特許第5764633号(P5764633)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ボストン サイエンティフィック サイムド,インコーポレイテッドの特許一覧

<>
  • 特許5764633-胃の空間占有システム 図000002
  • 特許5764633-胃の空間占有システム 図000003
  • 特許5764633-胃の空間占有システム 図000004
  • 特許5764633-胃の空間占有システム 図000005
  • 特許5764633-胃の空間占有システム 図000006
  • 特許5764633-胃の空間占有システム 図000007
  • 特許5764633-胃の空間占有システム 図000008
  • 特許5764633-胃の空間占有システム 図000009
  • 特許5764633-胃の空間占有システム 図000010
  • 特許5764633-胃の空間占有システム 図000011
  • 特許5764633-胃の空間占有システム 図000012
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5764633
(24)【登録日】2015年6月19日
(45)【発行日】2015年8月19日
(54)【発明の名称】胃の空間占有システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/00 20060101AFI20150730BHJP
【FI】
   A61B17/00 320
【請求項の数】8
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-211647(P2013-211647)
(22)【出願日】2013年10月9日
(62)【分割の表示】特願2010-541530(P2010-541530)の分割
【原出願日】2008年12月30日
(65)【公開番号】特開2014-42833(P2014-42833A)
(43)【公開日】2014年3月13日
【審査請求日】2013年10月9日
(31)【優先権主張番号】61/018,405
(32)【優先日】2007年12月31日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506192652
【氏名又は名称】ボストン サイエンティフィック サイムド,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】BOSTON SCIENTIFIC SCIMED,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】コール、デイビッド
(72)【発明者】
【氏名】クルーズ、サミュエル・ティー
(72)【発明者】
【氏名】スウォープ、ブレットン
(72)【発明者】
【氏名】スミス、アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】ランスフォード、ジョン
(72)【発明者】
【氏名】バルビアーズ、ダニエル・ジェイ
【審査官】 石川 薫
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2007/075978(WO,A1)
【文献】 特表2009−521277(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の端部および第2の端部を有する細長い部材であって、前記細長い部材が食道を通過して胃へ移動可能な流線形をなす第1の姿勢と、前記細長い部材が前記胃から腸へ移動不能な第2の姿勢との間で変化可能な前記細長い部材と、
前記第1の端部および前記第2の端部を互いに連結して、前記細長い部材を前記第2の姿勢に保持するように配置可能なファスナーと
を備える胃の空間占有システムにおいて、
前記細長い部材は前記第1の端部および前記第2の端部の間において、複数の弱められた領域を含む胃の空間占有システム。
【請求項2】
前記第1の端部および前記第2の端部は第1の端および第2の端をそれぞれ有し、前記ファスナーは前記第1の端を前記第2の端に連結することを特徴とする請求項1に記載の胃の空間占有システム。
【請求項3】
前記細長い部材の第1の端部および第2の端部は、前記第2の姿勢において空間占有物を形成することを特徴とする請求項2に記載の胃の空間占有システム。
【請求項4】
前記細長い部材は、前記第2の姿勢において環形状を有することを特徴とする請求項3に記載の胃の空間占有システム。
【請求項5】
前記細長い部材は、前記第2の姿勢において三角形状を有することを特徴とする請求項3に記載の胃の空間占有システム。
【請求項6】
前記弱められた領域は屈曲領域を含むと共に、前記細長い部材は、前記第1の姿勢から前記第2の姿勢に前記細長い部材を変化するように前記屈曲領域で曲げられることを特徴とする請求項5に記載の胃の空間占有システム。
【請求項7】
要素への引張力の適用によって前記第1の端を前記第2の端に向かって移動させるように、前記第1の端に結合すると共に前記第2の端に摺動自在に結合している前記要素をさらに含むことを特徴とする請求項2に記載の胃の空間占有システム。
【請求項8】
前記食道を通って前記胃の中に独立して導入可能な複数の前記細長い部材をさらに含むと共に、前記細長い部材の各々は、前記胃から前記腸の中へ移動不能な第2の姿勢へ変化可能であることを特徴とする請求項1に記載の胃の空間占有システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者の減量を引き起こすためのインプラントの領域に関し、特に患者の胃の有効容積を低減するための胃の空間占有システムに関する。
【背景技術】
【0002】
肥満の治療法の先行技術は、食事と薬物治療から非常に侵襲的な外科手術処置まで及ぶ。より成功した外科手術処置のうちのいくつかは、ルーY吻合術を備えた、垂直に結合された胃腹壁固定術又は近位の小胃(proximal gastric pouch)である。しかしながら、これらの処置の各々で既知の合併症が存在する。より成功してそれほど侵襲的でないオプションが望まれる。
【0003】
肥満のそれほど侵襲的でない治療法の先行技術では、食道経由で胃へ送られる胃の空間占有物のインプラント(implantation)がある。空間占有物は閉塞性の装置である−それは胃内部を占める体積によって食べ過ぎることを防ぐ。空間占有物のインプラントは別の外科手術処置ほど侵襲的ではないが、合併症は存在する。空間占有物が典型的には流体の充満したバルーンであるので、特に、バルーンの破壊は起こりえるし、また生じる。パンクさせられたバルーンは、腸へ移動し、その結果潜在的に生命に危険のある腸閉塞を引き起こす。ある先行システムは、胃の内部に空間占有物をアンカーさせることで、移動の危険を回避することを試みる。しかし、そうは言うものの、これらのシステムは胃壁から剥離される傾向があり、移動の原因となる。閉塞の危害を生じない空間占有物が非常に望ましい。しかしながら、減量に必要な空間占有物のサイズによって、単一ユニット空間占有物の設計が困難になる。
【0004】
加えて、胃は、空間占有物の位置決めに関連する変化を含む種々の変化に適合できる動的な器官である。胃は本来順応性を有するので、空間占有物は十分に長期的な減量を提供しない。そのような順応性に適応するシステムを有することは有利であり、それにより、長期的な減量が可能になる。
【0005】
本出願は、患者に必要とされる消費量の総量に応じた胃の変更及び/又は順応に対処できる設計方法と共に、閉塞の危険を最小限にする空間占有物の設計を説明する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
患者の胃の有効容積を低減し、患者の肥満を解消することができるとともに、腸閉塞を防止する胃の空間占有システムが提供される。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を達成するために、本発明の第1の態様によると、胃の空間占有システムは、第1の端部および第2の端部を有する細長い部材と、ファスナーとを備える。細長い部材は、食道を通過して胃へ移動可能な流線形をなす第1の姿勢と、胃から腸へ移動不能な第2の姿勢との間で変化可能である。前記ファスナーは、前記第1の端部および前記第2の端部を互いに連結して、前記細長い部材を前記第2の姿勢に保持する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】胃の横断面図を概略的に示すもので、複数の空間占有物が胃の内部に配置されている様子を示す図である。
図2図1と同様な図面であり、さらに、空気を抜かれて腸を通過する空間占有物の1つを示す図である。
図3図1と同様な図面であり、第2の種類の空間占有物の使用を示す図である。
図4A図3の空間占有物の代替案の側面図である。
図4B図4Aの4B−4B線に沿った横断面図である。
図5図4Aの空間占有物の横断面図であって、挿入位置での空間占有物を示す図である。
図6図4Aの空間占有物の横断面図であって、ロックした空間占有物を膨張したときの姿勢を示す図である。
図7】空間占有物のさらに別の実施例の側面図である。
図8図1と同様な図面であり、図7の空間占有物が幽門括約筋と接触状態になる方向に移動させられる場合に、図7の空間占有物が上方へ放たれる性能を示す図である。
図9A図7の空間占有物の製造のステップを示す図である。
図9B図7の空間占有物の製造のステップを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
開示された実施例は、先行技術である空間占有物の技術の欠点の除去に取り組む。好ましい役に立つモードにおいて、開示されたシステムは、胃の中に位置する数多くの空間占有物を利用する。その配置によって、減量を引き起こすために十分な胃の空間占有物が提供されるが、それらが腸へ移動する場合でも、閉塞の脅威を最小限にするのに均整がとれた空間占有物の利用が可能になる。一般に、多数の小さな体積の空間占有物は、全容積が単一容積の既知の空間占有物と等しいか超過するように、胃の内部に置かれる。しかしながら、各個々の空間占有物が腸へ移動すれば、その空間占有物が閉塞なしで通過できるように、その形状が設定される。空間占有物は経口経路で挿入される。しかし、一旦胃の内部に入ると、空間占有物は、腸管への移動を防ぐ形状へと膨張されるか、変形される。これらの空間占有物は既知の空間占有物より小さいので、減量の割合を増加させるか又は胃サイズの変化に対応するために、追加の個々のユニットが胃へ導入される。
【0010】
開示された実施例では、胃の酸性環境に耐えることができる、シリコーンのような材料を使用して、好ましくは形成される。また、それらは十分に柔らかく、胃の組織を傷つけないように適切な形状とされる。多数の実施例が考えられるが、それらの少数がここに示される。図1は、流体の充満した数多くの空間占有物10が胃へ経口経路で入る空間占有物システムの第1の実施例を示す。理想的には、個々のバルーンの体積は50ccから200ccの間であるが、好ましくは75ccから125ccの間にある。胃にこの形状のバルーンを2つ以上入れることによって、減量が生じるような適切な胃体積が得られる。ある実施例では、空間占有物の集合体で占められる総体的な体積は、300cc以上である(例えばおよそ300ccと700ccの間の範囲)。
【0011】
空間占有物はそれぞれ、示されるような食道経由で胃へその挿入が許容されるような、収縮したか圧縮された姿勢を有する。システムは、食道内に配置できるアウターチューブ(空間占有物はアウターチューブを通過する)のようなインプラントを容易にする器具、およびアウターチューブ又は直接食道を通って空間占有物を進める器具を提供する。そのような器具は、食道かアウターチューブを通って空間占有物を押す押しツール、あるいは食道かアウターチューブを通って空間占有物を運搬するのに使用できる把持器か、代替的な器具を有する。
【0012】
一旦空間占有物が胃の中に位置すれば、流体(例えば液体、気体、ゲル)はバルブ12を通して空間占有物へ導入される。一例においては、膨張チューブ14は、胃の中への空間占有物の導入に先立ってバルブに結合し、その後、膨張の後に空間占有物から取り外される。膨張チューブは、液体で満たされた注射器か小缶のような流体源16に結合している。空間占有物は球状として示されるが、流体で満たされた時には、消化管への通過に抵抗するが、図2に示されるように、破裂等によって流体が解放される時には、容易に消化管へ進む任意の形状である。
【0013】
一時にインプラントされる空間占有物ユニットの数は、希望の減量結果を与えるために選択された目標の胃空間占有を与えるように選択される。全空間占有量とこれに対応する減量の速度を増加させるか減少させ、及び/又は、胃の容積の変化に適応するように応答して、減量処理の間に追加のユニットが加えられたり、あるユニットが除去されたりする。
【0014】
図3は、膨張式である必要はないが、胃の中への挿入用に第1の流線形をなす形18aで位置し、次に消化管を通過するのに抵抗するような、異なるがより流線形の少ない形18bへ操作される空間占有物10aの代替的形状の使用を図示する。この実施例では、空間占有物10aは、円筒状又は卵形の素子を形成するようにバンドの終端が連結される、ロック機能を有する細長いバンド20である。1つの構成では、ロックの作用は、一端にタブ22を設け、他端にタブ受け入れ孔24を設け、両者はロックして係合することにより行われる。
【0015】
図3の実施例は、円筒状や卵形の域を越えた種々様々の代替形状を形成するように構成されてもよい。例えば、図4Aは、バンド20aの両端が結合して三角形を有する空間占有物10bを形成するように設けられた図3の実施例の修正例を示す。バンド20aには空間占有物に平滑な外面を与えるために、図4Bで示されるような円形断面がある。バンドにふさわしい直径は、0.25インチから1インチの範囲であり、さらに好ましくは0.5インチから0.75インチの範囲である。
【0016】
図5に示されるように、バンド20aは、例えば、バンド材料の弱められた領域あるいは薄くなった領域を使用して形成された曲げ予定位置26を有するように形成される。図示された実施例では、バンド材料にv形状のヒンジを作ることにより屈曲位置が形成される。
【0017】
インプラントを行うときは、バンドが直線構成/流線形構成をなすように位置し、図3に示されるように胃へ導入される。アウターチューブ、押出器、把持器などは、図1の実施例に関連して表示されるように、バンドの胃の中への導入を容易にするために使用される。
【0018】
一旦バンドが胃へ通過したならば、バンドが腸管へ進むことができない形を作るように、バンドの端がくっつけられる(この形は「通過不可能な形」とここに呼ばれる)。様々なツールあるいはアクチュエーターがこの目的に使用される。図5に示される1つの例において、テザー28はタブ22に結合して、タブ受け入れ孔24を通り抜けると共に、押出チューブ30を貫通する。バンド20aの両端を連結するために、図6に示されるように、押出チューブ30がバンド20aに押しつけられており、その結果タブ22が進んで、タブ受け入れ孔24に係合するようになると同時に、テザー28は引き抜かれる。テザー28と押出器30は、それらの近位端部が身体の外側からこの手法で操作されるような形状とされる。万一タブが解放されれば、バンドは流線形をなす形に戻り、患者に傷害を与えることなく腸管を通過できる。
【0019】
図1の実施例でのように、空間占有物10a、10bの多数のユニットは、図1の実施例に関連して説明されたように、胃内部の希望の集合的な空間占有量を達成するために、好ましくは一度に使用される。目標減量を達成するのに必要なように、胃に置かれたユニットの数は減少されてもよいし増加されてもよい。
【0020】
図7は、消化管の中へ空間占有物が通過することを禁じる形状を有する、胃の空間占有物10cの別の実施例をさらに図示する。空間占有物10cは管状のバルーンである。バルーンは内側壁32aと外側壁32b、および内側壁と外側壁の間の流体を有する。管状のバルーンを通って内腔34が縦に伸びる。
【0021】
空間占有物10cの構造は、「水ヘビ」として知られている子供用の玩具の構造に類似している。空間占有物は特に、一端で外側表面を絞ると、図7の矢印によって表示されるように、バルーンの外側表面を覆う壁の層がルーメン内へ巻き込まれるのと同時に、内腔34を覆う壁の層がバルーンの外部へ回転することを引き起こすことにより、空間占有物を圧縮点から離れた方向に「噴出させる」ように、構成される。この機能は装置が消化管へ進むのを防ぐことを支援する。特に、万一装置が消化管へ移動し始めれば、それが幽門洞へ下り、及び/又は、幽門括約筋に隣接しようとするが、そのとき、その遠位に面する端は圧縮されるか絞られる。この圧縮に応答して、図8に示されるように、装置の壁は装置を幽門括約筋から遠ざけるように推進する。
【0022】
図9A図9Bは、空間占有物10cを製造するステップを図示する。図9Aは、内腔34を有するチューブ36を示す。チューブ36は一様な直径を有し、また、シリコーン、ウレタンあるいは別の適切な材料の薄壁押出し(thin-walled extrusion)から作ることができる。チューブの両端40はめくり返され、チューブの外面上でともに接合されて、それにより、チューブに二重層壁を与える。流体は、壁の層32a、32bの間の空間38へ導入される。シール42は、両端40の間を密閉し、かつ空間38内の流体を密閉するために用いられる。シール42はバルブを有しており、図1の実施例に関して説明したように、流体が現場(in situ)に導入されることを可能にする。その代わりに、シールはバルブなしで提供されてもよい。この実施例は単一のユニットとして使用されてもよい。あるいは、多数のユニットが胃にインプラントされてもよい。
【0023】
先に説明された実施例のように、空間占有物10cを使用する肥満には、図1の実施例に関連して説明されたように、胃の内部の希望の集合的な空間占有量を達成するために、胃の内部に一個の空間占有物あるいは多数の空間占有物を置くことを含む。前の実施例でのように、全体的な減量、及び/又は、減量の速度はモニターされる。また、減量の目標値又は減量の速度を達成するのに必要なように、ユニットの数は減少されてもよいし、増加されてもよい。空間占有物10cは、胃内のアウターチューブを通過させられてもよく、または別のある手段によって胃へ導入されてもよい。
【0024】
開示された空間占有物と関連するシステムは、ここに説明された様々なステップに従って空間占有物を利用するように使用者に指示する使用指示書を提供する。
前述の記述を考慮して、技術における通常の熟練を有する者にとって、上記の識別された実施例の多くの変型例が明白になることが認められる。さらに、開示された実施例の様々な機能は様々な方法で組み合わせられてもよい。従って、本発明は、開示された特定の実施例、およびここに示され説明された本発明の方法によって制限されない。むしろ、発明の範囲は以下の請求項とそれらの等価物によって定められる。
【0025】
優先権目的も含んで、ここに引用された全ての先の特許権と出願は、参照によってその全てが組込まれる。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B