特許第5764709号(P5764709)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5764709-変位量算出方法 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5764709
(24)【登録日】2015年6月19日
(45)【発行日】2015年8月19日
(54)【発明の名称】変位量算出方法
(51)【国際特許分類】
   G01B 21/32 20060101AFI20150730BHJP
   G01B 21/00 20060101ALI20150730BHJP
【FI】
   G01B21/32
   G01B21/00 D
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-244287(P2014-244287)
(22)【出願日】2014年12月2日
【審査請求日】2014年12月2日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】593063161
【氏名又は名称】株式会社NTTファシリティーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】特許業務法人 志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 献一
(72)【発明者】
【氏名】松下 剛史
(72)【発明者】
【氏名】千葉 大輔
(72)【発明者】
【氏名】吉海 伸祐
【審査官】 岸 智史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−195209(JP,A)
【文献】 特開平05−248854(JP,A)
【文献】 特開2011−053157(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 5/00−21/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに所定の距離をあけて配置され構造物の変位量を測定する複数の測定手段を備える変位測定装置により、前記測定手段がそれぞれ設けられた異なる複数の位置においてそれぞれ異なる前記測定手段による測定期間が重なるようにして前記構造物の変位量を測定する測定ステップと、
該測定ステップで測定された前記構造物の変位量のデータを時間軸方向に軸補正し、当該データの時刻歴を合せる補正ステップと、
該補正ステップにおいて軸補正された複数の前記構造物の変位量のデータから採用する前記構造物の変位量のデータを選出する選出ステップと、
該選出ステップで選出された前記構造物の変位量のデータの平均値を算出して該平均値を構造物の変位量の代表値とする平均値算出ステップと、を有し、
前記選出ステップでは、前記測定ステップにおいて前記測定手段のうち一部の測定手段で前記構造物の変位量を測定できず、前記一部の測定手段で測定された前記構造物の変位量のデータが欠落している場合に、前記測定手段のうち前記一部の測定手段以外の測定手段で測定された前記構造物の変位量のデータを選出し、前記測定ステップにおいて全部の前記測定手段で前記構造物の変位量が測定された場合に、前記補正ステップにおいて軸補正された前記構造物の複数の変位量のデータの標準偏差を算出し、該標準偏差の範囲内の前記構造物の変位量のデータを選出するとともに、前記測定ステップにおいて前記標準偏差の範囲外の前記構造物の変位量のデータを測定した前記測定手段によって前記標準偏差の範囲外の前記構造物の変位量のデータが測定される時点より前に測定されたデータを基準とし、前記標準偏差の範囲内の前記構造物の変位量のデータを測定した前記測定手段によって測定された前記構造物の変位量のデータの変化を適用させて補正データを算出することを特徴とする変位量算出方法。
【請求項2】
互いに所定の距離をあけて配置され構造物の変位量を測定する複数の測定手段を備える変位測定装置により、前記測定手段がそれぞれ設けられた異なる複数の位置においてそれぞれ異なる前記測定手段による測定期間が重なるようにして前記構造物の変位量を測定する測定ステップと、
該測定ステップで測定された前記構造物の変位量のデータを時間軸方向に軸補正し、当該データの時刻歴を合せる補正ステップと、
該補正ステップにおいて軸補正された複数の前記構造物の変位量のデータから採用する前記構造物の変位量のデータを選出する選出ステップと、
該選出ステップで選出された前記構造物の変位量のデータの平均値を算出して該平均値を構造物の変位量の代表値とする平均値算出ステップと、を有し、
前記選出ステップでは、前記補正ステップにおいて軸補正された前記構造物の複数の変位量のデータの標準偏差を算出し、標準偏差の範囲内の前記構造物の変位量のデータを選出するとともに、前記測定ステップにおいて前記標準偏差の範囲外の前記構造物の変位量のデータを測定した前記測定手段によって前記標準偏差の範囲外の前記構造物の変位量のデータが測定される時点より前に測定されたデータを基準とし、前記標準偏差の範囲内の前記構造物の変位量のデータを測定した前記測定手段によって測定された前記構造物の変位量のデータの変化を適用させて補正データを算出することを特徴とする変位量算出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地震などが生じた際に構造物の変位量を測定して算出する変位量算出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、地震などが生じた際の建物などの構造物の変位量を測定して算出する変位測定装置が利用されている。
例えば、特許文献1には、構造物に固定された支持部と、支持部と水平方向に相対変位可能な支持体と、支持部と支持体との相対変位量を測定するセンサとを備え、測定された支持部と支持体との相対変位量から構造物の絶対変位量を算出する変位測定装置が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−019748号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような変位測定装置は、センサが支持体に設置されているため、地震の震動などによって支持部と支持体とが一定の寸法以上離間してしまうと、センサが構造物の変位量を確実に測定して算出できない虞がある。
【0005】
そこで、本発明は、構造物の変位量を確実に測定して算出する変位量算出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る変位量算出方法は、互いに所定の距離をあけて配置され構造物の変位量を測定する複数の測定手段を備える変位測定装置により、前記測定手段がそれぞれ設けられた異なる複数の位置においてそれぞれ異なる前記測定手段による測定期間が重なるようにして前記構造物の変位量を測定する測定ステップと、該測定ステップで測定された前記構造物の変位量のデータを時間軸方向に軸補正し、当該データの時刻歴を合せる補正ステップと、該補正ステップにおいて軸補正された複数の前記構造物の変位量のデータから採用する前記構造物の変位量のデータを選出する選出ステップと、 該選出ステップで選出された前記構造物の変位量のデータの平均値を算出して該平均値を構造物の変位量の代表値とする平均値算出ステップと、を有し、前記選出ステップでは、前記測定ステップにおいて前記測定手段のうち一部の測定手段で前記構造物の変位量を測定できず、前記一部の測定手段で測定された前記構造物の変位量のデータが欠落している場合に、前記測定手段のうち前記一部の測定手段以外の測定手段で測定された前記構造物の変位量のデータを選出し、前記測定ステップにおいて全部の前記測定手段で前記構造物の変位量が測定された場合に、前記補正ステップにおいて軸補正された前記構造物の複数の変位量のデータの標準偏差を算出し、該標準偏差の範囲内の前記構造物の変位量のデータを選出するとともに、前記測定ステップにおいて前記標準偏差の範囲外の前記構造物の変位量のデータを測定した前記測定手段によって前記標準偏差の範囲外の前記構造物の変位量のデータが測定される時点より前に測定されたデータを基準とし、前記標準偏差の範囲内の前記構造物の変位量のデータを測定した前記測定手段によって測定された前記構造物の変位量のデータの変化を適用させて補正データを算出することを特徴とする。
【0007】
本発明では、構造物の変位量を異なる複数の測定手段でそれぞれ測定することにより、一部の測定手段で構造物の変位量を測定できない場合も他の測定手段では構造物の変位量を測定できるため、構造物の変位量を確実に測定することができる。
そして、選出ステップでは、測定ステップにおいて測定され補正ステップによって軸補正された複数の構造物の変位量のデータから、確実に測定された構造物の変位量のデータを選出し、選出された構造物の変位量のデータを用いて平均値算出ステップを行うため、一部の測定手段で構造物の変位量を測定できなかった場合にも、構造物の変位量を確実に算出することができる。
【0008】
た、一部の測定手段で標準偏差の範囲外の異常値を測定した場合にも、この異常値を補正して構造物の変位量を確実に算出することができる。
【0009】
また、本発明に係る変位量算出方法では、互いに所定の距離をあけて配置され構造物の変位量を測定する複数の測定手段を備える変位測定装置により、前記測定手段がそれぞれ設けられた異なる複数の位置においてそれぞれ異なる前記測定手段による測定期間が重なるようにして前記構造物の変位量を測定する測定ステップと、該測定ステップで測定された前記構造物の変位量のデータを時間軸方向に軸補正し、当該データの時刻歴を合せる補正ステップと、該補正ステップにおいて軸補正された複数の前記構造物の変位量のデータから採用する前記構造物の変位量のデータを選出する選出ステップと、該選出ステップで選出された前記構造物の変位量のデータの平均値を算出して該平均値を構造物の変位量の代表値とする平均値算出ステップと、を有し、前記選出ステップでは、前記補正ステップにおいて軸補正された前記構造物の複数の変位量のデータの標準偏差を算出し、標準偏差の範囲内の前記構造物の変位量のデータを選出するとともに、前記測定ステップにおいて前記標準偏差の範囲外の前記構造物の変位量のデータを測定した前記測定手段によって前記標準偏差の範囲外の前記構造物の変位量のデータが測定される時点より前に測定されたデータを基準とし、前記標準偏差の範囲内の前記構造物の変位量のデータを測定した前記測定手段によって測定された前記構造物の変位量のデータの変化を適用させて補正データを算出することを特徴とする。
【0010】
本発明では、構造物の変位量を異なる複数の測定手段においてそれぞれ測定することにより、一部の測定手段で構造物の変位量を測定できない場合も他の測定手段では構造物の変位量を測定できるため、構造物の変位量を確実に測定することができる。
【0011】
た、一部の測定手段で標準偏差の範囲外の異常値を測定した場合にも、この異常値を補正して構造物の変位量を確実に算出することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、構造物の変位量を確実に測定して算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】(a)は本発明の実施形態による変位測定装置の一例を示す下面図、(b)は(a)のA方向から見た側面図、(c)は(a)のB−B線断面図である。
図2】本発明の実施形態による変位量算出方法を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態による変位量算出方法について、図1および2に基づいて説明する。
まず、実施形態による変位量算出方法において構造物の変位量を測定する変位測定装置について説明する。
図1に示すように、本実施形態による変位測定装置1は、構造物11の床面(設置面)12に沿って移動可能な支持体2と、構造物11に支持され支持体2を床面12に向かって付勢する付勢部3と、支持体2に設置されて支持体2と床面12との相対変位量をそれぞれ測定可能な3つの変位測定部4,4,4と、3つの変位測定部4,4,4の駆動を行うスイッチ部5と、3つの変位測定部4,4,4がそれぞれ測定した支持体2と床面12との相対変位量のデータの処理を行う処理部(不図示)と、3つの変位測定部4,4,4に電源を供給可能な電池(不図示)と、を備えている。
【0015】
支持体2は、板面が上下方向を向き平面視において略正三角形状に形成された第1板部21と、第1板部21の上部に間隔をあけて第1板部21と平行に配置され外形が第1板部と同じ形状に形成された第2板部と、第1板部21と第2板部22との間に配置され第1板部21と第2板部22とを連結する連結部23と、連結された第1板部21および第2板部22を床面12に沿って移動可能に支持する3つの移動部24,24,24と、を有している。
【0016】
第1板部21には、中央部に上下方向に貫通する平面視略円形状の孔部21aが形成されている。また、第1板部21の下部には、3つの変位測定部4,4,4および3つの移動部24,24,24が配置され、第1板部21の下面と床面12との間には間隔が設けられている。
第2板部22は、平面視における略正三角形の3つの角部22b,22b,22bが、第1板部21の平面視における略正三角形の3つの角部21b,21b,21bとそれぞれ重なるように配置されている。なお、第2板部22には、第1板部21のような孔部21aは形成されていない。
【0017】
連結部23は、軸方向を上下方向とし内径が第1板部21の孔部21aの径よりも大きい円筒状に形成されていて、下端部が第1板部21の上面に固定され、上端部が第2板部22の下面に固定されている。連結部23は、中心軸が第1板部21および第2板部22の中心21cと上下方向に重なるように配置されている。
【0018】
移動部24は、軸方向を上下方向とし上端部が第1板部21の下面に固定された筒状部24aと、筒状部24a内に挿入された状態で床面12と当接し床面12に沿って転がって移動可能な移動用球体24bと、を有している。筒状部24aは、下端部が床面12と当接しないように配置されている。
また、本実施形態では、3つの移動部24,24,24は、第1板部21に対して第1板部21の中心21cの周りに周方向に等しく間隔をあけて配置されている。そして、3つの移動部24,24,24は、第1板部21の平面視における略正三角形の3つの角部21b,21b,21b近傍にそれぞれ配置され、角部21b,21b,21bと第1板部21の中心21cとを結ぶ線上に配置されている。
【0019】
付勢部3は、上端部が例えば構造物11の天井部や梁部に支持された上下方向に延在する支持部材13の下端部に連結される連結部31と、連結部31の下側に配置され支持体2の第2板部22に上方から当接する押さえ板部32と、連結部31と押さえ板部32との間に配置された上下方向に伸縮可能なバネ33と、を備えている。
バネ33は、上端部が連結部31に当接するとともに、下端部が押さえ板部32と当接していて、押さえ板部32を介して支持体2を下側(床面12側)へ付勢するように構成されている。
これにより、地震の震動などによって支持体2が床面12から離間することが防止されている。
【0020】
3つの変位測定部4,4,4は、床面12に沿った面内(略水平面内)における支持体2と床面12との相対変位量を測定可能な変位センサで構成されている。例えば、3つの変位測定部4,4,4は、バーコードリーダーや、光学式マウスなどを利用した光学式の変位センサや、アノトペンを利用した変位センサ、差動トランス式の変位センサなどで構成されている。
また、本実施形態では、3つの変位測定部4,4,4は、第1板部21に対して第1板部21の中心21cの周りに周方向に等しく間隔をあけて配置されている。そして、3つの変位測定部4,4,4は、3つの移動部24,24,24と第1板部21の中心21cとの間にそれぞれ配置されている。なお、3つの変位測定部4,4,4は、隣り合う移動部24,24間の中央部にそれぞれ配置されていてもよい。
【0021】
そして、本実施形態では、3つの変位測定部4,4,4がそれぞれ測定した支持体2と床面12との相対変位量のデータが処理部(不図示)へ通信され、処理部がこれらのデータをもとにより正確な支持体2と床面12との相対変位量を算出するように構成されている。なお、変位測定装置1には、これらのデータを3つの変位測定部4,4,4から処理部へ通信するための通信装置や、3つの変位測定部4,4,4がそれぞれ測定した支持体2と床面12との相対変位量のデータや処理部が算出した支持体2と床面12との相対変位量などを記憶するための記憶部などが適宜設置されている。
【0022】
スイッチ部5は、支持体2の第1板部21の孔部21aに挿入された状態で床面12に沿って回転しながら移動可能なスイッチ用球体51と、スイッチ用球体51が当接すると3つの変位測定部4,4,4を駆動させる4つの機械式スイッチ52,52,…と、を有している。
スイッチ用球体51は、その径が第1板部21の孔部21aの内径よりもやや小さい径に形成されていて、第1板部21の孔部21aに挿入されると、第1板部21の孔部21aの内部で移動可能に構成されている。また、スイッチ用球体51は、第1板部21の孔部21aに挿入されると、第1板部21よりも上部側が連結部23の内側に挿入されるように構成されている。
【0023】
このようなスイッチ用球体51は、構造物11と比べて質量が非常に小さく、構造物11が変位(変形)しないような微振動でも変位可能に構成されている。このため、スイッチ用球体51は、構造物11に支持された支持体2が変位しないような微振動でも変位可能となり、微振動によって支持体2とスイッチ用球体51とが異なる挙動をするように構成されている。
なお、スイッチ用球体51は、床面12との間の摩擦係数が、移動部24の移動用球体24bと床面12との間の摩擦係数よりも小さく、地震などの震動が生じてもほとんど震動せずに略一点に留まるように構成されていてもよい。そして、床面12と支持体2とが相対変位すると、支持体2とスイッチ用球体51とが異なる挙動をするように構成されていてもよい。
【0024】
機械式スイッチ52,52,…は、第1板部21の孔部21aの縁部に沿って等間隔に配置されている。
このようなスイッチ部5は、地震の振動などが生じていない通常時には、支持体2および支持体2の第1板部21の孔部21aに挿入されたスイッチ用球体51が静止して、スイッチ用球体51と第1板部21の孔部21aの縁部に設けられた機械式スイッチ52,52,…とが離間している。そして、スイッチ部5は、地震の震動などが生じると、スイッチ用球体51が支持体2と異なる挙動をして、4つの機械式スイッチ52,52,…のうちのいずれか1つ以上と当接する。
【0025】
そして、本実施形態では、スイッチ用球体51が4つの機械式スイッチ52,52,…のうちのいずれか1つ以上と当接すると、電池から3つの変位測定部4,4,4に電源が供給されて、3つの変位測定部4,4,4が駆動するように構成されている。このとき、スイッチ用球体51が微振動によって変位可能に構成されていると、微振動によってスイッチ用球体51が4つの機械式スイッチ52,52,…のうちのいずれか1つ以上と当接可能なため、微振動の状態から支持体2と床面12との相対変位量を測定することができる。
そして、駆動している3つの変位測定部4,4,4は、所定の値以上の支持体2と床面12との相対変位量を測定しない状態が設定された一定期間経過すると、電池からの電源の供給が停止されて測定が停止されるように構成されている。
【0026】
本実施形態では、駆動している3つの変位測定部4,4,4は、測定している支持体2と床面12との相対変位量が0mmである状態が連続して10秒経過すると、電池からの電源の供給が停止されて測定が停止されるように構成されている。
なお、本実施形態には、スイッチ部5からの信号や3つの変位測定部4,4,4が測定している測定量の値によって電池から3つの変位測定部4,4,4への電源の供給を制御し、3つの変位測定部4,4,4の駆動および停止を制御する制御部(不図示)が設けられている。
【0027】
電池は、例えば、支持体2の第1板部21と第2板部22との間や、第2板部22の上部などに配置されている。なお、電池が第2板部22の上部に配置されていると、電池の交換などが行いやすい。
【0028】
次に、本実施形態による変位量算出方法について図2に示すフローチャートを基に説明する。
(測定ステップ)
上述した変位測定装置1の3つの変位測定部4,4,4によって、支持体2と床面12との相対変位量をそれぞれ測定する(S−1)。
【0029】
(補正ステップ)
測定ステップ(S−1)において3つの変位測定部4,4,4が測定した支持体2と床面12との相対変位量のデータ(以下データとする)を軸補正し、基準となる1つのデータ以外の2つのデータの時刻歴を基準となる1つのデータに合せる(S−2)。
【0030】
(選出ステップ)
補正ステップ(S−2)において軸補正された3つのデータのうち、後の平均値算出ステップを行うデータを選出する(S−3)。
まず、3つのデータに欠落がないかどうかを判定する(S−4)。
この判断(S−3)においてデータの欠落がないと判断された場合は、3つのデータから標準偏差を算出する(S−5)。
そして、データの中にこの標準偏差の範囲外の異常値がないかどうかを判定する(S−6)。
この判断(S−6)においてデータに標準偏差の範囲外の異常値がないと判断された場合は、3つのデータを選出する(S−7)。
【0031】
また、この判断(S−6)においてデータに標準偏差の範囲外の異常値があると判断された場合は、測定ステップ(S−1)において標準偏差の範囲外のデータを測定した変位測定部4によって標準偏差の範囲外のデータが測定される直前に測定されたデータを基準とし、標準偏差の範囲内のデータを測定した変位測定部4によって測定されたデータの変化を適用させて補正データを算出する(S−8)。
そして、この補正データおよび標準偏差の範囲内のデータを選出する(S−9)。
【0032】
また、3つのデータに欠落がないかどうかの判定(S−4)において、データの欠落がある場合は、欠落していないデータを選出する(S−10)。
【0033】
(平均値算出ステップ)
選出ステップ(S−3)の選出処理(S7,S9,S10)選出されたデータの平均値を算出し、この平均値を支持体2と床面12との相対変位量(代表値)とする(S−11)。
【0034】
次に、上述した変位量算出方法の作用・効果について図面を用いて説明する。
上述した本実施形態による変位量算出方法では、床面12と支持体2との相対変位量を異なる複数の変位測定部4,4,4でそれぞれ測定することにより、一部の変位測定部4で床面12と支持体2との相対変位量を測定できない場合も、他の変位測定部4では床面12と支持体2との相対変位量を測定できるため、床面12と支持体2との相対変位量を確実に測定することができる。
そして、選出ステップ(S−3)では、測定ステップ(S−1)において測定され、補正ステップ(S−3)において軸補正された複数の床面12と支持体2との相対変位量のデータから、確実に測定された床面12と支持体2との相対変位量のデータを選出し、選出された床面12と支持体2との相対変位量のデータを用いて平均値算出ステップ(S−11)を行うため、一部の変位測定部4で床面12と支持体2との相対変位量を測定できなかった場合にも、床面12と支持体2との相対変位量を確実に算出することができる。
【0035】
また、選出ステップ(S−3)では、測定ステップ(S−1)において変位測定部4の全部において床面12と支持体2との相対変位量が測定された場合に、補正ステップ(S−2)において軸補正された複数の床面12と支持体2との相対変位量のデータの標準偏差を算出する処理(S−5)を行っている。そして、測定ステップ(S−1)において標準偏差の範囲外の床面12と支持体2との相対変位量のデータを測定した変位測定部4によって標準偏差の範囲外の床面12と支持体2との相対変位量のデータが測定される直前に測定されたデータを基準とし、標準偏差の範囲内の床面12と支持体2との相対変位量のデータを測定した変位測定部4によって測定された床面12と支持体2との相対変位量のデータの変化を適用させて補正データを算出する処理(S−6)を行っている。そして、この補正データおよび標準偏差の範囲内の床面12と支持体2との相対変位量のデータを選出する処理(S−9)を行うことにより、一部の変位測定部4で標準偏差の範囲外の異常値を測定した場合にも、この異常値を補正して床面12と支持体2との相対変位量を確実に算出することができる。
【0036】
以上、本発明による変位量算出方法の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、上記の実施形態では、変位測定装置1の変位測定部4,4,4で測定された相対変位量のデータを基に構造物11の変位量を算出しているが、複数の位置においてそれぞれ同時に変位量を測定可能であれば、変位測定装置の形態は上記以外でもよい。
【0037】
また、上記の実施形態では、3つの変位測定部4,4,4がそれぞれ測定した支持体2と床面12との相対変位量のデータから、支持体2と床面12との相対変位量の代表値を算出しているが、支持体2と床面12との相対変位量に代わって、他の相対変位量や、構造物11の相対加速度、相対速度、絶対変位量、絶対加速度絶対速度、層間変形角などの項目を測定して算出するように構成されていてもよい。また、複数の項目を算出するように構成されていてもよい。
【0038】
また、上記の実施形態では、3つの変位測定部4,4,4がそれぞれ測定した支持体2と床面12との相対変位量のデータから、支持体2と床面12との相対変位量の代表値を算出しているが、2つのデータや4つ以上のデータから代表値を算出してもよい。
【0039】
また、上記の実施形態では、選出ステップ(S−3)は、測定ステップ(S−1)において変位測定部4の全部において床面12と支持体2との相対変位量が測定された場合に、補正ステップ(S−2)において軸補正された複数の床面12と支持体2との相対変位量のデータの標準偏差を算出し、標準偏差の範囲内の床面12と支持体2との相対変位量のデータを選出しているが、標準偏差を算出しないで測定ステップ(S−1)において変位測定部4の全部において測定された床面12と支持体2との相対変位量のデータを補正ステップ(S−2)で軸補正したデータを選出してもよい。
【0040】
また上記の実施形態では、選出ステップ(S−3)は、測定ステップ(S−1)において標準偏差の範囲外の床面12と支持体2との相対変位量のデータを測定した変位測定部4によって標準偏差の範囲外の床面12と支持体2との相対変位量のデータが測定される直前に測定されたデータを基準とし、標準偏差の範囲内の床面12と支持体2との相対変位量のデータを測定した変位測定部4によって測定された床面12と支持体2との相対変位量のデータの変化を適用させて補正データを算出する処理(S−8)を行い、補正データおよび標準偏差の範囲内の床面12と支持体2との相対変位量のデータを選出する処理(S−9)を行っているが、補正データを算出する処理(S−8)を行わず、標準偏差の範囲内の床面12と支持体2との相対変位量のデータのみを算出してもよい。
また、上記の実施形態では、選出ステップ(S−3)においてデータに欠落がない場合は、欠落していないデータを選出する処理(S−10)を行っているが、欠落していないデータに対して標準偏差を算出し、この標準偏差の範囲内のデータを選出してもよい。
【符号の説明】
【0041】
1 変位測定装置
4 変位測定部(測定手段)
11 構造物
S−1 測定ステップ
S−2 補正ステップ
S−3 選出ステップ
S−11 平均値算出ステップ
【要約】
【課題】構造物の変位量を確実に測定して算出する変位量算出方法を提供する。
【解決手段】構造物の変位量を異なる複数の位置においてそれぞれ異なる変位測定部(測定手段)で同時に測定する測定ステップ(S−1)と、測定ステップで測定された構造物の変位量のデータを軸補正し、時刻歴を合せる補正ステップ(S−2)と、補正ステップにおいて軸補正された複数のデータから採用するデータを選出する選出ステップ(S−3)と、選出ステップ(S−3)で選出されたデータの平均値を算出して平均値を構造物の変位量の代表値とする平均値算出ステップ(S−11)と、を有し、選出ステップ(S−3)では、測定ステップ(S−1)において変位測定部のうち一部の変位測定部で構造物の変位量を測定できず、一部の変位測定部で測定されたデータが欠落している場合に、変位測定部のうち一部以外の変位測定部で測定されたデータを選出する。
【選択図】図2
図1
図2