(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
近位部分と、遠位部分と、前記近位部分から前記遠位部分まで延びているワーキングチャネルと、前記遠位部分に設けられており且つ前記ワーキングチャネルと連通している内視鏡の穴と、前記近位部分に設けられており且つ前記ワーキングチャネルと連通しているポートと、を備えている内視鏡と、
第一の近位端から第一の遠位端まで延びており且つ前記内視鏡がその中に配置されている第一の管腔と、第二の近位端から第二の遠位端まで延びており且つ細長い医療器具を収容する構造とされている第二の管腔と、該第二の管腔と流体連通している第一の穴及び第二の穴と、を備えている内視鏡シースと、
前記内視鏡シースに連結されて前記内視鏡の遠位端を覆う内視鏡キャップであって、前記内視鏡の穴から遠位に間隔があいた位置にある遠位端と、当該内視鏡キャップの外周面上に配置された可動でない傾斜部とを有し、該傾斜部が、前記第二の管腔を通って送達された細長い医療装置を、外方に向かって前記内視鏡の長手軸線から離れる方向に延びる角度付けられた経路に沿って、偏向させるようにされている、内視鏡キャップと、を備えており、
前記第一の穴が前記第二の管腔の前記第二の近位端に配置されており、前記第二の穴が、前記第二の管腔の前記第二の遠位端に配置されており、前記第二の穴が前記内視鏡の遠位端の近位側に隔置されている、ことを特徴とする進入装置。
前記第一の穴が前記第一の近位端の遠位側に配置されており、前記第二の穴が前記第一の遠位端の近位側に配置されている、ことを特徴とする請求項1に記載の進入装置。
前記内視鏡の穴が前記内視鏡の側壁を貫通して設けられており、前記第二の穴が前記内視鏡の穴の近位側に隔置されている、ことを特徴とする請求項1に記載の進入装置。
【図面の簡単な説明】
【0012】
該装置は、図面及び以下の説明を参照することによって更によく理解できる。図面に示されている構成部品は、必ずしも等尺ではなく、本発明の原理を示す際に強調されている。更に、図面において、種々の図面を通して同様の符号は対応する部品を示している。
【0013】
【
図1】
図1は、内視鏡シース100を示している図である。
【0014】
【
図2】
図2は、医療器具320を示している図である。
【0015】
【
図3】
図3は、内視鏡キャップ130を示している図である。
【0016】
【
図4A】
図4Aは、結合部材140を備えている内視鏡キャップ130を示している図である。
【0017】
【
図4B】
図4Bは、内視鏡シース100と内視鏡キャップ130とを示している図である。
【0018】
【
図5】
図5は、結合部材150を備えている内視鏡シース100を示している図である。
【0019】
【
図6A】
図6Aは、傾斜部205を備えている内視鏡キャップ100を示している図である。
【
図6B】
図6Bは、傾斜部205を備えている内視鏡キャップ100を示している図である。
【
図6C】
図6Cは、傾斜部205を備えている内視鏡キャップ100を示している図である。
【0020】
【
図6D】
図6Dは、内視鏡シース100内を送り込まれている器具320を示している図である。
【0021】
【
図7】
図7は、内視鏡シース100とテザー装置とを示している図である。
【0022】
【
図8】
図8は、内視鏡シース100内を送り込まれている器具320を示している図である。
【0023】
【0024】
【
図9D】
図9Dは、ガイド装置400をテザー及びガイドワイヤ上に装填する方法を示している図である。
【0025】
【
図9E】
図9Eは、内視鏡シース100及びガイドワイヤ400を示している図である。
【0026】
【
図10A】
図10Aは、内視鏡シース100を使用して大きな柔軟な胆管ステントを総胆管内へ給送する方法を示している図である。
【
図10B】
図10Bは、内視鏡シース100を使用して大きな柔軟な胆管ステントを総胆管内へ給送する方法を示している図である。
【
図10C】
図10Cは、内視鏡シース100を使用して大きな柔軟な胆管ステントを総胆管内へ給送する方法を示している図である。
【
図10D】
図10Dは、内視鏡シース100を使用して大きな柔軟な胆管ステントを総胆管内へ給送する方法を示している図である。
【
図10E】
図10Eは、内視鏡シース100を使用して大きな柔軟な胆管ステントを総胆管内へ給送する方法を示している図である。
【
図10F】
図10Fは、内視鏡シース100を使用して大きな柔軟な胆管ステントを総胆管内へ給送する方法を示している図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
[定義]
他の意味として規定されていない限り、本明細書において使用されている全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術における当業者が通常理解している意味と同じ意味を有している。矛盾する場合には、定義を含む本明細書によって支配されるであろう。以下、好ましい方法及び材料を記載するが、ここに記載されているものと類似している又は等価な方法及び材料が本発明の実施又は試験において使用することができる。ここに記載している材料、方法、及び実施例は単に例示的なものであり、限定されることを意図したものではない。
【0028】
本明細書において使用されている、“備えている”、“含んでいる”、“有している”、“ことができる”、“包含している”という用語及びそれらの変形は、状況に応じて変形され得る伝統的な語句、用語、又は文字であることを意図されており、付加的な作用又は構造の可能性を排除するものではない。本発明はまた、明示的に記載されているか否かに拘わらず、ここに記載されている実施形態又は部材を“含む”、“からなる”、及び“から実質的に構成されている”他の実施形態をも意図している。
【0029】
本明細書において使用されている“生体適合性の”という用語は、それが意図されている生体内の使用環境内で実質的に無害であり且つ患者の生理系によって実質的に拒絶されない材料を指している。生体適合性構造又は材料は、大多数の患者の体内に導入されたときに、不所望に有害な、長期に亘る、又は増大する生物学的反応又は応答を生じさせない。このような反応は、典型的には、外科手術又は生体系内への異物の埋め込みに伴う極端ではない一時的な炎症とは区別される。
【0030】
本明細書において使用されている“遠位”という用語は、医療処置中に患者の解剖学的構造の目標部位に概ね近づく方向を指している。
【0031】
本明細書において使用されている“近位” という用語は、医療処置中に概ね医師に近づく方向を指している。
【0032】
本明細書において使用されている“狭窄”という用語は、体管腔が隣接の管腔部分より狭くなっていることを指している。
【0033】
図1は、内視鏡302の外周に沿って設けられている内視鏡シース100を示しており、該内視鏡は、近位部分306と遠位部分308とを備えている。シース100は、近位部分102と遠位部分104とを備えている。該シースは、内視鏡の近位部分から内視鏡の遠位部分まで延びている。該シースは、内視鏡のための第一の管腔110と器具を該内視鏡に沿って送り込むための第二の管腔120とを備えている。幾つかの実施形態においては、シースは、器具を内視鏡に沿って送り込むため複数の管腔を備えている。第二の管腔120は、近位部分102から遠位部分104まで延びており且つ遠位に配置されている穴122と近位に配置されている穴124とを備えている。
【0034】
該シースは、使用される内視鏡のサイズに応じたある範囲の幅及び長さを有している。一般的には、シースの長さは約100cm〜約200cmの範囲内であり、シースの壁厚は約0.1mm〜約8mmである。管腔120の最大直径は、概ね約2mm〜約30mmの範囲内であり、約4mm〜約25mmであるのが好ましく、約6mm〜約20mmであるのが更に好ましく、8〜約15mmであるのが最も好ましい。幾つかの実施形態においては、シースは弾性材料によって作られており、管腔120は非拡張状態の直径と拡張状態の直径とを有しており、該拡張状態の直径は非拡張状態の直径よりも大きい。他の実施形態においては、シースは、シース管腔の非拡張状態の直径と拡張状態の直径とがほぼ同じであるように非弾性材料によって作られている。
【0035】
該シースは何らかの適当な生体適合性材料によって作られる。該シースは高分子材料からなるのが好ましい。一つの実施形態においては、シースは弾性材料によって作られている。適当な弾性材料としては、限定的ではないが、ポリウレタン系エラストマ、ポリエステル系エラストマ、ポリオレフィン系エラストマ、ポリアミド系エラストマ、ポリスチレン系エラストマ、フッ素系エラストマ、シリコーンラバー、フッ素ゴム、及びラテックスラバーがある。別の実施形態においては、シースは実質的に非弾性材料によって作られている。好ましい実施形態においは、シースは非弾性材料によって作られて、管腔120が収縮するときにシースの長さが実質的に変化せず且つ器具がその中を送り込まれるときに拡張するようになされている。一つの好ましい実施形態においては、シースは発泡ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)によって作られる。幾つかの実施形態においては、シースは必要に応じて1以上の材料でコーティングすることができる。例えば、シースは、内視鏡及びシースを患者の解剖学的構造内を進入させる補助とするために親水性の又は潤滑性の材料でコーティングしても良い。
【0036】
図2には、シース100を使用して選択された目標とされている解剖学的構造へ給送される器具320が示されている。図示されているように、器具320はシースの管腔120内を進められる器具を概略的に描写したものであることが意図されている。該器具は、シースの管腔内を任意であるが押し込みカテーテル又はその他の類似の器具に補助されて押し込まれても良く、該器具は引き込まれても良く、又は管腔内に押し込まれ且つ引き込まれても良い。器具320は、選択された目標とされる解剖学的構造に対する治療又は診断を提供するようになされた器具とするか、又は代替的には、選択された目標とされている解剖学的構造に対して別の治療若しくは診断器具を送り込む構造とされている器具とすることができる。器具320は、例えば、経鼻挿管、PEG−JチューブのJ部分、結腸減圧チューブ、胆管ステント、給送カテーテル、オーバーチューブ、導入器シース、又はその他の器具とすることができる。器具320は、近位端324と遠位端326とを備えている。幾つかの実施形態においては、以下に更に詳しく説明するように、器具320は、別の結合部材と相補形であり且つ該別の結合部材と結合する構造とされている結合部材322を備えている。他の実施形態においては、結合部材322は器具320に備えられていなくても良い。
【0037】
図3は、シースの遠位端に係合する構造とされている内視鏡キャップ130を示している。キャップ130は、シースから取り外し可能であるが、別の方法としてシースと一体であっても良い。該キャップは本体131を備えている管状構造であり、本体131は、近位端132と遠位端134と内視鏡の遠位端を受け入れる構造とされている穴135とを備えている。遠位端134は穴136,138を備えており、これらの穴は、各々、内視鏡のワーキングチャネル及び視覚化器具と整合する構造とされている。
【0038】
幾つかの実施形態においては、該キャップはシース100の遠位端を覆うように嵌合する構造とされている。例えば、該キャップは、内視鏡及びシースの遠位端を覆うように緊密に嵌合する直径に作られている。熱可塑性エラストマによって作られているキャップは、特にこのような実施形態に適している。キャップ130は摩擦内径面を有しており、該摩擦内径面は、キャップを内視鏡及びシースに更に固定する構造とされている。もう一つ別の実施形態においては、該キャップはシースの遠位端に取り付けられて固定されている。例えば、該キャップは超音波溶接プロセスによってシースの遠位端に取り付けることができる。他の実施形態においては、該キャップは、接着剤、マグネット、戻り止め構造、又はキャップ130をシース100に固定するか又は一時的に取り付ける構造とされている他の適当な構造及び材料を備えている。
【0039】
幾つかの実施形態においては、キャップ130は、該キャップを内視鏡及びシースに固定することができる構造とされている係合部分137を備えている。該係合部分は、キャップの近位端132と一体であっても良いし又は近位端132に取り付けてられても良い。該係合部分は、本体131から近位方向に延びているのが好ましく、摩擦内径面を提供する可撓性材料によって作ることができる。例えば、該係合部分は、本体131に対して成形されるポリウレタンによって作ることができる。別の実施形態においては、該係合部分は、例えばシリコーン又はその他の軟質ポリマーによって作ることができ、これは、キャップ130を内視鏡及びシースに取り付ける機能又は摩擦によって(しかしながら取り外し可能に)取り付ける機能を付与する。
【0040】
本体131は剛性材料によって作られている。幾つかの実施形態においては、本体の全て又は一部は概ね透明である。例えば、本体は透明なポリカーボネートポリマーによって作ることがきる。別の方法として、該本体は、ポリウレタン、アクリル樹脂、又はナイロンのような別の透明か半透明か又は不透明な高分子によって作ることができる。本体131は、その外径がキャップ130が使用される内視鏡の外形とほぼ同じであるような大きさとされているのが好ましい。例えば、本体131は、これらの外径を有している内視鏡と共に使用するためには、外径が約8.5mm〜約12mmである。当業者は、本体131が、これより大きいか又は小さい直径の内視鏡と共に使用するために適当な大きさとすることができ、又は類似の形状の内視鏡と共に使用できる構造の断面形状を有していても良いことがわかるであろう。
【0041】
図4Aには内視鏡キャップ130が図示されており、該内視鏡キャップは、穴122において管腔120とかみ合う構造とされている結合部材140を更に備えている。該結合部材はシース管腔内の応力の解放をもたらし、従って、シース内を器具が給送されている間に該シースが裂けるのを防止している。特に、結合部材140が定位置にある状態で器具が進められるときに、該器具は、管腔120から管腔146へと進入し、その後、患者の解剖学的構造内へと出て行く。該結合部材は、近位端142と、遠位端144と、近位端142から遠位端144まで延びている管腔146とを備えている。結合部材140は、穴122の近くで管腔120の内面と摩擦係合する構造とされている。別の方法として、内視鏡キャップがシースに固定的に取り付けられる場合には、結合部材140は管腔120とかみ合わせられて固定される。例えば、近位端142は、穴122において、超音波溶着又は当該技術において公知の別の適当な材料若しくは方法によって管腔120に取り付けられる。
図4Bにはシース100と連結された内視鏡キャップ130が示されており、結合部材140は管腔120と連結される。
【0042】
任意であるが、シースは、穴124において管腔120と連結されるか又はかみ合う構造とされている別の結合部材150を備えていても良い。
図5には、穴124において近位部分102及び管腔120と連結される結合部材150が示されている。結合部材150は本体151を備えており、本体151は、内視鏡のための管腔153と、器具がその中に挿入され内視鏡の遠位部分に向かって進められるようにされた管腔152とを備えている。内視鏡キャップ130と同様に、結合部材150は、シースから取り外し可能な構造とされていても良いし又はシースと一体化されていても良い。該結合部材は、本明細書において既に説明したもののような該結合部材を内視鏡及びシースに固定するための適当な構造部材を備えている。例えば、一つの実施形態においては、該結合部材150は、シースの近位端と一体化されており且つ内視鏡の近位部分と摩擦係合する構造とされている。任意であるが、内視鏡シースにキャップ130が無い場合には、シースは、穴122において管腔120と連結されるか又はかみ合う構造とされている結合部材150を備えており、この場合には管腔120内を進められた器具は、管腔153内に入り、その後に患者の解剖学的構造内へと出て行く。
【0043】
図6A 〜6Cには、十二指腸内視鏡用の構造とされている内視鏡キャップ130が図示されており、該キャップは、医療器具を選択された目標とする解剖学的構造に向けて偏向させるために使用できる傾斜部205を備えている。該キャップはまた、内視鏡の可視化器具(例えば、カメラ、CCD、又は光ファイバ部材)とワーキングチャネルとを収容できる構造とされている側方穴207をも備えている。該キャップはまた、上記し且つ
図6Cに図示されている結合部材140をも備えている。例示的な例として、
図6Dには、把持器具320を内視鏡の遠位端へと送り込むためにシース100及び内視鏡キャップ130を使用する方法が図示されている。図示されているように、器具320は、管腔120内に押し込まれ、その後に傾斜部205によって偏向されている。
【0044】
傾斜部205は、本体131に対して種々の仰角で作ることができる。しかしながら、一般的には、該傾斜部は、本体131に対して約1度〜約90度、好ましくは約5度〜約75度、更に好ましくは約10度〜約60度、最も好ましくは約20度〜約45度の範囲内の仰角を提供する。該傾斜部の傾斜面は、均一で平らな面とすることができ、又は別の方法として曲面であっても良い。該傾斜面は非外傷形状とされているのが好ましい。例えば、
図6Aに示されている傾斜部205は、傾斜面に沿って丸味が付けられた端縁を備えている非外傷性の外形を提供している。幾つかの実施形態においては、該傾斜部は、シース内を送り込まれた器具を受け入れる構造とされている面構造を備えている。例えば、傾斜部205は、管腔120内を送り込まれた器具を把持する構造とされている把持用の穴を備えている。該把持用の穴は、把持用器具320のための何らかの適当な形状又は形態をとることができる。適切な把持構造が、米国特許出願公開第2007/0208219号に開示されており、これらの構造はここに開示されている傾斜部に適用できる。
【0045】
該傾斜部は何らかの適当な生体適合性材料によって構成されていてもよい。幾つかの実施形態においては、該傾斜部は本体131と同じ材料によって作られている。他の実施形態においては、該傾斜部は本体131と異なる材料か又はこれらの材料を組み合わせたものによって作られている。該傾斜部は高分子材料によって作られるのが好ましい。傾斜部の特性、例えば可撓性/剛性は、当該技術において知られている適当な高分子材料を選択することによって調整することができる。例えば、摩擦係数の低い高分子材料は特に種々の実施形態に適しており、一方、摩擦係数の高い高分子材料は、例えば、給送される器具を把持する構造とされた傾斜部のような他の実施形態に適している。適当な高分子材料としては、限定的ではないが、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン、ポリプロピレン、パーフルオロエラストマ、フルオロエラストマ、ニトリル、ネオプレン、ポリウレタン、シリコーン、スチレン−ブタジエン、ラバー、ポリカーボネート、アクリル樹脂、ナイロン、又はこれらの組合せがある。
【0046】
図7には内視鏡302を覆って設けられたシース100が示されており、該内視鏡はテザー装置を備えている。該テザー装置は、器具を内視鏡に沿って近位部分306から遠位部分308へと引っ張るために使用される。内視鏡302は、近位部分306から遠位部分308まで延びているワーキングチャネル310を備えている。該ワーキングチャネルは、遠位部分308に設けられている穴312につながっている。テザー304は、該内視鏡に沿って管腔120内を近位部分306から遠位部分308まで延び、穴312を通ってワーキングチャネル310内に入っている。該テザーは、ワーキングチャネル内を通って近位部分306まで戻り且つポート314から出て行っている。該テザーは第一の端部305と第二の端部307とを有している。該テザーは、第二の端部307に配置されているのが好ましい結合部材316を備えている。該結合部材は、テザー304に取り付けられるか又は該テザーと一体に形成されている。該結合部材は、例えば、にかわ、接着剤、又は縫合糸によってテザーに取り付けられる。内視鏡302がひとたび選択された目標とされている解剖学的構造に到達し且つ器具320がテザーに結合されると、器具320は、テザーをワーキングチャネル310を介してポート314から引き戻すことによって内視鏡の遠位部分へと進められる。器具320は、テザーを該器具の遠位端326から引っ張るために使用されている間、該器具の近位端324から押されるのが好ましい。
【0047】
一つの例示的な実施形態において、
図8には、テザー装置を使用して管腔120内を進められた把持器具320が示されている。把持器具320は、該器具と一体化された結合部材322を備えている。該把持器具は、近位部分306から穴124まで延び、管腔120内を通り、穴122から出て行っている。以下に更に詳細に説明するように、遠位部分308まで給送させた後に、器具320はテザーから分離され、該テザーはワーキングチャネル310内へと引っ張り戻される。次いで、該把持器具は、当該技術において公知のように、患者の解剖学的構造内で種々の機能を果たすために使用される。シース100を備えている導入器具320は、導入経路の周囲の組織に対する粘膜の外傷を最少化している。
【0048】
テザー304は、ストラップ、ワイヤ、縫合糸、紐、又は意図されている使用方法に適したテザーとして機能することができる何らかの他の器具とすることができる。該テザーは、捩れることなく曲がる構造であるのが好ましい。付加的な器具が内視鏡のワーキングチャネル内に導入されるか又はワーキングチャネルが吸引又は減圧を提供するために使用される場合には、テザーは、該ワーキングチャネル内で最小の空間を占め且つ実質的に処置を妨げないことが好ましい。一つの実施形態においては、テザーは、直径が0.035ミリメートルのワイヤであり且つ例えば管腔径が4.8ミリメートルの内視鏡と共に使用することができる。もう一つ別の実施形態においては、テザーは、内視鏡のワーキングチャネルの内側面と合致する構造とされているナイロンストラップのような可撓性のストラップとされている。テザーは、合金及び高分子材料を含む種々の生体適合性材料によって作ることができる。適切な高分子材料としては、例えば、ナイロン、ポリエステル、ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン、又はポリプロピレンがある。適切な合金としては、例えばニッケル−チタン合金がある。テザーには1以上の材料をコーティングすることができる。テザーの少なくとも一部分を、患者の解剖学的構造内へテザーを進入させる補助とすることができる親水性材料又はその他の潤滑性材料によってコーティングするのが好ましい。テザーは、例えば、ニューヨーク州ヘンリエッタにあるSTS Biopolymer, Inc.,によるSLIP-COAT(登録商標)Biopolymerをコーティングすることができる。
【0049】
結合部材316,322は2つの医療器具を一時的に結合させる構造とされている何らかの適当な構造を備えている。例えば、結合部材は、
図2及び
図7に図示されている閉ループ構造を有していても良い。該結合部材としては、解くことができるか又は切断することができる縫合糸、一時的な若しくは溶解可能なボンド若しくは接着剤、磁石、又はこれらの組み合わせがある。該結合部材は生体適合性のボールを備えており、該ボールは、クリンプされ、接着され、さもなければ十分な大きさの引っ張り力(例えば、3ポンド(1.36キログラム))をかけることによって滑り出るか又は外れるように設計されており、その後に胃腸系を安全に通過されるか又は胃腸系によって吸収される。任意であるが、器具320は、例えば、分解可能か又は溶解可能な縫合糸によってテザーに直に結合される。
【0050】
該テザー装置は更に、器具を内視鏡の遠位部分を越えて進入させるために使用されるガイド器具を更に備えている(
図9A〜9E)。ガイド器具400は、可撓性又は半可撓性の細長い部材402、支点404、及び剛性が可変のケーブル406を備えている。細長い部材402は遠位部分410と近位部分412とを備えている。該細長い部材は、使用される内視鏡のワーキングチャネルのサイズ及び行なわれる処置に応じてある範囲の長さ及び直径を有している。一般的には、細長い部材402の長さは約100cm〜約300cmの範囲内である。断面の直径は、概ね約1mm〜約3mmの範囲内であり且つ内視鏡のワーキングチャネル内を進入させることができる構造とされているのが好ましい。当業者は、ここに提供されている全ての寸法が例示のみを意図したものであり、種々の寸法のガイド器具を特別な用途のために代用することができることがわかるであろう。
【0051】
細長い部材402は、剛性が可変のケーブル406を包囲して患者の解剖学的構造に直に曝されないように遮蔽する生体適合性材料からなる。該材料は、例えば、発泡ポリテトラフルオロエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、又はポリウレタンとすることができる。例示的な実施形態においては、細長い部材402は、熱収縮ポリテトラフルオロエチレンチューブのような熱収縮チューブを剛性が可変のケーブル406の外周に配置し、その後に該チューブをその位置で熱収縮させることによって作られる。該細長い部材は、解剖学的構造の蛇行した領域を横切らせるために、該シャフトに、十分な剛性、可撓性、及び耐圧縮性を付与する1以上の材料からなる。このような材料としては、ナイロン、ポリエーテルブロックアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエーテルエーテルケトン、又はこれらの組み合わせがある。しかしながら、当業者は、該細長い部材は、所望の特性を付与するために当該技術において知られている他の生体適合性材料によって作ることができることがわかるであろう。
【0052】
支点404が細長い部材402の遠位部分410に取り付けられるか又はこの部分と一体に形成されている。該支点は、テザー304を受け入れ且つ該テザーをその中又はその近くを進入させることができる場所を提供する構造とされている何らかの適切な構造である。支点404は、例えば、単一ループ構造(
図9A)、双ループ構造(
図9B)、又は内部に管腔405が延びている円筒形構造(
図9C)とすることができる。該支点は、直径が約1mm〜約3mmの範囲内であるのが好ましい。幾つかの実施形態においては、該支点は、ワイヤ、縫合糸、又は紐によって作られる。他の実施形態においては、該支点は更に硬質な材料によって作られる。しかしながら、一般的には、支点404は意図されている用途に適した何らかの材料によって構成される。該支点は、例えば、ナイロンのような高分子材料及び/又はニッケル−チタン合金のような金属材料を含んでいる。
【0053】
前記のガイド器具の一部には1以上の材料をコーティングすることができる。細長い部材402の少なくとも一部分は、親水性の材料又はその他の潤滑性材料によってコーティングされるのが好ましい。親水性コーティング又はその他の潤滑性コーティングは、患者の解剖学的構造又は導入器器具内での器具の進入を補助するものとして知られている。幾つかの実施形態においては、支点404は、その中を通るテザーの滑らかな進入を補助する材料によって作られ且つ/又は該材料をコーティングされている。好ましい材料としては、ポリテトラフルオロエチレン、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、ナイロン、及びポリオキシメチレンがある。
【0054】
剛性が可変のケーブル406が細長い部材402内に設けられており、ケーブル406は、近位部分412から支点404の近くの遠位部分410まで延びているらせん状のばね442を含んでいる。ばね442は隣接する巻き間のピッチが狭い。ステンレス鋼ワイヤのようなワイヤ444がばね442の中心穴を貫通して延びており、該ワイヤはばねの遠位端に固定されている。別の方法として、ワイヤ444とばね442との両方が遠位先端に固定されていても良い。ワイヤ444は、近位部分412の近位側に配置されているハンドアセンブリ413に操作可能に結合されている。ハンドアセンブリ413はアクチュエータ414を備えており、アクチュエータ414は、ばね442を圧縮したり又は展開したりするために使用できる。例えば、幾つかの実施形態においては、アクチュエータ414を近位方向に後退させることによってワイヤ444が後退される。ワイヤ444の後退によって、ばね442内の巻き間の距離が狭められ、その結果、ばねの可撓性が小さくなる。剛性が可変のケーブルの付加的な例が米国特許第4,215,703号及び第3,854,473号に開示されている。これらの米国特許の開示内容は、これに言及することによってその開示内容全体が本明細書に参考として組み込まれている。
【0055】
ガイド器具400は、テザー304の第一の端部305を支点404に通すことによって内視鏡の近位部分においてテザー304上に装着される。ガイド器具400はまた、ポート314を出たガイドワイヤ450の近位端上にも装着されており、目標とする解剖学的構造にカニューレを挿入するために使用される。テザーとガイドワイヤとは、例えば
図9Dに図示されているように双ループの支点404内を通すことができる。次いで、細長い部材402がポート314を介してワーキングチャネル310内へと進められる。その後に、該細長い部材は、ワーキングチャネル内を進められ、穴312を出て、遠位部分308を越えて選択された目標とする解剖学的構造へと進められる。幾つかの実施形態においては、内視鏡の起子装置が、細長い部材402を選択された目標領域内へ進入させるのを補助するために使用される。該細長い部材が、内視鏡の遠位部分を越えて進入すると、テザーは支点の周りにループ状になり且つ目標とする解剖学的構造内へ引っ張り込まれるのが好ましい。
【0056】
ひとたび細長い部材402の遠位部分410が目標の解剖学的構造480に到達すると、剛性が可変のケーブル406が使用されて補強され且つ細長い部材が定位置に係留される(
図9E)。次いで、テザーが、ワーキングチャネル310を介してポート314から引っ張り戻され、結合されている器具320が管腔120を介して遠位部分308に向かって進められる。器具320は、内視鏡の遠位部分に到達すると目標とされている解剖学的構造に向かって進められる。
【0057】
内視鏡を導入する際及びガイドワイヤを目標とする解剖学的構造内へと伸長させる際に、テザーは必要に応じて固定保持される。テザーは、内視鏡とガイド器具とが目標とする解剖学的構造へ進められている間、両端における制御が維持されるように十分に長いのが好ましい。別の言い方をすると、テザーは内視鏡の長さの2倍より長いのが好ましい。ガイド器具を使用している実施形態においては、テザーは、内視鏡の付加的な長さと穴312から目標とする解剖学的構造まで延びている細長い部材402の部分の長さとの2倍より長いのが好ましい。ポート314を出て行っているテザーの部分は、例えば係止器具(例えば、ノースカロライナ州ウィンストン−セレムにあるCook Endoscopy Inc.,によるfusion (登録商標)ガイドワイヤ係止器具)によってポートに固定保持することができる。同様に、テザーの他端特に管腔120内を近位部分306まで延びているテザーの部分は、係止機構若しくはこれと似た器具によって又はテザーを保持することによって固定保持することができる。細長い部材402又は器具320が目標とする解剖学的構造内に進められると、テザーは必要に応じて係止を解かれる。
【0058】
図10A〜10Fは、医療器具を内視鏡に沿って選択された目標とする解剖学的構造へと導入する方法を示している。一つの例示的な実施形態においては、内視鏡シース100は、内視鏡的逆行性胆道膵管撮影法(ERCP)において使用することができる。ERCPは十二指腸内視鏡が患者の口の中、及び食道、胃、十二指腸内を介して、胆樹及び膵臓の導管が十二指腸内へと開口している領域内に到達するまで挿入するステップを含んでいる。内視鏡のワーキングチャネルを介して送り込まれた器具は、次いで、導管系へアクセスするためにファータ乳頭を横切る。この位置で、これらの器具は診断及び治療処置を行なうために使用することができる。このような器具の例としては、ガイドワイヤ、バスケット、スネア、ステント、エクスラクションバルーン、導入器ブラシ、カテ−テル、及び通常は直径が約0.8mm〜4mmの子内視鏡がある。
【0059】
一つのERCP処置は、狭窄によって流体の排出が遮られている胆臓又は膵管の領域内へ柔軟な胆管ステントを送り込むことを含んでいる。この閉塞は胆管又は膵管内の腫瘍によって惹き起される。典型的には、症状が患者の体内に現れるまで、腫瘍は進行段階にあり且つ手術不能であると考えられる。その結果、腫瘍の管理は、通常は腫瘍を抑止することに焦点が絞られる。抑止のためのバイパス外科処置の代替例として、ステントがERCPによって送り込まれ且つ閉塞された領域内に位置決めされ、流体が該閉塞された領域を通り越して流れる経路が維持される。しかしながら、柔軟な胆管ステントの最大直径は、一般に内視鏡のワーキングチャネルの直径に依存する。その結果、幾つかの例においては、多数のステントを狭窄部内に配置して十分な排出を可能にしなければならない。ここに開示されている内視鏡シースを使用すると、直径が内視鏡のワーキングチャネルよりも大きい可塑性の胆管ステントを胆管又は膵管へ送り込むことができる。これらの比較的大きなチューブは、導管の更に効率の良い排出を補助し且つそれらの比較的小さな対抗品と比較して詰まりを受け難い。
【0060】
図10A〜10Fは、シース100を使用して大きな柔軟な胆管ステント610を総胆管内へ送り込む方法を図示している。テザー304、ガイド器具400、及び傾斜部205を備えているキャップ130もまたステントを送り込むために使用されている。該処置は、
図10Aに示されているように、テザーを管腔120内に配置し且つ管腔310内を戻すことによって始められる。次いで、内視鏡が患者の体内へ進められて十二指腸602内に位置決めされ、総胆管606及び膵管への穴の位置にあるオッディ括約筋及びファータ乳頭604が見えるようにされる。次いで、ガイドワイヤ450が穴207,312からファータ膨大部を通って胆臓系内へと伸長される(
図10B)。ガイドワイヤは、狭窄部608を通されて進められるのが好ましい。導管内へのカニューレの挿入を補助するために、拡張管カテーテルが必要に応じて使用される。拡張管カテーテルの補助によって総胆管にカニューレを挿入する方法の更に詳細な説明が米国特許出願公開第2005/0059890号に開示されている。該米国特許出願公開の開示内容は、これに言及することによってその全体が本明細書に参考として組み入れられている。ガイド器具400は、内視鏡の近位部分においてガイドワイヤ及びテザー304の外周に装填される。該ガイド器具の細長い部材402は、内視鏡のワーキングチャネル内を進められ、その後に、穴207,312から導管系内へと伸長され、その間ずっと支点404を介してガイドワイヤの外周に沿って進入している(
図10C)。該内視鏡は起子装置を備えており、該起子装置は、ガイド器具を胆臓に向かって偏向させるために使用される。細長い部材402が導管系内へ進入するにつれて、テザーもまた支点404との接触を介して進められる。支点404は、狭窄部608を通過して進められ、胆管ステントは、目標とする解剖学的構造内へ進められるときに定位置へと引き込まれるのが好ましい。ひとたび細長い部材402が所望の位置まで進められると、アクチュエータ414を操作することによって剛性が可変のケーブル406が係合され、その結果、細長い部材402の補強がなされる。この補強によって、該細長い部材が定位置に係留され且つ器具320の給送中の巻きつぶれを防止することができる剛性が付与される。
【0061】
次に、胆管ステントが内視鏡の近位部分においてテザーに結合される。該ステントは、テザーに結合する構造とされている給送カテーテルを介して装填され且つ送り込まれるのが好ましい。器具320としての該給送カテーテルは、テザーに結合するための結合部材322を備えており且つカテーテルがその近位端324から押すことができるように補強部材又は部分的に堅牢な部分を備えているのが好ましい。ステント又は給送カテーテルを押し込むことによって、導入中にテザーにかかる引っ張り力が減じられ且つ粘膜の外傷の発生が減じられる。器具320がひとたび結合されると、器具320は穴124において管腔120内へ進められる。器具320は、管腔120内を進められ、その後に内視鏡の遠位部分へ進められる。器具320が穴122から管腔120を出ると、器具320は傾斜部205によってファーテル乳頭604に向かう方向へ偏向される(
図10D)。
【0062】
該給送カテーテルは、テザー304によって引っ張られながら近位端から押され続けることによって、ガイド器具400の細長い部材402に沿って進められる。該給送カテーテルは、遠位部分410従って目標とする解剖学的構造へと進められるのが好ましい(
図10E)。給送カテーテルがひとたび目標部位(すなわち、狭窄部)に達すると、該給送カテーテルは次いでテザーから分離される。例えば、該給送カテーテルは近位端に保持され、一方、テザーはポート314において結合部材316を結合部材322から分離させるのに十分な力で引き戻され、その結果、前記給送カテーテルは前記テザーから分離される。次いで、テザーが導管系から引っ張り出され、内視鏡のワーキングチャネル310内へ戻される。ガイド部材400とそれに続いてガイドワイヤ450とが導管系から進められて内視鏡内へ戻される。次に、内側押し込みカテーテルを使用してステントを給送カテーテルから押し出すことによって、胆管ステント610が狭窄部位608へと送り込まれる(
図10F)。次いで、給送カテーテルが患者の解剖学的構造から取り外される。当業者は、アクセスするステップ、送り込むステップ、分離させるステップ、及び器具を目標とする解剖学的構造から取り外すステップは、必要に応じて変更することができることがわかるであろう。例えば、ガイドワイヤを使用して追加の処置がなされるべきである場合には、ガイドワイヤを胆管からほんの部分的に後退させることが好ましい。
【0063】
以上、本発明の種々の実施形態を説明したが、本発明の範囲内で更に多くの実施形態及び具体例が可能であることは当業者に明らかであろう。従って、本発明は、添付の特許請求の範囲及びその等価物が参考にされることを除いて限定されるべきではない。