【実施例1】
【0016】
シート樹脂及びその製造方法の一例について
図1乃至
図3を参照しながら圧縮成形方法並びに装置構成と共に説明する。
図1は第1の成形型Pを示す。
図1の右半図において、上型1は、上型ベース2に加圧ブロック3が固定されている。加圧ブロック3にはヒータ4が内蔵されており、加圧ブロック3のクランプ面にはリリースフィルム5が吸着保持されるようになっている。
【0017】
リリースフィルム5は、モールド金型の加熱温度に耐えられる耐熱性を有するもので、金型面より容易に剥離するものであって、柔軟性、伸展性を有するもの、例えば、PTFE、ETFE、PET、FEPフィルム、フッ素含浸ガラスクロス、ポリプロピレンフィルム、ポリ塩化ビニリジン等が好適に用いられる。リリースフィルム5は、長尺状のものをリリースフィルム供給機構(図示せず)により連続してモールド金型へ供給するようになっていても、或いは予め短冊状に切断されたものを用いてもいずれでも良い。
【0018】
下型6は、中央部上面7aが凸面となり外周側が段付面7bとなるように形成された下型ベース7の外周側段付面7bに可動ブロック8がコイルばね9によりフローティング支持されている。下型ベース7の中央部上面7aと可動ブロック8の内側面に囲まれた空間がキャビティ凹部6aとして利用される。下型ベース7にはヒータ10が内蔵されている。
【0019】
図1の左半図において、第1の成形型Pが型開き状態において、パッケージサイズに見合う所定の大きさに形成された台紙11を下型6のキャビティ凹部6aへ搬入する。台紙11は、例えば、少なくとも樹脂積層面にハードクロムめっき又は乾式クロムめっきが施されたステンレス等の鋼板、或いはニッケルめっき、フッソコーティングが施された鋼板、梨地面に形成されたステンレス鋼板などが用いられる。
【0020】
そして、下型6に搬入された台紙11上に例えばエポキシ樹脂などの封止樹脂(顆粒樹脂若しくは粉砕樹脂)12がホッパー13により供給される。ホッパー13には、予め1回の樹脂封止に必要な分量の封止樹脂12が収容されている。このホッパー13の底部には、スリット孔13aが設けられており、該スリット孔13aを開閉するスリット付のシャッター13bが底部に重ね合わせて設けられている。このシャッター13bを開閉することでスリット孔13aを通過して粒径が揃えられた顆粒樹脂或いはコストダウンのために粉体が混じった粉砕樹脂を封止樹脂12として台紙11上に供給するようになっている。
【0021】
ホッパー13により台紙11上に封止樹脂12が供給された後、
図1右半図に示すように型締めを行って可動ブロック8がリリースフィルム5を介して加圧ブロック3とクランプする。このとき、封止樹脂12に樹脂圧が作用したままヒータ4,10によって成形温度より低い第1の温度(例えば110℃前後)で加熱加圧して半硬化状態(Bステージ)で台紙付シート樹脂14を形成する。これにより、台紙付シート樹脂14の封止樹脂12は搬送に必要な程度まで硬化反応が進行した状態となる。なお、例えば顆粒状若しくは粉砕状のエポキシ樹脂では、80℃〜120℃の範囲内で加熱加圧することで例えば厚さ0.2mm以下のような極めて薄い封止樹脂12でありながら成形品質を損なわずハンドリングもしやすい好適な半硬化状態の台紙付シート樹脂14を形成可能である。
【0022】
次いで、第1の成形型Pを型開きして、台紙付シート樹脂14を第1の成形型Pより取り出して
図2に示す冷却用定盤15に搬入する、台紙付シート樹脂14は、下定盤15aに載置されて上定盤15bによってシート樹脂を押圧しながら常温(例えば5℃〜25℃程度)まで急冷却する。この場合、冷却用定盤15によって急速に熱が奪われるため、大気中で自然冷却するよりも極めて速く冷却することができ、搬送に必要な程度まで硬化反応を進行させた後における必要以上の硬化の進行を止めることができる。したがって、ここでのゲルタイム(ゲル化して流動性を失い、粘度が急激に増加するまでの時間)の短縮を抑制することで硬化状態を容易に制御することができる。尚、ペルチェ素子などの冷却手段を設けることにより冷却用定盤15を外気温よりも低い温度に下げて、台紙付シート樹脂14を外気温よりも低い温度まで冷却することもできる。
また、冷却用定盤15の上型板面或いは下型板面或いは両方の面に梨地状の模様が形成されていても良く、或いは基板面に実装されたチップやコンデンサー部品などに対応した位置に適度な形状の凹凸を与えて樹脂面にインプリントしてもよい。この場合、冷却用定盤15の上型板面の凹凸形状が台紙付シート樹脂14に転写されるため、圧縮成形時の樹脂の流動量が減少し、圧縮成形時の樹脂の流動性をコントロールして品質が安定した製品の成形が可能となる。
【0023】
このように冷却用定盤15を用いて急冷却することで熱硬化性樹脂の硬化反応が進みワークとの接着力が不足するのを防ぎ、硬い板状のアセトン不溶物が急激に成長して第2の成形型Qにて圧縮成形を行なう際に半導体チップの回路面を損傷したりワイヤーを変形させたりする不具合を回避することができる。
【0024】
次に、冷却された台紙付シート樹脂14からリリースフィルム5を剥離する。
図3において、リリースフィルム5が剥離された台紙付シート樹脂14を第2の成形型Qへ搬入する。上型17は、上型ベース18に上型ブロック19が固定されている。上型ブロック19は、クランプ面にワークである半導体実装基板20を吸着保持するようになっている。また、上型ブロック19にはヒータ19aが内蔵されており、上型ブロック19を囲むように上型遮蔽ブロック46が設けられている。尚、半導体実装基板20は、基板に複数の半導体素子が実装されたものを想定している。半導体実装基板20は、上型ブロック19に吸着される場合に限らず、押さえ冶具などによりクランプ面に押さえ込まれるようになっていてもよい。
【0025】
下型21は、下型ベース22に下型ブロック25が支持されており、該下型ブロック25にセンターブロック23が支持され、その周囲に可動ブロック24がコイルばね26によりフローティング支持されている。センターブロック23上面と可動ブロック24の内側面に囲まれた空間がキャビティ凹部21aとして利用される。下型ブロック25にはヒータ25aが内蔵されている。
【0026】
また、センターブロック23にはスプリング44で付勢された複数のピン45(離隔手段)が内蔵されており、各ピン45の先端はセンターブロック23の上面より僅かに(例えば0.5mm程度)突出している(
図3左半図参照)。台紙付シート樹脂14がキャビティ凹部21aに投入されたときに、キャビティ底部と離間させて半硬化状態にあるシート樹脂との接触による直接的な熱交換を防止し、圧縮成形前における硬化反応の進行を抑制することができ、台紙付シート樹脂14のゲルタイムの短縮を抑制している。なお、例えば厚さ0.2mm以下のような極めて薄い封止樹脂12であれば下型ブロック25からの輻射熱によって十分に昇温は可能である。熱交換によるゲルタイム(ゲル化するまでの時間)を遅らせている。各ピン45は、第2の成形型Qがクランプ状態では、台紙11を通じて作用するクランプ圧によりセンターブロック23に向けて押し下げられる。
【0027】
また、下型ベース22には下型ブロック25を囲んで下型遮蔽ブロック47が設けられている。下型遮蔽ブロック47の上面にはシール材(Oリング)48が設けられている。このシール材48を上型遮蔽ブロック46とクランプすることで、第2の成形型Qに外部と遮蔽された空間を形成できるようになっている。また、下型遮蔽ブロック47の一部には、吸引路49が形成されており、吸引装置Sに接続されている。上型遮蔽ブロック46と下型遮蔽ブロック46とでシール材48をクランプした状態で、吸引装置Sにより吸引動作を行なうことにより、上型17と下型21の遮蔽空間に減圧空間を形成するようになっている。
【0028】
図3の左半図において、型開きした第2の成形型Qの下型21へ台紙付シート樹脂14を搬入する。台紙付シート樹脂14は、台紙11を底部にしてキャビティ凹部21aに収容される。また、上型17の上型ブロック19には、半導体実装基板20が供給され、クランプ面に吸着保持される。
【0029】
図3の右半図において、第2の成形型Qの型締めを行なって、可動ブロック24が半導体実装基板20をクランプしながらコイルばね26が押し縮められて、半導体素子が溶融した封止樹脂12へ浸漬される。このとき、台紙付シート樹脂14が半導体実装基板20と共にクランプされる。次いで、台紙付シート樹脂14は半導体実装基板20によって押し下げられ、台紙11がセンターブロック23に接触する。この状態において、第1の温度より高く本実施形態における成形温度に相当する第2の温度(例えば150℃乃至は175℃)で加熱加圧して硬化させて圧縮成形を行なう。
【0030】
圧縮成形後、第2の成形型Qを型開きして、成形品より台紙11を引き剥がす。台紙11の樹脂積層面には、前述しためっきやコーティングされた面や梨地面が形成されているので、封止樹脂12から容易に剥離させることができる。この台紙11はクリーニングした後、第1の成形型Pへ搬入されて再利用される。
【0031】
以上の圧縮成形方法によれば、第1の成形型Pにおいて台紙11上に封止樹脂12を供給してクランプすることにより成形温度より低い第1の温度で加熱して半硬化状態の台紙付シート樹脂14を形成し、当該台紙付シート樹脂14を第1の成形型Pより取り出して冷却用定盤15によって押圧しながら常温付近まで冷却することで、樹脂厚が薄い0.2mm以下のシート樹脂であっても、半硬化状態で台紙11に成形することができる。また、シート樹脂が台紙11上に成形されるため、面積の広いシート樹脂であっても離型時の損傷が発生せず、搬送する際のハンドリングがし易くなり、金型内の位置決めも容易になる。
また、台紙付シート樹脂14を第2の成形型Qへ搬入し、ワークと共にクランプして第1の温度より高い第2の温度で加熱加圧して硬化させて圧縮成形を行なうことにより、厚さが薄く面積の広いパッケージの成形品質を向上させることができる。
【実施例2】
【0032】
次に、圧縮成形方法の他例について
図4及び
図5を参照して装置構成と共に説明する。実施例1と同一部材には、同一番号を付して説明を援用するものとする。
図4(A)は第1の成形型Pを示す。
図1の右半図において、上型1は、上型ベース2に加圧ブロック3が固定されている。加圧ブロック3にはヒータ4が内蔵されており、加圧ブロック3のクランプ面にはリリースフィルム5aが吸着保持されるようになっている。
【0033】
下型6は、中央部が凸面となり外周側が段付面となるように形成された下型ベース7の外周側の段付面7bに可動ブロック8がコイルばね9によりフローティング支持されている。下型ベース7の中央部上面7aと可動ブロック8の内側面に囲まれた空間がキャビティ凹部6aとして利用される。下型ベース7にはヒータ10が内蔵されている。
【0034】
下型6のキャビティ凹部6aを含む下型クランプ面は、リリースフィルム5bが吸着保持されている。可動ブロック8と段付面7bとの間にはシール材(Oリング)27が設けられている。このシール材27によりシールされた可動ブロック8と下型ベース7との隙間より吸着装置Rに吸引されてリリースフィルム5bがキャビティ凹部6aに倣って吸着保持されるようになっている。リリースフィルム5a,5bは、予め短冊状に切断されたものを用いてもよいが、長尺状に連続するフィルムを用いてもよい。この場合には、1回ごとに封止するシート樹脂を成形し搬送するため、短冊状に切断される必要がある。
【0035】
図4(A)の左半図において、第1の成形型Pが型開き状態において、1回分の樹脂封止に必要な封止樹脂(樹脂タブレット、顆粒樹脂若しくは粉砕樹脂、液状樹脂等)12が
図1に示すホッパー13より下型6に供給される。封止樹脂12は、下型6のキャビティ凹部6aを覆うリリースフィルム5b上に供給される。
【0036】
封止樹脂12が供給された後、
図4(A)右半図に示すように型締めを行って可動ブロック8がリリースフィルム5a,5bを介して加圧ブロック3とクランプする。このとき、封止樹脂12に樹脂圧が作用したままヒータ4,10によって成形温度より低い第1の温度(例えば120℃以下の所定温度)で加熱加圧して半硬化状態(Bステージ)でフィルム付シート樹脂28を形成する。
【0037】
次いで、
図4(B)において、第1の成形型Pを型開きして、フィルム付シート樹脂28を第1の成形型Pより取り出して冷却用定盤15へ搬入する。フィルム付シート樹脂28は、下定盤15bに載置されて上定盤15aによってリリースフィルム5a,5bを介してシート樹脂を押圧しながら常温まで急冷却する。
【0038】
次に、
図4(C)において、冷却されたフィルム付シート樹脂28から上面側のリリースフィルム5aを剥離して、シート樹脂搬送装置29によりフィルム付シート樹脂28を吸着保持したまま、第2の成形型Qへ搬入する。フィルム付シート樹脂28は、シート樹脂搬送装置29によってリリースフィルム5aを剥離して露出する樹脂面全体を平坦な吸着面で吸着保持して搬送される。
【0039】
図5において、第2の成形型Qの構成について説明する。上型30は、上型ベース31に上型ブロック32が固定されている。上型ブロック32は、クランプ面にワークである半導体実装基板20を吸着保持するようになっている。また、上型ベース31にはヒータ31aが内蔵されており、上型ブロック32を囲むように上型遮蔽ブロック33が設けられている。
【0040】
下型34は、下型ベース35に下型ブロック36が固定されている。この下型ブロック36は、中央部上面36aが平坦面に形成され外周側に段付面36bが形成されている。この段付面36bには可動ブロック37がコイルばね38によりフローティング支持されている。下型ベース7の中央部上面36aと可動ブロック37の内側面に囲まれた空間がキャビティ凹部34aとして利用される。下型ベース35にはヒータ39が内蔵されている。また、可動ブロック37のクランプ面37aには吸引溝37bが形成されておりリリースフィルム5bを吸着する吸着装置Rに連通している。
【0041】
また、下型ベース35には下型ブロック36を囲んで下型遮蔽ブロック40が設けられている。下型遮蔽ブロック40の上面にはシール材(Oリング)41が設けられている。このシール材41を上型遮蔽ブロック33とクランプすることで、第2の成形型Qに外部と遮蔽された空間を形成できるようになっている。また、下型遮蔽ブロック40の一部には、吸引路42が形成されており、吸引装置Sに接続されている。上型遮蔽ブロック33と下型遮蔽ブロック40とでシール材41をクランプした状態で、吸引装置Sにより吸引動作を行なうことにより、上型30と下型34の遮蔽空間に減圧空間を形成するようになっている。
【0042】
図5の左半図において、型開きした第2の成形型Qの下型34へシート樹脂搬送装置29によって吸着保持したフィルム付シート樹脂28を搬入する。フィルム付シート樹脂28は、リリースフィルム5bを底部にしてキャビティ凹部34aに収容される。フィルム付シート樹脂28は、リリースフィルム5bが、吸着装置R(離隔手段)の吸引動作により可動ブロック37のクランプ面37aに吸着保持される。このとき、フィルム付シート樹脂28はキャビティ凹部34a(キャビティ底部)と離間して保持されており、半硬化状態にあるシート樹脂との熱交換によるゲルタイムの短縮を抑制している。また、上型30の上型ブロック32には、半導体実装基板20が供給され、クランプ面に吸着保持される。尚、下型ブロック36には、スプリング44で付勢された複数のピン45(離隔手段)が内蔵されていてもよい(
図3参照)。
【0043】
図5の右半図において、第2の成形型Qの型締めを行なって、先ず上型遮蔽ブロック33と下型遮蔽ブロック40とでシール材41がクランプされ、吸引装置Sにより吸引動作を行なうことにより、上型30と下型34の遮蔽空間に減圧空間を形成する。次いで、半導体実装基板20に実装された半導体素子が溶融状態となっている封止樹脂12へ浸漬されながら、可動ブロック37がリリースフィルム5bを介して半導体実装基板20をクランプしてコイルばね38が押し縮められて、半導体素子が溶融した封止樹脂12へ完全に浸漬されていく。このとき、フィルム付シート樹脂28が半導体実装基板20と共にクランプされ、第1の温度より高い第2の温度(例えば粉粒状のモールド用エポキシ樹脂(EMC(エポキシモールディングコンパウンド)樹脂で180℃)で加熱加圧して硬化させて圧縮成形を行なう。圧縮成形後、第2の成形型Qを型開きして、成形品よりリリースフィルム5bを引き剥がす。
【0044】
以上のように、予めリリースフィルム5a,5bを用いて第1の成形型Pにてフィルム付シート樹脂28を成形し、これを第2の成形型Qに搬入して圧縮成形することにより、台紙付シート樹脂と同様の作用効果を奏することができ、台紙付シート樹脂に比べて金型メンテナンスが簡略化することもできる。
また、ワークをクランプする前に第2の成形型Qの上型30と下型34との間に減圧空間を形成することで、厚さが薄く面積の広いシート樹脂に気泡が混入するのを防いで成形品質の高い圧縮成形を行なうことができる。
【0045】
なお、上述した実施形態では、粉粒状のモールド樹脂を用いてシート樹脂を形成する例について説明したが本発明はこれに限定されず、液状のエポキシ樹脂を用いることもできる。この場合、液状樹脂の圧縮成形に適した温度が120℃〜150℃であるため、成形温度よりも十分に低い温度(例えば、70℃〜90℃)でシート樹脂を成形し、上述の温度での冷却することで好適な半硬化状態のシート樹脂を形成可能である。また、エポキシ樹脂を用いた成形方法について説明したがシリコーン樹脂を用いてもよい。