(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0056】
本発明を詳細に説明する前に、本発明は特定のデバイスまたは生物学的システムに限定されるものではなく、当然のことながら変更され得ることを理解されたい。また、本明細書に使用された専門用語は、特定の実施形態の記述のみを目的としており、本発明の限定を意図するものではないということも理解されたい。本明細書および添付の特許請求の範囲において用いられるような「a」、「an」および「the」という単数形の形態は、内容から明らかに分かるものを除いて、複数形の形態も含んでいる。したがって、例えば、「a cell(1個の細胞)」への言及は、2個以上のcells(細胞)の組み合わせを含んでおり、「bacteria(細菌)」への言及は、bacteria(細菌)の混合物を含んでいる。
【0057】
ここにまたは本明細書の以下の残りの部分において定義されない限り、本明細書において使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術の当業者によって一般に理解される意味と同じ意味を有している。
【0058】
−相同性−
各種タンパク質および/または各種タンパク質配列が、共通の祖先タンパク質またはタンパク質配列から天然にもしくは人工的に誘導される場合に、それらは「相同である」。同様に各種核酸および/または各種核酸配列が、共通の祖先核酸または核酸配列から天然にもしくは人工的に誘導される場合に、それらは「相同である」。例えば、任意の天然発生型(naturally occuring)核酸は、1個以上のセレクターコドンを含むように、任意の利用可能な突然変異誘発法によって修飾され得る。この突然変異誘発した核酸は、発現されると1種以上の非天然アミノ酸を含んでいるポリペプチドをコードする。勿論、突然変異誘発法によって、1個以上の標準コドンがさらに変更されることにより、生じる突然変異タンパク質の1種以上の標準アミノ酸が変更されることも可能である。相同性は一般的に、2つ以上の核酸またはタンパク質(あるいはそれらの配列)間の配列類似性から推測される。相同性の判定に有用な、配列間の類似性の正確な百分率は、問題になる核酸およびタンパク質によって異なるが、通常は、わずか25%の配列類似性を使用して相同性が判定される。より高いレベルの配列類似性(例えば30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または99%あるいはそれ以上)を使用して、相同性を判定することもできる。配列類似性の百分率を決定するための方法(例えば、初期パラメーターを使用した、BLASTPおよびBLASTN)は、本明細書に記載されており、一般的に利用可能である。
【0059】
−直交化(Orthogonal)−
本明細書に使用されているような用語「直交化」は、分子(例えば直交化tRNA(O−tRNA)および/または直交化アミノアシル−tRNAシンテターゼ(O−RS))が細胞の内在性成分と共に機能するときの効率が、該細胞または翻訳システムに内在する対応分子と比べて低下しているか、あるいは上記分子が該細胞の内在性分と共に機能しないことをいう。tRNAおよびアミノアシル−tRNAシンテターゼの場合、直交化は、直交化tRNAが内在性tRNAシンテターゼと共に機能することができないこと、または直交化tRNAが内在性tRNAシンテターゼと共に機能するときの効率が、内在性tRNAが内在性tRNAシンテターゼと共に機能するときの効率と比べて低下していること(例えば20%未満、10%未満、5%未満、または1%未満に低下していること)、あるいは、直交化アミノアシル−tRNAシンテターゼ内在性tRNAと共に機能することができないこと、または直交化アミノアシル−tRNAシンテターゼが内在性tRNAと共に機能するときの効率が、内在性tRNAシンテターゼが内在性tRNAと共に機能するときの効率と比べて低下していること(例えば20%未満、10%未満、5%未満、または1%未満に低下していること)をいう。直交化分子は、細胞内に作動可能な内在性相補的分子をもたない。例えば、細胞の任意の内在性RSによって、該細胞内おいて直交化tRNAがアミノアシル化される効率は、該内在性RSによって内在性tRNAがアミノアシル化される効率と比べて、低下しているか、またはゼロですらある。もう1つ別の例を挙げると、直交化RSが興味のある細胞内おいて任意の内在性tRNAをアミノアシル化する効率は、内在性RSが該内在性tRNAをアシル化する効率と比べて、低下しているか、またはゼロですらある。第1の直交化分子と共に機能する第2の直交化分子が、細胞に導入されてもよい。例えば、直交化tRNA/RS対は、対応する内在性tRNA/RS対の効率に対して、所定の効率(例えば50%効率、60%効率、70%効率、75%効率、80%効率、90%効率、95%効率または99%以上の効率)で、細胞内おいて共に機能する導入された相補成分を含んでいる。
【0060】
−相補的−
用語「相補的」は、直交化対の成分、O−tRNAおよびO−RSが一緒に機能することができる(例えばO−RSがO−tRNAをアミノアシル化する)ことをいう。
【0061】
−優先的なアミノアシル化−
用語「優先的なアミノアシル化」は、O−RSが天然発生型tRNAまたはO−tRNAを作製するために使用される出発物質をアミノアシル化するときよりも、例えば70%、75%、85%、90%、95%、または99%、もしくはそれ以上の効率で、該O−RSが非天然アミノ酸でO−tRNAをアミノアシル化するこという。非天然アミノ酸は、高い忠実性で、例えば所定のセレレクターコドンについて75%以上、約80%以上、約90%以上、約95%以上、または約99%以上、あるいはそれ以上の効率で成長中のポリペプチド鎖に組み込まれる。
【0062】
−セレクターコドン−
用語「セレクターコドン」は、翻訳過程において、O−tRNAによって認識されるが、内在性tRNAによっては認識されないコドンのことをいう。O−tRNAのアンチコドンループは、mRNAのセレクターコドンを認識し、そのアミノ酸(例えば非天然アミノ酸)を、ポリペプチドのこの部位に組み込む。セレクターコドンは、例えばナンセンスコドン(終止コドン(例えばアンバーコドン、オーカーコドン、オパールコドン)など);4塩基以上のコドン;レアコドン;および/あるいは天然塩基対もしくは非天然塩基対に由来するコドンを含んでいていもよい。
【0063】
−サプレッサーtRNA−
サプレッサーtRNAは、例えばセレクターコドンに応じてアミノ酸をポリペプチド鎖に組み込むための機構を、提供することによって、所定の翻訳システムにおける、メッセンジャーRNA(mRNA)の読みを変更するtRNAである。例えば、サプレッサーtRNAは、例えば終止コドン、4塩基コドンおよび/またはレアコドンなどを読むことができる。
【0064】
−再利用可能なtRNA−
用語「再利用可能なtRNA」は、翻訳の間に1種以上のポリペプチド鎖へアミノ酸(例えば非天然アミノ酸)を組み込むために、アミノ酸(例えば非天然アミノ酸)でアミノアシル化され、且つ、繰り返し再アミノアシル化されることができるtRNAのことをいう。
【0065】
−翻訳システム−
用語「翻訳システム」は、天然発生型アミノ酸を成長中のポリペプチド鎖(タンパク質)に組み込む成分の集合体のことをいう。翻訳システムの成分には、例えばリボソーム、tRNA、シンテターゼ、mRNA、およびアミノ酸などが含まれてもよい。本発明の成分(O−RS、O−tRNA、非天然アミノ酸など)が、インビトロまたはインビボの翻訳システム(例えば脊椎動物細胞)に加えられてもよい。上記脊椎動物細胞は、例えば酵母細胞、哺乳類細胞、植物細胞、藻類細胞、菌類細胞、および/または昆虫細胞などである。
【0066】
−非天然アミノ酸−
本明細書に使用されるような用語「非天然アミノ酸」は、20種の一般的な天然発生型アミノ酸、セレノシステインまたはピロリジンの1つではない、任意のアミノ酸、修飾されたアミノ酸、および/またはアミノ酸類似体のことをいう。
【0067】
−〜に由来する−
本明細書に使用されているような用語「〜に由来する」は、特定分子もしくは生物から単離されているか、または特定分子もしくは生物からの情報を使用して作製された成分のことをいう。
【0068】
−不活性型RS−
本明細書に使用されているような用語「不活性型RS」は、天然のコグネートtRNA(cognate tRNA)を、アミノ酸を使ってアミノアシル化することがもはやできないように、突然変異したシンテターゼのことをいう。
【0069】
−ポジティブ選択マーカーまたはポジティブスクリーニングマーカー−
本明細書に使用されているような用語「ポジティブ選択マーカーまたはポジティブスクリーニングマーカー」は、存在するときに、例えば発現したときまたは活性化したときなどに、ポジティブ選択マーカーを有さない細胞からポジティブ選択マーカーを有する細胞を同定できるマーカーのことをいう。
【0070】
−ネガティブ選択マーカーまたはネガティブスクリーニングマーカー−
本明細書に使用されているような用語「ネガティブ選択マーカーまたはネガティブスクリーニングマーカー」は、存在するときに、例えば発現したときまたは活性化したときなどに、(例えば所望の特性を有する細胞と比べて)所望の特性を有さない細胞を同定することができるマーカーのことをいう。
【0071】
−レポーター−
本明細書に使用されているような用語「レポーター」は、興味のあるシステムの標的成分を選択するために、使用されることができる成分のことをいう。例えば、レポーターには、蛍光スクリーニングマーカー(例えば緑色蛍光タンパク質)、発光マーカー(例えばホタルルシフェラーゼタンパク質)、アフィニティーに基づくスクリーニングマーカー、または選択可能マーカー遺伝子(his3、ura3、leu2、lys2、lacZ、β−gal/lacZ(β−ガラクトシダーゼ)、Adh(アルコールデヒドロゲナーゼ)など)などを含んでいてもよい。
【0072】
−脊椎動物−
本明細書に使用されているような用語「脊椎動物」は、系統学的ドメイン(phylogenetic domain)の真核生物(Eucarya)に属する生物(動物(例えば哺乳類、爬虫類、鳥類など)など)のことをいう。
【0073】
−非真核生物−
本明細書に使用されているような用語「非真核生物」は、脊椎動物ではない生物のことをいう。例えば脊椎動物ではない生物は、真正細菌の系統学的ドメインまたは古細菌の系統学的ドメインに属してもよい。該真性細菌としては、例えばEscherichia coli、Thermus thermophilus、Bacillus stearothermophilusなどが挙げられる。また古細菌としては、例えばMethanococcus jannaschii、Methanobacterium thermoautotrophicum、Halobacterium(Haloferax volcaniiおよびHalobacterium種(species)のNRC-1など)、Archaeoglobus fulgidus、Pyrococcus furiosus、Pyrococcus horikoshii、Aeuropyrum pernixなどが挙げられる。
【0074】
−抗体−
本明細書に使用されているような用語「抗体」は、特に限定されないが、検体(抗原)に特異的に結合し、認識する、免疫グロブリン遺伝子、またはその断片によって実質的にコードされるポリペプチドを含んでいる。例えば、抗体は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体、および一本鎖抗体などを含んでいる。また、免疫グロブリンの断片(Fab断片、およびファージディスプレイを含む発現ライブラリーによって製造される断片を含む)も、本明細書に使用されているような用語「抗体」に包含される。抗体の構造および専門用語については例えば、Paul, Fundamental Immunology, 4th Ed., 1999, Raven Press, New York参照。
【0075】
−保存バリアント−
用語「保存バリアント」は、保存バリアントの基になっている翻訳成分(例えばO−tRNAまたはO−RS)と同じように機能するが、該翻訳成分の配列とは異なる配列を有する翻訳成分のことをいう(例えば保存バリアントO−tRNA、または保存バリアントO−RS)。例えば、O−RSは、非天然アミノ酸で相補的O−tRNAまたは保存バリアントO−tRNAをアミノアシル化するが、O−tRNAの配列と保存バリアントO−tRNAの配列は、同じではない。保存バリアントが、対応するO−tRNAまたはO−RSと相補的である限り、該保存バリアントの配列に差異が、例えば1つ、2つ、3つ、4つ、または5つ以上存在してもよい。
【0076】
−選択剤またはスクリーニング剤−
本明細書に使用されているような用語「選択剤またはスクリーニング剤」は、存在するときに、集団から特定の成分を選択/スクリーニングすることを可能にする剤のことをいう。選択剤またはスクリーニング剤は、例えば特に限定されないが、栄養素、抗生物質、光の波長、抗体、または発現したポリヌクレオチド(例えば転写調節タンパク質)などを含んでいる。選択剤の濃度や強度などは、変更可能である。
【0077】
−検出可能な物質−
本明細書に使用されているような用語「検出可能な物質」は、活性化されたときに、変更されたとき、または発現した時などに、集団から特定の成分を選択/スクリーニングすることを可能にする剤のことをいう。検出可能な物質は、例えば、化学剤(例えば5−フルオロオロト酸(5−FOA))であってもよい。5−フルオロオロト酸は、特定の条件下において、検出可能になる(例えば、URA3レポーターの発現下において、URA3レポーターを発現する細胞を殺す毒性産物になる)。
【0078】
遺伝暗号によって課された化学的制約を越えて、脊椎動物細胞内おいてタンパク質の構造を直接、遺伝的に修飾できれば、細胞内プロセスを探索および操作するための強力な分子ツールが得られると考えられる。本発明は、脊椎動物細胞内の、遺伝的にコードされたアミノ酸の数を拡張する翻訳成分を提供する。該翻訳成分には、tRNA(例えば直交化tRNA(O−tRNA))、アミノアシル−tRNAシンテターゼ(例えば直交化シンテターゼ(O−RS))、O−tRNA/O−RS対、および非天然アミノ酸が含まれる。
【0079】
通常、本発明のO−tRNAは、脊椎動物細胞内おいて発現されて、効率よく加工され、翻訳の際に機能するが、宿主のアミノアシル−tRNAシンテターゼによってはほとんどアミノアシル化されない。本発明のO−tRNAは、mRNAの翻訳の間に、成長中のポリペプチド鎖に20種の一般アミノ酸のどれもコードしていない非天然アミノ酸を、セレクターコドンに応じて送達する。
【0080】
本発明のO−RSは、本発明のO−tRNAを脊椎動物細胞内おいて非天然アミノ酸で優先的にアミノアシル化するが、宿主の細胞質のどのtRNAもアミノアシル化しない。さらに、本発明のアミノアシル−tRNAシンテターゼの特異性は、非天然アミノ酸を受け入れることができるが、あらゆる内在性アミノ酸を排除するものである。また一例のO−RSまたはその一部のアミノ酸配列を含んでいるポリペプチドも本発明の特徴である。さらに、翻訳成分であるO−tRNA、O−RS、およびそれらの一部をコードするポリヌクレオチドも、本発明の特徴である。
【0081】
また本発明は、脊椎動物細胞において使用される、非天然アミノ酸を利用する所望の翻訳成分(例えばO−RSおよび、または直交化対(直交化tRNAおよび直交化アミノアシル−tRNAシンテターゼ))を製造する方法を提供する。また本発明は、そのような方法によって製造された翻訳成分を提供する。例えば、E. coliのチロシル−tRNAシンテターゼ/tRNA
CUAの対は、本発明のO−tRNA/O−RS対である。また、本発明は、ある脊椎動物細胞内おいて翻訳成分を選択/スクリーニングし、選択/スクリーニングされれば、該翻訳成分を異なる脊椎動物細胞(選択/スクリーニングに使用されていない脊椎動物細胞)に使用する方法を特徴としている。例えば、脊椎動物細胞のための翻訳成分を製造する上記選択/スクリーニング方法は、酵母(例えばSaccharomyces cerevisiae)において実施されてもよく、その後、選択された成分は別の脊椎動物細胞(例えば別の酵母細胞、哺乳類細胞、昆虫細胞、植物細胞、および菌類細胞など)に使用されてもよい。
【0082】
さらに本発明は、非天然アミノ酸を含んでいるタンパク質を脊椎動物細胞内おいて製造するための方法を提供する。該タンパク質は、本発明の翻訳成分を使用して製造されたものである。また本発明は、非天然アミノ酸を含んでいるタンパク質、および本発明の方法によって製造されたタンパク質を提供する。また興味のあるポリペプチドまたはタンパク質は、例えば、[3+2]環化付加または求核−求電子反応を介して追加され、原核細胞などによってなされない翻訳後修飾を含んでいてもよい。ある実施形態では、非天然アミノ酸を有する転写調節タンパク質を製造する方法、およびそのような方法によって製造されたタンパク質も本発明に含まれる。また非天然アミノ酸を含んでいるタンパク質を、含有している組成物も本発明の特徴である。
【0083】
非天然アミノ酸を有するポリペプチドまたはタンパク質を製造するためのキットも、本発明の特徴である。
【0084】
<直交化アミノアシル−tRNAシンテターゼ(O−RS)>
脊椎細胞内おいて、興味のあるポリペプチドまたはタンパク質に、非天然アミノ酸を特異的に組み込むために、20種の一般アミノ酸どれでもなく、所望の非天然アミノ酸だけがtRNAにチャージされるように、シンテターゼの基質特異性が変更される。直交化シンテターゼが無作為的である場合、標的位置に天然アミノ酸と非天然アミノ酸とが混ざっている突然変異タンパク質が得られるであろう。本発明は、特定の非天然アミノ酸に対する基質特異性が修飾された直交化アミノアシル−tRNAシンテターゼを製造する組成物、および該シンテターゼを製造する方法を提供する。
【0085】
直交化アミノアシル−tRNAシンテターゼ(O−RS)を含んでいる脊椎動物細胞は、本発明の特徴である。該O−RSは、脊椎動物細胞内おいて、非天然アミノ酸で直交化tRNA(O−tRNA)を優先的にアミノアシル化する。ある実施形態では、上記O−RSは、1種よりも多く(例えば2種以上および3種以上など)の非天然アミノ酸を利用する。したがって、本発明のO−RSは、種々の非天然アミノ酸でO−tRNAを優先的にアミノアシル化することができてもよい。これにより、細胞と一緒に配置される非天然アミノ酸または各種非天然アミノ酸の組み合わせを選択することにより、および/あるいは、それらの組み込みのために細胞と一緒に配置される非天然アミノ酸の種々の量を選択することによって、さらに別のレベルの制御が可能になる。
【0086】
場合によっては、本発明のO−RSは、天然アミノ酸と比べて、非天然アミノ酸に対する1個以上の改善または向上した酵素特性を有している。例えば、天然発生型アミノ酸(20種の公知一般アミノ酸)と比べて、非天然アミノ酸に対する改善または向上した酵素特性には、例えばより高いKm、より低いKm、より高いkcat、より低いkcat、より低いkcat/km、より高いkcat/kmなどの何れかが包含される。
【0087】
場合によって上記O−RSは、O−RSを含んでいるポリペプチド、および/またはO−RSもしくはその一部をコードするポリヌクレオチドによって、脊椎動物細胞に提供されてもよい。例えば、O−RSまたはその一部は、配列番号3−35の何れか1つに示されたようなポリヌクレオチド配列、またはそれらに相補的なポリヌクレオチド配列によってコードされる。もう1つ別の実施形態では、O−RSは、配列番号36−63および/または86の何れか1つに示されたようなアミノ酸配列、あるいはそれらの保存変異体を含んでいる。典型的なO−RS分子の配列については、例えば、本明細書の表5、6および8、ならびに実施例6を参照のこと。
【0088】
またO−RSは、(例えば配列番号2に示されたような)天然発生型チロシルアミノアシル−tRNAシンテターゼ(TyrRS)のアミノ酸配列と、例えば少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、または少なくとも99.5%同一であるアミノ酸配列を含んでいるとともに、グループA−Eの2つ以上のアミノ酸を含んでいる。ここで、グループAは、E. coliのTyrRSのTyr37に対応する位置に、バリン、イソロイシン、ロイシン、グリシン、セリン、アラニン、またはトレオニンを含んでいる。グループBは、E. coliのTyrRSのAsn126に対応する位置に、アスパラギン酸を含んでいる。グループCは、E. coliのTyrRSのAsp182に対応する位置に、トレオニン、セリン、アルギニン、アスパラギン、またはグリシンを含んでいる。グループDは、E. coliのTyrRSのPhe183に対応する位置に、メチオニン、アラニン、バリンまたはチロシンを含んでいる。グループEは、E. coliのTyrRSのLeu186に対応する位置に、セリン、メチオニン、バリン、システイン、トレオニン、またはアラニンを含んでいる。なお、本明細書の表4、表6、および表8も参照のこと。
【0089】
上記O−RSに加えて、本発明の脊椎動物細胞は、さらに別の成分(例えば非天然アミノ酸)を含んでいてもよい。また該脊椎動物細胞は、セレクターコドンを認識し、上記O−RSによって上記非天然アミノ酸で優先的にアミノアシル化される直交化tRNA(O−tRNA)を含んでいてもよい。該O−tRNAは、例えば、Escherichia coliおよび/またはBacillus stearothermophilusなどの脊椎動物ではない生物に由来するものである。また、興味のあるポリペプチドをコードし、O−tRNAによって認識されるセレクターコドンを含んでいるポリヌクレオチドを含んでいる核酸、またはこれらの1種以上の組み合わせも上記細胞に存在してもよい。
【0090】
1態様では、上記O−tRNAは、配列番号65に示されたようなポリヌクレオチド配列を含んでいるか、該ポリヌクレオチド配列から加工されたtRNAの、例えば少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または99%の効率で、タンパク質への非天然アミノ酸の組み込みを媒介する。もう1つ別の態様では、上記O−tRNAは、配列番号65を含んでおり、上記O−RSは、配列番号36−63および/または86の何れか1つに示されたポリペプチド配列、ならびに/あるいはそれらの保存変異体を含んでいる。典型的なO−RS分子およびO−tRNA分子の配列については、本明細書の表5および実施例6も参照のこと。
【0091】
一例を挙げると、脊椎動物細胞は、直交化アミノアシル−tRNAシンテターゼ(O−RS)、直交化tRNA(O−tRNA)、非天然アミノ酸、および興味のあるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含んでいる。該ポリヌクレオチドはO−tRNAによって認識されるセレクターコドンを含んでいるものである。上記O−RSは、脊椎動物細胞内おいて、非天然アミノ酸で直交化tRNA(O−tRNA)を優先的にアミノアシル化する。上記細胞は、非天然アミノ酸が存在下しないときは、非天然アミノ酸が存在下するときの上記興味のあるポリペプチドの収量の、例えば30%未満、20%未満、15%未満、10%未満、5%未満、および2.5%未満などの収量で、上記興味のあるポリペプチドを製造する。
【0092】
本発明の特徴であるO−RSを製造するための方法は、場合によっては、野生型シンテターゼのフレームワークからシンテターゼの突然変異体のプールを作製する工程と、それから20種の一般アミノ酸と比べて、非天然アミノ酸に対する特異性に基づいて突然変異したRSを選択する工程とを含んでいる。そのようなシンテターゼを単離するためには、選択方法は、(i)高感度であり(1回目に得られる所望のシンテターゼ活性が低く、集団が少なくてもよいため)、(ii)「調節可能」であり(種々の選択ごとに、選択ストリンジェンシーを変更することが望ましいため)、(iii)様々な非天然アミノ酸について、上記方法を使用できるように、一般的である。
【0093】
脊椎動物細胞内おいて、非天然アミノ酸で直交化tRNAを優先的にアミノアシル化する直交化アミノアシル−tRNAシンテターゼ(O−RS)を製造する方法は、通常、ポジティブ選択と、その後に行われるネガティブ選択との組み合わせを適用する工程を含んでいる。ポジティブ選択では、ポジティブマーカーの必須ではない位置に導入されたセレクターコドンの抑圧によって、脊椎動物細胞はポジティブ選択圧の下で生き残る。非天然アミノ酸の存在下で生き残ったものは、非天然アミノ酸を直交化サプレッサーtRNAにチャージする(charge)活性型シンテターゼをコードしている。ネガティブ選択では、ネガティブマーカーの必須ではない位置に導入されたセレクターコドンの抑圧によって、天然アミノ酸に対する特異性を有するシンテターゼが除去される。ネガティブ選択およびポジティブ選択から生き残ったものは、非天然アミノ酸のみで直交化サプレッサーtRNAをアミノアシル化する(非天然アミノ酸を該tRNAにチャージする)シンテターゼをコードしているか、あるいは非天然アミノ酸で少なくとも優先的に直交化サプレッサーtRNAをアミノアシル化する(少なくとも優先的に非天然アミノ酸を該tRNAにチャージする)シンテターゼをコードしている。
【0094】
例えば、上記方法は、(a)非天然アミノ酸の存在下で、第1種の脊椎動物細胞集団をポジティブ選択する工程と(該脊椎動物細胞はそれぞれ、(i)アミノアシル−tRNAシンテターゼ(RS)のライブラリーのメンバー、(ii)直交化tRNA(O−tRNA)、(iii)ポジティブ選択マーカーをコードするポリヌクレオチド、および(iv)ネガティブ選択マーカーをコードするポリヌクレオチドを含んでおり、上記ポジティブ選択から生き残る細胞は、非天然アミノ酸の存在下で、直交化tRNA(O−tRNA)をアミノアシル化する活性型RSを含んでいる)、(b)上記ポジティブ選択から生き残る細胞を、非天然アミノ酸の非存在下でネガティブ選択して、天然アミノ酸でO−tRNAをアミノアシル化する活性型RSを除去することにより、非天然アミノ酸でO−tRNAを優先的にアミノアシル化するO−RSを得る工程とを含んでいる。
【0095】
上記ポジティブ選択マーカーは、種々の分子の何れかであってもよい。1実施形態では、ポジティブ選択マーカーは、増殖のための栄養補助物質を含んでおり、ポジティブ選択は、該栄養補助物質を欠く培地にて実施される。ポジティブ選択マーカーをコードするポリヌクレオチドは、例えば特に限定されないが、細胞のアミノ酸栄養素要求性を補完することに基づくレポーター遺伝子、his3遺伝子、ura3遺伝子、leu2遺伝子、lys2遺伝子、lacZ遺伝子、adh遺伝子などを含んでいる(なおhis3遺伝子は、イミダゾールグリセロールリン酸デヒドラターゼをコードしているので、3−アミノトリアゾール(3−AT)を与えることによって検出される)。例えば、G.M. Kishore, & D.M. Shah, (1988), Amino acid biosynthesis inhibitors as herbicides, Annual Review of Biochemistry 57:627-663参照。1実施形態では、lacZ産物は、オルソ−ニトロフェニル−β−D−ガラクトピラノシド(ONPG)の加水分解によって検出される。例えば、I.G. Serebriiskii, & E.A. Golemis, (2000), Uses of lacZ to study gene function: evaluation of beta-galactosidase assays employed in the yeast two-hybrid system, Analytical Biochemistry 285:1-15参照。さらに別のポジティブ選択マーカーは、例えばルシフェラーゼ、緑色蛍光タンパク質(GFP)、YFP、EGFP、RFP、抗生物質耐性遺伝子の産物(例えばクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT))、転写調節タンパク質(例えばGAL4)などが含まれる。場合によっては、ポジティブ選択マーカーをコードするポリヌクレオチドは、セレクターコドンを含んでいる。
【0096】
ポジティブ選択マーカーをコードするポリヌクレオチドは、応答エレメントに作動可能に連結されてもいてよい。また、応答エレメントからの転写を調節する転写調節タンパク質をコードし、少なくとも1個のセレクターコドンを含んでいるさらに別のポリヌクレオチドも存在してもよい。非天然アミノ酸でアミノアシル化されたO−tRNAによって、該非天然アミノ酸が転写調節タンパク質に組み込まれた結果、ポジティブ選択マーカーをコードするポリヌクレオチド(例えばレポーター遺伝子)が転写される。場合によっては、セレクターコドンは、転写調節タンパク質のDNA結合ドメインをコードするポリヌクレオチドの一部に位置するか、該一部に実質的に近いところに位置している。
【0097】
またネガティブ選択マーカーをコードするポリヌクレオチドも、応答エレメントに作動可能に連結されおり、該応答エレメントから転写が転写調節タンパク質によって媒介される。例えば、A.J. DeMaggioら, (2000), The yeast split-hybrid system, Method Enzymol. 328:128-137; H.M. Shihら, (1996), A positive genetic selection for disrupting protein-protein interactions: identification of CREB mutations that prevent association with the coactivator CBP, Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A. 93:13896-13901; M. Vidalら, (1996), Genetic characterization of a mammalian protein-protein interaction domain by using a yeast reverse two-hybrid system.[comment], Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A. 93:10321-10326;およびM. Vidalら, (1996), Reverse two-hybrid and one-hybrid systems to detect dissociation of protein-protein and DNA-protein interactions.[comment], Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A. 93:10315-10320参照。天然アミノ酸でアミノアシル化されたO−tRNAによって、該天然アミノ酸が転写調節タンパク質に組み込まれた結果、ネガティブ選択マーカーが転写される。場合によっては、ネガティブ選択マーカーはセレクターコドンを含んでいる。1実施形態では、本発明のポジティブ選択マーカーおよび/またはネガティブ選択マーカーは、少なくとも2個のセレクターコドンを含んでいてもよく、それぞれまたは両方は、少なくとも2個の異なるセレクターコドン、または少なくとも2個の同じセレクターコドンを含んでいてもよい。
【0098】
上記転写調節タンパク質は、核酸配列(例えば応答エレメント)に(直接的にまたは間接的に)結合し、応答エレメントに作動可能に連結された配列の転写を調節する分子である。転写調節タンパク質は、転写活性化タンパク質(例えば、GAL4、核ホルモン受容体、AP1、CREB、LEF/tcfファミリーのメンバー、SMAD、VP16、SP1など)、転写抑制タンパク質(例えば核ホルモン受容体、グロウチョ(Groucho)/tleファミリー、エングレイルド(Engrailed)ファミリーなど)、または環境に依存して両方の活性を有することができるタンパク質(例えばLEF/tcf、ホモボックスタンパク質)であってもよい。応答エレメントは、通常、転写調節タンパク質、または転写調節タンパク質と協調して作用する別の作用物質、によって認識される核酸である。
【0099】
転写調節タンパク質のもう1つ別の例は、転写活性化タンパク質であるGAL4である。例えば、A. Laughonら, (1984), Identification of two proteins encoded by the Saccharomyces cerevisiae GAL4 gene, Molecular & Cellular Biology 4:268-275; A. Laughon, & R.F. Gesteland, (1984), Primary structure of the Saccharomyces cerevisiae GAL4 gene, Molecular & Cellular Biology 4:260-267; L. Keeganら, (1986), Separation of DNA binding from the transcription-activating function of a vertebrate regulatory protein, Science 231:699-704;およびM. Ptashne, (1988), How vertebrate transcriptional activators work, Nature 335:683-689参照。881アミノ酸であるこのタンパク質のN末端の147アミノ酸は、DNA配列に特異的に結合するDNA結合ドメイン(DBD)を形成する。例えば、M. Careyら, (1989), An amino-terminal fragment of GAL4 binds DNA as a dimer, J. Mol. Biol. 209:423-432;およびE. Ginigerら, (1985), Specific DNA binding of GAL4, a positive regulatory protein of yeast, Cell 40:767-774参照。DBDは、タンパク質介在配列によって、C末端の113アミノ酸である活性化ドメイン(AD)に連結されており、DNAに結合したときに、ADは転写を活性化することができる。例えばJ. Ma, & M. Ptashne, (1987), Deletion analysis of GAL4 defines two transcriptional activating segments, Cell 48:847-853:およびJ. Ma, & M. Ptashne, (1987), The carboxy-terminal 30 amino acids of GAL4 are recognized by GAL80, Cell 50:137-142参照。例えば、GAL4のN末端のDBDとそのC末端のADとを含んでいる1つのポリペプチドのN末端DBDに向けて、アンバーコドンを配置することによって、O−tRNA/O−RS対によるアンバー抑圧をGAL4による転写活性化と関連付けることができる。GAL4活性化レポーター遺伝子を使用して、該遺伝子を用いたポジティブ選択およびネガティブ選択の両方を実施することができる。
【0100】
ネガティブ選択のために使用される培地は、ネガティブ選択マーカーによって、検出可能な物質へと変換されるスクリーニング剤もしくは選択剤を含んでいてもよい。本発明の1態様では、該検出可能な物質は有毒物質である。ネガティブ選択マーカーをコードするポリヌクレオチドは、例えばura3遺伝子であってもよい。例えば、URA3レポーターは、GAL4のDNA結合部位を含んでいるプロモーターの制御下に配置されてもよい。例えばセレクターコドンを有するGAL4をコードするポリヌクレオチドの翻訳によって、ネガティブ選択マーカーが製造されるとき、GAL4はURA3の転写を活性化する。ネガティブ選択は、5−フルオロオロト酸(5−FOA)を含んでいる培地にて達成される。5−FOAは、ura3遺伝子の遺伝子産物によって検出可能な物質(例えば細胞を殺す有毒物質)へと変換される。例えば、J.D. Boekeら, (1984), A positive selection for mutants lacking orotidine-5'-phosphate decarboxylase activity in yeast: 5-fluoroorotic acid resistance, Molecular & General Genetics 197:345-346); M. Vidalら, (1996), Genetic characterization of a mammalian protein-protein interaction domain by using a yeast reverse two-hybrid system.[comment], Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A. 93:10321-10326;およびM. Vidalら, (1996), Reverse two-hybrid and one-hybrid systems to detect dissociation of protein-protein and DNA-protein interactions.[comment], Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A. 93:10315-10320参照。
【0101】
ポジティブ選択マーカーと同様に、ネガティブ選択マーカーも種々の分子の何れかであってもよい。1実施形態では、ポジティブ選択マーカーおよび/またはネガティブ選択マーカーは、適切な反応物質の存在下で、蛍光を発するか、または発光反応を触媒するポリペプチドである。ネガティブ選択マーカーは、例えば特に限定されないが、ルシフェラーゼ、緑色蛍光タンパク質(GFP)、YFP、EGFP、RFP、抗生物質耐性遺伝子の産物(例えばクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT))、lacZ遺伝子の産物、転写調節タンパク質などを含んでいる。本発明の1態様では、ポジティブ選択マーカーおよび/またはネガティブ選択マーカーは、蛍光活性化細胞選別法(FACS)によって、または発光によって検出される。もう1つ別の例では、ポジティブ選択マーカーおよび/またはネガティブ選択マーカーは、アフィニティーに基づくスクリーニングマーカー、または転写調節タンパク質を含んでいる。また、同じポリヌクレオチドが、ポジティブ選択マーカーとネガティブ選択マーカーとをコードしていてもよい。
【0102】
またさらに別レベルの選択/スクリーニングストリンジェンシーを、本発明に使用してもよい。選択またはスクリーニングストリンジェンシーを、O−RSを製造するための方法の1つまたは両方の工程に応じて変更してもよい。このことは、例えば、ポジティブ選択マーカーおよび/またはネガティブ選択マーカーをコードするポリヌクレオチド内の応答エレメントの量を変更すること、様々な量の不活性型シンテターゼを上記工程のうちの1つまたは両方に加えること、使用される選択/スクリーニング剤の量を変更することなどを含んでいる。またポジティブ選択および/またはネガティブ選択を、さらに別のラウンドで実施してもよい。
【0103】
また選択またはスクリーニングは、1つ以上のポジティブまたはネガティブ選択もしくはスクリーニングを含んでいてもよい。該1つ以上のポジティブまたはネガティブ選択もしくはスクリーニングは、例えば、アミノ酸透過性の変更、翻訳効率の変更、および翻訳忠実性の変更などを含んでいる。通常、1種以上の変更は、タンパク質を製造するために使用される、直交化tRNA−tRNAシンテターゼの対の成分を含んでいるか、該成分をコードする1種以上のポリヌクレオチドの突然変異に基づいている。
【0104】
またモデルエンリッチメント研究(Model enrichment studies)を使って、過剰量の不活性型シンテターゼから活性型シンテターゼを迅速に選択することもできる。ポジティブおよび/またはネガティブモデル選択研究を実施してもよい。例えば、活性型の可能性のあるアミノアシル−tRNAシンテターゼを含んでいる脊椎度物細胞を、様々な倍過剰量(fold excess)の不活性型アミノアシル−tRNAシンテターゼと一緒に混合する。非選択培地にて増殖する細胞、X−GALのオーバーレイなどによって分析される細胞、選択培地にて(例えばヒスチジンおよび/またはウラシルの非存在下にて)増殖および生き残ることができる細胞、ならびにX−GALアッセイなどによって分析される細胞の比率を比較する。ネガティブモデル選択では、活性型の可能性のあるアミノアシル−tRNAシンテターゼを、様々な倍過剰量の不活性型アミノアシル−tRNAシンテターゼと一緒に混合し、ネガティブ選択基質(例えば5−FOA)を用いて選択を実施する。
【0105】
通常、RSのライブラリー(RSの突然変異体のライブラリー)は、脊椎動物ではない生物などからの少なくとも1種のアミノアシル−tRNAシンテターゼ(RS)に由来する、RSを含んでいる。1実施形態では、RSのライブラリーは、不活性型RSに由来し、例えば該不活性型RSは、例えば(i)活性型RSの活性部位、(ii)編集機構部位、または(iii)シンテターゼの異なるドメインを組み合わせることによって得られる異なる部位などにおいて、活性型RSを突然変異させることによって作製する。例えばRSの活性部位にある残基を、アラニン残基などに突然変異する。アラニンに突然変異させられたRSをコードするポリヌクレオチドは、該アラニン残基を20種のアミノ酸の全てへと突然変異させられる鋳型として使用される。RSの突然変異体のライブラリーは、O−RSを製造するために選択/スクリーニングされる。もう1つ別の実施形態では、不活性型RSは、アミノ酸結合ポケットを含んでおり、該アミノ酸結合ポケットを構成する1種以上のアミノ酸は、1種以上の異なるアミノ酸で置換される。一例を挙げると、置換されるアミノ酸はアラニンで置換される。場合によっては、アラニンに突然変異させられたRSをコードするポリヌクレオチドは、該アラニン残基を20種のアミノ酸の全てへと突然変異させられる鋳型として使用され、スクリーニング/選択される。
【0106】
またO−RSを製造する方法は、技術的に知られている種々の突然変異誘発法を使用することによって、RSのライブラリーを製造する工程をさらに含んでいてもよい。例えば、突然変異したRSは、部位特異的突然変異誘発法、ランダム点突然変異誘発法、相同組み換え、DNAシャッフリングまたは他の帰納的(recursive)突然変異誘発法、キメラコンストラクション、あるいはそれらのあらゆる組み合わせによって作製されてもよい。例えば、RSの突然変異体体のライブラリーは、例えばより小さく、多様性がより少ない2つ以上の他の「サブライブラリー」から製造されてもよい。シンテターゼに対して、ポジティブおよびネガティブ選択/スクリーニングを行った後、該シンテターゼをさらに突然変異させてもよい。例えば、O−RSをコードする核酸を単離し、該核酸から、(例えばランダム突然変異、部位特異的突然変異、組み換え、またはそれらのあらゆる組み合わせによって)突然変異したO−RSをコードするポリヌクレオチドの一組を作製してもよい。さらに、非天然アミノ酸でO−tRNAを優先的にアミノアシル化する突然変異したO−RSが得られるまで、これらの各工程もしくはこれらの工程の組み合わせを繰り返してもよい。本発明の1態様では、上記工程を少なくとも2回実施する。
【0107】
O−RSの製造に関するさらなる詳細は、国際公開第2002/086075号パンフレット(発明の名称:“Methods and compositions for the production of orthogonal tRNA-aminoacyltRNA synthetase pairs”)に記載されている。また、Hamano-Takakuら, (2000) A mutant Escherichia coli Tyrosyl-tRNA Synthetase Utilizes the Unnatural Amino Acid Azatyrosine More Efficiently than Tyrosine, Journal of Biological Chemistry, 275(51):40324-40328; Kigaら(2002), An engineered Escherichia coli tyrosyl-tRNA synthetase for site-specific incorporation of an unnatural amino acid into proteins in vertebrate translation and its application in a wheat germ cell-free system, PNAS 99(15): 9715-9723;およびFrancklynら, (2002), Aminoacyl-tRNA synthetases: Versatile players in the changing theater of translation; RNA, 8:1363-1372も参照のこと。
【0108】
<直交化tRNA>
直交化tRNA(O−tRNA)を含んでいる真核細胞は、本発明によって提供される。直交化tRNAは、O−tRNAによって認識されるセレクターコドンを含んでいるポリヌクレオチドによりコードされるタンパク質への非天然アミノ酸のインビボでの組み込みを媒介する。ある実施形態では、本発明O−tRNAは、配列番号65(本明細書の表5参照)に示されたようなポリヌクレオチド配列を含んでいるか、該ポリヌクレオチド配列から細胞において加工されたtRNAの、例えば少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、あるいはそれ以上の効率で、タンパク質への非天然アミノ酸の組み込みを媒介する。
【0109】
本発明のO−tRNAとしては、例えば配列番号65が挙げられる(本明細書の実施例6および表5参照)。配列番号65は、スプライシング/プロセシング前の転写産物であり、場合によっては細胞内おいて、標準的な内在性細胞スプライシングおよびプロセシング機構などにより加工され、活性型O−tRNAを形成するように修飾される。通常、そのようなスプライシング前の転写産物の集団は、細胞内おいて活性型tRNAの集団を形成する。本発明は、O−tRNAの保存変異体およびその加工された細胞生産物も含んでいる。例えば、O−tRNAの保存変異体には、配列番号65のO−tRNAと同じように機能し、加工された形態ではtRNAのL型構造を維持しているが、同じ配列を有していない(さらに野生型tRNA分子以外の)分子が含まれる。通常、本発明のO−tRNAは、インビボにおいて再アミノアシル化されることにより、ポリヌクレオチドによってコードされたタンパク質への非天然アミノ酸のセレクターコドンに応じた組み込みを、再び媒介することができるので、該O−tRNAは、再利用可能なO−tRNAである。
【0110】
原核生物とは異なり真核生物でのtRNAの転写は、RNAポリメラーゼIIIによって実行されるために、脊椎動物細胞において転写され得るtRNAの構造遺伝子の一次配列が制限されてしまう。さらに脊椎動物細胞では、tRNAは翻訳の際に機能するためには、該tRNAが転写される核から、細胞質へ排出されることが必要である。本発明のO−tRNA、またはそれに相補的なポリヌクレオチドをコードする核酸も、本発明の特徴である。本発明の1態様では、本発明のO−tRNAをコードする核酸は、内部プロモーター配列(例えば、Aボックス(例えばTRGCNNAGY)およびBボックス(GGTTCGANTCC、配列番号88))を含んでいる。本発明のO−tRNAは、転写後修飾されていてもよい。例えば、真核生物でのtRNA遺伝子の転写後修飾には、Rnase Pおよび3’エンドヌクレアーゼのそれぞれによる、5’フランキング配列および3’フランキング配列の除去が含まれる。3’CCA配列の付加も、真核生物でのtRNA遺伝子の転写後修飾である。
【0111】
1実施形態では、O−tRNAは、第1種の脊椎動物細胞集団をネガティブ選択することによって得られる。上記脊椎動物細胞は、tRNAのライブラリーのメンバーを含んでいる。ネガティブ選択は、脊椎動物細胞に内在するアミノアシル−tRNAシンテターゼ(RS)によってアミノアシル化される、tRNAのライブラリーのメンバーを含んでいる細胞を除去する。これにより、第1種の脊椎動物細胞と直交なtRNAのプールが得られる。
【0112】
非天然アミノ酸をポリペプチドへ組み込むための上記他の方法の代わりに、または該他の方法と組み合わせて、トランス翻訳システムが使用されてもよい。このシステムは、Escherichia coliに存在するtmRNAと呼ばれる分子を含んでいる。このRNA分子は、アラニルtRNAと構造的に関連しており、アラニルシンテターゼによってアミノアシル化される。tmRNAとtRNAとの違いは、アンチコドンループが、特別に長い配列で置換されている点である。この配列によって、リボソームは、停止した配列の翻訳を、鋳型としてのtmRNA内にコードされたオープンリーディングフレームを用いて再開することができる。本発明では、直交化シンテターゼによって優先的にアミノアシル化され、非天然アミノ酸を備えている直交化tmRNAが作製されてもよい。上記トランス翻訳システムによって遺伝子を転写することにより、リボソームは特定の部位にて停止し、非天然アミノ酸は当該部位において導入され、翻訳は直交化tmRNA内にコードされた配列を用いて再開される。
【0113】
組み換え直交化tRNAを製造するためのさらに別の方法は、例えば、国際特許出願の国際公開第2002/086075号パンフレット(発明の名称:“Methods and compositions for the production of orthogonal tRNA-aminoacyltRNA synthetase pairs.”)に記載されている。また、Forsterら, (2003) Programming peptidomimetic synthetases by translating genetic codes designed de novo PNAS 100(11):6353-6357;および, Fengら, (2003), Expanding tRNA recognition of a tRNA synthetase by a single amino acid change, PNAS 100(10): 5676-5681も参照のこと。
【0114】
<直交化tRNAおよび直交化アミノアシル−tRNAシンテターゼの対>
直交化対は、O−tRNA(例えばサプレッサーtRNAまたはフレームシフトtRNAなど)、およびO−RSから構成される。O−tRNAは、内在性シンテターゼによってアシル化されず、O−tRNAによって認識されるセレクターコドンを含んでいるポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質への非天然アミノ酸のインビボでの組み込みを媒介することができるものである。O−RSは、O−tRNAを認識し、脊椎動物細胞内おいて非天然アミノ酸でO−tRNAを優先的にアミノアシル化するものである。直交化対を製造するための方法、ならびにそのような方法によって製造された直交化対、および脊椎動物細胞において使用されるための直交化対の組成物は、本発明に含まれている。複数の直交化tRNA/シンテターゼ対を開発することにより、脊椎動物細胞内おいて、異なるコドンを使用して複数の非天然アミノ酸を同時に組み込むことができる。
【0115】
脊椎動物細胞の直交化O−tRNA/O−RS対は、異種間のアミノアシル化が不十分である、異なる生物からの対(例えばナンセンスサプレッサーの対)を移入することによって製造されてもよい。O−tRNAおよびO−RSは、脊椎動物細胞内おいて効率よく発現され加工される。さらにO−tRNAは効率よく核から細胞質へ排出される。例えば、そのような対の1つは、E. coliのチロシル−tRNAシンテターゼ/tRNA
CUA対である(例えばH. M. Goodmanら, (1968), Nature 217:1019-24;および, D. G. Barkerら, (1982), FEBS Letters 150:419-23)参照)。E. coliのチロシル−tRNAシンテターゼと、そのコグネートであるE. coliのtRNA
CUAとが、S. cerevisiaeの細胞質において発現したとき、該チロシル−tRNAシンテターゼは、該tRNA
CUAを効率よくアミノアシル化するが、S. cerevisiaeのtRNAはアミノアシル化しない。例えば、H. Edwards, & P. Schimmel, (1990), Molecular & Cellular Biology 10:1633-41;および, H. Edwardsら, (1991), PNAS United States of America 88:1153-6参照。さらに、E. coliのチロシルtRNA
CUAは、S. cerevisiaeのアミノアシル−tRNAシンテターゼの基質としては不十分であるが(例えばV. Trezeguetら, (1991), Molecular & Cellular Biology 11:2744-51参照)、S. cerevisiaeでのタンパク質翻訳では効率よく機能する。例えばH. Edwards, & P. Schimmel, (1990) Molecular & Cellular Biology 10:1633-41; H. Edwardsら, (1991), PNAS United States of America 88:1153-6;および, V. Trezeguetら, (1991), Molecular & Cellular Biology 11:2744-51参照。さらに、E. coliのTyrRSは、tRNAに結合された非天然アミノ酸を校正するための、編集機構を有していない。
【0116】
O−tRNAおよびO−RSは、様々な生物の天然発生型のO−tRNAおよびO−RSであってもよいし、tRNAのライブラリーおよび/またはRSのライブラリーを作製する、様々な生物の天然発生型tRNAおよび/またはRSの突然変異によって、生成されたものであってもよい。「源および宿主」と名づけられた項を参照のこと。様々な実施形態では、O−tRNAおよびO−RSは、少なくとも1種の生物に由来する。もう1つ別の実施形態では、O−tRNAは、第1生物の天然発生型tRNA、または突然変異した天然発生型tRNAに由来し、O−RSは、第2生物の天然発生型RS、または突然変異した天然発生型RSに由来する。1実施形態では、第1および第2の脊椎動物ではない生物は同一である。あるいは、第1および第2の脊椎動物ではない生物は異なっていてもよい。
【0117】
O−RSおよびO−tRNAを製造する方法に関しては、「直交化アミノアシル−tRNAシンテターゼ」および「直交化tRNA」と名づけられた本明細書の項を参照のこと。また、国際特許出願の国際公開第2002/086075号パンフレット(発明の名称:“Methods and compositions for the production of orthogonal tRNA-aminoacyltRNA synthetase pairs.”)も参照のこと。
【0118】
<忠実性、効率および収量>
忠実性は、所望の分子(例えば非天然アミノ酸またはアミノ酸)が成長中のポリペプチドの所望の位置に組み込まれる精度のことをいう。本発明の翻訳成分は、セレクターコドンに応じて非天然アミノ酸をタンパク質に高い忠実性で組み込む。例えば、本発明の翻訳成分を使用して、所望の非天然アミノ酸が成長中のポリペプチド鎖の所望の位置へ(例えばセレクターコドンに応じて)組み込まれる効率は、特定の天然アミノ酸が成長中のポリペプチド鎖の所望の位置へ組み込まれるという望まれない組み込みの効率よりも、例えば75%高く、85%高く、95%高く、または99%高く、あるいはそれ以上高い。
【0119】
また効率は、関連性のある対照と比べられたときの、O−RSが非天然アミノ酸でO−tRNAをアミノアシル化する程度のことをいう。本発明のO−RSは、該O−RSの効率によって定義されてもよい。本発明のある実施形態では、O−RSは別のO−RSと比べられる。例えば、本発明のO−RSが、非天然アミノ酸でO−tRNAをアミノアシル化する効率は、例えば配列番号86または45に示されたようなアミノ酸配列を有するO−RS、または表5に記載の別の特異的RSがO−tRNAをアミノアシル化する効率の、例えば少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または99%、あるいはそれ以上である。もう1つ別の実施形態では、本発明のO−RSが非天然アミノ酸でO−tRNAをアミノアシル化する効率は、該O−RSが天然アミノ酸で該O−tRNAをアミノアシル化する効率よりも、例えば少なくとも10倍、少なくとも20倍、少なくとも30倍高い。
【0120】
本発明の翻訳成分を使用したときの、非天然アミノ酸を含んでいる興味のあるポリペプチドの収量は、ポリヌクレオチドがセレクターコドンを欠損している細胞から得られる興味のある天然発生型ポリペプチドの収量の、例えば少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、または50%以上である。もう1つ別の態様では、上記細胞は、非天然アミノ酸が存在下しないときは、非天然アミノ酸が存在下するときの上記興味のあるポリペプチドの収量の例えば30%未満、20%未満、15%未満、10%未満、5%未満、および2.5%未満などの収量で、上記興味のあるポリペプチドを製造する。
【0121】
<源および宿主生物>
脊椎動物細胞および翻訳システムにて使用される本発明の直交化翻訳成分は、通常、脊椎動物ではない生物に由来する。例えば、直交化O−tRNAは、脊椎動物ではない生物、例えば真正細菌(Escherichia coli、Thermus thermophilus、またはBacillus stearothermphilusなど)、あるいは古細菌(Methanococcus jannaschii、Methanobacterium thermoautotrophicum、Halobacterium(Haloferax volcaniiおよびHalobacterium種(species)NRC-1など)、Archaeoglobus fulgidus、Pyrococcus furiosus、Pyrococcus horikoshii、またはAeuropyrum pernixなど)に由来するものであってもよく、直交化O−RSは、脊椎動物ではない生物、例えば真正細菌(Escherichia coli、Thermus thermophilus、またはBacillus stearothermphilusなど)、あるいは古細菌(Methanococcus jannaschii、Methanobacterium thermoautotrophicum、Halobacterium(Haloferax volcaniiおよびHalobacterium種(species)NRC-1など)、Archaeoglobus fulgidus、Pyrococcus furiosus、Pyrococcus horikoshii、またはAeuropyrum pernixなど)に由来するものであってもよい。また、例えば、上記翻訳成分が、興味のある細胞もしくは翻訳システムに対して直交である場合、または該翻訳成分が該細胞もしくは翻訳システムに対して直交になるように修飾されている(例えば突然変異させられている)場合、例えば植物、藻類、原生生物、菌類、酵母、動物(例えば哺乳類、昆虫および節足動物など)などといった脊椎動物の源を使用してもよい。
【0122】
O−tRNA/O−RS対のそれぞれの成分は、同じ生物に由来するものであってもよいし、異なる生物に由来するものであってもよい。1実施形態では、O−tRNA/O−RS対は、同じ生物に由来するものである。例えば、O−tRNA/O−RS対は、E. coliのチロシル−tRNAシンテターゼ/tRNA
CUA対に由来するものであってもよい。また場合によっては、O−tRNA/O−RS対のO−tRNAとO−RSとは異なる生物に由来するものである。
【0123】
直交化O−tRNA、O−RS、またはO−tRNA/O−RS対は、非天然アミノ酸を有するポリペプチドを製造するための脊椎動物細胞にて、選択、スクリーニング、および/または使用され得る。脊椎動物細胞は、様々な源、例えば任意の脊椎動物(例えば哺乳類、両生類、鳥類、爬虫類および魚類など)、または同様のものに由来してもよい。また本発明の翻訳成分を有する脊椎動物細胞の組成物も、本発明の特徴である。
【0124】
また本発明は、ある種において効率のよいスクリーニングを行い、(場合によってはさらに別の選択/スクリーニングをすることなく)その種および/または他の種において任意に使用する方法を提供する。例えばO−tRNA/O−RSの成分は、ある種(例えば容易に操作される種(酵母細胞など))において選択またはスクリーニングされ、他の脊椎動物種(例えば植物(例えば単子葉植物または双子葉植物などの高等植物(complex plant))、藻類、原生生物、菌類、酵母、動物(例えば哺乳類、昆虫および節足動物など)、またはそれらの同類のもの)に導入され、そこで非天然アミノ酸をインビボで組み込むことに使用される。
【0125】
例えば、Saccharomyces cerevisiae(S. cerevisiae)は、脊椎動物の第1種として選択されてもよい。Saccharomyces cerevisiaeは、単細胞であり、世代時間が早く、遺伝学的に割りとよく特徴付けられているためである。例えば、D. Burkeら, (2000) Methods in Yeast Genetics. Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY参照のこと。さらに、真核生物の翻訳機構は高度に保存されているので(例えば(1996) Translational Control. Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY; Y. Kwok, & J.T. Wong, (1980), Evolutionary relationship between Halobacterium cutirubrum and eukaryotes determined by use of aminoacyl-tRNA synthetases as phylogenetic probes, Canadian Journal of Biochemistry 58:213-218;および, (2001) The Ribosome. Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY参照)、S. cerevisiaeにおいて発見された非天然アミノ酸を組み込むためのaaRS遺伝子を、高等脊椎動物に導入し、コグネートtRNAと協同して使用することにより、非天然アミノ酸を組み込んでもよい(例えばK. Sakamotoら, (2002) Site-specific incorporation of an unnatural amino acid into proteins in mammalian cells, Nucleic Acids Res. 30:4692-4699;および, C. Kohrerら, (2001), Import of amber and ochre suppressor tRNA's into mammalian cells: a general approach to site-specific insertion of amino acid analogues into proteins, Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A. 98:14310-14315参照)。
【0126】
一例を挙げると、本明細書に記載の第1種内おいてO−tRNA/O−RSを製造する方法は、O−tRNAをコードする核酸と、O−RSをコードする核酸とを、第2種(例えば哺乳類、昆虫、菌類、藻類、および植物など)の脊椎動物細胞に導入する工程をさらに含んでいる。別の例を挙げると、脊椎動物細胞内おいて非天然アミノ酸で直交化tRNAを優先的にアミノアシル化する、直交化アミノアシル−tRNAシンテターゼ(O−RS)を製造する方法は、(a)非天然アミノ酸の存在下で、第1種(例えば酵母など)の脊椎動物細胞集団をポジティブ選択する工程を含んでいる。該脊椎動物細胞はそれぞれ、(i)アミノアシル−tRNAシンテターゼ(RS)のライブラリーのメンバー、(ii)直交化tRNA(O−tRNA)、(iii)ポジティブ選択マーカーをコードするポリヌクレオチド、および(iv)ネガティブ選択マーカーをコードするポリヌクレオチドを含んでいる。上記ポジティブ選択から生き残る細胞は、非天然アミノ酸の存在下で、直交化tRNA(O−tRNA)をアミノアシル化する活性型RSを含んでいる。上記ポジティブ選択から生き残る細胞は、天然アミノ酸でO−tRNAをアミノアシル化する活性型RSを除去するために、非天然アミノ酸の非存在下においてネガティブ選択される。これにより、非天然アミノ酸でO−tRNAを優先的にアミノアシル化するO−RSが得られる。O−tRNAをコードする核酸、およびO−RSをコードする核酸(あるいは成分であるO−tRNAおよび/またはO−RS)は、第2種(例えば哺乳類、昆虫、菌類、藻類および/または植物など)の脊椎動物細胞に導入される。通常、上記O−tRNAは、第1種の脊椎動物細胞集団をネガティブ選択することによって得られる(なお、該脊椎動物細胞はtRNAのライブラリーのメンバーを含んでいるものである)。脊椎動物細胞に内在するアミノアシル−tRNAシンテターゼ(RS)によってアミノアシル化されるtRNAのライブラリーのメンバーを含んでいる細胞は、ネガティブ選択により除去される。これにより、第1種および第2種の脊椎動物細胞に対して直交なtRNAのプールが得られる。
【0127】
<セレクターコドン>
本発明のセレクターコドンは、タンパク質の生合成機構の遺伝子コドンの枠組みを拡張するものである。例えば、セレクターコドンは、例えばユニーク3塩基コドン、ナンセンスコドン(例えばアンバーコドン(UAG)、オパールコドン(UGA)などの終止コドン)、非天然コドン、少なくとも4塩基のコドン、またはレアコドンなどを含んでいる。(例えば1個以上、2個以上、3個よりも多くなどの)複数のセレクターコドンが、所望の遺伝子に導入されてもよい。遺伝子は、複数のコピーの所定のセレクターコドンを含んでいてもよいし、複数の異なるセレクターコドンを含んでいてもよいし、あるいはそれらのあらゆる組み合わせを含んでいてもよい。
【0128】
1実施形態では、脊椎動物細胞内おいて非天然アミノ酸をインビボで組み込むための方法は、終止コドンであるセレクターコドンの使用を含んでいる。例えば、終止コドン(例えばUAG)を認識し、O−RSによって所望の非天然アミノ酸でアミノアシル化されるO−tRNAが製造される。該O−tRNAは、非天然発生型の宿主アミノアシル−tRNAシンテターゼによって認識されない。従来の部位特異的突然変誘発法が、興味のあるポリペプチドの興味のある部位に終止コドン(例えばTAG)を導入するために使用され得る。例えば、Sayers, J.R. ら(1988), 5',3' Exonuclease in phosphorothioate-based oligonucleotide-directed mutagenesis. Nucleic Acids Res, 791-802参照。O−RS、O−tRNA、および興味のあるポリペプチドをコードする核酸がインビボにおいて組み合わされるとき、非天然アミノ酸はUAGコドンに応じて組み込まれ、特定の位置に非天然アミノ酸を含んでいるポリペプチドが得られる。
【0129】
脊椎動物宿主細胞をそれほど動揺させること無く、インビボでの非天然アミノ酸の組み込みを実施することができる。例えば、UAGコドンに関する抑圧効率は、O−tRNA(例えばアンバーサプレッサーtRNA)と、脊椎動物の終結因子(例えばeRF)との競合に依存するので、例えばO−tRNA(例えばサプレッサーtRNA)の発現レベルを増加することによって、該抑圧効率を調節することができる(上記終結因子は、終止コドンに結合し、成長中のポリペプチドをリボソームから放出することを開始するものである)。
【0130】
またセレクターコドンには、延長コドン(例えば4塩基以上のコドン(4塩基コドン、5塩基コドン、6塩基コドン、またはそれ以上の塩基のコドンなど))が含まれる。4塩基コドンには、例えば、AGGA、CUAG、UAGAおよびCCCUなどが含まれる。5塩基コドンには、例えばAGGAC、CCCCU、CCCUC、CUAGA、CUACUおよびUAGGCなどが含まれる。本発明の特徴は、フレームシフト抑圧に基づく延長コドンを用いることも含んでいる。4塩基以上のコドンは、同じタンパク質に例えば1種または複数の非天然アミノ酸を挿入することができる。例えば、アンチコドンループ(例えば8−10ntのアンチコドンループ)を有する突然変異したO−tRNA(例えば特殊なフレームシフトサプレッサーtRNA)の存在下では、4塩基以上のコドンは1つのアミノ酸として読まれる。1実施形態では、アンチコドンループは、例えば少なくとも4塩基のコドン、少なくとも5塩基のコドン、または少なくとも6塩基のコドン、あるいは少なくともそれ以上の塩基のコドンを解読するものであってもよい。256種類の4塩基コドンが可能であるため、4塩基以上のコドンを使用することにより、複数の非天然アミノ酸が同じ細胞においてコードされ得る。例えばAndersonら, (2002) Exploring the Limits of Codon and Anticodon Size, Chemistry and Biology, 9:237-244; Magliery, (2001) Expanding the Genetic Code: Selection of Efficient Suppressors of Four-base Codons and Identification of "Shifty" Four-base Codons with a Library Approach in Escherichia coli, J. Mol. Biol. 307: 755-769参照。
【0131】
例えば4塩基コドンは、インビトロの生合成方法を使用することにより、非天然アミノ酸をタンパク質に組み込むために使用されている。例えばMaら, (1993) Biochemistry, 32:7939;およびHohsakaら, (1999) J. Am. Chem. Soc., 121:34参照。CGGGおよびAGGUは、2種の化学的にアシル化されたフレームシフトサプレッサーtRNAを使って、2−ナフチルアラニンおよびリジンのNBD誘導体をストレプトアビジンに、インビトロで同時に組み込むために使用された。例えばHohsakaら, (1999) J. Am. Chem. Soc., 121:12194参照。Mooreらは、インビボの研究にて、NCUAアンチコドンループを有するtRNALeu誘導体がUAGNコドンを抑圧できるかどうか試験した(NはU、A、GまたはCであってもよい)。そして、UCUAアンチコドンループを有するtRNALeuにより、4塩基のUAGAは、13〜26%の効率でもって解読されることができるが、0または−1フレームでは解読できないことを発見した。例えば、Mooreら, (2000) J. Mol. Biol., 298:195を参照のこと。1実施形態では、レアコドンまたはナンセンスコドンに基づく延長コドンは、本発明に使用され得る。これによれば、他の望ましくない部位におけるミスセンスのリードスルーと、フレームシフト抑圧とを減らすことができる。
【0132】
所定のシステムでは、内在システムがこの天然塩基コドンを使用しない(または殆ど使用しない)場合、セレクターコドンはさらに天然3塩基コドンの1つを含むことができる。例えば、天然3塩基コドンを認識するtRNAをもたないシステム、および/または3塩基コドンがレアコドンであるシステムが、これに包含される。
【0133】
セレクターコドンは場合によっては、非天然塩基対を含んでいてもよい。該非天然塩基対は既存の遺伝アルファベットをさらに拡張する。塩基対が1個増えると、3塩基コドンの数は64から125に増える。第3の塩基対の性質には、安定的且つ選択的な塩基の対合、ポリメラーゼによるDNAへの忠実性の高い効率的な酵素組込み、および非天然塩基対が新しく合成された後の効率的な持続的プライマー伸長が包含される。方法および組成物に適応可能な非天然塩基対は、例えばHiraoら, (2002) An unnatural base pair for incorporating amino acid analogues into protein, Nature Biotechnology, 20:177-182に記載されている。他の関連文献を以下に挙げる。
【0134】
インビボでの使用では、非天然ヌクレオシドは膜透過性であり、対応する三リン酸塩を形成するようにリン酸化される。さらに、増加した遺伝情報は安定しており、細胞内酵素により破壊されない。Bennerらによるこれまでの試みは、正準のワトソンクリック対とは異なる水素結合パターンを利用しており、そのうちで最も注目される例はイソC:イソG対である。例えばSwitzerら, (1989) J. Am. Chem. Soc., 111:8322;およびPiccirilliら, (1990) Nature, 343:33; Kool, (2000) Curr. Opin. Chem. Biol., 4:602参照。これらの塩基は一般に天然塩基とある程度まで誤対合し、酵素複製することができない。Koolらは、水素結合を塩基間の疎水性パッキング相互作用に置き換えることにより塩基対の形成を誘導できることを立証した。Kool, (2000) Curr. Opin. Chem. Biol., 4:602;およびGuckian and Kool, (1998) Angew. Chem. Int. Ed. Engl., 36, 2825参照。上記要件のすべてを満足する非天然塩基対を開発する目的で、SchultzおよびRomerbergらは一連の非天然疎水性塩基を体系的に合成し、試験した。PICS:PICS自己対は天然塩基対よりも安定であり、Escherichia coliのDNAポリメラーゼIのKlenowフラグメント(KF)によりDNAに効率的に組込むことができる。例えばMcMinnら, (1999) J. Am. Chem. Soc., 121:11586;およびOgawaら, (2000) J. Am. Chem. Soc., 122:3274参照。3MN:3MN自己対は、KFによって生物学的機能に十分な効率と選択性とで合成され得る。例えばOgawaら, (2000) J. Am. Chem. Soc., 122:8803参照。しかし、どちらの塩基もさらなる複製の際にはチェーンターミネーターとして作用してしまう。PICS自己対を複製するために使用することができるDNAポリメラーゼの突然変異体が最近開発された。さらに7AI自己対も複製することができる。例えばTaeら, (2001) J. Am. Chem. Soc., 123:7439参照。Cu(II)と結合すると安定な対を形成する新規メタロ塩基対Dipic:Pyも開発された。Meggersら, (2000) J. Am. Chem. Soc., 122:10714参照。延長コドンおよび非天然コドンは天然コドンに対して本質的に直交性であるので、本発明の方法はこの特性を利用して、非天然コドンに対して直交なtRNAを作製することができる。
【0135】
また翻訳バイパスシステムを使用して、非天然アミノ酸を所望のポリペプチドに組込むことができる。翻訳バイパスシステムでは、大きい配列が遺伝子に挿入されるが、タンパク質に翻訳されない。この配列は、リボソームに配列を飛び越させて挿入の下流の翻訳を再開するための合図として機能する構造を含んでいる。
【0136】
<非天然アミノ酸>
本明細書で使用される非天然アミノ酸は、セレノシステインおよび/またはピロリジンと以下の20種の遺伝的にコードされたアルファアミノ酸、即ちアラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトフアン、チロシン、バリン以外の任意アミノ酸、修飾アミノ酸、またはアミノ酸類似体のことをいう。アルファアミノ酸の一般構造は、一般式I:
【0139】
非天然アミノ酸は通常、一般式Iを有する任意の構造である(式中、R基は20種の天然アミノ酸に使用されている置換基以外の任意の置換基である)。20種の天然アミノ酸の構造については、例えばL. Stryer著, Biochemistry 3
rd ed. 1988, Freeman and Company, New Yorkを参照のこと。なお、本発明の非天然アミノ酸は上記20種のアルファアミノ酸以外の天然発生型化合物であってもよい。
【0140】
本発明の非天然アミノ酸は一般に側鎖について天然アミノ酸と異なるので、天然発生型タンパク質に形成されるアミド結合と同じように、該非天然アミノ酸は他のアミノ酸(例えば天然または非天然アミノ酸)とアミド結合を形成する。ただし、非天然アミノ酸は天然アミノ酸と異なる側鎖基を有している。例えば、一般式IのRは場合によっては、アルキル、アリール、アシル、ケト、アジド、ヒドロキシル、ヒドラジン、シアノ、ハロゲン(halo)、ヒドラジド、アルケニル、アルキニル、エーテル、チオール、セレノ、スルホニル、ボレート、ボロナート(boronate)、ホスホ、ホスホノ、ホスフィン、複素環、エノン、イミン、アルデヒド、エステル、チオ酸、ヒドロキシルアミン、またはアミノなど、あるいはこれらのあらゆる組み合わせを含んでいる。興味のある他の非天然アミノ酸には、特に限定されないが、光で活性化可能な架橋剤を有するアミノ酸、スピン標識されたアミノ酸、蛍光性アミノ酸、金属結合性アミノ酸、金属含有アミノ酸、放射性アミノ酸、新規官能基を有するアミノ酸、他の分子と共有結合的におよび/または非共有結合的に相互作用するアミノ酸、フォトケージ化および/または光異性化可能なアミノ酸、ビオチンまたはビオチン類似体含有アミノ酸、ケト含有アミノ酸、ポリエチレングリコールまたはポリエーテル含有アミノ酸、重原子置換アミノ酸、化学的に開裂可能な、または光開裂可能なアミノ酸、天然アミノ酸と比べて伸長した側鎖を有するアミノ酸(例えば炭素数が、約5よりも多い、約10よりも多い、ポリエーテルもしくは長鎖炭化水素など)、炭素に連結した糖を含有するアミノ酸、酸化還元活性のあるアミノ酸、アミノチオ酸含有アミノ酸、ならびに1つ以上の毒性部分を含有するアミノ酸が含まれる。ある実施形態では、非天然アミノ酸は、例えば固体支持体にタンパク質を連結するために使用される光で活性化可能な架橋剤を有している。1実施形態では、非天然アミノ酸は、該アミノ酸の側鎖に付着されたサッカライド部分を有している(例えばグリコシル化アミノ酸)、および/または他の炭水化物修飾を有している。
【0141】
新規側鎖を含んでいる非天然アミノ酸に加え、非天然アミノ酸は場合によって例えば一般式IIおよび一般式III:
【0143】
の構造により表されるような修飾骨格構造を含んでいる。
【0144】
式中、Zは一般にOH、NH
2、SH、NH−R’またはS−R’を含み、XおよびYは同一でも異なっていてもよく、一般にSまたはOを含み、RおよびR’は場合によって同一または異なり、一般式Iを有する非天然アミノ酸について上記に記載したR基と同一の基および水素から選択される。例えば、本発明の非天然アミノ酸は場合によって、一般式IIおよび一般式IIIに表されるようなアミノ基またはカルボキシル基に置換を含んでいる。この形式の非天然アミノ酸には特に限定されないが、例えば20種の一般天然アミノ酸に対応する側鎖または非天然側鎖を有する、α−ヒドロキシ酸、α−チオ酸、α−アミノチオカルボキシレートが包含される。さらに、α−炭素での置換は場合によって、L、Dまたはα,α−二置換アミノ酸(例えばD−グルタミン酸、D−アラニン、D−メチル−O−チロシン、アミノ酪酸など)を含んでいる。他の代わりの構造には、環状アミノ酸(プロリン類似体、ならびに3、4、6、7、8および9員環のプロリン類似体など)、βおよびγアミノ酸(置換β−アラニンおよびγ−アミノ酪酸など)が挙げられる。例えば、多くの非天然アミノ酸は、チロシン、グルタミン、およびフェニルアラニンなどの天然アミノ酸を基本としている。チロシン類似体は、パラ置換チロシン、オルソ置換チロシン、およびメタ置換チロシンを含んでおり、該置換チロシンは、例えばケト基(例えばアセチル基)、ベンゾイル基、アミノ基、ヒドラジン、ヒドロキシアミン、チオール基、カルボキシ基、イソプロピル基、メチル基、C
6−C
20直鎖または分岐鎖炭化水素、飽和または不飽和炭化水素、O−メチル基、ポリエーテル基、ニトロ基、またはアルキニル基などを含んでいる。さらに、多置換アリール環も熟慮される。本発明のグルタミン類似体は、特に限定されないが、α−ヒドロキシ誘導体、γ−置換誘導体、環状誘導体、およびアミド置換グルタミン誘導体を含んでいる。フェニルアラニン類似体は、例えば特に限定されないが、パラ置換フェニルアラニン、オルソ置換フェニルアラニン、およびメタ置換フェニルアラニンを含んでおり、置換基は、例えばヒドロキシ基、メトキシ基、メチル基、アリル基、アルデヒド、アジド、ヨード、ブロモ、ケト基(例えばアセチル基)、ベンゾイル、またはアルキニル基などを含んでいる。非天然アミノ酸の具体的には例には、特に限定されないが、p−アセチル−L−フェニルアラニン、p−プロパルギルオキシフェニルアラニン、O−メチル−L−チロシン、L−3−(2−ナフチル)アラニン、3−メチル−フェニルアラニン、O−4−アリル−L−チロシン、4−プロピル−L−チロシン、トリ−O−アセチル−GlcNAcβ−セリン、L−ドーパ、フッ化フェニルアラニン、イソプロピル−L−フェニルアラニン、p−アジド−L−フェニルアラニン、p−アシル−L−フェニルアラニン、p−ベンゾイル−L−フェニルアラニン、L−ホスホセリン、ホスホノセリン、ホスホノチロシン、p−ヨード−L−フェニルアラニン、p−ブロモフェニルアラニン、p−アミノ−L−フェニルアラニン、およびイソプロピル−L−フェニルアラニンなどが含まれる。様々な非天然アミノ酸のさらに別の構造は、例えば国際公開第2002/085923号パンフレット(発明の名称:“In vivo incorporation of unnatural amino acids.”)の
図16、17、18、19、26および29に示されている。他のメチオニン類似体については、Kiickら, (2002) Incorporation of azides into recombinant proteins for chemoselective modification by the Staudinger ligtation, PNAS 99:19-24の
図1の構造2−5を参照のこと。
【0145】
1実施形態では、非天然アミノ酸(p−(プロパルギルオキシ)フェニルアラニンなど)を含んでいる組成物が提供される。また、p−(プロパルギルオキシ)フェニルアラニン、ならびに例えばタンパク質および/または細胞を含んでいる種々の組成物も提供される。1態様では、p−(プロパルギルオキシ)フェニルアラニンの非天然アミノ酸を含んでいる組成物は、直交化tRNAをさらに含んでいる。非天然アミノ酸は、該直交化tRNAに結合(例えば共有結合)されていてもよい。例えば、非天然アミノ酸は、アミノアシル結合を介して直交化tRNAに共有結合されていてもよいし、直交化tRNAのリボース糖の末端の3’OHまたは2’OHに共有結合されていてもよい。
【0146】
タンパク質に組み込まれ得る非天然アミノ酸に連結されている化学部分は、該タンパク質に様々な利点を提供し、タンパク質の様々な操作を可能にする。例えば、ケト官能基のユニークな反応性によって、タンパク質を多くのヒドラジンまたはヒドロキシルアミン含有試薬の何れかで、インビトロおよびインビボにおいて選択的に修飾することができる。重原子非天然アミノ酸を、例えば位相調整X線構造データに役立てることができる。また非天然アミノ酸を用いて重原子を部位特異的に導入することにより、重原子の位置を選択的かつ柔軟に決めることができる。光反応性非天然アミノ酸(ベンゾフェノンおよびアリールアジド(例えばフェニルアジド)を側鎖に有するアミノ酸)を使用することにより、例えばタンパク質をインビボおよびインビトロにおいて効率よく光架橋することができる。光反応性非天然アミノ酸には、例えば特に限定されないが、p−アジド−フェニルアラニンおよびp−ベンゾイル−フェニルアラニンが含まれる。時間的に(および/または空間的に)制御される光反応基を励起することにより、光反応性非天然アミノ酸を有するタンパク質を自由に架橋することができる。一例を挙げると、非天然アミノ酸のメチル基を、同位体標識された例えばメチル基で置換することができ、局所的構造および局所力学のプローブとして、例えば核磁気共鳴および振動分光法に使用することができる。アルキニル官能基またはアジド官能基により、例えば[3+2]環化付加反応を介して、タンパク質を各種分子で選択的に修飾することができる。
【0147】
<非天然アミノ酸の化学合成>
上記非天然アミノ酸の多くは例えば、Sigma(USA)またはAldrich(Milwaukee, WI, USA)から市販されている。市販されていない非天然アミノ酸は場合によっては、本明細書に記載されているように合成されるか、種々の刊行物に記載されているように合成されるか、当業者に公知の標準の方法を使用して合成される。有機合成技術については、例えばFessendonおよびFessendon著Organic Chemistry(1982, Second Edition, Willard Grant Press, Boston Mass.);March著Advanced Organic Chemistry(Third Edition, 1985, Wiley and Sons, New York);ならびにCareyおよびSundberg著Advanced Organic Chemistry(Third Edition, Parts A and B, 1990, Plenum Press, New York)参照。非天然アミノ酸の合成が記載された他の刊行物としては、例えば国際公開第2002/085923号パンフレット(発明の名称:“In vivo incorporation of Unnatural Amino Acids”);Matsoukasら, (1995) J. Med. Chem., 38, 4660-4669; King, F.E. & Kidd, D.A.A. (1949) A New Synthesis of Glutamine and of γ-Dipeptides of Glutamic Acid from Phthylated Intermediates. J. Chem. Soc., 3315-3319; Friedman, O.M. & Chatterrji, R. (1959) Synthesis of Derivatives of Glutamine as Model Substrates for Anti-Tumor Agents. J. Am. Chem. Soc. 81, 3750-3752; Craig, J.C.ら(1988) Absolute Configuration of the Enantiomers of 7-Chloro-4 [[4-(diethylamino)-1-methylbutyl]amino]quinoline (Chloroquine). J. Org. Chem. 53, 1167-1170; Azoulay, M., Vilmont, M. & Frappier, F. (1991) Glutamine analogues as Potential Antimalarials,. Eur. J. Med. Chem. 26, 201-5; Koskinen, A.M.P. & Rapoport, H. (1989) Synthesis of 4-Substituted Prolines as Conformationally Constrained Amino Acid Analogues. J. Org. Chem. 54, 1859-1866; Christie, B.D. & Rapoport, H. (1985) Synthesis of Optically Pure Pipecolates from L-Asparagine. Application to the Total Synthesis of (+)-Apovincamine through Amino Acid Decarbonylation and Iminium Ion Cyclization. J. Org. Chem. 1989:1859-1866; Bartonら, (1987) Synthesis of Novel a-Amino-Acids and Derivatives Using Radical Chemistry: Synthesis of L- and D-a-Amino-Adipic Acids, L-a-aminopimelic Acid and Appropriate Unsaturated Derivatives. Tetrahedron Lett. 43:4297-4308;および, Subasingheら, (1992) Quisqualic acid analogues: synthesis of beta-heterocyclic 2-aminopropanoic acid derivatives and their activity at a novel quisqualate-sensitized site. J. Med. Chem. 35:4602-7などが挙げられる。
【0148】
<非天然アミノ酸の細胞取り込み>
脊椎動物細胞による非天然アミノ酸の取り込みは、例えばタンパク質への組み込み用の非天然アミノ酸を設計および選択するときに、通常考慮される問題の1つである。例えば、α−アミノ酸の電荷密度が高いと、これらの化合物は細胞に浸透しにくくなることが示唆されている。天然アミノ酸はタンパク質を基本とする輸送システムの回収により脊椎動物細胞に取り込まれる。非天然アミノ酸が細胞に取り込まれる場合には、どの非天然アミノ酸が取り込まれるかを判断する迅速なスクリーニングを実施することができる。例えば発明の名称「Protein Arrays」、代理人整理番号P1001US00、出願日2002年12月22日の出願、およびLiu, D.R. & Schultz, P.G. (1999) Progress toward the evolution of an organism with an expanded genetic code. PNAS United States 96:4780-4785に記載の毒性アッセイを参照のこと。取込みは種々のアッセイを使って容易に分析されるが、細胞取込み経路に受け入れられる非天然アミノ酸を設計する他の方法は、アミノ酸をインビボで作製する生合成経路を提供する方法である。
【0149】
<非天然アミノ酸の生合成>
細胞にはアミノ酸と他の化合物とを製造するための多数の生合成経路が元々存在している。特定の非天然アミノ酸の生合成法は自然界(例えば脊椎動物細胞)には存在しないかもしれないが、本発明はそのような方法を提供する。例えば、非天然アミノ酸の生合成経路は場合によって、新規酵素を追加するかまたは既存の宿主細胞経路を修飾することにより宿主細胞内に作製される。追加される新規酵素は場合によって、天然発生型酵素または人工的に進化させた酵素である。例えば、(国際公開第2002/085923号パンフレット(発明の名称:“In vivo incorporation of unnatural amino acids”)の実施例に示されているような)p−アミノフェニルアラニンの生合成は、他の生物に由来する公知酵素の組合せの追加に依存している。これらの酵素の遺伝子は、これらの遺伝子を含んでいるプラスミドで細胞を形質転換することにより、脊椎動物細胞に導入することができる。これらの遺伝子が細胞内に発現すると、所望の化合物を合成するための酵素経路が得られる。場合により追加される酵素種の例を下記の実施例に記載する。その他の酵素配列は例えばGenbankから入手できる。人工的に進化させた酵素も場合によっては、同じように細胞に追加される。このようにして、非天然アミノ酸を製造するように細胞機構および細胞資源を操作する。
【0150】
生合成経路に使用する新規酵素を製造するため、または既存の経路を進化させるための種々の方法が利用可能である。例えば、新規酵素および経路を開発するためには、Maxygen, Inc.によって開発されたような帰納的組み換え(recursive recombination)を場合によっては使用する(ワールドワイドウェブのwww.maxygen.com参照)。例えばStemmer (1994), Rapid evolution of a protein in vitro by DNA shuffling, Nature 370(4):389-391;および, Stemmer, (1994), DNA shuffling by random fragmentation and reassembly: In vitro recombination for molecular evolution, Proc. Natl. Acad. Sci. USA., 91:10747-10751参照。同様に、代謝経路を設計するためには、例えばO−メチル−L−チロシンを細胞内に作製する経路を設計するためには、Genencorによって開発されたDesign Path(登録商標)を場合によっては使用する(ワールドワイドウェブのgenencor.com参照)。この技術は、新規遺伝子(例えばゲノム機能解析によって同定された遺伝子)、ならびに分子進化および分子設計の組み合わせを使用して、宿主生物の既存の経路を再構築するものである。またDiversa Corporationは、新規経路を作製するための遺伝子経路および遺伝子のライブラリーを迅速にスクリーニングするための技術を提供している(ワールドワイドウェブのdiversa.com参照)。
【0151】
本発明は、プラスミドコンストラクト中におよそ2、3、4、5、6、7、8、9、10もしくは40コピー、または約80コピーものtRNAを使用することによって、アンバー抑圧およびセレクターコドンの認識を向上させる方法を含んでいる。本発明の1実施形態では、これらはハイブリッドtRNAであり、
図2および
図6に示されたような複数のターミネーター配列を含んでいてもよい。また本発明は、さらに他のトランスフェクションベクター(組み換えバクテリオファージ(ラムダファージなど)およびコスミドDNA発現ベクター、またはそれらと同様のもの)も含んでいる。該トランスフェクションベクターは一般に、プロモーター配列(U6およびH1などのPol IIIプロモーターを含むがこれらに限定されない)を含んでいる。またバクテリオファージは、より多くのtRNAのコピー(約200コピーまで)が、トランスフェクションベクターに含まれることを可能にする。これにより細胞内におけるtRNAのコピーの総数が増加する。
【0152】
通常、本発明の設計された生合成経路から製造された非天然アミノ酸の濃度は、効率的なタンパク質生合成に十分な濃度(例えば天然細胞量)であり、他の細胞内アミノ酸濃度に影響を与えたり、細胞資源を枯渇させたりする程の濃度ではない。このようにしてインビボで製造される典型的な濃度は約10mM〜約0.05mMである。特定の経路に所望される酵素を製造するために使用される遺伝子を含んでいるプラスミドで細胞を形質転換し、非天然アミノ酸を作製すると、場合によってはインビボでの選択を使用してリボソームタンパク質合成および細胞増殖の両方について、非天然アミノ酸の製造をさらに最適化する。
【0153】
<非天然アミノ酸を有するポリペプチド>
少なくとも1種の非天然アミノ酸を有する興味のあるポリペプチドまたはタンパク質は、本発明の特徴である。また本発明は、本発明の組成物および方法を使用して製造される、少なくとも1種の非天然アミノ酸を有するポリペプチドまたはタンパク質も含んでいる。さらに上記タンパク質と一緒に、賦形剤(例えば薬学的に許容可能な賦形剤)が存在していてもよい。
【0154】
脊椎動物細胞内おいて、少なくとも1種の非天然アミノ酸を有する興味のあるポリペプチドまたはタンパク質を製造することにより、ポリペプチドまたはタンパク質は通常、脊椎動物の翻訳後修飾を含むことになる。ある実施形態では、タンパク質は、脊椎動物細胞によってインビボでなされた少なくとも1種の翻訳後修飾と少なくとも1種の非天然アミノ酸とを含んでいる。該翻訳後修飾は原核細胞によってはなされないものである。例えば翻訳後修飾には、例えばアセチル化、アシル化、脂質修飾、パルミトイル化、パルミチン酸付加、リン酸化、糖脂質連結修飾、およびグリコシル化などが包含される。1態様では、翻訳後修飾には、GlcNAc−アスパラギン連結によるオリゴサッカライド(例えば(GlcNAc−Man)
2−Man−GlcNAc−GlcNAc)のアスパラギンへの接着が含まれる。脊椎動物タンパク質のN連結型オリゴサッカライドの例がいくつか挙げられている表7も参照のこと(なお、表7に示されたオリゴサッカライドには、さらに別の残基が存在していてもよいが、そのような残基は示されていない)。もう1つ別の態様では、翻訳後修飾には、GalNAc−セリン連結、GalNAc−トレオニン連結、GlcNAc−セリン連結、またはGlcNAc−トレオニン連結による、オリゴサッカライド(例えばGal−GalNAc、Gal−GlcNAcなど)のセリンまたはトレオニンへの接着が含まれる。
【0156】
さらにもう1つ別の態様では、翻訳語修飾は、前躯体のタンパク質プロセシング、多サブユニットタンパク質もしくは高分子集合体への集合、細胞内の別の部位への移動を含んでいる。なお上記前躯体としては、例えばカルシトニン前躯体、カルシトニン遺伝子関連ペプチド前躯体、プレプロ副甲状腺ホルモン、プレプロインスリン、プロインスリン、プレプロオピオメラノコルチン、およびプロオピオメラノコルチンなどが挙げられる。また上記細胞内の別の部位への移動としては、例えば小胞体、ゴルジ体、核、リソソーム、ペルオキシソーム、ミトコンドリア、葉緑体、およびバキュオールなどの細胞小器官への移動、または分泌経路を介した細胞内の別の部位への移動が挙げられる。ある実施形態では、タンパク質は、分泌または局在化配列、エピトープタグ、FLAGタグ、ポリヒスチジンタグ、またはGST融合などを含んでいる。
【0157】
非天然アミノ酸の利点の1つは、さらに別の分子を付加するために使用することができる追加された化学部分を、非天然アミノ酸が有していることである。これら修飾は、脊椎動物細胞内でインビボにおいて行われてもよいし、またはインビトロで行われてもよい。したがってある実施形態では、翻訳後修飾は非天然アミノ酸を介して行われる。例えば翻訳後修飾は、求核−求電子反応によるものであってもよい。例えばα−ハロケトンとヒスチジンまたはシステインの側鎖との反応などの、タンパク質を選択的に修飾するために現在使用されている反応のほとんどは、求核反応パートナーと求電子反応パートナーとの間に共有結合を形成することを伴う。これらの場合における選択性は、タンパク質の求核性残基の数および接近性によって決定される。本発明のタンパク質では、その他のより選択的な反応(例えば非天然ケトアミノ酸とヒドラジドまたはアミノオキシ化合物とのインビボおよびインビトロの反応)を使用してもよい。例えばCornishら, (1996) Am. Chem. Soc., 118:8150-8151; Mahalら, (1997) Science, 276:1125-1128; Wangら, (2001) Science 292:498-500; Chinら, (2002) Am. Chem. Soc. 124:9026-9027; Chinら, (2002) Proc. Natl. Acad. Sci., 99:11020-11024; Wangら, (2003) Proc. Natl. Acad. Sci., 100:56-61; Zhangら, (2003) Biochemistry, 42:6735-6746;および, Chinら, (2003) Science, in press参照。これによって、実質的にあらゆるタンパク質を、多くの試薬(蛍光団、架橋剤、サッカライド誘導体および細胞毒性分子を含む)で選択的に標識することができる。米国特許出願第10/686,944号明細書(発明の名称:“Glycoprotein synthesis”、出願日:2003年10月15日)も参照のこと。また、例えばアジドアミノ酸を介した翻訳後修飾を、シュタウディンガー連結によって(例えばトリアリールホスフィン試薬を使って)行ってもよい。例えばKiickら, (2002) Incorporation of azides into recombinant proteins for chemoselective modification by the Staudinger ligtation, PNAS 99:19-24参照。
【0158】
本発明は、タンパク質を選択的に修飾するためのもう1つ別の高効率な方法を提供する。該方法は、非天然アミノ酸(例えアジド部分またはアルキニル部分を含んでいる非天然アミノ酸)をタンパク質に、セレクターコドンに応じて遺伝学的に組み込む工程を含んでいる。それから、これらのアミノ酸側鎖をそれぞれ、アルキニルまたはアジド誘導体を使って、Huisgen[3+2]環化付加反応(例えば、Padwa, A. in Comprehensive Organic Synthesis, Vol. 4, (1991) Ed. Trost, B. M., Pergamon, Oxford, p. 1069-1109;および, Huisgen, R. in 1,3-Dipolar Cycloaddition Chemistry, (1984) Ed. Padwa, A., Wiley, New York, p. 1-176参照)によって修飾してもよい。例えば
図16参照。この方法は、求核置換というよりむしろ環化付加を含んでいるので、タンパク質を極めて高い選択性で修飾することができる。この反応は、反応混合物に触媒量のCu(I)塩を添加することによって優れた位置選択性(1,4>1,5)で、水性条件下、室温において実施することができる。例えばTornoeら, (2002) Org. Chem. 67:3057-3064;および, Rostovtsevら, (2002) Angew. Chem. Int. Ed. 41:2596-2599参照。使用することができるもう1つ別の方法は、二ヒ素化合物とテトラシステインモチーフとのリガンド交換である。例えばGriffinら, (1998) Science 281:269-272参照。
【0159】
天然にコードされていないアミノ酸の官能基を介して、本発明のタンパク質に付加されることが可能な分子には、相補的な官能基を有する実質的にあらゆる分子が含まれる。そのような分子には、特に限定されないが、色素、蛍光団、架橋剤、サッカライド誘導体、ポリマー(例えばポリエチレングリコールの誘導体)、光架橋剤、細胞毒性分子、アフィニティー標識、ビオチン誘導体、樹脂、ビーズ、第2(またはそれ以上の)タンパク質もしくはポリペプチド、ポリヌクレオチド(例えばDNAおよびRNAなど)、金属キレート剤、補因子、脂肪酸、および炭水化物などが含まれる。
【0160】
もう1つ別の態様では、本発明は、そのような分子を含んでいる組成物、およびこれら分子(例えばポリエチレングリコールの誘導体(nは例えば50〜10,000、75〜5,000、100〜2,000、100〜1,000などの整数である))を製造する方法を提供する。本発明の1実施形態では、ポリエチレングリコールの分子量は、例えば約5,000〜約100,000Da、約20,000〜約30,000、約40,000または約50,000Da、約20,000〜約10,000Daなどである。
【0161】
また、例えばタンパク質および細胞と一緒に、これら化合物を含んでいる各種組成物も提供される。本発明の1態様では、(例えば化学構造4または化学構造6の)アジド色素(dye)を含んでいるタンパク質は、少なくとも1種の非天然アミノ酸(例えばアルキニルアミノ酸)をさらに含んでおり、アジド色素は[3+2]環化付加によって該非天然アミノ酸に接着している。
【0162】
本発明の脊椎動物細胞は、非天然アミノ酸を含んでいるタンパク質を実用的な量で大量に合成することができる。1態様では、上記組成物に場合により含有されている、非天然アミノ酸を含んでいるタンパク質の量は、例えば、少なくとも10マイクログラム、少なくとも50マイクログラム、少なくとも75マイクログラム、少なくとも100マイクログラム、少なくとも200マイクログラム、少なくとも250マイクログラム、少なくとも500マイクログラム、少なくとも1ミリグラム、少なくとも10ミリグラム、またはそれ以上であるか、あるいはインビボのタンパク質製造方法から得られることができる量である(なお、組み換えタンパク質の製造および精製の詳細は、本明細書に記載されている)。もう1つ別の態様では、上記タンパク質は場合によって、例えば細胞ライセート、緩衝液、薬学的緩衝液、または他の液体液体懸濁液中に(例えば約1nl〜約100Lのどれかの容量など)、例えば少なくとも10マイクログラム(タンパク質/リットル)、少なくとも50マイクログラム(タンパク質/リットル)、少なくとも75マイクログラム(タンパク質/リットル)、少なくとも100マイクログラム(タンパク質/リットル)、少なくとも200マイクログラム(タンパク質/リットル)、少なくとも250マイクログラム(タンパク質/リットル)、少なくとも500マイクログラム(タンパク質/リットル)、少なくとも1ミリグラム(タンパク質/リットル)、または少なくとも10ミリグラム(タンパク質/リットル)、あるいはそれ以上の濃度で、上記組成物に存在する。少なくとも1種の非天然アミノ酸を含んでいるタンパク質を、脊椎動物細胞内おいて大量に製造することが、本発明の特徴である(例えば、上記タンパク質の量は、インビトロの翻訳などの他の方法から一般的に得ることができる量よりも多い)。
【0163】
非天然アミノ酸を組み込むことにより、例えばタンパク質の構造または機能を改変すること、例えば、大きさ、酸性度、求核性、水素結合、疎水性、プロテアーゼ標的部位の接近性、および部分へのターゲット(例えばタンパク質アレイに対するターゲット)などを変更することができる。非天然アミノ酸を含んでいるタンパク質の触媒または物理学的特性は、向上していてもよいし、それどころか完全に新規なものであってもよい。例えば以下の特性が、非天然アミノ酸をタンパク質に含有させることによって場合によっては修飾される:毒性、体内分布、構造特性、分光学的特性、化学的および/または光化学的特性、触媒能力、半減期(例えば血清半減期)、および他の分子と(例えば共有結合的にまたは非共有結合的に)反応する能力など。少なくとも1種の非天然アミノ酸を含んでいるタンパク質を含有している組成物は、例えば新規な治療、診断、触媒酵素、工業用酵素、結合タンパク質(例えば抗体)に有用であるとともに、タンパク質の構造および機能の研究にも有用である。例えば、Dougherty, (2000) Unnatural Amino Acids as Probes of Protein Structure and Function, Current Opinion in Chemical Biology, 4:645-652参照。
【0164】
本発明の1態様では、組成物は、少なくとも1種、例えば少なくとも2種、少なくとも3種、少なくとも4種、少なくとも5種、少なくとも6種、少なくとも7種、少なくとも8種、少なくとも9種、少なくとも10種、またはそれ以上の非天然アミノ酸を有するタンパク質を少なくとも1種含んでいる。上記非天然アミノ酸は、同一であっても異なっていてもよく、例えば、1種、2種、3種、4種、5種、6種、7種、8種、9種、10種またはそれ以上の異なる非天然アミノ酸を含んでいる1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個またはそれ以上の異なる部位が、上記タンパク質に存在してもよい。もう1つ別の態様では、タンパク質に存在する特定のアミノ酸の少なくとも1種(ただし、全てではない)が、非天然アミノ酸で置換されている。2種以上の非天然アミノ酸を有する所定のタンパク質では、該非天然アミノ酸は同一であっても異なっていてもよい(例えば、該タンパク質は、2種以上の異なる種類の非天然アミノ酸を含んでいてもよいし、2種の同じ非天然アミノ酸を含んでいてもよい)。3種以上の非天然アミノ酸を有する所定のタンパク質では、該非天然アミノ酸は同一であっても、異なっていてもよいし、あるいは同じ種類の複数の非天然アミノ酸と少なくとも1種の異なる非天然アミノ酸との組み合わせであってもよい。
【0165】
非天然アミノ酸を含んでいるタンパク質(その一部)(および例えば1種以上のセレクターコドンを含んでいる、それらをコードする任意の核酸)は、基本的に全て、本明細書に記載の組成物および方法を用いて製造することができる。数十万もの公知タンパク質(それら公知タンパク質の何れかは、例えば任意の利用可能な突然変異法を改変して、関連する翻訳システムに1個以上の適切なセレクターコドンが含まれるようにすることによって、1種以上の非天然アミノ酸を含むように修飾されることができるものである)を同定することは試みられていない。公知タンパク質の配列の一般的な保管場所は、GenBank、EMBL、DDBJ、およびNCBIなどである。またその他の保管場所は、インターネットを検索することによって容易に見つけることができる。
【0166】
通常、上記タンパク質は、任意の利用可能なタンパク質と、例えば少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも99%、あるいはそれ以上同一である。また上記任意の利用可能なタンパク質としては、例えば治療用タンパク質、診断用タンパク質、もしくは工業用タンパク質、またはそれらの一部、およびそれらと同様ものが挙げられる。さらに上記タンパク質は1種以上の非天然アミノ酸を含んでいる。例えば、1種以上の非天然アミノ酸を含むように修飾されることができる治療用タンパク質、診断用タンパク質、および他のタンパク質には、例えば特に限定されないが、アルファ−1抗トリプシン、アンギオスタチン、抗溶血性因子、抗体(抗体についての詳細は以下に記載されている)、アポリポタンパク質、アポタンパク質、心房性ナトリウム利尿因子、心房性ナトリウム利尿ポリペプチド、心房性ペプチド、C−X−Cケモカイン(例えばT39765、NAP−2、ENA−78、Gro−a、Gro−b、Gro−c、IP−10、GCP−2、NAP−4、SDF−1、PF4、MIG)、カルシトニン、CCケモカイン(例えば、単球走化性タンパク質−1、単球走化性タンパク質−2、単球走化性タンパク質−3、単球炎症性タンパク質−1アルファ、単球炎症性タンパク質−1ベータ、ランテス(RANTES)、I309、R83915、R91733、HCC1、T58847、D31065、T64262)、CD40リガンド、c−kit(キット)リガンド、コラーゲン、コロニー刺激因子(CSF)、補体因子5a、補体抑制因子、補体受容体1、サイトカイン(例えば、上皮好中球活性化ペプチド−78、GROα/MGSA、GROβ、GROγ、MIP−1α、MIP−1δ、MCP−1)、上皮成長因子(EGF)、エリスロポエチン(EPO、なおEPOは、1種以上の非天然アミノ酸の組み込みによる修飾に関する好ましい標的である)、表皮剥離脱素(Exfoliating toxin)AおよびB、ファクターIX、ファクターVII、ファクターVIII、ファクターX、線維芽細胞成長因子(FGF)、フィブリノゲン、フィブロネクチン、G−CSF、GM−CSF、グルコセレブロシダーゼ、性腺刺激ホルモン、成長因子、ヘッジホッグタンパク質(例えばソニックヘッジホッグ、インディアンヘッジホッグ、デザートヘッジホッグ)、ヘモグロビン、肝細胞成長因子(HGF)、ヒルジン、ヒト血清アルブミン、インスリン、インスリン様成長因子(IGF)、インターフェロン(例えばIFN−α、IFN−β、IFN−γ)、インターロイキン(例えばIL−1、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−8、IL−9、IL−10、IL−11、およびIL−12など)、ケラチノサイト成長因子(KGF)、ラクトフェリン、白血病抑制因子、ルシフェラーゼ、ニュールツリン、好中球抑制因子(NIF)、オンコスタチンM、骨形成タンパク質、副甲状腺ホルモン、PD−ECSF、PDGF、ペプチドホルモン(例えばヒト成長ホルモン)、プレイオトロピン(Pleiotropin)、プロテインA、プロテインG、発熱性エキソトキシンA、BおよびC、リラキシン、レニン、SCF、可溶性補体受容体I、可溶性I−CAM1、可溶性インターロイキン受容体(IL−1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15)、可溶性TNF受容体、ソマトメジン、ソマトスタチン、ソマトトロピン、ストレプトキナーゼ、超抗原、すなわちスタフィロコッカス(Staphylococcal)エンテロトキシン(SEA、SEB、SEC1、SEC2、SEC3、SED、SEE)、スーパーオキサイドジスムターゼ(SOD)、毒物ショック症候群毒素(TSST−1)、サイモシンアルファ1、組織プラスミノーゲン活性化因子、腫瘍壊死因子ベータ(TNFベータ)、腫瘍壊死因子受容体(TNFR)、腫瘍壊死因子アルファ(TNFアルファ)、血管内皮細胞成長因子(VEGEF)、およびウロキナーゼなどが含まれる。
【0167】
本明細書に記載の非天然アミノ酸をインビボにて組み込むための組成物および方法を使って作製され得るタンパク質の1種には、転写調節因子またはその一部が含まれる。転写調節因子には、例えば細胞の増殖、分化、または制御などを調節する、遺伝子および転写調節タンパク質が含まれる。転写調節因子は、原核生物、ウイルスおよび真核生物(菌類、植物、酵母、昆虫および(哺乳類を含む)動物を含む)において発見されるものであり、様々な治療標的を提供する。発現および転写活性化因子は、多くの機構によって調節することが好ましい。そのような機構としては、例えば受容体との結合、転写因子の発現を調節するシグナル伝達カスケードの刺激、プロモーターおよびエンハンサーとの結合、プロモーターおよびエンハンサーと結合するタンパク質との結合、DNAの巻き戻し、RNA前駆体のスプライシング、RNAのポリアデニル化、およびRNAの分解が挙げられる。例えば、真核動物細胞のGAL4タンパク質またはその一部の組成物も本発明の特徴である。通常、GAL4タンパク質またはその一部は、少なくとも1種の非天然アミノ酸を含んでいる。なお本明細書の「直交化アミノアシル−tRNAシンテターゼ」の項も参照のこと。
【0168】
本明細書のタンパク質の1種(例えば1種以上の非天然アミノ酸を有するタンパク質)には、発現活性化因子(サイトカイン、炎症分子、成長因子、それらの受容体、および癌遺伝子産物(例えば、インターロイキン(例えばIL−1、IL−2およびIL−8など)、インターフェロン、FGF、IGF−I、IGF−II、FGF、PDGF、TNF、TGF−α、TGF−β、EGF、KGF、SCF/c−キット(Kit)、CD40L/CD40、VLA−4/VCAM−1、ICAM−1/LFA−1、およびヒアルリン/CD44);シグナル伝達分子、および対応する癌遺伝子産物(例えばMos、Ras、RafおよびMet);ならびに転写活性化因子および転写抑制因子(例えばp53、Tat、Fos、Myc、Jun、Myb、Rel)、およびステロイドホルモン受容体(エストロゲン、プロゲステロン、テストテロン、アルドステロン、LDL受容体リガンド、コルチコステロンの受容体など)が含まれる。
【0169】
また、少なくとも1種の非天然アミノ酸を有する酵素(例えば工業用酵素)またはその一部も、本発明によって提供される。酵素には、例えば特に限定されないが、アミダーゼ、アミノ酸ラセマーゼ、アシラーゼ、デハロゲナーゼ、ジオキシゲナーゼ、ジアリールプロパンペルオキシダーゼ、エピメラーゼ、エポキシドヒドロラーゼ、エステラーゼ、イソメラーゼ、キナーゼ、グルコースイソメラーゼ、グリコシダーゼ、グリコシルトランスフェラーゼ、ハロペルオキシダーゼ、モノオキシゲナーゼ(例えばp450)、リパーゼ、リグニンペルオキシダーゼ、ニトリルヒドラターゼ、ニトリラーゼ、プロテアーゼ、ホスファターゼ、サブチリシン、トランスアミナーゼ、およびヌクレアーゼが含まれる。
【0170】
これらタンパク質の多くは市販されており(例えばSigma BioSciencesの2002年のカタログおよび価格表参照のこと)、対応するタンパク質配列および遺伝子、ならびに一般的なそれらの多くのバリアントは公知である(例えばGenbank参照)。それらタンパク質の何れかは、本発明に基づき1種以上の非天然アミノ酸を挿入することによって、例えば興味のある1つ以上の治療特性、診断特性、または酵素特性について、該タンパク質を変更するように修飾することができる。治療に関する特性には、例えば血清半減期、保存半減期、安定性、免疫原性、治療活性、(例えば非天然アミノ酸にレポーター基(例えば標識または標識結合部位)を含ませることによってもたらされる)検出性、LD
50または他の副作用の軽減、また胃管を経由して体内に導入できること(例えば経口利用性)などが含まれる。診断特性には、例えば保存半減期、安定性、診断活性、または検出性などが含まれる。関連する酵素特性には、例えば保存半減期、安定性、酵素活性、または製造能力などが含まれる。
【0171】
他の様々なタンパク質も、本発明の非天然アミノ酸を1種以上含むように修飾することができる。例えば本発明は、1種以上のワクチンタンパク質内の1種以上の天然アミノ酸を、非天然アミノ酸で置換する工程を含んでいる。またそのようなワクチンタンパク質としては、例えば、感染性菌類(例えばAspergillus、Candida種);細菌、特に病原細菌モデルとして利用できるE. coliや医学的に重要な細菌(例えばStaphylococci(例えばaureus)またはStreptococci(例えばpneumoniae));原生生物(例えば胞子虫類(例えばPlasmodia)、根足虫類(例えばEntamoeba)および鞭毛虫(Trypanosoma、Leishmania、Trichomonas、Giardiaなど));ウイルス(例えば(+)RNAウイルス(例えばポックスウイルス(例えばワクシニア)、ピコルナウイルス(例えばポリオ)、トガウイルス(例えば風疹(rubella))、フラビウイルス(例えばHCV)、およびコロナウイルス)、(−)RNAウイルス(例えばラブドウイルス(例えばVSV)、パラミクソウイルス(例えばRSV)、オルソミクソウイルス(例えばインフルエンザ)、ブンヤウイルスおよびアレナウイルス)、dsDNAウイルス(例えばレオウイルス)、RNA→DNAウイルス(即ちレトロウイルス、例えばHIVおよびHTLV)、および所定のDNA→RNAウイルス(例えばB型肝炎))に由来するタンパク質が挙げられる。
【0172】
昆虫耐性タンパク質(例えばCryタンパク質)、デンプン及び脂質製造酵素、植物および昆虫毒素、毒素耐性タンパク質、マイコトキシン解毒タンパク質、植物成長酵素(例えばリブロース1,5−ビスリン酸カルボキシラーゼ/オキシゲナーゼ、「RUBISCO」)、リポキシゲナーゼ(LOX)およびホスホエノールピルビン酸(PEP)カルボキシラーゼなどの農業関連タンパク質も、他の非天然アミノ酸修飾の適切なターゲットである。
【0173】
また本発明は、脊椎動物細胞内おいて少なくとも1種の非天然アミノ酸を含んでいるタンパク質を、少なくとも1種製造するための方法、および該方法によって製造されたタンパク質を提供する。例えば、方法は、少なくとも1個のセレクターコドンを含んでおり、上記タンパク質をコードする核酸を含んでいる脊椎動物細胞を、適切な培地で増殖させる工程を含んでいる。また当該脊椎動物細胞は、該細胞内おいて機能し、セレクターコドンを認識する直交化tRNA(O−tRNA)と、非天然アミノ酸でO−tRNAを優先的にアミノアシル化する直交化アミノアシル−tRNAシンテターゼ(O−RS)とを含んでいる。また上記培地は非天然アミノ酸を含んでいる。
【0174】
1実施形態では、上記方法は、第1反応基を含んでいる非天然アミノ酸をタンパク質に組み込む工程、および該タンパク質を第2反応基を含んでいる分子と接触させる工程をさらに含んでいる。該分子としては例えば、色素、ポリマー(例えばポリエチレングリコールの誘導体)、光架橋剤、細胞毒性化合物、アフィニティー標識、ビオチンの誘導体、樹脂、第2タンパク質またはポリペプチド、金属キレート剤、補因子、脂肪酸、炭水化物、ポリヌクレオチド(例えばDNA、RNAなど)などが挙げられる。第1反応基が第2反応基と反応すると、[3+2]環化付加により上記分子が上記非天然アミノ酸に接着する。1実施形態では、第1反応基はアルキニル部分またはアジド部分であり、第2反応基はアジド部分またはアルキニル部分である。例えば、第1反応基はアルキニル部分(例えば、非天然アミノ酸であるp−プロパルギルオキシフェニルアラニンのアルキニル部分)であり、第2反応基はアジド部分である。もう1つ別の例を挙げると、第1反応基はアジド部分(例えば非天然アミノ酸であるp−アジド−L−フェニルアラニンのアジド部分)であり、第2反応基はアルキニル部分である。
【0175】
1実施形態では、上記O−RSは、例えば配列番号86または45に示されたようなアミノ酸配列を有するO−RSと比べて、少なくとも50%の効率で、非天然アミノ酸でO−tRNAをアミノアシル化する。もう1つ別の実施形態では、O−tRNAは、配列番号64または65に示されたポリヌクレオチド配列、あるいはそれらに相補的なポリヌクレオチド配列を含んでいるか、それら配列から加工されるか、それら配列によってコードされている。さらにもう1つ別の実施形態では、上記O−RSは、配列番号36−63および/または86の何れか1つに示されたアミノ酸配列を含んでいる。
【0176】
コードされたタンパク質は、例えば治療用タンパク質、診断用タンパク質、工業用酵素、またはそれらの一部を含んでいてもよい。場合によっては、上記方法によって製造されたタンパク質は、非天然アミノ酸を介してさらに修飾される。例えば場合によっては、上記方法によって製造されたタンパク質は、インビボでの少なくとも1種の翻訳後修飾によってさらに修飾される。
【0177】
スクリーニングまたは選択用転写調節タンパク質を製造する方法、およびそのような方法によって製造されたスクリーニングまたは選択用転写調節タンパク質も提供される。例えば上記方法は、核酸結合ドメインをコードする第1ポリヌクレオチド配列を選択する工程と、少なくとも1個のセレクターコドンを含むように該第1ポリヌクレオチド配列を突然変異させる工程とを含んでいる。これにより、スクリーニングまたは選択用ポリヌクレオチドが得られる。また上記方法は、転写活性化ドメインをコードする第2ポリヌクレオチド配列を選択する工程と、第2ポリヌクレオチド配列に作動可能に連結されたスクリーニングまたは選択用ポリヌクレオチド配列を含んでいるコンストラクトを作製する工程と、該コンストラクト、非天然アミノ酸、直交化tRNAシンテターゼ(O−RS)、および直交化tRNA(O−tRNA)を細胞に導入する工程とを含んでいる。これらの成分によれば、上記O−RSは上記非天然アミノ酸で上記O−tRNAを優先的にアミノアシル化し、該O−tRNAは、上記スクリーニングまたは選択用ポリヌクレオチド配列のセレクターコドンを認識し、該セレクターコドンに応じて、上記核酸結合ドメインへ非天然アミノ酸を組み込む。これにより、スクリーニングまたは選択用転写調節タンパク質が得られる。
【0178】
ある実施形態では、本発明の組成物および/または方法における、興味のあるポリペプチドまたはタンパク質(あるいはそれらの一部)は、核酸にコードされている。通常、該核酸は、少なくとも1個のセレクターコドン、少なくとも2個のセレクターコドン、少なくとも3個のセレクターコドン、少なくとも4個のセレクターコドン、少なくとも5個のセレクターコドン、少なくとも6個のセレクターコドン、少なくとも7個のセレクターコドン、少なくとも8個のセレクターコドン、少なくとも9個のセレクターコドン、10個またはそれ以上のセレクターコドン、を含んでいる。
【0179】
興味のあるポリペプチドまたはタンパク質をコードする遺伝子は、当業者の一人に公知の方法や本明細書の「突然変異誘発法および他の分子生物学的手法」に記載の方法を使って、非天然アミノ酸の組み込み用の1個以上のセレクターコドンを含むように突然変異させることができる。例えば興味のあるタンパク質に関する核酸を、1個以上のセレクターコドンを含むように突然変異させることによって、1種以上の非天然アミノ酸を挿入できるようになる。本発明は、あらゆるそのようなバリアント、例えば少なくとも1種の非天然アミノ酸を含んでいる例えば任意のタンパク質の突然変異体、改変体を含んでいる。同様に、本発明は、対応する核酸、即ち1種以上の非天然アミノ酸をコードする1種以上のセレクターコドンを有する任意の核酸も含んでいる。
【0180】
<非天然アミノ酸を含んでいる組み換えタンパク質の精製>
本発明のタンパク質、例えば非天然アミノ酸を含んでいるタンパク質、非天然アミノ酸を含んでいるタンパク質に対する抗体などは、当業者に公知または使用される標準的な手法に従って、実質的にもしくは部分的に均質になるまで精製されてもよい。したがって、本発明のポリペプチドは、技術的に公知の多くの方法の何れかによって回収され精製されてもよい。そのような方法としては、例えば硫酸アンモニウム沈殿またはエタノール沈殿、酸または塩基抽出、カラムクロマトグラフィー、アフィニティーカラムクロマトグラフィー、陰イオンまたは陽イオン交換カラムクロマトグラフィー、リン酸セルロースクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、レクチンクロマトグラフィー、およびゲル電気泳動などが挙げられる。正確に折りたたまれた成熟タンパク質を作製する際には、要望に応じて、タンパク質の再折りたたみ工程を使用してもよい。高純度を望む場合は、最終精製工程において、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、アフィニティークロマトグラフィー、または他の適切な方法を使用してもよい。1実施形態では、非天然アミノ酸(または非天然アミノ酸を含んでいるタンパク質)に対して作製された抗体を、例えば1種以上の非天然アミノ酸を含んでいるタンパク質のアフィニティーに基づく精製用の精製試薬として使用する。要望に応じて部分的にまたは均質になるまで精製されたら、ポリペプチドは場合によって例えばアッセイ成分、治療試薬、または抗体製造用の免疫原として使用される。
【0181】
本明細書に挙げられている他の参考文献に加えて、様々な精製/タンパク質折りたたみ方法は、技術的に知られているが、例えばR. Scopes, Protein Purification, Springer-Verlag, N.Y. (1982); Deutscher, Methods in Enzymology Vol. 182: Guide to Protein Purification, Academic Press, Inc. N.Y. (1990); Sandana (1997) Bioseparation of Proteins, Academic Press, Inc.; Bollagら(1996) Protein Methods, 2nd Edition Wiley-Liss, NY; Walker (1996) The Protein Protocols Handbook Humana Press, NJ, Harris and Angal (1990) Protein Purification Applications: A Practical Approach IRL Press at Oxford, Oxford, England; Harris and Angal Protein Purification Methods: A Practical Approach IRL Press at Oxford, Oxford, England; Scopes (1993) Protein Purification: Principles and Practice 3rd Edition Springer Verlag, NY; Janson and Ryden (1998) Protein Purification: Principles, High Resolution Methods and Applications, Second Edition Wiley-VCH, NY;およびWalker (1998) Protein Protocols on CD-ROM Humana Press, NJ、ならびにそれらで引用されている参考文献に記載の方法が挙げられる。
【0182】
脊椎動物細胞内おいて非天然アミノ酸を有する興味のあるポリペプチドまたはタンパク質を製造することの利点の1つは、通常、該ポリペプチドまたはタンパク質が、それらの天然の立体構造をとるように折りたたまれることである。しかし、本発明のある実施形態では、当業者は、合成、発現および/または精製後に、タンパク質は、関連するポリペプチドの所望の立体構造とは異なる立体構造を有してもよいことを認識する。本発明の1態様では、発現したタンパク質は場合によっては変性され、その後再生される。このことは例えば、興味のあるポリペプチドまたはタンパク質にシャペロニンを加えることによって、および/または塩酸グアニジンなどのカオトロピック剤中で上記タンパク質を可溶化することによって実現される。
【0183】
一般的に多くの場合において望ましいことは、発現したポリペプチドを変性および還元し、それからそのポリペプチドを、好ましい立体構造をとるようにリフォールディングすることである。例えば、グアニジン、尿素、DTT、DTE、および/またはシャペロニンを、興味のある翻訳産物に加えてもよい。タンパク質を還元、変性および再生する方法は、当業者に公知である(上記参考文献およびDebinskiら(1993) J. Biol. Chem., 268: 14065-14070; Kreitman and Pastan (1993) Bioconjug. Chem.,4: 581-585;およびBuchnerら, (1992) Anal. Biochem., 205: 263-270参照のこと)。Debinskiらには、例えば封入体タンパク質をグアニジン−DTE中で変性および還元することについて記載されている。上記タンパク質を、酸化型グルタチオンおよびL−アルギニンなどを含む酸化還元緩衝液中でリフォールディングすることができる。リフォールディング試薬を、1種以上のポリペプチドまたは他の発現産物と接するように流してもよいし、それ以外の方法で移動させてもよい。また、その反対も可能である。
【0184】
<抗体>
1態様では、本発明は、例えば例えばシンテターゼ、tRNA、および非天然アミノ酸を含んでいるタンパク質などの本発明の分子に対する抗体を提供する。本発明の分子に対する抗体は、例えば本発明の分子を精製するための精製試薬として有用である。また上記抗体は、シンテターゼ、tRNAまたは非天然アミノ酸を含んでいるタンパク質の存在を示すか、またはそれら分子の(例えばインビボもしくはインサイチューでの)存在もしくは局在を追跡するための指示試薬として使用することができる。
【0185】
本発明の抗体は、免疫グロブリン遺伝子または免疫グロブリン遺伝子の断片によって、実質的にもしくは部分的にコードされたポリペプチドを1種以上含んでいるタンパク質であってもよい。認められる免疫グロブリンには、カッパ、ラムダ、アルファ、ガンマ、デルタ、イプシロン、およびミュー定常領域の遺伝子や、免疫グロブリン可変領域の無数の遺伝子が含まれる。軽鎖は、カッパまたはラムダとして分類されている。重鎖は、ガンマ、ミュー、アルファ、デルタまたはイプシロンとして分類されており、それぞれは順に免疫グロブリンのクラスIgG、IgM、IgA、IgDおよびIgEを規定している。典型的な免疫グロブリン(例えば抗体)の構造ユニットは四量体を含んでいる。各四量体は同一な2対のポリペプチド鎖から構成されており、各対は1つの「軽」鎖(約25kD)と1つの「重」鎖(約50−70kD)とを有している。各鎖のN末端は、抗原認識を主に担う約100〜110またはそれ以上のアミノ酸の可変領域を規定している。用語可変軽鎖(VL)および可変重鎖(V
H)はそれぞれ、これらの軽鎖および重鎖のことをいう。
【0186】
抗体は、完全な免疫グロブリンとして存在しているか、または各種ペプチダーゼによる分解によって製造された特徴が調べられている多くの断片として存在している。つまり例えばペプシンは、ヒンジ領域のジスルフィド結合の下で抗体を消化し、F(ab’)
2を製造する(なおF(ab’)
2は、軽鎖がジスルフィド結合によってV
H−C
H1に接続されているFabの二量体である)。F(ab’)
2を穏やかな条件下で還元して、ヒンジ領域のジスルフィド連結を破壊することによって、F(ab’)
2二量体をFab’モノマーに変換してもよい。Fab’モノマーは、基本的にはヒンジ領域の一部を有するFabである。他の抗体断片についてのより詳細な説明は、Fundamental Immunology, 4
th addition, W.E. Paul, ed., Raven Press, N.Y. (1999) 参照のこと。様々な抗体断片が、完全な抗体を消化するという観点から規定されているが、当業者の一人は、上記Fab’断片などが化学的にもしくは組み換えDNA法を利用することによってデノボ合成されてもよいことを十分に理解している。したがって、本明細書で使用されるような用語抗体は、完全な抗体の修飾によって製造された抗体断片、または組み換えDNA法を使用してデノボ合成された抗体断片も場合によっては含んでいる。抗体には、一本鎖抗体が含まれる。一本鎖抗体としては、可変重鎖および可変軽鎖が(直説的にまたはペプチドリンカーを介して)一緒に接合して、連続するポリペプチドを形成している一本鎖Fv(sFvまたはscFv)抗体などが挙げられる。本発明の抗体は、例えばポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、一本鎖抗体、Fab断片、またはFab発現ライブラリーによって製造された断片などであってもよい。
【0187】
一般に、本発明の抗体は、様々な分子生物学的方法または薬学的方法における、一般試薬および治療試薬として貴重である。ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体を製造する方法は利用可能であり、そのような方法を適用することによって本発明の抗体を作製してもよい。多くの基本的なテキストに、標準的な抗体製造方法が記載されている。そのようなテキストとしては、例えば、Borrebaeck (ed) (1995) Antibody Engineering, 2
nd Edition Freeman and Company, NY (Borrebaeck); McCaffertyら(1996) Antibody Engineering, A Practical Approach IRL at Oxford Press, Oxford, England (McCafferty); Paul (1995) Antibody Engineering Protocols Humana Press, Towata, NJ (Paul); Paul (ed.), (1999) Fundamental Immunology, Fifth edition Raven Press, N.Y.; Coligan (1991) Current Protocols in Immunology Wiley/Greene, NY; Harlow and Lane (1989) Antibodies: A Laboratory Manual Cold Spring Harbor Press, NY; Stitesら(eds.) Basic and Clinical Immunology (4th ed.) Lange Medical Publications, Los Altos, CA,および上記テキストで引用されている参考文献; Goding (1986) Monoclonal Antibodies: Principles and Practice (2d ed.) Academic Press, New York, NY;ならびにKohler and Milstein (1975) Nature 256: 495-497などが挙げられる。
【0188】
例えば動物に抗原を注入することなく抗体を調製するための各種組み換え技術は開発されており、本発明に使用してもよい。例えば、ファージまたは同様のベクターの組み換え抗体ライブラリーを作製し、選択することが可能である。総説については、例えばWinterら(1994) Making Antibodies by Phage Display Technology Annu. Rev. Immunol. 12:433-55およびそこで引用されている参考文献を参照のこと。またGriffiths and Duncan (1998) Strategies for selection of antibodies by phage display Curr Opin Biotechnol 9: 102-8; Hoogenboomら(1998) Antibody phage display technology and its applications Immunotechnology 4: 1-20; Gramら(1992) in vitro selection and affinity maturation of antibodies from a naive combinatorial immunoglobulin library PNAS 89:3576-3580; Huseら(1989) Science 246: 1275-1281;およびWardら(1989) Nature 341: 544-546も参照のこと。
【0189】
1実施形態では、抗体ライブラリーは、関連する重鎖および軽鎖が糸状バクテリオファージの表面に提示されるためにクローン化される(例えばリンパ球集団から収集されたか、またはインビトロにおいて集められた)V遺伝子のレパートリーを含んでいてもよい。ファージは抗体に結合することによって選択される。可溶性抗体はファージに感染した細菌から発現する。さらに抗体は突然変異誘発法などによって改良されてもよい。例えばBalint and Larrick (1993) Antibody Engineering by Parsimonious Mutagenesis Gene 137:109-118; Stemmerら(1993) Selection of an Active Single Chain Fv Antibody From a Protein Linker Library Prepared by Enzymatic Inverse PCR Biotechniques 14(2):256-65; Crameriら(1996) Construction and evolution of antibody-phage libraries by DNA shuffling Nature Medicine 2:100-103;およびCrameri and Stemmer (1995) Combinatorial multiple cassette mutagenesis creates all the permutations of mutant and wildtype cassettes BioTechniques 18:194-195参照のこと。
【0190】
組み換え抗体ファージシステムのクローニングおよび発現のためのキットも知られており、例えばAmersham-Pharmacia Biotechnology(Uppsala, Sweden)から市販されている“組み換えファージ抗体システム、マウスScFvモジュール(recombinant phage antibody system, mouse ScFv module)”を利用することができる。またチェーンシャッフリングによって高親和性ヒト抗体を作製するための、バクテリオファージ抗体ライブラリーも製造されている(例えばMarksら(1992) By- Passing Immunization: Building High Affinity Human Antibodies by Chain Shuffling Biotechniques 10:779-782参照)。抗体を、多くの商業サービスの何れかから調製できることも認識されたい(例えばBethyl Laboratories (Montgomery, TX)、Anawa (Switzerland)、Eurogentec (Belgium and in the US in Philadelphia, PAなど)。
【0191】
ある実施形態では、例えば抗体が治療のために投与される場合、本発明の抗体を「ヒト化」することが有用である。ヒト化抗体の使用によって、治療用抗体に対する望ましくない免疫反応の発生が減る傾向にある(例えば患者がヒトであるとき)。抗体に関する上記参考文献には、ヒト化の方策が記載されている。ヒト化抗体に加えて、ヒト抗体も本発明の特徴である。ヒト抗体は、ヒト免疫グロブリン配列から成ることを特徴としている。ヒト抗体は、様々な方法を用いて製造することができる(総説については例えば、Larrickらの米国特許第5,001,065号明細書参照)。ヒト抗体をトリオーマ技術によって製造する一般的なアプローチは、Ostbergら(1983), Hybridoma 2: 361-367、Ostbergの米国特許第4,634,664号明細書、およびEngelmanらの米国特許第4,634,666号明細書に記載されている。
【0192】
タンパク質の精製および検出に抗体を使用する様々な方法は知られており、そのような方法を適用して、本明細書に記載の非天然アミノ酸を含んでいるタンパク質を検出および精製することができる。一般に、抗体はELISA、ウエスタンブロッティング、免疫化学、アフィニティークロマトグラフィー法、およびSPRなどのための試薬として有用である。上記参考文献には、ELISAアッセイ、ウエスタンブロッティング、および表面プラズモン共鳴(SPR)などを実施する方法が詳細に記載されている。
【0193】
本発明の1態様では、本発明の抗体はそれ自体が非天然アミノ酸を含んでいる。このため、該抗体は興味のある特性(例えば改善された半減期、安定性、または毒性など)を有している。本明細書の「非天然アミノ酸を有するポリペプチド」と名づけられた項を参照のこと。抗体は現在のところ臨床試験に使用されている全ての化合物のほぼ50%を占めている(Wittrup, (1999) Phage on display Tibtech 17: 423-424)。また抗体は診断試薬として広く使用されている。したがって、非天然アミノ酸で抗体を修飾できることは、これらの貴重な試薬を修飾するための重要な手段となる。
【0194】
例えばMAbは、診断の分野に広く適用されている。アッセイは、単純なスポットテストから、より複雑な方法(腫瘍イメージングのために使用される放射性標識されたNR-LU-10 MAb(DuPont Merck Co.)(Ruschら(1993) NR-LU-10 monoclonal antibody scanning. A helpful new adjunct to computed tomography in evaluating non-small-cell lung cancer. J Thorac Cardiovasc Surg 106: 200-4)など)に及んでいる。上述したようにMAbは、ELISA、ウエスタンブロッティング、免疫化学およびアフィニティークロマトグラフィー法などにとって主要な試薬である。任意の診断用抗体は、1種以上の非天然アミノ酸を含むように修飾されてもよい。これにより、例えば、標的に対する該診断用抗体の特異性または結合力が変更されるか、例えば該非天然アミノ酸に検出可能な標識(例えば分光学的標識、蛍光標識、発光標識など)を含ませることによって1種以上の検出特性が変更される。
【0195】
貴重な抗体試薬の1種は治療用抗体である。例えば抗体は腫瘍特異的MAbであってもよい。該腫瘍特異的MAbは、腫瘍細胞を標的として、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)または補体媒介性溶解(CML)による破壊を行うことによって、腫瘍の増殖を止める抗体である(このような汎用型のAbは「特効薬」として呼ばれることもある)。一例としては、非ホジキンリンパ腫の治療用の抗CD20MAbであるRituxanが挙げられる(Scott (1998) Rituximab: a new therapeutic monoclonal antibody for non-Hodgkin's lymphoma Cancer Pract 6: 195-7)。2番目の例としては、腫瘍の増殖に重要な成分を妨害する抗体である。ハーセプチン(Herceptin)は、転移性乳癌の治療用の抗HER−2モノクローナル抗体であり、この作用機構を有する抗体の例である。(Baselgaら(1998) Recombinant humanized anti-HER2 antibody (Herceptin) enhances the antitumor activity of paclitaxel and doxorubicin against HER2/neu overexpressing human breast cancer xenografts [published erratum appears in Cancer Res (1999) 59(8):2020], Cancer Res 58: 2825-31)。3番目の例としては、興味のある腫瘍または他の部位に直接的に細胞毒性化合物(毒素および放射性核種など)を送達するための抗体が挙げられる。適用されているMabの1種は、例えば、前立腫瘍細胞に直接的に放射線を浴びせる90Y連結抗体である、CYT−356である。(Debら(1996) Treatment of hormone-refractory prostate cancer with 90Y-CYT-356 monoclonal antibody Clin Cancer Res 2: 1289-97)。4番目としては、抗体介在性酵素プロドラッグ療法が適用されている。この抗体介在性酵素プロドラッグ療法では、酵素が腫瘍と共局在することによって、全身に投与されたプロドラッグが該腫瘍の近辺において活性される。例えば結腸直腸癌を治療するために、カルボキシペプチダーゼAに連結された抗Ep−CAM1抗体が開発されている(Wolfeら(1999) Antibody-directed enzyme prodrug therapy with the T268G mutant of human carboxypeptidase A1: in vitro and in vivo studies with prodrugs of methotrexate and the thymidylate synthase inhibitors GW1031 and GW1843 Bioconjug Chem 10: 38-48)。他のAb(例えばアンタゴニスト)は、治療の恩恵を得るために、正常な細胞機能を特異的に阻害するように設計されている。例えば、急性臓器移植拒絶を減らすための、Johnson and Johnsonから提供されているオルソクローンのOKT3、抗CD3MAbが挙げられる(Strateら(1990) Orthoclone OKT3 as first-line therapy in acute renal allograft rejection Transplant Proc 22: 219-20)。別の種類の抗体産物はアゴニストである。これらのMabは、治療の恩恵を得るために、正常な細胞機能を特異的に向上させるように設計されている。例えば神経療法のためのMabを基本とするアセチルコリン受容体のアゴニストが開発されている(Xieら(1997) Direct demonstration of MuSK involvement in acetylcholine receptor clustering through identification of agonist ScFv Nat. Biotechnol. 15: 768-71)。1種以上の治療特性(特異性、結合力および血清半減期など)を向上させるために、これら抗体の何れかを1種以上の非天然アミノ酸を含むように修飾してもよい。
【0196】
もう1つ別の種類の抗体産物は新規機能を備えている。このグループの主な抗体は、酵素の触媒能を模倣するように設計されたIg配列などの触媒抗体である(Wentworth and Janda (1998) Catalytic antibodies Curr Opin Chem Biol 2: 138-44)。例えば中毒治療のための興味深い応用には、触媒抗体mAb−15A10を使用してインビボでコカインを加水分解することが含まれる(Metsら(1998) A catalytic antibody against cocaine prevents cocaine's reinforcing and toxic effects in rats Proc Natl Acad Sci U S A 95: 10176-81)。また1種以上の興味のある特性を改善するために、1種以上の非天然アミノ酸を含むように触媒抗体を修飾してもよい。
【0197】
<免疫反応性によるポリペプチドの定義>
興味のあるポリペプチドは、様々な新しいポリペプチド配列を備えているので、該ポリペプチドも、イムノアッセイなどにおいて認識されることができる新しい構造的特徴を備えている。そのようなポリペプチドとしては、例えば、本明細書記載の翻訳システムにおいて合成されたタンパク質の場合では、非天然アミノ酸を含んでいるポリペプチドであり、例えば本明細書に記載の新規シンテターゼの場合では、標準アミノ酸の新規配列を含んでいるポリペプチドである。上記本発明のポリペプチドと特異的に結合する抗体の作製、ならびにそのような抗体もしくは抗血清によって結合されるポリペプチドの作製は、本発明の特徴である。
【0198】
例えば本発明は、配列番号36−63および/または86の1つ以上から選択されるアミノ酸配列を含んでいる免疫原に対して作製された抗体または抗血清と特異的に結合するか、該抗体または抗血清に特異的な免疫反応性を有するシンテターゼタンパク質を含んでいる。他の相同体との交差反応性を除くために、利用可能な対照シンテターゼ相同体(野生型E. coliチロシルシンテタ−ゼ(TyrRS)(例えば配列番号2)など)で抗体もしくは抗血清をサブトラクトする(subtract)。
【0199】
典型的な1形式では、イムノアッセイにおいて、配列番号36−63および/または86の1つ以上と対応する配列、あるいはそれらに十分相同な配列(すなわち所定の全長配列の少なくとも約30%)の1つ以上を含んでいる1種以上のポリペプチドに対して製造されたポリクローナル抗血清が使用される。配列番号36−63および86に由来するポリペプチド免疫原として可能性のある組のことを、以下では「免疫原性ポリペプチド」として総称する。生じたポリクローナル抗血清は、対照シンテターゼ相同体に対して低い交差反応性を有するように選択される。さらに、ポリクローナル抗体をイムノアッセイにおいて使用する前に、そのような交差反応性は例えば1種以上の対照シンテターゼ相同体を使って、免疫吸着法を行うことによって除去される。
【0200】
イムノアッセイに使用するための抗血清を製造するために、免疫原性ポリペプチドの1種以上を、本明細書に記載されているようにして製造し、精製する。例えば、組み換えタンパク質を組み換え細胞内で製造してもよい。マウスの免疫に関する標準的なプロトコールに従って、近交系マウス(マウス同士が遺伝的に事実上同一であるため、より再現性のある結果が得られることから、このアッセイに使用される)を、標準のアジュバント(例えばフロイントアジュバントなど)と組み合わせた免疫原性タンパク質で免疫する。抗体の作製や、特異的な免疫反応性を決定するために使用することができる免疫アッセイの形式および条件の標準的な説明書としては、例えばHarlow and Lane (1988) Antibodies, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Publications, New York参照のこと。またさらに別の参考文献および抗体に関する検討書は本明細書に挙げられている。そのような文献をここに適用して、免疫反応性によりポリペプチドを定義/検出する抗体を作製してもよい。また他の方法としては、本明細書に開示の配列に由来する1種以上の合成または組み換えポリペプチドをキャリヤタンパク質に接合し、免疫源として使用する方法が挙げられる。
【0201】
ポリクローナル血清を回収され、イムノアッセイにおいて免疫原性ポリペプチドに対する力価を測定する。該イムノアッセイとしては、例えば1種以上の免疫原性タンパク質が固体支持体に固定される、固相イムノアッセイが挙げられる。力価が10
6以上のポリクローナル抗血清を選択し、プールし、そして対照シンテターゼポリペプチドでサブトラクトする。これによって、サブトラクトされ、プールされ、力価が測定されたポリクローナル抗血清を製造する。
【0202】
サブトラクトされ、プールされ、力価が測定されたポリクローナル抗血清を、比較イムノアッセイにおいて対照相同体に対する交差反応性について試験する。この比較イムノアッセイでは、力価が測定されたポリクローナル抗血清が免疫原性シンテターゼに結合したときに、対照シンテターゼ相同体に結合したときと比べて、少なくとも約5〜10倍高いシグナル対ノイズ比が得られる識別結合条件を、サブトラクトされ力価が測定されたポリクローナル抗血清に対して決定する。すなわち、結合/洗浄反応のストリンジェンシーを、非特異的競合剤(アルブミンまたは脱脂粉乳など)を加えることによって調整するか、塩条件および/または温度などを調整することによって調整する。これら結合/洗浄条件は、試験ポリペプチド(免疫原性ポリペプチドおよび/または対照ポリペプチドと比較されるポリペプチド)が、プールされサブトラクトされたポリクローナル抗血清によって特異的に結合されるか否かを決定するために行われるその後のアッセイに使用される。特に、上記識別結合条件において、試験ポリペプチドが、対照シンテターゼ相同体よりも少なくとも2〜5倍のシグナル対ノイズ比を示し、免疫原性ポリペプチドと比べて少なくとも約1/2のシグナル対ノイズ比を示した場合、該試験ポリペプチドは、公知のシンテターゼと比べて、免疫原性ポリペプチドと実質的に同様の構造を共有しているといえ、それ故本発明のポリペプチドであるといえる。
【0203】
もう1つ別の例を挙げると、試験ポリペプチドを検出するために、競合結合形式のイムノアッセイを使用する。例えば上述したように交差反応性抗体を、対照ポリペプチドを使った免疫吸着法によって、プールされた抗血清の混合物から除去する。それから免疫原性ポリペプチドを固体支持体に固定し、サブトラクトされプールされた抗血清に晒す。試験タンパク質をアッセイに加えると、上記プールされサブトラクトされた抗血清に結合するために競合する。固定されたタンパク質と比較された、プールされサブトラクトされた抗血清に結合するために競合する試験タンパク質の能力を、結合するために競合するアッセイに加えられた免疫原性ポリペプチドの能力と比較する(該免疫原性ポリペプチドは上記プールされた抗血清と結合するために、固定された免疫原性ポリペプチドと効果的に競合する)。試験タンパク質に関する交差反応性の百分率を、標準の計算を使用して計算する。
【0204】
並行アッセイでは、場合によっては、プールされサブストラクトされた抗血清に結合するために競合する対照タンパク質の能力を、上記抗血清に結合するために競合する免疫原性ポリペプチドの能力と比較して決定する。この場合も対照ポリペプチドに関する交差反応性の百分率を標準の計算を使用して計算する。試験ポリペプチドに関する交差反応性の百分率が、対照ポリペプチドに関する交差反応性の百分率の少なくとも5〜10倍高い場合、および/または試験ポリペプチドの結合が、免疫原性ポリペプチドの結合のほぼ範囲内である場合は、上記試験ポリペプチドは、プールされサブトラクトされた抗血清と特異的に結合するといえる。
【0205】
一般に、免疫吸着されプールされた抗血清を、本明細書に記載のような競合結合イムノアッセイに使用して、任意の試験ポリペプチドを免疫原性ポリペプチドおよび/または対照ポリペプチドと比較することができる。この比較をするために、免疫原性ポリペプチド、試験ポリペプチドおよび対照ポリペプチドをそれぞれ、様々な濃度でアッセイする。固定された対照タンパク質、試験タンパク質または免疫原性タンパク質などへのサブトラクトされた抗血清の結合を50%阻害するのに必要な各ポリペプチドの量を、標準的な技術を使って決定する。競合アッセイでの結合に必要とされる試験ポリペプチドの量が、必要とされる免疫原性ポリペプチドの量の2倍未満である場合、上記試験ポリペプチドの量が対照ポリペプチドよりも少なくとも約5〜10倍高ければ、試験ポリペプチドは、免疫原性タンパク質に対して作製された抗体に特異的に結合するといえる。
【0206】
特異性を決定する他の方法として、プールされた抗血清を場合によっては(対照ポリペプチドというよりは)免疫原性ポリペプチドに完全に免疫吸着させる。これを、得られる免疫原性ポリペプチドでサブトラクトされプールされた抗血清が、免疫吸着法に使用された免疫原性ポリペプチドに結合することが、ほとんどまたはまったく検出されなくなるまで行う。その後、この完全に免疫吸着された抗血清を試験ポリペプチドと反応するかどうか試験する。反応がほとんどまたは全く観察されない場合、すなわち完全に免疫吸着された抗血清が免疫原性ポリペプチドに結合するときに観察されるシグナル対ノイズ比の2倍以下である場合、試験ポリペプチドは免疫原性タンパク質によって誘発された抗血清により特異的に結合される。
【0207】
<薬学的組成物>
本発明のポリペプチドまたはタンパク質(例えばシンテターゼ、1種以上の非天然アミノ酸を含んでいるタンパク質など)は、例えば適切な薬学的担体と組み合わされて、治療的使用のために場合によっては用いられる。そのような組成物は、例えば治療効果のある量の上記化合物と、薬学的に許容可能な担体または賦形剤とを含んでいる。そのような担体または賦形剤には、特に限定されないが、生理食塩水、緩衝生理食塩水、デキストロース、水、グリセロール、エタノールおよび/またはそれらの組み合わせが含まれる。製剤は投与の様式に適合するように作製される。一般に、タンパク質を投与する方法は技術的に公知であり、該方法適用して、本発明のポリペプチドを投与することができる。
【0208】
本発明の1種以上のポリペプチドを含んでいる治療用組成物は場合によっては、技術的に公知の方法に従って、1つ以上の適切なインビトロおよび/またはインビボの疾患動物モデルにおいて試験されることにより、その有効性、組織代謝が確認され、また用量が見積もられる。特に用量は、天然アミノ酸相同体に対する本明細書に記載の非天然アミノ酸相同体の活性、安定性または他の適切な基準によって(例えば、天然アミノ酸のEPOに対する、1種以上の非天然アミノ酸を含むように修飾されたEPOの比較によって)、すなわち関連アッセイにおいて初めに決定されてもよい。
【0209】
投与は、分子を血液または組織細胞と最終的に接触させるために一般的に使用される経路の何れかを経由するものである。本発明の非天然アミノ酸ポリペプチドは、場合によっては1種以上の薬学的に許容可能な担体と一緒に、任意の適切な方法で投与される。本発明においては、上記ポリペプチドを患者に投与する方法は利用可能であり、2つ以上の経路を使用して特定の組成物を投与することができるが、多くの場合特定の経路は、別の経路よりも速く、効果的な作用または反応をもたらしてもよい。
【0210】
薬学的に許容可能な担体は、投与される特定の組成物によって部分的に決定されるだけでなく、該組成物を投与するために使用される特定の方法によっても部分的に決定される。したがって、本発明の薬学的組成物の適切な製剤は多種多様である。
【0211】
ポリペプチド組成物は、特に限定されないが、経口投与、静脈内投与、腹腔内投与、筋肉内投与、経皮投与、皮下投与、局所投与、舌下投与または直腸投与などを含む、多くの経路を介して投与されてもよい。また、非天然アミノ酸ポリペプチド組成物はリポソームを介して投与されてもよい。そのような投与経路および適切な製剤は当業者に公知である。
【0212】
非天然アミノ酸ポリペプチドは単独でまたは他の適切な成分と組み合わされて、吸入を経て投与されるエアロゾル製剤に製剤化されてもよい(すなわち、エアロゾル製剤は「噴霧」されることができるものである)。エアロゾル製剤は、ジクロロジフルオロメタン、プロパン、および窒素などの圧縮可能な噴射剤(pressurized acceptable propellant)に収められてもよい。
【0213】
非経口投与(例えば、(関節での)関節内投与、静脈投与、筋肉内投与、皮内投与、腹腔内投与、および皮下投与による非経口投与)に適した製剤は、水性および非水性の等張性無菌注入溶液、および水性および非水性の無菌懸濁液を含んでいる。当該等張性無菌注入溶液は、酸化防止剤、緩衝液、静菌薬、および製剤を製剤投与の対象者の血液と等張にする溶剤を含んでいてもよい。当該無菌懸濁液は、懸濁化剤、可溶化剤、増粘剤、安定化剤、および防腐剤を含んでいてもよい。パッケージ化された核酸製剤は、単回投与または多回投与の密閉した容器(例えばアンプルおよびバイル)の中に存在してもよい。
【0214】
非経口投与および静脈内投与は、好ましい投与方法である。特に、天然アミノ酸相同体治療法のために既に使用されている投与経路(例えばEPO、GCSF、GMCSF、IFN、インターロイキン、抗体、および/または他の薬学的に送達されるタンパク質のために使用される一般的な投与経路)や、現在使用されている製剤は、本発明の非天然アミノ酸を含んでいるタンパク質(例えば現在使用されている治療用タンパク質のペグ化バリアント)の好ましい投与経路および製剤である。
【0215】
本発明においては、患者に投与される用量は、適用に依存して、長期にわたって有益な治療反応が患者にもたらされるのに十分な量であり、例えば病原体による感染または他の適切な活動を阻止するのに十分な量である。用量は、特定の組成物/製剤の有効性、使用される非天然アミノ酸ポリペプチドの活性、安定性、または血清半減期、および患者の健康状態、ならびに、治療される患者の体重または表面積によって決定される。また、用量の大小は、特定の患者への特定の組成物/製剤などの投与に付随して起こる、いかなる有害な副作用の存在、性質および程度によっても決定される。
【0216】
病気(例えば癌、遺伝性疾患、糖尿病またはAIDSなど)の治療または予防の際に投与される組成物/製剤の有効量を決定するときに、医師は、血しょうの循環量、製剤の毒性、病気の進行度を評価し、および/または、関連性がある場合は、抗非天然アミノ酸ポリペプチド抗体の産生を評価する。
【0217】
例えば、70kgの患者に対して投与される用量は、一般的に、現在使用中の治療用タンパク質の用量と等しい範囲であるが、関連する組成物の活性または血清半減期の変化に応じて調節される。本発明の組成物/製剤は、従来のあらゆる公知治療(抗体投与、ワクチン投与、細胞毒性剤、天然アミノ酸ポリペプチド、核酸、ヌクレオチド類似体、および生物応答調節物質の投与などを含む)によって、治療条件を補うことができる。
【0218】
投与に関しては、本発明の製剤は、関連する製剤のLD−50によって決定づけられる比率、ならびに/または、患者の全体的健康状態および(例えば多数の患者に適用したときの)各種濃度での非天然アミノ酸のあらゆる副作用の観測によって決定づけられる比率(rate)で投与される。一回で投与されてもよいし、分割して投与されてもよい。
【0219】
製剤を投与されている患者が、発熱、悪寒、または筋肉痛の症状を訴える場合、この患者に、アスピリン、イブプロフェン、アセトアミノフェン、または他の痛み/熱を制御する薬物を適切な用量で投与する。発熱、筋肉痛、および悪寒などの製剤投与に対する反応を示す患者は、当該製剤を投与する30分前に、アスピリン、アセトアミノフェン、または例えばジフェニドラミンのいずれかを事前に投与される。メペリジンは、解熱剤および抗ヒスタミン剤と即座に反応しないより激しい悪寒および筋肉痛に対して使用される。治療は、反応の重症度に応じて遅くされたり、または中断されたりする。
【0220】
<核酸配列およびポリペプチド配列ならびにバリアント>
上記および下記において説明されているように、本発明は核酸のポリヌクレオチド配列およびポリペプチドのアミノ酸配列を提供する(例えばO−tRNAおよびO−RS、ならびに例えば上記配列を含んでいる組成物および方法)。例えば上記配列、例えばO−tRNAおよびO−RSの配列は、本明細書に開示されている(表5参照。例えば配列番号3−65、および配列番号1および2以外の配列である)。しかし、当業者の一人は、本発明は本明細書に開示の配列(実施例および表5など)に限定されないことを理解する。また当業者は、本発明が本明細書に記載の機能を有する(例えばO−tRNAまたはO−RSをコードしている)多くの関連配列や、さらに多くの非関連配列を提供することを理解する。
【0221】
また本発明はポリペプチド(O−RS)、およびポリヌクレオチド(例えばO−tRNA、O−RSをコードするポリヌクレオチド、またはそれらの一部(例えばシンテターゼの活性部位)、アミノアシル−tRNAシンテターゼの突然変異体のコンストラクトに使用されるオリゴヌクレオチドなど)を提供する。例えば本発明のポリペプチドは、(i)配列番号36−63および/または86の何れか1つに示されたようなアミノ酸配列を含んでいるポリペプチド、(ii)配列番号3−35の何れか1つに示されたようなポリヌクレオチドによってコードされたアミノ酸配列を含んでいるポリペプチド、ならびに(iii)配列番号36−63および/または86の何れか1つに示されたようなアミノ酸配列を含んでいるポリペプチド、あるいは配列番号3−35の何れか1つに示されたようなポリヌクレオチドによってコードされたアミノ酸配列を含んでいるポリペプチドに対して特異的な抗体と特異的に免疫反応するポリペプチドを含んでいる。
【0222】
本発明のポリペプチドには、天然発生型チロシルアミノアシル−tRNAシンテターゼ(TyrRS)(例えば配列番号2)のアミノ酸配列と、少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含んでいるとともに、グループA−Eの2つ以上のアミノ酸を含んでいるポリペプチドが、包含される。例えばグループAは、E. coliのTyrRSのTyr37に対応する位置に、バリン、イソロイシン、ロイシン、グリシン、セリン、アラニン、またはトレオニンを含んでいる。グループBは、E. coliのTyrRSのAsn126に対応する位置に、アスパラギン酸を含んでいる。グループCは、E. coliのTyrRSのAsp182に対応する位置に、トレオニン、セリン、アルギニン、アスパラギン、またはグリシンを含んでいる。グループDは、E. coliのTyrRSのPhe183に対応する位置に、メチオニン、アラニン、バリンまたはチロシンを含んでいる。グループEは、E. coliのTyrRSのLeu186に対応する位置に、セリン、メチオニン、バリン、システイン、トレオニン、またはアラニンを含んでいる。同様に、本発明のポリペプチドは、配列番号36−63および/または86の少なくとも20個の連続するアミノ酸を含んでいるとともに、上記で示されたような2つ以上のアミノ酸置換を含んでいるポリペプチドを包含する。また上記ポリペプチドの何れかの保存変異を含んでいるアミノ酸配列も、本発明のポリペプチドとして含まれる。
【0223】
1実施形態では、組成物は本発明のポリペプチドと賦形剤とを含んでいる。賦形剤としては、例えば緩衝液、水、および薬学的に許容可能な賦形剤などである。また本発明は、本発明のポリペプチドと特異的に免疫反応する抗体または抗血清を提供する。
【0224】
また本発明はポリヌクレオチドを提供する。本発明のポリヌクレオチドは、本発明の興味のあるポリペプチドまたはタンパク質をコードするポリヌクレオチド、あるいは1個以上のセレクターコドンを含んでいるポリヌクレオチド、本発明の興味のあるポリペプチドまたはタンパク質をコードし、1個以上のセレクターコドンを含んでいるポリヌクレオチドを含んでいる。例えば、興味のあるポリヌクレオチドは、例えば配列番号3−35、64−85の何れか1つに示されたようなヌクレオチド配列を含んでいるポリヌクレオチド、それらに相補的であるか、またはそれらのポリヌクレオチド配列をコードするポリヌクレオチド、ならびに/あるいは配列番号36−63および/もしくは86の何れか1つに示されたようなアミノ酸配列あるいはそれらの保存変異体を含んでいるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを包含する。また本発明のポリヌクレオチドは、本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを包含する。同様に、高ストリンジェントな条件下において、実質的に全長にわたって、上記ポリヌクレオチドとハイブリダイズする核酸も、本発明のポリヌクレオチドである。
【0225】
また本発明のポリヌクレオチドは、天然発生型のチロシルアミノアシル−tRNAシンテターゼ(TyrRS)(例えば配列番号2)のアミノ酸配列と、少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含んでおり、段落11に記載のグループA−Eの上記のような2つ以上突然変異を含んでいるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドも包含する。また本発明のポリヌクレオチドは、上記ポリヌクレオチドと少なくとも70%同一である(あるいは少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%、またはそれ以上同一である)ポリヌクレオチド、および/あるいは上記ポリヌクレオチドの何れかの保存変異体を含んでいるポリヌクレオチドも包含する。
【0226】
ある実施形態では、ベクター(例えばプラスミド、コスミド、ファージ、およびウイルスなど)は本発明のポリヌクレオチドを含んでいる。1実施形態では、該ベクターは発現ベクターである。もう1つ別の実施形態では、上記発現ベクターは本発明のポリヌクレオチドの1種以上に作動可能に連結されたプロモーターを含んでいる。もう1つ別の実施形態では、細胞は、本発明のポリヌクレオチドを含んでいるベクターを含んでいる。
【0227】
また当業者は、開示された配列の多くのバリアントが本発明に含まれることを理解する。例えば、機能的に同一配列を有する開示された配列の保存変異体が本発明に含まれる。核酸のポリヌクレオチド配列のバリアントであって、少なくとも1種の開示された配列とハイブリダイズするバリアントは、本発明に含まれるとみなされる。標準的な配列比較技術などによって決定されるような、本明細書に開示された配列のユニークなサブ配列も本発明に含まれる。
【0228】
<保存変異体(conservative variation)>
遺伝暗号の縮重により、「サイレント置換」(即ちコードされるポリペプチドに変化を生じない核酸配列の置換)は、アミノ酸をコードする全核酸配列の暗黙の特徴である。同様に、「保存アミノ酸置換」は、アミノ酸配列中の1または数個のアミノ酸が、高度に類似する特性を有する別のアミノ酸で置換されるものであり、このような置換がなされた置換体も開示されたコンストラクトと高度に類似することが容易に認められる。各開示された配列のこのような保存変異体は本発明の特徴である。
【0229】
特定核酸配列の「保存変異体体」は、同一または本質的に同一のアミノ酸配列をコードする核酸を意味し、核酸がアミノ酸配列をコードしない場合には本質的に同一の配列を意味する。当業者に自明の通り、コードされた配列中の1個のアミノ酸または数%(一般に5%未満、より一般には4%未満、2%未満または1%未満)のアミノ酸を、変更、付加、または欠失する個々の置換、欠失、または付加は、そのような変更が、化学的に類似のアミノ酸によるアミノ酸の置換、アミノ酸の付加、またはアミノ酸の欠失になるとき、「保存修飾変異」である。従って、本発明の記載されたポリペプチド配列の「保存変異」には、ポリペプチド配列のアミノ酸の数%、一般に5%未満、より一般には2%未満または1%未満が、同一保存置換グループの保存的に選択されたアミノ酸で置換される場合が挙げられる。最後に、非機能的配列の付加のように核酸分子のコードされた活性を変えない配列の付加も、基本核酸の保存変異である。
【0230】
機能的に類似するアミノ酸を示す保存置換表は技術的に公知である。天然アミノ酸を含む代表的グループを以下に示すが、これらのグループ内の置換は「保存置換」である。
【0232】
<核酸のハイブリダイゼーション>
本発明の核酸の保存変異を含む本発明の核酸を同定するためには、比較ハイブリダイゼーションを使用することができ、この比較ハイブリダイゼーション法は本発明の核酸を識別する好ましい方法である。さらに、高、超高および超々高ストリンジェンシー条件下で配列番号3−35、64−85の配列により表される核酸とハイブリダイズする標的核酸も本発明の特徴である。このような核酸には例えば、所定の核酸配列と比較して1または数個の、サイレントもしくは保存核酸置換を有する核酸が含まれる。
【0233】
試験核酸がプローブ核酸と特異的にハイブリダイズするとは、試験核酸が、完全にマッチする相補的な標的と比べて少なくとも1/2の割合でプローブ核酸とハイブリダイズすること、即ち、以下の条件においてプローブが標的とハイブリダイズしたときの少なくとも1/2のシグナル対ノイズ比で、試験核酸がプローブ核酸とハイブリダイズすることをいう。完全にマッチするプローブ核酸がマッチしない標的核酸の何れかとハイブリダイズするときに観測されるシグナル対ノイズ比の少なくとも約5倍〜10倍で、該完全にマッチするプローブ核酸が完全にマッチする相補的な標的と結合するという条件。
【0234】
核酸は一般に溶液中で会合するときに「ハイブリダイズ」する。核酸は水素結合、溶媒排除、および塩基スタッキングなどの種々の十分に特徴づけられた物理化学的力によりハイブリダイズする。核酸ハイブリダイゼーションの詳しい手引きは、Tijssen (1993) Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology--Hybridization with Nucleic Acid Probes part I chapter 2, "Overview of principles of hybridization and the strategy of nucleic acid probe assays," (Elsevier, New York),および上記Ausubelに記載されている。またHames and Higgins (1995) Gene Probes 1 IRL Press at Oxford University Press, Oxford, England, (Hames and Higgins 1)、およびHames and Higgins (1995) Gene Probes 2 IRL Press at Oxford University Press, Oxford, England (Hames and Higgins 2)には、オリゴヌクレオチドを含むDNAおよびRNAの合成、標識、検出および定量が詳細に記載されている。
【0235】
サザンブロットまたはノーザンブロットにおいて100個を上回る相補的残基を有する相補的核酸のハイブリダイゼーションをフィルター上で行うためのストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の1例は、ヘパリン1mgが加えられた50%ホルマリンを使って、42℃で一晩ハイブリダイゼーションを実施することである。ストリンジェントな洗浄条件の1例は、65℃、0.2×SSCで15分間洗浄することである(SSC緩衝液の説明についてはSambrook、前出参照)。多くの場合には、高ストリンジェンシー洗浄の前に低ストリンジェンシー洗浄を実施してバックグラウンドのプローブシグナルを除去する。低ストリンジェンシー洗浄の1例は40℃、2×SSCで15分間洗浄することである。一般に、シグナル対ノイズ比が、特定ハイブリダイゼーションアッセイで無関係なプローブ対して観測される比の5倍(以上)である場合に、特異的なハイブリダイゼーションが検出されたとみなす。
【0236】
サザンハイブリダイゼーションおよびノーザンハイブリダイゼーションなどの核酸ハイブリダイゼーション実験において、「ストリンジェントなハイブリダイゼーション洗浄条件」は配列に依存性し、各種環境パラメーターにより異なる。核酸ハイブリダイゼーションの詳しい手引きは、Tijssen(1993)前出や、Hames and Higgins1および2に記載されている。ストリンジェントなハイブリダイゼーションおよび洗浄条件は、任意の試験核酸について経験的に容易に決定することができる。例えば、高ストリンジェントなハイブリダイゼーションおよび洗浄条件を決定するには、一連の選択基準に合致するまで、(例えばハイブリダイゼーションまたは洗浄の際の温度上昇、塩濃度低下、界面活性剤濃度増加および/またはホルマリンなどの有機溶媒濃度増加により)ハイブリダイゼーションおよび洗浄条件を徐々に厳しくする。例えば、プローブがマッチしない標的とハイブリダイズするときに観測されるシグナル対ノイズ比の少なくとも約5倍で、プローブが完全にマッチする相補的ターゲットと結合するまで、ハイブリダイゼーション及び洗浄条件を徐々に厳しくする。
【0237】
「非常にストリンジェントな」条件は、特定プローブの熱融点(T
m)に等しくなるように選択される。T
mは(規定イオン強度およびpH下で)試験配列の50%が完全にマッチするプローブとハイブリダイズする温度である。本発明の目的には一般に、規定イオン強度およびpHで特定配列のT
mよりも約5℃低くなるように、「高ストリンジェントな」ハイブリダイゼーション及び洗浄条件を選択する。
【0238】
「超高ストリンジェンシー」ハイブリダイゼーションおよび洗浄条件は、プローブが完全にマッチする相補的な標的核酸と結合するときに観測されるシグナル対ノイズ比が、該プローブがマッチしない標的核酸の何れかとハイブリダイズするときに観測されるシグナル対ノイズ比の少なくとも10倍になるまで、ハイブリダイゼーション及び洗浄条件のストリンジェンシーが厳しくされている条件である。完全にマッチする相補的な標的核酸のシグナル対ノイズ比の少なくとも1/2で、上記条件下において標的核酸がプローブとハイブリダイズする場合に、標的核酸は超高ストリンジェンシー条件下においてプローブと結合すると言う。
【0239】
同様に、関連するハイブリダイゼーションアッセイのハイブリダイゼーションおよび/ または洗浄条件を徐々に厳しくすることにより、さらに高いレベルのストリンジェンシーを決定することができる。例えば、プローブが完全にマッチする相補的な標的核酸と結合するときのシグナル対ノイズ比が、マッチしない標的核酸の何れかとハイブリダイゼーションするときに観測されるシグナル対ノイズ比の少なくとも10倍、20倍、50倍、100倍または500倍以上になるまで、ハイブリダイゼーションおよび洗浄条件のストリンジェンシーを厳しくする条件が挙げられる。完全にマッチする相補的な標的核酸のシグナル対ノイズ比の少なくとも1/2で、上記条件下において標的核酸がプローブとハイブリダイズする場合に、標的核酸は超々高ストリンジェンシー条件下においてプローブと結合すると言う。
【0240】
ストリンジェントな条件下において互いにハイブリダイズしない核酸でも、これらの核酸によりコードされるポリペプチドが実質的に同一である場合には、実質的に同一である。これは、例えば遺伝暗号に許容される最大コドン縮重を使用して、核酸のコピーを作製する場合に該当する。
【0241】
<ユニークサブ配列>
1態様では、本発明は本明細書に開示のO−tRNAおよびO−RSの配列から選択される核酸中に、ユニークサブ配列を含んでいる核酸を提供する。ユニークサブ配列は、公知のあらゆるO−tRNAおよびO−RSの核酸配列に対応する核酸と比較べてユニークである。例えばデフォルトパラメーターに設定されたBLASTを使用して、アラインメントを実施することができる。任意のユニークサブ配列は、例えば本発明の核酸を同定するためのプローブとして有用である。
【0242】
同様に、本発明は本明細書に開示のO−RSの配列から選択されるポリペプチド中に、ユニークサブ配列を含んでいるポリペプチドを包含する。この場合には、ユニークサブ配列は公知のあらゆるポリペプチド配列に対応するポリペプチドと比べてユニークである。
【0243】
また本発明は、O−RSの配列から選択されるポリペプチド中のユニークサブ配列をコードするユニークコーディングオリゴヌクレオチドと、ストリンジェントな条件下においてハイブリダイズする標的核酸も提供する。該ユニークサブ配列は、対照ポリペプチド(例えば本発明のシンテターゼを例えば突然変異により誘導した元の親配列)の何れかに対応するポリペプチドと比べてユニークである。ユニーク配列は上記のように決定する。
【0244】
<配列比較、同一性、および相同性>
2種以上の核酸またはポリペプチド配列に関して、用語「同一性」または「同一性」百分率は、2種以上の配列またはサブ配列を最大限に対応するように対比および整列させ、以下に記載する配列比較アルゴリズム(または当業者に利用可能な他のアルゴリズム)の1種を使用して測定するか、または目視により検査して測定した場合に、上記2種以上の配列またはサブ配列が同じであるか、あるいは同じであるアミノ酸残基もしくはヌクレオチドの特定の百分率のことをいう。
【0245】
2種以上の核酸またはポリペプチド(例えばO−tRNAもしくはO−RSをコードするDNA、またはO−RSのアミノ酸配列)に関して、語句「実質的に同一」は、2種以上の配列またはサブ配列を最大限に対応するように対比および整列させ、配列比較アルゴリズムを使用して測定するかまたは目視により検査して測定した場合に、ヌクレオチドまたはアミノ酸残基の同一性が少なくとも約60%、好ましくは80%、より好ましくは90〜95%であることをいう。このような「実質的に同一」な配列は、一般に実際の祖先に関係なく「相同」であるとみなされる。少なくとも約50残基長の配列の領域、より好ましくは少なくとも約100残基長の領域にわたって「実質的に同一」であることが好ましく、少なくとも約150残基または比較する2配列の全長にわたって配列が実質的に同一であることが最も好ましい。
【0246】
配列比較および相同性の決定をする際には、一般に一方の配列を参照配列として、これと試験配列を比較する。配列比較アルゴリズムを使用する場合には、試験配列と参照配列とをコンピューターに入力し、必要に応じてサブ配列を調整し、配列アルゴリズムプログラムパラメーターを指定する。その後、配列比較アルゴリズムは指定されたプログラムパラメーターに基づいて参照配列に対する試験配列の配列同一性の百分率を計算する。
【0247】
比較のための最適な配列アラインメントは、例えばSmith & Waterman, Adv. Appl. Math. 2:482 (1981)の局所相同性アルゴリズム、Needleman & Wunsch, J. Mol. Biol. 48:443 (1970)の相同性アラインメントアルゴリズム、Pearson & Lipman, Proc. Nat'l. Acad. Sci. USA 85:2444 (1988)の類似性探索法、これらのアルゴリズムのコンピューターソフトウェア(computerized implementation)、(Wisconsin Genetics Software Package, Genetics Computer Group, 575 Science Dr., Madison, WIのGAP、BESTFIT、FASTA、およびTFASTA)、または目視(一般にAusubelら、後出参照)により実施することができる。
【0248】
配列同一性および配列類似度の百分率を決定するのに適したアルゴリズムの1例は、Altschulら, J. Mol. Biol. 215:403-410 (1990)に記載されているBLASTアルゴリズムである。BLAST分析を実施するためのソフトウェアは、全米バイオテクノロジー情報センター(National Center for Biotechnology Information)(www.ncbi.nlm.nih.gov/)から公的に利用可能である。このアルゴリズムは、データベース配列中の同一長さの単語と整列した場合に、所定の正の閾値スコアTと一致するかまたはこれを満足するクエリー配列中の長さWの短い単語を識別することにより、まず高スコア配列対(HSP)を識別する。Tを隣接単語スコア閾値と言う(上記Altschulら)。当該初期隣接単語のヒットをシードとして検索を開始し、該単語を含むもっと長いHSPを探索する。次に、累積アラインメントスコアを増加できる限り、単語ヒットを各配列に沿って両方向に延長する。ヌクレオチド配列の場合には、パラメーターM(1対のマッチ残基に対するリウォードスコア、常に>0)、およびN(ミスマッチ残基対するペナルティースコア、常に<0)を使用して累積スコアを計算する。アミノ酸配列の場合には、スコアリングマトリクスを使用して累積スコアを計算する。累積アラインメントスコアがその最大到達値から量Xだけ低下するか、累積スコアが1カ所以上の負スコア残基アラインメントの累積によりゼロ以下になるか、またはどちらかの配列の末端に達したら、各方向の単語ヒットの延長を停止する。BLASTアルゴリズムパラメーターのW、TおよびXはアラインメントの感度および速度を決定する。ヌクレオチド配列用のBLASTNプログラムは、語長(W)11、期待値(E)10、カットオフ100、M=5、N=−4、および両鎖の比較をデフォルトとして使用する。アミノ酸配列用のBLASTPプログラムは、語長(W)3、期待値(E)10、及びBLOSUM62スコアリングマトリクスをデフォルトとして使用する(Henikoff (1989) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:10915参照)。
【0249】
配列同一性の百分率の計算に加え、BLASTアルゴリズムは2配列間の類似性の統計分析も実施する(例えばKarlin & Altschul, Proc. Nat'l. Acad. Sci. USA 90:5873-5787 (1993)参照)。BLASTアルゴリズムにより提供される類似性の尺度の1つは、2種のヌクレオチドまたはアミノ酸の配列間に偶然にマッチが起こる確率を示す最小合計確率(P(N))である。例えば、試験核酸を参照核酸と比較した場合の最小合計確率が約0.1未満、より好ましくは約0.01未満、最も好ましくは約0.001未満である場合に、核酸は参照核酸に類似しているとみなす。
【0250】
<突然変異誘発法および他の分子生物学技術>
分子生物学的技術が記載されている一般教科書としては、Berger and Kimmel, Guide to Molecular Cloning Techniques, Methods in Enzymology volume 152 Academic Press, Inc., San Diego, CA (Berger); Sambrookら, Molecular Cloning - A Laboratory Manual (2nd Ed.), Vol. 1-3, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, New York, 1989 ("Sambrook")、およびCurrent Protocols in Molecular Biology, F.M. Ausubelら, eds., Current Protocols, a joint venture between Greene Publishing Associates, Inc. and John Wiley & Sons, Inc., (supplemented through 1999) ("Ausubel")が挙げられる。これらの教科書には、例えば非天然アミノ酸、直交化tRNA、直交化シンテターゼおよびその対を含む、タンパク質を生産するためのセレクターコドンを含んでいる遺伝子の作製に関連する、突然変異誘発法、ベクターの使用、プラスミドおよびラムダファージに関するDNA調製、プロモーターならびに他の多くの関連事項が記載されている。
【0251】
例えばtRNAのライブラリーを作製するため、シンテターゼのライブラリーを作製するため、非天然アミノ酸をコードするセレクターコドンを興味のあるポリペプチドまたはタンパク質に挿入するために、本発明では各種突然変異誘発法を使用する。そのような突然変異誘発法には、特に限定されないが、部位特異的、ランダム点突然変異誘発法、相同組換え、DNAシャフリングまたは他の帰納的突然変異誘発法、キメラコンストラクション、ウラシル含有鋳型を使用する突然変異誘発法、オリゴヌクレオチド特異的突然変異誘発法、ホスホロチオエート修飾DNA突然変異誘発法、またはギャップデュプレクスDNAを使用する突然変異誘発法など、あるいはそれらのあらゆる組み合わせが含まれる。他の適切な方法には、点ミスマッチ修復、修復欠損宿主株を使用する突然変異誘発法、制限−選択および制限−精製、欠失突然変異誘発法、完全遺伝子合成による突然変異誘発法、および二本鎖切断修復などが含まれる。例えばキメラコンストラクションを伴う突然変異誘発法も本発明に含まれる。1実施形態では、天然発生型分子、または改変もしくは突然変異させた天然発生型分子の公知情報(例えば配列、配列比較、物理学的特性、または結晶構造など)に基づいて、突然変異誘発法を行うことができる。
【0252】
本明細書に記載の上記教科書および例には、これらの手法が記載されている。また他の情報は、以下の刊行物およびそこで引用されている参考文献に記載されている。Lingら, Approaches to DNA mutagenesis: an overview, Anal Biochem. 254(2): 157-178 (1997); Daleら, Oligonucleotide-directed random mutagenesis using the phosphorothioate method, Methods Mol. Biol. 57:369-374 (1996); Smith, In vitro mutagenesis, Ann. Rev. Genet. 19:423-462(1985); Botstein & Shortle, Strategies and applications of in vitro mutagenesis, Science 229:1193-1201(1985); Carter, Site-directed mutagenesis, Biochem. J. 237:1-7 (1986); Kunkel, The efficiency of oligonucleotide directed mutagenesis, in Nucleic Acids & Molecular Biology (Eckstein, F. and Lilley, D.M.J. eds., Springer Verlag, Berlin)) (1987); Kunkel, Rapid and efficient site-specific mutagenesis without phenotypic selection, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82:488-492 (1985); Kunkelら, Rapid and efficient site-specific mutagenesis without phenotypic selection, Methods in Enzymol. 154, 367-382 (1987); Bassら, Mutant Trp repressors with new DNA-binding specificities, Science 242:240-245 (1988); Methods in Enzymol. 100: 468-500 (1983); Methods in Enzymol. 154: 329-350 (1987); Zoller & Smith, Oligonucleotide-directed mutagenesis using M13-derived vectors: an efficient and general procedure for the production of point mutations in any DNA fragment, Nucleic Acids Res. 10:6487-6500 (1982); Zoller & Smith, Oligonucleotide-directed mutagenesis of DNA fragments cloned into M13 vectors, Methods in Enzymol. 100:468-500 (1983); Zoller & Smith, Oligonucleotide-directed mutagenesis: a simple method using two oligonucleotide primers and a single-stranded DNA template, Methods in Enzymol. 154:329-350 (1987); Taylorら, The use of phosphorothioate-modified DNA in restriction enzyme reactions to prepare nicked DNA, Nucl. Acids Res. 13: 8749-8764 (1985); Taylorら, The rapid generation of oligonucleotide-directed mutations at high frequency using phosphorothioate-modified DNA, Nucl. Acids Res. 13: 8765-8787 (1985); Nakamaye & Eckstein, Inhibition of restriction endonuclease Nci I cleavage by phosphorothioate groups and its application to oligonucleotide-directed mutagenesis, Nucl. Acids Res. 14: 9679-9698 (1986); Sayersら, Y-T Exonucleases in phosphorothioate-based oligonucleotide-directed mutagenesis, Nucl. Acids Res. 16:791-802 (1988); Sayersら, Strand specific cleavage of phosphorothioate-containing DNA by reaction with restriction endonucleases in the presence of ethidium bromide, (1988) Nucl. Acids Res. 16: 803-814; Kramerら, The gapped duplex DNA approach to oligonucleotide-directed mutation construction, Nucl. Acids Res. 12: 9441-9456 (1984); Kramer & Fritz Oligonucleotide-directed construction of mutations via gapped duplex DNA, Methods in Enzymol. 154:350-367 (1987); Kramerら, Improved enzymatic in vitro reactions in the gapped duplex DNA approach to oligonucleotide-directed construction of mutations, Nucl. Acids Res. 16: 7207 (1988); Fritzら, Oligonucleotide-directed construction of mutations: a gapped duplex DNA procedure without enzymatic reactions in vitro, Nucl. Acids Res. 16: 6987-6999 (1988); Kramerら, Point Mismatch Repair, Cell 38:879-887 (1984); Carterら, Improved oligonucleotide site-directed mutagenesis using M13 vectors, Nucl. Acids Res. 13: 4431-4443 (1985); Carter, Improved oligonucleotide-directed mutagenesis using M13 vectors, Methods in Enzymol. 154: 382-403 (1987); Eghtedarzadeh & Henikoff, Use of oligonucleotides to generate large deletions, Nucl. Acids Res. 14: 5115 (1986); Wellsら, Importance of hydrogen-bond formation in stabilizing the transition state of subtilisin, Phil. Trans. R. Soc. Lond. A 317: 415-423 (1986); Nambiarら, Total synthesis and cloning of a gene coding for the ribonuclease S protein, Science 223: 1299-1301 (1984); Sakamar and Khorana, Total synthesis and expression of a gene for the a-subunit of bovine rod outer segment guanine nucleotide-binding protein (transducin), Nucl. Acids Res. 14: 6361-6372 (1988); Wellsら, Cassette mutagenesis: an efficient method for generation of multiple mutations at defined sites, Gene 34:315-323 (1985); Grundstroemら, Oligonucleotide-directed mutagenesis by microscale 'shot-gun' gene synthesis, Nucl. Acids Res. 13: 3305-3316 (1985); Mandecki, Oligonucleotide-directed double-strand break repair in plasmids of Escherichia coli: a method for site-specific mutagenesis, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 83:7177-7181 (1986); Arnold, Protein engineering for unusual environments, Current Opinion in Biotechnology 4:450-455 (1993); Sieberら, Nature Biotechnology, 19:456-460 (2001). W. P. C. Stemmer, Nature 370, 389-91 (1994);および, I. A. Lorimer, I. Pastan, Nucleic Acids Res. 23, 3067-8 (1995)。上記方法の多くに関する他の詳細は、Methods in Enzymology Volume 154に記載されており、またその文献には種々の突然変異誘発法に関するトラブルシューティング問題に対する有用な対処法も記載されている。
【0253】
また本発明は、直交化tRNA/RS対によって非天然アミノ酸をインビボで組み込むための、脊椎動物宿主細胞および生物に関する。本発明のポリヌクレオチドまたは本発明のポリヌクレオチドを含んでいるコンストラクトを使用して、宿主細胞は遺伝操作される(例えばトランスフォームされる、形質導入される、またはトランスフェクションされる)。上記コンストラクトとしては、例えば本発明のベクターが挙げられ、さらに該ベクターは、例えばクローニングベクターであってもよいし、発現ベクターであってもよい。上記ベクターは、例えばプラスミド、細菌、ウイルス、裸のポリヌクレオチド、または複合ポリヌクレオチドの形態であってもよい。ベクターは、エレクトロポレーション(Fromら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82, 5824 (1985))、ウイルスベクターによる感染、核酸を小ビーズもしくは粒子のマトリックスに埋込むか又は表面に付着させて小粒子形態で高速射入する方法(Kleinら, Nature 327, 70-73 (1987))を含む、標準的な方法により、細胞および/または微生物に導入される。
【0254】
スクリーニング工程、プロモーターを活性化する工程、または形質転換体を選択する工程などの活動に適切なように修飾された従来の栄養培地にて、操作された宿主細胞を培養してもよい。上記細胞を場合によってはトランスジェニック生物中で培養してもよい。(例えばその後に核酸を単離するための)細胞の単離および培養などに関する他の有用な参考文献としては、Freshney (1994) Culture of Animal Cells, a Manual of Basic Technique, third edition, Wiley- Liss, New York、およびそこで引用されている参考文献; Payneら(1992) Plant Cell and Tissue Culture in Liquid Systems John Wiley & Sons, Inc. New York, NY; Gamborg and Phillips (eds) (1995) Plant Cell, Tissue and Organ Culture; Fundamental Methods Springer Lab Manual, Springer-Verlag (Berlin Heidelberg New York)、およびAtlas and Parks (eds) The Handbook of Microbiological Media (1993) CRC Press, Boca Raton, FLが挙げられる。
【0255】
また本発明は、直交化tRNA/RS対によって非天然アミノ酸を組み込むことができる脊椎動物細胞株に関する。本発明のポリヌクレオチドまたは本発明のポリヌクレオチドを含んでいるコンストラクトで形質転換、形質導入、またはトランスフェクションされた宿主細胞に、技術的に公知の細胞培養技術を使用して上記細胞株を樹立してもよい。外来核酸を宿主細胞に導入する方法は技術的に公知であり、使用する宿主細胞によって変更することができる。そのような技術としては、例えば特に限定されないが、デキストランの媒介によるトランスフェクション、リン酸カルシウム沈殿、塩化カルシウム処理、ポリブレンの媒介によるトランスフェクション、プロトプラスト融合、エレクトロポレーション、ウイルスまたはファージの感染、リポソームへのポリヌクレオチドの封入、および直接マイクロインジェクションが挙げられる。
【0256】
DNAを一過性にまたは安定に組み込むことができるように、細胞を形質転換またはトランスフェクションしてもよい。長期にわたって組み換えタンパク質が高収量で製造されるため、安定発現が好ましい。例えば、抗体分子を安定に発現する細胞株を設計していもよい。ウイルス起源の複製を含む発現ベクターを使用するというよりは、選択可能なマーカーおよび適切な発現制御エレメント(例えばプロモーター、エンハンサー、配列、転写ターミネーター、およびポリアデニル化部位など)によって制御されるDNAで宿主細胞を形質転換してもよい。外来DNAの導入後に、操作された細胞を、1〜2日栄養強化倍地にて増殖させて、それから選択培地に変更してもよい。組み換えプラスミド内の選択可能なマーカーによって選択に対する耐性が与えられ、細胞は該プラスミドをクロモソームに安定に組み込むことができ、増殖してコロニー(foci)を形成する。このコロニーを順にクローン化し、細胞株に展開することができる。抗体分子を発現する細胞株を操作するために、この方法を有利に使用してもよい。このような操作された細胞株は、抗体分子と直接的にまたは間接的に相互作用する化合物をスクリーニングおよび評価するときに特に有用である可能性がある。代わりに、所定のウイルスの媒介によるベクターをトランスフェクションする技術などの当業者に公知の他の技術を使用することにより、細胞の一過性トランスフェクションが可能になる。
【0257】
標的核酸を細胞に導入するいくつかの公知方法は利用可能であり、それらの何れかを本発明に使用することができる。そのような公知方法としては例えば、DNAを含んでいる細菌のプロトプラストと受容細胞との融合、エレクトロポレーション、プロジェクタイルボンバードメント、およびウイルスベクターによる感染(以下でさらに検討する)などが挙げられる。本発明のDNAコンストラクトを含んでいるプラスミドの数を増幅するために、細菌細胞を使用してもよい。細菌を対数期まで増殖させ、それから細菌内のプラスミドを技術的に公知の様々な方法を使って単離してもよい(例えばSambrook参照)。また細菌からプラスミドを精製するための多くのキットが市販されている(例えばEasyPrep(登録商標)、FlexiPrep(登録商標)(両方ともPharmacia Biotechから販売されている);StrataClean(登録商標)(Stratageneから販売されている);およびQIAprep(登録商標)(Qiagenから販売されている))。その後、単離および精製したプラスミドをさらに操作して、細胞にトランスフェクションするために使用するか、または生物に感染させるための関連ベクターに組み込むための他のプラスミドを製造する。典型的なベクターは、転写ターミネーター、翻訳ターミネーター、転写開始配列、翻訳開始配列および特定の標的核酸の発現調節に有用なプロモーターを含んでいる。ベクターは場合により包括的発現カセットを含んでいる。包括的発現カセットは、(i)少なくとも1個の独立したターミネーター配列、(ii)真核生物または原核生物、あるいはまたは両方(例えばシャトルベクター)において該カセットの複製を可能にする配列、および(iii)原核系と脊椎動物系の両者の選択マーカーを含んでいる。ベクターは原核生物もしくは真核生物、または好ましくは両方での複製および組込みに適している。Giliman & Smith, Gene 8:81 (1979); Robertsら, Nature, 328:731 (1987); Schneider, B.ら, Protein Expr. Purif. 6435:10 (1995); Ausubel, Sambrook, Berger(いずれも前出)参照。クローニングに有用な細菌とバクテリオファージのカタログは、例えばATCCから入手でき、例えばATCCから刊行されたThe ATCC Catalogue of Bacteria and Bacteriophage (1992) Ghernaら(eds)が挙げられる。またその他のシーケンシング、クローニング及び分子生物学の他の側面の基本手順と基礎理論事項は、Watsonら(1992) Recombinant DNA Second Edition Scientific American Books, NYに記載されている。さらに、例えばMidland Certified Reagent Company(Midland, TX mcrc.com)、The Great American Gene Company(Ramona, CA(ワールドワイドウェブのgenco.com参照))、ExpressGen Inc.(Chicago, IL(ワールドワイドウェブのexpressgen.com参照))、Operon Technologies Inc.(Alameda, CA)などの多数の各種販売会社から、ほとんどあらゆる核酸(および標準または標準外を問わずほとんどあらゆる標識核酸)を、オーダーメードまたは標準注文することができる。
【0258】
<キット>
キットも本発明の特徴である。例えば細胞内おいて少なくとも1種の非天然アミノ酸を含んでいるタンパク質を製造するためのキットが提供される。該キットは、O−tRNAをコードするポリヌクレオチド、および/またはO−tRNA、および/またはO−RSをコードするポリヌクレオチド、および/またはO−RSを含んでいる容器を包含している。1実施形態では、上記キットは1種以上の非天然アミノ酸をさらに包含している。もう1つ別の実施形態では、上記キットはタンパク質を製造するための使用説明書をさらに包含している。
【実施例】
【0259】
以下の実施例は説明のために記載されているが、請求された本発明を限定するものではない。当業者は、請求された発明の範囲から逸脱することなく、重要ではない種々のパラメーターを変更してもよいということを認識する。
【0260】
〔実施例1:脊椎動物細胞内おいて非天然アミノ酸を組み込むアミノアシル−tRNAシンテターゼを製造する方法、およびの該シンテターゼの組成物〕
新規物理学的、化学的または生物学的特性を有する非天然アミノ酸を含むように、脊椎動物細胞の遺伝暗号を拡張することによって、該脊椎動物細胞内のタンパク質の機能を分析および制御するための強力な手段が得られるであろう。この目的を達成するために、Saccharomyces cerevisiae(S. cerevisiae)内おいて、アンバーコドンに応じて非天然アミノ酸をタンパク質に高い忠実度で組み込むアミノアシル−tRNAシンテターゼを単離するための一般的なアプローチを記載する。その方法は、GAL4のDNA結合ドメインと転写活性化ドメインとの間でアンバーコドンを抑圧することによって、GAL4応答性レポーター遺伝子、HIS3、URA3またはLacZを活性化することに基づいている。Escherichia coliの活性型チロシル−tRNAシンテターゼ(EcTyrRS)バリアントをポジティブ選択するためのGAL4レポーターの最適化を記載する。また、増殖培地に「有毒アレル」として低分子(5−フルオロオロト酸(5−FOA))を加え、URA3レポーターを使って、不活性型EcTyrRSバリアントをネガティブ選択することも開発された。重要なことは、ポジティブ選択およびネガティブ選択を単一細胞にて、所定の範囲のストリンジェンシーで実施できることである。これにより、突然変異シンテターゼの巨大なライブラリーから、各種活性型アミノアシル−tRNAシンテターゼ(aaRS)を容易に単離することできる。所望のaaRS表現型を単離するための方法の威力は、モデル選択によって実証されている。
【0261】
〔実施例2:哺乳類細胞内におけるE. coli Tyr tRNAの転写〕
E. coli Tyr−RSに基づくペプチドライブラリーの、酵母に基づく遺伝学的選択が開発されたことで、真核細胞内においてタンパク質に非天然アミノ酸を選択的に組み込むことができるシンテターゼの突然変異体を単離できるようになった。酵母細胞と哺乳類細胞との間の相同性を考慮すれば、上記シンテターゼの突然変異体は哺乳類細胞内において非天然アミノ酸抑圧を支援すると予想される。Yokoyamaらは最初にこのことを達成しようとしたが、哺乳類細胞内におけるE. coli Tyr tRNAの転写に関する問題に直面した。真核細胞のtRNAの転写は、AボックスおよびBボックスと呼ばれるプロモーターによって誘導される。これらプロモーターは、tRNA配列自体に内蔵されている。AボックスおよびBボックスの他の例は、Geiduschek, (1988), Transcription By RNA Polymerase III, Ann. Rev. Biochem. 57:873-914に記載されている(参照することによって本明細書に組み込まれる)。Yokoyamaは、tRNAのAボックス配列を操作し、インビボで転写できるようにしようとしたが、対応するアンバー抑圧産物は検出されなかった。
【0262】
本実施例では、2種の代替的なpol III転写スキームを使用することによって、アンバー抑圧E. coli tRNA
Tyrの転写を成功させた。第1スキームでは、適切な5’および3’フランキング配列を有する哺乳類tRNA遺伝子(ヒトtRNA
Tyr)の3’末端に、アンバー抑圧E. coli tRNA
Try突然変異体を融合した。これら2つのtRNAの間には、pol IIIターミネーターを配置しなかった。先頭の哺乳類tRNAは、“タイプII pol IIIリーダープロモーター(TIILP)”として機能し、pol IIIの転写を開始させる。このpol IIIの転写は、アンバー抑圧E. coli tRNA
Try遺伝子を通過するまで続けられる。その結果生じた転写により、哺乳類細胞内において作製される機能的なアンバー抑圧E. coli tRNA
Tryが産生される。このことは、この転写産物がセレクターコドンの抑圧によって非天然アミノ酸の組み込みを支援できるということから分かる。
【0263】
適切な5’および3’フランキング配列を有するヒトtRNA
Tyrの転写開始に続いて、いくつかのアンバー抑圧E. coli tRNA
Tryの集団も転写され得る。アンバー抑圧E. coli tRNAの集団化によって、非天然アミノ酸の抑圧が改善される(
図1)。
【0264】
第2スキームでは、アンバー抑圧E. coliの転写が、タイプIIIのpol III転写プロモーター(U6またはH1プロモーターなど)によって開始される。このスキームを使用して、5’および3’フランキング配列の効果、ならびに集団化したアンバー抑圧E. coli tRNA
Tryの様々なtRNAカセットの効果を評価した(
図2)。
【0265】
<実験>
−TIILP転写カセットを含んでいるプラスミドのコンストラクション−
1コピーのアンバー抑圧E. coli tRNA
Try突然変異体をコードするDNA配列を、PCRによって作製した。このインサートは、5’から3’方向に、5’制限部位(EcoR IおよびBgl II)、ヒトTyrtRNAの5’フランキング配列(CTGTGCTGAACCTCAGGGGACGCCGACACACGTACACGTC(配列番号87))、アンバー抑圧E. coli tRNA
Try、3’フランキングヒトtRNA
Tyr配列(GACAAGTGCGGTTTTTTTCTCCAGCTCCCGATGACTTATGGC(配列番号88))、および3’制限部位(BamH IおよびHind III)を含んでいる。以下のPCTプライマーを使用して、5’フランキングヒトtRNA
Tyr配列、アンバー抑圧E. coli tRNA
Try、および3’フランキングヒトtRNA
Tyr配列を既に含んでいる鋳型から、DNA配列を増幅した。
【0266】
FTam97 ショート
GTACGAATTCCCGAGATCTCTGTGCTGAACCTCAGGGGACGC(配列番号89)、
FTam109
GATGCAAGCTTGATGGATCCGCCATAAGTCATCGGGAGCTGGAGAAAAAAACCGCACTTGTCTGGTGGGGGAAGGATTCG(配列番号90)。生じたPCR産物を消化し(EcoR IおよびHind III)、同じ酵素で消化したpUC19プラスミドDNAに連結した。
【0267】
生じたプラスミドを消化し(EcoR IおよびBgl II)、以下の(i)〜(v)を含んでいるインサート(EcoR IおよびBam HIで切断されている)に連結した。(i)5’制限部位(EcoR IおよびBgl II)を含んでいるヒトtRNA
Tyr遺伝子、(ii)ヒト5’フランキングtRNA
Tyr配列(GGATTACGCATGCTCAGTGCAATCTTCGGTTGCCTGGACTAGCGCTCCGGTTTTTCTGTGCTGAACCTCAGGGGACGCCGACACACGTACACGTC(配列番号91))、(iii)ヒトtRNA
Tyr、(iv)ヒト3’フランキング配列(GACAAGTGCGG(配列番号92))、および(v)3’制限部位(BamH IおよびHind III)。
【0268】
直列な2コピーのヒトtRNA
TyrおよびE. coli tRNA
Tyの転写カセットをコードするプラスミドをコンストラクトするために、得られたプラスミドをEcoR IおよびBgl IIの制限酵素で消化した。転写カセットを、次のプライマーを使用してPCRによって増幅した:FT73−アウト−ニュープライマー(CTTTGTGTAATACTTGTAACGCTGAATTC(配列番号93))、およびFT76−アウト リバースプライマー(ACCATGATTACGCCAAGCTTGAT(配列番号94))。PCR産物をEcoR IおよびBamH Iで消化し、切断したプラスミドに連結した。
【0269】
この方策に従って、多くのプラスミド(
図1)をコンストラクトした。
【0270】
−H1プロモーターによって誘導されるE. coli tRNA発現プラスミドのコンストラクション−
上記でコンストラクションしたE. coli tRNA
Tyrアンバー抑圧突然変異体を鋳型として使用して、種々のDNAクローニングインサートを合成し、それから該インサートを、スキーム2に示したような様々な5’および3’配列に隣接させた(
図2)。PCRに使用したプライマーは以下の通りである。
【0271】
バージョン1:FTam111(配列番号95)/FTam113(配列番号98)
バージョン1a:FTam111(配列番号95)/FTam113(配列番号98)
バージョン2:FTam102a(配列番号97)/FTam113(配列番号98)
バージョン3:FTam111(配列番号95)/FTam114(配列番号99)
バージョン4:FTam102a(配列番号97)/FTam114(配列番号99)
FTam111:GCATCGGATCCGGTGGGGTTCCCGAGCGGCC(配列番号95)
FTam112:ACGCCAAGCTTTTCCAAAATGGTGGGGGAAGGATTCGAACCTTC(配列番号96)
FTam102a:GCATCGGATCCGTGCTGAACCTCAGGGGACGCCG(配列番号97)
FTam113:ACGCCAAGCTTTTCCAAAAAATGGTGGGGGAAGGATTCGAACCTTC(配列番号98)
FTam114:ACGCCAAGCTTTTCCAAAAAACCGCACTTGTCTGGTGGGGGAAGG(配列番号99)。
【0272】
インサートを消化し(BamH IおよびHind III)、精製し(PCR purification kit: Qiagen(PCR精製キット:キアゲン))、同じ酵素で消化したpSilenserベクター(Ambion)に連結した(
図2)。
図2の完成したコンストラクトの配列は以下の通りである。
【0273】
E. coli バージョン1(T×4ターミネーター、5’および3’フランキング配列なし):
GCATCGGATCCGGTGGGGTTCCCGAGCGGCCAAAGGGAGCAGACTCTAAATCTGCCGTCACAGACTTCGAAGGTTCGAATCCTTCCCCCACCATTTTGGAAAAGCTTGGCGT(配列番号100)
E. coli バージョン1a(T×6ターミネーターあり、5’および3’フランキング配列なし):
GCATCGGATCCGGTGGGGTTCCCGAGCGGCCAAAGGGAGCAGACTCTAAATCTGCCGTCACAGACTTCGAAGGTTCGAATCCTTCCCCCACCATTTTTTGGAAAAGCTTGGCGT(配列番号101)
E. coli バージョン2(5’フランキング配列あり):
GCATCGGATCCGTGCTGAACCTCAGGGGACGCCGACACACGTACACGTCGGTGGGGTTCCCGAGCGGCCAAAGGGAGCAGACTCTAAATCTGCCGTCACAGACTTCGAAGGTTCGAATCCTTCCCCCACCATTTTTTGGAAAAGCTTGGCGT(配列番号102)
E. coli バージョン3a(3’フランキング配列あり):
GCATCGGATCCGGTGGGGTTCCCGAGCGGCCAAAGGGAGCAGACTCTAAATCTGCCGTCACAGACTTCGAAGGTTCGAATCCTTCCCCCACCAGACAAGTGCGGTTTTTTGGAAAAGCTTGGCGT(配列番号103)
E. coliバージョン4(3’および5’フランキング配列あり):
GCATCGGATCCGTGCTGAACCTCAGGGGACGCCGACACACGTACACGTCGGTGGGGTTCCCGAGCGGCCAAAGGGAGCAGACTCTAAATCTGCCGTCACAGACTTCGAAGGTTCGAATCCTTCCCCCACCAGACAAGTGCGGTTTTTTGGAAAAGCTTGGCGT(配列番号104)。
【0274】
さらに、E. Coliの代わりに、B. stearothermophilusのtRNA
Tyrを使用して実験を行い、アンバー抑圧B. stearothermophilus tRNA
Tyrを、
図6の第3スキームに示されているように転写した。第3スキームは、プラスミドを作製するために使用する、上記で議論したような技術と同じ技術を含んでいる。この実験によって、プロモーターの使用(この場合ではU6を使用した)によって、B. stearothermophilus tRNA
Tyrによる機能的なアンバー抑圧がさらに増加したことが示された(
図7に実験結果を示す)。
【0275】
図6の完成したコンストラクトの配列は以下の通りである。
【0276】
B. stearothermophilus バージョン1.(5’および3’フランキング配列ならびに3’CCAなし):
GCATCGGATCCGGAGGGGTAGCGAAGTGGCTAAACGCGGCGGACTCTAAATCCGCTCCCTTTGGGTTCGGCGGTTCGAATCCGTCCCCCTCCATTTTTTGGAAAAGCTTGGCGT(配列番号105)
B. stearothermophilus バージョン1a.(5’および3’フランキング配列ならびに3’CCAなし、終結のための4T):
GCATCGGATCCGGAGGGGTAGCGAAGTGGCTAAACGCGGCGGACTCTAAATCCGCTCCCTTTGGGTTCGGCGGTTCGAATCCGTCCCCCTCCATTTTGGAAAAGCTTGGCGT(配列番号106)
B. stearothermophilusバージョン3a.(短い5’フランキング配列あり、3’CCAおよびフランキング配列なし):
GCATCGGATCCGTGCTGAACCTCAGGGGACGCCGACACACGTACACGTCGGAGGGGTAGCGAAGTGGCTAAACGCGGCGGACTCTAAATCCGCTCCCTTTGGGTTCGGCGGTTCGAATCCGTCCCCCTCCATTTTTTGGAAAAGCTTGGCGT(配列番号107)
B. stearothermophilus バージョン4.(3’フランキング配列、ターミネーターあり、3’CCAなし、5’フランキングなし):
GCATCGGATCCGGAGGGGTAGCGAAGTGGCTAAACGCGGCGGACTCTAAATCCGCTCCCTTTGGGTTCGGCGGTTCGAATCCGTCCCCCTCCAGACAAGTGCGGTTTTTTGGAAAAGCTTGGCGT(配列番号108)
B. stearothermophilus バージョン5a.(短い5’フランキング配列、および普通の3’フランキング配列あり、3’CCAなし):
GCATCGGATCCGTGCTGAACCTCAGGGGACGCCGACACACGTACACGTCGGAGGGGTAGCGAAGTGGCTAAACGCGGCGGACTCTAAATCCGCTCCCTTTGGGTTCGGCGGTTCGAATCCGTCCCCCTCCAGACAAGTGCGGTTTTTTGGAAAAGCTTGGCGT(配列番号109)。
【0277】
H1プロモーター配列およびU6プロモーター配列は、以下の通りである。
【0278】
H1プロモーター:
GAATTCATATTTGCATGTCGCTATGTGTTCTGGGAAATCACCATAAACGTGAAATGTCTTTGGATTTGGGAATCTTATAAGTTCTGTATGAGACCACTCGGATCC(配列番号111)
U6プロモーター:
CCCAGTGGAAAGACGCGCAGGCAAAACGCACCACGTGACGGAGCGTGACCGCGCGCCGAGCGCGCGCCAAGGTCGGGCAGGAAGAGGGCCTATTTCCCATGATTCCTTCATATTTGCATATACGATACAAGGCTGTTAGAGAGATAATTAGAATTAATTTGACTGTAAACACAAAGATATTAGTACAAAATACGTGACGTAGAAAGTAATAATTTCTTGGGTAGTTTGCAGTTTTAAAATTATGTTTTAAAATGGACTATCATATGCTTACCGTAACTTGAAAGTATTTCGATTTCTTGGGTTTATATATCTTGTGGAAAGGACGCGGGATCC(配列番号110)。
【0279】
<結果>
−アンバー抑圧E. coli Tyr tRNA(
図3)−
いくつかのtRNAコンストラクト、3コピー、2コピー、および1コピーのアンバー抑圧E. coli tRNA
Try(5’ヒトtRNA
Tyrリーダーに隣接されている)を、アンバー抑圧アッセイにて評価した。hGH E88アンバー突然変異体、tRNAおよびE. coli tRNA
Tyrシンテターゼをコードする各プラスミドを、CHO K1細胞にコトランスフェクションした。またシンテターゼを除いた陰性対照も使用した。トランスフェクションから41時間後のhGHの発現を分析した。全ての陰性対照実験では、hGHの発現はほとんどまたは全く検出されなかった(hGH特異的ELISA)。E. coli Tyr RSの存在下、およびヒトリーダーtRNAの非存在下では、hGHの発現はほとんどまたは全く検出されなかった。hGHの発現は、5’末端にヒトtRNA
Tyr配列が隣接したE. coli tRNA
Tyrシンテターゼの存在下においてのみ検出された。2コピーのアンバー抑圧E. coli tRNA
Tryの場合、hGHの発現は、1コピーのものよりもほぼ3倍高かった。これらの結果から、アンバー抑圧E. coli tRNA
Tyr突然変異体は、ヒトリーダーtRNAの存在下においてのみ、抑圧に関して機能的であることが実証された。
【0280】
−TIILPによりインビボで転写されたアンバー抑圧E. coli Tyr tRNAを使用した、パラ−アセチル−フェニルアラニン(pAF)によるアンバー抑圧(
図4)−
hGH E88アンバー突然変異体、特定の形式のtRNA、およびpAFをチャージするE. coli tRNA
Tyrシンテターゼ突然変異体をコードする各プラスミドを、CHO K1細胞にコトランスフェクションした。トランスフェクション培地を、1mMのpAFを含む増殖培地に代えた。トランスフェクションから42時間後のhGHの発現を分析した。1つのヒトtRNAリーダーが、下流で直列コピーのアンバー抑圧E. coli tRNA
Tyrに融合した形式のtRNA(h−(EC)2)を使用したとき、hGHの発現は非常に僅かであった。以下の2種の代替形式のtRNAを使用したときは、検出されたhGHの発現は一層高かった。すなわち、第1の代替形式のtRNAは、5’ヒトtRNAリーダーが、1コピーのアンバー抑圧E. coli tRNA
Tyrに融合した形式のtRNAであり(h−EC)、第2の代替形式のtRNAは、まさに記載した2コピーの完全な転写カセットを含んでいる形式のtRNAである(2×(hEC))。これら2つのコンストラクトでは、アンバー抑圧の成果(yield)は、トランスフェクションするtRNAプラスミドの量を2倍に(即ち1μgから2μgに)することによって、さらに増加した。対照的に、トランスフェクションするpAFRSをコードするプラスミドの量を2倍にしたときは、アンバー抑圧の成果は減少した。
【0281】
−H1プロモーターによりインビボで転写されたアンバー抑圧E. coli Tyr tRNAを使用した、pAFによるアンバー抑圧(
図5)−
hGH E88アンバー突然変異体、H1プロモーターによって誘導されるE. coli Tyrアンバー抑圧tRNAのうちの1つ、およびE. coli tRNA
Tyrシンテターゼ突然変異体をコードする各プラスミドを、CHO K1細胞にコトランスフェクションした。陰性対照として、H1プロモーターを欠き、1コピーのE. coli Tyrアンバー抑圧tRNA(5’および3’においてヒトTyrtRNAフランキング配列と隣接している)から成るプラスミドを使用した。トランスフェクション培地を、1mMのpAFを含む増殖培地に代え、トランスフェクションから42時間後に、エライサによってhGHの発現を分析した。H1プロモーターがアンバー抑圧E. coli tRNA
Tyrの5’末端に存在していない陰性対照の実験では、hGHの抑圧は非常に僅かであった。同様に、tRNA転写バージョン2(
図2)を使用したときに検出されたhGHのタイターは非常に低かった。なおtRNA転写バージョン2では、tRNAが5’末端のみにおいて、ヒトTyrtRNAのちょうど上流の5’配列と隣接しているものである。バージョン1a、3、4の転写カセット(
図2)を使用したときに、一層高レベルの抑圧されたhGHが検出された。まとめると、これらの結果から、内部にあるAボックスを欠くアンバー抑圧E. coli Tyr tRNAは、CHO細胞内においてpol IIIによって効果的に転写されず、この形式(即ちバージョン1)からのアンバー抑圧が不十分であることが示唆される。しかし、H1などのpol IIIプロモーターを、該tRNAの5’末端に含ませることによって、転写されることが可能になり、バージョン1a、バージョン3およびバージョン4のtRNA転写コンストラクトにおいて観察されたような、機能的なアンバー抑圧tRNAを製造することができる。バージョン2のコンストラクトでは抑圧のタイターがわずかであったという事実は、5’フランキング配列が機能的なアンバー抑圧tRNAの製造に重要であることを示唆している。
【0282】
〔実施例3〕
−E. coli由来の野生型Leu RSおよびアンバー抑圧tRNAによる、CHO細胞内におけるアンバー抑圧−
本実験では、E. coli由来の野生型Leu RSおよびアンバー抑圧tRNA(GCCCGGATGGTGGAATCGGTaGACACAAGGGATTCTAAATCCCTCGGCGTTCGCGCTgTGCGGGTTCAAGTCCCGCTCCGGGTA(配列番号112)を使って、セレクターコドン(この場合はアンバー)を、CHO K1細胞内において抑圧した。
【0283】
Bacillus stearothermophilusの対を陽性対照として使用した。図の左側は陰性対照を示している。2組のプロモーターをここでは使用して、tRNAの発現を誘導した(H1およびU6.(×2))。またこの場合、tRNAはtRNA集団ではない。改善された抑圧に関しては、トランスフェクションの間に、2倍量のtRNAをコードするDNAを使用した。
【0284】
図8の結果は、E. coli Leu RS/tRNA対が、哺乳類細胞内において直交であることを示している。また新規tRNA転写スキーム(U6、H1によるtRNA発現の誘導)は、Aボックス配列を欠く別のtRNAとも協働する。
【0285】
非天然アミノ酸を有するタンパク質への分子の付加
1態様では、本発明は、非天然アミノ酸を含んでいるタンパク質に他の置換分子を結合させる方法および関連組成物を提供する。
【0286】
本明細書に記載された実施例および実施形態は、説明のために記載されているに過ぎず、これらの記載に鑑みて種々の変形または変更が当業者に想到され、このような変形または変更も本願の精神および範囲と特許請求の範囲に含まれることが理解される。
【0287】
以上、明確に理解できるように本発明を多少詳細に記載したが、本発明の真の範囲を逸脱することなく形態や細部を様々に変更できることは以上の開示から当業者に自明である。例えば、本明細書に記載の全技術および装置は、様々に組み合わせて使用することができる。本明細書に引用した全刊行物、特許、特許出願、および/または他の文献は、その開示内容全体をあらゆる目的のために参照することによって組み込まれ、各刊行物、特許、特許出願、および/または他の文献は、あらゆる目的のために参照することによって組み込まれると個々に記載しているものとして扱う。
【0288】
【表3】
【0289】
【0290】
【0291】
【0292】
【0293】
【0294】
【0295】
【0296】
【0297】
【0298】
【0299】
【0300】
【0301】
【0302】
【0303】
【0304】