(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記絶縁樹脂層は、液晶ポリマーからなる液晶ポリマー層と、前記液晶ポリマー層と前記第二主面の接地導体層との間に介在する熱硬化性樹脂層とからなる請求項1または2に記載のモード変換器。
前記壁部は、前記第一基板の両主面間を貫通する複数の貫通孔の内部にそれぞれ形成された複数の導電性のポストからなるポスト壁である請求項1〜5のうちいずれか1項に記載のモード変換器。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第一実施形態)
本発明の第一実施形態について
図1〜
図16を参照して説明する。
なお、以下に示す実施形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために、例を挙げて説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。また、以下の説明に用いる図面は、本発明の特徴をわかりやすくするために、便宜上、要部となる部分を拡大している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。
【0012】
本発明の一実施形態に係るモード変換器1の構成について、
図1〜
図3を用いて説明する。
図1(A)および
図1(B)は、モード変換器1の構成を模式的に示す図である。
図2はモード変換器1の平面図である。
図3はモード変換器1の断面図である。
【0013】
図1〜
図3に示すように、モード変換器1は、第一基板10と、第二基板42と、高周波信号伝播用の信号伝送路C1を含む平面回路Cと、基板10,42を貫通する励振ピン22と、導波路40(
図3参照)と、を備えている。
【0014】
第一基板10は、基材2の両面に銅箔3a、3bが積層された構成とすることができる(
図3参照)。
基材2は、例えば単一層のLCP(液晶ポリマー)からなる。LCPは熱可塑性の樹脂であるため、LCPの両面に所望の銅箔3a、3bを貼り合せ、熱プレスにより熱融着することによってCCLを作製することが可能である。また、LCPは、誘電率、比誘電率が低く、また、ほとんど吸水をしないために、高周波伝送に適した材料であり、ミリ波帯においても十分な特性を発揮することが可能である。
【0015】
第一基板10は、
図3に示すように、主面10a(第一主面)と、その反対面である主面10b(第二主面)とを有する。第一基板10には、主面10a、10b間を貫通する貫通孔11〜13(第一貫通孔11、第二貫通孔12および第三貫通孔13)が形成されている。
【0016】
図3に示すように、励振ピン22は、第二貫通孔12の内壁12aに設けられた金属層22a(導体層)を有する。金属層22aは、信号伝送路C1に達している。
導体柱21は、第一貫通孔11の内壁11aに設けられた金属層21a、21b(導体層)を有する。金属層21aは、第一基板10の主面10a、10bに形成された導体膜14および導体膜15に達している。
GND接続ビア23は、第三貫通孔13の内壁13aに設けられた金属層23a(導体層)を有する。金属層23aは、信号伝送路C1に達している。
以下、導体柱21、励振ピン22、GND接続ビア23をピン20と総称することがある。
【0017】
平面回路Cは、第一基板10の主面10aの接地導体層30上において、接着層16を介して積層された誘電体層17と、誘電体層17上に銅箔18を介して積層された信号伝送路C1とからなる。
平面回路Cでは、信号伝送路C1の端部に高周波信号(ミリ波信号)を印加すると、信号伝送路C1と接地導体層30との間を、TEMモードの電磁波が伝搬する。
【0018】
平面回路Cを形成する誘電体層17と、誘電体層17上に積層された銅箔18とは、第二基板42を構成する。また、誘電体層17としては、LCP(液晶ポリマー)からなるフィルムが使用できる。
【0019】
導体膜14は、第一基板10の主面10aに形成されるものであり、主面10a上にて銅箔3aとともに接地導体層30を構成する。また、導体膜15は、第一基板10の主面10bに形成されるものであり、銅箔3bとともに接地導体層31を構成する。
これら接地導体層30、31は、それぞれ銅等の導体によって構成され、電気的に接地された配線(GND)として機能する。
なお、銅箔3aは接地導体層30の一部として扱うことができるため、基材2の上面を主面10aとみなすこともできる。同様に、銅箔3bは接地導体層31の一部として扱うことができるため、基材2の下面を主面10bとみなすこともできる。
【0020】
導波路40は、第一基板10の一方の主面10aおよび他方の主面10bにそれぞれ配された接地導体層30、31と、ポスト壁21Aとから構成される。ポスト壁21Aは、接地導体層30、31の間に立設し、両者を連結する複数の導体柱(ポスト)21からなる。
ポスト壁21Aを構成する複数の導体柱21は、
図1(A)に示すように、第一基板10の平面視において励振ピン22をU字形に囲むように配置されている。
【0021】
導体柱21の中心軸間距離は、導体柱21の直径の2倍と同じか、それよりも小さくなるように設定するのが好ましい。これによって、隣り合う導体柱21の間隔は導体柱21の直径以下となり、励振ピン22から励振される電磁波を反射して漏洩を防止する効果を高めることができる。
【0022】
なお、図示例では、複数の導体柱21からなるポスト壁21Aが採用されているが、これに代えて、励振ピンをU字形に囲むように延在する金属板などの導体板からなる連続的な壁部を採用してもよい。
【0023】
第一基板10の主面10aには、励振ピン22の周囲に、アンチパッド32が形成されている。主面10bには、励振ピン22の端部22bの周囲に、アンチパッド33が形成されている。
アンチパッド32、33は、励振ピン22の周囲に環状に形成され、接地導体層30、31と励振ピン22とを絶縁する領域を確保することにより、平面回路Cおよび励振ピン22の入力インピーダンスとのインピーダンス整合を図るものである。
【0024】
アンチパッド32、33は、第二貫通孔12の開口部から外側に広がる絶縁領域であり、例えば、励振ピン22の周囲の、接地導体層30、31が形成されていない環状領域としてよい。
アンチパッド32、33は、電気的な絶縁領域であればよく、励振ピン22と接地導体層30、31との間に確保された空隙により構成してもよいし、この空隙に充填された絶縁体(樹脂等)により構成してもよい。
図示例では、主面10b側のアンチパッド33には、絶縁樹脂層41を構成する樹脂が充填されている。
【0025】
信号伝送路C1は、一端側が励振ピン22の外部側端部に接続され、他端側がGSGパッド34に接続されており、マイクロストリップラインを構成している。
GSGパッド34の両外側には、
図2に示すように、GSGパッド34から離間してGNDパッド35が形成される。GNDパッド35には、GND接続ビア23が接続される。GND接続ビア23は、接地導体膜31に達して形成される。
前述した導体柱21、励振ピン22、およびGND接続ビア23は、少なくとも表面がCu、Ag、Auなどの導体から形成されていればよく、内部については、表面と同様の導体、空洞、あるいは、絶縁樹脂などで占有された構造とすることができる。
図3に示すように、この例では、第一基板10の他方の主面10b側に設けた絶縁樹脂層41を構成する樹脂が導体柱21、励振ピン22、GND接続ビア23内に充填されている。
【0026】
主面10b側の接地導体層31の下面側には、絶縁樹脂層41が形成されている。絶縁樹脂層41の具体的構成については、後述する第九工程(
図15〜
図20参照)にて詳細に説明する。
図示例の絶縁樹脂層41は、接地導体層31の下面側の全領域に形成されているが、絶縁樹脂層41は、接地導体層31の下面側の全領域に形成する必要はなく、少なくとも、励振ピン22の端部22b(第二主面10b側の端部)およびアンチパッド33を覆っていればよい。例えば、接地導体層31の下面側の領域のうち、励振ピン22の端部22bおよびアンチパッド33を含む一部領域のみに形成してもよい。
「少なくとも励振ピン22の端部22bおよびアンチパッド33を覆う」とは、平面視において、励振ピン22の端部22bおよびアンチパッド33と重なる領域を有することをいう。
【0027】
モード変換器1では、平面回路Cにおいて信号伝送路C1に高周波信号が入力された場合、信号伝送路C1と導波路上部広壁14間に電界が発生し、マイクロストリップモードとして電磁波が伝搬する。
電磁波は、励振ピン22を新たなTEモードの励振源として導波路基板10内にTEモードを誘起させ、TEモードとして導波路基板10内を伝搬する。
【0028】
図1〜
図3に示したモード変換器1の製造方法の一例について、
図4から
図16を参照して段階的に説明する。
まず、第一工程として、
図4に示すように、基材となるLCPフィルム102の両面に、銅箔103aおよび銅箔103bが張り合わされた、いわゆる銅張積層板(Copper Clad Laminate(CCL))からなる第一基板110を準備する。なお、この第一基板110は、
図1〜
図3の第一基板10に相当する。
【0029】
LCP(液晶ポリマー)は熱可塑性の樹脂であるため、LCPの両面に所望の銅箔103a、103bを貼り合せ、熱プレスにより熱融着することによってCCLを作製することが可能である。両面に張り合わされる銅箔103a、103bの厚さは、LCPとの貼り合せ時のハンドリング性を考えると12μm以上の厚さが好ましいが、熱プレスでCCL作製後に、硫酸過水等の薬液を用いて一部の銅箔103a、103bを溶解、除去することにより、所望の薄さに調整することが可能である。
なお、銅箔103a、103bの厚さは、後の回路形成性に影響するため、電気信号を流す際に影響が無い範囲で、薄い方が好ましい。また、LCPフィルム102の厚さは、例えば100μm〜750μmである。銅箔103a、103bの厚さは、例えば2〜18μmである。
【0030】
次に、
図5に示すように、第二工程として、ドリル加工により、第一基板110の一方の主面110aから他方の主面110bまで達する第一貫通孔111を形成する。
第一貫通孔111の孔径は、使用するドリル刃の径によって調整可能であり、製造する部品の用途に応じて、例えば75μm〜500μmの範囲で、適宜設定することができる。
なお、第一貫通孔111は、
図1〜
図3の第一貫通孔11に相当している。
【0031】
次に、第二工程の前工程である下地形成工程として、第一貫通孔111の壁面に導電性被膜を形成する。導電性被膜の形成は、例えばDPP(Direct Plating Process)処理といった、既知の手法を用いて実施する。
この導電性被膜は、パラジウムやカーボンなどによって構成することが可能であるが、後述する第三工程での電解銅めっき処理によって、銅めっきが可能であればよく、導電性被膜の構成材料には特に制限はない。
【0032】
次いで、第三工程として銅めっきを行い、
図6に示すように、第一基板110の一方の主面110aと、他方の主面110bと、第一貫通孔111の内壁面に、銅めっき層を形成する。第一基板110の一方の主面110aに形成されためっき層をめっき層114とし、他方の主面110bに形成されためっき層をめっき層115とし、第一貫通孔110の内部に形成されためっき層を導体柱121とする。
また、銅箔103aおよびめっき層114からなる導体層を接地導体層130とし、銅箔103bおよびめっき層115からなる導体層を接地導体層131という。
めっき層の厚みは、ミリ波帯の信号による表皮深さよりも厚いことが望ましいという観点で考えた場合、60GHzの信号における表皮深さが270nmであることから、第一貫通孔壁面のめっき厚が2μm以上とすれば十分と考えられる。
なお、導体柱121、接地導体層130、接地導体層131は、
図1〜
図3の導体柱21、接地導体層30、接地導体層31にそれぞれ相当している。
【0033】
第四工程の前工程として、
図7に示すように、第一基板110の接地導体層130上にアンチパッド形成用のエッチングレジスト150を形成し、さらに接地導体層131にエッチングレジスト151を形成する。
エッチングレジスト150、151を形成する方法としては既知の手法が可能であるが、例えば次の手法が可能である。まず、第一基板の接地導体層130および接地導体層131に、感光性ドライフィルムを、熱ロールによってラミネートする。次いで、フォトリソグラフィー法を用いて、ドライフィルムを所望の形状にパターニングし、エッチングレジストとする。
なお、本構造では、第四工程において接地導体層131には、アンチパッド等の回路形成は実施しないため、接地導体層131面にはエッチングレジスト151が全面に形成されることになる。すなわち、接地導体層131に形成されるエッチングレジスト151は、銅のエッチング液から接地導体層131を保護するためにのみ、使用される。
【0034】
第四工程として、
図8に示すように、先ほど形成したエッチングレジストをマスクとして、既知の方法であるウェットエッチングによって、接地導体層130にアンチパッド132を形成する。エッチング液には、塩化第二鉄や、塩化第二銅などの薬液が使用可能である。ただし、これら使用するエッチング液はあくまで一例であり、これらに限定される訳ではない。
エッチング後、エッチングレジストを剥離する。剥離液は、水酸化ナトリウム水溶液や、水酸化カリウム水溶液を使用するのが一般的である。剥離液は、使用するエッチングレジストに応じて、推奨される薬液を用いるのが好ましい。
【0035】
次に、第五工程の前工程として、
図9に示すように、LCPフィルム117の片面に銅箔118が張り合わされた、いわゆる銅張積層板からなる第二基板142を準備する。LCPフィルム117の厚さは例えば12〜100μmであり、その片面に張り合わされた銅箔118の厚さは例えば2〜18μmである。
なお、第二基板142は、
図1〜
図3の第二基板42に相当している。
【0036】
第五工程として、
図10に示すように、接地導体層130上に、接着剤シート116を介して、第二基板142を積層する。このとき、第二基板142のLCPフィルム117の一方の面と、接着剤シート116が向かい合うように積層を行う。この結果、第一基板110と第二基板142を、接着剤シート116を介して積層した構造を有する積層基板200を得る。
【0037】
第五工程における積層方法の一例を挙げる。まず、接地導体層130上に、接着剤シート116を、50〜100℃で熱ラミネートし、次いで、接着剤シート116上に、第二基板142を50〜100℃で熱ラミネートする。その後、加圧熱プレス機を用いて、圧力を加えながら接着剤層を熱硬化し、積層させることが可能である。なお、圧力は25〜65kgf/cm
2、温度は140〜200℃程度が一般的である。
【0038】
第六工程として、
図11に示すように、先ほど得られた積層基板200の所定の位置に、ドリル加工により、積層基板200の一方の主面200aから、他方の主面200bにまで達する、第二貫通孔112および第三貫通孔113を形成する。
第二貫通孔112は、接地導体層130に形成されたアンチパッド132の内側に形成される。
本実施形態において、第二貫通孔112および第三貫通孔113の孔径は、使用するドリル刃の径によって調整可能であり、製造する部品の用途に応じて、例えば75μm〜500μmの範囲で適宜設定することができる。
なお、第二貫通孔112および第三貫通孔113は、
図1〜
図3の第二貫通孔12および第三貫通孔13にそれぞれ相当している。
【0039】
第六工程においては、ドリル加工をする際、所定の位置に孔(第二貫通孔112および第三貫通孔113)が形成されるように、積層基板200とドリル装置の位置合わせを実施する必要がある。位置合せの方法としては、既知の手法を用いることが可能である。
一例を挙げると、接地導体層130へのアンチパッド132の形成と同時に、接地導体層130に位置合せ用のガイドマークを形成する。第五工程での積層後、X線画像処理装置によって、接地導体層130に形成されたガイドマークを認識することで、そのガイドマークに目がけて、ピンを挿入するためのピン孔を開ける。さらに、このピン孔に対して、積層基板200の厚さよりも長いピンを挿入する。さらに、挿入したピンを、ドリル装置の加工ステージ上にある基準孔に差し込むことで、基板とドリル装置との位置合せ行う、と言った手法が採用可能である。
【0040】
次に、第七工程の前工程である下地形成工程として、第二貫通孔112および第三貫通孔113の壁面に導電性被膜を形成する。詳細は、第三工程で説明した手法と同じ手法を用いることが可能である。
【0041】
次いで、第七工程として、銅めっきを行い、
図12に示すように、積層板200の一方の主面200aと、他方の主面200bと、第二貫通孔112の内壁面と、第三貫通孔113の内壁面に、銅めっき層を成長させる。
ここで、主面200a側のめっき層をめっき層201aとし、主面200b側のめっき層をめっき層201bとし、第二貫通孔112の内部に形成されためっき層を励振ピン122とし、第三貫通孔113の内部に形成されためっき層をGND接続ビア123としてそれぞれ表記する。
また、積層基板200の一方の主面200a側の、銅箔およびめっき層をまとめて接地導体層202と表記し、他方の主面200b側の銅箔およびめっき層をまとめて接地導体層203と表記する。
また、励振ピン122、GND接続ビア123は、
図1〜
図3の励振ピン22、GND接続ビア23に相当している。
【0042】
第八工程の前工程として、
図13に示すように、積層基板200の接地導体層202上に、アンチパット、マイクロストリップライン、およびGNDパッド形成用のエッチングレジスト152を形成し、接地導体層203にアンチパッド形成用のエッチングレジスト153を形成する。
エッチングレジストを形成する方法としては、第四工程で挙げた、既知の方法が利用可能である。
【0043】
次いで、第八工程として、
図14に示すように、前工程で形成したエッチングレジスト152をマスクとして、エッチング法により、接地導体層202上に、励振ピン122とつながる、マイクロストリップライン128(
図1〜
図3の信号伝送路C1に相当)、およびGNDパッド135を形成することにより、平面回路Cを形成する。また、接地導体層203に、アンチパッド133を形成する。
エッチング方法としては、第四工程で挙げたような、既知の方法であるウェットエッチングを用いることが可能である。
【0044】
次いで、第九工程の前工程として、
図15に示すように、接地導体層203にラミネートする熱硬化性樹脂層141A(絶縁樹脂層141)を準備する。
図16に、第九工程の本工程として、第一基板110の接地導体層203に、熱硬化性樹脂層141Aをラミネートし、熱プレスにより単層の絶縁樹脂層141を形成する。
これにより、
図1〜
図3に示すモード変換器1を得る。
【0045】
熱硬化性樹脂層141Aには、低誘電率および、低誘電正接のものが求められる。熱硬化性樹脂としては、市販の汎用品を用いることが可能である。前記熱硬化性樹脂には、エポキシ系樹脂や、ポリフェニレンエーテル(PPE)系樹脂を用いることが可能である。なお、エポキシ系樹脂の体積抵抗率は10
12〜10
17Ω・cmである。PPEの体積抵抗率は10
17Ω・cm程度である。
【0046】
なお、熱硬化性樹脂層141Aの厚さは、例えば50μm〜200μm(好ましくは50μm〜100μm)である。熱プレスの条件は、接着剤層の特性次第であるが、およそ、温度160℃、圧力45kfg/cm
2、時間60分程度、の処理が一般的である。この工法は、第三実施形態(後述する)で述べるLCPフィルムを直接熱融着させる場合と比べ、処理温度が低く、生産性が高いといったメリットがある。
熱プレスの際に、励振ピン122内部やGND接続ビア内部に樹脂が埋め込まれるが、いずれの場合も、モード変換器への特性には影響を及ぼさず、問題とはならない。
なお、絶縁樹脂層141は、
図1〜
図3の絶縁樹脂層41に相当している。
【0047】
モード変換器1では、第一基板10(110)の第二主面10a(110a)に形成された接地導体層31(131)に、熱硬化性樹脂からなる絶縁樹脂層41(141)を設けた。
絶縁樹脂層41(141)により、励振ピン21(121)端面から見た入力インピーダンスの変動を防止し、反射損失への変動を抑えることが可能となる。
【0048】
図示例の絶縁樹脂層141は、接地導体層203の下面側の全領域に形成されているが、絶縁樹脂層141は、接地導体層203の下面側の全領域に形成する必要はなく、少なくとも、励振ピン122の端部122b(第二主面10b側の端部)およびアンチパッド133を覆っていればよい。例えば、接地導体層203の下面側の領域のうち、励振ピン122の端部122bおよびアンチパッド133を含む一部領域のみに形成してもよい。
「少なくとも励振ピン122の端部122bおよびアンチパッド133を覆う」とは、平面視において、励振ピン122の端部122bおよびアンチパッド133と重なる領域を有することをいう。
【0049】
(第二実施形態)
本発明の第二実施形態について
図17及び
図18を参照して説明する。
第二実施形態のモード変換器1Aが、第一実施形態と異なるのは、第九工程(
図15及び
図16参照)に示される絶縁樹脂層141の具体的構成である。
【0050】
第二実施形態における第九工程の前工程では、
図17に示すように、絶縁樹脂層141として、接着剤層となる熱硬化性樹脂層141Bと、LCP(液晶ポリマー)からなるLCPフィルム141Cとを準備する。
図18に示すように、第九工程の本工程として、接地導体層203に熱硬化性樹脂層141Bを熱ラミネートし、さらにこの熱硬化性樹脂層141Bに、絶縁樹脂層であるLCPフィルム141Cを熱ラミネートする。その後、熱プレスを実施し、熱硬化性樹脂層141BとLCPフィルム141C(液晶ポリマー層)とを一体化した絶縁樹脂層141を形成する。
熱硬化性樹脂層141Bは、LCPフィルム141Cと接地導体層203との間に介在する。
【0051】
熱硬化性樹脂層141Bには、低誘電率および、低誘電正接のものが求められるが、市販の汎用品を用いることが可能である。
また、熱硬化性樹脂層141B上の層としては、LCPフィルム141Cの他、ポリイミド、テフロン(登録商標)、ガラスエポキシ板等も使用可能である。
なお、熱硬化性樹脂層141Bは、厚さ12μm〜50μmとすることができ、LCPフィルム141Cは、厚さ25〜500μmのものが使用可能である。
【0052】
熱プレスの条件は、熱硬化性樹脂の特性次第であるが、およそ温度160℃、圧力45kfg/cm
2、時間60分程度、の処理が一般的である。この工法は、第三実施形態で述べるLCPフィルムを直接、熱融着させる場合と比べ、処理温度が低く、生産性が高いといったメリットがある。
【0053】
第二実施形態のモード変換器1Aによれば、第一基板10(110)の第二主面10a(110a)に積層された接地導体層31(131)に、接着剤層となる熱硬化性樹脂層141BとLCPフィルム141Cとの積層体からなる絶縁樹脂層41(141)を設けた。
絶縁樹脂層41(141)により、励振ピン21(121)端面から見た入力インピーダンスの変動を防止し、反射損失の変動を抑えることが可能となる。
【0054】
第二実施形態のモード変換器1Aは、第一実施形態と比較した場合、熱硬化性樹脂層141Bに貼り合せる絶縁樹脂層(141C)の厚みを変えることによって、絶縁層の厚さを任意に設定できるメリットがある。すなわち、熱硬化性樹脂層141Bについては、熱で硬化させる必要があるため、あまり厚くはできないが、第二層目となるLCPフィルム141Cの厚さ選定により、絶縁樹脂層141全体の厚さを任意に設定できる。
【0055】
(第三実施形態)
本発明の第三実施形態について
図19及び
図20を参照して説明する。
第三実施形態に示されるモード変換器1Bが、第一、第二実施形態と異なるのは、第九工程(
図15〜
図18参照)に示される絶縁樹脂層141の具体的構成である。
【0056】
第三実施形態における第九工程の前工程では、
図19に示すように、絶縁樹脂層141として、LCP(液晶ポリマー)からなるLCPフィルム141D(液晶ポリマー層)を単体で用いている。
図20に示すように、第九工程の本工程として、接地導体層203にLCPフィルム141Dをラミネートし、熱プレスにより単層の絶縁樹脂層141を形成する。
【0057】
LCPフィルム141Dを構成するLCPは熱可塑性の樹脂であるため、
図20に示すように、LCPフィルムを融点付近の温度で熱プレスすることにより、基板に直接、積層させることが可能である。
具体的には、接地導体層203にLCPフィルム141Dを重ねた後、熱プレスを用いて、温度300℃、圧力45kfg/cm
2、時間10分程度、処理することにより、熱融着させて絶縁樹脂層141を形成する。なお、LCPフィルムの厚さは、例えば25μm〜500μmである。
そして、第三実施形態では、第一、第二実施形態とは異なり、絶縁樹脂層141がLCP単層となるので、より、低誘電率、低誘電正接な絶縁層を形成することが可能となり、反射損失を抑えられる効果が期待できる。
【0058】
次に、上述したモード変換器を用いた実験例について説明する。
本実施形態によるモード変換器を用いた場合において、マイクロストリップ線路の端部をポートとし、反射損失に関するシミュレーションを行った。シミュレーションには3次元電磁界解析ソフトHFSSを用いた。結果を
図21に示す。
なお、本実施形態のモード変換器では、励振ピンが200μm径であり、励振ピンのランド部の径が350μmであり、励振ピンの周囲に位置するアンチパッド(32、33)のスペース幅(励振ピンの径方向に沿う幅)を、85μm、100μm、125μm、135μm、150μmとした。また、グラフの横軸は周波数を示し、縦軸は反射損失の大きさを示している。
この図より、反射損失の大きさは、アンチパッドのサイズによって変化することがわかった。したがって、この結果から、アンチパッドのサイズを調整することによって、ピン入力端における入力インピーダンスの制御が可能であることがわかった。
また、アンチパッドのサイズには100μm〜150μm、最適値として125μmを選択することが好ましく、当該最適値の選択によって、反射損失を著しく低減させ得ることもわかった。
【0059】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。例えば、アンチパッドは第一基板の第一主面と第二主面のうちいずれか一方にのみ形成してもよい。