特許第5764708号(P5764708)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5764708
(24)【登録日】2015年6月19日
(45)【発行日】2015年8月19日
(54)【発明の名称】変位測定装置および変位量算出方法
(51)【国際特許分類】
   G01B 21/32 20060101AFI20150730BHJP
   G01B 21/00 20060101ALI20150730BHJP
   G01B 5/30 20060101ALI20150730BHJP
   G01H 1/00 20060101ALI20150730BHJP
【FI】
   G01B21/32
   G01B21/00 D
   G01B5/30
   G01H1/00 T
【請求項の数】7
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2014-244284(P2014-244284)
(22)【出願日】2014年12月2日
【審査請求日】2014年12月2日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】593063161
【氏名又は名称】株式会社NTTファシリティーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】特許業務法人 志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 献一
(72)【発明者】
【氏名】杉村 義文
(72)【発明者】
【氏名】松下 剛史
(72)【発明者】
【氏名】元樋 敏也
(72)【発明者】
【氏名】千葉 大輔
(72)【発明者】
【氏名】西井 宏安
(72)【発明者】
【氏名】望月 真樹
【審査官】 岸 智史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−195209(JP,A)
【文献】 特開2010−019748(JP,A)
【文献】 特開2012−141163(JP,A)
【文献】 特開平05−248854(JP,A)
【文献】 特開2011−053157(JP,A)
【文献】 特開2012−220232(JP,A)
【文献】 特開2004−191226(JP,A)
【文献】 特開平06−300525(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 5/00−21/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物の設置面に沿って移動可能な支持体と、
該支持体に支持されて前記構造物の変位量を測定可能な複数の変位測定部と、を備え、
該複数の変位測定部は、前記設置面と対向するように前記支持体に固定されているとともに、前記設置面と常に一定の間隔となるように保持されていて、それぞれ異なる位置において同一方向の前記構造物の変位量を測定可能に構成されていることを特徴とする変位測定装置。
【請求項2】
前記複数の変位測定部は、それぞれ前記支持体と前記設置面との間に設けられていて、
前記複数の変位測定部を囲繞するとともに、前記支持体と前記設置面との間隔を塞ぐカバー部をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の変位測定装置。
【請求項3】
前記変位測定部に電源を供給可能な電池を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の変位測定装置。
【請求項4】
前記複数の変位測定部がそれぞれ測定した複数の変位量のデータは、時間軸方向に軸補正されるとともに時刻歴が合せられて平均値が算出され、該平均値が前記構造物の変位量の代表値となり、
前記複数の変位測定部がそれぞれ測定した複数の変位量のデータのうちの一部のデータが欠落している場合に、該一部のデータを除いたデータを用いて平均値が算出されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の変位測定装置。
【請求項5】
前記複数の変位測定部がそれぞれ測定した複数の変位量のデータは、時間軸方向に軸補正されるとともに時刻歴が合せられて平均値が算出され、該平均値が前記構造物の変位量の代表値となり、
前記複数の変位測定部がそれぞれ測定した複数の変位量のデータそれぞれに欠落がない場合には、前記複数の変位量のデータ全ての標準偏差を算出し、該標準偏差内のデータを用いて平均値が算出されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の変位測定装置。
【請求項6】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の変位測定装置の複数の変位測定部が測定した構造物の複数の変位量から代表値を算出する変位量算出方法であって、
前記構造物の複数の変位量のデータを軸補正し、時刻歴を合せる補正ステップと、
該補正ステップで補正された前記構造物の複数の変位量のデータの平均値を算出して該平均値を構造物の変位量の代表値とする平均値算出ステップと、を有し、
前記複数の変位測定部がそれぞれ測定した前記構造物の複数の変位量のデータのうちの一部のデータが欠落している場合に、前記一部のデータを除いたデータを用いて前記補正ステップおよび前記平均値算出ステップを行うことを特徴とする変位量算出方法。
【請求項7】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の変位測定装置の複数の変位測定部が測定した構造物の複数の変位量から代表値を算出する変位量算出方法であって、
前記構造物の複数の変位量のデータを軸補正し、時刻歴を合せる補正ステップと、
該補正ステップで補正された前記構造物の複数の変位量のデータの平均値を算出して該平均値を構造物の変位量の代表値とする平均値算出ステップと、を有し、
前記複数の変位測定部がそれぞれ測定した前記構造物の複数の変位量のデータの全部のデータに欠落がない場合に、前記全部のデータの標準偏差を算出し、前記全部のデータのうちの前記標準偏差内のデータを用いて前記補正ステップおよび前記平均値算出ステップを行うことを特徴とする変位量算出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地震などが生じた際の構造物の変位量を測定するため変位測定装置およびこの変位測定装置において構造物の変位量を算出する変位量算出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、地震などが生じた際の建物などの構造物の変位量を測定する変位測定装置が利用されている。
例えば、特許文献1には、構造物に固定された支持部と、支持部と水平方向に相対変位可能な支持体と、支持部と支持体との相対変位量を測定するセンサとを備え、測定された支持部と支持体との相対変位量から構造物の絶対変位量を算出する変位測定装置が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−019748号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような変位測定装置は、センサが支持体に設置されているため、地震の震動などによって支持部と支持体とが一定の寸法以上離間してしまうと、センサが構造物の変位量を確実に測定できない虞がある。
【0005】
そこで、本発明は、構造物の変位量を確実に測定することができる変位測定装置およびこの変位測定装置において構造物の変位量を算出する変位量算出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る変位測定装置は、構造物の設置面に沿って移動可能な支持体と、該支持体に支持されて前記構造物の変位量を測定可能な複数の変位測定部と、を備え、該複数の変位測定部は、前記設置面と対向するように前記支持体に固定されているとともに、前記設置面と常に一定の間隔となるように保持されていて、それぞれ異なる位置において同一方向の前記構造物の変位量を測定可能に構成されていることを特徴とする。
【0007】
本発明では、複数の変位測定部は、それぞれ異なる位置において同一方向の構造物の変位量を測定可能に構成されていることにより、振動などによって複数の変位測定部のうちの一部が設置面と離間して構造物の変位量を測定できなかった場合や、異常値を測定した場合でも、他の変位測定部が構造物の変位量を測定しているため、構造物の変位量を確実に測定することができる。
また、一部の変位測定部が異常値を測定した場合に、この異常値を他の変位測定部が測定した構造物の変位量を基に補正することができる。
なお、「複数の変位測定部は、同一方向の構造物の変位量を測定可能」な構成とは、複数の変位測定部が、それぞれ設置面に沿った方向の構造物の変位量を測定可能な構成や、水平方向の構造物の変位量を測定可能な構成や、鉛直方向の構造物の変位量を測定可能な構成などを示している。
【0008】
また、本発明に係る変位測定装置では、前記複数の変位測定部は、それぞれ前記支持体と前記設置面との間に設けられていて、前記複数の変位測定部を囲繞するとともに、前記支持体と前記設置面との間隔を塞ぐカバー部をさらに備えることが好ましい。
このような構成とすることにより、変位測定部と設置面との間に埃などの異物が入ることを防止できるとともに、変位測定部に光学センサなどを利用している場合は、変位測定部が設置されている空間の明るさを均一に維持することができるため、変位測定部が良好な環境で構造物の変位量を測定することができる。
【0009】
また、本発明に係る変位測定装置では、前記変位測定部に電源を供給可能な電池を備えることが好ましい。
このような構成とすることにより、変位測定部に確実に電力を供給することができるとともに、停電時にも変位測定部を稼働させることができて、構造物の変位量のデータが欠落することを防止できる。
また、本発明に係る変位測定装置では、前記複数の変位測定部がそれぞれ測定した複数の変位量のデータは、時間軸方向に軸補正されるとともに時刻歴が合せられて平均値が算出され、該平均値が前記構造物の変位量の代表値となり、前記複数の変位測定部がそれぞれ測定した複数の変位量のデータのうちの一部のデータに欠落がある場合には、該一部のデータを除いたデータを用いて平均値が算出されてもよい。
また、本発明に係る変位測定装置では、前記複数の変位測定部がそれぞれ測定した複数の変位量のデータは、時間軸方向に軸補正されるとともに時刻歴が合せられて平均値が算出され、該平均値が前記構造物の変位量の代表値となり、前記複数の変位測定部がそれぞれ測定した複数の変位量のデータそれぞれに欠落がない場合には、前記複数の変位量のデータ全ての標準偏差を算出し、該標準偏差内のデータを用いて平均値が算出されてもよい。
【0010】
また、本発明に係る変位量算出方法は、上記の変位測定装置の複数の変位測定部が測定した構造物の複数の変位量から代表値を算出する変位量算出方法であって、前記構造物の複数の変位量のデータを軸補正し、時刻歴を合せる補正ステップと、該補正ステップで補正された前記構造物の複数の変位量のデータの平均値を算出して該平均値を構造物の変位量の代表値とする平均値算出ステップと、を有し、前記複数の変位測定部がそれぞれ測定した前記構造物の複数の変位量のデータのうちの一部のデータが欠落している場合に、前記一部のデータを除いたデータを用いて前記補正ステップおよび前記平均値算出ステップを行うことを特徴とする。
このような構成とすることにより、一部の変位測定部が構造物の変位量を測定できなかった場合にも、より正確な構造物の変位量の代表値を確実に算出することができる。
【0011】
また、本発明に係る変位量算出方法は、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の変位測定装置の複数の変位測定部が測定した構造物の複数の変位量から代表値を算出する変位量算出方法であって、前記構造物の複数の変位量のデータを軸補正し、時刻歴を合せる補正ステップと、該補正ステップで補正された前記構造物の複数の変位量のデータの平均値を算出して該平均値を構造物の変位量の代表値とする平均値算出ステップと、を有し、前記複数の変位測定部がそれぞれ測定した前記構造物の複数の変位量のデータの全部のデータに欠落がない場合に、前記全部のデータの標準偏差を算出し、前記全部のデータのうちの前記標準偏差内のデータを用いて前記補正ステップおよび前記平均値算出ステップを行うことを特徴とする。
このような構成とすることにより、一部の変位測定部が異常値を測定した場合にも、より正確な構造物の変位量の代表値を確実に算出することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、構造物の変位量を確実に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】(a)は本発明の第1実施形態による変位測定装置の一例を示す下面図、(b)は(a)のA方向から見た側面図、(c)は(a)のB−B線断面図である。
図2】本発明の第1実施形態による変位量算出方法を説明するフローチャートである。
図3】(a)は本発明の第2実施形態による変位測定装置を説明する図、(b)はカバー部を説明する斜視図である。
図4】(a)は本発明の第3実施形態による変位測定装置の一例を示す下面図、(b)は(a)のC方向から見た側面図である。
図5】本発明の第4実施形態による変位測定装置を説明する正面図である。
図6】(a)は本発明の第4実施形態による変位測定装置の変形例を説明する正面図、(b)は(a)の上面図である。
図7】本発明の第5実施形態による変位測定装置を説明する下面図である。
図8】(a)は本発明の第6実施形態による変位測定装置を説明する図で(b)のD方向から見た側面図で第1カバー部の手前側の部分、第2カバー部の手前側の部分および上板部の一部を省略した図、(b)は(a)のE−E線断面図で第2カバー部の上板部を省略した図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態による変位測定装置について、図1に基づいて説明する。
図1(a)〜(c)に示すように、第1実施形態による変位測定装置1Aは、構造物11の床面(設置面)12に沿って移動可能な支持体2と、構造物11に支持され支持体2を床面12に向かって付勢する付勢部3と、支持体2に設置されて支持体2と床面12との相対変位量をそれぞれ測定可能な3つの変位測定部4,4,4と、3つの変位測定部4,4,4の駆動を行うスイッチ部5と、3つの変位測定部4,4,4がそれぞれ測定した支持体2と床面12との相対変位量のデータの処理を行う処理部(不図示)と、3つの変位測定部4,4,4に電源を供給可能な電池(不図示)と、を備えている。
【0015】
支持体2は、板面が上下方向を向き平面視において略正三角形状に形成された第1板部21と、第1板部21の上部に間隔をあけて第1板部21と平行に配置され外形が第1板部と同じ形状に形成された第2板部と、第1板部21と第2板部22との間に配置され第1板部21と第2板部22とを連結する連結部23と、連結された第1板部21および第2板部22を床面12に沿って移動可能に支持する3つの移動部24,24,24と、を有している。
【0016】
第1板部21には、中央部に上下方向に貫通する平面視略円形状の孔部21aが形成されている。また、第1板部21の下部には、3つの変位測定部4,4,4および3つの移動部24,24,24が配置され、第1板部21の下面と床面12との間には間隔が設けられている。
第2板部22は、平面視における略正三角形の3つの角部22b,22b,22bが、第1板部21の平面視における略正三角形の3つの角部21b,21b,21bとそれぞれ重なるように配置されている。なお、第2板部22には、第1板部21のような孔部21aは形成されていない。
【0017】
連結部23は、軸方向を上下方向とし内径が第1板部21の孔部21aの径よりも大きい円筒状に形成されていて、下端部が第1板部21の上面に固定され、上端部が第2板部22の下面に固定されている。連結部23は、中心軸が第1板部21および第2板部22の中心21cと上下方向に重なるように配置されている。
【0018】
移動部24は、軸方向を上下方向とし上端部が第1板部21の下面に固定された筒状部24aと、筒状部24a内に挿入された状態で床面12と当接し床面12に沿って転がって移動可能な移動用球体24bと、を有している。筒状部24aは、下端部が床面12と当接しないように配置されている。
また、本実施形態では、3つの移動部24,24,24は、第1板部21に対して第1板部21の中心21cの周りに周方向に等しく間隔をあけて配置されている。そして、3つの移動部24,24,24は、第1板部21の平面視における略正三角形の3つの角部21b,21b,21b近傍にそれぞれ配置され、角部21b,21b,21bと第1板部21の中心21cとを結ぶ線上に配置されている。
【0019】
付勢部3は、上端部が例えば構造物11の天井部や梁部に支持された上下方向に延在する支持部材13の下端部に連結される連結部31と、連結部31の下側に配置され支持体2の第2板部22に上方から当接する押さえ板部32と、連結部31と押さえ板部32との間に配置された上下方向に伸縮可能なバネ33と、を備えている。
バネ33は、上端部が連結部31に当接するとともに、下端部が押さえ板部32と当接していて、押さえ板部32を介して支持体2を下側(床面12側)へ付勢するように構成されている。
これにより、地震の震動などによって支持体2が床面12から離間することが防止されている。
【0020】
3つの変位測定部4,4,4は、床面12に沿った面内(略水平面内)における支持体2と床面12との相対変位量を測定可能な変位センサで構成されている。例えば、3つの変位測定部4,4,4は、バーコードリーダーや、光学式マウスなどを利用した光学式の変位センサや、アノトペンを利用した変位センサ、差動トランス式の変位センサなどで構成されている。なお、本実施形態では、3つの変位測定部4,4,4が光学式の変位センサで構成されている場合は、それぞれの変位測定部4,4,4が発光素子および受光素子を個別に有していることが好ましい。
また、本実施形態では、3つの変位測定部4,4,4は、第1板部21に対して第1板部21の中心21cの周りに周方向に等しく間隔をあけて配置されている。そして、3つの変位測定部4,4,4は、3つの移動部24,24,24と第1板部21の中心21cとの間にそれぞれ配置されている。なお、3つの変位測定部4,4,4は、隣り合う移動部24,24間の中央部にそれぞれ配置されていてもよい。
【0021】
そして、本実施形態では、3つの変位測定部4,4,4がそれぞれ測定した支持体2と床面12との相対変位量のデータが処理部(不図示)へ通信され、処理部がこれらのデータをもとにより正確な支持体2と床面12との相対変位量を算出するように構成されている。なお、変位測定装置1Aには、これらのデータを3つの変位測定部4,4,4から処理部へ通信するための通信装置や、3つの変位測定部4,4,4がそれぞれ測定した支持体2と床面12との相対変位量のデータや処理部が算出した支持体2と床面12との相対変位量などを記憶するための記憶部などが適宜設置されている。
【0022】
スイッチ部5は、支持体2の第1板部21の孔部21aに挿入された状態で床面12に沿って回転しながら移動可能なスイッチ用球体51と、スイッチ用球体51が当接すると3つの変位測定部4,4,4を駆動させる4つの機械式スイッチ52,52,…と、を有している。
スイッチ用球体51は、その径が第1板部21の孔部21aの内径よりもやや小さい径に形成されていて、第1板部21の孔部21aに挿入されると、第1板部21の孔部21aの内部で移動可能に構成されている。また、スイッチ用球体51は、第1板部21の孔部21aに挿入されると、第1板部21よりも上部側が連結部23の内側に挿入されるように構成されている。
【0023】
このようなスイッチ用球体51は、構造物11と比べて質量が非常に小さく、構造物11が変位(変形)しないような微振動でも変位可能に構成されている。このため、スイッチ用球体51は、構造物11に支持された支持体2が変位しないような微振動でも変位可能となり、微振動によって支持体2とスイッチ用球体51とが異なる挙動をするように構成されている。
なお、スイッチ用球体51は、床面12との間の摩擦係数が、移動部24の移動用球体24bと床面12との間の摩擦係数よりも小さく、地震などの震動が生じてもほとんど震動せずに略一点に留まるように構成されていてもよい。そして、床面12と支持体2とが相対変位すると、支持体2とスイッチ用球体51とが異なる挙動をするように構成されていてもよい。
【0024】
機械式スイッチ52,52,…は、第1板部21の孔部21aの縁部に沿って等間隔に配置されている。
このようなスイッチ部5は、地震の振動などが生じていない通常時には、支持体2および支持体2の第1板部21の孔部21aに挿入されたスイッチ用球体51が静止して、スイッチ用球体51と第1板部21の孔部21aの縁部に設けられた機械式スイッチ52,52,…とが離間している。そして、スイッチ部5は、地震の震動などが生じると、スイッチ用球体51が支持体2と異なる挙動をして、4つの機械式スイッチ52,52,…のうちのいずれか1つ以上と当接する。
【0025】
そして、本実施形態では、スイッチ用球体51が4つの機械式スイッチ52,52,…のうちのいずれか1つ以上と当接すると、電池から3つの変位測定部4,4,4に電源が供給されて、3つの変位測定部4,4,4が駆動するように構成されている。このとき、スイッチ用球体51が微振動によって変位可能に構成されていると、微振動によってスイッチ用球体51が4つの機械式スイッチ52,52,…のうちのいずれか1つ以上と当接可能なため、微振動の状態から支持体2と床面12との相対変位量を測定することができる。
そして、駆動している3つの変位測定部4,4,4は、所定の値以上の支持体2と床面12との相対変位量を測定しない状態が設定された一定期間経過すると、電池からの電源の供給が停止されて測定が停止されるように構成されている。
【0026】
本実施形態では、駆動している3つの変位測定部4,4,4は、測定している支持体2と床面12との相対変位量が0mmである状態が連続して10秒経過すると、電池からの電源の供給が停止されて測定が停止されるように構成されている。
なお、本実施形態には、スイッチ部5からの信号や3つの変位測定部4,4,4が測定している測定量の値によって電池から3つの変位測定部4,4,4への電源の供給を制御し、3つの変位測定部4,4,4の駆動および停止を制御する制御部(不図示)が設けられている。
【0027】
電池は、例えば、支持体2の第1板部21と第2板部22との間や、第2板部22の上部などに配置されている。なお、電池が第2板部22の上部に配置されていると、電池の交換などが行いやすい。
【0028】
次に、3つの変位測定部4,4,4がそれぞれ測定した支持体2と床面12との相対変位量のデータ(以下データとする)の処理部による処理方法(変位量算出方法)について図2に示すフローチャートを基に説明する。
(測定ステップ)
上述した変位測定装置1の3つの変位測定部4,4,4によって、支持体2と床面12との相対変位量をそれぞれ測定する(S−1)。
【0029】
(補正ステップ)
測定ステップ(S−1)において3つの変位測定部4,4,4が測定した支持体2と床面12との相対変位量のデータ(以下データとする)を軸補正し、基準となる1つのデータ以外の2つのデータの時刻歴を基準となる1つのデータに合せる(S−2)。
【0030】
(選出ステップ)
補正ステップ(S−2)において軸補正された3つのデータのうち、後の平均値算出ステップを行うデータを選出する(S−3)。
まず、3つのデータに欠落がないかどうかを判定する(S−4)。
この判断(S−3)においてデータの欠落がないと判断された場合は、3つのデータから標準偏差を算出する(S−5)。
そして、データの中にこの標準偏差の範囲外の異常値がないかどうかを判定する(S−6)。
この判断(S−6)においてデータに標準偏差の範囲外の異常値がないと判断された場合は、3つのデータを選出する(S−7)。
【0031】
また、この判断(S−6)においてデータに標準偏差の範囲外の異常値があると判断された場合は、測定ステップ(S−1)において標準偏差の範囲外のデータを測定した変位測定部4によって標準偏差の範囲外のデータが測定される直前に測定されたデータを基準とし、標準偏差の範囲内のデータを測定した変位測定部4によって測定されたデータの変化を適用させて補正データを算出する(S−8)。
そして、この補正データおよび標準偏差の範囲内のデータを選出する(S−9)。
【0032】
また、3つのデータに欠落がないかどうかの判定(S−4)において、データの欠落がある場合は、欠落していないデータを選出する(S−10)。
【0033】
(平均値算出ステップ)
選出ステップ(S−3)の選出処理(S7,S9,S10)選出されたデータの平均値を算出し、この平均値を支持体2と床面12との相対変位量(代表値)とする(S−11)。
【0034】
次に、上述した第1実施形態による変位測定装置1Aの作用・効果について図面を用いて説明する。
上述した第1実施形態による変位測定装置1Aでは、3つの変位測定部4,4,4は、それぞれ異なる位置において床面12と支持体2との相対変位量を測定可能に構成されていることにより、床面12に沿って移動している支持体2が傾いて一部が床面12から離間した場合も、支持体2の床面12と当接している側に設けられている他の変位測定部4が、床面12と支持体2の相対変位量を確実に測定することができる。
また、3つの変位測定部4,4,4は、それぞれ異なる位置において床面12と支持体2との相対変位量を測定可能に構成されていることにより、3つの変位測定部4,4,4がそれぞれ測定した複数の変位測定量の平均値を採用したり、3つの変位測定部4,4,4がそれぞれ測定した複数の変位測定量の中に異常値があった場合は、異常値以外の相対変位量を採用したり、異常値を異常値以外の相対変位量を基に補正したりすることで、確実に相対変位量を算出することができる。
【0035】
(第2実施形態)
次に、他の実施形態について、添付図面に基づいて説明するが、上述の第1実施形態と同一又は同様な部材、部分には同一の符号を用いて説明を省略し、第1実施形態と異なる構成について説明する。
図3(a)、(b)に示すように、第2実施形態による変位測定装置1Bは、支持体2B(2)の第2板部22B(22)が平面視において第1板部21よりも大きく形成されていて、第2板部22の外縁部全周に床面12に向かって延びるカバー部6が設けられている。
【0036】
カバー部6は、断面形状が三角形の筒状に形成されていて、内側に、第1板部21、3つの移動部24,24,24、3つの変位測定部4,4,4、スイッチ部5が配置されている。
また、カバー部6は、下端部が床面12と当接しているか床面12との間にわずかな隙間が設けられていて、カバー部6の外側から内側に異物が入り込むことを防止している。
本実施形態では、カバー部6は、第2板部22と連結している板状の板部61と、板部61の下端部に取り付けられて床面12とわずかに当接するブラシ材62と、を有している。なお、カバー部6は、支持体2Bの床面12に沿った移動を阻止しないように構成されている。
また、本実施形態では、カバー部6は、光を透過させない不透過性の材料で形成されている。このため、カバー部6の内側は、外側から光が入り込まず、一定の明るさに維持されている。
【0037】
第2実施形態による変位測定装置1Bでは、第1実施形態による変位測定装置1Aと同様の効果を奏する。
そして、カバー部6が設けられていることにより、カバー部6の内側にカバー部6の外側から埃などの異物が入ることを防止できるため、異物などによって変位測定部4,4,4による構造物11の変位量の測定を阻止されたり、移動部24,24,24の床面12に沿った移動を阻止されたりすることがなく、変位測定部4,4,4が構造物11の変位量を確実に測定することができる。
また、光を透過させない不透過性のカバー部6が設けられていることにより、変位測定部4,4,4に光学センサなどを利用している場合は、変位測定部4,4,4が設置されている空間の明るさを均一に維持することができるため、変位測定部4,4,4が構造物11の変位量を確実に測定することができる。
【0038】
(第3実施形態)
図4(a)、(b)に示すように、第3実施形態による変位測定装置1Cでは、第1実施形態のような第2板部22の上方に配置された付勢部3が設けられておらず、支持部材13の下端部に第2板部22が固定されている。そして、第3実施形態による移動部24Cは、筒状部24aの内部で移動用球体24bと第1板部21Cとの間にバネ24cが設けられている。移動用球体24bと第1板部21Cとの間にバネ24cが設けられていることにより、床面12を移動する移動用球体24bが床面12から浮き上がることを防止している。
【0039】
また、第3実施形態では、第1板部21Cに孔部21aが形成されておらず、スイッチ部5Cは、第1板部21Cの下面に固定された筒状部53と、この筒状部53の内部に挿入された状態で床面12を転がって移動するスイッチ用球体51Cと、筒状部53の内側に配置された4つの機械式スイッチ52C,52C…と、を有している。
スイッチ用球体51Cは、その径が筒状部53の内径よりもやや小さい径に形成されていて、筒状部53に挿入されると、筒状部53の内部で移動可能に構成されている。
また、スイッチ用球体51Cは、第1実施形態のスイッチ用球体51Cと同様に、床面12との間の摩擦係数が、移動部24Cの移動用球体24bと床面12との間の摩擦係数よりも小さく、地震などの震動が生じてもほとんど震動せずに略一点に留まるように構成されている。このため、床面12と支持体2Cとが相対変位すると、支持体2Cとスイッチ用球体51Cとが異なる挙動をするように構成されている。
機械式スイッチ52C,52C…は、筒状部53の内縁部に沿って等間隔に配置されている。
【0040】
このようなスイッチ部5Cは、第1実施形態によるスイッチ部5と同様に、地震の振動などが生じていない通常時には、筒状部53に挿入されたスイッチ用球体51Cが静止して、スイッチ用球体51Cと筒状部53の内縁部に設けられた機械式スイッチ52C,52C…とが離間している。そして、スイッチ部5Cは、地震の震動などが生じると、スイッチ用球体51Cが支持体2Cと異なる挙動をして、4つの機械式スイッチ52C,52C…のうちのいずれか1つ以上と当接する。
そして、スイッチ用球体51Cが機械式スイッチ52C,52C…のうちのいずれか1つ以上に当接すると、第1実施形態と同様に、電池から3つの変位測定部4,4,4に電源が供給されて、3つの変位測定部4,4,4が駆動するように構成されている。
【0041】
第3実施形態による変位測定装置1Cによれば、第1実施形態と同様の効果を奏するとともに、移動用球体24bと第1板部21Cとの間にバネ24cが床面12を移動する移動用球体24bが床面12から浮き上がることを防止するため、3つの変位測定部4,4,4と床面12との間隔が常に一定となり、3つの変位測定部4,4,4が確実に構造物11の変位量を測定することができる。
【0042】
(第4実施形態)
図5に示すように、第4実施形態による変位測定装置1Dは、付勢部3の連結部31が連結される支持部材13Dが、正面視において略L字形状の棒状の部材に形成されている。支持部材13Dは、一方の端部13aが構造物11の柱部14の全高さHの1/2の高さ1/2Hよりも上側に連結され、他方の端部13bが付勢部3の連結部31に連結されている。
【0043】
支持部材13Dは、略L字形状の折り曲げ部13cよりも一方の端部13a側が水平方向に延びていて、折り曲げ部13cより他方の端部13b側が折り曲げ部13cから下方に延びている。
また、支持部材13Dは、一方の端部13aが柱部14に対して、折り曲げ部13cと一方の端部13aとを結ぶ直線に直交する面内においてこの直線を中心軸として回転可能に構成されているとともに、この直線を含む鉛直面内において一方の端部13aを中心として回転可能に構成されている。
なお、支持部材13Dの折り曲げ部13cよりも一方の端部13a側と、折り曲げ部13cより他方の端部13b側とは、折り曲げ部13cにおいて剛接合されている。
【0044】
このような変位測定装置1Dは、3つの変位測定部4,4,4が、柱部14の支持部材13Dが連結されている部分と、床面12との相対変位量を測定可能に構成されている。
そして、第4実施形態による変位測定装置1Dでは、処理部によって処理された支持体2と床面12との相対変位量のデータを基に以下の式(1)から構造物11の層間変形角を算出するように構成されている。
層間変形角θ(rad)=支持体2と床部(構造物11)との相対変位量σ/床面12から柱部14と支持部材との接合部までの高さh1・・・式(1)
【0045】
また、図6(a)、(b)に示すように、第4実施形態による変位測定装置1Dには、振動などが生じた際に、支持体2が床面12から浮き上がることを防止するための押さえ部7が設けられていてもよい。なお、図6(b)では、1つの柱部14に対して2つの変位測定装置1Dがそれぞれ支持部材13Dを介して取り付けられている形態を示している。
押さえ部7は、支持部材13Dを介した両側に一対の押さえ部本体71,71を有している。押さえ部本体71は、支持体2の第2板部22の上部に配置され第2板部22の面に沿って延びる棒状の第1棒材72と、第1棒材72の両端部からそれぞれ床面12に向かって延びて先端部が床面と当接する一対の第2棒材73,73と、を有している。
【0046】
第1棒材72は、一対の第2棒材73,73を介して床部(構造物11)に支持されている。そして、第1棒材72は、第2板部22と相対移動可能な状態で当接している、または、第1棒材72は、第2板部22との間にわずかな隙間が設けられている。
このような押さえ部7は、床面12に沿った支持体2の移動は許容し、床面12から離間する方向(上下方向)の支持体2の移動を拘束するように構成されている。
【0047】
第4実施形態による変位測定装置1Dによれば、第1実施形態と同様の効果を奏するとともに、変位測定装置1Dが設置されている階(層)の層間変形角を測定することができる。
また、変位測定装置1Dに押さえ部7が設けられていると、地震の震動などによって支持体2が床面12から離間することが防止され、構造物11の変位量を確実に測定することができる。
【0048】
(第5実施形態)
図7に示すように、第5実施形態による変位測定装置1Eでは、支持体2E(2)の第1板部21E(21)および第2板部22E(21)が平面視において略十字形状に形成されていて、略十字形状の中心部にスイッチ部5が配置されているとともに、この中心部から突出する4つの突出部にそれぞれ移動部24および変位測定部4が設けられている。
【0049】
第5実施形態による変位測定装置1Eによれば、4つの変位測定部4,4…で構造物11の変位量を測定可能であるため、4つの変位測定部4,4…で測定される4つのデータのうちの一部のデータが欠落したり、異常値であった場合でも、残りのデータから構造物11の変位量の平均を算出したり、残りのデータを基にデータを補正したりすることができるため、確実に構造物11の変位量を測定することができる。
【0050】
(第6実施形態)
図8(a)、(b)に示すように、第6実施形態による変位測定装置1Fは、支持体2と床面12との相対変位量(水平方向における相対変位量)を測定可能な3つの変位測定部4,4,4に加えて、支持体2の鉛直方向の変位を測定可能な3つの鉛直変位測定部8,8,8を備えている。これらの鉛直変位測定部8,8,8は、支持体2Fと上下方向に相対移動可能に構成された支持板部9の上面に設けられている。
【0051】
支持板部9は、板面が上下方向を向き平面視において第1板部21と略同じ略正三角形状に形成され、第1板部21の上部にそれぞれの角部が重なるように配置されたときに第1板部21の上面に固定された3つの円柱部26,26,26(後述する)がそれぞれ挿入可能な3つの孔部91,91,91が形成されている。
また、支持板部9は、上側に支持部材13Fが配置されこの支持部材13Fに連結されている。本実施形態による支持部材13Fは、構造物11の天井部や梁部に支持された上側支持部材131と、支持板部9に固定された下側支持部材132と、上側支持部材131と下側支持部材132とを連結する連結プレート133と、を有している。
下側支持部材132と支持板部9とは、例えばビスや接着剤などで固定されている。
【0052】
連結プレート133には、上側支持部材131に連結プレート133を係止するためのビスが挿通可能で複数の上側長孔133aと、下側支持部材132に連結プレート133を係止するためのビスが挿通可能な複数の下側長孔133bと、が形成されている。これらの上側長孔133aおよび下側長孔133bは、上下方向に延びるように形成されている。これにより、上側支持部材131に対する下側支持部材132の上下方向の位置が調整可能となり、構造物11に対する支持板部9の上下方向の位置が調整可能に構成される。
なお、上記のような連結プレート133を設けずに、上側支持部材131および下側支持部材132の一方に上下方向に延びるネジ部が形成され、他方にこのネジ部が螺合可能なネジ孔が形成されていて、ネジ部とネジ孔とを螺合させる量を調整することで上側支持部材131に対する下側支持部材132の上下方向の位置が調整可能に構成されていてもよい。
【0053】
また、第6実施形態による変位測定装置1Fは、付勢部3(図1参照)を有しておらず支持体2Fが床面12に付勢されていないとともに、支持体2Fが第2板部22を有していない。
また、第1板部21の上面には、3つの移動部24,24,24の直上に相当する位置にそれぞれ軸方向を上下方向とする円柱状の円柱部26,26,26が固定されている。また、円柱部26,26,26は、それぞれ軸方向を上下方向とするコイルバネ27,27,27に挿通されている。
これらのコイルバネ27は、下端部が第1板部21の上面に当接し、上端部が円柱部26の上端部よりも低い位置となるように配置されている。
【0054】
そして、支持板部9は、孔部91,91,91にそれぞれ円柱部26,26,26の上端部側が挿通され、下面がコイルバネ27,27,27の上端部とそれぞれ当接するように配置されている。
なお、支持板部9の孔部91の内径は円柱部26の外形よりも大きく形成されていて、支持板部9と円柱部26とは上下方向に相対移動可能に構成されている。本実施形態では、支持板部9の孔部91に円柱部26が挿通されると、支持板部9の孔部91の内周面と円柱部26の外周面との間に約0.1mmの隙間が形成されている。なお、微振動によって支持板部9と円柱部26とが上下方向に異なる挙動をした際でも、支持板部9と円柱部26とが上下方向に相対移動可能であれば、支持板部9と円柱部26とが当接していてもよい。
【0055】
このような支持板部9は、支持体2Fからの水平方向の力が伝達されるように構成されているとともに、支持体2Fからの鉛直方向の力は伝達されないように構成されている。
なお、コイルバネ27は、水平方向へ容易に変形しないように所定の剛性を有することが好ましい。
【0056】
鉛直変位測定部8は、それぞれ支持板部9と円柱部26との上下方向の相対変位量を測定可能に構成されている。これにより、鉛直変位測定部8は、それぞれ構造物11の天井部や梁部と、床面12との上下方向の相対変位量を測定可能に構成されている。
このような鉛直変位測定部8は、例えば、バーコードリーダーや、光学式マウスなどを利用した光学式の変位センサや、アノトペンを利用した変位センサ、差動トランス式の変位センサなどで構成されている。
また、本実施形態では、3つの鉛直変位測定部8,8,8は、支持板部9に対して支持板部9の中心9cの周りに周方向に等しく間隔をあけて配置されている。そして、3つの鉛直変位測定部8,8,8は、支持板部9に形成された3つの孔部91,91,91と支持板部9の中心9cとの間にそれぞれ配置されている。本実施形態では、3つの鉛直変位測定部8,8,8は、3つの変位測定部4,4,4と鉛直方向に重なる位置に配置されている。
【0057】
また、本実施形態では、電池は、例えば、支持板部9の上部または第1板部21の上部などに配置されている。なお、電池が支持板部9の上部に配置されていると、電池の交換などが行いやすい。
【0058】
また、本実施形態では、変位測定装置1Fに3つの変位測定部4,4,4を囲繞する第1カバー部64と、3つの鉛直変位測定部8,8,8を囲繞する第2カバー部65と、を有している。
なお、図8(a)では、第1カバー部64の手前側の部分、第2カバー部65の手前側の部分および上板部65bの一部を省略していて、図8(b)では、第2カバー部65の上板部65bを省略している。
【0059】
第1カバー部64は、第1板部21の外縁部全周と連結し床面12に向かって延びる板状の板部64aと、板部64aの下端部に取り付けられて床面12とわずかに当接するブラシ材62とを有している。
また、第2カバー部65は、支持板部9の外縁部全周と連結し上方に向かって延びる板状の側板部65aと、側板部65aの上端部に連結されて支持板部9と平行に配置される上板部65bと、を備えている。なお、上板部65bは、支持体2Fと支持板部9とが上下方向に相対変位した場合も、円柱部26などの支持体2Fを構成する部材や支持部材13Fを構成する部材と干渉しないように構成されている。このため、上板部65bには、適宜孔部(不図示)などが形成されている。
【0060】
これらの第1カバー部64および第2カバー部65は、第2実施形態におけるカバー部6(図3参照)と同様に、第1カバー部64および第2カバー部65の外側から内側に異物が入り込むことを防止している。また、第1カバー部64および第2カバー部65は、光を透過させない不透過性の材料で形成されていて、第1カバー部64および第2カバー部65の内側は、外側から光が入り込まず、一定の明るさに維持されている。
なお、上板部65bに孔部が形成されている場合は、この孔部を介して第2カバー部65の外側から内側に入り込む光が最小限となるように、孔部の形状が設定されている。
【0061】
そして、本実施形態では、3つの鉛直変位測定部8,8,8がそれぞれ測定した上下方向の相対変位量のデータが処理部(不図示)へ通信され、処理部がこれらのデータをもとにより正確な上下方向の相対変位量を算出するように構成されている。なお、処理部における上下方向の相対変位量のデータの処理方法は、支持体2と床面12との相対変位量(水平方向の相対変位量)のデータの処理方法と同等に行うように構成されている。
【0062】
第6実施形態による変位測定装置1Fによれば、水平方向の相対変位量に加えて鉛直方向の相対変位量を確実に測定することができる。
【0063】
以上、本発明による変位測定装置1A〜1Fの実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、上記の実施形態では、変位測定装置1A〜1Fは、支持体2が床面12上を移動可能に構成されているが、床面12に配置された設備の上面や梁の上面などに沿って移動可能に構成されていてもよい。
【0064】
また、上記の実施形態では、変位測定装置1A〜1Fに、支持体2と床面12との相対変位量(水平方向における相対変位量)を測定可能な複数の変位測定部4が設けられているが、このような変位測定部4,4,4に代わって、鉛直方向などの任意の方向における支持体2と構造物11との相対変位量を測定可能な複数の変位測定部が設けられていてもよい。例えば、第6実施形態による変位測定装置1Fにおいて、鉛直方向の変位を測定する鉛直変位測定部8が複数設けられていて、水平方向の変位を測定する変位測定部4が設けられていない形態としてもよい。
【0065】
また、上記の実施形態では、変位測定装置1A〜1Fに、支持体2と床面12との相対変位量(水平方向における相対変位量)を測定可能な複数の変位測定部4が設けられているが、複数の変位測定部4に加えて、第6実施形態による変位測定装置1Fに設けられているような鉛直方向の変位を測定する鉛直変位測定部8が設けられていてもよい。なお、鉛直変位測定部8は単数設けられていてもよいし、複数設けられていてもよい。図8には、第1実施形態による変位測定装置1Aに3つの鉛直変位測定部8が設けられた形態を示している。
なお、変位測定装置1A〜1Fは、室内など構造物の内部に設けられていてもよいし、免震層や橋梁などの雨風を受ける外部に設けられていてもよく、外部に設けられる場合は、バネなどの鉄製の部材は、メッキが施されていることが好ましい。
【0066】
また、上記の実施形態では、変位測定装置1A〜1Fは、3つの変位測定部4,4,4がそれぞれ測定した支持体2と床面12との相対変位量のデータから、より正確な支持体2と床面12との相対変位量や層間変形角を算出するように構成されているが、相対変位量や層間変形角に代わって、構造物11の相対加速度、相対速度、絶対変位量、絶対加速度絶対速度などの項目を算出するように構成されていてもよい。また、複数の項目を算出するように構成されていてもよい。
【0067】
また、上記の実施形態では、選出ステップ(S−3)は、測定ステップ(S−1)において変位測定部4の全部において床面12と支持体2との相対変位量が測定された場合に、補正ステップ(S−2)において軸補正された複数の床面12と支持体2との相対変位量のデータの標準偏差を算出し、標準偏差の範囲内の床面12と支持体2との相対変位量のデータを選出しているが、標準偏差を算出しないで測定ステップ(S−1)において変位測定部4の全部において測定された床面12と支持体2との相対変位量のデータを補正ステップ(S−2)で軸補正したデータを選出してもよい。
【0068】
また上記の実施形態では、選出ステップ(S−3)は、測定ステップ(S−1)において標準偏差の範囲外の床面12と支持体2との相対変位量のデータを測定した変位測定部4によって標準偏差の範囲外の床面12と支持体2との相対変位量のデータが測定される直前に測定されたデータを基準とし、標準偏差の範囲内の床面12と支持体2との相対変位量のデータを測定した変位測定部4によって測定された床面12と支持体2との相対変位量のデータの変化を適用させて補正データを算出する処理(S−8)を行い、補正データおよび標準偏差の範囲内の床面12と支持体2との相対変位量のデータを選出する処理(S−9)を行っているが、補正データを算出する処理(S−8)を行わず、標準偏差の範囲内の床面12と支持体2との相対変位量のデータのみを算出してもよい。
また、上記の実施形態では、選出ステップ(S−3)においてデータに欠落がない場合は、欠落していないデータを選出する処理(S−10)を行っているが、欠落していないデータに対して標準偏差を算出し、この標準偏差の範囲内のデータを選出してもよい。
【0069】
また、上記の実施形態では、変位測定装置1A〜1Fに変位測定部4が3つまたは4つ設けられているが、2つ以上であればいくつ設けられていてもよい。また、上記の実施形態では、変位測定部4の設置数と移動部の設置数とが同じであるが、異なっていてもよい。
また、複数の変位測定部4が配置される位置は、適宜設定されてよい。
また、複数の変位測定部4によって測定された構造物11の変位量のデータの処理方法は適宜設定されてよい。
【0070】
また、上記の実施形態では、スイッチ部5,5Cが設けられているが、スイッチ部5,5Cが設けられておらず、複数の変位測定部4が常に構造物11の変位量を測定するように構成されていてもよい。また、スイッチ部5,5Cの形態は、上記の形態以外のものでもよい。また、上記の実施形態において、機械式スイッチ52,52Cの配置される位置や数、形態は適宜設定されてよい。
また、上記の実施形態では、変位測定装置1A〜1Fに複数の変位測定部4へ電源を供給可能な電池が設けられているが、このような電池が設けられておらず、例えば、構造物に設けられた電源装置から複数の変位測定部4に電源が供給されるように構成されていてもよい。
【0071】
また、上記の第2実施形態では、カバー部6は、光を透過させない不透過性の材料で形成されているが、変位測定部4に光学センサを利用しておらず、複数の変位測定部4が設置されている空間の明るさを均一に維持する必要がない場合は、光を透過させる透過性の材料で形成されていてもよい。また、カバー部6の形態は、適宜設定されてよく、例えば、複数の変位測定部4をそれぞれ個別に囲繞する形態としたり、ブラシ材62が設けられていない形態としたり、板部61に代わってシート状の部材が設けられた形態としてもよい。
また、上記の第3実施形態による変位測定装置1Cや第5実施形態による変位測定装置1Fが第4実施形態による変位測定装置1Dのような支持部材13Dに支持されていてもよい。
【0072】
また、上記の第1、2、4、5実施形態では、付勢部3が設けられているが、設けられていなくてもよい。また、上記の第3実施形態では、移動部24Cにバネ24cが設けられているが、設けられていなくてもよい。
また、上記の実施形態では、移動部24,24Cは、筒状部24aおよび移動用球体24bを有しているが、筒状部24aおよび移動用球体24bに代わって、例えば、床面12上を全方向に移動可能な車輪などを有する形態としてもよい。
【0073】
また、上記の実施形態では、支持体2は、平面視において略正三角形状や略十字形状に形成された第1板部21および第2板部22を有しているが、第1板部21および第2板部22の形状は上記以外の形状でもよい。また、支持体2は、支持部材13,13Dに支持されるとともに床面12上を移動可能で、複数の変位測定部4を支持可能に構成されていれば、第1板部21および第2板部22に代わる部材が設けられていてもよい。
【0074】
また、上記の実施形態では、スイッチ用球体51が床面12と当接して床面12上を転がって移動するように構成されているが、板面が上下方向を向く板材が設けられて、この板材の上をスイッチ用球体51が移動するように構成されていてもよい。なお、この板材は、構造物11に支持されていてもよいし、支持体2に支持されていてもよい。
【0075】
また、上記の第4実施形態では、変位測定装置1Dには、振動などが生じた際に、支持体2が床面12から浮き上がることを防止するための押さえ部7が設けられているが、他の実施形態による変位測定装置1A〜1C、1E,1Fに押さえ部7が設けられていてもよい。
また、上記の第5実施形態では、水平方向の変位量を測定可能な複数の変位測定部4と、鉛直方向の変位量を測定可能な複数の鉛直変位測定部8とが設けられているが、1つの変位測定部4と複数の鉛直変位測定部8とが設けられていてもよいし、複数の変位測定部4と1つの鉛直変位測定部8とが設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0076】
1A〜1F 変位測定装置
2,2B,2C,2E 支持体
3 付勢部
4 変位測定部
5,5C スイッチ部
6 カバー部
8 鉛直変位測定部(変位測定部)
11 構造物
12 床面(設置面)
13,13D 支持部材
64 第1カバー部(カバー部)
65 第2カバー部(カバー部)
【要約】
【課題】構造物の変位量を確実に測定することができる変位測定装置およびこの変位測定装置において構造物の変位量を算出する変位量算出方法を提供する。
【解決手段】構造物11の床面(設置面)12に沿って移動可能な支持体2と、支持体2に支持されて、構造物11の変位量を測定可能な3つの(複数の)変位測定部4,4,4と、を備え、3つの変位測定部4,4,4は、それぞれ異なる位置において同一方向の構造物11の変位量を測定可能に構成されている。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8