特許第5764684号(P5764684)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エイチジーエスティーネザーランドビーブイの特許一覧

特許5764684スピンホール効果を利用する磁気読み取りセンサー
<>
  • 特許5764684-スピンホール効果を利用する磁気読み取りセンサー 図000014
  • 特許5764684-スピンホール効果を利用する磁気読み取りセンサー 図000015
  • 特許5764684-スピンホール効果を利用する磁気読み取りセンサー 図000016
  • 特許5764684-スピンホール効果を利用する磁気読み取りセンサー 図000017
  • 特許5764684-スピンホール効果を利用する磁気読み取りセンサー 図000018
  • 特許5764684-スピンホール効果を利用する磁気読み取りセンサー 図000019
  • 特許5764684-スピンホール効果を利用する磁気読み取りセンサー 図000020
  • 特許5764684-スピンホール効果を利用する磁気読み取りセンサー 図000021
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5764684
(24)【登録日】2015年6月19日
(45)【発行日】2015年8月19日
(54)【発明の名称】スピンホール効果を利用する磁気読み取りセンサー
(51)【国際特許分類】
   G11B 5/39 20060101AFI20150730BHJP
   H01L 29/82 20060101ALI20150730BHJP
   G01R 33/02 20060101ALN20150730BHJP
【FI】
   G11B5/39
   H01L29/82 Z
   !G01R33/02 A
【請求項の数】21
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-23000(P2014-23000)
(22)【出願日】2014年2月10日
(65)【公開番号】特開2014-154207(P2014-154207A)
(43)【公開日】2014年8月25日
【審査請求日】2014年2月10日
(31)【優先権主張番号】13/764,600
(32)【優先日】2013年2月11日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503116280
【氏名又は名称】エイチジーエスティーネザーランドビーブイ
(74)【代理人】
【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100105463
【弁理士】
【氏名又は名称】関谷 三男
(74)【代理人】
【識別番号】100102576
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 敏章
(74)【代理人】
【識別番号】100101063
【弁理士】
【氏名又は名称】松丸 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100162330
【弁理士】
【氏名又は名称】広瀬 幹規
(72)【発明者】
【氏名】ゴラン ミハイロヴィク
(72)【発明者】
【氏名】ペトラス エー.ヴァン ダー ヘイデン
【審査官】 斎藤 眞
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−146512(JP,A)
【文献】 特開2010−272199(JP,A)
【文献】 特開2011−238342(JP,A)
【文献】 特開2009−158554(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G11B 5/39
H01L 29/82
G01R 33/00−33/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁化自由層と、
前記磁化自由層に隣接して形成される非磁性導電層であって、電流が前記非磁性導電層を面内に貫通して流れる際に、スピンホール効果に基づいて、その側面にスピン偏極電子を蓄積するように構成される非磁性導電層と、
を含み、
前記磁化自由層と前記非磁性導電層とがそれらの間に界面を規定し、かつ、前記界面に、スピンホール効果によってスピン偏極電子の蓄積が生じる、磁気センサー。
【請求項2】
前記界面におけるスピン偏極電子の蓄積の結果、前記非磁性導電層と前記磁化自由層との間に電位差が生じ、その電圧は、前記磁化自由層の磁化の方向に応答して変動する、請求項に記載の磁気センサー。
【請求項3】
前記磁化自由層が、空気ベアリング表面と平行な方向にバイアスされる磁化であるが、磁界に応答して自在に動く磁化を有する、請求項1に記載の磁気センサー。
【請求項4】
第1および第2の導電性磁気シールドであって、前記非磁性導電層および前記磁化自由層が前記第1および第2の導電性磁気シールドの間に配置されるように構成される、第1および第2導電性磁気シールドと、
前記非磁性導電層を面内に貫通する電流を供給するための、前記非磁性導電層に接続される回路と、
前記磁化自由層および前記非磁性導電層を横切る電位を測定するための、前記第1および第2の導電性磁気シールドの少なくとも一方に接続される回路と、
をさらに含む、請求項1に記載の磁気センサー。
【請求項5】
非磁性導電層と、
磁化自由層と、
前記磁化自由層および前記非磁性導電層の間に挟み込まれた非磁性の電気絶縁性バリア層と、
を含む磁気センサーであって、
前記非磁性導電層が、電流が前記非磁性導電層を面内に貫通して流れる際に、スピンホール効果に基づいて、その側面にスピン偏極電子を蓄積するように構成され
前記磁化自由層と前記非磁性導電層とがそれらの間に、前記非磁性の電気絶縁性バリア層を介して界面を規定し、かつ、前記界面に、スピンホール効果によってスピン偏極電子の蓄積が生じる、磁気センサー。
【請求項6】
前記磁化自由層が、空気ベアリング表面と平行な方向にバイアスされる磁化を有する、請求項に記載の磁気センサー。
【請求項7】
前記非磁性導電層を面内に貫通する電流を供給するための、前記非磁性導電層に接続される回路をさらに含む、請求項に記載の磁気センサー。
【請求項8】
第1および第2の導電性磁気シールドであって、前記非磁性導電層および前記磁化自由層が前記第1および第2の導電性磁気シールドの間に配置されるように構成される、第1および第2導電性磁気シールドと、
前記非磁性導電層を面内に貫通する電流を供給するための、前記非磁性導電層に接続される回路と、
前記磁化自由層と前記非磁性の電気絶縁性バリア層と前記非磁性導電層とを横切る電圧を供給するための、前記第1および第2の導電性磁気シールドの少なくとも一方に接続される回路と、
をさらに含む、請求項に記載の磁気センサー。
【請求項9】
前記非磁性導電層が、少なくとも0.1のスピンホール角を有する材料を含む、請求項に記載の磁気センサー。
【請求項10】
前記非磁性導電層が、少なくとも0.1のスピンホール角を有する材料を含む、請求項1に記載の磁気センサー。
【請求項11】
前記非磁性導電層が、Pt、TaおよびWの1つ以上を含む、請求項に記載の磁気センサー。
【請求項12】
前記非磁性導電層が、Pt、TaおよびWの1つ以上を含む、請求項1に記載の磁気センサー。
【請求項13】
非磁性導電層であって、電流が前記非磁性導電層を面内に貫通して流れる際に、スピンホール効果に基づいて、その反対側の両側面にスピン偏極電子を蓄積するように構成される非磁性導電層と、
第1および第2の磁化自由層であって、前記非磁性導電層が前記第1および第2の磁化自由層の間に配置されるように構成され、互いに反平行磁気結合される第1および第2磁化自由層と、
を含む磁気センサー。
【請求項14】
前記第1および第2の磁化自由層の間の電位を測定するための回路をさらに含む、請求項13に記載の磁気センサー。
【請求項15】
前記第1および第2の磁化自由層の間の電位を測定するための回路と、
前記非磁性導電層に電流を供給するための回路と、
をさらに含む、請求項13に記載の磁気センサー。
【請求項16】
第1および第2の導電性磁気シールドであって、前記非磁性導電層と前記第1および第2の磁化自由層とが前記第1および第2の導電性シールドの間に配置される、第1および第2の導電性磁気シールドと、
前記第1および第2の導電性磁気シールドの間の電位を測定するための回路と、
前記非磁性導電層に電流を供給するための回路と、
をさらに含む、請求項13に記載の磁気センサー。
【請求項17】
前記第1の磁化自由層および前記第1の導電性磁気シールドの間に配置される非磁性のシード層と、
前記第2の磁化自由層および前記第2の導電性磁気シールドの間に配置される非磁性のキャッピング層と、
をさらに含む、請求項16に記載の磁気センサー。
【請求項18】
前記第1の磁化自由層が前記非磁性導電層の第1側面に接触して、それらの間に界面を形成し、かつ、
前記第2の磁化自由層が前記非磁性導電層の第2側面に接触して、それらの間に界面を形成する、
請求項14に記載の磁気センサー。
【請求項19】
前記磁化自由層が、側方に対向した第1側面および第2側面を有し、前記第1および第2の導電性磁気シールドの少なくとも一方が、前記磁化自由層の前記第1および第2側面に隣接して延びている、請求項に記載の磁気センサー。
【請求項20】
前記磁化自由層が側方において反対側の第1側面および第2側面を有し、前記第1および第2導電性磁気シールドの少なくとも一方が、前記磁化自由層の第1および第2側面に隣接して延びている、請求項に記載の磁気センサー。
【請求項21】
前記非磁性導電層および前記第1の磁化自由層の間に配置される非磁性の第1電気絶縁性バリア層と、
前記非磁性導電層および前記第2の磁化自由層の間に配置される非磁性の第2電気絶縁性バリア層と
をさらに含む、請求項13に記載の磁気センサー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はデータの磁気記録に関し、さらに具体的には、電子のスピン偏極を発生させるためにスピンホール効果を利用する磁気センサーに関する。
【背景技術】
【0002】
コンピュータの心臓部には、磁気ディスクドライブと呼称されるアセンブリがある。磁気ディスクドライブは、回転磁気ディスクと、回転磁気ディスクの表面に隣接するサスペンションアームによって懸架される書き込みおよび読み取りヘッドと、読み取りおよび書き込みヘッドを回転ディスク上の選択された円形トラックの上部に位置決めするためにサスペンションアームを回動させるアクチュエータとを含む。読み取りおよび書き込みヘッドは空気ベアリング表面(air bearing surface:ABS)を有するスライダの上に直接配置される。サスペンションアームは、ディスクが回転していない時は、スライダをディスクの表面と接触するように付勢するが、ディスクが回転すると、回転ディスクによって空気が巻き込まれる。スライダが空気ベアリングの上に載ると、書き込みおよび読み取りヘッドが、磁気インプレッションを回転ディスクに書き込み、かつ、磁気インプレッションを回転ディスクから読み取るために用いられる。読み取りおよび書き込みヘッドは、書き込みおよび読み取り機能を実行するためのコンピュータプログラムに従って作動する処理回路に接続される。
【0003】
書き込みヘッドは、少なくとも1つのコイルと、1つの書き込み極と、1つ以上の戻り極とを含む。コイルに電流が流れると、生じる磁界によって書き込み極に磁束が流れ、それによって、書き込み極の先端から書き込み磁界が射出される。この磁界は十分に強いので、隣接する磁気ディスクの一部分を局所的に磁化し、それによってデータのビットを記録する。書き込み磁界は、続いて、磁気的に軟質の磁気媒体の下部層を通過して移動し、書き込みヘッドの戻り極に戻る。
【0004】
磁気媒体から磁気信号を読み取るために、巨大磁気抵抗(Giant Magnetoresistance:GMR)センサーまたはトンネル磁気抵抗(Tunnelling Magnetoresistance:TMR)センサーのような磁気抵抗センサーを用いることができる。磁気抵抗センサーは、外部磁界に応答して変化する電気抵抗を有する。この電気抵抗の変化を処理回路によって検出して、隣接する磁気媒体から磁気データを読み取ることができる。
【0005】
データ密度に関する要求が増大しているので、データの線密度を増大させるためにビット長さを低減させる必要性が絶えず存在している。磁気ヘッドに関しては、これは、磁気ヘッドのシールド間の間隔(すなわち読み取りギャップの厚さ)を縮小することを意味する。しかし、物理的な限界と製造上の限界とによって、磁気読み取りヘッドのギャップ厚さを低減し得る量が制約されてきた。例えば、現在の磁気センサーは、非磁性層がその間に挟み込まれた2つの反平行結合された磁性層と、その磁性層の1つをピン止めするための1つの反強磁性(antiferromaganetic:AFM)材料層とを含むピン止め層(pinned layer)の構造を必要とするが、このピン止め層構造は、大量のギャップ必要量を消費すると共に、記録システムのギャップ厚さ(従ってビット長さ)を低減する努力を大きく妨げるものである。従って、将来の磁気記録用途に必要な低減されたギャップ厚さを提供し得る磁気センサーの構成に対する必要性が依然として存在している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】M.I.Dyakonov and V.I.Perel、JETP Lett.13、467(1971)
【非特許文献2】M.I.Dyakonov、Phys.Rev.Lett.99 126601(2007)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、磁化自由層と、その磁化自由層に隣接して形成される非磁性の導電層とを含む磁気センサーを提供する。この非磁性導電層は、電流がその非磁性導電層を面内に貫通して流れる際に、スピンホール効果に基づいて、その側面にスピン偏極電子を蓄積するように構成される。
【0008】
磁化自由層は、非磁性導電層と直接接触することが可能であり、これによって、磁化自由層と非磁性導電層との間の界面に電位が発生する。この電位は、非磁性導電層内の電子のスピン偏極に対する磁化自由層の磁化の方向の変化に応答して変化する。
【0009】
代わりの方式として、磁化自由層と非磁性導電層との間に、薄い非磁性のバリア層を配置することができる。この非磁性のバリア層を横切る電位は、磁化自由層の磁化の方向の変化に応答して変化する。非磁性のバリア層を使用すると、磁化自由層と非磁性導電層とが形成する接合部を横切る電位差を増大させることができる。
【0010】
本発明の別の可能な実施形態においては、1対の反平行結合された磁化自由層を用いることができる。この場合、非磁性の導電層がその磁化自由層の間に配置される。2つの磁化自由層を用いることによって、基本的に信号出力が2倍になるが、ギャップの厚さも幾分か増大する。
【0011】
電子分極のためにスピンホール効果を用いるセンサーは、厚いピン止め層構造とAFM層との必要性を排除することによってギャップの厚さを大幅に低減する。さらに、本発明は、センサーがピン止め層構造を必要としないので、ピン止めの喪失に関連するいかなる問題をも排除する。
【0012】
本発明のこれらおよびその他の特徴および利点は、図面に結び付けて記述される好ましい実施形態に関する以下の詳細説明を読むことによって明らかになるであろう。図面においては、同じ参照符号は、本明細書全体を通して同様の要素を示す。
【0013】
本発明の特質および利点と、好ましい使用モードとを完全に理解するためには、添付の図面に結び付けて読まれる以下の詳細説明を参照するべきである。図面はスケールどおりに描かれているわけではない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明を実施することができるディスクドライブ装置の模式図である。
図2】スライダのABS面の外観図であり、スライダ上の磁気ヘッドの位置を表している。
図3】本発明の一実施形態による磁気読み取りセンサーの空気ベアリング表面の模式図である。
図4】本発明の別の実施形態による磁気読み取りセンサーの空気ベアリング表面の模式図である。
図5】本発明のさらに別の実施形態による磁気読み取りセンサーの空気ベアリング表面の模式図である。
図6】本発明のさらに別の実施形態による磁気読み取りセンサーの空気ベアリング表面の模式図である。
図7】先行技術の磁気読み取りセンサーの空気ベアリング表面の模式図である。
図8】導体の厚さの関数としてのスピン偏極密度を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下の説明は、本発明を実施するために現在考えられる最良の実施形態に基づいている。この説明は、本発明の一般的な原理を例示するためのものであって、本願において特許請求される発明の概念の制限を意味するものではない。
【0016】
ここで図1を参照すると、本発明を実施するディスクドライブ100が示されている。図1に示すように、少なくとも1つの回転可能な磁気ディスク112が、スピンドル114上に支持され、ディスク駆動モータ118によって回転される。各ディスク上における磁気記録は、磁気ディスク112上の同心のデータトラック(図示なし)の環状のパターンの形態において行われる。
【0017】
少なくとも1つのスライダ113が磁気ディスク112の近傍に配置され、各スライダ113は1つ以上の磁気ヘッドアセンブリ121を支持する。磁気ディスクが回転すると、磁気ヘッドアセンブリ121が、所望のデータが書き込まれている磁気ディスクの異なるトラックにアクセスできるように、スライダ113が、ディスク表面122上を半径方向の内側および外側に動く。各スライダ113は、サスペンション115によってアクチュエータアーム119に取り付けられている。サスペンション115は、スライダ113をディスク表面122に対して付勢する僅かなスプリング力を提供する。各アクチュエータアーム119はアクチュエータ手段127に取り付けられる。このアクチュエータ手段127は、図1に示すように、ボイスコイルモータ(voice coil motor:VCM)とすることができる。VCMは、固定磁界の内部で可動なコイルを含み、そのコイルの動きの方向および速度は、制御器129によって供給されるモータ電流信号によって制御される。
【0018】
ディスク記憶装置の運転の間、磁気ディスク112の回転によって、スライダ113とディスク表面122との間に、スライダに上向きの力または揚力を付与する空気ベアリングが生成される。すなわち、空気ベアリングは、サスペンション115の僅かなスプリング力に釣り合って、正常運転の間、スライダ113を、ほぼ一定の微小な間隔だけディスク表面から離してその表面の僅かに上部に支持する。
【0019】
ディスク記憶装置のさまざまな構成要素は、運転中、例えばアクセス制御信号および内部クロック信号のような制御ユニット129が発生する制御信号によって制御される。通常、制御ユニット129は、論理制御回路と記憶手段とマイクロプロセッサとを含む。制御ユニット129は、ライン123上の駆動モータ制御信号、およびライン128上のヘッド位置およびシーク制御信号のような、種々のシステム操作を制御する制御信号を生成する。ライン128上の制御信号は、スライダ113をディスク112上の所望のデータトラックに最適に動かしかつ位置決めするための所望の電流プロファイルを提供する。書き込みおよび読み取り信号は、記録チャネル125を介して、書き込みおよび読み取りヘッド121に伝達され、および、書き込みおよび読み取りヘッド121から伝達される。
【0020】
図2を参照すると、スライダ113における磁気ヘッド121の方位をさらに詳細に見ることができる。図2は、スライダ113のABS面の外観図であり、図に見ることができるように、誘導書き込みヘッドおよび読み取りセンサーを含む磁気ヘッドがスライダのトレーリング端部に配置されている。典型的な磁気ディスク記憶装置に関する上記の記述と、添付の図1の表現とは説明目的のためだけのものである。ディスク記憶装置が多数のディスクとアクチュエータとを保有し得ること、および、各アクチュエータが複数のスライダを支持し得ることは明らかであろう。
【0021】
前記のように、データ密度を増大するためには、読み取りギャップを低減することが必要である。読み取りギャップは、読み取りセンサーの磁気シールド間の間隔であり、ダウントラックの解像度を決定する。現在用いられている磁気センサー、例えば巨大磁気抵抗)センサー(GMR)またはトンネル磁気抵抗センサー(TMR)は、ピン止め層構造と、自由層構造と、ピン止め層構造および自由層構造の間に挟み込まれた非磁性スペーサまたはバリア層とを必要とする。
【0022】
このようなGMRまたはTMRセンサーの一例が図7に表現される。図7は、センサースタック702を含む読み取り素子700を示す。センサースタック702は、リードとしても機能する第1および第2磁気シールド704、706の間に挟み込まれている。シールド704、706間の距離がギャップの厚さGを規定する。センサースタックは、ピン止め層構造708と、自由層構造710と、自由層構造710およびピン止め層構造708の間に挟み込まれた非磁性スペーサまたはバリア層712とを含む。読み取り素子700がGMRセンサーである場合は、層712は、Cuのような非磁性の導電層になり、読み取り素子700がTMRセンサーである場合は、層712は、薄い非磁性の電気絶縁性バリア層になるであろう。
【0023】
自由層710は、空気ベアリング表面と平行な方向にバイアスされる磁化を有する。磁気バイアスは、センサースタックの両側に配置される硬質の磁気バイアス層722によって提供される。硬質のバイアス層722は、薄い電気絶縁層724によって、センサースタック702から分離され、かつ、少なくとも一方のシールドから分離される。この薄い電気絶縁層724はアルミナのような材料から構成できる。製造中に下部層を保護するために、かつ、自由層710を上部シールド706から磁気的に切り離すために、センサースタック702の頂部にキャッピング層726を設けることができる。
【0024】
ピン止め層構造708は第1および第2磁性層714、716を含み、この第1および第2磁性層714、716は、Ruのような非磁性の反平行結合層718を横切って反平行結合される。第1磁性層714は、IrMnまたはPtMnのような反強磁性材料(AFM)層720と交換結合される。磁気/AFM結合が必要なピン止め強度を有するようにするため、AFM層720は相対的に厚くなければならない。すぐ分かるように、ピン止め層構造708およびAFM720は大量の読み取りギャップを消費する。さらに、平面垂直電流(current−perpendicular−to−the−plane:CPP)GMRセンサーにおいては、信号の大きな部分が磁性層のバルク体内で生成されかつ感知される。その結果、(ピン止め層構造および自由層の両者における)磁性層の厚さは、相当程度の信号を得るために、磁性層のスピン拡散長さ(spin diffusion length)に比べて十分に長くする必要がある。これによって、これらの層の最小厚さに制限が加えられる。
【0025】
さらに、厚い構造の場合、読み取り器の幅のリソグラフィー的制御が一層難しい。このため、サイドリーディングを最少化しかつ高い面積密度の磁気記録を可能にする狭いトラック幅を実現するためにも、より薄い読み取り器が有益になるであろう。
【0026】
図3は、本発明の可能な一実施形態による磁気読み取りヘッド300を空気ベアリング表面から見た模式図として示す。読み取りヘッド300は、上記のGMRまたはTMRとは基本的に異なる方式で作動し、図から分かるように、ピン止め層構造を全く必要としない。従って、センサー300は、従来型のGMRまたはTMRセンサー構造によってこれまで可能であったものより遥かに小さいギャップ厚さGを有するように作製できる。
【0027】
センサー300は、第1および第2磁気シールド304、306の間に挟み込まれたセンサースタック302を含む。シールド304、306は、Ni−Feのような材料から構成できる。シールド間の距離が読み取りギャップ厚さGを決定する。センサースタック302は、頂面309と底面311とを有する非磁性の伝導層308を含むが、この非磁性伝導層308は、白金(Pt)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、あるいは、少なくとも0.1の大きなスピンホール角を有しかつ大きなスピンホール効果を呈する他の任意の非磁性金属または合金のような材料から構成できる。この非磁性伝導層は、この導電性の非磁性層308を面内に貫通して流れる電流iを惹起する電流源310と接続される。
【0028】
磁化自由層312は非磁性導電層308に隣接して形成される。この磁化自由層312は、Co−Fe、Ni−Feおよび/またはHeusler合金のような磁性材料の1つ以上の層から形成できる。この磁化自由層312は、矢印314によって示されるように、空気ベアリング表面と平行な方向にバイアスされる磁化を有するが、その方向は、(例えば近傍の磁気媒体からの)磁界に応答して自在に動く。磁化自由層の磁化314は、硬質の第1および第2磁気バイアス層316、318によって供給されるバイアス磁界によってバイアス可能である。この硬質の第1および第2磁気バイアス層316、318は、CoPtまたはCoPtCrのような高い飽和保磁力の材料から構成できる。硬質の磁気バイアス層316、318は、アルミナのような材料から構成できる薄い絶縁層320によって、非磁性導電層308から分離される。この硬質の各バイアス層316、318の頂面上には、Rhまたは他のいくつかの材料のような硬質のバイアスキャッピング層322を設けることができる。磁化自由層312の頂面上には、Taのようなキャッピング層324を装着できる。さらに、場合によっては、非磁性導電層308と隣接シールド304との間に、絶縁層326を設けることができる。この絶縁層326は、アルミナのような材料から構成でき、かつ、側方に広がる部分のみを絶縁するように、自由層312の下部の領域には開口を有するように形成できる。この絶縁層326は、非磁性導電層308と平行な方向においてシールドを面内に貫通する電子の流れを最少化するために、従って、アクティブな非磁性層308を面内に貫通する電流密度を最大化するために用いることができる。しかし、絶縁層326はオプションとして場合によって設けられる。
【0029】
センサー300はスピンホール効果に基づいて作動する。電流iが非磁性伝導体308を面内に貫通して流れると、スピンホール効果によって、非磁性伝導体308内の電子のスピンが図示のように偏極する。主として一方のスピンの電子は、伝導層308の第1面(例えば頂面)309に蓄積され、反対のスピンの電子は第2面(例えば底面)311に蓄積されるであろう。これが、層308の頂部における矢印のテール記号328と、層308の底部における矢印の先端記号330とによって示されている。これらの電子のスピンは、電流iに垂直でありかつ図3のページに垂直である方位を有する。
【0030】
この場合、磁化自由層312の磁化314は、自由層312に隣接する非磁性層のスピンの方向328に垂直な方向にバイアスされる。磁化自由層312は非磁性層308に隣接しているので、自由層と非磁性層308との間には界面332が存在する。電子のスピン偏極328と、自由層312の磁化314とのために、スピン依存の電位が界面332を横切って存在する。この電位は、非磁性伝導層308内の電子のスピン極性328に対する自由層312の磁化314の方向の変化に応答して変動する。シールドの一方304を接地334し、もう一方のシールド306を電圧検出器336に接続すると、界面332を横切る電圧の変化を、近傍の(例えば磁気媒体からの)磁界の変化を示す信号として読み取ることができる。
【0031】
従って、非磁性層308が、通常であれば図7を参照して前記に述べたピン止め層構造によって供給されるであろうスピン偏極電子を発生させることが分かる。しかし、非磁性層308は、先行技術のGMRおよびTMRセンサーの場合に必要な図7の厚いピン止め層構造708およびAFM層720より遥かに薄く作製することが可能である。従って、ギャップ厚さGを大幅に低減できる。
【0032】
スピン偏極は、スピンホール効果を利用して非磁性伝導体の表面に生成される。密度jの電流が、x方向において、z方向に測定される厚さtの伝導層(図3)を面内に貫通するように印加されると、電子のスピン軌道結合によって、反対方位のyスピンがz方向に沿う反対方向に散乱される。同じことが、y方向に沿うzスピンについても成り立つが、それは、センサー300には関係ない。この効果によって、z方向に沿うyスピン偏極密度の分布が生じ、その分布は、t/2L=10の場合(但しLは非磁性伝導体内におけるスピン拡散長さ)の図8に示すように、伝導体の中心においてゼロ値を取り、頂面および底面において反対向きの偏極方向の最大値を呈する。表面は、スピン軌道結合材料の符号に応じて、図3に示すのものとは反対の偏極方向を有し得ることを指摘しておくべきである。この効果の物理的内容については(非特許文献1)および(非特許文献2)において詳細に論じられている。この効果は、金属および半導体の両者において実験的に検証されている。
【0033】
z方向に沿うスピン偏極密度の大きさは次式で与えられる。
【数1】
但し、γはスピンホール角、Lはスピン拡散長さ、Dは拡散係数、eは電子の電荷である。図8は、t/2L=10の場合における非磁性伝導体の厚さに関するS(z)分布の一例を示す。tが2Lより遥かに大きい(t>>L)場合には、頂面および底面において最大値Sを得ることができる。すなわち、
【数2】
である。t=2Lであれば、S(±t/2)はこの最大値の約3/4である。
【0034】
スピンホール効果によって非磁性伝導体の表面に生じるスピン偏極密度は、図3の磁化自由層312のような磁性層に隣接すると有効な電圧に変換できる。さらに具体的には、スピン偏極密度は、スピン依存の化学ポテンシャル(スピン蓄積)を誘起し、この化学ポテンシャルは次式によって与えられる。
【数3】
但し、N(E)はFermiレベルにおける状態の電子密度である。
【0035】
伝導層(例えば層308)が強磁性体層(例えば自由層312)と接触していると、その伝導体308と磁性層312との間の界面332を横切って、次式の電位、すなわち、
【数4】
の電位が生じる。上記の式中、
【数5】
は界面のスピン偏極ベクトルである(
【数6】
は磁性層318の磁化の方向の単位ベクトル、
【数7】
は基準表面のスピン偏極密度の方向の単位ベクトルである)。
【数8】
および
【数9】
の平行および反平行方位の間の電位差は、次式、すなわち、
【数10】
である。
【0036】
厚さtの非磁性伝導体308に対しては、Einsteinの拡散方程式
【数11】
(但し、ρは非磁性伝導体308の固有抵抗である)を考慮して、上記の式は、次式、すなわち、
【数12】
になる。
【0037】
従って、スピンホール効果によって、伝導層308と磁化自由層312との間の界面を横切って電圧が生じること、および、この電圧は、界面332におけるスピン偏極328に対する自由層312の磁化314の方位に応じて変化することが分かる。この場合、この電圧を、磁気媒体からのような磁界に応答する信号として測定することが可能である。
【0038】
ここで図4を参照すると、本発明の別の可能な実施形態による磁気センサー400が表現されている。センサー400は、図3のセンサー300に類似しているが、非磁性の導電層308と磁化自由層312との間に、非磁性の電気絶縁性バリア層402が挿入されている点が異なる。
【0039】
バリア層402を設けることによって、上記の式中のパラメータPを最大化することができる。バリア層は、また、非磁性導電層308の表面近傍の電流密度をも最大化し、従って、基準スピン偏極密度を最大化する。バリア層402を有するこの実施形態は、トンネル(TMR)センサーと同様に機能するが、電流がバリア層402および自由層312を貫いて流れないという点が主要な相違点である。これによって、TMRセンサーより信頼性および耐久性を改善できる。バリア層402を横切る電圧は、伝導層におけるスピンの偏極328に対する自由層312の磁化314の方位に応じて変化する。この実施形態においては、スピンの偏極328が、通常のTMRセンサーの場合のように電流をピン止め磁性層構造を通すことによってではなく、スピンホール効果によってもたらされる。
【0040】
図6は、図4のセンサーに類似したセンサー600の実施形態を示しているが、それは、自由層312の側面における硬質のバイアス構造を必要としないという点で異なっている。その代りに、側面のシールド機能を提供するように、シールド306が自由層312の側面に隣接して下方に延びている。自由層312の側面に硬質のバイアス層を必要としないセンサーにおいては、このような側部シールドの存在によって、センサー600のクロストラックの解像度がより良好に規定され、かつ縮小される。
【0041】
ここで図5を参照すると、本発明のさらに別の実施形態による磁気センサー500が表現されている。この実施形態は、非磁性導電層308を跨いで互いに反対側に配置される1対の反平行結合された磁化自由層502、504を含む。また、このセンサーは、磁性層504の一方の頂部におけるキャッピング層324と、もう一方の自由層502の底部におけるシード層506とを含むことができる。シード層506は、上部に堆積される自由層502内における所望の粒子構造の発現を補助することができる。
【0042】
自由層502、504は、空気ベアリング表面に平行で、かつ互いに反平行の方位を有する磁化510、512を含む。層502、504の反平行結合は、磁化自由層502、504の間の静磁結合または交換結合から生じさせることが可能である。さらに、磁性層502、504は、磁性層502、504における磁気異方性によって、それらの磁化が図示のように空気ベアリング表面と平行な方向に自然に整列するように構成することが可能である。磁化510、512は、この反平行形態に整列する傾向がある一方で、近傍の磁気媒体からのような磁界に応答して自在に動く。磁化510、512が動く時は、それらは丁度鋏のような態様において動く。例えば、それらは、両者が一斉に、図5のページの平面の中に動くか、あるいはページの表面から外に動くことができる。
【0043】
この実施形態においては、反平行結合と形状強化磁気異方性とのために、前記のような硬質のバイアス構造は不要とすることができる。従って、(各シールド304、306と伝導層308との間の)磁化自由層502、504を側方に超える領域に、非磁性の電気絶縁材料514を充填することが可能である。
【0044】
2つの自由層502、504が設けられるので、伝導層308とそれぞれの磁化自由層502、504との間には2つの界面516、518も存在する。図5においては、磁化510、512が反対向きであり、伝導体308の頂部および底部におけるスピン偏極328、330も反対向きであることが分かる。このため、両方の界面516、518において生成される信号は加算される。この方式によって、センサーの出力を効果的に2倍にできる。
【0045】
また、図5に示す実施形態と図4に示す実施形態との両者の特徴を含む実施形態(図示なし)を実現できることを指摘しなければならない。すなわち、図5に示すような1対の自由層502、504を備えているが、各磁化自由層502、504と、伝導層308との間に、(図4のバリア層402に類似の)薄い非磁性のバリア層をも有する実施形態を構成することが可能である。
【0046】
以上種々の実施形態について説明したが、これらの実施形態は事例としてのみ提示されたものであって、制限ではないことが理解されるべきである。本発明の範囲内に包含される他の実施形態も当業者には明らかになるであろう。従って、本発明の広さおよび範囲は、以上述べた事例的な実施形態のいずれによっても制限されることはなく、以下の請求項およびその等価物によってのみ規定されるべきである。
【符号の説明】
【0047】
100 ディスクドライブ
112 磁気ディスク
113 スライダ
114 スピンドル
115 サスペンション
118 ディスク駆動モータ
119 アクチュエータアーム
121 磁気ヘッド
122 ディスク表面
123 ライン
125 記録チャネル
127 アクチュエータ手段
128 ライン
129 制御ユニット
300 磁気センサー
302 センサースタック
304 第1磁気シールド
306 第2磁気シールド
308 非磁性導電層
309 頂面
310 電流源
311 底面
312 磁化自由層
314 磁化(の方向)
316 第1磁気バイアス層
318 第2磁気バイアス層
320 絶縁層
322 バイアスキャッピング層
324 キャッピング層
326 絶縁層
328 スピン偏極
330 スピン偏極
332 界面
334 接地
336 電圧検出器
400 磁気センサー
402 バリア層
500 磁気センサー
502 第1磁化自由層
504 第2磁化自由層
506 シード層
510 磁化(の方向)
512 磁化(の方向)
514 電気絶縁材料
516 界面
518 界面
600 磁気センサー
700 磁気センサー
702 センサースタック
704 第1磁気シールド
706 第2磁気シールド
708 ピン止め層
710 自由層
712 バリア層
714 第1磁性層
716 第2磁性層
718 結合層
720 AFM層
722 バイアス層
724 電気絶縁層
726 キャッピング層
G ギャップ厚さ
i 電流
t 非磁性導電層の厚さ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8