、多帯域制御システムの幾つの数の流路についても実装することができる。更には、制御装置26は方程式(1)を使用して、それぞれの流路についてQchamber,iを計算するように配列させることができる。代わりに、流量対圧力の様々な読み出しが提供されるように較正技法を使用して表を生成することもできる。
【0030】
従って、ここに記載され、付随の特許請求の範囲に請求されている実施形態は、あらゆる点で、本開示の説明を目的としたものであり制限を課すものではないと考えられたい。
【符号の説明】
【0031】
10 多帯域圧力制御装置システム
12 入口
14 ガス源
16 上流圧力変換器
18、18a、18b...18n 流路
20、20a、20b...20n 質量流量制御装置
22 質量流量センサ
24 制御弁
26 制御装置
28、28a、28b...28n 下流圧力変換器
32、32a、32b...32n オリフィス/ノズル
34 真空ポンプ
36 プロセス工具
40 多帯域圧力制御装置システム
42、42a、42b...42n ノズル/オリフィス
44 圧力変換器
図1
図2
図3