(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5764612
(24)【登録日】2015年6月19日
(45)【発行日】2015年8月19日
(54)【発明の名称】セパレーター取付け金具
(51)【国際特許分類】
E04G 17/06 20060101AFI20150730BHJP
E04G 17/065 20060101ALI20150730BHJP
【FI】
E04G17/06 B
E04G17/065 B
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-98948(P2013-98948)
(22)【出願日】2013年5月9日
(65)【公開番号】特開2014-218837(P2014-218837A)
(43)【公開日】2014年11月20日
【審査請求日】2014年12月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000143558
【氏名又は名称】株式会社国元商会
(72)【発明者】
【氏名】渡 章浩
【審査官】
津熊 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−009491(JP,A)
【文献】
特開2004−190459(JP,A)
【文献】
特開2012−31602(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 17/06
E04G 17/065
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
棒状本体の外端部に、セパレーターの螺軸部を当該棒状本体の長さ方向に連結するセパレーター連結部が設けられ、前記棒状本体の内端部には、この棒状本体を他の金属面に溶接するための溶接用取付け部が設けられたセパレーター取付け金具において、前記棒状本体の内端部には、当該棒状本体を構成する2枚の並列する両帯状金属板の遊端部を当該帯状金属板の巾方向に沿って外側に半円形に突曲させて成る半円形軸部が形成され、これら両帯状金属板の半円形軸部が互いに重ねられて前記棒状本体の長さ方向に対し直角向きに構成された円柱状軸部によって前記溶接用取付け部が構成されている、セパレーター取付け金具。
【請求項2】
両帯状金属板の前記半円形軸部は、当該帯状金属板の折返しで形成された二重板部のプレス加工により中実構造に構成されている、請求項1に記載のセパレーター取付け金具。
【請求項3】
中実構造の前記半円形軸部は、帯状金属板の内側への折返しで形成された二重板部のプレス加工により構成され、帯状金属板の内側への折返し端部が、両帯状金属板の半円形軸部が互いに重ねられて構成された円柱状軸部の内部に包み込まれている、請求項2に記載のセパレーター取付け金具。
【請求項4】
前記棒状本体は、セパレーター連結部を備えた当該棒状本体の外端部において繋がるように1枚の長尺の帯状金属板の折返しによって構成されると共に、前記溶接用取付け部に隣接する一定長さ領域において並列する前記帯状金属板が互いに結合されて成る二枚重ね板状部を備え、互いに重なる両帯状金属板の半円形軸部どうしは互いに溶接されていない、請求項1〜3の何れか1項に記載のセパレーター取付け金具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土止め壁を築造するときのコンクリート型枠を鋼矢板に支持させる場合などに使用されるセパレーター取付け金具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種のセパレーター取付け金具は、棒状本体の外端にセパレーター連結部を設け、当該棒状本体の内端に鋼矢板への取付け手段が設けられたものであり、前記取付け手段としては、特許文献1に記載されるように、鋼矢板側に前以て溶接などにより取り付けられたナットにねじ込み可能な螺軸や、直接鋼矢板表面にスタッド溶接出来るスタッド溶接用ボルト、或いは鋼矢板の側辺に嵌合させるコ字形嵌合部材などで構成されたものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−190459号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように従来のこの種のセパレーター取付け金具は、鋼矢板への取付け手段が何れも棒状本体とは別の部材から構成され、この別部材の取付け手段を棒状本体の内端に取り付ける必要があり、コスト高になっていた。勿論、棒状本体を溶接可能な金属材から構成すれば、この棒状本体の内端を直接鋼矢板表面に溶接することも可能になるが、溶接に耐え得ると共に棒状本体の内端の両側に隅肉溶接用の開先部を形成しようとすれば、相当に肉厚な金属材を使用しなければならず、大幅なコストダウンを図ることが出来ない。又、棒状本体を鋼矢板の表面に対して直角向きではなく任意の角度だけ傾斜させた状態で、必要な溶接強度が得られるように溶接することも難しい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記のような従来の問題点を解消することのできるセパレーター取付け金具を提案するものであって、本発明に係るセパレーター取付け金具は、後述する実施例との関係を理解し易くするために、当該実施例の説明において使用した参照符号を括弧付きで付して示すと、棒状本体(2)の外端部に、セパレーター(S)の螺軸部(Sa)を当該棒状本体(2)の長さ方向に連結するセパレーター連結部(3)が設けられ、前記棒状本体(2)の内端部には、この棒状本体(2)を他の金属面(M)に溶接するための溶接用取付け部(4)が設けられたセパレーター取付け金具(1)において、前記棒状本体(2)の内端部には、当該棒状本体(2)を構成する2枚の並列する帯状金属板(2a,2b)の遊端部を当該帯状金属板(2a,2b)の巾方向に沿って外側に半円形に突曲させて成る半円形軸部(12a,12b)が形成され、これら両帯状金属板(2a,2b)の半円形軸部(12a,12b)が互いに重ねられて前記棒状本体(2)の長さ方向に対し直角向きに構成された円柱状軸部(13)によって前記溶接用取付け部(4)が構成されている。
【発明の効果】
【0006】
上記本発明の構成によれば、棒状本体の内端に円柱状軸部から成る溶接用取付け部が設けられているので、鋼矢板などの取付け対象物の金属面にこの棒状本体を取り付ける場合、溶接用取付け部、即ち、前記円柱状軸部を当該金属面に線接触状態に当て付けることにより、当該円柱状軸部の両側に隅肉用開先部が形成されるので、この円柱状軸部の両側の隅肉用開先部を利用して金属面に棒状本体の内端を強固且つ容易に隅肉溶接することが出来る。
【0007】
しかも溶接用取付け部が円柱状軸部によって構成されているので、金属面に対して棒状本体を、前記円柱状軸部の軸心の周りに任意の角度に傾けても、棒状本体の内端両側に形成される隅肉用開先部の断面形状やサイズが変わらないので、棒状本体を任意に傾けた状態で強固且つ容易に溶接することが出来る。更に本発明の構成によれば、棒状本体の内端に別部材の円柱状金属棒を溶接して前記円柱状軸部から成る溶接用取付け部を構成するのではなく、棒状本体を構成する並列金属板部の端部の加工により、棒状本体と一体に円柱状軸部から成る溶接用取付け部を構成するのであるから、安価に実施することが出来る。
【0008】
尚、棒状本体を構成する帯状金属板部の板厚が適度にあれば、各帯状金属板部の内端に形成される半円形軸部を互いに重ねて構成する円柱状軸部が中空状であっても良いが、両帯状金属板(2a,2b)の前記半円形軸部(12a,12b)は、当該帯状金属板(2a,2b)の折返しで形成された二重板部のプレス加工により中実構造に構成することが出来る。この構成によれば、中空状の円柱状軸部である場合と比較して、使用する帯状金属板の板厚を薄くしても、棒状本体に長さ方向の引張力又は圧縮力が作用したときに円柱状軸部が内側又は外側に潰れるように変形する恐れが無くなり、強度の高いセパレーター取付け金具を軽量且つ安価に製造することが出来る。この場合、中実構造の前記半円形軸部(12a,12b)は、帯状金属板(2a,2b)の外側への折返しとプレス加工により構成することも出来るが、帯状金属板(2a,2b)の内側への折返しで形成された二重板部(2d)のプレス加工により構成し、帯状金属板(2a,2b)の内側への折返し端部が、両帯状金属板(2a,2b)の半円形軸部(12a,12b)が互いに重ねられて構成された円柱状軸部(13)の内部に包み込まれるように構成することが出来る。この構成によれば、引張力又は圧縮力に対する強度をより一層高めることが出来る。
【0009】
又、前記棒状本体(2)は、セパレーター連結部(3)を備えた当該棒状本体(2)の外端部において繋がるように1枚の長尺の帯状金属板の折返しによって構成すると共に、前記溶接用取付け部(4)に隣接する一定長さ領域において並列する前記帯状金属板(2a,2b)がカシメ(10)や別部品のリベットなどにより互いに結合されて成る二枚重ね板状部(11)を設け、互いに重なる両帯状金属板(2a,2b)の半円形軸部(12a,12b)どうしは互いに溶接しないで構成することが出来る。この構成によれば、溶接用取付け部を含む棒状本体の全体を溶接無しで安価に構成することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1Aは、本発明一実施例のセパレーター取付け金具の平面図、
図1Bは、同セパレーター取付け金具の使用状態を示す平面図である。
【
図2】
図2は、同上セパレーター取付け金具の側面図である。
【
図3】
図3は、同上セパレーター取付け金具の正面図である。
【
図6】
図6A〜
図6Cは、帯状金属板端部の加工手順を説明する要部の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の好適実施例を
図1〜
図5に基づいて説明すると、本発明実施例に係るセパレーター取付け金具1は、棒状本体2の外端部に、セパレーターSの螺軸部Saを当該棒状本体2の長さ方向に連結するセパレーター連結部3が設けられ、前記棒状本体2の内端部には、この棒状本体2を他の金属面Mに溶接するための溶接用取付け部4が設けられたものである。
【0012】
前記棒状本体2は、1枚の長尺帯状金属板を折り返して構成したものであり、その外端部と成るUターン部5の内側にナット6を挟み込むと共に、このナット6に対する上下一対の回り止め成形部7と左右一対の位置決め用突起部8を一体成形し、前記Uターン部5にナット6のネジ孔6aと同心状の貫通孔9を穿設して、前記セパレーター連結部3を構成している。
【0013】
前記棒状本体2の並列する帯状金属板2a,2bは、内端部の溶接用取付け部4に隣接する一定長さ領域において互いに重ね合わせられ、この互いに重ね合わせられた帯状金属板2a,2bどうしを、一方の帯状金属板2bからプレス加工により突出させた中空突起部を他方の帯状金属板2aに設けられた座繰り貫通孔内に嵌合させた状態で当該中空突起部を座繰り貫通孔側から押し潰して先端部を拡径させるカシメ10により一体に結合して、二枚重ね板状部11が構成されている。この二枚重ね板状部11の各帯状金属板2a,2bの遊端部は、それぞれ内側に折り返して重ねわせると共に断面が外側に突曲する中実状の半円形になるようにプレス加工して半円形軸部12a,12bに構成され、これら両半円形軸部12a,12bを互いに重ね合わせて、前記棒状本体2の長さ方向に対し直角向きで中実構造の円柱状軸部13が形成され、この中実構造の円柱状軸部13によって前記溶接用取付け部4が構成されている。
【0014】
尚、棒状本体2の二枚重ね板状部11の基部(溶接用取付け部4のある側とは反対側)の屈曲部には、補強用のリブ14が形成され、セパレーター連結部3には、ナット6のネジ孔6aに螺合させたセパレーターSの弛み止め手段15が併設されている。このセパレーターSの弛み止め手段15は、特許文献1にも記載された従来周知のものであって、片側の帯状金属板2aに溶接を使わずに係止された取付け板部16から、棒状本体2のUターン部5の外側に斜めに被さるように連設され且つ長さ方向に沿った両側辺に補強用側板部17aが折曲形成された傾斜板部17が連設され、この傾斜板部17にセパレーター挿通孔18と、このセパレーター挿通孔18の両側辺から内側へ折曲連設され且つ先端にセパレーター螺軸部Saに係合する係合爪部19a,19bを備えた一対の係合舌片20a,20bが設けられたものである。
【0015】
以上のように構成されたセパレーター取付け金具1は、
図1Bに示すように、溶接用取付け部4を構成している円柱状軸部13を鋼矢板表面などの金属面M上に当接させ、当該円柱状軸部13の軸心の周りで棒状本体2を揺動させて、金属面Mに対する棒状本体2の起立角度を定めた状態で、当該円柱状軸部13の両側でこの円柱状軸部13の周面と金属面Mとの間に形成されている溶接用開先部に対して隅肉溶接21a,21bを施工する。このようにして金属面M上に固着したセパレーター取付け金具1のセパレーター連結部3に対してセパレーターSを連結するのであるが、セパレーターSの螺軸部Saを、弛み止め手段15における傾斜板部17のセパレーター挿通孔18から棒状本体2の貫通孔9を経由してナット6のネジ孔6aに捩じ込むときは、弛み止め手段15における一対の係合舌片20a,20bの係合爪部19a,19bは、セパレーター螺軸部Saに対して殆ど干渉しない。
【0016】
セパレーターSをセパレーター取付け金具1に取り付け終わったならば、弛み止め手段15における傾斜板部17の遊端側をハンマーなどで打ち叩いて当該傾斜板部17を棒状本体2の方に倒伏させるように変形させると、一対の係合舌片20a,20bの係合爪部19a,19bが棒状本体2のUターン部5の表面に圧接しながら貫通孔9の中心に向かって移動することになるので、当該一対の係合爪部19a,19bがセパレーター螺軸部Saのネジ溝に食い込み、当該セパレーター螺軸部Saの弛み止めとなる。尚、セパレーターSには、反対側の螺軸部などを利用して、前記金属面Mとの間にコンクリート打設空間を形成するための型枠が支持される。
【0017】
尚、セパレーター連結部3の具体構造は、上記実施例の構造に限定されるものではない。勿論、セパレーターSの弛み止め手段15も本発明に必須のものではないが、上記実施例の構成によれば、セパレーター連結部3、溶接用取付け部4、及びセパレーターSの弛み止め手段15を含むセパレーター取付け金具1の全体が溶接を使用せずに組み立てられる。
【0018】
上記セパレーター取付け金具1の実際の製作手順では、1枚の長尺帯状金属板の両端に半円形軸部12a,12bをそれぞれ形成し、Uターン部5となる長さ方向の中央部に回り止め成形部7と位置決め用突起部8を成形すると共に貫通孔9を穿設した後に、ナット6を挟み込むように折り返して、当該ナット6を内側に固定されたUターン部5を形成し、最後にカシメ10により並列する2枚の帯状金属板2a,2bを一体に結合して、二枚重ね板状部11と中実構造の円柱状軸部13から成る溶接用取付け部4とを構成することになるが、帯状金属板2a,2bの先端に半円形軸部12a,12bを形成する場合、
図6Aに示すように、帯状金属板2a,2bの先端の半円形軸部12a,12bを形成する領域2cを当該帯状金属板2a,2bの板厚分だけ外側にずらせるようにZ形にプレス加工し、次に
図6Bに示すように、前記の一段高くなった領域2cを内側へ二つ折りにプレス加工して二重板部2dを形成し、最後に
図6Cに示すように、前記二重板部2dをプレス加工型により半円形軸部12a,12bにプレス加工することになる。このとき、半円形軸部12a,12bの先端角部2eは出来る限り曲面が残らないように加工すると共に、半円形軸部12a,12bの内部にも出来る限り空間が残らないように加工して、両半円形軸部12a,12bが合わさって円柱状軸部13が形成されたときに、周面全体がほぼ連続した円弧面となり且つ内部がほぼ中実状態になるようにするのが望ましい。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明のセパレーター取付け金具は、セパレーターの一端部を鋼矢板などの金属表面に結合する際に、当該金属表面に溶接により容易に取り付けることが出来る金具として活用出来る。
【符号の説明】
【0020】
1 セパレーター取付け金具
2 棒状本体
2a,2b 帯状金属板
3 セパレーター連結部
4 溶接用取付け部
5 Uターン部
6 ナット
7 上下一対の回り止め成形部
8 左右一対の位置決め用突起部
9 貫通孔
10 カシメ
11 二枚重ね板状部
12a,12b 半円形軸部
13 中実構造の円柱状軸部
15 セパレーターの弛み止め手段
21a,21b 隅肉溶接
S セパレーター
Sa セパレーター一端の螺軸部
M 金属面