(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記試薬がグルコースオキシダーゼ及びグルコースであり、試料と混合することによって、1mL当たり約3IU超のグルコースオキシダーゼ活性、及び約500mg/dL超のグルコース濃度をもたらす、請求項1又は2に記載の方法。
前記分析物が、TnI、TnT、BNP、NTproBNP、proBNP、HCG、TSH、NGAL、テオフィリン、ジゴキシン、及びフェニトインからなる群から選択される、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0053】
本発明は、イムノアッセイにおいて白血球が存在することによって引き起こされる干渉を低減又は排除するための白血球試薬の使用に関する。好適な実施形態では、本発明は、以下の分野の1つ又は複数において使用することができる:最も特に、ポイントオブケア検査との関連で、免疫センサー;電気化学的イムノアッセイ;免疫参照センサーと併せた免疫センサーの使用;全血イムノアッセイ;使い捨てカートリッジベースのイムノアッセイ;1回の洗浄ステップのみを伴う、非連続イムノアッセイ;及び乾燥試薬コーティング。特に、上記に参照された米国特許出願公開第2006/0160164号(’164出願)は、抗ヒト血清の添加、免疫センサー上へのアルブミン抗体のコーティング、及びアッセイ媒質への塩の添加に基づく白血球に関連した、ある特定の干渉に対処している一方で、本明細書は、白血球に関連したバイアスの追加の源を開示し、干渉を低減するための新規解決策を提供する。当業者によって理解されるように、本明細書で開示される一般的な概念は、多くのイムノアッセイ法及びプラットフォームに適用可能である。
【0054】
本発明は、分析物センサーのアレイ、及び免疫センサー又は分析物アレイに改質された試料を順次提示するための手段を有するカートリッジを使用して、分析物の迅速なin situ判定を可能にする。好適な実施形態では、本発明は、1992年3月17日に発行されたLauksらの米国特許第5,096,669号(上記に参照されている)、又は2008年9月2日に発行されたDavisらの米国特許第7,419,821号(上記に参照されている)に開示されたものなどの、読取デバイスを用いて稼動されるように設計されたカートリッジで使用される。これらの特許の両方は、その全体が本明細書に参照により組み込まれている。本発明は、この脈絡において最良に理解される。その結果として、ポイントオブケアイムノアッセイシステムを稼動するのに適したデバイス及び方法が最初に記載され、続いて全血イムノアッセイにおける白血球干渉をさらに低減又は排除するのに、システムを最良に適応させることができる方法が記載される。
【0055】
様々な実施形態では、本発明は、電極表面における、又は電極表面付近でのサンドイッチの形成に基づくヘテロジニアス電気化学的イムノアッセイにおいて使用される。しかし、他の実施形態では、本発明は、他の形態のイムノアッセイに対するものである。例えば、本発明の白血球試薬は、ヘテロジニアス又はホモジニアスビーズベースアッセイにおいて、並びに非競合(サンドイッチ)イムノアッセイ又は競合イムノアッセイにおいて使用することができる。この脈絡において、用語「ヘテロジニアス」及び「ホモジニアス」は、捕捉ステップを指す。したがって、ホモジニアスアッセイについては、捕捉ステップは、流体媒質中で起こる一方で、ヘテロジニアスアッセイでは、捕捉ステップは、巨視的な表面上、例えば、センサー表面上で起こる(競合又は非競合様式で)。これらの例のそれぞれにおいて、固定化されたアッセイビーズは、アッセイが血液試料中で実施される場合、白血球による攻撃に感受性となる。競合アッセイ及び非競合アッセイにおいて、この作用は、白血球試薬、及び任意選択により、白血球についてオプソニン化された犠牲ビーズを添加することによって低減することができる。
【0056】
図24に例示されたヘテロジニアス競合アッセイは、試料中に存在する(未標識)分析物が、固体表面、例えば、センサーエレメント上の結合部位を、標識分析物と競合する。対象とする分析物を含有する疑いのある試料(試料分析物)は、標識にコンジュゲートされた同じ分析物、すなわち、標識分析物を含むある量の試薬で改質される。標識は、色素、又は酵素、例えば、ALPなどの任意のシグナル生成成分とすることができる。いくつかの例示的な実施形態では、標識分析物は、放射標識、酵素、発色団、フルオロフォア、化学発光種、イオノフォア、及び電気活性種からなる群から選択される標識で標識することができる。別の実施形態では、標識分析物は、フルオレセイン、フェロセン(任意選択によりカルボキシル化フェロセン、又はジカルボキシル化フェロセン、又はアミノフェロセン)、及びp−アミノフェノールからなる群から選択される標識で標識される。
【0057】
競合アッセイによって一般に同定並びに/又は測定される分析物には、治療剤、例えば、ジゴキシン、テオフィリンなど、及び生物マーカー、例えば、C反応性タンパク質(CRP)、他にまたフェノバルビタール、フェニトイン、バルプロ酸、及びバンコマイシンなどが含まれる。好適な態様では、試料分析物は、ジゴキシン、フェノバルビタール、フェニトイン、テオフィリン、バルプロ酸、及びバンコマイシンからなる群から選択される。本発明の一実施形態では、改質された試料は、対象とする分析物に対する抗体が固定化された固体表面と接触させられる。試料が運ぶ分析物と標識分析物は、この固体表面で結合を競合し、その結果、標識分析物の量、及びしたがって、標識分析物から生成されるシグナルの量は、元の試料中の分析物の濃度に反比例する。センサー表面から非特異的に結合した物質を洗浄した後、標識の量が測定され、酵素標識の場合、これは、酵素に適当な基質を供給すること、及び例えば、電気化学的又は光学的に生成物を検出することを伴う。ヘテロジニアス競合イムノアッセイにおいて使用される場合、血液試料は、固体表面、すなわち、センサーと接触させる前に、白血球試薬を用いて改質されることが好ましい。必要に応じて、血液試料は、ともに2009年11月17日に出願され、その全体が参照により本明細書に組み込まれている、米国特許出願第12/620,179号、及び同第12/620,230号に記載されているように、固体表面に接触させる前に、白血球に対してオプソニン化された犠牲ビーズ(例えば、IgGコート微粒子)を用いてさらに改質することができる。
【0058】
I.カートリッジ
一実施形態では、本発明は、試料中の分析物の存在又は量を判定するのに液体試料を処理するためのカートリッジ及び方法に関する。カートリッジは、好ましくは計量手段を含み、これにより、未計量体積の試料を導入することが可能になり、この手段から、計量された量が、カートリッジ及びその付随した読取装置によって処理される。したがって、医師又はオペレーターは、測定前に試料の体積を手動で測定することから解放され、それによって時間、努力を節約し、精度及び再現性を増大させる。計量手段は、一実施形態では、キャピラリーストップを境界とし、長さに沿って空気流入ポイントを有する長い試料チャンバーを備える。空気流入ポイントでかけられる空気圧により、計量された体積の試料が、キャピラリーストップを通過させられる。計量される体積は、空気流入ポイントとキャピラリーストップの間の試料チャンバーの体積によって予め設定される。
【0059】
カートリッジは、気密様式で試料ポートを密封するための閉鎖デバイスを有することができる。この閉鎖デバイスは、好ましくは、カートリッジの本体に対してスライド可能であり、ポートの領域内に位置した過剰の試料を追い出すせん断作用をもたらすことができ、それによって流入ポートとキャピラリーストップの間の保持チャンバー中の試料部分を確実に密封する。例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれている、米国特許第7,682,833号を参照されたい。一実施形態では、カートリッジは、例えば、過剰の流体試料を試料流れ口から追い出し、内部流体試料保持チャンバー内の、ある体積の流体試料を密封し、流体試料が内部キャピラリーストップを尚早に突き破るのを抑制する様式で、カートリッジの表面上で密封エレメントをスライド可能なように動かすことによって密封することができる。このスライド可能な閉鎖デバイスによって得られる密封は、非可逆性であることが好ましく、過剰の血液がカートリッジ内に貯まることを防止し、その理由は、閉鎖デバイスは、血液がカートリッジに入る流れ口の面内を移動し、流入ポートの面より下の血液を密封するせん断作用をもたらし、それによって、過剰の血液、すなわち、流れ口の面より上の血液を流入ポートから離し、任意選択により廃棄物チャンバーに移すためである。
【0060】
本発明の一実施形態の例示的な閉鎖デバイスは、
図1に示されており、カバー1の一体化したエレメント2、3、4、及び9を備える。この実施形態では、閉鎖デバイス2は、フック3がパチンと閉まって試料流入ポート4を遮断するまでヒンジの周りを回転する。
図1のカバー1の一体化したエレメント2、3、4、及び9を備える閉鎖デバイスの代替案が、
図18及び19中に、別個のスライド可能なエレメント200として示されている。
図18及び19は、別個のスライド可能な閉鎖エレメント200とともに、
図3に示された介在する接着性層21を伴った、
図4中の底部と同様の底部に取り付けられた
図1のカバーの改良版を備えるカートリッジデバイスを示す。
図19は、開いた位置での閉鎖デバイス200を示し、この場合、試料流入ポート4は、試料、例えば、血液を受け入れることができる。
図18は、閉じた位置での閉鎖デバイス200を示し、この場合、これは、気密様式で試料流入ポートを密封する。稼動中、試料、例えば、血液が流入ポートに添加され、これが保持チャンバー34に入った後、エレメント200は、開いた位置から閉じた位置に手動で動かされる。示した実施形態では、流入ポートの領域内のいずれの過剰の血液も、オーバーフローチャンバー201、又は隣接する保持領域若しくは空洞に移動される。このチャンバー又は領域は、過剰の試料、例えば、血液を保持するための流体吸収パッド又は物質を含むことができる。
【0061】
試料流入ポート4は、
図19に示したような円形、又は楕円形である流れ口とすることができ、流れ口の直径は一般に、0.2〜5mm、好ましくは1〜2mmの範囲内であり、又は楕円形の周囲長が1〜15mmである。流れ口の周囲の領域は、適用される試料の液滴形状を制御することによって、流入ポート中への流入を促進するために、疎水性又は親水性であるように選択することができる。
図18及び19に示された閉鎖デバイスの1つの利点は、これは、試料が保持チャンバー34の端部のキャピラリーストップエレメント25を越えて押されるのを防止することである。キャピラリーストップを越えて少量の試料、例えば血液が存在することは、分析物のバルク濃度を測定する検査に有意でなく、したがって、試料体積に依存しない。しかし、試料の計量が一般に有利であるイムノアッセイ用途について、密封エレメントは、デバイスの計量精度を改善し、分析器により試料がカートリッジ導管内に動かされるとき、試料のアッセイされるセグメントが免疫センサーに対して適切に配置されるのを確実にする。
【0062】
稼動中、試料、例えば、血液がカートリッジに添加されるとき、これは、キャピラリーストップへと移動する。したがって、キャピラリーストップから試料流入ポートまでの領域、すなわち、保持チャンバー34が試料を含むとき、アッセイに十分な試料が存在する。保持チャンバーを満たすプロセスの間、一部の試料が、流入ポートの流れ口の面の上に残る場合がある。密封エレメントが、開いた位置から閉じた位置に移動されるとき、流入ポートの上にあるいずれの試料も、閉鎖の動作の際に追加の試料を取り込むことなくせん断されて除かれ、それによって試料がキャピラリーストップ25を越えて移動しないことを確実にする。好適な実施形態では、密封エレメント200は、
図3のテープガスケット21の表面の上の数千分の1インチ以内に配置される。流入ポートは、密封エレメントが、ロック機構212及び213に噛み合うとき、200の表面が接着性テープガスケットまで引き続いて低下することによって密封される。テープは、本質的に非圧縮性であり、流れ口の直径は小さいので、ユーザーによって密封エレメントにかけられるいずれの不意の圧力も、キャピラリーストップを越えて試料を移動させることにならない。
【0063】
数滴の試料を使用する、ある特定のカートリッジの実施形態では、気泡は、アッセイに影響し得るので、保持チャンバー内でまったく形成しないことが望ましい。したがって、1滴を超える試料、例えば、血液を、気泡を中に閉じ込めることなく保持チャンバー34内に導入するための信頼できる手段が開発された。本発明の一実施形態によると、試料流入ポートは、コロナ及び/又は試薬カクテルを用いて保持チャンバーを最初に処理することによって、次の液滴が、取り込まれた気泡を保持チャンバー34内に形成させることなく、複数の液滴の試料を受け入れるように設計することができる。
【0064】
使い捨て医療用デバイスにコロナ処理を使用することは、当技術分野で周知であり、実質的に任意の物質、例えば、金属化表面、ホイル、紙、板紙原料、又はプラスチック、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ビニル、ポリ塩化ビニル(PVC)、及びポリエリレンテレフタレート(PET)などの表面活性を増大させる有効な方法である。このコロナ処理は、これらの物質をインク、コーティング、及び接着剤に対してより受容性にする。実際には、処理されている物質は、放電、又は「コロナ」に曝される。放電範囲内の酸素分子が壊れて原子になり、処理されている物質中の分子に結合し、化学的に活性化された表面をもたらす。コロナ処理のための適当な装置は市販されている(例えば、Corotec Corporation、Farmington、Connecticut、USA)。プロセス変数は周知であり、物質を処理するのに必要とされるパワー量、物質速度、幅、処理される面の数、及びコロナ処理に対する特定の物質の応答性が含まれ、これらの変数は、熟練したオペレーターによって求めることができる。コロナ処理を組み込むための一般的な場所は、プリント、コーティング、又はラミネートプロセスとインラインである。別の一般的な設置は、インフレーションフィルム又はキャストフィルム押出機の直接上であり、その理由は、新鮮な物質は、コロナ処理に対してより受容性であるためである。
【0065】
II.シグナル生成反応
上述したように、非競合(サンドイッチ)イムノアッセイ形式は、最も広く使用されるイムノアッセイ法であり、分析デバイス、例えば、本明細書で論じられるカートリッジにおいても好適な形式である。この実施形態では、1つの抗体(固定化抗体)が固体支持体又は免疫センサーに結合され、第2の抗体(シグナル抗体)が、酵素、例えば、アルカリホスファターゼなどのシグナル生成試薬にコンジュゲート/結合される。
【0066】
簡単に言えば、
図20は、分析の間に起こるシグナル生成反応を例示し、
図20(A)は、電気活性なp−アミノフェノールを生成するためのアルカリホスファターゼによる基質の切断を示し、
図20(B)は、p−アミノフェノールの酸化を示す。
図20(A)中の反応は、センサー構造の上側層で起こり、一方、
図20(B)中の反応は、金電極表面において起こる。
図20(A)中の挿入図は、アルカリホスファターゼで触媒される加水分解のpH依存性を例示する。中央の図解は、試料に曝す前の免疫センサー構造の全体的な特徴を表す。
【0067】
シグナル生成試薬(例えば、非競合アッセイのためのシグナル抗体、又は競合アッセイのための標識分析物)は、以下に記載されるように、分析デバイス中の乾燥試薬コーティングの一部とすることができ、好ましくは、試料が免疫センサーに到達する前に生体試料中に溶解する。非競合アッセイについて、試料及び非特異的に結合した試薬を洗い流した後、固体支持体上に残っているシグナル生成試薬(例えば、シグナル抗体)の量は、試料中の分析物の量に、原理上は比例するはずである。上記に論じた競合アッセイについて、試料及び非特異的に結合した試薬を洗い流した後、固体支持体上に残っているシグナル生成試薬(例えば、標識分析物)の量は、試料中の分析物の量に、原理上は反比例するはずである。しかし、これらのアッセイ構成の1つの制限は、血液試料中に存在する白血球によって引き起こされる干渉(単数又は複数)に対する感受性である。
【0068】
III.白血球試薬
白血球干渉は、上記に参照されたMillerらの共同所有された米国特許出願公開第2006/0160164号に開示された手段によって軽減されている一方で、ある特定の血液試料について、試料、例えば、血液試料中の白血球活性は、1つ又は複数の白血球試薬を添加することによって、意外にも、予想外に低減又は排除することができることが現在では発見されている。したがって、白血球干渉を軽減するための従来のプロセスと対照的に、本発明の様々な実施形態では、白血球活性は、白血球活性を代謝性又は両親媒性に(amphipathically)低減又は排除することができる任意の組成物として本明細書に定義される白血球試薬を用いて実質的に低減又は排除することができる。以下に論じられるように、白血球試薬の例の限定されないリストには、酵素及びこれらの共試薬、サポニン、細胞毒、ムコ多糖、ロイコシジン、並びに抗白血球抗体が含まれる。多くの実施形態では、白血球試薬は、有機の、任意選択により非イオン性の化学種であり、一方、他の実施形態では、この試薬は、無機及びイオン性であってもよい(例えば、シアニド、ジシアネート含有試薬、又はジチオナイト化学種)。
【0069】
理論によって束縛されることなく、食作用のプロセスは、白血球による酸化的破壊を伴うことによって、生体異物実体、例えば、細菌を攻撃する酸素ラジカル化学種、例えば、スーパーオキシドラジカル及びヒドロキシルラジカルを生成する。食作用は、酸素依存性プロセスであるので、試料中のバルク酸素濃度を低減することを、イムノアッセイにおける白血球干渉を防止又は改善するための手段として使用することができる。同様に、他の方法でこれらの細胞の代謝経路を妨げることも、白血球干渉の低減への有用な手法である。他の実施形態では、以下に記載されるように、白血球活性を低減又は排除するために、犠牲ビーズを白血球試薬と組み合わせて使用することができる。
【0070】
白血球の代謝阻害のためにいくつかの手法が可能である。一実施形態では、白血球は、例えば、グルコースを消費し、過酸化水素を作るためのグルコースオキシダーゼなどの添加酵素を使用することによって、血漿中で利用可能な酸素が奪われる。それにより、呼吸鎖における最終電子受容体である酸素が細胞から奪われる。試料中の任意の過酸化物は、カタラーゼによって急速に不均化されて酸素及び水になるが、反応の正味の原動力により、試料からすべての酸素が実質的に除去されることに注意されたい。
【0071】
別の実施形態では、実質的にすべてのグルコースが試料の血漿画分から除去される。一般に、血液試料中のバルク酸素濃度は一般に、グルコース濃度よりはるかに低くなる([O
2]約100μM;[グルコース]約5〜10mM)。したがって、グルコースオキシダーゼの可溶性電子受容体、例えば、フェロセニウムモノカルボン酸、フェナジンメトスルフェート、又はN,N,N’,N’−テトラメチル−p−フェニレンジアミンなどの添加が、実質的にすべてのグルコースを除去するのに望ましい。或いは、グルコース脱水素酵素(GDH)を使用することができるが、PQQ補助因子を用いたGDHを例外として、補助因子NAD+の添加が必要とされる。この例では、NADHオキシダーゼ(ジアホラーゼ)も、上記に示した電子受容体とともに添加することができる。別の実施形態では、ヘキソキナーゼを添加することができ、これは、試料中の利用可能なグルコースをリン酸化する。ここでは、ATP源が必要とされ、これは、クレアチンリン酸、ADP、及びクレアチンキナーゼを添加することによって、in situで作製されることが好ましい。この例では、バルクグルコース濃度のみが影響され、酸素濃度は影響されない。
【0072】
一般に、試料の血漿画分中の実質的にすべてのグルコースではなく、実質的にすべての酸素を除去することがより効果的であることが見出されている。このことは、細胞は、すでに貯蔵されたエネルギーを有するが(還元当量)、「酸素貯蔵所」を実質的に欠くという事実に関係づけられる。特定の実施形態は、例えば、過剰のジチオナイトを添加することによって、化学的手段を通じて、又は酸素を直接還元して水にするアスコルビン酸オキシダーゼを添加することによって酵素的に、酸素を排除することを対象とする。
【0073】
いくつかの実施形態では、本発明は、血液試料中の標的分析物についてイムノアッセイを実施する方法を対象とする。一態様では、この方法は、試料、例えば、血液試料を、試料中の白血球の活性を実質的に阻害する白血球試薬と接触させるステップと、試料にイムノアッセイを実施することによって標的分析物を検出するステップとを含む。本発明のある特定の実施形態では、試薬は、酸素除去試薬若しくはグルコース除去試薬、又は両方である。一態様では、試薬はグルコースオキシダーゼを含む。他の態様では、試薬は、グルコースオキシダーゼ及びグルコースを含む。他の実施形態では、白血球試薬は、グルコースオキシダーゼ及びグルコースを含み、白血球試薬は試料と混合することによって、1mL当たり約3IU超のグルコースオキシダーゼ活性、及び約500mg/dL超のグルコース濃度をもたらす。
【0074】
上記に示したように、白血球干渉を低減するための別の手法は、白血球内のミトコンドリアを阻害する電子輸送阻害剤又は脱共役剤を使用することである。したがって、一態様では、白血球試薬は、電子輸送阻害剤を含む。適当な電子輸送阻害剤及び脱共役剤には、それだけに限らないが、ロテノン、アンチマイシン、シアニド、マロネート(コハク酸脱水素酵素阻害剤)、2,4−ジニトロフェノール(DNP)、カルボニルシアニドp−[トリフルオロメトキシ]−フェニル−ヒドラゾン(FCCP)、及びオリゴマイシン(酸化的リン酸化の阻害剤)が含まれる。マロネート及びシアニドは、試料に直接添加することができ(例えば、イムノアッセイデバイス内の試薬コーティング中に)、一方、他の電子輸送阻害剤及び脱共役剤は、血漿画分中で溶解を補助するためにエタノール又は同様の溶媒の添加を必要とする場合がある。
【0075】
理論によって束縛されることなく、電子輸送阻害剤は一般に、電子伝達鎖に沿って結合し、したがって電子が、シーケンス内の1つの分子から次の分子に送られるのを防止することによって作用する。阻害の機構は、NADH経路、コハク酸経路、又は共通経路に沿ったものである場合がある。例えば、シアニドは、共通経路における終末酵素であるチトクロムオキシダーゼの効果的な可逆性阻害剤である。具体的には、約1mMのKCN(任意選択により、0.5〜50mM)の濃度は、ヒト血液試料中に存在するミトコンドリア中の酸素消費を実質的に阻害するのに十分であるはずである。
【0076】
脱共役剤は、化学浸透圧勾配に干渉することによって作用する。例えば、2,4−ジニトロフェノールは、膜の片側でプロトンに結合し、親油性であるプロトンイオノフォアとして働き、膜を横断してプロトンを輸送する。したがって、呼吸鎖は、膜の端から端のプロトン勾配を維持することを妨害される。カルボニルシアニドp−[トリフルオロメトキシル]−フェニル−ヒドロゾン(FCCP)も、このようにして働く。オリゴマイシンは、関係した効果を有し、プロトンチャネルを遮断するようにATP合成酵素に結合し、したがって酸化的リン酸化を阻害することによって作用する。これらの作用剤の使用も、任意の嫌気性白血球活性に基づく干渉を改善するのに有益である。具体的には、細胞が酸素を奪われているときでも、脱共役剤が使用されない限り、グルコースの乳酸への変換により、依然としてATPを生じさせることができる。
【0077】
本発明のいくつかの実施形態では、試薬は、グルコースオキシダーゼ及び電子受容体である。さらに他の実施形態では、この試薬は、ヘキソキナーゼ、及びアデノシン−5’−三リン酸(ATP)源を含む。他の実施形態では、この試薬は、ヘキソキナーゼ、クレアチンキナーゼ、アデノシン二リン酸(ADP)、及びクレアチンリン酸を含む。いくつかの実施形態では、この試薬はグルコース脱水素酵素を含み、さらに他の実施形態では、この試薬は、グルコース脱水素酵素、NAD、NADHオキシダーゼ、及び電子受容体を含む。本発明の他の実施形態では、この試薬は、酸素除去試薬である。他の実施形態では、この試薬は、ジチオナイト、グルコースオキシダーゼ、及びアスコルビン酸オキシダーゼからなる群から選択される酸素除去試薬である。追加の実施形態では、この試薬はミトコンドリア電子輸送阻害剤であり、他の実施形態では、試薬はミトコンドリア膜脱共役剤である。他の実施形態では、試薬は、シアニド、アンチマイシン、ロテノン、マロネート、カルボニルシアニドp−[トリフルオロメトキシル]−フェニル−ヒドロゾン、2,4−ジニトロフェノール、及びオリゴマイシンからなる群から選択される。他の実施形態では、この試薬は両親媒性試薬である。
【0078】
免疫センサーに対する白血球の食作用活性を低減又は排除するための好適な手法は、両親媒性試薬である、例えば、キラヤ(Quillaja)樹皮に由来するサポニンの添加に基づく。サポニンは、細胞膜を通じたタンパク質及び他の巨大分子の輸送を増強する界面活性剤及び溶血剤として作用する。
【0079】
本発明の代替の実施形態では、ロイコシジンを白血球試薬として使用することができる。ロイコシジンは、細菌に由来する一タイプの細胞毒、例えば、パントン−バレンタインロイコシジンである。ロイコシジンは、白血球を殺すことができる孔形成毒素である。例えば、Hongoら、Journal of Infectious Diseases 200、715〜723、(2009)を参照されたい。
【0080】
別の実施形態では、白血球溶解を誘導するのに、ムコ多糖、例えば、ヘパリンを使用することができる。例えば、Adachiら、J Pharmacobio−Dyn 9、207〜210(1986)を参照されたい。
【0081】
ある特定の実施形態では、白血球試薬は、AHN−1抗体である。本発明の他の実施形態では、白血球試薬は、リポコルチン−1、又はその均等物である。
【0082】
さらに他の実施形態では、本明細書に記載される白血球試薬は、白血球についてオプソニン化されたビーズとともに使用することができる。好適な一実施形態では、白血球試薬は、グルコースオキシダーゼ及びグルコースを含み、この白血球試薬は、白血球についてオプソニン化されたビーズとともに使用される。
【0083】
好適な実施形態では、1つ又は複数の白血球試薬は、乾燥試薬コーティング中に組み込まれる一方で、他の実施形態では、白血球試薬は、例えば、試料と混合するための流体用ポーチ中の別個の試薬流体中に提供される。乾燥試薬として提供される場合、1つ又は複数の白血球試薬は、シグナル生成試薬(例えば、非競合アッセイのためのシグナル抗体、又は競合アッセイのための標識分析物)を含有する同じ乾燥試薬コーティング中に提供することができる。したがって、本発明の一実施形態では、分析デバイスは、(a)1つ又は複数の白血球試薬、及び/又は(b)シグナル抗体若しくは標識分析物などのシグナル生成試薬のいずれか、又は両方を含む乾燥試薬コーティングを含む。乾燥試薬コーティングは、試薬カクテルから形成することができ、この試薬カクテルも、(a)1つ又は複数の白血球試薬、及び/又は(b)シグナル抗体若しくは標識分析物などのシグナル生成試薬のいずれか、又は両方を含むことが好ましい。いくつかの実施形態では、試薬コーティング及び/又はカクテルは、(a)上記に参照された同時係属中の米国出願第12/411,325号に開示されたような、異好性抗体によって引き起こされる干渉を改善するためのIgM若しくはその断片、及び/又は(b)以前に論じられた米国特許出願第12/620,179号及び同第12/620,230号に記載されたような、白血球についてオプソニン化された犠牲ビーズ(以下に論じられる)のうちの1つ又は複数をさらに含む。試薬カクテルが堆積されることになる表面は、最初にコロナ処理されることによって、プリントされるカクテルが行き渡るのを促進する帯電表面基を施すことが好ましい。
【0084】
いくつかの実施形態では、乾燥試薬コーティングを形成するのに使用される試薬カクテルは、水溶性タンパク質、アミノ酸、ポリエーテル、ヒドロキシル基を含有するポリマー、糖又は炭水化物、塩、及び任意選択により色素分子の1つ又は複数をさらに含むことができる。一実施形態では、カクテルは、ウシ血清アルブミン(BSA)、グリシン、塩、メトキシポリエチレングリコール、スクロース、及び任意選択により視覚化剤、例えば、プリントプロセスの視覚化を補助する色をもたらすブロモフェノールブルーをなど含有する。別の実施形態では、1〜20μLのカクテルが、分析デバイスの、例えば、保持チャンバー又は他の導管内の所望の表面上にプリントされ、デバイスのカバーとともに組み立てられる前に、空気乾燥させられる(加熱して、又は加熱せずに)。好適な実施形態では、試薬カクテル並びに試薬カクテルから形成される乾燥試薬コーティングは、ラクチトール、DEAE−デキストラン、塩化マグネシウム及び塩化ナトリウムなどの塩、IgG/IgM、ヘパリン、界面活性剤(単数又は複数)、並びにローダミンを含む。
【0085】
本発明の他の実施形態では、カートリッジは、複数の乾燥試薬コーティングを含むことができる(この場合、コーティングは、これらを区別するためにそれぞれ、第1の試薬コーティング、第2の試薬コーティングなどと呼ばれる場合がある)。例えば、白血球試薬を、第1の試薬コーティング中に含めることができ、この第1の試薬コーティングは、例えば、シグナル生成成分、例えば、非競合アッセイのためのシグナル抗体、又は競合アッセイのための標識分析物を含有する第2の試薬コーティングに隣接することができる。この態様では、第2の試薬コーティングは、第1の試薬コーティングの上流又は下流に位置することができるが、シグナル生成成分を含有する試薬コーティングは、犠牲ビーズを含有する試薬コーティングの下流に位置することが好ましい。好適な実施形態では、保持チャンバーは、白血球試薬及び任意選択により、様々な形態の干渉を改善する他の試薬、例えば犠牲ビーズを含む第1の試薬コーティングでコーティングされる。この態様では、シグナル生成成分を含む第2の試薬コーティングは、保持チャンバーの下流、例えば、免疫センサーのすぐ上流に位置されることが好ましい。
【0086】
いくつかの実施形態では、試薬カクテルは、白血球試薬及び任意選択により、他の干渉低減試薬、例えば、犠牲ビーズを含有するプリント可能水溶液として形成されることが好ましい。生体試料、例えば、血液を導入すると、試料は、アッセイの第1のステップで試薬と混合することが好ましい。いくつかの実施形態では、試薬は、化学特性及び流体特性に関してアッセイ性能を最適化するために、無機塩及び界面活性剤も含むことができる。さらなる実施形態では、試薬は、任意選択の添加剤、例えば、適切な抗凝固を保証するための抗凝固剤(anticoagulant)若しくは抗凝固剤(anticoagulation agent)(例えば、ヘパリン)、及び/又はプリント後の試薬の位置を視覚化するための視覚化剤(例えば、色素若しくは着色剤)などを含むことができる。微生物の増殖を阻害するためのアジ化ナトリウムなどの安定剤、及びタンパク質を安定化するためのラクチトールとジエチルアミノエチル−デキストランの混合物(Applied Enzyme Technologies Ltd.、Monmouth House、Mamhilad Park、Pontypool、NP4 0HZ UK)も任意選択により存在する。デバイス中に堆積させたら、堆積した試薬は、例えば、温空気のストリームの中で30〜60分間乾燥させることができる。一実施形態では、試薬は、自動化プリント機器を使用してデバイスの試料入口内にプリントされ、乾燥されて、白血球試薬含有コーティング層を形成する。
【0087】
IV.犠牲ビーズ
上記に示したように、1つ又は複数の白血球試薬を使用することに加えて、試料、例えば、血液試料を、試料と均質に混合された犠牲ビーズ又はデコイビーズ(decoy bead)を用いてさらに改質することができ、この場合、ビーズは、白血球に関して特異的にオプソニン化されている。
【0088】
本発明の一実施形態では、犠牲ビーズは、動物種から単離された非ヒトIgG(IgGクラスの免疫グロブリン)又はその断片でコーティングされる。本明細書で使用する場合、用語「断片」は、指定された分子に由来する任意のエピトープ担持断片を指す。したがって、IgG断片は、例えば、エピトープ担持F(ab’)2断片若しくはFab断片、又はFc断片を含むことができる。さらに、「IgG又はその断片」という語句は、IgG単独、IgG断片単独(すなわち、IgGのF(ab’)2断片、Fab断片、及び/若しくはFc断片の1つ若しくは複数)、又はIgGとIgG断片の組合せを意味する。表面コーティングが、アッセイされる試料に曝された後にオプソニン化され、又はオプソニン化可能(opsonizable)である限り、所望の効果を、様々な表面コーティングを用いて実現することができる。
上記に示したように、好適な実施形態では、犠牲ビーズは、乾燥試薬コーティング中に組み込まれ、この乾燥試薬コーティングは、いくつかの実施形態では、シグナル生成試薬(例えば、非競合アッセイのためのシグナル抗体、若しくは競合アッセイのための標識分析物)、又は白血球試薬を含有する、同じ乾燥試薬コーティングとすることができる。したがって、本発明の一実施形態では、分析デバイスは、(a)白血球試薬、(b)白血球の作用を改善するのに適した成分、例えば、IgG若しくはその断片でコーティングされたビーズ、及び/又は(c)シグナル抗体若しくは標識分析物などのシグナル生成試薬のいずれか、又は両方を含む乾燥試薬コーティングを含む。
【0089】
V.添加剤
本発明のいくつかの実施形態では、添加剤を、カートリッジ内に含め、又はアッセイとともに使用することができる。ある特定の実施形態では、抗凝固剤を添加することができる。例えば、いくつかの実施形態では、試料が、ヘパリン化された管内に収集されなかった、又はヘパリン化された管内で適切に混合されなかった場合に、性能を改善するためにヘパリンを添加することができる。新鮮なヘパリン化されていない血液が、カートリッジのアッセイサイクルの間、一般に2〜20分の範囲内で、凝血しないままであるように、十分な量のヘパリンが添加される。他の実施形態では、イムノアッセイの分野で公知の異好性抗体問題に対処するためにヤギIgG及びマウスIgGを添加することができる。さらに他の実施形態では、プロクリン、DEAE−デキストラン、tris緩衝液、及びラクチトールのうちの1つ又は複数を、試薬安定剤として添加することができる。他の実施形態では、例えば、ポリソルベート20(Tween−20)などの界面活性剤を添加することによって、タンパク質が、カートリッジに好適な物質であるプラスチックに結合するのを低減することができる。界面活性剤の添加はまた、試薬がプラスチック表面を均等にコーティングするのを促進し、ラクチトールなどの糖の結晶化を最小限にする不純物として作用する。本発明の他の実施形態では、抗菌剤又は殺生物剤(例えば、アジ化ナトリウム)を添加することによって、細菌増殖を阻害することができる。
【0090】
VI.プリントカクテル(print cocktail)の調製及びプリント
好適な実施形態では、ベースプリントカクテルは、1リットル(L)のバッチについて以下のように調製される。タンパク質安定化溶液(PSS、AET Ltd.、50%の固体、100.0g)が、塩化ナトリウム(8.00g)及びアジ化ナトリウム(0.500g)の水溶液200〜250mLに添加され、得られた溶液は、1L容のフラスコに移される。マウスIgGの溶液は、マウスIgG(0.9g)を脱イオン水75mLに添加することによって調製され、溶解が完全になるまで15〜60分間撹拌される。ヤギIgGの同様に濃縮された溶液も同一の様式で調製され、両溶液は、1.2μMのフィルターを通して濾過される。マウスIgMは、供給者(例えば、Sigma−Aldrich)から液体として得られる。3つの免疫グロブリン(Ig)原液のそれぞれのタンパク質濃度は、280nmで、分光光度法で測定される。マウスIgG(0.75g)、ヤギIgG(0.75g)、及びマウスIgM(25mg)を提供するのに必要とされるこれらのIg溶液の質量が計算され、これらの量がプリント溶液(printing solution)に添加される。ジエチルアミノエチル−デキストラン(DEAE−デキストラン)の溶液は、DEAE−デキストラン(2.5g)を脱イオン水50〜100mLに添加し、30分間撹拌することによって調製される。このDEAE−デキストラン溶液は、プリント溶液に添加される。これに、ナトリウムヘパリン(10,000IU/mL、3.00mL)、Tween−20(3.00g)、及びローダミンの5%(重量/体積)の水溶液(200μL)が添加される。得られた溶液は、脱イオン水で1.000Lに希釈され、使用されるまでフリーザー又は冷蔵庫内で貯蔵される。含められる場合、白血球干渉軽減のためのIgGコート微粒子を、この最終的な希釈の前に添加することができる。同様に、上述したタイプの白血球試薬を、最終的な希釈の前、又は検査デバイス、例えば、
図1〜6に示された一般的なタイプのカートリッジ内への堆積の直前に添加することができる。
【0091】
本発明の様々な実施形態では、カートリッジコンポーネント上に乾燥試薬コーティングを形成するために、プリントカクテル及び同様の流体をプリントするステップは、好ましくは、その全体が参照により本明細書に組み込まれている、Cozzetteらの米国特許第5,554,339号(「’339特許」)に開示されているように、自動化され、コンポーネントを整列させるためのカメラ及びコンピューターシステムを含むマイクロディスペンシングシステムに基づく。’339特許において、ウエハーチャックは、プラスチックカートリッジのベースをディスペンシングヘッドに送るためのトラックに取り替えられる。トラックは、所定の配向でベースをヘッドに差し出すことによって、一貫した位置での分注を保証する。
【0092】
VII.収集及び分析
本発明の様々な実施形態によれば、白血球試薬、及び(使用される場合)犠牲ビーズは、試料収集デバイス、例えば、キャピラリー、Vacutainer(商標)、又はシリンジ内に組み込むことができる。いくつかの実施形態では、白血球試薬コーティングは、収集デバイスの内壁上に形成することができる。したがって、一実施形態では、本発明は、イムノアッセイを実施するためのキットであって、白血球試薬を含み、これは、第1の容器又は位置において血液試料を改質するのに最初に使用され、次いで試料が、捕捉抗体及びシグナル抗体を有する第2の容器又は位置に送られるキットに対するものである。
【0093】
別の実施形態では、白血球試薬は、溶液中に含め、生体試料、例えば、血液と混合することができ、得られる改質された試料は、分析デバイス、例えば、カートリッジ中に導入される。一実施形態では、例えば、血液試料は、白血球試薬(及び任意選択により犠牲ビーズ)と混合されることによって、改質された試料を形成することができ、次いでこれは、分析デバイス、例えば、カートリッジ中に導入される。別の態様では、デバイスは、白血球試薬、及び任意選択により犠牲ビーズを含む液体を含むポーチをその中に含み、これは、デバイス中で血液試料と混合され、次いで概ね本明細書に記載されるように処理されることによって分析物検出のためのアッセイ、例えば、サンドイッチアッセイを形成することができる。
【0094】
さらに別の実施形態では、白血球試薬を含む第1の液体を、例えば血液などの液体生体試料と混合するのに、エレクトロウェッティングが使用される。この実施形態では、液滴を操作するための装置が提供される場合がある。この装置は、例えば、すべての導電性エレメントが、液滴が操作される1つの表面上に含まれる、片面の電極設計を有することができる。他の実施形態では、操作される液滴を入れる目的のために、第1の表面と平行に追加の表面を提供することができる。液滴は、エレクトロウェッティングに基づく技法を実施することによって操作され、この技法において、第1の表面上に含まれ、又はこの表面中に埋め込まれた電極が、制御された様式で順次電圧を印加され、電圧を切られる。装置は、2つの液滴を一緒に合わせ、混合すること、1つの液滴を2つ以上の液滴に分割すること、流れから個々に制御可能な液滴を形成することによって連続する液体の流れを試料採取すること、及び所望の混合比を得るために液滴を繰り返して二成分混合又はデジタル混合することを含めた、いくつかの液滴操作プロセスを可能にすることができる。このようにして、白血球試薬及び他の試薬(例えば、犠牲ビーズ)含む第1の液体の液滴は、液体生体試料、例えば、血液を慎重に且つ制御可能に合わせ、混合することができる。(例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれている、Pamulaらの米国特許第6,911,132号を参照されたい)。
【0095】
VIII.免疫センサーの実施形態、及びそれに関係した方法
本発明は、イムノアッセイシステムに広く適用可能であるが、上記に引用された共同所有の係属中及び発行済み特許に記載されているように、i−STAT(登録商標)イムノアッセイシステム(Abbott Point of Care Inc.、Princeton、New Jersey, 米国)との関連で最良に理解される。その全体が参照により本明細書に組み込まれている、2009年12月18日に出願された、「Foldable Cartridge Housings for Sample Analysis」という表題の米国特許出願第61/288,189号も参照されたい。様々な実施形態では、このシステムは、アッセイの間に起こる非特異的結合(NSB)の程度を評価する目的で、免疫参照センサー(例えば、上記に参照した、その全体が参照により本明細書に組み込まれている、Millerらの米国特許出願公開第2006/0160164号を参照されたい)を使用する。NSBは、不十分な洗浄、又は干渉の存在のために発生し得る。アッセイからの正味のシグナルは、免疫参照センサーから生じる非特異的シグナルを減じることによって補正された、分析物免疫センサーから生じる特異的シグナルを含む。免疫参照センサーにおけるシグナルの量は、品質管理アルゴリズムによって定義される限界に支配される。
【0096】
本発明の実施形態は、i−STAT(登録商標)イムノアッセイ形式の、白血球によって引き起こされる干渉に対する耐性を改善するが、そのような実施形態は、細胞が分析媒質中に存在する場合、標準的なELISA形式にも同様に適用可能である。いくつかの実施形態では、白血球干渉を低減又は排除するために、試料は、好ましくは本発明の白血球試薬と組み合わせて、犠牲ビーズを用いて改質される。
【0097】
従来のサンドイッチアッセイは、白血球レベルが高い生体試料について誤った結果を生じる場合がある一方で、先のi−STAT(登録商標)システムアッセイは、システムが、偽シグナルを検出し、エラーコードでユーザーに警告し、結果が表示されることを抑制するアルゴリズムを含むので、これらの試料について、以前に不正確な結果を報告しなかったことは注目されるべきである。これは、信頼できるポイントオブケア検査のための品質システムの一実施形態である。このようにして、分析システムの品質及び完全性が維持される。
【0098】
意外にも、且つ予想外に、白血球試薬を含有する改良されたカートリッジが試験され、結果がこれらの物質を欠く従来のカートリッジと比較されたとき、結果は、白血球試薬が使用される場合、従来のカートリッジで白血球干渉を示す血液試料を、正確に分析することができることを実証した。
【0099】
本発明の要旨に関して、ある特定のイムノアッセイ検査カートリッジ、特にBNPカートリッジが、以前に知られていない干渉機構から生じる予期しない正及び負の傾きをした波形を示すことが発見された。例えば、それぞれ
図11(a)及び(b)を参照されたい。これにより、洗浄ステップの間に電極を正電位にパルシングする効果についての実験に基づいて、干渉の機構に関する仮説が導かれた。
図11(c)及び(d)に示したように、理論に基づいて予期される通常の免疫センサー応答は、低分析物濃度でゼロ付近の傾きを有し、測定が酵素限界ではなく、基質限界となり得る高分析物濃度でのみ、負の傾きが予期される。
【0100】
動的な(非定常状態)電流測定シグナルを引き起こすいくつかの潜在的な機構が存在する。動的な電極活性(有効電極面積の変化)はありそうになく、その理由は、電極は、ポリビニルアルコール(PVA)層上の固定化されたアッセイビーズ(微粒子)の存在のために、形成されるエレメントから隔離されており、そのどちらも血漿試料中でこの効果を示さないためである。動的な層厚、例えば、流体との接触に応じた上記コンポーネントの膨張又は縮小はありそうになく、その理由は、正及び負の傾きの両方を誘発する現象の原動力がまったく存在しないためである。酵素の動的なカバー率(例えば、ALP、酵素の表面濃度の変化)は除外され、その理由は、薄層形式において、測定の時間スケールにわたって、センサーから酵素(例えば、ALP)が拡散することは可能でないためである。酵素基質、例えば、パラ−アミノフェノールホスフェート(p−APP)の電極表面への動的な輸送は、相対的に小さく、拡散が相対的に容易である(D≒5×10
−6cm
2/s)分子のサイズを考慮するとありそうにない。したがって、消去プロセスによって、動的なALP活性が、動的なセンサーシグナルの最も可能性のある原因と考えられたので、この機構を評価するためにさらなる調査を行った。ALPによるp−アミノフェニルホスフェートの加水分解は、pH依存性であり、最適条件は、pH10付近であることが注目される。いくつかの実施形態では、カートリッジ内で、9.2の作業pHが使用され、その理由は、このわずかに低いpH値が免疫複合体の安定性を保証するためである。さらに、電極におけるパラ−アミノフェノール(p−AP)の酸化は、pH依存性であり、pHの低下1当たり約+59mVシフトすることが予期され、すなわち、より低いpHで、反応は、より強く推進されなければならず、すなわち、印加電位の上昇が必要とされる。
【0101】
微粒子プリント層の浸透性が、干渉成分との相互作用のために、センサー構造内の試料流体(pH7.4)が洗浄ステップの間に分析流体(pH9.2)と完全に置換することができない程度により低くなることになった実施形態では、これは、特に、分析流体の流入箇所から最も遠い領域で起こる電極反応について、準最適な検出ステップのpHをもたらす。この流体置換の障害は、経時的に緩和するpH勾配を作り出す。酵素反応及び電極反応の相対速度が変化するので、観察されるシグナルも変化することになる。この技術的な評価は、これが正及び負の傾きのシグナルの両方を説明するという相当な利点を有する。例えば、
図11(a)及び(b)を参照されたい。
【0102】
観察される干渉が、微粒子層の「詰まり」又は「ファウリング」による不完全な洗浄ステップと関連するという概念は、洗浄ステップの間に、極端な電位までパルスを印加することによって、例えば、酸化電位までパルスを印加することによってさらに評価された。正の傾きの波形は、不活性な遮断されたセンサーによって引き起こされる場合があり、分析ステップの前に電極を浄化するために、パルシングを使用することができることが期待された。通常の試料における洗浄ステップの間に酸化パルスを印加しても、観察されるシグナルに対して、及び引き続く分析において効果はまったくないことが観察された。
図12(a)を参照されたい。しかし、異常な高バフィー試料の場合では、パルシングの効果は、大きくて動的なシグナルであり、さらに、これらのシグナルは、分析物の濃度を考慮して予期されるより大きかった。
図12(b)を参照されたい。
【0103】
これらの2つの場合における酸化電位パルスに対する応答の差異は、センサー構造内の流体が実際に異なることを実証した。期待されたように、正しい応答は、センサー上に所望の分析流体が存在したことから生じ、一方、異常な応答は、センサー構造上の流体が、血漿、又は血漿と分析流体の組合せであったために生じた。応答の差異は、以下のように理解することができる:酸化パルスは、H
2O→1/2O
2+2H
++2e
−によって、酸素を発生させ、pHを低下させる。
【0104】
pH9.2に緩衝された分析流体を含有するセンサー構造の場合では、電極で発生するプロトンは、緩衝液(分析流体中100mMの炭酸塩)の存在下で急速に消費された。しかし、分析流体によって得られる緩衝作用の非存在下で、プロトンは電極領域内で残り続け、酸性流体のプルームをもたらした。この酸性プルームは、pAPPのpAPへの酸触媒加水分解をもたらし、期待されるより大きいシグナルを生成した。具体的には、異常波形は、pAPPに対する酵素、例えば、ALPの酵素作用、及びまた、非酵素的な酸触媒加水分解によって生成されたpAPから生じた。
【0105】
酸触媒加水分解反応は、p−アミノフェニルホスフェートについては、アミノ基が、低pHでプロトン化されるようにプロトン化されない限り、有意に起こらないことが注目される。これは、反応がパラ位において強い電子吸引性置換基を必要とするためである(Barnardら、J.Chem.Soc.(1966)、227〜235)。当技術分野で知られているように、−NH
2置換基は著しく電子供与性であるが、プロトン化すると、−NH
3+置換基は非常に電子求引性になる(−NO
2よりさえも電子吸引性になる;例えば、Hammetのパラ−ρ値は、−NH
2について−0.66、−NH
3+について1.70である)。
【0106】
これらの実験は、観察される干渉を「高バフィー」試料と関係づけ、富化されたバフィーコートとともに全血試料を流すことによって意図的に引き出すことができた。この用語は、血液試料が遠心分離されるとき、血漿−赤血球境界で形成する白血球と血小板の層に与えられる。白血球、及び潜在的に血小板をファウリング作用物質として関係させるさらなる証拠が、顕微鏡写真の
図17(a)(犠牲ビーズ又は白血球試薬を使用しないアッセイ)、及び
図17(b)(犠牲ビーズを使用した後のアッセイ)に示されている。比較のために、血液試料と接触させる前の無垢の免疫センサーが、
図20に例示されている。センサーへの白血球の接着を低減することにおける白血球試薬の使用についての視覚的な確認をもたらす、同様の結果が得られた。
【0107】
図17(a)は、10分のセンサーインキュベーション時間とともに、標準的な測定サイクルを使用して高バフィー試料(1μL当たり約10
5個の白血球)に曝されたセンサーを示す。試料は、オプソニン化された犠牲ビーズ、又はいずれの白血球試薬にも曝されなかった。アッセイビーズでコーティングされたセンサー表面の一部は、細胞の接着層で覆われていることが明らかであり、これは、洗浄ステップによって容易に除去されなかった。
【0108】
対照的に、
図17(b)は、10分のセンサーインキュベーション時間とともに、標準的な測定サイクルを使用して高バフィー試料(1μL当たり約10
5個の白血球)に曝されたセンサーを示す。しかし、
図17(a)に示したアッセイと対照的に、
図17(b)に示した試料は、オプソニン化された(IgGでコーティングされた)犠牲ビーズに曝された。アッセイビーズでコーティングされたセンサー表面の一部は、洗浄ステップ後に
図17(a)と比較した場合、接着細胞が著しく少なかったことが明らかである。
【0109】
IgGはオプソニンとして作用し、オプソニンは、例えば、白血球による食作用について病原体をマーキングすることができる物質である。IgGは一般に、共同所有された、係属中の米国出願第12/411,325号に記載された異好性抗体干渉を管理するために、イムノアッセイに添加され、本明細書に記載されるBNPカートリッジ中のアッセイビーズ上に存在する。その結果として、IgGのこの源(イムノアッセイデバイス中に存在する場合)、又は血液試料中に天然に存在するIgGは、白血球に対してセンサー表面を望ましくなくオプソニン化するように作用する場合がある可能性がある。さらに、アッセイビーズは、食作用の天然の標的である生体細胞(細菌)とサイズが同様であるので、アッセイビーズ上のIgGの蓄積は、これらのビーズ上の白血球の蓄積を望ましくなく促進していることが考えられる。これは、高白血球数を有する試料、及びおそらく、活性化された免疫状態を有する試料において観察される干渉と一致する。本発明は、白血球試薬、任意選択により、IgGでコーティングされた犠牲微粒子を用いた試料の改質が、センサー上の主要な免疫試薬から白血球活性をそらすように白血球活性を減少させるための手段をもたらす、この白血球干渉に対する解決策を提供する。
【0110】
上記に示したように、いくつかの実施形態では、試料は、白血球試薬に加えて、犠牲ビーズを用いて改質される。IgGコート微粒子の調製は、アッセイビーズを調製するのに使用される方法と類似の方法を使用して行うことができる。この方法は、MES緩衝液(2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸)中でのカルボキシル化ポリスチレン微粒子上へのIgGの吸着、その後のEDAC(1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド)の存在下での架橋を伴う。
【0111】
次に、犠牲ビーズを形成するための限定されない一方法が説明される。好適な手順では、未処理の微粒子は、その基質(水中10%の微粒子、Seradyn)から、18,000RCF(相対遠心力)で20分間遠心分離することによってペレット化され、25mMのMES緩衝液中で、100〜200mg/mLの微粒子の濃度に再懸濁される。次いで、25mMのMES緩衝液中に溶解したIgGが、微粒子の重量の約1〜5%に等しい量で添加される。冷蔵庫内で15〜20分、転頭運動させた後、微粒子は、1300RCFで20分間遠心分離することによってペレット化され、新鮮なMES緩衝液中で、75mg/mLの濃度に再懸濁される。IgGが微粒子上に吸収されたことを確認するために、280nmで吸光度を測定することによって、遠心分離からの上澄みが、タンパク質含量についてアッセイされる(1mL当たり1mgのタンパク質当たり1.4AUの有効吸光係数)。新たに調製されたEDAC架橋剤(MES緩衝液中10mM)が再懸濁された微粒子に添加されて、約2〜4mMの最終濃度にされる。次いでこの混合物は、冷蔵庫内で120±15分間、転頭運動によって撹拌される。次いで微粒子は、1300RCFで20分間遠心分離することによって再びペレット化し、1/5PPS(リン酸緩衝食塩水)中に再懸濁し、冷蔵庫内で15〜30分間、転頭運動させることができる。最後の遠心分離の後、PBS+0.05%のアジ化ナトリウム、又は1:1の1/5PPB:PSS(1/5PPBは、4部の水で希釈されたPBSである、PSS=タンパク質安定化溶液、Applied Enzyme Technologies、Ponypool、英国)中で、10%の固体の濃度に、微粒子を再懸濁することができる。得られる配合物を、アリコートし、好ましくは−60℃で凍結貯蔵することができる。このプロセスによって形成されたPBS中に懸濁された微粒子が、本明細書に記載される実験において使用され、血液試料中に直接投与された。
【0112】
本明細書に記載される実験において使用するために記載される、富化された、又は高いバフィー全血試料の調製は、以下の通りであった。新鮮な全血がドナーから抜き取られて2つの6mLのEDTA抗凝固処理Vacutainers(商標)中に入れられ、2000RCF(標準的な回転子)で10分間遠心分離された。BNP「陽性」試料が望まれた場合、管は、遠心分離の前にBNP抗原でスパイクされた。血漿/バフィーコート/赤血球界面の上の最後の1ミリメートルを除く血漿のすべてが引き出され、確保された。次いで二面間の領域が、ピペッターを使用して(可能な限り多くのバフィーコート層を取り出す意図で)引き出され、確保された。次いで、赤血球が取り出され、確保された。バフィーコート物質を血漿画分及び赤血球画分のより少ない部分と再び合わせることによって、通常の試料ヘマトクリット、例えば、35〜55wt.%を保持しながら、高バフィー血液試料を作り出すことが可能であった。同様に、存在するバフィー物質(白血球及び血小板)が少ない、又は本質的にまったくない試料を作り出すことができる。
【0113】
実験において、BNP検査カートリッジを、(i)高バフィー試料、(ii)実行する直前に、PBS中、IgG(μP−IgG)でコーティングされた10重量パーセントの微粒子の10容量パーセントの懸濁液で処理された高バフィー試料、(iii)高ヘマトクリット無白血球試料、及び(iv)低ヘマトクリット無白血球試料を用いて試験した。
【0114】
図21は、電気化学的免疫センサーのシグナルの傾きに対する白血球干渉の作用、及び傾きに対する犠牲微粒子処理の効果を例示するグラフデータを含む。右パネル及び左パネル中に例示されているのは、通常の全血試料(右パネル)、及び高バフィー血液試料(富化された白血球、高バフィー、左パネル)についての、正味のシグナル(x軸)の関数としてプロットされたセンサー傾き(y軸)である。左パネルは、犠牲微粒子の非存在下で(サブロット1)、高バフィー試料中で観察されるシグナルの傾きの相当なばらつきを例示する。このばらつきは、犠牲微粒子の存在下で(サブロット2及びサブロット3)実質的に改善された。最小のシグナルの傾きのばらつきが、犠牲微粒子を含む、及び含まない両方の通常の全血試料(右パネル)において観察された。
【0115】
アッセイ後のセンサーの顕微鏡検査により、高バフィー(HB)中で実行されたチップ上に厚い堆積物が存在し、HB/μP−IgG中で実行された試料上に堆積物が存在しないことが明らかになった。免疫センサーの顕微鏡写真は、
図17(a)及び17(b)に示され、その関連する分析器の波形が、それぞれ
図22(a)及び(b)に例示されている。
図20に例示されたような、血液試料と接触する前の無垢の免疫センサーと、犠牲ビーズで処理された血液と接触した後の免疫センサー(
図17(b))との比較から、視覚的に著しい改善、すなわち、
図17(a)と比較した接着白血球の低減があることが明らかである。多くの観察に基づくと、この視覚的な改善は、免疫センサーの性能の実際の改善と直接相関する。
【0116】
追加の実験により、干渉現象は、血漿単独中、又は血小板を含有するが、白血球を含有しない試料中で起こらず、しかし、高バフィーレベルを含有する試料中のみで起こることが示された。さらに、IgGでコーティングされたより小さい微粒子、例えば、平均粒径が0.2μm未満のものは、センサーの傾きに対して、より大きい粒子が有するのと同じ干渉軽減効果を有さない。好ましくは、IgGコート微粒子(犠牲ビーズ)の平均粒径は、白血球試薬(単数又は複数)とともに含められる場合、0.01〜20μm、例えば、0.1〜20μm、1〜10μm、0.1〜5μm、又は2〜5μmである。犠牲微粒子の粒径分布は、単峰性であることが好ましいが、多峰性分布も可能である。主として、正しいサイズであり、オプソニン化され得る任意の粒子を使用することができるが、ポリスチレンビーズが好適である。本発明の好適な実施形態では、ヤギIgG又はヒツジIgGでコーティングされた粒子が使用されるが、例えば、マウスIgG又はウサギIgGなどの他のIgG源も使用することができる。一般に、微粒子のサイズは重要であるが、その組成又はIgGの源は重要でないことが見出された。犠牲ビーズに関して、ビーズは、使用される場合、好ましくは、ポリスチレン、ポリアクリル酸、及びデキストランからなる群から選択される物質で形成される基質ビーズを含み、約0.01μm〜約20μmの範囲内の平均粒径、より好ましくは0.1μm〜5μm、又は約2μm〜約5μmの範囲内の平均粒径を有することができる。球状ビーズを使用することが好適であるが、他の実施形態では、他のビーズ形状及び構造、例えば、楕円形、亜球状、円柱状、及び他の不規則な形状をした粒子も、本明細書で使用及び定義される用語「ビーズ」及び「微粒子」の意味の範囲内である。本明細書で使用する場合、用語「平均粒径」は、当技術分野で周知の方法によって求められる場合の、粒子の平均最長寸法、例えば、球状粒子の直径を指す。
【0117】
まとめると、実験データは、白血球が、センサーの浸透性が洗浄サイクル中でより低くなる現象の主原因であり、このイムノアッセイ干渉は、アッセイ媒質にIgGでコーティングされた犠牲粒子を添加することによって改善することができるという結論を支持する。
【0118】
本発明の免疫センサーの好適な実施形態のウエハーレベルの微細加工は、以下の通りである。
図9に示されるように、ベース電極94は、15μmの中心上に、7μmの金ディスクの正方形アレイを備える。アレイは、直径が約600μmの円形領域を覆い、Si/SiO
2/TiW/Auを含む一連の層でできた基板上に、厚さ0.35μmのポリイミドの薄層を光パターン形成することによって実現される。7μmの微小電極のアレイは、電気活性種の高収集効率をもたらし、露出した金属の電気容量に関連する任意の電気化学的バックグラウンド電流からの寄与が低減される。金属上にポリ(ビニルアルコール)(PVA)層を含めることにより、バックグラウンド電流の低減が著しく増強される。
【0119】
いくつかの実施形態では、多孔質PVA層は、ウエハー上の微小電極の上に、PVAとスチルビゾニウム(stilbizonium)光活性架橋剤の水性混合物をスピンコーティングすることによって調製される。スピンコーティング混合物は、ウシ血清アルブミン(BSA)を任意選択により含む。次いでウエハーは、光パターン形成されることによって、アレイの上及び周囲の領域のみを覆い、好ましくは、約0.6μmの厚さを有する。
【0120】
示差測定法の一般的な概念は、電気化学分野及びセンシング分野において公知である。電気化学的免疫センシングシステムにおいて干渉シグナルを低減するための新規手段が、これから説明される。しかし、これは、電流測定電気化学的センサーの組について記載されるが、これは、電位差測定センサー、電界効果トランジスタセンサー、及び電気伝導度測定センサーを含むがこれらに限定されない、他の電気化学的センシングシステムにおいても等しく有用なものである。本発明の実施形態は、光学センサー、例えば、エバネッセント波センサー、及び光導波路、並びに音波センシング及び温度測定センシングを含む他のタイプのセンシングなどにも適用可能である。したがって、本発明の様々な実施形態によれば、固定化抗体は、電流測定用電極、電位差測定用電極、電気伝導度測定用電極、光導波路、表面プラズモン共鳴センサー、音波センサー、及び圧電センサーからなる群から選択されるセンサーに付着させることができる。理想的には、非競合アッセイの実施形態では、免疫センサー(IS)からのシグナルは、固定化抗体(Ab1)、分析物、及び標識されたシグナル抗体(Ab2)を含むサンドイッチの構造からもっぱら由来し、スキーム(1)で以下に示されるように、標識(例えば、酵素)は基質(S)と反応することによって、検出可能な生成物(P)を形成する。
表面−Ab1−分析物−Ab2−酵素;酵素+S→P (1)
【0121】
スキーム(2)及び(3)で以下に示されるように、シグナル抗体(Ab2)の一部は、表面に非特異的に結合する場合があり、洗浄ステップの間に、免疫センサーの領域(最大約100ミクロン離れた)から完全に洗い流されない場合があり、それによって表面−Abl−分析物−Ab2−酵素イムノアッセイサンドイッチ構造の機能ではない、検出される生成物全体の一部を生じ、それによって干渉シグナルを作り出すことが知られている。
表面−Ab2−酵素;酵素+S→P (2)
表面−分析物−Ab2−酵素;酵素+S→P (3)
【0122】
上記に示したように、免疫参照センサー(IRS)として作用し、主免疫センサー上で起こるのと同じ(又は予想通りに関係した)程度のNSBを与える第2の免疫センサーを、カートリッジ内に任意選択により配置することができる。位一実施形態では、干渉は、この免疫参照センサーのシグナルを、主免疫センサーのシグナルから減じることによって低減することができ、すなわち、以下のスキーム(4)に示されるように、シグナルのNSB成分が除去され、アッセイの性能を改善する。別の実施形態では、補正は、追加のオフセット値の減算又は加算を任意選択により含んでもよい。
補正されたシグナル=IS−IRS (4)
【0123】
本発明の好適な実施形態では、参照免疫センサーは、免疫−参照センサーとも呼ばれ、すべての重要な点(例えば、寸法、多孔質スクリーニング層、ラテックス粒子コーティング、及び金属電極組成)において、分析物(例えば、cTnI)についての捕捉抗体が、高濃度で、試料(通常試料及び病理学的試料の両方)中に天然に存在する血漿タンパク質に対する抗体と置換されていることを除いて、主な免疫センサーと同じである。免疫センサー及び参照免疫センサーは、
図9に示されるように、シリコンチップ上に、それぞれ隣接する構造94及び96として作製することができる。好適な実施形態が、トロポニンI及びBNPアッセイについて記載されているが、この構造は、例えば、トロポニンT、クレアチンキナーゼMB、プロカルシトニン、proBNP、NTproBNP、ミオグロビンなどを含めた他の心臓マーカーアッセイ、並びに臨床診断において使用される他のサンドイッチアッセイ、例えば、PSA、D−二量体、CRP、HCG、NGAL、ミエロペルオキシダーゼ及びTSHにも有用である。
【0124】
血漿タンパク質に結合する適当な抗体の例には、ヒト血清アルブミン、フィブリノーゲン、及びIgG fc領域に対する抗体が含まれ、アルブミンが好適である。しかし、適切な抗体が入手可能である場合、約100ng/mL超の濃度で発生する任意の天然タンパク質又は血液成分を使用することができる。ただし、タンパク質は、分析物アッセイを実施するのに必要な時間と比較して急速にセンサーをコーティングするのに十分な量で存在するべきである。好適な実施形態では、タンパク質は、血液試料と接触して約100秒以内に、参照免疫センサー上の利用可能な抗体の50%超に結合するのに十分な濃度で血液試料中に存在する。一般に、第2の固定化抗体は、約1×10
−7〜約1×10
−15Mの親和定数を有する。例えば、血液試料中のアルブミンのモル濃度が約1×10
−4Mと高いために、約1×10
−10Mの親和定数を有するアルブミンに対する抗体が好適である。
【0125】
本発明の様々な実施形態によれば、試料に由来する天然アルブミンによって覆われた表面を提供することにより、存在し得る他のタンパク質及び細胞物質の結合が著しく低減される。この方法は、NSBを最小限にするために従来の遮断剤を使用する従来のイムノアッセイより一般に優れており、その理由は、これらの作用剤は、一般にドライダウンされ、使用するまで数カ月間又は数年間安定なままでなければならず、この時間の間にこれらは劣化する場合があり、望まれるより粘着性の表面を作り出し、古くなるとともに上昇するNSBをもたらすためである。対照的に、本発明の実施形態では、使用時に新鮮な表面が提供される。
【0126】
NSBの作用を低減するために示差測定法を実施するための、参照免疫センサーを伴った心臓脳性ナトリウム利尿ペプチド(cardiac brain natriuretic peptide)(BNP)用免疫センサーが、以下のように記載される。一実施形態では、抗BNP及び抗HSAでコーティングされた、カルボキシレート修飾ラテックス微粒子(Bangs Laboratories Inc.、Fishers、Indiana、米国、又はSeradyn Inc.、Indianapolis、Indiana、米国によって供給されている)は、ともに同じ方法で調製される。粒子は、遠心分離によって最初に緩衝液交換され、その後抗体が添加され、これは、粒子上に受動的に吸着させられる。次いで粒子上のカルボキシル基は、pH6.2のMES緩衝液中で、EDACで活性化されることによって、抗体にアミド結合を形成する。いずれのビーズ凝集物も遠心分離によって除去され、完成したビーズは凍結して貯蔵される。
【0127】
別の実施形態では、抗ヒト血清アルブミン(HSA)抗体について、ラテックスビーズを飽和被覆すると、ビーズ質量が約7%増加する。さらに別の実施形態では、コーティングされたビーズは、抗HSA 7mg及びビーズ100mgを含む混合物から、共有結合を使用して調製される。この配合物を使用して、脱イオン水中に約1%の固体を含む約0.4nLの液滴が、光パターン形成された多孔質PVA選択透過性層カバーセンサー96上に微量分注され(上で参照され、その全体が参照により本明細書に組み込まれている、米国特許第5,554,339号の方法及び装置を使用して)、乾燥される。乾燥した粒子は多孔質層に接着し、血液試料又は洗浄流体中にこれらが溶解するのを実質的に防止する。
【0128】
本発明の一実施形態では、BNP抗体について、ラテックスビーズ表面を飽和被覆すると、ビーズの質量が約10%増加する。したがって、抗BNP 10mgをカップリング試薬とともにビーズ100mgに添加することによって、飽和被覆が実現された。次いでこれらのビーズは、センサー94上に微量分注された。
【0129】
別の実施形態では、免疫センサー94は、血漿タンパク質抗体、例えば、抗HSA、及び分析物抗体、例えば、抗BNPの両方を有するビーズでコーティングされる。抗BNPで飽和コーティングされたビーズ100mg当たり抗HSA約2mg以下で作製されたラテックスビーズは、免疫センサーにおいて優れたNSB特性を示した。利用可能な分析物(抗原)を捕捉するのに、ビーズ上に十分な抗BNPが存在するので、トロポニンアッセイの勾配(シグナル対分析物濃度)は、実質的に影響されないことが見出された。様々な抗体についてのビーズの飽和濃度、及び標的分析物に対する抗体のみを含むビーズを有する免疫センサーの勾配を求めることによって、抗体の組合せの適切な比を、所与の分析物及び血漿タンパク質の両方に対する抗体を有するビーズについて求めることができる。
【0130】
参照免疫センサーを有する免疫センサーの重要な態様は、血漿タンパク質、好ましくはHSA/抗HSAの組合せの層によって作り出される表面の「ヒト化」である。この表面「ヒト化」は、ビーズの、抗体−酵素コンジュゲートのNSBへの傾向を少なくし、ビーズばらつきを低減するように思われる。理論によって束縛されることなく、センサーが試料によって覆われるにつれて、抗HSA表面のために、これらは天然アルブミンで急速にコーティングされると思われる。これは、製造中にドライダウンされ、一般に長い期間貯蔵された後に再水和される従来の遮断物質と比較して優れた結果を与える。センサー表面を「ヒト化する」ことの別の利点は、これが、ヒト抗マウス抗体(HAMA)及び他の異好性抗体の干渉に対する耐性の追加の機序をもたらすことである。HAMAのイムノアッセイに対する効果は周知である。
【0131】
別の実施形態では、免疫参照センサーは本発明のデバイス及び方法において使用され、分析サイクルの間に得られる洗浄効率をモニターする。上述したように、バックグラウンドノイズの1つの源は、依然として溶液中にある、又はセンサー上に非特異的に吸収され、洗浄ステップによって除去されない少量の酵素コンジュゲートである。本発明のこの態様は、例2に述べられているように、空気セグメントを導入することによって、小体積の洗浄流体を使用して、効率的な洗浄ステップを実施することに関する。
【0132】
電流測定の電気化学的システムである好適な実施形態を稼動する際、ALPの活性から生じる、免疫センサー94及び免疫参照センサー96におけるp−アミノフェノールの酸化に関連する電流が、分析器によって記録される。免疫センサー及び免疫参照センサーにおける電位は、銀−塩化銀参照電極に対して同じ値に保たれる。干渉の効果を除去するために、分析器は、上記式(4)に従って、免疫センサーのシグナルから免疫参照センサーのシグナルを減じる。2つのセンサーの間に特徴的な一定のオフセットが存在する場合、この値も減じられる。免疫参照センサーが、免疫センサーとすべて同じ非特異的特性を有することは必要でなく、免疫参照センサーがアッセイの洗浄部分及びNSB部分の両方において一貫して比例していることのみが必要である。一実施形態では、分析器に組み込まれたアルゴリズムは、2つのセンサー間の任意の他の本質的に一定の差異を捕らえることができる。
【0133】
免疫センサー単独ではなく、免疫センサーと免疫参照センサーの示差的組合せの使用は、アッセイに以下の改善をもたらす。好適な実施形態では、カートリッジの設計により、約10μLの血液試料中に溶解した約40〜50億の酵素コンジュゲート分子を生じる乾燥試薬が提供される。結合ステップ及び洗浄ステップの最後で、センサーにおける酵素分子の数は、約70,000である。好適な実施形態を用いた実験では、非特異的に結合したバックグラウンドとして、免疫センサー及び参照免疫センサー上に、平均で約200,000(±約150,000)の酵素分子が存在した。免疫参照センサーを用いた示差測定法を使用して、不確定度の約65%が除去され、アッセイの性能を著しく改善した。他の実施形態は、他の程度の改善を有することができるが、アッセイ性能の全体的な改善のための根本的なことが残っている。
【0134】
任意選択の免疫参照センサーの追加の用途は、例えば、不適切に抗凝固性の試料などの異常な試料状態を検出することであり、これは、導管全体にわたって物質を堆積させ、免疫センサー及び免疫参照センサーの両方で、測定される電流を増大させる。この作用は、非特異的に吸着された酵素、及び測定ステップの間に、センサー上の洗浄流体の薄層中に残っている酵素の両方に関連する。
【0135】
任意選択の免疫参照センサーの別の用途は、洗浄効率についてシグナルを補正することである。ある特定の実施形態では、免疫センサーにおけるシグナルのレベルは、洗浄の程度に依存する。例えば、より多くの流体/空気セグメントの移行を用いたより長い洗浄は、特異的に結合したコンジュゲートの一部が洗い流されるために、より低いシグナルレベルを与える場合がある。これは、相対的に小さい作用、例えば、5%未満である場合があるが、補正は、アッセイの全体的な性能を改善することができる。補正は、センサーにおける相対的なシグナルに基づいて、又は空気セグメント/流体の移行を検出し、その数を計数するためのセンサーとして作用する、センサーに隣接する導管内に配置された伝導率センサーとともに実現することができる。これは、分析器に組み込まれたアルゴリズム補正手段のためのインプットを提供する。
【0136】
内因性タンパク質、例えば、HSAを用いた参照免疫センサーの別の実施形態では、外因性タンパク質、例えば、ウシ血清アルブミン(BSA)に対する抗体でコーティングされた免疫参照センサーを有することによって同じ目的を実現することが可能である。この場合、センサーに接触させる前に、追加の試薬として提供される、試料中のBSAの一部を溶解させるステップが必要である。この溶解ステップは、カートリッジの試料保持チャンバー内、又は外部収集デバイス、例えば、BSAでコーティングされたシリンジ内で、乾燥試薬としてBSAを用いて行うことができる。この手法は、ある特定の利点を提供し、例えば、表面電荷、特異的な表面基、グリコシル化の程度などについてタンパク質を選択することができる。これらの特性は、内因性タンパク質の利用可能な選択肢中に必ずしも存在しなくてもよい。
【0137】
塩に加えて、他の試薬もイムノアッセイにおける全血精度(whole−blood precision)を改善することができる。これらの試薬は、迅速な溶解を促進するように血液試料に差し出されるべきである。いくつかの実施形態では、血液保持チャンバー(又は別の導管)の壁上にコーティングされる、セルロース、ポリビニルアルコール(PVA)、及びゼラチン(又はこれらの混合物)を含めた支持基質は、例えば、15秒未満以内に90%超完了する迅速な溶解を促進する。
【0138】
本発明のカートリッジは、試料及び第2の流体が、アッセイシーケンスの間の異なる時間にセンサーアレイに接触することができるという利点を有する。試料及び第2の流体はまた、それぞれの導管内に乾燥コーティングとして最初に存在する他の試薬又は化合物を用いて独立して改質することができる。カートリッジ内の液体の制御された動きはさらに、試料又は流体が導管の新しい領域に移されるときはいつでも、1つを超える物質が各液体中に改質されるのを可能にする。このようにして、各流体への複数の改質のための対応がなされ、実施することができる自動化されたアッセイの複雑性を大いに拡張し、したがって、本発明の有用性を増強する。
【0139】
使い捨てカートリッジでは、含まれる液体の量は、費用及びサイズを最小限にするために、少なく維持されることが好ましい。したがって、本発明では、導管内のセグメントは、少なくとも1回すすがれるセンサーアレイ上のセグメント又は他の領域の空気−液体界面を通過させることによって、導管の掃除及びすすぎを補助するのに使用することもできる。より多い量の流体による連続的なすすぎと比較して、より少ない流体を使用するより効率的なすすぎが本方法によって実現されることが見出された。
【0140】
導管内の制約は、本発明におけるいくつかの目的を果たす。一実施形態では、試料保持チャンバーと第1の導管の間に位置したキャピラリーストップは、十分な圧力がかけられることによって、キャピラリーストップの抵抗を克服するまで、保持チャンバー内の試料が移動するのを防止することによって、保持チャンバー内で試料計量を促進するのに使用される。別の実施形態では、第2の導管内の制約は、流体が狭窄部に到達するとき、廃棄物チャンバーに向かう代替経路に沿って洗浄流体をそらすのに使用される。ガスケット中の小さい穴が、疎水性コーティングと一緒に提供されることによって、十分な圧力がかけられるまで、第1の導管から第2の導管までの流れを防止する。本発明の導管内及び導管同士間の液体の流れを制御する機能は、本明細書で一括して「バルブ」と呼ばれる。
【0141】
本発明の一実施形態は、分析物センサー又は分析物センサーのアレイを含む第1の導管に試料保持チャンバーが接続された使い捨てカートリッジを提供する。流体をある程度含む第2の導管は、第1の導管に接続され、第2の導管内の流体中に空気セグメントを導入することによって、これを区分することができる。ポンプ手段が第1の導管内の試料を移動させるのに提供され、これは、流体を第2の導管から第1の導管へと移動させる。したがって、1つ又は複数のセンサーは、試料に最初に接触し、次いで第2の流体に接触することができる。
【0142】
別の実施形態では、カートリッジは、第1の導管と廃棄物チャンバーの間に位置した閉鎖可能な(closeable)バルブを含む。この実施形態は、第1の導管に接続された唯一のポンプ手段を使用して、第2の導管から第1の導管への流体の移動を可能にする。この実施形態はさらに、本発明のカートリッジの導管を効率的に洗浄することを可能にし、これは、小さい使い捨てカートリッジの重要な機能である。稼動中、試料は移動されてセンサーに接触し、次いで閉鎖可能なバルブを通じて廃棄物チャンバーへと移動される。濡れると、閉鎖可能なバルブは、廃棄物チャンバーへの開口部を密封し、気密シールをもたらし、これは、第1の導管に接続されたポンプ手段のみを使用して、第2の導管内の流体が引き込まれてセンサーに接触するのを可能にする。この実施形態では、閉鎖可能なバルブは、流体がこのようにして移動するのを可能にし、廃棄物チャンバーから第1の導管に空気が入るのを防止する。
【0143】
別の実施形態では、閉鎖可能なバルブ、及び導管中にセグメントを導入するための手段の両方が提供される。この実施形態は、多くの利点、その中でも、センサー又はセンサーのアレイ上で区分された流体を往復運動させる能力を有する。したがって、第1のセグメント又は一連のセグメントがセンサーをすすぐのに使用され、次いで新鮮なセグメントが、測定を行うためにこれを差し替える。1つのポンプ手段(第1の導管に接続された)だけが必要とされる。
【0144】
別の実施形態では、分析物測定は、分析物センサーをコーティングする液体の薄膜中で実施される。そのような薄膜判定は、電流測定で実施されることが好ましい。このカートリッジは、試料がバルブを通じて追い出されるとき密封される閉鎖バルブ、及び導管内の換気口であって、少なくとも1つの空気セグメントが測定流体中に引き続いて導入されることを可能にし、それによって、試料がセンサーからすすがれる効率を増大させ、さらに、測定前にセンサーから実質的にすべての液体を除去することを可能にし、なおさらに、精度を改善し、再現性を内部チェックするために、センサー全体に新鮮な液体のセグメントが運ばれるのを可能にすることによって、連続した、繰り返しの測定を可能にする換気口の両方を有することにおいて、前述の実施形態と異なる。
【0145】
非競合アッセイの実施形態では、上記に論じたように、低濃度の免疫活性分析物を検出するための分析スキームは、酵素標識抗体/分析物/表面結合抗体「サンドイッチ」複合体の形成に依拠する。試料中の分析物の濃度は、酵素の比例した表面濃度に変換される。酵素は、基質を検出可能な生成物に変換することによって、分析物の化学的なシグナルを増幅することができる。例えば、アルカリホスファターゼが酵素である場合、1個の酵素分子は、1分当たり約9000の検出可能な分子を生成することができ、電気活性種がアルカリホスファターゼの代わりに抗体に結合されるスキームと比較して、分析物の検出性が数桁改善される。
【0146】
免疫センサーの実施形態では、センサーを最初に試料と、次いで、センサーからの応答を記録する前に洗浄流体と接触させるのが有利である。いくつかの特定の実施形態では、白血球干渉を低減するために、IgGコート微粒子を用いて改質されることに加えて、試料は、改質された試料がセンサーと接触する前に、試料内の対象とする分析物に結合する抗体−酵素コンジュゲート(シグナル抗体)を用いて改質される。試料中の結合反応により、分析物/抗体−酵素複合体が生成される。センサーは、電極表面付近に付着される分析物に対する固定化抗体を含む。センサーに接触すると、分析物/抗体−酵素複合体は、電極表面付近で固体化抗体に結合する。この時点で、可能な限り多くの非結合抗体−酵素コンジュゲートを電極の近傍から除去することによって、センサーからのバックグラウンドシグナルを最小にすることが有利である。抗体−酵素複合体の酵素は、有利には、流体中に供給される基質を変換することによって、電気化学的に活性な種を生成することができる。この活性種は電極付近で生成され、適当な電位が印加されるとき、電極での酸化還元反応から電流をもたらす(電流測定動作)。或いは、電気活性種がイオンである場合、これは、電位差測定で測定することができる。電流測定では、電位は、測定の間固定するか、又は所定の波形に従って変更することができる。例えば、サイクリックボルタンメトリーの周知技法において使用されるように、限度間で電位をスイープするのに三角波を使用することができる。或いは、矩形波などのデジタル技法を使用することによって、電極に隣接する電気活性種の検出の感度を改善することができる。電流又は電圧測定から、試料中の分析物の量又は存在が計算される。これら及び他の分析的電気化学的方法は、当技術分野で周知である。
【0147】
カートリッジが免疫センサーを含む実施形態では、免疫センサーは、有利には、非反応性金属、例えば、金、白金、又はイリジウムなどのベースセンサー、及び微粒子、例えば、ラテックス粒子に付着された生理活性層を重ね合わされた多孔質選択透過性層から微細加工される。微粒子は、電極表面を覆う多孔質層上に分配され、接着した、多孔質生理活性層を形成する。生理活性層は、対象とする分析物に特異的に結合する特性、又は分析物が存在するとき、検出可能な変化を現す特性を有し、分析物に対する固定化抗体であることが最も好ましい。
【0148】
図面を参照すると、本発明のカートリッジは、カバー(
図1及び2に示される実施形態)、ベース(
図4に示される実施形態)、及びベースとカバーの間に配置された薄膜接着性ガスケット(
図3に示される実施形態)を備える。
図1を参照すると、カバー1は、剛性の物質、好ましくはプラスチックでできており、ひびが入ることなく、可動性のヒンジ領域5、9、10で繰り返し変形することができる。カバーは、可動性ヒンジ9によってカバーの本体に取り付けられた蓋2を備える。稼動中、試料を試料保持チャンバー34内に導入した後、蓋は、試料流入ポート4の入口上に固定され、試料の漏れを防止することができ、蓋は、フック3によって所定の位置に保持される。カバーは、2つのパドル6、7をさらに備え、これらは、カバーの本体に対して移動することができ、可動性のヒンジ領域5、10によって本体に取り付けられている。さらに、稼動中、ポンプ手段によって操作されるとき、パドル6は、薄膜ガスケット21によって覆われた、空洞43を備える空気ブラダー(air bladder)に力をかけることによって、カートリッジの導管内の流体を移動させる。第2のポンプ手段によって操作されるとき、パドル7は、ガスケット21に力をかけ、これは、その中に切られたスリット22のために変形することができる。カートリッジは、読取装置内に挿入するように適応されており、したがって、この目的のために複数の機械的及び電気的接続を有する。本発明の別の実施形態では、カートリッジを手動で操作することが可能である。
【0149】
読取装置内にカートリッジを挿入すると、ガスケットは、空洞42内に位置した、分析/洗浄液(「流体」)約130μLで満たされた流体の入ったホイルパック上に圧力を伝達し、スパイク38上でパッケージを破裂させ、短い、横断する導管を介してセンサーの導管に接続された導管39内に流体を排出する。分析流体は、最初に分析導管の前部を満たし、キャピラリーストップとして作用するテープガスケット中の小さい開口部上に流体を押しつける。カートリッジに施される分析器の機構の他の動作は、分析導管内の制御された位置で、1つ又は複数のセグメントを分析流体中に投入するのに使用される。これらのセグメントは、最少の流体を用いてセンサー表面及び周囲の導管の洗浄を補助するのに使用される。
【0150】
いくつかの実施形態では、カバーは、薄い柔軟膜8によって覆われた穴をさらに備える。稼動中、膜にかけられる圧力は、ガスケット中の小さい穴28を通して、導管20内に1つ又は複数の空気セグメントを排出する。
【0151】
図2を参照すると、ベースの下方の表面は、第2の導管11、及び第1の導管15をさらに備える。第2の導管11は狭窄部12を含み、これは、流体の流れに抵抗をもたらすことによって流量を制御する。任意選択のコーティング13、14は、疎水性表面を与え、これらは、ガスケットの穴31、32と一緒に、第2及び第1の導管11、15の間の流量を制御する。ベース内の陥凹17は、導管34内の空気をガスケット中の穴27を通して導管34に送るための経路を提供する。
【0152】
図3を参照すると、薄膜ガスケット21は、ベース及びカバー内の導管同士間の流体の移動を促進し、必要な場合、圧力下でガスケットを変形させるための様々な穴及びスリットを備える。したがって、穴24は、流体が導管11から廃棄物チャンバー44内に流れるのを可能にし、穴25は、導管34と15の間にキャピラリーストップを備え、穴26は、陥凹18と導管40の間で空気が流れるのを可能にし、穴27は、陥凹17と導管34の間に空気の移動をもたらし、穴28は、流体が導管19から、任意選択の閉鎖可能バルブ41を介して廃棄物チャンバー44に流れるのを可能にする。穴30及び33は、それぞれカッタウェイ35及び37内に収容された複数の電極が、導管15内で流体に接触するのを可能にする。特定の実施形態では、カッタウェイ37は、接地電極、及び/又は対参照電極を収容し、カッタウェイ35は、少なくとも1つの分析物センサー、及び任意選択により電気伝導度測定センサーを収容する。
図3において、テープ21は、機器が、バーブ38上のエレメント42内のカリブラントポーチ(calibrant pouch)を破裂させるために下向きの力をかけるとき、3つの切れ目22によって囲まれたテープが変形するのを可能にするための22におけるスリットである。このテープはまた、23において切れ目であり、これは、機器が下向きの力を与えるとき、テープがエレメント43内に下向きに曲がるのを可能にし、チャンバー43から空気を排出し、導管15を通してセンサーに試料流体を移動させる。
図3中のエレメント29は、テープ内の開口部として作用し、カバー
図2内の領域を、ベース
図4と接続している。
【0153】
図4を参照すると、導管34は、組み立てられたカートリッジ内で、試料流入ポート4を第1の導管11に接続する試料保持チャンバーである。カッタウェイ35は、任意選択の1つ又は複数の電気伝導度測定センサーと一緒に、1つ若しくは複数のセンサー、又は分析物応答性表面を収容する。カッタウェイ37は、電気化学的センサーのための戻り電流経路として必要な場合、接地電極を収容し、任意選択の電気伝導度測定センサーを収容することもできる。カッタウェイ36は、ガスケットの穴31と32の間の流体経路を提供し、その結果流体は、第1と第2の導管の間を通過することができる。陥凹42は、読取装置内に挿入された後にパドル7上にかけられる圧力のために、スパイク38によって穴を開けられる組み立てられたカートリッジ内に、流体を含むパッケージ、例えば、破裂可能なポーチを収容する。穴を開けられたパッケージからの流体は、39で第2の導管内に流れる。空気ブラダーは陥凹43を備え、これは、ガスケット21によってその上面で密封される。空気ブラダーは、ポンプ手段の一実施形態であり、パドル6にかけられる圧力によって作動し、これは、導管40内の空気を移動させ、それによって、試料を試料チャンバー34から第1の導管15内に移動させる。
【0154】
空気が、ブラダーから試料保持チャンバー(ガスケットの穴27)に入る位置、及びキャピラリーストップ25は、試料保持チャンバーの所定の体積を一緒に画定する。パドル6が押し下げられるとき、この体積に対応する量の試料が第1の導管内に移動する。したがって、この配置は、計量された量の未計量試料をカートリッジの導管内に送るための計量手段の1つの可能な実施形態である。
【0155】
カートリッジのいくつかの実施形態では、試料セグメントを計量するための手段は、ベースのプラスチック部分に提供される。セグメントのサイズは、ベース内のコンパートメントのサイズ、並びにキャピラリーストップ及びテープガスケット中の空気パイプ穴の位置によって制御される。この体積は、2〜200μLに容易に変更することができる。試料サイズのこの範囲の拡大は、本発明の脈絡の範囲内で可能である。
【0156】
いくつかの実施形態では、流体は、試料がセンサー導管19に差し出される前に、試薬(例えば、粒子、可溶性分子、又はIgM若しくはその断片)を改質するのに使用することができる分析前用導管11を通して、試料中に押し出される。或いは、改質試薬は、部分16を越えて部分15内に位置することができる。分析前用導管を通して試料を押し出すことはまた、ダイヤフラムポンプパドル7に張力を導入する機能を果たし、これは、流体移動の始動に対するその応答性を改善する。
【0157】
本発明のいくつかの実施形態によれば、分析物の定量化が要求される場合、計量はいくつかのアッセイで有利である。カートリッジの外表面の汚染を防止するために、導管から排出される試料及び/又は流体のための廃棄物チャンバー44が提供される。廃棄物チャンバーを外部の大気に接続する排出口45も提供される。カートリッジの1つの望ましい特徴は、試料が装填されると、オペレーター又は試料に接触する他のものを伴わずに、分析を完了し、カートリッジを廃棄することができることである。
【0158】
次に
図5を参照すると、カートリッジ及びコンポーネントの特徴の概略図が提供されており、51〜57は、試料又は流体を改質するための乾燥試薬で任意選択によりコーティングすることができる、導管及び試料チャンバーの一部である。試料又は流体は、乾燥試薬の上を少なくとも1回通過することによって、乾燥試薬を溶解させる。試料を改質するのに使用される試薬は、以下のうちの1つ又は複数を含むことができる。抗体−酵素コンジュゲート(シグナル抗体)、1つ若しくは複数の白血球試薬、IgM及び/若しくはその断片、IgG及び/若しくはその断片、並びにアッセイ化合物の間で特異的若しくは非特異的な結合反応を防止する他の遮断剤、並びに/又は白血球干渉を低減するための上述したIgGコート微粒子。可溶性でないが、カートリッジの内表面にアッセイ成分が非特異的に吸着するのを防止するのに役立つ表面コーティングも提供することができる。
【0159】
特定の実施形態では、閉鎖可能なバルブが、第1の導管と廃棄物チャンバーの間に提供される。一実施形態では、このバルブ58は、不浸透性物質でコーティングされた、乾燥スポンジ物質を含む。稼動中、スポンジ物質が試料又は流体と接触すると、スポンジが膨潤することによって、空洞41(
図4)を塞ぎ、それによって廃棄物チャンバー44への液体のさらなる流れが実質的に遮断される。さらに、濡れたバルブは、第1の導管と廃棄物チャンバーの間の空気の流れも遮断し、これにより、試料チャンバーに接続された第1のポンプ手段が、第2の導管内の流体を移動させ、以下の様式で第2の導管から第1の導管へと流体を移動させることが可能になる。
【0160】
次に免疫センサーカートリッジの概略の構成を例示する
図6を参照すると、3つのポンプ61〜63が提供されている。これらのポンプは、特定の実施形態の観点から記載されているが、ポンプ61〜63のそれぞれの機能を実施することができる任意のポンピングデバイスを、本発明の範囲内で使用することができることが容易に理解されるであろう。したがって、ポンプ1の61は、試料保持チャンバーから第1の導管内に試料を移動させることができるべきであり、ポンプ2の62は、第2の導管内の流体を移動させることができるべきであり、ポンプ3の63は、少なくとも1つのセグメントを第2の導管内に挿入することができるべきである。本願に想定される他のタイプのポンプとして、それだけに限らないが、圧力が空気袋にかけられる気圧力学手段と接触している空気袋、可動性ダイヤフラム、ピストンとシリンダー、電磁ポンプ、及び音波ポンプが挙げられる。ポンプ3の63を参照すると、用語「ポンプ」は、1つ又は複数のセグメントが第2の導管内に挿入されるすべてのデバイス及び方法、例えば、空気袋から空気を移動させるための気圧力学手段、溶解するとガスを生じる乾燥化学物質、又は電流源に作動可能に接続された複数の電気分解電極などを含む。特定の実施形態では、セグメントは、1つを超える空気ブラダー又はチャンバーを有することができる機械的なセグメント生成ダイヤフラムを使用して生成される。示したように、ウェル8は、1つの開口部を有し、これは、内側のダイヤフラムポンプとセグメントが注入される、流体が満たされた導管20を接続する。ダイヤフラムは、複数のセグメントを生成するために区分することができ、それぞれのセグメントは、流体で満たされた導管内の特定の位置に注入される。
図6において、エレメント64は、免疫センサーが、捕捉反応を実施することによって、固定化抗体、分析物、及びシグナル抗体を含むサンドイッチを形成する領域を示す。
【0161】
代替の実施形態では、セグメントは、受動的な機能を使用して注入される。カートリッジのベース内のウェルは、テープガスケットによって密封される。ウェルを覆うテープガスケットは、いずれかの端部に2つの小さい穴を有する。一方の穴は開いているが、他方は、流体と接触すると湿るフィルター物質で覆われている。このウェルは、目の粗い親水性物質、例えば、セルロース繊維フィルター、紙フィルター、又はガラス繊維フィルターなどで満たされている。この親水性の物質は、キャピラリー作用を介してベースのウェル内に液体を引き込み、先にウェル内にあった空気を移動させる。空気は、テープガスケット中の開口部を通じて排出され、体積が、ウェルの体積及び目の粗い親水性物質の空隙体積によって決定されるセグメントを作り出す。ベース内のウェルへの入口の一方を覆うのに使用されるフィルターは、流体がウェルを満たす速度を計測し、それによってセグメントが、カバー内の導管中に注入される速度を制御するように選択することができる。この受動的な機能は、任意の数の制御されたセグメントが、流体経路内の特定の位置に注入されることを可能にし、最小の空間で済む。
【0162】
IX.白血球干渉を低減又は排除するためのデバイス、キット、及び方法
本明細書の開示に基づくと、本発明の実施形態は、分析物イムノアッセイにおける白血球からの干渉を低減又は排除する方法を提供することが明らかである。
【0163】
好適な実施形態は、試料中の白血球の活性を実質的に阻害する白血球試薬と試料を接触させることによる、血液試料中の標的分析物についてのイムノアッセイの性能を対象とする。イムノアッセイはまた、標的分析物を検出するために、試料に対して実施される。本明細書に記載されるように、いくつかの実施形態では、白血球試薬は、酸素除去試薬、及びグルコース除去試薬、例えば、電子受容体を含み、又は含まないグルコースオキシダーゼとすることができる。他の実施形態では、試薬は、ヘキソキナーゼ、及びATP源、例えば、クレアチンキナーゼ、ADP、及びクレアチンリン酸を構成し得る。別の選択肢は、例えば、NAD、NADHオキシダーゼ、及び電子受容体を伴うグルコース脱水素酵素、又はGDH−PQQである。他の実施形態では、酸素除去試薬、例えば、ジチオナイト、グルコースオキシダーゼ(グルコースが添加された、又は添加されていない)、及びアスコルビン酸オキシダーゼを使用することができる。
【0164】
本発明はさらに、白血球試薬が、ミトコンドリア電子輸送阻害剤及び/又はミトコンドリア膜脱共役剤、例えば、シアニド、アンチマイシン、ロテノン、マロネート、カルボニルシアニドp−[トリフルオロメトキシル]−フェニル−ヒドロゾン、2,4−ジニトロフェノール、及びオリゴマイシンである実施形態を構成する。追加の実施形態では、試薬は、両親媒性試薬、例えば、サポニン、ロイコシジン、及びムコ多糖とすることができる。別の選択肢は、ヒト好中球による食作用を阻害するモノクローナル抗体AHN−1の使用である。参照により本明細書に組み込まれている、Skubitzら、Blood 65、333〜339、(1985)を参照されたい。
【0165】
本発明は、サンドイッチイムノアッセイ及び競合イムノアッセイの両方に同様に適用可能である。サンドイッチアッセイの実施形態では、試料は、標的分析物に対する固定化された第1の抗体を含む免疫センサー、及び前記標的分析物に対する標識された第2の抗体と接触する。競合アッセイの実施形態では、試料は、前記標的分析物に対する固定化された第1の抗体を含む免疫センサー、及び標的分析物と結合を競合する標識された標的分析物と接触する。一般的な分析物として、それだけに限らないが、TnI、TnT、BNP、NTproBNP、proBNP、HCG、TSH、NGAL、ジゴキシン、テオフィリン、及びフェニトインなどが挙げられる。
【0166】
本発明のいくつかの実施形態では、試料、例えば、全血試料が最初に収集され、次いで1つ又は複数の白血球試薬、及び任意選択により犠牲ビーズを含む乾燥試薬を試料中に溶解させることによって改質される。ある特定の実施形態では、血液試料中の白血球に対して過剰のビーズを供給するように、十分な犠牲ビーズが利用される。これは、試料1マイクロリットル当たり少なくとも5マイクログラム、例えば、試料1マイクロリットル当たり少なくとも10マイクログラム、又は試料1マイクロリットル当たり少なくとも15マイクログラムの溶解した犠牲ビーズ濃度を有する試料を生じ、この濃度は、試料中のあらゆる白血球を実質的に連結するのに十分である。範囲に関して、乾燥試薬は、試料1マイクロリットル当たり約5マイクログラム〜約40マイクログラムのビーズ、好ましくは、試料1マイクロリットル当たり約10〜約20マイクログラムのビーズの犠牲ビーズ濃度を与えるように試料中に溶解することが好ましい。ビーズのサイズに応じて、これは、試料1マイクロリットル当たり少なくとも約10
4個のビーズ、試料1マイクロリットル当たり少なくとも約10
5個のビーズ、又は試料1マイクロリットル当たりおよそ約10
5〜約10
6個のビーズに相当する。したがって、いくつかの好適な実施形態では、白血球試薬に加えて、犠牲ビーズが、試料1マイクロリットル当たり少なくとも10
4個のビーズ、例えば、試料1マイクロリットル当たり少なくとも約10
5個のビーズ、又は試料1マイクロリットル当たり約10
5〜約10
6個のビーズの溶解した犠牲ビーズ濃度をもたらすのに十分な量で存在する。このステップが完了すると、改質された試料に対してイムノアッセイ、例えば、電気化学的イムノアッセイを実施することによって、分析物の濃度を求めることが可能である。
【0167】
乾燥試薬の溶解、及びサンドイッチ形成ステップは、同時に、又は段階的な様式で行うことができる。本発明の方法の実施形態は、心血管マーカー、例えば、TnI、TnT、CKMB、ミオグロビン、BNP、NT−proBNP、及びproBNPである分析物を主に対象とするが、他のマーカー、例えば、β−HCG、TSH、ミエロペルオキシダーゼ、ミオグロビン、D−二量体、CRP、NGAL、及びPSAなどにも使用することができる。白血球の大部分が検出ステップの前に隔離されることを保証するために、試料改質ステップは、約1分〜約30分の範囲内の選択された所定の期間のものであることが好ましい。
【0168】
好適な実施形態では、この方法は、免疫センサー、導管、試料流入ポート、及び試料保持チャンバーを備え、これらのエレメントの少なくとも1つの少なくとも一部が、乾燥試薬でコーティングされているカートリッジ内で実施される。乾燥試薬は、白血球試薬、白血球干渉を低減するための犠牲ビーズ、緩衝液、塩、界面活性剤、安定化剤、単純炭水化物、複合炭水化物、及び様々な組合せのうちの1つ又は複数を含むことができることに注意されたい。さらに、乾燥試薬は、分析物に対する酵素−標識抗体(シグナル抗体)も含むことができる。
【0169】
上記に示したように、犠牲ビーズが使用される場合、個々のモノマーが、F(ab’)2領域に結合されたFc領域から形成され、その結果として2つのFab領域を含む全IgG分子を使用して犠牲ビーズをコーティングすることに加えて、又はその代わりに、IgGの断片を使用することも可能である。IgG断片化は、F(ab’)2断片、Fab断片、及び/又はFc断片のいくつかの組合せを作り出すために、ジスルフィド結合の還元(−S−S−から−SH HS−)、及び酵素のペプチン又はパパイン消化の組合せを使用して、様々に実現することができる。これらの断片は、別個に使用するためにクロマトグラフィーによって分離し、又は組合せで使用することができる。例えば、遮断部位がFc断片上にある場合、これは、全IgG分子の代わりに使用することができる。同じことが、Fab断片及びF(ab’)2断片にも当てはまる。
【0170】
実際のアッセイステップでは、好適な実施形態において、固定化抗体とシグナル抗体の間でサンドイッチが形成されたら、試料媒質を引き続いて廃棄物チャンバーへと洗浄し、その後、酵素と反応して電気化学的検出可能な生成物を形成することができる基質にこのサンドイッチを曝す。好適な形式は、電気化学的酵素結合免疫吸着アッセイである。
【0171】
好ましくは、デバイスは、白血球による干渉が低減された、試料、例えば、血液試料中の分析物のイムノアッセイを実施するものである。デバイスは、電気化学的免疫センサー、導管、及び試料流入ポートを含む筐体であり、導管は、試料が、制御された様式で流入ポートから免疫センサーに進むのを可能にする。
【0172】
一態様では、対象とする分析物を含有する試料は、上述したように、白血球の活性を低減又は排除する1つ又は複数の白血球試薬を用いて改質することができ、得られる改質された試料をイムノアッセイで分析することによって、著しい白血球干渉を伴うことなく、分析物の含量及び/又は濃度を求めることができる。好適な実施形態では、減じられる活性は食作用である。本発明の様々な好適な実施形態に関して、そのような実施形態は、1mL当たり約3IU超及び500mg/dLのそれぞれの試料濃度を与えるグルコースオキシダーゼ及びグルコースを用いて、約0.5mg/mLのサポニンを用いて、又は用いずに、且つ本明細書に記載されるオプソニン化されたデコイビーズを用いて、又は用いずに全血試料を改変することを含む。
【0173】
別の態様では、1つ又は複数の白血球試薬を用いて試料を改質することに加えて、筐体の少なくとも一部を、非ヒトIgGでコーティングされた犠牲ビーズを含むことができる乾燥試薬を用いてコーティングすることができる。重要な特徴は、乾燥試薬が、試料中に溶解し、白血球を結合、好ましくは食作用に引きつけることができることである。これは一般に、試料中で、潜在的に干渉性の白血球を隔離するのに十分である。
【0174】
好適な実施形態では、デバイスは免疫参照センサーも備える。免疫センサーは、心血管マーカー、例えば、TnI、TnT、CKMB、ミオグロビン、BNP、NT−proBNP、及びproBNPなどの分析物を検出するのを対象とすることが好ましい。このデバイスが稼動するシステムは、一般に、試料が、所定の期間、例えば、1〜30分間、試薬と接触したままになることを可能にする。デバイスは、例えば、1つの試料で満たされ、検査のために1回使用され、次いで廃棄される使い捨てカートリッジであることが好ましい。一般に、このデバイスは、試料を廃棄物チャンバーへと洗浄することができる洗浄流体、及び免疫センサーにおいて酵素サンドイッチと反応することによって、電気化学的検出に適した生成物を形成することができる基質を含む。
【0175】
より大まかには、本発明は、白血球が一般に存在する任意の生体試料についての分析物イムノアッセイにおいて、白血球からの干渉を低減することに関する。さらに、選択された分析物の濃度を求めるために、改質された試料に対してイムノアッセイを実施するステップは、電気化学的技法、例えば、電流測定及び電位差測定、並びにまた光学技法、例えば、吸光度、蛍光及び発光を含めた様々な技法に基づくことができる。
【0176】
本発明の様々な実施形態は、全血試料中で、標的分析物についてイムノアッセイを実施するためのキットであって、試料中の白血球の活性を実質的に阻害する白血球試薬、及び標的分析物を検出するためのイムノアッセイ試薬を含むキットを対象とする。本発明の他の実施形態は、血液試料中に存在する疑いのある分析物についてのイムノアッセイを実施するためのキットであって、1つ又は複数の白血球試薬、白血球に対してオプソニン化された犠牲ビーズ、分析物に対する固定化された第1の抗体、及び分析物に対する第2の標識抗体を含むキットを対象とする。さらに、当技術分野で公知の現在のイムノアッセイ形式を、例えば、試料前処理ステップにおいてビーズを添加することによって、犠牲ビーズを含むように改変することができる。この前処理は、血液収集デバイス内、別個の容器内に犠牲ビーズを組み込むことによって達成することができ、又はデバイスの検査サイクル内で犠牲ビーズを組み入れることによって、分析(イムノアッセイ)デバイス自体で行うことができる。
【0177】
本発明をBNP検査カートリッジとの関連で説明してきたが、これは、白血球が存在し、干渉の原因となり得る任意のイムノアッセイに同様に適用可能である。この方法又はキットは、BNPに限定されず、それだけに限らないが、proBNP、NTproBNP、cTnI、TnT、HCG、TSH、PSA、D−二量体、CRP、ミオグロビン、NGAL、CKMB、及びミエロペルオキシダーゼを含めて、任意のイムノアッセイに適応させることができる。さらに、この方法及びキットは、犠牲ビーズが、使用される場合、マウス、ヤギ、ウシ、及びルピナスを含めた任意の非ヒトIgG又はその断片でコーティングされた、或いは犠牲ビーズが、活性化されたヒトIgG又はその断片でコーティングされたアッセイに適用可能である。犠牲ビーズは、タンパク質、細菌、ウイルス、及び生体異物から選択される物質若しくはこれらの断片でコーティングされた基質ビーズを含むことができ、又は任意選択により基質ビーズを用いずに、休止中の、若しくはさもなければ安定化された細菌性細胞、胞子、若しくはこれらの断片、例えば、大腸菌(E.coli)によって得ることができる。
【0178】
上述したある特定のアッセイは、アッセイビーズに結合した固定化された第1の抗体を使用し、このビーズは、さらには、電極が下にある多孔質層に結合しているが、この第1の抗体は、電極若しくは任意の他の表面上に直接固定化し、又は可溶性ビーズ上に固定化することができる。
【0179】
本発明のキット又は方法は、可溶性乾燥試薬の形態である第2の標識抗体を含むことができる。いくつかの実施形態では、可溶性乾燥試薬は、可溶性乾燥試薬の一部として、又は様々な成分が別個の乾燥試薬の位置内にある場合、1つ又は複数の白血球試薬、及び任意選択によりオプソニン化された犠牲ビーズを含む。固定化抗体及び標識抗体はともに、モノクローナル、ポリクローナル、これらの断片、及びこれらの組合せとすることができることに注意されたい。さらに、第2の抗体は、放射標識、酵素、発色団、フルオロフォア、化学発光種、及びイムノアッセイの分野で公知の他のものを含めた様々な標識で標識することができる。第2の抗体が酵素で標識される場合、この酵素は、ALP、西洋わさびペルオキシダーゼ、又はグルコースオキシダーゼであることが好ましい。
【0180】
このキット又は方法は、白血球を含有する任意の試料、例えば、全血に適用可能であり、抗凝固剤、例えば、EDTA、ヘパリン、フッ化物、シトレートなどで改質された血液試料とすることができる。
【0181】
この方法又はキットが非競合イムノアッセイを実施するために使用される場合、(i)分析物を含有する疑いのある血液試料を試薬(1つ又は複数の白血球試薬を含む)、及び任意選択によりオプソニン化された犠牲ビーズと混合するステップ;(ii)血液試料を分析物に対する固定化された第1の抗体と混合することによって、固定化抗体と前記分析物の間で複合体を形成するステップ;並びに(iii)血液試料を、標識された第2の抗体と混合することによって、前記分析物と前記固定化抗体の複合体を形成するステップを含む一連の混合ステップが存在する場合がある。これらの混合ステップは、同時に、又は指定された順序で実施することができることに注意されたい。例えば、ステップ(ii)及び(iii)を同時に行うことができ、又はステップ(i)及び(iii)をステップ(ii)の前に実施することができる。最終ステップにおいて、固定化された第1の抗体、分析物、及び標識された第2の抗体の間で形成された複合体の量の判定がある。
【0182】
本発明の方法の実施形態は、分析物免疫センサー上の白血球蓄積を実質的に改善することを対象とする。いくつかの実施形態では、免疫センサーは、分析物に対する、抗体に基づく試薬及び/又は抗体でコーティングされたアッセイビーズから作製される。分析物を含有する疑いのある試料を、1つ又は複数の白血球試薬、及び任意選択によりオプソニン化された犠牲ビーズと混合することによって、改質された試料を形成した後、試料中の白血球が、1つ又は複数の白血球試薬によって優先的に改善され、又は犠牲ビーズを、存在する場合に優先的に貪食しようとする場合、次いで、改質された試料は免疫センサーと接触する。結果として、白血球の蓄積は最小であり、信頼できるアッセイを実現することができる。
【0183】
本方法は、血液試料中に存在する疑いのある分析物についてのイムノアッセイを実施することを対象とし、分析物を含有する疑いのある血液試料を、1つ又は複数の白血球試薬、及び任意選択により過剰のオプソニン化された犠牲ビーズと混合することによって、改質された試料を形成するステップであって、試料中の白血球は、白血球試薬で改善され、且つ/又は犠牲ビーズ(存在する場合)を優先的に貪食しようとするステップと;改質された試料を、電極上に固定化された、分析物に対する抗体でコーティングされたビーズを含む免疫センサーと接触させるステップと;前記抗体でコーティングされたビーズ、前記分析物、及び第2の標識抗体の間でサンドイッチを形成するステップと;前記免疫センサーから前記血液試料を洗浄するステップと;前記免疫センサーを用いて前記サンドイッチされた標識の量を求め、前記標識の量を、試料中の分析物の濃度と関連づけるステップとを含む。
【0184】
本方法はまた、血液試料中に存在する疑いのある分析物についてのイムノアッセイを実施することを対象とし、分析物を含有する疑いのある血液試料を、1つ又は複数の白血球試薬、及び任意選択により過剰のオプソニン化された犠牲ビーズと混合することによって、改質された試料を形成するステップであって、試料中の白血球は、1つ又は複数の白血球試薬で改善され、存在する場合、犠牲ビーズを優先的に貪食しようとするステップと;改質された試料を、分析物に対する試薬及び/又はビーズと接触させるステップと;前記試薬及び/又はビーズ、前記分析物、並びに第2の標識抗体の間でサンドイッチを形成するステップと;前記試薬及び/又はビーズから前記血液試料を洗浄するステップと;前記サンドイッチされた標識の量を求め、前記標識の量を、試料中の分析物の濃度と関連づけるステップとを含む。
【0185】
本発明はまた、血液試料中に存在する疑いのある分析物についてのイムノアッセイを実施するための検査カートリッジであって、導管中に免疫センサーを含み、前記免疫センサーは、分析物に対する固定化された第1の抗体を有するカートリッジを対象とする。いくつかの実施形態では、導管は、1つ又は複数の白血球試薬、及び任意選択により、白血球に対してオプソニン化された犠牲ビーズ、及び前記分析物に対する第2の標識抗体を含む、乾燥試薬コーティング又は別個のコーティングを有することが好ましい。稼動中、乾燥試薬は、前記血液試料中に溶解する。
【実施例】
【0186】
本発明は、以下の非限定的な例を考慮して、より良好に理解されるであろう。
【0187】
(例1)
図7は、心臓壊死のマーカーであるトロポニンI(TnI)の存在及び量を求めるための、上記に参照した、その全体が参照により本明細書に組み込まれている米国出願第12/411,325号の特定の実施形態による電流測定イムノアッセイの原理を例示する。血液試料を、カートリッジの試料保持チャンバー内に導入し、試料保持チャンバー内にコーティングされた乾燥試薬の溶解によって改質した。乾燥試薬は、IgM 77を含み、これは、試料中に溶解すると、試料中に含まれる場合のある相補性異好性抗体78に選択的に結合する。示したように、乾燥試薬はIgG 79も含み、これも、試料中に溶解した後、相補性抗体78に選択的に結合する。
【0188】
図10は、心臓機能のマーカー、例えば、BNP及びTnIの存在及び量を求め、白血球干渉を低減するためにオプソニン化された犠牲ビーズを使用するための、米国特許出願第12/620,179号及び同第12/620,230号による電流測定イムノアッセイの原理を例示する。血液試料を、カートリッジの試料保持チャンバー内に導入し、試料保持チャンバー内にコーティングされた乾燥試薬の溶解によって改質した。乾燥試薬は、犠牲ビーズ102を含み、これは、試料中に溶解すると、試料中に含まれる場合のある白血球103に選択的に結合する。乾燥試薬はまた、好ましくは、
図7に記載したIgM及びIgGを含むことができることに注意されたい。
【0189】
さらに、
図7及び
図10は、シグナル抗体71、例えば、ポリクローナル抗トロポニンI抗体に共有結合しているアルカリホスファターゼ酵素(AP)を含むコンジュゲート分子も、試料中に溶解させたことを示す。このコンジュゲートは、血液試料中で分析物70、例えばTnI又はBNPに特異的に結合し、APコンジュゲートに結合した分析物から構成される複合体を生成する。捕捉ステップにおいて、この複合体は、免疫センサーに付着又は近接した捕捉抗体72(固定化抗体)に結合する。センサーチップは伝導率センサーを有し、これは、試料がセンサーチップに到達した時をモニターするのに使用される。流体の到達時間を使用することによって、カートリッジ内の漏れを検出することができる。例えば、到達の遅延が漏れを知らせる。いくつかの実施形態では、センサー導管内の試料セグメントの位置は、位置マーカーとして流体の縁部を使用して能動的に制御することができる。試料/空気界面が伝導率センサーを横切る際、正確なシグナルが生成され、これは、流体マーカーとして使用することができ、このマーカーから、制御された流体の往復運動を実施することができる。流体セグメントは、センサー上を、縁部から縁部まで優先的に往復されることによって、免疫センサー表面に試料全体を提示する。第2の試薬を、センサーチップを越えたところにあるセンサー導管内に導入することができ、これは、流体の往復の間に均一に分布された状態になる。
【0190】
センサーチップは、対象とする分析物のための、抗体でコーティングされた1つ又は複数の捕捉領域を含む。これらの捕捉領域は、ポリイミドの疎水性環、又は別のフォトリソグラフィーで作製された層によって画定される。何らかの形態での、例えば、ラテックス微小球に結合した抗体を含有する微小滴又はいくつかの微小滴(サイズが約5〜40ナノリットル)を、センサーの表面上、又はセンサー上の選択透過性層上に分注する。感光された(photodefined)環は、この水性液滴を含み、抗体がコーティングされた領域を数ミクロンの精度まで局在させる。捕捉領域は、0.03〜約2平方ミリメートルのサイズで作製することができる。このサイズの上限は、本実施形態における導管及びセンサーのサイズによって制限され、本発明の限界ではない。
【0191】
したがって、金電極74は、バイオ層73、例えば、TnI/AP−aTnI複合体が結合する、共有結合した抗トロポニンI抗体でコーティングされる。それによって、APは、試料中に最初に存在する分析物の量に比例して、電極付近に固定化される。特異的結合に加えて、酵素−抗体コンジュゲートは、センサーに非特異的に結合する場合がある。非特異的結合は、センサーからのバックグラウンドシグナルをもたらし、これは、望ましくなく、最小限にされることが好ましい。上述したように、すすぎプロトコールにより、特に、センサーをすすぐために区分された流体を使用することにより、このバックグラウンドシグナルを最小限にするために効率的な手段が提供される。すすぎステップの後の第2のステップにおいて、例えば、アルカリホスファターゼにより加水分解されることによって、電気活性生成物76を生成する基質75がセンサーに提示される。特定の実施形態では、基質は、リン酸化フェロセン又はp−アミノフェノールを含む。電流測定電極は、直接基質ではなく、加水分解された基質の生成物を酸化又は還元するのに十分な、一定の電気化学的電位で保たれるか、又は電位が、適切な範囲で1回若しくは複数回掃引される。任意選択により、第2の電極を1つの層でコーティングすることができ、この層で、製造の間に分析物/AP抗分析物、例えば、TnI/AP−aTnIの複合体が作られることによって、測定のための参照センサー又は較正手段として作用する。
【0192】
本例では、センサーは、2つの電流測定電極を備え、これらは、4−アミノフェニルホスフェートと酵素標識アルカリホスファターゼの反応から酵素的に生成される4−アミノフェノールを検出するのに使用される。電極は、好ましくは、ポリイミドの感光された層でコーティングされた金表面から作製される。絶縁ポリイミド層中の規則正しく配置された開口部は、小さい金電極のグリッドを画定し、ここで4−アミノフェノールは、1分子当たり2電子の反応で酸化される。センサー電極は、バイオ層をさらに備える一方で、参照電極は、例えば、バイオ層を欠いた金電極から、又は銀電極、若しくは他の適当な物質から構築することができる。異なるバイオ層は、各電極に異なる分析物を検知する能力をもたらすことができる。
【0193】
p−アミノフェノール種などの基質は、基質と生成物のE(1/2)が実質的に異なるように選択することができる。好ましくは、基質のボルタンメトリー半波電位E(1/2)は、生成物のそれより実質的に高い(より正である)。条件が満たされれば、生成物は、基質の存在下で、選択的に電気化学的に測定することができる。
【0194】
電極のサイズ及び間隔は、感度及びバックグラウンドシグナルを決定することにおいて重要な役割を果たす。グリッドにおける重要なパラメータは、露出した金属の百分率及び活性電極同士間の間隔を含む。電極の位置は、抗体捕捉領域の真下であっても、制御された距離によって捕捉領域からずれていてもよい。電極の実際の電流測定シグナルは、抗体捕捉場所に対するセンサーの位置決め、及び分析の間の流体の動きに依存する。電極での電流が記録され、これは、センサー近傍における電気活性生成物の量に依存する。
【0195】
この実施例におけるアルカリホスファターゼ活性の検出は、4−アミノフェノール酸化電流の測定に依拠する。これは、Ag/AgCl接地チップに対して約+60mVの電位で実現される。使用される検出の正確な形態は、センサー構成に依存する。センサーの1つの型では、金微小電極のアレイが、抗体捕捉領域の真下に配置される。分析流体がこのセンサー上に引き寄せられるとき、捕捉場所上に位置した酵素が、酵素律速反応で、4−アミノフェニルホスフェートを4−アミノフェノールに変換する。4−アミノフェニルホスフェートの濃度は、過剰、例えば、Km値の10倍であるように選択される。分析溶液は、9.8のpHに緩衝された、ジエタノールアミン、1.0MのNaCl中0.1Mである。追加の実施形態では、分析溶液は、0.5mMのMgCl
2を含有し、これは、酵素のための補助因子である。或いは、炭酸塩緩衝液は、所望の特性を有する。
【0196】
別の電極の幾何学的配置の実施形態では、電極は、捕捉領域から数百ミクロン離して配置される。分析流体の新鮮なセグメントが、捕捉領域上に引き寄せられるとき、酵素生成物が、電極反応により無損失で形成する。しばらくして、溶液は、検出器電極上の捕捉領域から徐々に引き寄せられ、電流スパイクを生じ、これから酵素活性を求めることができる。
【0197】
アルカリホスファターゼ活性の高感度な検出における重要な考慮事項は、金センサーにおいて起こるバックグラウンドの酸化及び還元に関連する非4−アミノフェノール電流である。金センサーは、これらの電位で、塩基性緩衝液中でかなりの酸化電流を与える傾向がある。バックグラウンド電流は、緩衝液濃度、金電極の面積(露出面積)、表面前処理、及び使用される緩衝液の性質に大部分は依存する。ジエタノールアミンは、アルカリホスファターゼについての特に良好な活性化緩衝液である。モル濃度で、酵素速度は、炭酸塩などの非活性化緩衝液に対して約3倍増大する。
【0198】
代替の実施形態では、抗体又は他の分析物結合分子にコンジュゲートした酵素は、ウレアーゼであり、基質は尿素である。アンモニウム感受性電極を使用することによって、尿素の加水分解で生成されるアンモニウムイオンが、この実施形態では検出される。アンモニウム特異的電極は、当業者に周知である。例えば、適当な、微細加工されたアンモニウムイオン選択的電極は、参照により本明細書に組み込まれている米国特許第5,200,051号に開示されている。基質と反応してイオンを生じる他の酵素は、それとともに使用される他のイオンセンサーと同様に、当技術分野で公知である。例えば、アルカリホスファターゼ基質から生成されるリン酸は、リン酸イオン選択的な電極において検出することができる。
【0199】
図8は、微細加工された免疫センサーの実施形態の構成を例示している。好ましくは、平面の非導電基板80が提供され、その上に、従来の手段又は当業者に公知の微細加工によって、導電層81が堆積される。導電物質は、金又は白金などの貴金属であることが好ましいが、イリジウムなどの他の非反応性金属も使用することができ、同様に、グラファイト、導電性ポリマー、又は他の物質の非金属電極も使用することができる。電気的な接続部82も提供される。バイオ層83は、電極の少なくとも一部に堆積される。本開示では、「バイオ層」は、対象とする分析物に結合することができ、又は測定可能な変化をもたらすことによって、そのような分析物の存在に応答することができる十分な量の分子84を表面上に含む多孔質層を指す。任意選択により、上で参照した米国特許第5,200,051号に記載されているように、電気化学的干渉物質をスクリーニングするために、電極とバイオ層の間に選択透過性スクリーニング層を介在させることができる。
【0200】
特定の実施形態では、バイオ層は、約0.001〜50ミクロンの範囲内の特定の直径のラテックスビーズから構築される。ビーズは、バイオ層の上記定義に一致する任意の適当な分子の共有結合によって修飾されている。タンパク質のリシン又はN末端アミン基の容易なカップリングのために、アミン反応性N−ヒドロキシスクシンイミドエステル基を提供することを含めて、多くの結合方法が当技術分野で存在する。特定の実施形態では、生体分子は、イオノフォア、補助因子、ポリペプチド、タンパク質、糖ペプチド、酵素、免疫グロブリン、抗体、抗原、レクチン、神経化学受容体、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、DNA、RNA、又は適当な混合物の中から選択される。最も特定の実施形態では、生体分子は、ヒト絨毛性ゴナドトロピン、トロポニンI、トロポニンT、トロポニンC、トロポニン複合体、クレアチンキナーゼ、クレアチンキナーゼサブユニットM、クレアチンキナーゼサブユニットB、ミオグロビン、ミオシン軽鎖、又はこれらの修飾断片の1つ又は複数に結合するように選択される抗体である。そのような修飾断片は、天然部分又は合成部分を用いた化学修飾を含めて、少なくとも1つのアミノ酸の酸化、還元、欠失、付加、又は修飾によって生成される。好ましくは、生体分子は、分析物に特異的に結合し、分析物リガンドに結合するための親和定数が約10
−7〜10
−15Mである。
【0201】
一実施形態では、適当な分子によって共有結合的に修飾された表面を有するビーズを含むバイオ層は、以下の方法によってセンサーに固定される。マイクロディスペンシング針が使用されることによって、修飾されたビーズの懸濁液の、好ましくは約20nLの小液滴がセンサー表面上に堆積される。液滴を乾燥させ、これにより表面上にビーズがコーティングされ、これは、使用中移動しにくい。
【0202】
バイオ層が電流測定センサーに対して固定された位置にある免疫センサーに加えて、本発明は、バイオ層が、可動性である粒子、例えばアッセイビーズ上にコーティングされる実施形態も想定する。カートリッジは、分析物と相互作用することができる可動性微粒子、例えば、捕捉ステップの後で電流測定電極に局在化し、それによって磁力が、測定用電極に粒子を集めるのに使用される磁性粒子を含むことができる。本発明における可動性微粒子の1つの利点は、試料又は流体中のその動きが結合反応を加速し、アッセイの捕捉ステップをより速くすることである。非磁性可動性微粒子を使用する実施形態については、電極でビーズを捕らえるのに多孔質フィルターが使用される。犠牲ビーズに関して、アッセイビーズが磁気ビーズである場合、犠牲ビーズは、非磁気ビーズであり、別個に隔離されていることが好ましいことに注意されたい。さらに、アッセイビーズが非磁気ビーズである場合、犠牲ビーズは、磁気ビーズであり、別個に隔離されていることが好ましい。
【0203】
次に
図9を参照すると、1つの基板上のいくつかの電極のためのマスク設計が例示されている。マスキング及びエッチング技法によって、独立した電極及びリードを堆積することができる。したがって、複数の免疫センサー、94及び96、並びに電気伝導度測定センサー、90及び92が、読取装置への電気的接続を行うための、そのそれぞれの接続パッド91、93、95、及び97と一緒に、低コストでコンパクトな範囲に提供される。原理上は、それぞれが異なる分析物に感受性であり、又は対照センサー若しくは参照免疫センサーとして作用するセンサーの非常に大きいアレイをこのようにしてアセンブルすることができる。
【0204】
本発明の特定の実施形態では、免疫センサーは、以下のように作製することができる。シリコンウエハーを熱酸化することによって、厚さ約1ミクロンの絶縁酸化物層が形成される。チタン/タングステン層が、100〜1000オングストロームの間の好ましい厚さまで、酸化物層上にスパッタされ、その後、最も好ましくは800オングストロームの厚さである金の層がスパッタされる。次に、フォトレジストがウエハー上にスピニングされ、乾燥され、適切にベーキングされる。次いで、
図9中に例示したものに対応するマスクなどのコンタクトマスクを使用して、表面が露光される。潜像が現像され、ウエハーが金エッチャントに曝される。パターン形成された金層が感光性ポリイミドでコーティングされ、適切にベーキングされ、コンタクトマスクを使用して露光され、現像され、O
2プラズマ中で浄化され、好ましくは350℃で5時間イミド化される。抵抗性加熱素子として作用するために、ウエハーの裏面の任意選択のメタライゼーションを実施することができ、この場合、免疫センサーは、サーモスタットで調節された形式で使用されるべきである。次いで表面が、抗体でコーティングされた粒子でプリントされる。好ましくは体積が約20nLであり、脱イオン水中、1%の固体含量を含む液滴がセンサー領域上に堆積され、空気乾燥によって、定位置で乾燥される。任意選択により、抗体安定化試薬(SurModica Corporation、Eden Prairie、Minnesota、米国、又はApplied Enzyme Technology Ltd、Pontypool、英国によって供給された)が、センサー上にオーバーコートされる。
【0205】
粒子の乾燥は、基質を含有する試料又は流体中に溶解するのを防止する様式で、粒子を表面に接着させる。この方法は、センサーチップを大量に製造するのに適した、信頼でき、再現可能な固定化プロセスを提供する。
【0206】
(例2)
カートリッジの使用方法に関して、一実施形態では、未計量の流体試料が、試料流入ポート4を通じて、カートリッジの試料保持チャンバー34中に導入される。キャピラリーストップ25は、この段階で試料が導管15へと通過するのを防止し、保持チャンバー34は、試料で満たされる。蓋2又はエレメント200は、カートリッジから試料が漏れるのを防止するために閉じられている。次いでカートリッジは、参照により本明細書に組み込まれている、Zelinの米国特許第5,821,399号に開示されているものなどの、読取装置内に挿入される。読取装置内にカートリッジを挿入することにより、42に位置した流体を含むパッケージに、このパッケージがスパイク38に対して押されたとき、穴を開ける機構が作動する。それによって流体は、第2の導管内に排出され、39、20、12及び11に順に到達する。12における狭窄部は、流体のさらなる移動を防止し、その理由は、流体が第2の導管部分11を介して廃棄物チャンバー44内に流れることによって、残留する静水圧が放散されるためである。第2のステップでは、ポンプ手段を稼動することにより、空気ブラダー43に圧力をかけ、導管40を通じ、カッタウェイ17及び18を通じて、導管34内に所定の位置27で空気を押し込む。キャピラリーストップ25及び位置27は、元の試料の計量された部分を区切る。試料が試料保持チャンバー34内にある間、試料は、チャンバーの内表面上の、1つ又は複数の白血球試薬、及び任意選択により犠牲ビーズ、及び任意の他の所望の物質を含む乾燥試薬コーティングで改質される。次いで試料の計量された部分は、空気ブラダー43内で生じる空気圧によって、キャピラリーストップを通じて排出される。試料は導管15内を通り、カッタウェイ35内に位置した1つ又は複数の分析物センサーに接触する。
【0207】
カットアウト35内に位置した免疫センサーを使用する実施形態では、試料は、センサーに到達する前に、例えば、酵素−抗体コンジュゲート(シグナル抗体)によって改質される。分析物がセンサーに効率的に結合するのを促進するために、分析物を含有する試料は、任意選択により、往復性の動きでセンサー上を繰り返して通される。好ましくは、約0.2と2Hzの間の往復振動数が使用され、最も好ましくは0.7Hzである。こうして、シグナル抗体に付随するシグナル酵素は、試料中に存在する分析物の量に比例して、電流測定電極表面のごく近くに運ばれる。
【0208】
分析物/酵素−抗体コンジュゲート複合体が免疫センサーに結合する機会が提供された後、試料は、空気ブラダー43にかけられるさらなる圧力によって排出され、試料は廃棄物チャンバー44に進む。次に洗浄ステップにより、非特異的に結合した酵素−コンジュゲート及び犠牲ビーズが、センサーチャンバーから除去される。第2の導管における流体は、ポンプ手段43によって移動されてセンサーと接触する。分析流体は、第1の空気セグメントが伝導率センサーで検出されるまで、徐々に引き寄せられる。
【0209】
1つ又は複数の空気セグメントは、それだけに限らないが、(1)
図14に示し、以下に記載されるような受動的な手段、(2)空気がフラップ又はバルブを通じて導管内に引き寄せられるポンプを使用する、導管内の圧力の一過性の低下を含めた能動的な手段、又は(3)導管内で流体と接触するとガスを遊離する、導管内に予め配置された化合物であって、カーボネート、ビカーボネートなどを挙げることができる化合物を溶解させることによるものを含めた、任意の適当な手段によって導管内に作製することができる。このセグメントは、試料が混入した流体を導管15から一掃することにおいて極めて有効である。センサー領域をすすぐ効率は、説明したように、1つ又は複数の空気セグメントを第2の導管中に導入することによって大いに増強される。空気セグメントの先頭縁部及び/又は後縁部は、センサー上を1回又は複数回通過することによって、試料から堆積する場合のある異質の物質をすすぎ、再懸濁する。異質の物質には、特異的に結合した分析物又は分析物/抗体−酵素コンジュゲート複合体以外の任意の物質が含まれる。しかし、すすぎが、それほど長引かず、又はセンサーからの、特異的に結合した分析物若しくは分析物/抗体−酵素コンジュゲート複合体の解離を促進するほど活発であることは、本発明の目的である。
【0210】
流体中に空気セグメントを導入することの第2の利点は、流体を区分することである。例えば、流体の第1のセグメントが、センサーをすすぐのに使用された後、次いで第2のセグメントは、2つのセグメントの混合を最小にして、センサー上に配置される。この機能は、非結合の抗体−酵素コンジュゲートをより効率的に除去することによって、センサーからのバックグラウンドシグナルをさらに低減する。先端洗浄(front edge washing)の後、分析流体は、第1の空気セグメントが伝導率センサーにおいて検出されるまで徐々に引き寄せられる。このセグメントは、第1の分析流体試料と混合された、試料が混入した流体を一掃することにおいて極めて有効である。測定のために、流体の新しい部分がセンサー上に配置され、操作のモードに適切な場合、電流又は電位が時間の関数として記録される。
【0211】
(例3)
次に
図15を参照すると、免疫センサーカートリッジの上面図が示されている。カートリッジ150は、好ましくはプラスチックで構築されたベース及び頂部部分を備える。2つの部分は、薄い接着性ガスケット又は薄い柔軟な膜によって接続されている。先の実施形態と同様に、組み立てられたカートリッジは、試料保持チャンバー151を備え、この中に、対象とする分析物を含有する試料が、試料入口167を介して導入される。試料の計量された部分は、カートリッジの2つの部分を接続するガスケット又は膜中に、0.012インチ(0.3mm)のレーザーカットされた穴によって好ましくは形成されたキャピラリーストップ152と、試料ダイヤフラム156上を押しつけるパドルなどのポンプ手段の作用によって空気が導入される試料保持チャンバー内の所定箇所に位置した流入点155との合わせた作用によって、以前と同様に試料導管154(第1の導管)を介してセンサーチップ153に送達される。結合することが可能になるようにセンサーと接触した後、試料は、排出口157に移動され、この排出口はウィッキング材を含み、これは、試料を吸収し、それによって、液体又は空気のさらなる通過に対して排出口を閉じて密封する。ウィッキング材は、綿繊維物質、セルロース物質、又は孔を有する他の親水性物質であることが好ましい。この物質は、以下に記載される試料ダイヤフラム作動手段を引き続いて引っ込めることと釣り合った時間内でバルブが閉じ、その結果試料が、センサーチップの領域内に引き続いて引き戻されないほど十分に吸収性である(すなわち十分なウィッキング速度を有する)ことが、本願において重要である。
【0212】
示した特定の実施形態と同様に、一端で排出口159に、他端で、排出口157とセンサーチップ153の間に位置した試料導管のある箇所160の試料導管に接続された洗浄導管(第2の導管)158が提供される。読取装置内にカートリッジを挿入すると、流体は、導管158に導入される。好ましくは、流体は、ホイルポーチ(foil pouch)161内に最初に存在し、これは、作動手段によりポーチに圧力がかけられるとき、ピンによって穴を開けられる。ガスケット163中の小さい開口部を介して流体を導管154に接続する短い導管162も提供される。第2のキャピラリーストップは、流体がキャピラリーストップ160に到達するのを最初に防止し、その結果、流体は導管158内に保持される。
【0213】
排出口157が閉じられた後、ポンプが作動され、導管154内に圧力低下を作り出す。振動することによって断続的な空気のストリームをもたらす、ガスケット又は膜中にカットされた小さいフラップを好ましくは備える換気口164は、空気が第2の排出口165を介して導管158に入るための手段を提供する。第2の排出口165も、湿ったとき排出口を閉じることができるウィッキング材を好ましくは含み、これは、必要に応じて、試料ダイヤフラム156を引き続いてへこませることによって排出口165を閉じることを可能にする。試料ダイヤフラム156の作動と同時に、流体は、導管158からキャピラリーストップ160を通じて導管154に引き寄せられる。流体の流れが排出口164に入る空気によって妨害されるので、少なくとも1つの空気セグメント(セグメント又はセグメントのストリーム)が導入される。
【0214】
試料ダイヤフラム156がさらに引っ込むと、少なくとも1つの空気セグメントを含有する液体が引き戻され、センサーチップ153の感知表面を横切る。液体内に空気−液体の境界が存在することにより、残っている試料を除去するためのセンサーチップ表面のすすぎが増強される。好ましくは、試料ダイヤフラム156の運動は、分析物センサーに隣接するセンサーチップ内に収容された伝導率電極から受信されるシグナルと連動して制御される。このようにして、センサー上の液体の存在が検出され、別個のステップにおける流体の動きによって、複数の読み取りを実施することができる。
【0215】
流体の薄膜が、センサー、接地チップ165、及びセンサーと接地電極の間の導管154の壁の接触部分を覆うときのみ、分析物測定を実施することが、この実施形態では有利である。適当な膜は、センサーの隣に位置した電気伝導度測定センサーが、バルクの流体は、導管154のその領域内にもはや存在しないことを示すまで、試料ダイヤフラム156を操作することにより、流体を引き抜くことによって得られる。測定は、非常に低い(nA)電流で実施することができ、(バルクの流体と比較して)接地チップとセンサーチップの間の薄膜の抵抗を増大させることによって生じる電位降下は、重要でないことが判明した。
【0216】
接地チップ165は、銀/塩化銀であることが好ましい。二酸化ケイ素の表面などのより親水性の領域が点在した銀/塩化銀の小さい領域として接地チップをパターン形成するのに、相対的に疎水性の塩化銀表面上に容易に形成する空気セグメントを回避することが有利である。したがって、好適な接地電極構成は、高密度に配置され、二酸化ケイ素が点在した銀/塩化銀の正方形のアレイを含む。銀/塩化銀の領域がある程度くぼんでいる場合、意図していないセグメントを回避することにさらなる利点が存在する。
【0217】
次に
図16を参照すると、免疫センサーカートリッジの好適な実施形態の流体工学の概略図が示されている。領域R1〜R7は、特定の運転機能に関連する導管の特定の領域を表す。したがって、R1は試料保持チャンバーを表し、R2は試料導管を表し、それによって試料の計量された部分が捕捉領域に移され、試料が、導管の壁上に、例えば、1つ又は複数の白血球試薬及び任意選択によりオプソニン化された犠牲ビーズでコーティングされた物質で任意選択により改質され、R3は、電気伝導度測定センサー及び分析物センサーを収容する捕捉領域を表し、R4及びR5は、第1の導管の部分を表し、これらは、導管壁上にコーティングされた物質で流体をさらに改質するのに任意選択により使用され、それによってより複雑なアッセイスキームが実現され、R6は、第2の導管の部分を表し、カートリッジが読取装置内に挿入されると、その中に流体が導入され、R7は、キャピラリーストップ160と166の間に配置された導管の部分を備え、その中でさらなる改質を行うことができ、R8は、箇所160と排出口157の間に配置された導管154の部分を表し、これは、その中に含まれる液体を改質するのにさらに使用することができる。
【0218】
(例4)
分析シーケンスの間の、流体工学と分析物測定の調整に関しては、ユーザーは、カートリッジ内に試料を入れ、分析器内にカートリッジを配置し、1〜20分で、1つ又は複数の分析物の定量的な測定が実施される。分析の間に起こる事象のシーケンスの非限定例は以下の通りである。
【0219】
(1)25〜50μL試料が試料入口167中に導入され、カバーとベースコンポーネントを一緒に保持している接着性テープ中の0.012インチ(0.3mm)のレーザーカットされた穴によって形成されたキャピラリーストップ151まで満たされる。1つ又は複数の白血球試薬、及び任意選択によりオプソニン化された犠牲ビーズと、任意選択により干渉を改善するための他の物質、及び好ましくはシグナル抗体を含む1つ又は複数の乾燥試薬コーティングが、試料中に溶解される。ユーザーは、スナップフラップ上に取り付けられたラテックスゴムディスクを回して試料入口167を閉じ、カートリッジを分析器内に配置する。
【0220】
(2)分析器はカートリッジと接触し、モーター駆動のプランジャーが、ホイルポーチ161の上を押し、洗浄/分析流体を中心の導管158へと強制的に外に出す。
【0221】
(3)別個のモーター駆動のプランジャーは、試料ダイヤフラム156と接触し、試料の測定されたセグメントを試料導管に沿って(試薬領域R1からR2に)押す。試料は、伝導率センサーを介してセンサーチップ153で検出される。センサーチップは、捕捉領域R3内に配置される。
【0222】
(4)試料は、試料ダイヤフラム156によって、所定の制御された様式で、制御された時間、R2とR5の間を往復されることによって、センサーへの結合を促進する。
【0223】
(5)試料は、カートリッジの廃棄物領域(R8)に向けて押され、セルロース又は同様の吸収性芯の形態での受動的ポンプ157と接触する。この芯を湿らす作用は、空気の流れに対して芯を密封し、したがって試料ダイヤフラム156によって生じる過剰の圧力を逃すその能力を排除する。能動的な排出口は、
図16の「制御された換気口」になる。
【0224】
(6)試料導管の迅速な排気(試料ダイヤフラム156からモーター駆動のプランジャーを取り外すことによって行われる)は、空気(排出口からの)と第2の導管からの洗浄/分析流体の混合物を、
図16中のR5とR4の間に位置した入口へと強制的に移動させる。試料導管の迅速な排気の繰り返しによって、一連の空気で分離された流体セグメントが生成され、これは、センサーチップを横切って試料入口に向けて引き寄せられる(R4から、R3、R2及びR1に)。これは、過剰の試薬を含まないセンサーを洗浄し、センサーを分析に適切な試薬で湿らせる。ホイルポーチに由来する洗浄/分析流体は、中心の洗浄/分析流体導管内のR7及びR6において試薬を添加することによってさらに改質することができる。
【0225】
(7)洗浄/分析流体セグメントは、試料入口に向けてより遅い速度で引き寄せられることによって、分析流体の薄層のみを含むセンサーチップを生じる。この箇所で電気化学的な分析が実施される。分析の好適な方法は電流測定であるが、電位差測定又はインピーダンス検出も使用される。
【0226】
(8)機構が後退し、カートリッジを分析器から取り出すことを可能にする。
【0227】
(例5)
いくつかの実施形態では、デバイスは、アッセイの間に起こる非特異的結合の程度を評価する目的で免疫参照センサーを使用する。免疫参照センサーは、分析物免疫センサーとほぼ同じように作製され、例外は、免疫試薬が抗分析物抗体ではなく抗HSA(ヒト血清アルブミン)抗体であるということである。ヒト全血又は血漿試料に曝されると、参照センサーは、すべてのヒト血液試料中に存在する豊富な内因性タンパク質である、特異的に結合したHSAでコーティングされ、したがって、本イムノアッセイ形式を使用して行われるすべての個々の検査についての共通の参照をもたらす。不十分な洗浄により、又は干渉の存在により生じるNSBは、この第2のセンサーによってモニターすることができる。
【0228】
アッセイからの正味のシグナルは、参照センサーから生じる非特異的なシグナルを減じることによって、例えば、上記式4に示したような、正味のシグナル=分析物センサーシグナル−参照センサーシグナル−オフセットによって補正された分析物免疫センサーから生じる特異的なシグナルを含む。「オフセット」は、NSBに曝される2つのセンサーの傾向の差異を計上する係数である。実際には、これは、コンジュゲートを非特異的に結合するその能力に関して、各センサーの相対的な「粘性」を計上し、分析物が無く、干渉の無い試料の応答に基づいて確立される。これは、独立した実験によって行われる。
【0229】
参照センサーにおいて許容されるシグナルの量は、品質管理アルゴリズムによって定義される制限を受け、このアルゴリズムは、低分析物濃度での結果の完全性を保護することを追求し、低分析物濃度では、NSBの作用は、臨床的環境における意思決定を変更し得る様式でアッセイ結果に大きな影響を与える可能性がある。本質的な主要なことは、参照センサーにおける過剰なシグナルの存在が、不十分な洗浄ステップ又は干渉によるNSBの存在に関するフラグとして作用することである。
【0230】
(例6)
以下に記載される実験は、BNPアッセイ、具体的にはi−STAT(登録商標)BNPカートリッジ(Abbott Point of Care、Princeton、New Jersey、米国)、又はその部分的に改変されたバージョンで実施した。
【0231】
これらの実施形態のすべてにおいて、本願の他で記載した1つ又は複数の白血球試薬、及び任意選択により白血球についてオプソニン化されたビーズの使用を、アッセイに組み込むことができ、例えば、試料は、グルコースオキシダーゼ、及び白血球についてオプソニン化されたビーズの両方、並びに任意選択によりグルコース及びサポニンを用いて改質することができる。一般に、試料は、全血試料、例えば、静脈、動脈、及び毛細管のものであり、これは、抗凝固剤で改質されていても、改質されていなくてもよい。
【0232】
全血イムノアッセイに対する白血球の影響を理解するための実験的補助として、富化されたバフィー(血液)試料(EBS)を作り出すことが望ましい。ここで採用した方法は、頂部に血漿、底部に赤血球、及び間に薄いバフィーコートを含む、血液のスパン管(spun tube)を得ることであった。次いで血漿及び赤血球の約半分以上をピペットにより取り出し、試料を再混合した。本明細書に記載される実験では、EBSは、バフィー濃度において約10倍に増大させ、すなわち、血漿及び赤血球のおおよそ90%を除去した。したがって試料のヘマトクリット値(Hct)を、通常の範囲であるおおよそ50〜60%内に維持した。
【0233】
図26は、白血球活性に対するグルコースオキシダーゼの効果を示す。白血球干渉のベースライン指標として、1秒当たり0.05nA超のシグナル変化速度のカットオフ値を使用した(右側のy軸、AmpActSlopeを参照されたい)。データセットは、3つの群、すなわち、EBS+OX+Glu、EBS+OX、及びEBS+Gluに分けられ、ここで、OXは、1mL当たり4.0IUの濃度のグルコースオキシダーゼであり、Gluは、700mg/dLの濃度のグルコースである。第1の群において、酵素は、実質的にすべての酸素を除去することが期待され、共反応物のグルコースが実質的に過剰に添加される。第2の群は、酵素と反応するための、試料中にすでにあるグルコースに依拠する。第3の群は、グルコースが添加され、酵素がまったく添加されていない対照である。
【0234】
図26中の左側のy軸は、グルコース(mg/dL)濃度及び酸素(PO
2mmHg)濃度の両方を示す。
図26のx軸は、「実行開始時間(run start time)」を示し、これは、上記各群における試料を混合することと、その試料のアリコートを採取し、カートリッジ内にこれを注入することとの間の時間である。グルコース濃度及び酸素濃度を求めるのに、i−STAT(登録商標)CG8+カートリッジ(Abbott Point of Care、New Jersey、米国)を使用したことに注意されたい。
【0235】
第1の群(EBS+OX+Glu)に関して、約200mmHgの初期酸素濃度は、50分後に約10mmHgに低下し、グルコース濃度は、同じ期間にわたって700mg/dLから約100mg/dLに降下する。この期間の間にイムノアッセイを実行することによって、AmpActSlope値を求めた。この群において、アッセイした19試料のうち16試料は、傾きが1秒当たり0.05nA未満であった。AmpActSlope値は、
図25に示したように、電流対時間シグナルトレース(time signal trace)の分析から得られる。
【0236】
図25に示したように、約50秒の時点を超える第1のトレースは、定常電流値であり、免疫センサーに対して低い又は通常の白血球活性を有する試料に典型的である。具体的には、免疫センサーは、電極に結合したビーズ上の第1の捕捉抗体、及びALPで標識された第2のシグナル抗体を含むBNP免疫センサーを含んでいた。このタイプの免疫センサー及びイムノアッセイカートリッジの一般的な説明は、Davisらの米国特許第7,419,821号に見出される。電流の変化速度は、実質的に、1秒当たり0.05nAの好適な閾値値未満である。第2のトレースは、免疫センサーに対して高い白血球活性を有する試料、例えば、EBSに典型的である。電流の変化速度は、1秒当たり0.05nAの好適な閾値値より大きい。約50秒の時点を超える第3のトレースは、定常電流値であり、免疫センサーに対する白血球活性を低減するために、グルコースとグルコースオキシダーゼの組合せを用いて処理されたEBSに典型的である。電流の変化速度は、再度実質的に、1秒当たり0.05nAの好適な閾値値未満であることに注意されたい。
【0237】
第2の群(EBS+OX)に関して、酸素濃度は、(約200mmHgから)約50mmHgまでしか降下せず、グルコース濃度は、約20mg/dL未満に急速に降下し、すべての酸素を消費するのに試料中に存在するグルコースが不十分であることを示す。この観察結果は、酸素バッファーとして作用する、すなわち、血漿濃度が低下する際により多くの酸素を放出する赤血球に関係づけられる。この期間の間に、イムノアッセイも実行することによって、AmpActSlope値を求めた。この群において、アッセイした13試料のうち9試料は、傾きが1秒当たり0.05nA未満であった。
【0238】
第3の群(EBS+Glu)に関して、酸素濃度は、わずかに降下するだけであり、グルコース濃度は、おおよそ変化しないままである。この期間の間に、イムノアッセイを実行することによって、AmpActSlope値を求めた。この群において、アッセイした8試料のうち3試料は、傾きが1秒当たり0.05nA未満であった。
【0239】
この3つの群からのデータに基づくと、グルコースオキシダーゼは、白血球活性の低減に寄与することを補助することができ、これは、試料に過剰のグルコースを添加することによって増強されることが明らかである。試料中、1mL当たり約3IUの過剰でのグルコースオキシダーゼ濃度が静脈の試料にとって好ましく、約500mg/dL超の初期試料濃度を与えるようなグルコースの添加が好ましいことが見出された。
【0240】
これらの効果をさらに特徴づけるために、
図27に示したように、より大きい試料ドナープールに対して試験を実行した(15ドナーの複数の実行)。
図27は、望ましいAmpActSlope値が、1秒当たり0.05nA未満及び−0.03nA超である散布図である。さらに、この特定の実験において、最大の望ましいセンサー閾値電流(ParamActDoc)も、8.0nAに設定した。したがって、望ましい結果は、標的ゾーンの周囲の5つのセグメント内に入る試料を最小にすることであった。処理されたEBS+OX試料(正方形)は、未処理の試料(円)より優れた性能を明らかに示す;処理済みN=287、1.0%が閾値を超える;未処理N=283、13.4%が閾値を超える;92.1%の差異を与える。実験結果に基づくと、一般に、グルコースオキシダーゼの添加により、望ましい閾値を超える傾きが観察されるアッセイの数が約90%低減する。これは、総合的なアッセイ品質及び性能の著しい改善である。
【0241】
本発明は、イムノアッセイで使用される特定の電流測定センサーに関して説明されているが、1秒当たりのΔnAとして測定されるAmpActSlope以外の他のパラメータ、例えば、絶対電流値、シグナル強度の部分としてのシグナルノイズなども、白血球干渉の決定要因として使用することができることを当業者は認識するであろう。さらに、本発明は、電位差測定及び電気伝導度測定に基づく電気化学的免疫センサー、並びに非電気化学的免疫センサー、例えば、表面音波、表面プラズモン共鳴、光導波路などを含めた、他の免疫センサーにも同様に適切である。これらのそれぞれは、センサー性能に対する有害作用を評価するための公知の判定基準を有する。これらは、EBS法、又はその変形を使用して、適正について評価することができる。
【0242】
図28Aは、EBS+OX+Gluで処理された試料の使用をさらに特徴づけるために実施した追加の試験を示す。いずれの酸素も周囲空気から導入されるのを防止するために、閉じたシリンジ内で処理が行われる、「試料2」のデータセットを得た。10分にわたって、酸素は、約200mmHgから約20mmHgに降下し、グルコースは、約600mg/dLから約360mg/dLに降下した。試料に対して実行した12の連続したイムノアッセイのすべては、1秒当たり0.05nA未満の望ましいAmpActSlope値を有した。「試料3」のデータは、周囲空気のアクセスを可能にするために、最初の実行から約20分後にシリンジを開放することを反映する。この試料は、40分の出発点で実行した。ここでは、白血球は、酸素をもはや奪われず、イムノアッセイ検査の数が増加すると、所望の閾値を超えるAmpActSlope値を示す。
図28A中の「試料1」のデータは、対照のEBS+Gluのみである。
図28Bは、1分と10分の実行時間での点が、シリンジ試料のものであり、40分での点が、空気に曝すことによって酸素が再供給された後の同じ試料である、より単純な形態でのデータを提示する。
【0243】
研究室で実施されるイムノアッセイにおいて使用される血液試料は、静脈から抜き取られるのがより一般的であるが、ポイントオブケア(又はベッドサイド、例えば、緊急治療室、手術室)検査が行われる場合、試料が動脈から抜き取られることは、珍しいことではない。明らかに、PO
2濃度は一般に、後者のタイプの試料中でより高くなる。本アッセイに対する動脈の試料のインパクトを評価するために、模擬動脈試料を生成し、試験した。当業者は、動脈の試料を直接得ることにより、内出血のリスクがはるかに高くなり、したがって、模擬試料を使用することを認識するであろう。模擬試料は、EDTA管に収集した静脈血液を使用して、トノメーターを用いて作り出した。トノメーターは、血液を所定の気体組成と平衡させる。
【0244】
図29は、模擬動脈試料についてのデータを示す。これらの試料は、上述したように、富化しなかったことに注意されたい。データの第1列(WB)は、トノメーターが使用された(tonometered)全血試料は、約150mmHgの初期PO
2、及び約70mg/dLの初期グルコース値を有し、どちらも8分の期間にわたって著しく変化しなかったことを示す。1mL当たり6IU及び12IUの両方でグルコースオキシダーゼを添加すると(WB+6及びWB+12の列を参照されたい)、グルコース及びPO
2はともに減少した。第4列のWB+Gluにおいて期待されたように、グルコースは上昇し、PO
2は、実質的に変化しないままであった。第5列及び第6列(WB+6+Glu及びWB+12+Glu)の両方は、PO
2及びグルコースの降下を示した。
図29に例示したように、1mL当たり6.0IU及び12.0IU(好ましくは、1mL当たり約3.0IUの過剰)でのグルコースオキシダーゼの添加は、試料中の酸素分圧を約50mmHg未満に下げるその能力を通じて、動脈血中の食作用を阻害するのに十分である。
【0245】
(例7)
本明細書に記載されるように、白血球試薬としてのサポニンの使用は、白血球の活性を阻害するための代替の方法である。
図30は、EBS試料について示された1秒当たり0.05nAの閾値値を有する分析の傾きに対するサポニンの添加の効果を示す(0〜10mg/mLの範囲でのmg/mLでのx軸値)。この試験は、0.5mg/mLのサポニンを含む試料は、未処理の試料(Prod)より著しく少ない、閾値を超える傾きを示すことを示す。
図30はまた、最大10mg/mLの濃度で同様の結果を示す。他の実験では、約0.1〜20mg/mLの範囲内のサポニン濃度は、白血球活性の低減に有用であることが見出された。サポニンは、アッセイの精度に対する効果を有する場合があることも見出され、これは、洗浄サイクルの繰り返しによって改善された。その結果として、ある特定の用途では、0.5〜1.0mg/mL付近のより少ないが有効なサポニン濃度が好適となり得る。
【0246】
上述したように、本発明は一般に、全血試料を用いた分析物イムノアッセイにおける白血球からの干渉を低減又は排除することを対象とするが、これは、白血球が存在し得る他のタイプの生体試料、例えば、脳脊髄液において実施されるイムノアッセイにも適用可能である。さらに、これは、遠心分離又は濾過によって残留白血球を除去する意図にもかかわらず、残留白血球が存在し得る試料、例えば、血漿に適用可能である。これは、例えば、緩衝液を用いて希釈された場合のある試料にも適用可能である。さらに、本発明は一般に、試料中に乾燥試薬を溶解させることによって試料を改質することを対象とするが、分析の間、又は試料収集の間に、試薬、例えば、1つ又は複数の白血球試薬を液体として試料に添加することも、他の実施形態では実用的である。本発明は、電気化学的検出手法、例えば、電流測定及び電位差測定手法の観点から本明細書に記載されているが、これは、他の検出様式、特に、光学検出手法、例えば、発光、蛍光、及び吸光度に基づく手法などにも同様に適用可能であることも明らかである。
【0247】
本発明を様々な好適な実施形態の観点から説明してきたが、当業者は、本発明の精神から逸脱することなく、様々な改変、置換、省略、及び変更を行うことができることを認識するであろう。例えば、本説明の諸部分は、非競合サンドイッチイムノアッセイを対象とするが、本発明のデバイス及びプロセスは、競合イムノアッセイにも同様に使用することができる。したがって、本発明の範囲は、特許請求の範囲によって、もっぱら限定されることが意図されている。