(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
処理対象の画像領域における第1の解像度のカラーデータと、前記処理対象の画像領域における前記第1の解像度と同じ解像度の輝度データとから、前記処理対象の画像領域におけるカラーデータと輝度データとの関係を表す回帰直線を算出し、
前記算出された回帰直線に前記処理対象の画像領域内の中心または中心に相当する位置の前記第1の解像度より高い第2の解像度の輝度データを代入することで、前記第2の解像度の輝度データを第2の解像度のカラーデータに変換する、
画像処理方法。
処理対象の画像領域における第1の解像度のカラーデータと、前記処理対象の画像領域における前記第1の解像度と同じ解像度の輝度データとから、前記処理対象の画像領域におけるカラーデータと輝度データとの関係を表す回帰直線を算出し、
前記算出された回帰直線に前記処理対象の画像領域内の中心または中心に相当する位置の前記第1の解像度と等しい第2の解像度の輝度データを代入することで、前記第2の解像度の輝度データを第2の解像度のカラーデータに変換する、
画像処理方法。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1は、カラーデジタル複合機1の内部構成例を示す断面図である。
図1に示すデジタル複合機1は、画像読取部(スキャナ)2、画像形成部(プリンタ)3、原稿自動送り装置(ADF)4および操作部(コントロールパネル(
図1には図示しない))を有する。上記画像読取部2は、原稿面を光学的に走査することにより原稿上の画像をカラー画像データ(多値の画像データ)あるいはモノクロ画像データとして読み取る。上記画像形成部3は、カラー画像データ(多値の画像データ)あるいはモノクロ画像データに基づく画像を用紙上に形成する。上記ADF4は、原稿載置部にセットされた原稿を1枚ずつ搬送する。上記ADF4は、上記画像読取部2が原稿面の画像を読み取れるように、所定の速度で原稿を搬送する。上記操作部は、ユーザが操作指示を入力したり、ユーザに対する案内を表示したりする。
【0008】
また、デジタル複合機1は、画像データを入出力する種々の外部インターフェースを有する。たとえば、デジタル複合機1は、ファクシミリデータを送受信するためのファクシミリインターフェース、および、ネットワーク通信を行うためのネットワークインターフェースなどを有する。このような構成により、デジタル複合機1は、コピー機、スキャナ、プリンタ、ファクシミリ、および、ネットワーク通信機として機能する。
【0009】
まず、上記画像読取部2の構成について説明する。
上記画像読取部2は、
図1に示すように、ADF4、原稿台ガラス10、光源11、リフレクタ12、第1ミラー13、第1キャリッジ14、第2ミラー16、第3ミラー17、第2キャリッジ18、集光レンズ20、光電変換部21、CCD基板22、および、CCD制御基板23とから構成されている。
【0010】
上記ADF4は、画像読取部2の上方に設けられる。上記ADF4は、複数の原稿を保持する原稿載置部を有する。上記ADF4は、原稿載置部にセットされた原稿を1枚ずつ搬送する。上記ADF4は、上記画像読取部2が原稿面の画像を読み取れるように、一定の搬送速度で原稿を搬送する。
【0011】
上記原稿台ガラス10は、原稿を保持するガラスである。上記原稿台ガラス10に保持された原稿面からの反射光は、ガラスを透過する。上記ADF4は、原稿台ガラス10全体を覆う。上記ADF4は、原稿台ガラス10上の原稿をガラス面に密着して固定する。また、上記ADF4は、原稿台ガラス10上の原稿に対する背景としても機能する。
【0012】
上記光源11は、原稿台ガラス10上に載置された原稿面を露光する。上記光源11は、例えば、蛍光灯、キセノンランプ、あるいは、ハロゲンランプ等である。上記リフレクタ12は、上記光源11からの配光分布を調整する部材である。上記第1ミラー13は、原稿面からの光を第2ミラー16へ導く。第1キャリッジ14は、上記光源11、上記リフレクタ12、および、上記第1ミラー13を搭載している。上記第1キャリッジ14は、図示しない駆動部から与えられる駆動力により原稿台ガラス10上の原稿面に対する副走査方向に速度(V)で移動する。
【0013】
上記第2ミラー16および上記第3ミラー17は、上記第1ミラー13からの光を上記集光レンズ20へ導く。上記第2キャリッジ18は、上記第2ミラー16および上記第3ミラー17を搭載している。上記第2キャリッジ18は、上記第1キャリッジ14の速度(V)の半分の速度(V/2)で副走査方向に移動する。原稿面の読取位置から光電変換部21の受光面までの距離が一定の光路長に保つため、上記第2キャリッジ18は上記第1キャリッジの1/2の速度で従動する。
【0014】
原稿面からの光は、上記第1、第2、第3ミラー13、16、17を介して集光レンズ20に入射する。上記集光レンズ20は、入射する光を電気信号に変換する光電変換部21へ導く。原稿面からの反射光は、原稿台ガラス10のガラスを透過し、第1ミラー13、第2ミラー16、第3ミラー17で順次反射され、集光レンズ20を介して光電変換部21の受光面で結像する。
【0015】
上記光電変換部21は、複数のラインセンサを有する。上記光電変換部21を構成する各ラインセンサは、光を電気信号に変換する複数の光電変換素子を主走査方向に並べた構成である。これらのラインセンサは、副走査方向の間隔が規定の間隔となるように平行に並べて配置する。
【0016】
本実施例では、上記光電変換部21は、4つのラインCCDセンサを有する。光電変換部21としての4ラインCCDセンサは、後述するように、1つのモノクロラインセンサ61Kと3つのカラーラインセンサ61R、61G、61Bとで構成する。モノクロラインセンサ61Kは、黒の画像データを読み取る。3つのカラーラインセンサ61R、61G、61Bは、それぞれ3色のカラー画像データを読み取る。カラー画像をR(赤)、G(緑)、B(青)の3色で読み取る場合、カラー用のラインセンサは、R(赤)の画像を読み取る赤ラインセンサ61Rと、緑の画像を読み取る緑ラインセンサ61Gと、青の画像を読み取る青ラインセンサ61Bとにより構成する。
【0017】
上記CCD基板22は、上記光電変換部21を駆動させるためのセンサ駆動回路(図示しない)を実装する。上記CCD制御基板23は、上記CCD基板22及び上記光電変換部21を制御する。上記CCD制御基板23は、上記CCD基板22及び上記光電変換部21を制御する制御回路(図示しない)、および、上記光電変換部21からの画像信号の処理を行う画像処理回路(図示しない)を有する。
【0018】
次に、上記画像形成部3の構成について説明する。
上記画像形成部3は、
図1に示すように、用紙供給部30、露光装置40、第1〜第4の感光体ドラム41a〜41d、第1〜第4の現像装置42a〜42d、転写ベルト43、クリーナ44a〜44d、転写装置45、定着装置46、ベルトクリーナ47、ストック部48を有する。
【0019】
上記露光装置40は、第1〜第4の感光体ドラム41a〜41dに潜像を形成する。上記露光装置40は、画像データに応じた露光光を各色ごとの像担持体としての各感光体ドラム41a〜41dに照射する。上記第1〜第4の感光体ドラム41a〜41dは、静電潜像を保持する。上記感光体ドラム41a〜41dは、露光装置40から照射される露光光の強度に応じた静電潜像を形成する。
【0020】
上記第1〜第4の現像装置42a〜42dは、各感光体ドラム41a〜41dが保持する潜像をそれぞれの色で現像する。すなわち、上記現像装置42a〜42dは、対応する各感光体ドラム41a〜41dが保持する潜像に各色のトナーを供給することにより画像を現像する。たとえば、当該画像形成部がシアン(Cyan、深紫色)、マゼンタ(Magenta、鮮赤色)、イエロー(Yellow、黄色)の3色でとする減法混色によりカラー画像を得る構成である。この場合、第1〜第4の現像装置42a〜42dは、イエロー、マゼンタ、シアン、あるいは、ブラック(Black、黒色)の何れかの色で各感光体ドラム41a〜41dが保持する潜像を可視化(現像)する。つまり、第1〜第4の現像装置42a〜42dは、それぞれ、イエロー、マゼンタ、シアン、あるいは、ブラック(Black、黒色)の何れかの色のトナーを収容する。各第1〜第4の現像装置42a〜42dに収納する色(各色の画像を現像する順序)は、画像形成プロセスあるいはトナーの特性に応じて決定する。
【0021】
上記転写ベルト43は、中間転写体として機能する。各感光体ドラム41a〜41d上に形成された各色のトナー像は、順に中間転写体としての転写ベルト43に転写される。各感光体ドラム41a〜41dは、中間転写位置において、それぞれのドラム表面上のトナー像を中間転写電圧で転写ベルト43上に転写する。上記転写ベルト43は、各感光体ドラム41a〜41dが転写した4色(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)の画像を重ねたカラーのトナー像を保持する。上記転写装置45は、転写ベルト43上に生成したトナー像を被画像形成媒体としての用紙に転写する。
【0022】
また、用紙供給部30は、中間転写体としての転写ベルト43からトナー像を転写する用紙を転写装置45へ供給する。用紙供給部30は、適切なタイミングで転写装置45によるトナー像の転写位置へ供給する構成を有している。
図1に示す構成例では、用紙供給部30は、複数のカセット31、ピックアップローラ33、分離機構35、複数の搬送ローラ37、および、アライニングローラ39などを有する。
【0023】
複数のカセット31は、それぞれ被画像形成媒体としての用紙を収納する。カセット31は、任意のサイズの用紙を収容する。ピックアップローラ33は、カセット31から用紙を1枚づつ取り出す。分離機構35は、ピックアップローラ33がカセットから取り出す用紙が2枚以上になることを阻止する(1枚に分離する)。上記複数の搬送ローラ37は、上記分離機構35が1枚に分離した用紙をアライニングローラ39に向けて送る。上記アライニングローラ39は、転写装置45が転写ベルト43からトナー像を転写する(トナー像が(転写位置で)移動する)タイミングに合わせて、用紙を転写装置45と転写ベルト43が接する転写位置に送る。
【0024】
上記定着装置46は、トナー像を用紙に定着する。上記定着装置46は、たとえば、用紙を加圧状態で加熱することによりトナー像を用紙上に定着する。上記定着装置46は、転写装置45でトナー像が転写された用紙に定着処理を施し、定着処理した用紙をストック部48へ搬送する。ストック部48は、画像形成処理(画像がプリント)された用紙が排紙される排紙部である。また、上記ベルトクリーナ47は、転写ベルト43をクリーニングする。上記ベルトクリーナ47は、転写ベルト43上のトナー像が転写される転写面に残留している廃トナーを転写ベルト43から除去する。
【0025】
次に、デジタル複合機1の制御系統の構成について説明する。
図2は、デジタル複合機1における制御系統の構成例を示すブロック図である。
図2に示すように、デジタル複合機1は、制御系統の構成として、画像読取部(スキャナ)2、画像形成部(プリンタ)3、主制御部50、操作部51および外部インターフェース52を有する。
【0026】
上記主制御部50は、デジタル複合機1全体を制御する。すなわち、上記主制御部50は、操作部(コントロールパネル)51においてユーザから操作指示を受け付け、画像読取部2、画像形成部3、外部インターフェース52を制御する。
【0027】
上記画像読取部2および上記画像形成部3は、上述したように、カラー画像を取り扱う構成を有している。たとえば、カラーコピー処理を行う場合、主制御部50は、上記画像読取部2が読み取った原稿のカラー画像をプリント用のカラー画像データに変換して画像形成部3によりプリント処理する。なお、上記画像形成部3は、任意の画像形成方式のプリンタが適用できる。たとえば、上記画像形成部3は、上述したような電子写真方式のプリンタに限らず、インクジェット方式のプリンタあるいは熱転写方式のプリンタであっても良い。
【0028】
上記操作部(コントロールパネル)51は、ユーザが操作指示を入力したり、ユーザに対して案内を表示したりする。上記操作部51は、表示装置および操作キーなどにより構成される。たとえば、上記操作部51は、タッチパネル内蔵の液晶表示装置とテンキーなどのハードキーとを有する。
上記外部インターフェース52は、外部機器と通信を行うためのインターフェースである。上記外部インターフェース52は、たとえば、ファクシミリ通信部(FAX部)あるいはネットワークインターフェースなどの外部機器とである。
【0029】
次に、主制御部50内の構成について説明する。
図2に示すように、上記主制御部50は、CPU53、メインメモリ54、HDD55、入力画像処理部56、ページメモリ57、および、出力画像処理部58などを有する。
上記CPU53は、当該デジタル複合機1全体の制御を司る。上記CPU53は、たとえば、図示しないプログラムメモリに記憶されているプログラムを実行することにより、種々の機能を実現する。上記メインメモリ54は、作業用のデータなどが格納されるメモリである。上記CPU53は、メインメモリ54を使用して種々のプログラムを実行することにより種々の処理を実現する。たとえば、上記CPU53は、コピー制御用のプログラムに従って上記スキャナ2および上記プリンタ3を制御することにより、コピー制御を実現する。
【0030】
上記HDD(ハードディスクドライブ)55は、不揮発性の大容量のメモリである。たとえば、上記HDD55は、画像データを保存する。また、上記HDD55は、各種の処理における設定値(デフォルト設定値)を記憶する。たとえば、上記HDD55には、後述する量子化テーブルが記憶される。さらに、上記HDD55には、上記CPU53が実行するプログラムを記憶するようにしても良い。
【0031】
上記入力画像処理部56は、入力画像を処理する。上記入力画像処理部56は、当該デジタル複合機の動作モードに応じてスキャナ2などから入力する入力画像データを処理する。上記ページメモリ57は、処理対象とする画像データを記憶するメモリである。たとえば、上記ページメモリ57は、1ページ分のカラー画像データを格納する。上記ページメモリ57は、図示しないページメモリ制御部により制御される。上記出力画像処理部58は、出力画像を処理する。
図2に示す構成例では、上記出力画像処理部58は、プリンタ3が用紙にプリントする画像データを生成する。
【0032】
図3Aは、光電変換部21としての4ラインCCDセンサモジュールの外観図である。
図3Bは、光電変換部21内における構成例を示す図である。
上記光電変換部21は、光を受光するための受光部21aを有する。上記光電変換部21は、赤ラインセンサ61R、緑ラインセンサ61G、青ラインセンサ61Bおよびモノクロラインセンサ61Kの4つのラインセンサを有する。各ラインセンサは、受光素子としての光電変換素子(フォトダイオード)を主走査方向に複数画素分並べたものである。これらのラインセンサ61R、61G、61B、61Kは、光電変換部21の受光部21aに平行に並べて配置する。これらのラインセンサ61R、61G、61B、61Kは、副走査方向の間隔が規定の間隔となるように、平行に並べて配置する。
【0033】
上記赤ラインセンサ61Rは、赤色の光を電気信号に変換する。上記赤ラインセンサ61Rは、赤色の波長範囲の光に感度を有するラインCCDセンサである。上記赤ラインセンサ61Rは、赤色の波長範囲の光のみを透過する光学フィルタを配置したラインCCDセンサである。
【0034】
上記緑ラインセンサ61Gは、緑色の光を電気信号に変換する。上記緑ラインセンサ61Gは、緑色の波長範囲の光に感度を有するラインCCDセンサである。上記緑ラインセンサGは、緑色の波長範囲の光のみを透過する光学フィルタを配置したラインCCDセンサである。
【0035】
上記青ラインセンサ61Bは、青色の光を電気信号に変換する。上記青ラインセンサ61Bは、青色の波長範囲の光に感度を有するラインCCDセンサである。上記青ラインセンサ61Bは、青色の波長範囲の光のみを透過する光学フィルタを配置したラインCCDセンサである。
【0036】
上記モノクロラインセンサ61Kは、全色の光を電気信号に変換する。上記モノクロラインセンサ61Kは、各色の波長範囲を含む広域の波長範囲の光に感度を有するラインCCDセンサである。上記モノクロラインセンサ61Kは、光学フィルタを配置しないラインCCDセンサ、または、透明なフィルタを配置したラインCCDセンサである。
【0037】
次に、各ラインセンサの画素ピッチ及び画素数について説明する。
【0038】
カラー用の3つのラインセンサとしての赤ラインセンサ61R、緑ラインセンサ61Gおよび青ラインセンサ61Bは、画素ピッチおよび画素数としての受光素子(フォトダイオード)の数が同じである。たとえば、赤ラインセンサ61R、緑ラインセンサ61Gおよび青ラインセンサ61Bは、受光素子としてフォトダイオードを9.4μmピッチで配置する。赤ラインセンサ61R、緑ラインセンサ61G、青ラインセンサ61Bは、3750画素分の受光素子を有効画素領域に配置する。
【0039】
また、モノクロラインセンサ61Kは、画素ピッチおよび画像数が上記赤ラインセンサ61R、緑ラインセンサ61Gおよび青ラインセンサ61Bと異なる。たとえば、モノクロラインセンサ61Kは、受光素子としてフォトダイオードを4.7μmピッチで配置する。モノクロラインセンサ61Kは、7500画素分の受光素子を有効画素領域に配置する。この例では、モノクロラインセンサ61Kにおける受光素子のピッチ(画素ピッチ)は、上記赤ラインセンサ61R、緑ラインセンサ61Gおよび青ラインセンサ61Bにおける受光素子のピッチ(画素ピッチ)の半分である。モノクロラインセンサ61Kの有効画素領域における画素数は、各色ラインセンサ61R、61G、61Bの有効画素領域における画素数の2倍である。
【0040】
このような4つのラインセンサ61R、61G、61B、61Kは、副走査方向の間隔が規定の間隔となるように、平行に並べて配置する。各ラインセンサ61R、61G、61B、61Kは、読み取る画素データが副走査方向に上記規定の間隔分ずれる。カラー画像を読み取る場合、副走査方向におけるずれを補正するために、各ラインセンサ61R、61G、61B、61Kで読み取った画素データは、ラインメモリなどによって保持する。
【0041】
次に、各ラインセンサ61R、61G、61B、61Kの特性について説明する。
【0042】
図4は、カラー用のラインセンサとしての3つのラインセンサ61R、61G、61Bの分光感度特性を示す図である。
図5は、モノクロラインセンサ61Kの分光感度特性を示す図である。
図6は、光源11として用いるキセノンランプの分光分布を示す図である。
【0043】
図4に示すように、赤ラインセンサ61R、緑ラインセンサ61Gおよび青ラインセンサ61Bは、特定領域の波長にしか感度を持たない。これに対して、モノクロラインセンサ61Kは、
図5に示すように、400nm未満から1000nmを越える部分までの感度(広範囲の波長に感度)がある。一方、原稿の読取面を照明するための光源11としてのキセノンランプは、
図6に示すように、約400nmから730nmまでの波長の光を含む光を発光する。
【0044】
ここで、
図6に示す光源11からの光が白色の原稿で反射し、4ラインCCDセンサ21に照射された場合を考える。モノクロラインセンサ61Kは、単位面積当たりの感度が、他のカラーラインセンサ61R、61G、61Bに比べて高い。つまり、モノクロラインセンサ61Kは、他のカラーラインセンサ61R、61G、61Bに比べてその受光面積が小さくても、同等の感度を得る。従って、モノクロラインセンサ61Kの受光面積は、他のカラーラインセンサ61R、61G、61Bよりも小さい。モノクロラインセンサ61Kの画素数は、他のカラーラインセンサ61R、61G、61Bよりも多い。
【0045】
図4及び
図5に示す例では、モノクロラインセンサ61Kは、他のカラーラインセンサ61R、61G、61Bに比べて、単位面積当たりの感度が2倍である。このため、モノクロラインセンサ61Kは、他のカラーラインセンサ61R、61G、61Bに対して、受光面積が1/2であり、画素数が2倍である。画素数が2倍であるため、モノクロラインセンサ61Kは、主走査方向において、各カラーラインセンサ61R、61G、61Bに比べて2倍の解像度である。
【0046】
次に、光電変換部21の内部構成について説明する。
図7Aは、
図3Bに示すような各ラインセンサ61R、61G、61B、61Kの動作と各種の信号とのタイミングチャートである。
図7Bは、モノクロラインセンサ61Kが出力する画素信号を示す図である。
図7Cは、各カラーラインセンサ61R、61G、61Bが出力する画素信号を示す図である。
【0047】
まず、
図3Bに示す構成例における各ラインセンサ61R、61G、61B、61Kからの信号の流れについて説明する。
図3Bに示すように、各ラインセンサ61R、61G、61Bは、それぞれシフトゲート62R、62G、62Bおよびシフトレジスタ63R、63G、63Bに対応する。また、モノクロラインセンサKは、2つのシフトゲート62KO、62KEと2つのアナログシフトレジスタ63KO、63KEに対応する。各ラインセンサ61R、61G、61B、61Kに光が照射されると、それぞれのラインセンサ61R、61G、61B、61Kを構成する画素数分の受光素子(フォトダイオード)は、画素ごとに照射光量および照射時間に応じた電荷を発生する。
【0048】
たとえば、各ラインセンサ61R、61G、61Bにおける各受光素子(フォトダイオード)は、発生した各画素に対応する電荷をシフト信号(SH−RGB)として各シフトゲート62R、62G、62Bを介して各アナログシフトレジスタ63R、63G、63Bに供給する。各アナログシフトレジスタ63R、63G、63Bは、それぞれ転送クロックCLK1およびCLK2に同期して各ラインセンサ61R、61G、61Bからの各画素に対応した電荷としての画素情報(OS−R、OS−G、OS−B)をシリアルに出力する。各アナログシフトレジスタ63R、63G、63Bが転送クロックCLK1及びCLK2に同期して出力する画素情報(OS−R、OS−G、OS−B)は、それぞれ各画素における赤(R)、緑(G)、青(B)の値を示す信号である。
【0049】
また、モノクロラインセンサ61Kの受光素子数(例えば7500)は、ラインセンサ61R、61G、61Bの受光素子数(例えば3750)の2倍である。1つのモノクロラインセンサKは、2つのシフトゲート62KO、62KEと2つのアナログシフトレジスタ63KO、63KEとに接続する。シフトゲート62KOは、ラインセンサ61Kにおける奇数番目の各画素(受光素子)に対応して接続する。シフトゲート62KEは、ラインセンサ61Kにおける偶数番目の各画素(受光素子)に対応して接続する。
【0050】
ラインセンサ61Kにおける奇数番目の各受光素子と偶数番目の各受光素子とは、発生した各画素に対応する電荷をシフト信号(SH−K)として各シフトゲート62KO、62KEを介して各アナログシフトレジスタ63KO、63KEに供給する。各アナログシフトレジスタ63KO、63KEは、転送クロックCLK1およびCLK2に同期してラインセンサ61Kにおける奇数番目の各画素に対応した電荷としての画素情報(OS−KO)と偶数番目の各画素に対応した電荷としての画素情報(OS−KE)とをシリアルに出力する。各アナログシフトレジスタ63KO、63KEが転送クロックCLK1及びCLK2に同期して出力する画素情報(OS−KO、OS−KE)は、それぞれ奇数番目の各画素における輝度の値と偶数番目の各画素における輝度の値を示す信号である。
【0051】
なお、転送クロックCLK1およびCLK2は、
図3Bに示す構成例では、1本のラインで表現するが、電荷を高速に移動させるために、互いに逆位相のディファレンシャル信号である。
【0052】
次に、ラインセンサ61R、61G、61Bおよびラインセンサ61Kからの信号の出力タイミングについて説明する。
図7Aに示すように、ラインセンサ61R、61Gおよび61Bからの信号の出力タイミングとラインセンサ61Kからの信号の出力タイミングとは異なる。SH−RGB信号の周期に対応する光蓄積時間「tINT−RGB」とSH−K信号の周期に対応する光蓄積時間「tINT−K」とは、異なる。これは、ラインセンサ61Kの感度がラインセンサ61R、61G、61Bの感度よりも良いためである。
【0053】
図7Aに示す例では、ラインセンサ61Kの光蓄積時間「tINT−K」は、ラインセンサ61R、61G、61Bの光蓄積時間「tINT−RGB」の半分の時間である。ラインセンサ61Kの副走査方向における読取解像度は、ラインセンサ61R、61G、61Bの2倍になる。たとえば、ラインセンサ61Kの読取り解像度が600dpiである場合、ラインセンサの読取り解像度は、300dpiである。
【0054】
なお、転送クロックCLK1およびCLK2は共通である。従って、SH−K信号とSH−RGB信号とを共に出力した後の転送クロックCLK1およびCLK2に同期して出力するOS−R、OS−G、OS−Bは、有効な信号である。ただし、SH−RGB信号を出力せずSH−K信号のみを出力した後の転送クロックCLK1およびCLK2に同期して出力するOS−R、OS−G、OS−Bは無効な信号である。
【0055】
図7Bは、
図7Aに示すタイミングでシリアルに出力されるOS−R、OS−GおよびOS−Bの各画素の出力順を示す。
図7Cは、
図7Aに示すタイミングでシリアルに出力されるOS−KEおよびOS−KOの各画素の出力順を示す。
図7Cに示すように、モノクロラインセンサ61Kは、輝度信号(OS−K)としての奇数番目の画素値と偶数番目の画素値とを同時に出力する。
【0056】
次に、光電変換部21としての4ラインCCDセンサから出力される信号の処理について説明する。
図8は、光電変換部21からの信号を処理するスキャナ画像処理部70の構成例を示す図である。
図8に示す構成例では、スキャナ画像処理部70は、AD変換回路71、シェーディング補正回路72、ライン間補正回路73および高画質化回路74を有する。
【0057】
図3Bに示すように、光電変換部21は、ラインセンサ61R、61G、61Bからの出力信号としての3つのカラー信号OS−R、OS−G、OS−Bと、ラインセンサ61Kからの出力信号としての輝度信号OS−KO、OS−KEとの5系統の信号を出力する。
【0058】
これら5系統の信号をスキャナ画像処理部70内のA/D変換回路71が入力する。上記A/D変換回路71は、入力した5系統の各信号をそれぞれデジタルデータに変換する。上記A/D変換回路71は、デジタルデータに変換したデータを上記シェーディング補正回路72に出力する。上記シェーディング補正回路72は、図示しないシェーディング補正板(白基準板)の読取り結果に応じた補正値により、上記A/D変換回路71からの各信号を補正する。上記シェーディング補正回路72は、シェーディング補正した各信号を上記ライン間補正回路73へ出力する。
【0059】
上記ライン間補正回路73は、各信号における副走査方向の位相ずれを補正する。即ち、4ラインCCDセンサで読取った画像は、副走査方向にずれる。このため、ライン間補正回路は、その副走査方向のずれを修正する。たとえば、ライン間補正回路73は、先に読取った画像データ(デジタルデータ)をラインバッファに蓄積し、後から読まれた画像データにタイミングを合わせて出力する。上記ライン間補正回路73は、ライン間補正した各信号を高画質化回路74へ出力する。
【0060】
上記高画質化回路74は、上記ライン間補正回路73からの5つの信号に基づいて高解像度化した3つのカラー信号を出力する。上述したように、光電変換部21で読み取る画像データは、モノクロ(輝度)の画像信号が各カラーの画像信号よりも解像度が高い。ここでは、各カラーの画像データが300dpi(R300、G300、B300)で、モノクロ(輝度)の画像データがカラーの2倍の600dpi(600−O、K600−E)であることを想定する。この場合、上記高画質化回路74は、300dpiのカラー画像データと600dpiのモノクロの画像データに基づいて、600dpiのカラーの画像データ(R600、G600、B600)を生成する。また、上記高画質化回路74は、ノイズを低減したり、ブレを補正したりもする。
【0061】
次に、高画質化回路74における信号処理(高解像度化処理)について、詳細に説明する。
以下の説明では、赤の画素値を示す信号OS−Rに対応するデジタルデータをR300、緑の画素値を示す信号OS−Gに対応するデジタルデータをG300、青の画素値を示す信号OS−Bに対応するデジタルデータをB300、奇数番目の画素の輝度を示す信号OS−KOに対応するデジタルデータをK600−O、偶数番目の画素の輝度を示す信号OS−KEに対応するデジタルデータをK600−Eと呼ぶ。
【0062】
まず、ラインセンサ61R、61G、61Bで読取ったカラー画像信号の解像度をラインセンサ61Kと同等の解像度に向上させる手順について説明する。
図9は、ラインセンサ61Kで読み取った画素を示す図である。
図10は、
図9と同じ範囲をラインセンサ61R、61G、61Bで読み取った画素を示す。
図9と
図10とは、ラインセンサ61Kの読取り画素とラインセンサ61R、61G、61Bの読取り画素との関係を示す。
【0063】
以下の説明では、紙面の左右をラインセンサにおける受光素子(画素)の並び方向としての主走査方向とし、紙面の上下方向を副走査方向(キャリッジの移動方向または原稿の移動方向)とする。また、ラインセンサ61Kからの画素データとしての輝度の画像データ(K600−O及びK600−E)は、奇数および偶数の順序通りに並び替えたものとする。すなわち、
図9に示す例において、K600の(1,1)、(1,3)、(1,5)、(2,1)、(2,3)、…、(6,5)は、奇数番目の画素信号(K600−O)の出力である。また、
図9に示す例において、K600の(1,2)、(1,4)、(1,6)、(2,2)、(2,4)、…、(6,6)は、偶数番目の画素信号(K600−E)の出力に相当する。
【0064】
モノクロラインセンサ61Kの解像度は、カラーのラインセンサ61R、61G、61Bの2倍の解像度である。これは、カラーのラインセンサ61R、61G、61Bで読取った1画素がモノクロラインセンサ61Kで読み取った4(=2×2)画素に対応することを意味する。たとえば、
図9に示すK600(1,1)、K600(1,2)、K600(2,1)およびK600(2,2)からなる4画素の範囲は、
図10に示すRGB300(1,1)の1画素に相当する。つまり、ラインセンサ61Kで読取った6画素×6画素の読取り範囲(36画素分)は、ラインセンサ61R、61G、61Bが読取った3画素×3画素の読取り範囲(9画素分)に対応する。また、ラインセンサ61Kで読取った6画素×6画素の読取り範囲の面積は、ラインセンサ61R、61G、61Bが読取った3画素×3画素の読取り範囲と等しい面積となる。
【0065】
ここで、一例として、シアンのベタ画像とマゼンタのベタ画像とが接する画像を読取った場合を想定する。また、シアンのベタ画像とマゼンタのベタ画像との境界は、
図9及び
図10に点線で示したように、読取範囲の中心にあるものとする。
図9及び
図10の紙面に向かって境界線としての点線より左側がシアンのベタ画像であり、右側がマゼンタのベタ画像である。
【0066】
図9に示す点線の左側に位置する各画素{K600(1,1)、K600(1,2)、K600(1,3)、K600(2,1)、K600(2,2)、K600(2,3)、…、K600(6,3)}は、ラインセンサ61Kがシアンのベタ画像を読み取った画素である。
図9に示す点線の右に位置する各画素{K600(1,4)、K600(1,5)、K600(1,6)、K600(2,4)、K600(2,5)、K600(2,6)、…、K600(6,6)}は、ラインセンサ61Kがマゼンタのベタ画像を読取った画素である。
【0067】
これに対して、
図10に示す点線の左側に位置する各画素{RGB300(1,1)、RGB300(2,1)、RGB300(3,1)}は、ラインセンサ61R、61G、61Bがシアンのベタ画像を読み取った画素である。
図10に示す点線の右側に位置する各画素{RGB300(1,3)、RGB300(2,3)、RGB300(3,3)}は、ラインセンサ61R、61G、61Bがマゼンタのベタ画像を読み取った画素である。さらに、
図10に示す点線上に位置する各画素{RGB300(1,2)、RGB300(2,2)、RGB300(3,2)}は、ラインセンサ61R、61G、61Bがシアンのベタ画像とマゼンタのベタ画像の境界を読取った画素である。なお、RGB300は、
図10に示すR300、G300、B300を略したものである。
【0068】
上記のように、ラインセンサ61Kは、
図9の左に位置する18画素でシアンのベタ画像を読取り、右に位置する18画素でマゼンタのベタ画像を読取る。これに対して、ラインセンサ61R、61G、61Bは、
図10に示すように、左側に位置する3画素でシアンのベタ画像を読取り、右側に位置する3画素でマゼンタのベタ画像を読取り、中央に位置する3画素でシアンのベタ画像とマゼンタのベタ画像との両方を読取る。
【0069】
上述したように、A/D変換回路71は、各ラインセンサの各受光素子から出力された画素信号をデジタルデータ(例えば、8ビットで示す256階調のデータ値)に変換する。受光素子が出力する画素信号が大きいほど、その画素のデジタルデータは、大きい値(例えば、255階調なら255に近い値)となる。上記シェーディング補正回路72は、白基準よりも白い画素(最も明るい画素)の値を大きな値(例えば255)とし、黒基準よりも黒い画素(最も暗い画素)の値を小さな値(例えば0)にする。
【0070】
以下、A/D変換回路71およびシェーディング補正回路72が各画素の信号を8ビットのデジタルデータにする場合、各ラインセンサが、それぞれどのような値を出力するかを説明する。
【0071】
シアンのベタ画像を読取った場合、例えば、ラインセンサ61Rは「18」、ラインセンサ61Gは「78」、ラインセンサ61Bは「157」というデータ値をそれぞれ出力する。これは、シアンのベタ画像からの反射光は、赤成分が小さく、青成分が大きいことを示す。
マゼンタのベタ画像を読取った場合、例えば、ラインセンサ61Rは「150」、ラインセンサ61Gは「22」、ラインセンサ61Bは「49」という値をそれぞれ出力する。これは、マゼンタのベタ画像からの反射光は、赤成分が大きく、緑成分が小さいことを示す。
【0072】
シアンのベタ画像とマゼンタのベタ画像とを両方含む画素は、シアンのベタ画像とマゼンタのベタ画像との比率に応じた出力値となる。
図10に示す例では、点線上(中央)に位置する3画素{RGB300(1,2)、RGB300(2,2)、RGB300(3,2)}は、シアンのベタ画像とマゼンタのベタ画像とが面積比が50%である。このため、点線上の3画素{RGB300(1,2)、RGB300(2,2)、RGB300(3,2)}は、シアンのベタ画像を読み取った場合の出力値とマゼンタのベタ画像を読取った場合の出力値との平均となる。
【0073】
すなわち、ラインセンサ61Rの出力値{R300(1,2)、R300(2,2)、R300(3,2)}は、84(=(18+150)/2)となる。ラインセンサ61Gの出力値{G300(1,2)、G300(2,2)、G300(3,2)}は、50(=(78+22)/2)となる。ラインセンサ61Bの出力値{B300(1,2)、B300(2,2)、B300(3,2)}は103(=(157+49)/2)という値になる。
【0074】
ラインセンサ61Kの読取り画素は、
図9に示すように、点線の左の18画素がシアンのベタ画像の領域であり、点線の右の18画素がマゼンタのベタ画像の領域である。シアンのベタ画像を構成する画素に対するラインセンサ61Kの出力値が「88」である場合、点線の左の各画素は、出力値が「88」となる。マゼンタのベタ画像を構成する画素に対するラインセンサ61Kの出力値が「70」である場合、点線の右側の各画素は出力値が「70」となる。
【0075】
図11は、上記のようなセンサの出力値をグラフ(プロファイル)で示す図である。
図11では、
図9及び
図10で示す読み取り範囲より広い範囲の主走査方向における信号変化の様子を示す。つまり、
図11は、ラインセンサ61R、61G、61Bで5画素分、ラインセンサ61Kで10画素分の出力値を表す。例えば、
図9及び
図10に示す横1ライン目と
図11に示すグラフとの対応関係は、
図11に示すグラフの横軸における「3」、「4」、「5」がK600(1,1)、K600(1,2)、K600(1,3)に対応し、「6」,「7」,「8」がK600(1,4)、K600(1,5)、K600(1,6)に対応する。
【0076】
ラインセンサ61R、61G、61Bは、主走査方向にラインセンサ61Kの2画素分の検知範囲がある。このため、
図11に示すグラフの横軸における「3」、「4」がRGB300(1,1)に対応し、「5」、「6」がRGB300(1,2)に対応し、「7」,「8」がRGB300(1,3)に対応する。なお、
図11に示すグラフの横軸における「1」、「2」と「9」、「10」は、
図9及び
図10に示すエリア外になる。
【0077】
図11に示すグラフは、主走査方向について、ラインセンサ61Kの2画素に対してラインセンサ61R、61G、61Bで読取った1画素の値が対応する。
図11に示すグラフの横軸における数値「1」〜「10」に対し、ラインセンサ61Kは、10画素分の値が対応する。また、ラインセンサ61R、61G、61Bは、
図11に示すグラフの横軸における数値「1」〜「10」に対し、5画素分の値が対応する。これは、ラインセンサ61R、61G、61Bは、
図11に示すグラフの横軸における「1」と「2」、「3」と「4」、「5」と「6」、「7」と「8」、「9」と「10」に、それぞれ1画素が対応するためである。
【0078】
従って、
図11に示すグラフの横軸における「5」及び「6」は、ラインセンサ61R、61G、61Bによりシアンとマゼンタとがぞれぞれ50%の画素を読み取った値(
図10に示す点線上の画素の出力値)である。
図11に示すグラフから明らかなように、「5」および「6」に対応する画素の出力値は、シアンの信号成分とマゼンタの信号成分とが混じる。このため、「5」および「6」に対応する画素の出力値は、シアンのベタ画像を読み取った値とマゼンタのベタ画像を読み取った値との平均値となる。この結果として、
図11に示すグラフの横軸における「5」及び「6」に対応する部分は、境界が不鮮明なプロファイルとなる。
【0079】
上記のような境界部分の信号がラインセンサK信号並みにメリハリのある信号になれば、当該画像は、高画質になる。このような処理を実現するため、高画質化回路74は、ラインセンサ61Kの出力値(輝度データ:モノクロ画像データ)とラインセンサ61R、61G、61Bの出力値(カラーデータ:カラー画像データ)との相関関係を利用して画像データを処理する。
【0080】
ここで、輝度データとカラーデータとの関係について説明する。
一般に、輝度データ(Kデータ)は、カラーデータ(たとえば、R、G、Bの各データ)から算出できる。一方、カラーデータは、輝度データから算出できない。即ち、画像における各画素の明るさ(輝度データ)が定まったからといって、各画素のカラーデータ(Rデータ、GデータおよびBデータ)を決定することはできない。しかしながら、「ある範囲」に限定すれば、カラーデータと輝度データとには特定の関係がある。このような特定の関係が成立する範囲内においては、カラーデータは、輝度データから算出できる。上記「ある範囲」における特定の関係とは、輝度データとカラーデータとの相関関係である。相関関係を参照すれば、低解像度(第1の解像度)のカラーデータは、高解像度(第2の解像度)の輝度データを用いて、輝度データと同等の解像度のカラーデータに変換できる。上記高画質化回路74は、上記のような相関関係に基づいてカラー画像データを高解像度化する。
【0081】
以下、高画質化処理の手順について説明する。
以下の説明では、高画質化処理に用いる画像データは、
図10に示す3×3画素のマトリックス内における各カラーデータ(9個分のカラー画素データからなるカラー画像データ)と、カラーデータの3×3画素のマトリックスに対応する
図9に示す6×6画素のマトリックス内における輝度データ(36個分のモノクロ画素データからなるモノクロ画像データ)とである。つまり、300dpiのカラーデータにおける3×3画素のマトリックスは、600dpiの輝度データにおける6×6画素のマトリックスに対応する。
【0082】
まず、高画質化回路74は、カラーデータ(Rデータ、Gデータ、Bデータ)と輝度データ(Kデータ)との相関関係を求める。高画質化回路74は、上記相関関係を求めるため、輝度データをカラーデータと同じ解像度に変換する。輝度データが600dpiで、かつ、カラーデータが300dpiである場合、高画質化回路74は、輝度データを300dpiに変換する。高画質化回路74は、たとえば、以下の手順で、高解像度の輝度データをカラーデータと同じ解像度の輝度データに変換する。
【0083】
高画質化回路74は、ラインセンサ61Kの読取り画素をラインセンサ61R、61G、61Bの読取り画素に対応づける。高画質化回路74は、たとえば、
図9に示すラインセンサ61Kの各画素を
図10に示すラインセンサ61R、61G、61Bの読取り画素に対応づける。この場合、輝度データにおける2×2画素のマトリックスが、カラーデータ(カラー読取領域)における個々の画素に対応する。従って、高画質化回路74は、カラーデータ(カラー読取領域)の個々の画素に対応する2×2画素のマトリックス内における輝度データの平均値を求める。この処理結果として、36画素分の輝度データ(600dpiの輝度データ)は、300dpi相当の9画素分の輝度データになる。ここでは、300dpi相当の輝度データは、K300と表す。
【0084】
上述した例では、シアンのベタ画像は輝度データの値が「88」であり、マゼンタのベタ画像は輝度データの値が「70」である。シアンのベタ画像とマゼンタのベタ画像とがぞれぞれ2画素からなる2×2画素のマトリックスは、輝度データの値(平均値)が「79(=(88+70+88+70)/4)」となる。したがって、シアンとマゼンタとの境界を含む4画素からなる300dpi相当の輝度データは、「79」という値になる。
【0085】
図12は、上記のような300dpi相当の輝度データ(K300)をグラフで示すプロファイルである。
図12に示すように、300dpi相当の輝度データK300は、R300、G300、B300と同様に、グラフの横軸における「5」および「6」(つまり、境界部分に対応する画素)において、シアンのベタ画像とマゼンタのベタ画像との平均値としての「79」という値である。
【0086】
図13は、シアンのベタ画像の領域(シアン画像部分)と、マゼンタのベタ画像の領域(マゼンタ画像部分)と、シアンのベタ画像とマゼンタのベタ画像とが混在する境界線を含む画素の領域(境界部分)とに対応する各値をまとめた図である。
【0087】
次に、輝度データ(Kデータ)とカラーデータ(Rデータ、Gデータ、Bデータ)との相関関係について説明する。
図14は、横軸を輝度データとし、縦軸を各カラーデータの値とする散布図である。ここでは、
図14を参照して、輝度データとカラーデータとの相関関係について説明する。
まず、輝度データ(Kデータ)と赤データ(Rデータ)と相関関係について説明する。
【0088】
図14に示すように、(Kデータ,Rデータ)とすると、(70,150)、(79,84)、(88,18)の3点は、直線KR上に並ぶ。この直線KRは、輝度データと赤データとの相関関係を示す。この直線KRは、右下がりの直線である。この直線KRは、3×3画素のマトリックス内の9画素において、輝度データが増加すると赤データが減少し、輝度データが減少すると赤データが増加することを表す。即ち、輝度データと赤データとは、負の相関があることを表す。また、この直線KRは、(70,150)と(88,18)を通過する。したがって、輝度データと赤データとの相関関係としては、次式(K−R)が成り立つ。
【0089】
R−150=(150−18)/(70−88)*(K−70)…(K−R)
R≒−7.33*K+663.3。
【0090】
ここで、
図14に示す直線KRは、300dpiのKデータとRデータとの相関関係を表す。このような相関関係は、3×3画素のマトリックス内、即ち「ある範囲」内においては、600dpiでも同様の関係が成り立つと考える。この考えに従って、上述の式(K−R)の「K」に600dpiの輝度データ(K600)を代入すると、600dpi相当の各画素のRデータが求まる。たとえば、シアンのベタ画像とマゼンタのベタ画像とが混在する境界領域の300dpiの画素(Rデータが「84」の画素)について、600dpiのKデータ(K600)が「70」の画素部分は600dpi相当のRデータが「150」となり、600dpiのKデータ(K600)が「88」の画素部分は600dpi相当のRデータが「18」となる。
【0091】
次に、Kデータ(輝度データ)とGデータ(緑データ)との相関関係について説明する。
Rデータの場合と同様に、シアンのベタ画像の輝度データは「88」、Gデータは「78」、マゼンタのベタ画像の輝度データは「70」、Gデータは「22」、シアンとマゼンタの境界部を読取った輝度データは79、Gデータは50となる。したがって、(Kデータ,Gデータ)とすると、(70,22)、(79,50)、(88,78)の3点は、直線KG上に並ぶ。
図14に示すように、輝度データと緑データとの相関関係を示す直線KGは、右上がりの直線となる。これは、3×3画素のマトリックス内の範囲内では、輝度データが増加すると緑データも増加し、輝度データが減少すると緑データも減少することを表す。即ち、輝度データと緑データとは、正の相関があることを表す。この直線KGは、(70,22)と(88,78)を通過する。したがって、輝度データと緑データの相関関係を示す式としては、次式(K−G)が成り立つ。
【0092】
G−22=(22−78)/(70−88)*(K−70)…(K−G)
G≒3.11*K−195.8。
【0093】
Rデータの場合と同様に、上述の式(K−G)の「K」に600dpiの輝度データを当てはめると、600dpiのGデータが求まる。従って、300dpiのGデータが「50」である画素について、600dpiの輝度データ(K600)が「70」ならば600dpi相当のGデータは「22」となり、600dpiの輝度データ(K600)が「88」ならば600dpi相当のGデータは「78」となる。
【0094】
次に、Kデータ(輝度データ)とBデータ(青データ)との相関関係について説明する。
Rデータ或いはGデータの場合と同様に、シアンのベタ画像は輝度データが「88」で、Bデータが「157」であり、マゼンタのベタ画像は輝度データが「70」で、Bデータが「49」であり、シアンのベタ画像とマゼンタのベタ画像とが混在する境界部分は輝度データが「79」で、Bデータが「103」である。(Kデータ,Bデータ)とすると、
図14に示すように、(70,49)、(79,103)および(88,157)の3点は、直線KB上に並ぶ。輝度データと青データとの相関関係を示す直線KBは、右上がりの直線となる。これは、3×3画素のマトリックス内の範囲内において、輝度データが増加すると青データも増加し、輝度データが減少すると青データも減少することを表す。即ち、輝度データと青データとは、正の相関関係があることを表す。この直線KBは、(70,49)と(88,157)とを通過する。したがって、輝度データと青データの相関関係を示す式としては、次式(K−B)が成り立つ。
【0095】
B−49=(49−157)/(70−88)*(K−70)…(K−B)
B=6*K−371。
【0096】
Rデータ或いはGデータの場合と同様に、上述の式(K−B)の「K」に600dpiの輝度データ(K600)を当てはめると、600dpiのBデータが求まる。従って、300dpiのBデータが「103」である画素について、600dpiの輝度データが「70」ならば600dpi相当のBデータは「49」となり、600dpiの輝度データが「88」ならば600dpi相当のGデータは「157」となる。
【0097】
図15は、
図14に示す相関関係に基づいて生成した600dpi相当のカラーデータを示すグラフである。
上記のような相関関係に基づく計算例によれば、
図15に示すように、グラフの横軸における「5」(境界部分の画素のうち左側に相当)において、Rデータが「18」になり、Gデータが「78」になり、Bデータが「157」になる。また、グラフの横軸における「5」(境界部分の画素のうち右側に相当)において、Rデータが「150」になり、Gデータが「22」になり、Bデータが「49」になる。このように境界を含む300dpiの画素部分は、600dpiに相当する「5」の信号と「6」の信号に分離する。
【0098】
すなわち、
図15に示すような処理結果では、境界部分のR、G、Bデータは、シアンのベタ画像に相当する画素値とマゼンタのベタ画像に相当する画素値とに分離する。このような処理結果によれば、当該画像における境界部分がはっきりとする。このことは、カラー信号の解像度が向上したことを意味する。
【0099】
次に、一般的な画像データに対する高画質化処理について説明する。
上述した高画質化処理では、解像度の高い輝度データ(モノクロデータ)を用いて、カラーデータの解像度を元のカラーデータよりも向上する。上述の説明は、高画質化処理の基本原理である。特に、上述の説明は、輝度データとカラーデータとの相関関係がほぼ1直線上に並ぶ場合について好適である。ただし、実際の画像データでは、輝度データとカラーデータとの相関関係が直線上に並ばないこともある。
【0100】
以下に、高画質化処理を一般化した処理について説明をする。
図16は、高画質化回路74内における処理を示すブロック図である。
図16に示す構成例では、高画質化回路74は、シリアル化回路81、解像度変換回路82、相関関係算出回路83およびデータ変換回路84を有する。
高画質化回路74は、300dpiのR(赤)データ(R300)、300dpiのG(緑)データ(G300)、300dpiのB(青)データ(B300)、600dpiの画素のうち偶数番目の画素の輝度データ(K600−E)、600dpiの画素のうち奇数番目の画素の輝度データ(K600−O)を入力する。
【0101】
上記シリアル化回路81は、偶数番目の輝度データ(K600−E)と奇数番目の輝度データ(K600−O)とをシリアルデータである輝度データ(K600)に変換する。上記シリアル化回路81は、シリアル化した輝度データ(K600)を解像度変換回路82とデータ変換回路84とへ出力する。
【0102】
上記解像度変換回路82は、600dpiの輝度データ(K600)を300dpiの輝度データ(K300)に変換する。600dpiの解像度から300dpiの解像度に変換する。上記解像度変換回路82は、600dpiの輝度データ(K600)の各画素を300dpiのカラーデータの各画素とを対応づける。上述したように、300dpiのカラーデータの各画素は、600dpiの輝度データ(K600)の各画素からなる2×2画素のマトリックスに対応する。上記解像度変換回路82は、カラーデータの各画素に対応するマトリックスを形成する2×2画素の各輝度データの平均値(300dpi相当の輝度データ(K300))を求める。
【0103】
上記相関関係算出回路83は、R300、G300、B300およびK300を入力する。上記相関関係算出回路83は、R300とK300との回帰直線、G300とK300との回帰直線、B300とK300との回帰直線を求める。それぞれの回帰直線は、次式で表す。
【0104】
R300=Ar×K300+Br…(KR−2)
G300=Ag×K300+Bg…(KG−2)
B300=Ab×K300+Bb…(KB−2)
ここで、Ar、Ag、Abは、それぞれの回帰直線の傾き(定数)を表し、Br、Bg、Bbは、縦軸との切片(定数)を表す。
【0105】
したがって、上記相関関係算出回路83は、輝度データと各カラーデータとの相関関係として、上述した各定数(Ar、Ag、Ab、Br、Bg、Bb)を算出する。ここでは、説明を簡単にするため、輝度データ(K300)とカラーデータ(R300)とに基づいて、定数Ar及びBrを算出する方法を説明する。
【0106】
まず、上記相関関係算出回路83は、3×3画素の9画素を注目エリアとする。上記相関関係算出回路83は、9画素からなる注目エリアにおける相関係数を求める。なお、3×3画素の注目エリアの各画素に対する輝度データおよびカラーデータは、それぞれKijおよびRijと表現する。ただし、ijは1〜3までの変数である。たとえば、R300(2,2)は、R22と表現する。また、注目エリアのKデータ(K300)の平均値をKaveとし、Rデータの平均値をRaveとすると、相関関係算出回路83は、KデータとRデータとの相関係数(Cr)を次式で算出する。
【数1】
【0107】
上記の式によれば、相関係数(Cr)は、偏差積の総和を、Kの標準偏差とRの標準偏差で割ったものと同じである。ここで、相関係数(Cr)は、−1〜+1までの値である。相関係数(Cr)がプラスである場合、KデータとRデータとの相関関係は、正の相関であることを表し、マイナスの場合は負の相関であることを表す。また、相関係数(Cr)は、絶対値が1に近いほど相関が強いことを表す。
【0108】
相関関係算出回路83は、輝度データ(K)とカラーデータ(R)との回帰直線の傾き(Ar)を次式で算出する。なお、次式では、縦軸をRとし、横軸をKとしている。
【0109】
Ar=Cr×((Rの標準偏差)/(Kの標準偏差))
また、相関関係算出回路83は、切片(Br)を次式で算出する。
【0110】
Rの切片(Br)=Rave−(傾き×Kave)
なお、相関関係算出回路83は、Rの標準偏差、および、Kの標準偏差をそれぞれ次式で算出する。
【数2】
【0111】
相関関係算出回路83は、Gデータ、Bデータについても、上述の手法と同様の手法で、回帰直線における傾きAg、Abおよび切片Bg、Bbを算出する。相関関係算出回路83は、算出した各定数(Ar、Ag、Ab、Br、Bg、Bb)をデータ変換回路84へ出力する。
【0112】
上記データ変換回路84は、高解像度の輝度データを用いて、輝度データと同等な解像度のカラーデータを算出する。たとえば、データ変換回路84は、600dpiの輝度データ(K600)を用いて600dpiのカラーデータ(R600、G600、B600)を算出する。データ変換回路84は、相関関係算出回路83が算出した各定数を用いた次式により、K600からR600、G600、B600をそれぞれ算出する。
【0113】
R600=Ar×K600+Br
G600=Ag×K600+Bg
B600=Ab×K600+Bb
すなわち、データ変換回路84は、上記の各式に、600dpiの輝度データ(K600)を代入することにより、600dpiのカラーデータ(R600、G600、B600)を算出する。
【0114】
なお、上記各式に代入する輝度データ(K600)は、300dpiの3画素×3画素の中心の画素に相当する600dpiの2×2画素の4画素分である。たとえば、輝度データK600は、
図9に示すK600(3,3)、K600(3,4)、K600(4,3)、K600(4,4)に相当し、高解像度化する対象画素は、
図10に示すR300、G300、B300(2,2)である。
【0115】
以上のように、高画質化回路74では、300dpiのカラーデータの9画素の中心に位置する600dpiの輝度データの36画素のデータを用いて、300dpiの1画素を600dpiの4画素のカラーデータに変換する。高画質化回路74では、上述の処理を全画素について実施する。この結果として、高画質化回路74は、300dpiのカラーデータを600dpiのカラーデータに変換する。
【0116】
上記の高画質化処理の結果として得られる600dpiのカラーデータと600dpiのモノクロデータとの相関関係は、600dpiのカラーデータを求めるために用いた300dpiのモノクロデータと300dpiのカラーデータとの相関関係と同等となる。すなわち、処理対象の範囲内(本処理例では、600dpiで9×9画素、300dpiで3×3画素)において、300dpiのデータで正の相関がある場合には600dpiのデータでも正の相関となり、300dpiのデータで負の相関がある場合には600dpiのデータでも負の相関となる。
本実施例の高画質化処理では、高解像度の輝度データを用いて、低解像度のカラーデータの解像度を、彩度低下あるいは混色などの画質劣化なく、向上できる。
【0117】
なお、輝度データとカラーデータとの相関関係を求めるための注目エリア(ある範囲)は、3画素×3画素のエリアに限定されるものではなく、適宜選択することが可能である。たとえば、輝度データとカラーデータとの相関関係を求めるためのエリアは、5画素×5画素あるいは4画素×4画素などのエリアを適用しても良い。また、上記高画質化処理が適用されるカラーデータおよび輝度データの解像度はそれぞれ300dpi、600dpiに限定されるものではない。たとえば、カラーデータが200dpiで、輝度データが400dpiであったり、カラーデータが600dpiで、輝度データが1200dpiであったりしても良い。
【0118】
上記のような高画質化処理によれば、カラー信号のS/N比を劣化させることなく、高解像度のカラー画像データを得ることが可能になる。また、上記高画質化処理を用いれば、高感度の輝度センサで解像度の高いモノクロ画像(輝度データ)を読み取り、感度の低いカラーセンサは輝度センサよりも解像度を落としたカラー画像を読取った場合であっても、カラー画像の解像度を輝度センサの解像度と同等の解像度に高めることができる。この結果として、高解像度のカラー画像の高速読取が可能となる。また、高解像度でのカラー画像の読取のために使用する照明光源が低出力のものであっても、読取速度、解像度、S/N比を確保することが容易となる。また、CCDセンサから出力されるデータ数も、少なくできる。
【0119】
また、上記高画質化処理では、例えば、300dpiの3×3画素のマトリックスにおける複数のKデータと複数のカラーデータとの相関関係を用いて、Kデータを基準としてカラーデータを求める。このように9画素のデータを用いてその中心の1画素(600dpiでは4画素)のカラーデータを求めることにより、高周波ノイズが低減するという効果が得られる。通常、CCDセンサの出力には、何らかのノイズ(ホワイトノイズ)がのってしまう。これを低減させるのは容易ではない。上記高画質化処理では、Kデータの9画素とカラーデータの9画素分との相関関係に基づいて、その中心に位置する1画素のデータを高画質化する。
【0120】
従って、上記高画質化処理では、ある1つの読取り画素に突発的なノイズが重畳していても、ノイズの影響を低減させることが可能となる。実験によると、均一濃度の原稿を読取った際の高周波ノイズを、1/2〜2/3程度に減らす効果が得られている。このような効果は、スキャン画像を圧縮する際の圧縮率向上にも有用である。つまり、上記高画質化処理は、解像度を向上させるだけでなく、ノイズ低減処理としても有用である。
【0121】
また、上記高画質化処理は、画像を読取るための機構などに起因する色ずれを低減する。たとえば、画像を読取るための機構では、振動、ジッタ、レンズの色収差により色ずれが生じる可能性がある。R、G、Bのカラーラインセンサが独立して画像を読取り、そのデータを独立して出力する画像読取装置では、色ずれを物理的な構造として防ぐためには、機構系の精度を向上させたり、収差のないレンズを採用したりすることが必要となる。上記高画質化処理では、すべてのカラーデータを輝度データを基準として求める。このため、上記高画質化処理では、ジッタ、振動、色収差によるカラーデータの位相ズレをも補正する。これも、複数の画像データ間における相関関係から注目エリアにおける画素のデータを求めることによって得られる効果である。
【0122】
以上のように、画像読取装置では、カラーデータの解像度を上げる必要がない場合、あるいは、輝度センサとカラーセンサの解像度が同じ場合であっても、上記高画質化処理を適用することにより、読取り画像を位相ズレのない高品質な画像に補正できる。このような補正処理は、たとえば、
図16に示す回路構成により実現できる(ただし、解像度変換が不要な場合には解像度変換回路82が省略される)。上記のような補正処理の結果として、画像形成装置では、ノイズの少ない高画質の読取画像を取得でき、高画質な複写が可能となる。また、画像読取装置および画像形成装置は、画像処理によって高品質の画像データを得るため、消費電力を抑えることも可能である。
【0123】
次に、第2の高画質化処理について説明する。
【0124】
以下に説明する第2の高画質化処理は、上述した高画質化回路74による高画質化処理の他の例である。
読取対象となる原稿の画像には、カラー画像データの読取解像度(300dpi)に近い周波数成分の画像が含まれている場合がある。読取解像度(サンプリング周波数)と読取対象の画像に含まれる周波数成分が近い場合、読取り結果としての画像データには、モワレと呼ばれる干渉縞が生じることがある。例えば、ある周期(例えば、1インチ当たり150個)の白黒パターン画像(以下、150線近傍の画像とも称する)を300dpiのカラーセンサで読取った場合、300dpiのカラー画像データには、縞模様の画像(モワレ)が生じる可能性がある。
【0125】
上記のような縞模様の画像(モワレ)は、カラーセンサにおける受光素子と読取対象の白黒パターンとの位置関係によって、画素値が大きく変化する(ばらつく)領域とほとんど変化しない(均一な)領域とが周期的に現れることにより生じる。ただし、上記のような150線近傍の画像を600dpiのモノクロセンサで読み取った場合、600dpiのモノクロ画像データには、モワレが生じない。なお、600dpiのモノクロ画像データを300dpiのモノクロ画像データに変換した場合、300dpiのモノクロ画像データにも、上述した300dpiのカラー画像データと同様に、モワレが生じる。
【0126】
図17は、150線近傍の画像を600dpiの解像度で読取った場合における画像データのプロファイルを示す。
図18は、
図17に示す画像データを300dpiに変換した場合における画像データのプロファイルを示す。
図17及び
図18は、横軸が各画素の位置であり、縦軸が各画素の値(たとえば、0〜255とする)である。
【0127】
なお、
図18は、
図17に比べて画素の位置(横軸のスケール)が2倍となっている。また、主走査方向あるいは副走査方向において、600dpiの画素数は、300dpiの画素数の2倍である。このため、
図18に示す600dpiの画素位置の半分の数値が、
図17に示す300dpiの画素位置に相当する。
【0128】
図17に示すように、600dpiの画像データでは、全領域において解像できている(コントラストが得られている)。これに対して、
図18に示すように、300dpiの画像データは、解像する部分(コントラストがある部分、つまり、応答が有る部分)と解像しない部分(コントラストが無い部分、つまり、応答が無い部分)とが周期的に存在する。このように周期的に生じる解像力の変化(コントラストの変化、つまり、応答性の変化)は、モワレとなってあらわれる。
【0129】
上記のようなモワレが生じる場合、300dpiの画像データには、変化がなく解像しない(コントラストが無い、つまり、応答のない)部分が存在する。
図14に示すような回帰直線を形成するには、画像データにおける画素値がばらついている(分散している)必要がある。画像データに変化がない場合、
図14に示すような回帰直線は生成し難い。すなわち、300dpiのカラー画像データにモアレがある場合、カラーデータと輝度データとの相関関係を示す直線は作成するのが難い。また、わずかな変化を捉えて相関関係を示す回帰直線を生成する場合、回帰直線は、わずかなデータの変化で傾きが大きく変化する。この結果として、回帰直線は、不安定な状態となる。
【0130】
上記のような不安定な状態では、回帰直線の傾きが、読取時の原稿の移動、あるいは、キャリッジの移動による振動(ジッタ)などの外的な要因によるわずかな画像データの変化によって大きく変化する。また、不安定な状態で求めた回帰直線を用いた高画質化処理では、画像に乱れが生じる。たとえば、不安定な状態で求めた回帰直線を用いた高画質化処理では、モワレが生じる周期で、白黒(無彩色)であるべき画像に様々な色が発生する可能性がある。
【0131】
第2の高画質化処理では、上記のような現象を避けるため、注目エリアの画像がモアレを生じるような周波数成分(たとえば、150線近傍の周波数成分)を有するか否かを確認する。注目エリアの画像がモアレを生じる周波数成分を含まない場合、第2の高画質化処理では、第1の高解像度化処理として、上述した
図16に示すような回路による高画質化処理を行う。注目エリアの画像がモアレを生じる周波数成分を含む場合、第2の高画質化処理では、第1の高解像化処理とは異なる第2の高解像度化処理を行う。
【0132】
次に、第2の高画質化処理を行う第2の高画質化回路101について説明する。
図19は、第2の高画質化回路101の構成例を示すブロック図である。この第2の高画質化回路101は、
図8に示すスキャナ画像処理部70内の構成では、高画質化回路74の代わりに適用する。
【0133】
図19に示すように、第2の高画質化回路101は、第1の高解像度化回路111、第2の高解像度化回路112、判定回路113および選択回路114を有する。
上記第1の高解像度化回路111は、上述した
図16に示す高画質化回路74と同様な構成を有する。すなわち、上記第1の高解像度化回路111は、上述したように、カラーデータとモノクロデータとの相関関係とに基づいて、カラーデータの解像度を上げる処理を第1の高解像度化処理として実行する。
【0134】
上記第2の高解像度化回路112は、上記第1の高解像度化回路111とは異なる処理(第2の高解像度化処理)によりカラーデータを高解像度化する。上記第2の高解像度化回路112は、上述したようなモアレとなる周波数成分を含む画像データを高解像化する。つまり、上記第2の高解像度化回路112による高解像度化処理は、モアレとなる周波数成分を含む画像データにも適用可能な処理である。たとえば、上記第2の高解像度化回路112は、モノクロデータの持っている高周波成分をカラーデータに重畳することにより、カラーデータの解像度を上げる。なお、上記第2の高解像度化回路112については、後で詳細に説明する。
【0135】
上記判定回路113は、処理対象とする画像がモアレとなるような周波数成分(たとえば、150線近傍の周波数成分)を有するか否かを判定する。上記判定回路113による判定処理については、後で詳細に説明する。上記判定回路113は、判定結果を選択回路114に出力する。たとえば、処理対象の画像が150線近傍の画像でないと判定した場合、上記判定回路113は、上記第1の高解像度化回路111による処理結果を選択する選択回路114へ判定信号を出力する。処理対象の画像が150線近傍の画像であると判定した場合、上記判定回路113は、上記第2の高解像度化回路112からの出力信号を選択する判定信号を選択回路114へ出力する。
【0136】
上記選択回路114は、上記判定回路113による判定結果に基づいて、上記第1の高解像度化回路111による処理結果もしくは上記第2の高解像度化回路112による処理結果の何れかを選択する。たとえば、上記判定回路113が処理対象とする画像にモアレとなるような周波数成分を含まないと判定した場合、上記選択回路114は、上記第1の高解像度化回路111による処理結果を選択する。この場合、上記選択回路114は、上記第1の高解像度化回路111により高解像化したカラーデータを高画質化回路101の処理結果として出力する。また、上記判定回路113が処理対象とする画像にモアレとなるような周波数成分を含むと判定した場合、上記選択回路114は、上記第2の高解像度化回路112による処理結果を選択する。この場合、上記選択回路114は、上記第2の高解像度化回路112により高解像化したカラーデータを高画質化回路101の処理結果として出力する。
【0137】
次に、上記判定回路113による判定処理について説明する。
上述したように、第2の高画質化処理では、注目エリアの画像がモアレを生じるような周波数成分(たとえば、150線近傍の画像)を有するか否かを確認する。上記判定回路113は、注目エリアの画像がモアレを生じる周波数成分を含むか否かを以下の手法により確認(判定)する。
【0138】
上記判定回路113は、600dpiのモノクロ画像データとしての輝度データ(Kデータ)の標準偏差(ばらつきの程度)を計算する。ここでは、上述した処理と同様に、600dpiの輝度データ(K600)における6×6画素のマトリックス(即ち、36画素)で標準偏差を計算する。ここで、600dpiの輝度データの標準偏差は、600stdとする。
【0139】
また、上記判定回路113は、600dpiの輝度データを300dpiの輝度データに変換する。変換後の300dpiの輝度データの標準偏差として、上述した600dpiの輝度データ(K600)における6×6画素のマトリックスに相当する領域の3×3画素のマトリックス(即ち、9画素)の標準偏差を計算する。ここで、300dpiの輝度データの標準偏差は、300stdとする。
【0140】
一般に、標準偏差は、データのばらつき具合を示す指標である。このため、上記判定回路113は、600dpiの輝度データに対する標準偏差(600std)と300dpiの輝度データに対する標準偏差(300std)とに基づいて次の情報を得る。
(1)600stdと300stdの両方が小さい場合、濃度変化の無いベタ画像部分である。例えば、白地あるいは黒ベタなどの色あるいは輝度に変化が無い画像領域は、600dpiの画像データおよび300dpiの画像データとも変化が無いため、両者の標準偏差は共に小さな値となる。
【0141】
(2)600stdが大きく、300stdが小さい場合、モアレとなる成分を含む画像(150線近傍の画像)である。
【0142】
(3)600stdが小さく、300stdが大きいことは通常ありえない組合せである。
【0143】
(4)600stdと300stdとが共に大きい場合、300dpiでも十分に読取れる低周波画像である。
【0144】
図20は、上記のような600stdと300stdとの組合せに応じた判定内容を示す図である。
上記判定回路113は、処理対象の画像がモアレを生じる周波数成分を含む画像(つまり、150線近傍の画像)か否かを判定する。
図20に示す例では、150線近傍の画像であるという判定内容となるのは、600stdが大きく、かつ、300stdが小さい場合である。したがって、上記判定回路113は、600stdが大きく、かつ、300stdが小さいか否かを判定する。実際には、判定回路113には、判定基準として、600stdおよび300stdの大きさを定量な値で設定する。
【0145】
ここで、上記判定回路113には、判定基準として、300std/600stdに対する判定基準値αを設定する。すなわち、上記判定回路113は、300std/600stdの値が判定基準値α以下(300std/600std≦α)であるか否かを判定する。「300std/600std」の値は、600stdが300stdに対して相対的に大きければ大きいほど(600stdが大きければ大きいほど、あるいは、300stdが小さければ小さいほど)、小さい値となる。つまり、「300std/600std」の値が小さければ小さいほど、処理対象の画像は、モアレを生じる周波数成分を含む画像(つまり、150線近傍の画像)らしいと判定される。従って、上記判定回路113は、300std/600std≦αであれば、処理対象の画像が150線近傍の画像らしいと判定する。なお、判定基準値としてのαの値は、実験によれば、0.5〜0.7(50%〜70%)程度の値とすることにより、150線近傍の画像を良好に抽出できることが分かっている。
【0146】
次に、第2の高解像度化回路112について説明する。
【0147】
上記第2の高解像度化回路112は、モノクロデータの高周波成分をカラーデータに重畳することによりカラーデータの解像度を向上する。つまり、上記第2の高解像度化回路112は、カラーデータと輝度データとの相関関係を用いて高解像化する処理を行うものではなく、上記第1の高解像度化回路111とは高解像度化の処理内容が異なる。
【0148】
図21は、第2の高解像度化回路112の構成例を示すブロック図である。
図21に示すように、第2の高解像度化回路112は、シリアル化回路121、解像度変換回路122、重畳レート計算回路123およびデータ変換回路124などを有する。
【0149】
上記シリアル化回路121は、偶数番目の輝度データ(K600−E)と奇数番目の輝度データ(K600−O)とをシリアルデータである輝度データ(K600)に変換する。上記シリアル化回路121は、シリアル化した輝度データ(K600)を解像度変換回路122と重畳レート計算回路123とに出力する。
【0150】
上記解像度変換回路122は、600dpiの輝度データ(K600)を300dpiの輝度データ(K300)に変換する。600dpiの解像度から300dpiの解像度に変換する。上記解像度変換回路122は、600dpiの輝度データ(K600)の各画素を300dpiのカラーデータの各画素とを対応づける。300dpiのカラーデータの各画素は、600dpiの輝度データ(K600)の各画素からなる2×2画素のマトリックスに対応する。上記解像度変換回路122は、カラーデータの各画素に対応するマトリックスを形成する2×2画素の各輝度データの平均値を300dpi相当の輝度データ(K300)として算出する。
【0151】
次に、重畳レート計算回路123について説明する。
上記重畳レート計算回路123は、モノクロデータの周波数成分をカラーデータに重畳するためのレートを計算する。ここでは、
図22−24に示す例を参照して重畳レート計算処理について説明する。
図22は、2×2画素のマトリックスを構成する600dpiの輝度(モノクロ)データの例を示す。
図23は、
図22に示す2×2画素のマトリックスに対応する300dpiの輝度データ(あるいはカラーデータ)の例を示す。
図24は、600dpiの各画素における重畳レートの例を示す。
【0152】
まず、上記重畳レート計算回路123は、300dpiの1画素に対応する600dpiのモノクロデータにおける4画素(2×2画素のマトリックス)を抽出する。たとえば、重畳レート計算回路123は、
図23に示す300dpiのモノクロデータの1画素に対応して、
図22に示すような2×2画素のマトリックスを形成する4画素分の600dpiの輝度データを抽出する。
【0153】
重畳レート計算回路123は、300dpiの1画素に対応する600dpiの4画素分の輝度データに対する平均値K600aveを計算する。たとえば、重畳レート計算回路123は、平均値K600aveを次式で計算する。
K600ave=(K600(1,1)+K600(1,2)+K600(2,1)+K600(2,2))/4。
【0154】
上記平均値K600aveを算出すると、上記重畳レート計算回路123は、各画素(*,*)の平均値K600aveに対する変化率Rate(*,*)を計算する。つまり、600dpiの各画素の変化率は、注目エリア(2×2画素のマトリックス)に対する各画素のコントラスト比を示す。たとえば、上記重畳レート計算回路123は、K600(1,1)、(1、2)、(2、1)、(2、2)における変化率Rate(1,1)、(1、2)、(2、1)、2、2)を次式で計算する。
【0155】
Rate(1,1)=K600(1,1)/K600ave
Rate(1,2)=K600(1,2)/K600ave
Rate(2,1)=K600(2,1)/K600ave
Rate(2,2)=K600(2,2)/K600ave
上記重畳レート計算回路123は、上記のような手順で算出した600dpiの各画素K600(*,*)に対応する変化率Rate(*,*)を上記データ変換回路124へ出力する。
【0156】
上記データ変換回路124は、上記重畳レート計算回路123から入力する600dpi相当の各画素に対応する変化率をそれぞれ対応する300dpiのカラーデータに乗算する。なお、
図25A、
図25Bおよび
図25Cは、それぞれ300dpiのカラーデータとしてのRデータ(R300)、Gデータ(G300)、Bデータ(B300)の例を示す。また、
図26A、
図26Bおよび
図26Cは、
図25A、
図25Bおよび
図25Cに示す300dpiの各カラーデータから生成した600dpi相当のRデータ(R600)、Gデータ(G600)、Bデータ(B600)の例を示す。
【0157】
たとえば、上記データ変換回路124は、次式のように、R300に600dpi相当の各画素に対応する変化率を乗算することにより、600dpi相当のRデータ(R600)を算出する。
【0158】
R600(1,1)=R300*Rate(1,1)
R600(1,2)=R300*Rate(1,2)
R600(2,1)=R300*Rate(2,1)
R600(2,2)=R300*Rate(2,2)
このような重畳処理によって、上記データ変換回路124は、
図25Aに示すR300を
図26Aに示すR600に変換する。
【0159】
また、上記データ変換回路124は、次式のように、G300に600dpi相当の各画素に対応する変化率を乗算することにより、600dpi相当のGデータ(G600)を算出する。
【0160】
G600(1,1)=G300*Rate(1,1)
G600(1,2)=G300*Rate(1,2)
G600(2,1)=G300*Rate(2,1)
G600(2,2)=G300*Rate(2,2)
このような重畳処理によって、上記データ変換回路124は、
図25Bに示すB300を
図26Bに示すG600に変換する。
【0161】
また、上記データ変換回路124は、次式のように、B300に600dpi相当の各画素に対応する変化率を乗算することにより、600dpi相当のBデータ(B600)を算出する。
【0162】
B600(1,1)=B300*Rate(1,1)
B600(1,2)=B300*Rate(1,2)
B600(2,1)=B300*Rate(2,1)
B600(2,2)=B300*Rate(2,2)
このような重畳処理によって、上記データ変換回路124は、
図25Cに示すB300を
図26Cに示すB600に変換する。
【0163】
上記のように、高画質化回路101は、高解像度のモノクロデータと低解像度のカラーデータとを入力し、カラーデータとモノクロデータとの相関関係に基づいてカラーデータの解像度を上げる第1の高解像化処理を行う第1の高解像度化回路111と、モノクロデータの高周波成分をカラーデータに重畳することによりカラーデータの解像度を上げる第2の高解像度化処理を行う第2の高解像度化回路112とを具備し、処理対象の画像が入力カラーデータの解像度ではモアレが生じる周波数成分に近い成分を有する画像である場合には第2の高解像度化回路による処理結果を出力し、それ以外の画像である場合には第1の高解像度化回路による処理結果を出力する。このような高画質化回路101では、原稿の画像がどのような画像であっても良好な高解像度の画像データを出力できる。
【0164】
また、上述の処理例では、300dpiの1画素に対応する600dpiの4画素分で閉じた処理について説明した。ただし、300dpiの1画素に対応する600dpiの4画素分(300dpiの1画素分)毎だけに上記のような高画質化処理を行うと、画像全体としては、隣接する画素間における連続性が低くなる可能性がある。画像全体における隣接する画素間の連続性を確保するため、上述したような高画質化処理は、処理対象の画像領域(注目エリア)を1画素分位相をずらして再度実行することが好ましい。たとえば、再度の高画質化処理では、600dpiの画像データにおける処理対象の画像領域(2×2画素のマトリックス)を1画素分位相をずらして設定する。このような再処理の結果としての600dpiのカラー画像データは、隣接する画素間の連続性が確保される。
【0165】
図27は、隣接する画素間の連続性を確保するための高画質化処理を説明するための図である。
まず、高画質化回路74あるいは高画質化回路101は、K600(1,1)、K600(1,2)、K600(2,1)、K600(2,2)の4画素(2×2画素のマトリックス)を処理対象の画像領域(第1の注目エリア)に設定する。この場合、高画質化回路74、101は、上記第1の注目エリアに対応するカラーデータ(R300、G300、B300)を高解像度化する。この処理結果として、高画質化回路74、101は、600dpiのカラー画像データR600(1,1)、R600(1,2)、R600(2,1)、R600(2,2)、G600(1,1)、G600(1,2)、G600(2,1)、G600(2,2)、B600(1,1)、B600(1,2)、B600(2,1)、B600(2,2)を得る。
【0166】
高画質化回路74、101は、全画像において、300dpiのカラーデータに対応する4画素(2×2画素のマトリックス)を順に処理対象の画像領域(第1の注目エリア)として、高画質化処理を行う。高画質化回路74、101は、処理対象の画像領域(第1の注目エリア)ごとに生成した600dpiのカラーデータからなる全画像分の600dpiのカラーデータを得る。
【0167】
全画像領域における600dpiのカラーデータを生成すると、高画質化回路74、101は、隣接する画素間の連続性を高めるための処理を行う。隣接する画素間の連続性を高めるための処理として、高画質化回路74、101は、上記第1の注目エリアとは1画素分位相をずらした領域を再処理対象の画像領域(第2の注目エリア)として設定する。高画質化回路74、101は、上記のような再処理対象の画像領域に対して、再度の高解像度化処理を施す。
【0168】
例えば、高画質化回路74、101は、
図27に示すように、第1の注目エリアに対して1画素分位相をずらした第2の注目エリア(再度の高画質化処理の対象領域)として、K600(2,2)、K600(2,3)、K600(3,2)、K600(3,3)の4画素(2×2画素のマトリックス)を設定する。この場合、高画質化回路74、101は、上述の処理で生成した600dpiのカラーデータのうち上記第2の注目エリアに対応する600dpiの4画素分のカラーデータ{R600(2,2)、R600(2,3)、R600(3,2)R600(3,3)}を300dpiのカラーデータ(R300´)に変換する。4画素分のR600をR300´に変換する処理は、たとえば、上記解像度変換回路82、122による処理と同様である。
【0169】
第2の注目エリアに対応するR300´を算出すると、高画質化回路74、101は、第2の注目エリアの4画素分の輝度データ{K600(2,2)、K600(2,3)、K600(3,2)、K600(3,3)}によりR300´を再度高解像化する。すなわち、高画質化回路74、101は、第2の注目エリアにおける4画素分の輝度データ(K600)と第2の注目エリアに対応するR300´とにより、再度R600(2,2)、R600(2,3)、R600(3,2)およびR600(3,3)を算出する。
また、高画質化回路74、101は、上記のような第2の注目エリアに対する処理をGデータおよびBデータについても行う。このような処理によれば、高画質化回路74、101は、高解像化した画像データ全体において隣接する画素間に連続性を持たせることができる。