(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
車両のアクセルペダルの踏み込みに応じて供給される燃料の燃焼により出力を得る一方、アクセルペダルの踏み込まれない車両のコースト走行中はフュエルカットを行うように構成された内燃エンジンと;
内燃エンジンの出力をポンプインペラとタービンランナを介して駆動輪に伝達するトルクコンバータと;
車両のコースト走行中にポンプインペラとタービンランナとを直結するロックアップクラッチと;
アクセルペダルの踏み込み量を検出するアクセルペダル踏み込み量センサと、
次のようにプログラムされたプログラマブルコントローラ:
車両がコースト走行中のアクセルペダルの踏み込み量の増加に対してロックアップクラッチを解放操作し;
アクセルペダルの踏み込み量が所定量を下回る場合にアクセルペダルの踏み込み量の増加に伴うフュエルリカバリをロックアップクラッチの締結圧が所定圧に低下するまで禁止し、アクセルペダルの踏み込み量が所定量を上回る場合に前記フュエルリカバリの禁止を行わない;
とを備える車両駆動装置。
内燃エンジンは多気筒エンジンであり、コントローラは、一部の気筒についてのみ、アクセルペダルの踏み込みに伴うフュエルリカバリをロックアップクラッチの締結圧が所定圧に低下するまで禁止するよう、さらにプログラムされる、請求項1の車両駆動装置。
コントローラは、ロックアップクラッチの締結圧低下指令信号の出力により、ロックアップクラッチの解放操作を行うとともに、車両のコースト走行からのアクセルペダルの踏み込み量の増加に対して締結圧低下指令信号に進み補正を加えるよう、さらにプログラムされる、請求項1から3のいずれかの車両駆動装置。
コントローラは、ロックアップクラッチの締結圧が低下したかどうかを、ロックアップクラッチの解放操作開始からの経過時間に基づき判定するよう、さらにプログラムされる、請求項1から4のいずれかの車両駆動装置。
ロックアップクラッチの締結圧を検出するセンサをさらに備え、コントローラはロックアップクラッチの締結圧が所定圧以下に低下した時に、ロックアップクラッチの締結圧が低下したと判定するよう、さらにプログラムされる、請求項1から4のいずれかの車両駆動装置。
ポンプインペラとタービンランナとのスリップ回転速度を検出するセンサをさらに備え、コントローラはスリップ回転速度が所定速度以上となった時に、ロックアップクラッチの締結圧が低下したと判定するよう、さらにプログラムされる、請求項1から4のいずれかの車両駆動装置。
車両のアクセルペダルの踏み込みに応じて供給される燃料の燃焼により出力を得る一方、アクセルペダルの踏み込まれない車両のコースト走行中はフュエルカットを行うように構成された内燃エンジンと;
内燃エンジンの出力をポンプインペラとタービンランナを介して駆動輪に伝達するトルクコンバータと;
車両のコースト走行中にポンプインペラとタービンランナとを直結するロックアップクラッチと;
アクセルペダルの踏み込み量を検出するアクセルペダル踏み込み量検出手段と;
車両がコースト走行中のアクセルペダルの踏み込み量の増加に対してロックアップクラッチを解放操作するロックアップクラッチ解放操作手段と;
アクセルペダルの踏み込み量が所定量を下回る場合にアクセルペダルの踏み込み量の増加に伴うフュエルリカバリをロックアップクラッチの締結圧が所定圧に低下するまで禁止し、アクセルペダルの踏み込み量が所定量を上回る場合に前記フュエルリカバリの禁止を行わないリカバリ抑制手段と;
を備える車両駆動装置。
車両のアクセルペダルの踏み込みに応じて供給される燃料の燃焼により出力を得る一方、アクセルペダルの踏み込まれない車両のコースト走行中はフュエルカットを行うように構成された内燃エンジンと、内燃エンジンの出力をポンプインペラとタービンランナとを介して駆動輪に伝達するトルクコンバータと、車両のコースト走行中にポンプインペラとタービンランナとを直結するロックアップクラッチとを備えた車両、に適用され、
アクセルペダルの踏み込み量を検出し、
車両がコースト走行中のアクセルペダルの踏み込み量の増加に対してロックアップクラッチを解放操作し、
アクセルペダルの踏み込み量が所定量を下回る場合にアクセルペダルの踏み込み量の増加に伴うフュエルリカバリをロックアップクラッチの締結圧が所定圧に低下するまで禁止し、アクセルペダルの踏み込み量が所定量を上回る場合に前記フュエルリカバリの禁止を行わない、車両駆動方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図面のFIG.1を参照すると、車両駆動装置は内燃エンジン1と、内燃エンジン1との回転出力を変速してプロペラシャフト3に出力する変速ユニット2と、を備える。
【0013】
内燃エンジン1は吸気スロットル1Aと燃料インジェクタ1Bを備える。
【0014】
変速ユニット2はトルクコンバータ2Bと、トルクコンバータ2Bの出力回転を変速する自動変速機2Aと、油圧式のロックアップクラッチ2Cと、を備える。
【0015】
トルクコンバータ2Bは内燃エンジン1の回転軸に結合するポンプインペラと、自動変速機2Aの入力軸に結合するタービンランナを備え、ポンプインペラとタービンランナとの間に介在する作動油を介してトルクを伝達する公知の構造を有する。自動変速機2Aはハイクラッチとローブレーキとを備えた公知のプラネタリギアセットで構成される。
【0016】
ロックアップクラッチ2Cは締結時にはポンプインペラとタービンランナを直接的に結合する。解放時にはポンプインペラとタービンランナの締結状態を解除する。
【0017】
ロックアップクラッチ2Cと自動変速機2Aのハイクラッチ及びローブレーキの各々の締結と解放操作は、内燃エンジン1の補機として設けられる油圧ポンプの吐出圧を用いて、自動変速機コントローラ(ATCU)5により行われる。
【0018】
内燃エンジン1の吸入空気量を調整する吸気スロットル1Aの開度制御、及び内燃エンジン1の燃料インジェクタ1Bの燃料噴射制御は、エンジンコントローラ(ECU)4により行われる。
【0019】
ECU4とATCU5は、それぞれ中央演算装置(CPU)、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)及び入出力インタフェース(I/Oインタフェース)を備えたマイクロコンピュータで構成される。ECU4とATCU5の一方または双方を複数のマイクロコンピュータで構成することも可能である。あるいは、ECU4とATCU5を単一のマイクロコンピュータで実現することも可能である。
【0020】
ECU4には、車両が備えるアクセルペダルの踏み込み量(アクセル開度)を検出するアクセルペダル踏み込み量センサ6、車両の走行速度を検出する車速センサ7、及び内燃エンジン1の回転速度を検出するエンジン回転速度センサ8から検出データがそれぞれ信号回路を介して入力される。
【0021】
ATCU5には、車両が備えるシフトレバーの操作位置を検出するシフトセンサ9から検出データが信号回路を介して入力される。
【0022】
次に、FIG.2のフローチャートを参照して、ECU4が実行するコースト走行中のアクセルペダルの踏み込みに伴うフュエルリカバリ制御ルーチンを説明する。このルーチンは、車両走行中にECU4が繰り返し実行する。すなわち、ルーチンの終了後、直ちに次回のルーチン実行が開始される。
【0023】
ステップS1でECU4はアクセルペダル踏み込み量センサ6からの入力データに基づき、アクセル開度がゼロから増加したかどうかを判定する。具体的には前回のルーチン実行時のアクセル開度がゼロであって、今回のルーチン実行時のアクセル開度がゼロでない場合に、判定は肯定的となる。これは、車両がコースト走行中にドライバがアクセルペダルを踏んだことを意味する。
【0024】
それ以外の場合、すなわち前回のルーチン実行時のアクセル開度がゼロでない場合、または今回のルーチン実行時のアクセル開度がゼロの場合には、判定は否定的となる。なお、車両が走行中にアクセルペダルの踏み込み量がゼロの場合は、車両が惰性で走行する、いわゆるコースト走行中であることを意味する。ここで、アクセル開度ゼロはアクセルペダルが踏み込まれていない状態、すなわちエンジンのアイドル回転時のスロットル開度に相当する。
【0025】
ステップS1の判定が否定的な場合には、ECU4は以後の処理を行わずにルーチンを終了する。
【0026】
ステップS1の判定が肯定的な場合は、車両がコースト走行中にドライバがアクセルペダルを踏んだことを意味する。この場合には、ECU4はステップS2でATCU5を介してロックアップクラッチ2Cの油圧を所定圧へと低下させる信号を出力する。所定圧はフュエルリカバリ後の内燃エンジン1の出力トルクを少し下回る程度のロックアップクラッチ2Cのロックアップクラッチ容量が得られる油圧に設定される。
【0027】
次のステップS3で、ECU4はアクセル開度がフュエルリカバリ判定値以下であるかどうかを判定する。具体的にはアクセル開度が自動変速機2Aの変速動作をもたらさない程度の微小アクセルペダル開度に相当するかどうか、を判定している。フュエルリカバリ判定値は例えば最大アクセル開度を8/8とした場合の0.5/8に設定される。
【0028】
ステップS3の判定が否定的な場合には、ECU4はステップS7でフュエルリカバリを実施することで、アクセルペダルの踏み込みに示された内燃エンジン1の出力増大要求に対して、応答良く燃料噴射量を増加させる。ステップS3の判定が否定的となるのは、例えばキックダウン時のようにアクセルペダルが明確に踏み込まれた場合である。
【0029】
ステップS3の判定が肯定的な場合には、ECU4はステップS4でフュエルリカバリを禁止する。ステップS4の処理の後、ECU4はステップS5の判定を行う。
【0030】
ステップS5で、ECU4はロックアップクラッチ2Cの締結圧が、ステップS2で指令した所定圧へ低下したかどうかを判定する。この判定は、様々な方法で行うことができる。
【0031】
直接的な方法は、圧力センサ10を用いてロックアップクラッチ2Cの締結圧を実測し、所定圧と比較することである。この方法により、確実にロックアップクラッチ2Cの締結圧を把握することができる。
【0032】
あるいは、ステップS2の処理が開始されてからの経過時間が所定時間に達したかどうかを判定することで行うことができる。所定時間はロックアップクラッチ2Cに所定圧への圧力低下を指示する信号を出力してからロックアップクラッチ2Cの締結圧が実際に所定圧に低下するまでの所要時間を予め計測し、計測結果に基づき定める。この判定方法を採用することで、ロックアップクラッチ2Cの締結圧を検出する圧力センサ10を省略することができる。
【0033】
さらに、トルクコンバータ2Bのポンプインペラの回転速度、すなわちエンジン回転速度センサ8が検出する内燃エンジン1の回転速度Neと、トルクコンバータ2Bのタービンランナの回転速度Ntとを検出し、これらの値の差であるスリップ回転速度の絶対値が所定回転速度を上回るかどうかで上記の判定を行なうことも可能である。タービンランナの回転速度Ntは、車速センサ7が検出する車両走行速度と、シフトセンサ9が検出するシフトレバーの位置とから算出する。所定回転速度は、ステップS2で指令した所定圧におけるスリップ回転速度を予め実験またはシミュレーションを行って求めておき、求めた結果に基づき定める。この判定方法による場合も、圧力センサ10を省略することができる。
【0034】
ステップS5で、ロックアップクラッチ2Cの油圧が所定圧まで低下していると判定された場合には、フュエルリカバリによるエンジン回転速度の変化をトルクコンバータ2Bが吸収できる程度に、ロックアップクラッチ2Cが解放されていることを意味する。この場合には、ECU4はステップS7でフュエルリカバリを実施する。フュエルリカバリを実施した後、ECU4はルーチンを終了する。
【0035】
一方、ステップS5でロックアップクラッチ2Cの油圧が所定圧まで低下していないと判定した場合には、ECU4はステップS6で
リカバリディレイ条件が成立しているかどうかを判定する。
【0036】
具体的には、アクセル開度がフュエルリカバリ判定値の0.5/8を上回っているかどうかを判定する。アクセル開度がフュエルリカバリ判定値の0.5/8を上回っている場合には、アクセル開度が
リカバリディレイ制御の対象となるアクセル開度領域を越えたことを意味する。この場合には、ECU4はステップS7でフュエルリカバリを実施する。フュエルリカバリを実施した後、ECU4はルーチンを終了する。ルーチン実行開始時点でアクセル開度がフュエルリカバリ判定値の0.5/8以下の場合でも、ルーチン実行中にアクセル開度がフュエルリカバリ判定値の0.5/8を上回った場合には、ステップS6の判定が否定的から肯定的に転じることで、直ちにフュエルリカバリが実行される。これにより、加速意図のもとでのアクセルペダル操作に対する応答性を確保することができる。
【0037】
ステップS6でアクセル開度がフュエルリカバリ判定値の0.5/8を上回っていない場合には、ECU4はリカバリディレイ条件が成立していると判定する。この場合には、ECU4はステップS4以降の処理を繰り返し、リカバリディレイを継続する。
【0038】
以上のように、このルーチンは、コースト走行中のアクセルペダルの僅かな操作に対して、ロックアップクラッチ2Cの締結圧を低下させる処理を直ちに開始する一方、フュエルカットからのリカバリを、ロックアップクラッチの締結圧が、トルクショックを吸収可能なレベルに低下するまで遅らせる。しがって、コースト走行中のアクセルペダルの意図しない僅かな操作が走行速度に与える影響を緩和して、ドライバや乗客に違和感を与えるのを防止することができる。
【0039】
FIGS.3A−3Fを参照して、フュエルリカバリ判定値以下の微小アクセル開度のもとで、ECU4が実行する
フュエルリカバリ制御ルーチンの実行結果を説明する。
【0040】
コースト走行中はフュエルカットが実行され、アクセル開度はFIG.3Aに示すようにゼロに保持される。一方、ATCU5はFIG.3Dに示すようにロックアップクラッチ2Cの締結圧を維持し、FIG.3Cに示すようにロックアップクラッチ容量は締結状態の値に維持される。ここで、ロックアップクラッチ容量は、ロックアップクラッチ2Cが現在の締結状態において伝達可能な最大トルクを意味する。
【0041】
この状態では惰性で走行している車両にエンジンブレーキが作用し、FIG.3Bに示すようにエンジン回転速度Ne、すなわちトルクコンバータ2Bのポンプインペラの回転速度、はタービンランナの回転速度Ntを若干下回っている。したがって、これらの回転速度の差であるスリップ回転速度はFIG.3Eに示すように負の値を取る。
【0042】
この状態で実行される
フュエルリカバリ制御ルーチンにおいては、ステップS1の判定が否定的となるため、フュエルリカバリは実行されず、フュエルカット状態が継続する。
【0043】
時刻t1にドライバがアクセルペダルを僅かに踏むと、直後に実行される
フュエルリカバリ制御ルーチンにおいてステップS1の判定が肯定的に転じる。その結果、ステップS2でECU4はATCU5を介して、FIG.3Dに示すようにロックアップクラッチ2Cへ締結圧を低下させる指令信号を出力する。締結圧を生み出している油圧の応答遅れのため、締結圧指令値がステップ的に低下しても、FIG.3Dの破線に示す実締結圧とFIG.3Cの破線に示す実ロックアップ容量はいずれも傾斜的にしか低下しない。
【0044】
アクセルペダルの踏み込みが僅かな場合には、
フュエルリカバリ制御ルーチンにおいて、ステップS3の判定が肯定的となり、ステップS4でフュエルリカバリが禁止される。したがって、時刻t2にロックアップクラッチ2Cの締結圧が所定圧以下となるまで、ステップS4におけるフュエルリカバリ禁止が継続的に実行される。
【0045】
時刻t2にロックアップクラッチ2Cの締結圧が所定圧以下になると、ステップS5の判定が肯定的に転じる。その結果ステップS7でフュエルリカバリ操作が実行され、内燃エンジン1への燃料供給が再開される。
【0046】
その結果、FIG.3Cに示すように時刻t2にエンジントルクが増大し、FIG.3Bに示すようにエンジン回転速度Neも増大する。この時点では、FIGS.3C,3Dに示すようにロックアップクラッチ2Cは解放されている。そのため、FIG.3Bに示すように、エンジン回転速度Neがほどなく自動変速機2Aの入力回転速度であるタービンランナの回転速度Ntを上回る。これらの速度差であるスリップ回転速度は、FIG.3Eに示すように一時的に増大する。しかし、速度差がトルクコンバータ2Bに吸収されることで、スリップ回転速度は一時的に増大した後にゼロに収束する。
【0047】
車両の前後方向の加速度はFIG.3Fに示すように、コースト走行中は一定の減速度を保持するとともに、ロックアップクラッチ2Cの締結圧の指令値の低下指令が出力される時刻t1において、減速度を減じ始める。そして、時刻t2以降に車両速度が一定化するまで減速度はなめらかにゼロに向けて減少する。
【0048】
以上のように、この
フュエルリカバリ制御ルーチンを実行することで、車両のコースト走行中にドライバがアクセルペダルを僅かに踏んだ場合の車両の走行速度の意図しない変化が抑制される。したがって、意図しない僅かなアクセルペダル操作がドライバや乗客に与える違和感を防止できる。
【0049】
FIGS.11A−11Gを参照して、車両がコースト走行中にアクセルペダルがフュエルリカバリ判定値に達しない程度に僅かに踏まれた場合であって、この発明による
フュエルリカバリ制御ルーチンが実行されない場合の車両の挙動を説明する。
【0050】
この場合には、時刻t1に至るまではFIG.11Cに示すように、コースト走行、すなわち内燃エンジンが駆動力が負の状態、でロックアップクラッチがロックアップしている。この状態をコーストロックアップ状態mCSTSLTと称する。時刻t1にドライバがアクセルペダルを僅かに踏むと、ECU4はATCU5を介して、FIG.
11Eに示すようにロックアップクラッチ2Cに締結圧を低下させる指令値を出力する。同時に、ECU4はフュエルリカバリを実行する。その結果、エンジントルクはFIG.
11Dに示すように、時刻t1から増大を開始する。
【0051】
時刻t1以降の状態はパターン的には、ドライブ走行、すなわち内燃エンジンの駆動力が正の状態、でロックアップクラッチがスリップしているドライブスリップ状態mSLPに相当する。しかしながら、実際にはロックアップクラッチ2Cの油圧の応答遅れのため締結圧はFIG.11Eの破線に示すように傾斜的にしか低下しない。したがって、FIG.11Dに示すロックアップクラッチ容量も傾斜的にしか低下しない。
【0052】
このように、ロックアップクラッチ2Cが高いクラッチ容量を維持している状態、言い換えれば実質的な締結状態で、エンジントルクが増大すると、増大するエンジントルクがロックアップクラッチ2Cを介して直接プロペラシャフト3に作用する。その結果、FIG.11Gの一点鎖線に囲まれた領域に示されるように、車両の前後方向の加速度が急変して車体にショックを与え、ドライバや乗客に違和感を感じさせることになる。
【0053】
次に、FIGS.4A−4Fを参照して、フュエルリカバリ判定値の0.5/8を超えるまでアクセルペダルが踏み込まれた場合に、ECU4が実行する
フュエルリカバリ制御ルーチンの実行結果を説明する。
【0054】
この場合も時刻t1までは、FIGS.3A−3Fのケースと同一である。時刻t1にアクセルペダルが踏まれると、直後に実行される
フュエルリカバリ制御ルーチンにおいてステップS1の判定が肯定的に転じ、ステップS2でECU4はATCU5を介して、FIG.4Dに示すようにロックアップクラッチ2Cへ締結圧を低下させる指令値を出力する。油圧の応答遅れのため、締結圧指令値の低下に対してFIG.4Dの破線に示す実締結圧とFIG.4Cの破線に示すロックアップクラッチ容量はともに傾斜的にしか低下しない。
【0055】
アクセル開度が0.5/8を超えるまではステップS6の判定が否定的となるため、ステップS4のフュエルリカバリの禁止が続行される。
【0056】
時刻t3にアクセル開度が0.5/8を超えるとステップS6の判定が肯定的に転じ、ステップS7でフュエルリカバリが実行される。以後のルーチン実行ではステップS3の判定が否定的になるため、フュエルリカバリの実行が継続される。
【0057】
その結果、FIG.4Cに示すように、時刻t3にエンジントルクが増大し、以後はアクセルペダルの踏み込み量に応じたエンジントルクが発生する。
【0058】
アクセル開度がフュエルリカバリ判定値0.5/8を超える場合には、このようにアクセル開度がフュエルリカバリ判定値0.5/8に達する時刻t3でフュエルリカバリを開始する。その結果、FIG.4Fの一点鎖線で囲まれた領域に示すように、車両の前後方向の加速度は時刻t3以降はプラスに転じる。
【0059】
この
フュエルリカバリ制御ルーチンによれば、アクセル開度がフュエルリカバリ判定値を超えると、ロックアップクラッチ容量によらずにフュエルリカバリを行う。ロックアップクラッチ2Cはフュエルリカバリによりエンジントルクがある程度回復した段階で、再締結される。
【0060】
つまり、ドライバが加速意志を持ってアクセルペダルを踏み込んだ場合には、早期にフュエルリカバリが実行されるので、アクセルペダルの踏み込みに対する加速遅れの発生を防止することができる。したがって、アクセルペダルの踏み込みに応じて、応答良く車両を加速させることができる。
【0061】
したがって、この実施形態により、コースト走行中のアクセルペダルの踏み込み操作に対して、ロックアップクラッチ2Cの解放とフュエルリカバリのタイミングのずれによるショックの発生を、車両の加速性能を損なわずに
防止することができる。
【0062】
FIGS.12A−12Fを参照して、車両がコースト走行中にアクセルペダルがフュエルリカバリ判定値を超えて踏まれた場合であって、この発明による
フュエルリカバリ制御ルーチンが実行されない場合の車両の挙動を説明する。
【0063】
この場合には、時刻t1にドライバがアクセルペダルを踏むと、ECU4はATCU5を介して、FIG.
12Dに示すようにロックアップクラッチ2Cに締結圧を低下させる指令値を出力する。同時にECU4はフュエルリカバリを実行する。その結果、エンジントルクはFIG.
12Cに示すように、時刻t1から直ちに増大を開始する。
【0064】
一方、ロックアップクラッチ2Cに締結圧を低下させる指令値が出力されても、油圧の応答遅れのため、締結圧指令値の低下に対してFIG.12Dの破線に示す実締結圧とFIG.12Cの破線に示すロックアップクラッチ容量はともに傾斜的にしか低下しない。
【0065】
その結果、ロックアップクラッチ2Cが実質的に解放されない状態でエンジントルクが増大する。つまり、増大するエンジントルクが直接プロペラシャフト3に伝達されることで、FIG.12Fの一点鎖線で囲まれた領域に示されるように、車両の前後方向の加速度に上下動が生じて車体にショックを与え、ドライバや乗客に違和感を感じさせることになる。
【0066】
FIG.5を参照して、この発明の第2の実施形態によるECU4が実行するフュエルリカバリ制御ルーチンを説明する。このルーチンは第1の実施形態のFIG.2のフュエルリカバリ制御ルーチンに代えて実行される。したがって、ルーチンの実行条件は第1の実施形態と同じである。
【0067】
FIG.2のルーチンとこのフュエルリカバリ制御ルーチンとの相違は、ステップS4に代えてステップS4Aを設けたことである。ステップS1−S3及びステップS5−S7の処理はFIG.2のルーチンと同一である。
【0068】
ステップS3の判定が肯定的な場合に、ECU4はステップS4Aで、内燃エンジン1の半数の気筒についてフュエルリカバリの禁止を行う。つまり、内燃エンジン1が8気筒の場合には4気筒についてフュエルリカバリを禁止し、残りの4気筒についてはフュエルリカバリを実施する。
【0069】
なお、フュエルリカバリを禁止する気筒数は必ずしも全気筒数の半数でなくても良い。一部の気筒のフュエルリカバリを禁止するだけでも、全気筒でフュエルリカバリを行う場合と比べて、内燃エンジン1の出力は小さく抑えられる。
【0070】
また、アクセルペダルの踏み込みと同時に複数気筒のすべてでフュエルリカバリを禁止する一方、時間経過とともに1気筒ずつフュエルリカバリ禁止を解除して行くことも考えられる。この場合には、内燃エンジン1の出力トルクをなだらかに増加させることができる。
【0071】
FIGS.6A−6Fを参照して、第2の実施形態による
フュエルリカバリ制御ルーチンの実行結果を説明する。なお、ステップS4Aでは半数の気筒でフュエルリカバリを禁止するものとする。
【0072】
この場合も時刻t1までは、FIGS.3A−3Fのケースと同一である。時刻t1にドライバがアクセルペダルを僅かに踏むと、直後に実行される
フュエルリカバリ制御ルーチンにおいてステップS1の判定が肯定的に転じる。その結果、ステップS2でECU4はATCU5を介して、FIG.6Dに示すようにロックアップクラッチ2Cへ締結圧を低下させる指令値を出力する。油圧の応答遅れのため、締結圧指令値の低下に対してFIG.6Dの破線に示す実締結圧とFIG.6Cの破線に示すロックアップ容量はともに傾斜的にしか低下しない。
【0073】
一方、ステップS3の判定が肯定的となり、ステップS4Aで半数の気筒のフュエルリカバリが禁止される。その結果、エンジントルクはFIG.6Cに示すようにコースト走行時に比べて若干増大する。この状態ではロックアップクラッチ2Cは高いクラッチ容量を維持しているが、エンジントルクの増大が少量であるため、FIG.6Fに示すように車両の前後方向の加速度は上下動を示すことなく安定して増加する。
【0074】
ここで、ファイルリカバリを全面的に禁止すると、FIG.6Bの破線に示すように、ロックアップクラッチ2Cの解放に伴って、エンジン回転速度Neが低下する可能性がある。しかしながら、一部の気筒に限ってフュエルリカバリを禁止することで、残りの気筒ではフュエルリカバリが行われ、全体としてエンジントルクが若干上昇するので、ロックアップクラッチ2Cの解放に伴うエンジン回転速度Neの低下は起こらない。
【0075】
このようにして、時刻t2にロックアップクラッチ2Cの締結圧が所定圧へ低下すると、ステップ
S7で半数の気筒に課されていたフュエルリカバリ禁止が解除される。これにより、エンジントルクは、再び増大してアクセル開度に応じたエンジントルクを達成する。この時点では、ロックアップクラッチ2Cの締結圧は所定圧に低下しており、ロックアップクラッチ2Cは実質的に解放されている。
【0076】
したがって、エンジントルクの増大はFIG.6Eに示すように、スリップ回転速度を一時的に増大させるだけで、プロペラシャフト3への伝達トルクを急変させることはない。結果として、車両の前後方向の加速度はFIG.6Fに示すように上下動することなく、安定的に上昇する。
【0077】
FIG.7を参照して、この発明の第3の実施形態によるECU4が実行するフュエルリカバリ制御ルーチンを説明する。このルーチンは第1の実施形態のFIG.2のフュエルリカバリ制御ルーチンに代えて実行される。したがって、ルーチンの実行条件は第1の実施形態と同じである。
【0078】
FIG.2のルーチンとこのフュエルリカバリ制御ルーチンとの相違は、ステップS4に代えてステップS4Bを設け、ステップS7に代えてステップS7Bを設けたことである。他のステップの処理はFIG.2のルーチンと同一である。
【0079】
ステップS4Bで、ECU4は全ての気筒でフュエルリカバリを禁止するとともに、吸気スロットル1Aの開度、すなわちスロットル開度の増大を禁止する。吸気スロットル1Aはアクセルペダルに連動するため、アクセルペダルが踏まれればスロットル開度が増大する。ステップS4Bでは、フュエルリカバリの禁止と併せてスロットル開度の増大も禁止する。
【0080】
ステップS7Bでは、ECU4はフュエルリカバリの実行と、スロットル開動の増大禁止の解除を行なう。これにより、内燃エンジン1への燃料供給が再開されるとともに、吸気スロットル1Aがアクセルペダルの踏み込み量に応じた開度へと開度を増大させる。
【0081】
次にFIGS.8A−8Fを参照して、第3の実施形態によるフュエルリカバリ制御ルーチンの実行結果を説明する。
【0082】
この
フュエルリカバリ制御ルーチンの実行のもとでは、時刻t1にドライバがアクセルペダルを僅かに踏んでから時刻t2に至るまでのリカバリディレイ期間は、全気筒においてフュエルリカバリが禁止され、吸気スロットル1Aの開度増大も禁止される。時刻t2にリカバリディレイ期間が終了すると、スロットル開度はFIG.8Aの一点鎖線に示すように増大する。リカバリディレイ期間中の内燃エンジン1の吸入空気量を小さく抑えられていると、アクセル開度の増大に対する吸入空気流量の応答遅れのために、時刻t2で直ちにフュエルリカバリが行われても、FIG.8Cの一点鎖線に示すようにフュエルリカバリに伴う出力トルクの増大が滑らかになる。これに対して、FIG.8Aの実線に示すように、時刻t1からt2に至るリカバリディレイ期間中にスロットル開度が増大していると、時刻t2にフュエルリカバリが実行されると同時に、FIG.8Cの実線に示すように出力トルクは急増する。この実施形態によりリカバリディレイ期間のスロットル開度の増大を禁止することで、時刻t2におけるトルク段差を小さくできる。結果として、トルク段差に起因するショックを抑えられる。また、フュエルリカバリ時の吸入空気量を小さく抑えると、フュエルリカバリ直後の内燃エンジン1の回転の吹け上がりも抑制されるので、その後のロックアップクラッチ2Cの再締結をスムーズに行うことができる。
【0083】
FIG.9を参照して、この発明の第4の実施形態によるECU4が実行するフュエルリカバリ制御ルーチンを説明する。このルーチンは第1の実施形態のフュエルリカバリ制御ルーチンに代えて実行される。実行条件は第1及び第2の実施形態と同じである。
【0084】
このルーチンは、第1の実施形態によるFIG.2のルーチンのステップS2に代えてステップS2Aを設けている。また、ステップS6の判定が否定的な場合には、ステップS4から処理を再実行するのではなく、ステップS2Aから処理を再実行するように構成される。
【0085】
ステップS2Aで、ECU4はロックアップクラッチ2Cへ締結圧を低下させる指令値を出力する際に、締結圧指令値に進み補正を加える。具体的には締結圧指令値として所定圧より低い値を与えることで、ロックアップクラッチ2Cの締結圧の低下を加速する。その上で、ECU4はロックアップクラッチ2Cの締結圧が最終的に所定圧となるように、ステップS2A−S6の処理の繰り返しを通じて、締結圧のフィードバック制御を行う。結果として、アクセルペダルが踏み込まれる時刻t1からロックアップクラッチ2Cの締結圧が所定圧に低下する時刻t2に至る期間中に、ステップS2Aの処理が繰り返し実行される。
【0086】
他のステップの処理は、第1の実施形態のFIG.2のフュエルリカバリ制御ルーチンと同一である。
【0087】
FIGS.10A−10Fを参照して、フュエルリカバリ判定値以下の微小アクセル開度のもとで、
第4の実施形態によるECU4が実行する
FIG.9の
フュエルリカバリ制御ルーチンの実行結果を説明する。
【0088】
車両がコースト走行中の時刻t1にドライバがアクセルペダルを僅かに踏むと、ECU4はステップS2Aにおいて、ATCU5を介して、FIG.10Dに示すようにロックアップクラッチ2Cへ締結圧を低下させる指令値を出力する。この指令値として進み補正を加えた値を採用することで、実締結圧の低下はFIG.10Dの一点鎖線に示すように、進み補正を加えない値を用いる破線のケースよりも早められる。その結果、時刻t1からロックアップクラッチ2Cの締結圧が所定圧に低下する時刻t2までのリカバリディレイ期間が短縮される。
【0089】
時刻t1からt2の間は、ステップS4Aにおける内燃エンジン1の出力低減処理が続行され、FIG.10Cに示すようにエンジントルクはロックアップクラッチ2Cの締結圧が所定圧に低下するまでは低い値に抑えられる。したがって、車両の前後方向の加速度はFIG.10Fに示すようにスムーズに上昇し、ロックアップクラッチ2Cが実質的な締結状態のままエンジントルクが増大することで生じるショックは発生しない。
【0090】
さらに、この実施形態によれば、ロックアップクラッチ2Cの締結圧指令値に進み補正を加えることで時刻t1から時刻t2に至る内燃エンジン1の出力低減期間が短縮される。したがって、アクセルペダルの踏み込みから車両の走行速度が増速するまでの応答時間を短縮することができる。
【0091】
以上のように、この発明は車両がコースト走行中にアクセルペダルが踏まれた場合に、ロックアップクラッチ2Cの締結圧が所定圧以下となるまで、内燃エンジンのフュエルリカバリを抑制する。したがって、ロックアップクラッチ2Cが実質的な締結状態にあるうちに、内燃エンジン1の出力が増大することで、車両速度に影響が生じ、ドライバや乗客に違和感を感じさせるのを防止することができる。
【0092】
以上の説明に関して2011年6月15日を出願日とする日本国における特願2011−133649号、の内容をここに引用により合体する。
【0093】
以上、この発明をいくつかの特定の実施形態を通じて説明してきたが、この発明は上記の各実施形態に限定されるものではない。当業者にとっては、クレームの技術範囲でこれらの実施形態にさまざまな修正あるいは変更を加えることが可能である。