特許第5764722号(P5764722)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5764722溶接性、耐傷つき性、及び耐食性に優れた表面処理鋼板
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  • 特許5764722-溶接性、耐傷つき性、及び耐食性に優れた表面処理鋼板 図000006
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5764722
(24)【登録日】2015年6月19日
(45)【発行日】2015年8月19日
(54)【発明の名称】溶接性、耐傷つき性、及び耐食性に優れた表面処理鋼板
(51)【国際特許分類】
   C23C 26/00 20060101AFI20150730BHJP
   C09D 5/00 20060101ALI20150730BHJP
   C09D 7/12 20060101ALI20150730BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20150730BHJP
   C09D 175/04 20060101ALI20150730BHJP
   C09D 167/00 20060101ALI20150730BHJP
   C09D 163/00 20060101ALI20150730BHJP
   C09D 133/04 20060101ALI20150730BHJP
   C09D 123/00 20060101ALI20150730BHJP
   C09D 171/10 20060101ALI20150730BHJP
   C09D 4/02 20060101ALI20150730BHJP
   B32B 15/01 20060101ALI20150730BHJP
【FI】
   C23C26/00 A
   C09D5/00 D
   C09D7/12
   C09D201/00
   C09D175/04
   C09D167/00
   C09D163/00
   C09D133/04
   C09D123/00
   C09D171/10
   C09D4/02
   B32B15/01 Z
【請求項の数】13
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2014-538709(P2014-538709)
(86)(22)【出願日】2012年10月25日
(65)【公表番号】特表2015-503022(P2015-503022A)
(43)【公表日】2015年1月29日
(86)【国際出願番号】KR2012008803
(87)【国際公開番号】WO2013062329
(87)【国際公開日】20130502
【審査請求日】2014年5月8日
(31)【優先権主張番号】10-2011-0109407
(32)【優先日】2011年10月25日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】592000691
【氏名又は名称】ポスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(72)【発明者】
【氏名】ユ、 へ ジン
(72)【発明者】
【氏名】ジュン、 ジン ホ
(72)【発明者】
【氏名】キム、 ジュン ス
(72)【発明者】
【氏名】ハ、 ボン ウ
(72)【発明者】
【氏名】ビョン、 チャン セ
(72)【発明者】
【氏名】イ、 ジュン ファン
(72)【発明者】
【氏名】キム、 ジョン サン
(72)【発明者】
【氏名】キム、 ジン テ
【審査官】 宮本 靖史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−351937(JP,A)
【文献】 特開2007−035219(JP,A)
【文献】 特開2000−162403(JP,A)
【文献】 特開平08−019756(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 24/00 − 30/00
B29D 9/00
B32B 1/00 − 35/00
B05D 1/00 − 7/26
C09D 1/00 − 10/00
C09D 101/00 −201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
素材鋼板と、
主剤樹脂及び金属粉末を含み、下記一般式1の条件を満たす下塗層形成用の樹脂組成物の硬化物を含み、前記素材鋼板の一面または両面に形成された下塗層と、
前記下塗層上に形成され、ラジカル化合物を含む上塗層と、を備える表面処理鋼板。
[式1]
Tb/3≦Dl
前記一般式1において、Dlは、前記金属粉末の長軸の平均粒径を示し、Tbは、前記下塗層形成用の樹脂組成物の硬化物により形成された下塗層の厚さを示す。
【請求項2】
Dlが3Tb以下である請求項1に記載の表面処理鋼板。
【請求項3】
主剤樹脂が、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、エステル樹脂、アクリル樹脂、及びオレフィン樹脂からなる群より選ばれる一つ以上である請求項1に記載の表面処理鋼板。
【請求項4】
下塗層の厚さが1μm〜10μmである請求項1に記載の表面処理鋼板。
【請求項5】
上塗層が、オリゴマ、光重合性モノマー、及び光開始剤を含むUV硬化型塗料組成物の硬化物を含む請求項1に記載の表面処理鋼板。
【請求項6】
UV硬化型塗料組成物が、UV硬化型塗料組成物100重量部に対して10重量部〜80重量部のオリゴマと、10重量部〜80重量部の光重合性モノマーと、0.1重量部〜30重量部の光開始剤と、を含む請求項5に記載の表面処理鋼板。
【請求項7】
前記オリゴマが、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、及びポリエステルアクリレートからなる群より選ばれる一つ以上である請求項5に記載の表面処理鋼板。
【請求項8】
光重合性モノマーが、単官能または多官能アクリレート系モノマーである請求項5に記載の表面処理鋼板。
【請求項9】
光開始剤が、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾイン系化合物、ベンゾインエーテル系化合物、ベンジルケタール系化合物、アセトフェノン系化合物、アントラキノン系化合物、及びチオキサントン系化合物からなる群より選ばれる一つ以上である請求項5に記載の表面処理鋼板。
【請求項10】
UV硬化型塗料組成物が、UV硬化型塗料組成物100重量部に対して0.1重量部〜15重量部の添加剤をさらに含む請求項5に記載の表面処理鋼板。
【請求項11】
添加剤が、消泡剤、レベリング剤、付着増進剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、熱重合禁止剤、平滑剤、分散剤、帯電防止剤、可塑剤、有機充填剤、及びこれらの混合物からなる群より選ばれる一つ以上である請求項10に記載の表面処理鋼板。
【請求項12】
上塗層の厚さが1μm〜20μmである請求項1に記載の表面処理鋼板。
【請求項13】
表面処理鋼板が、建築材料として用いられる請求項1に記載の表面処理鋼板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶接性、耐傷つき性、及び耐食性に優れた表面処理鋼板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の溶接可能な表面処理鋼板は、金属粉末を含有した有機溶剤型樹脂をコートして製造した鋼板であって、鋼板との密着力及び耐食性を確保するために、水性クロムフリー(Cr‐free)処理が必須である。鋼板上に形成されたクロムフリー塗膜は、その塗膜の厚さが1μm未満と薄いが、耐食性の確保のために、金属粉末、導電性セラミックまたはグラフェン等の導電性顔料を含むことができないので、溶接性が極めて低下するという問題点があった。
【0003】
一方、表面処理層の導電性を向上させた電磁波遮蔽用の表面処理鋼板は、金属粉末を含有した水性塗料組成物を鋼板上にコートすることにより製造される。前記金属粉末を含有した水性塗料組成物は、鋼板との密着力には優れるが、耐食性が脆弱であるので、高度の耐食性が要求される建材用鋼板として活用されることは困難であった。
【0004】
UV硬化用の塗料組成物でコートされた表面処理鋼板は、優れた外観及び耐傷つき性を有しているが、鋼板の表面に厚い表面処理層が形成されるので、溶接が困難であった。特に、UV硬化用の塗料組成物は、紫外線を照射して硬化反応が進行するので、前記UV硬化用の塗料組成物内に不透明な金属粉末または顔料を用いることができないという問題点があった。
【0005】
したがって、優れた外観及び耐傷つき性を有するUV硬化用の塗料組成物がコートされた表面処理鋼板を、建材分野において用いるためには、鋼板との塗膜密着力を高め、耐食性を確保するとともに、優れた溶接性を有する表面処理鋼板を開発する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、溶接性、耐傷つき性、及び耐食性に優れた表面処理鋼板及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した目的を達成するために、主剤樹脂及び金属粉末を含み、下記一般式1の条件を満たすUVコート層の下塗用樹脂組成物を提供する。
[式1]
Tb/3≦Dl
前記一般式1において、Dlは、前記金属粉末の長軸の平均粒径を示し、Tbは、前記UVコート層の下塗用樹脂組成物により形成された下塗の厚さを示す。
【0008】
本発明は、前記課題を解決するための他の手段として、素材鋼板と、主剤樹脂及び金属粉末を含み、下記一般式1の条件を満たす下塗層形成用の樹脂組成物の硬化物を含み、前記素材鋼板の一面または両面に形成された下塗層と、前記下塗層上に形成され、ラジカル化合物を含む上塗層と、を備える表面処理鋼板を提供する。
[式1]
Tb/3≦Dl
前記一般式1において、Dlは、前記金属粉末の長軸の平均粒径を示し、Tbは、前記下塗層形成用の樹脂組成物の硬化物により形成された下塗層の厚さを示す。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、素材鋼板上に特定範囲の長軸平均粒径を有する金属粉末を含む下塗層を形成し、前記下塗層上にUV硬化型塗料組成物の硬化物を含む上塗層を形成することにより、外観及び耐傷つき性に優れるだけでなく、優れた耐食性及び溶接性を確保することができる表面処理鋼板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の具体例による表面処理鋼板を示す断面図である。
図2】本発明の具体例による表面処理鋼板を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、主剤樹脂、及び金属粉末を含み、下記一般式1の条件を満たすUVコート層の下塗用樹脂組成物を提供する。
[式1]
Tb/3≦Dl
前記一般式1において、Dlは、前記金属粉末の長軸の平均粒径を示し、Tbは、前記UVコート層の下塗用樹脂組成物により形成された下塗の厚さを示す。
【0012】
以下、本発明のUVコート層の下塗用樹脂組成物について具体的に説明する。
【0013】
本発明のUVコート層の下塗用樹脂組成物は、主剤樹脂及び金属粉末を含み、前記一般式1の条件を満たす。すなわち、本発明のUVコート層の下塗用樹脂組成物では、前記UVコート層の下塗用樹脂組成物を用いて製造される下塗の厚さ(Tb)を考慮して、金属粉末の長軸の平均粒径(Dl)がTb/3以上、好ましくはTb/2以上、より好ましくはTb以上となるように調節することができる。
【0014】
具体的に、例えば、本発明のUVコート層の下塗用樹脂組成物を用いて素材鋼板の表面に1μm〜10μmの厚さ(Tb)を有する下塗層を形成しようとする場合、前記Tb値を考慮して、本発明のUVコート層の下塗用樹脂組成物に含まれる金属粉末の長軸の平均粒径(Dl)は、1/3μm以上乃至10/3μm以上であってもよい。
【0015】
本発明において、前記金属粉末の長軸の平均粒径を測定する方法は、特に限定されず、この分野において通常的に用いられる手段を制限無しに採用することができ、例えば、粒径分析器(particle size analyzer)を用いて測定することができる。
【0016】
本発明のUVコート層の下塗用樹脂組成物において、前記金属粉末の長軸の平均粒径(Dl)がTb/3未満であると、UVコート層の下塗用樹脂組成物がコートされた表面処理鋼板を加工するとき、パウダリングが生じ、または下塗層の導電性が低下し、溶接性が不良となる。
【0017】
また、前記金属粉末の長軸の平均粒径(Dl)の上限は、特に制限されず、例えば、5Tb以下、好ましくは4Tb以下、より好ましくは3Tb以下、最も好ましくは2Tb以下であってもよい。前記金属粉末の長軸の平均粒径(Dl)が3Tbを超えると、本発明のUVコート層の下塗用樹脂組成物が硬化して形成された下塗層から金属粉末が脱落する恐れがある。
【0018】
本発明のUVコート層の下塗用樹脂組成物は、主剤樹脂を含んでもよく、前記主剤樹脂は、金属粉末を安定に結合させ、耐食性及び加工性等の主要物性を確保するための下塗層を構成する主要樹脂の役割をすることができる。
【0019】
本発明の組成物において、前記主剤樹脂の種類は、特に制限されず、耐食性及び加工性等の主要物性を確保することができる樹脂であれば、いずれも可能であるが、好ましくは、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、エステル樹脂、アクリル樹脂、及びオレフィン樹脂からなる群より選ばれる一つ以上であってもよく、より好ましくはポリウレタン樹脂であってもよく、最も好ましくは水溶性ポリウレタン樹脂であってもよい。前記水溶性ポリウレタン樹脂は、例えば、ジイソシアネート、ポリオール、及びジアミンが共重合された形態であってもよいが、これに制限されるものではない。前記ジイソシアネート、ポリオール、及びジアミンの具体的な種類は、特に制限されず、この分野において一般に公知されている化合物を全て用いることができる。
【0020】
本発明において用いられる用語である「体積部」は、体積比率を意味する。
【0021】
本発明の組成物において、前記主剤樹脂は、UVコート層の下塗用樹脂組成物の固形分100体積部に対して、20体積部〜90体積部、好ましくは30体積部〜80体積部で含まれ得る。前記主剤樹脂の含量が20体積部未満であると、主剤樹脂の含量が少な過ぎ、金属粉末を安定に分散させることができず、また、耐食性及び加工性等の主要物性を確保するのに困難であり、90体積部を超えると、硬化剤を含んだ添加剤の含量が少な過ぎ、硬化力が低下する。
【0022】
本発明のUVコート層の下塗用樹脂組成物は、金属粉末を含んでもよく、前記金属粉末は、下塗層の導電性を向上させる役割をすることができる。
【0023】
本発明の組成物において、前記金属粉末の種類は、特に制限されず、この分野において一般的に通用される金属を用いてもよいが、好ましくは導電性に優れたAl、Ni、Co、Mn、Fe、Ti、Cu、Zn、Sn、及びFePからなる群より選ばれる一つ以上を用いてもよい。
【0024】
本発明の組成物において、前記金属粉末は、UVコート層の下塗用樹脂組成物の固形分100体積部に対して、1体積部〜30体積部、好ましくは5体積部〜20体積部で含まれ得る。前記金属粉末の含量が1体積部未満であると、瞬間的に極めて大きな電流が流れなければならない抵抗溶接時、充分な電気伝導性を与えず、溶接が不可能であり、30体積部を超えると、コートされた鋼板の加工時、塗膜が剥がれ、または金属粉末が、脱着後、金型に固着し、連続成形作業時、成形された部品の外観が美麗でなく、塗膜の剥がれた部分または引っ掻かれた部分の耐食性が急に低下し、不織が容易に生じる。
【0025】
また、前記金属粉末の形状は、特に制限されないが、好ましくは球形または板形であってもよい。
【0026】
本発明のUVコート層の下塗用樹脂組成物は、UVコート層の下塗用樹脂組成物の固形分100体積部に対して1体積部〜30体積部の添加剤をさらに含んでもよい。
【0027】
本発明のUVコート層の下塗用樹脂組成物において用いられる添加剤は、硬化剤、貯蔵安定剤、シランカップリング剤、フィラー、及びこれらの混合物からなる群より選ばれる一つ以上であってもよいが、これに制限されるものではない。
【0028】
前記硬化剤は、前記主剤樹脂を架橋させ、凝集力を与える役割をすることができる。前記硬化剤の種類としては、アミン系化合物、エポキシ系化合物、メラミン系化合物、及びブロック化したイソシアネート系化合物からなる群より選ばれる一つ以上が挙げられるが、これに制限されるものではない。
【0029】
前記アミン系化合物の例としては、テトラメチルグアニジン、イミダゾール、またはその誘導体、カルボン酸ヒドラジド類、3級アミン、芳香族アミン、脂肪族アミン、ジシアンジアミド、またはその誘導体等が挙げられ、前記エポキシ化合物の例としては、エチレングリコールジグリシジルエーテル、トリグリシジルエーテル、トリメチオールプロパントリグリシジルエーテル、N、N、N’、N’‐テトラグリシジルエチレンジアミン、またはグリセリンジグリシジルエーテル等が挙げられ、前記メラミン系化合物の例としては、ヘキサメトキシメチルメラミン、ヘキサエトキシメチルメラミン、ヘキサプロポキシメチルメラミン、ヘキサブトキシメチルメラミン、ヘキサペンチルオキシメチルメラミン、ヘキサヘキシルオキシメチルメラミン、またはcymel 325(Cytec社製)シリーズが挙げられ、前記ブロック化したイソシアネート系化合物の例としては、メチルエチルケトオキシム(methylethyl ketoxime)、ジエチルマロネート(dietyl malonate)または3,5‐ジメチルピラゾール(3,5-dimethyl pyrazole)等のブロッキング剤でブロック化したトリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソボロンジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート、またはナフタレンジイソシアネート等が挙げられるが、これに制限されるものではない。
【0030】
前記貯蔵安定剤は、本発明のUVコート層の下塗用樹脂組成物の貯蔵性を向上させることができる。前記貯蔵安定剤の種類としては、フェノール系酸化防止剤またはアミン系酸化防止剤等が挙げられるが、これに制限されるものではない。
【0031】
前記フェノール系酸化防止剤の例としては、アルキル化したモノフェノール、アルキルチオメチルフェノール、ヒドロキノン、アルキル化したヒドロキノン、トコフェロール、ヒドロキシ化したチオジフェニルエーテル、アルキリデンビスフェノール、О‐ベンジル化合物、N‐ベンジル化合物、S‐ベンジル化合物、ヒドロキシベンジル化したマロネート、芳香族ヒドロキシベンジル化合物、またはトリアジン化合物等が挙げられ、前記アミン系酸化防止剤の例としては、アリールアミン、ジアリールアミン、ポリアリールアミン、アシルアミノフェノール、オキサミド、金属不活性剤、ホスファイト、ホスフォネート、ベンジルホスフォネート、アスコルビン酸、ヒドロキシアミン、ニトロン、チオ相乗剤、またはインドリノン等が挙げられるが、これに制限されるものではない。
【0032】
前記シランカップリング剤は、UVコート層の下塗用樹脂組成物により形成された下塗内において、金属粉末と主剤樹脂との間の密着性を向上させ、または鋼板表面と主剤樹脂との間の密着性を向上させることができる。
【0033】
前記シランカップリング剤で金属粉末を予め処理した後、シランカップリング剤で処理された金属粉末を主剤樹脂等と混合し、または主剤樹脂等とシランカップリング剤を予め混合した後、前記混合物において金属粉末を分散させることができる。
【0034】
シランカップリング剤を主剤樹脂等と予め混合した後、前記混合物において金属粉末を分散させる場合、前記シランカップリング剤は、主剤樹脂100重量部に対して0.1重量部〜10重量部で含まれ得る。前記シランカップリング剤の含量が0.1重量部未満であると、その添加効果が十分ではなく、金属粉末と主剤樹脂との間の密着性が低下し、10重量部を超えると、本発明のUVコート層の下塗用樹脂組成物内においてシランカップリング剤が不均一に分散され、耐食性が低下する。
【0035】
前記シランカップリング剤の例としては、メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ‐メタクリルオキシプロピルエトキシシラン、γ‐クロロプロピルメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β‐メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ‐グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ‐グルシドキシプロビルトリエトキシシラン、β‐(3,4‐エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、γ‐メルカプトプロピルメトキシシラン、γ‐アミノプロピルトリエトキシシラン、N‐β‐(アミノエチル)‐γ‐アミノプロピルトリメトキシシランまたはこれらの混合物等が挙げられるが、これに制限されるものではない。
【0036】
本発明は、また、素材鋼板と、主剤樹脂及び金属粉末を含み、下記一般式1の条件を満たす下塗層形成用の樹脂組成物の硬化物を含み、前記素材鋼板の一面または両面に形成された下塗層と、前記下塗層上に形成され、ラジカル化合物を含む上塗層と、を備える表面処理鋼板に関する。
[式1]
Tb/3≦Dl
前記一般式1において、Dlは、前記金属粉末の長軸の平均粒径を示し、Tbは、前記下塗層形成用の樹脂組成物の硬化物により形成された下塗層の厚さを示す。
【0037】
添付された図1及び図2は、本発明の一具体例による表面処理鋼板を示す断面図である。
【0038】
添付された図1に示すように、本発明の表面処理鋼板10は、素材鋼板11と、前記素材鋼板11の一面に形成され、金属粉末14を含んでもよい下塗層12と、前記下塗層12上に形成された上塗層13と、を備える構造であってもよく、添付された図2に示すように、本発明の表面処理鋼板20は、素材鋼板11と、前記素材鋼板11の両面に形成され、金属粉末14を含有している二つの下塗層12と、前記下塗層12上に形成された二つの上塗層13とを、備える構造であってもよい。
【0039】
本発明の表面処理鋼板において、前記素材鋼板の種類は特に制限されないが、好ましくは、冷延鋼板、亜鉛めっき鋼板、亜鉛系電気めっき鋼板、溶融亜鉛めっき鋼板、アルミニウムめっき鋼板、めっき層にコバルト、モリブデン、タングステン、ニッケル、チタン、アルミニウム、マンガン、鉄、マグネシウム、錫、銅、またはこれらの混合物を含有しためっき鋼板、シリコン、銅、マグネシウム、鉄、マンガン、チタン、亜鉛、またはこれらの混合物を添加したアルミニウム合金板、リン酸塩が塗布された亜鉛めっき鋼板、及び熱延鋼板からなる群より選ばれる一つ以上が挙げられるが、これに制限されるものではない。
【0040】
鋼板の厚さは、特に限定されず、鋼板が用いられる目的及び用途に応じて適宜選択される。鋼板は、その厚さにより、6mmを超える厚板、1mm〜6mmである中板、及び1mm未満の薄板に分けられ、本発明では、適用用途により適宜採用してもよい。
【0041】
本発明の表面処理鋼板において、前記素材鋼板の一面または両面に形成される下塗層は、主剤樹脂及び金属粉末を含み、前記一般式1の条件を満たす下塗層形成用の樹脂組成物の硬化物を含んでもよい。前記下塗層は、前記一般式1の条件を満たす長軸の平均粒径を有する金属粉末を含んでおり、下塗層の導電性を向上させることができ、これにより、優れた溶接性を与えることができる。前記下塗層形成用の樹脂組成物についての具体的な内容は、UVコート層の下塗用樹脂組成物について上述した内容と同一であるので、これについての説明を省略する。
【0042】
本発明の表面処理鋼板において、前記下塗層の厚さは、特に限定されないが、好ましくは10μm以下、より好ましくは1μm〜10μm、さらに好ましくは1μm〜5μmであってもよい。前記下塗層の厚さが10μmを超えると、下塗層が導電性を有する金属粉末を含有していても、導電性が低下し、溶接性が不良となり、さらに、前記下塗層上にUV硬化型塗料組成物の硬化物を含有する上塗層を追加で形成するときは、溶接性が発現されないことがあり得る。
【0043】
本発明の表面処理鋼板において、前記下塗層上に形成される上塗層は、ラジカル化合物を含んでもよく、好ましくは、オリゴマ、光重合性モノマー、及び光開始剤を含むUV硬化型塗料組成物の硬化物を含んでもよい。
【0044】
前記UV硬化型塗料組成物は、オリゴマ、光重合性モノマー、及び光開始剤を含んでおり、優れた外観、耐傷つき性、及び耐食性を確保することができる。
【0045】
本発明において用いられる用語である「重量部」は、重量比率を意味する。
【0046】
本発明のUV硬化型塗料組成物において、前記オリゴマは、UV硬化型塗料組成物100重量部に対して10重量部〜80重量部、好ましくは30重量部〜70重量部で含まれ得る。前記オリゴマの含量が10重量部未満であると、光重合反応が迅速に進行するにつれて、架橋密度が高くなり、塗膜の脆性が大きくなる恐れがあり、80重量部を超えると、光重合反応速度が低下し、架橋密度の調節が困難であり、塗膜を硬化させるためのUV照射量が多く要求され、またはUV照射時間が長期化する恐れがある。
【0047】
また、本発明のUV硬化型塗料組成物において、前記オリゴマの種類は、特に制限されないが、好ましくはウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、及びポリエステルアクリレートからなる群より選ばれる一つ以上のアクリル系オリゴマを挙げることができる。
【0048】
また、本発明において、前記オリゴマの重量平均分子量は、特に制限されず、例えば、1000〜5000、好ましくは1000〜3000であってもよい。
【0049】
本明細書において、重量平均分子量は、GPC(gel permeation chromatography)で測定した、ポリスチレン換算数値を意味する。
【0050】
本発明のUV硬化型塗料組成物において、前記光重合性モノマーは、UV硬化型塗料組成物100重量部に対して10重量部〜80重量部、好ましくは30重量部〜70重量部で含まれ得る。前記光重合性モノマーの含量が、10重量部未満であると、光重合反応速度が低下し、架橋密度の調節が困難であり、塗膜を硬化させるためのUV照射量が多く要求され、またはUV照射時間が長期化する恐れがあり、80重量部を超えると、光重合反応が迅速に進行されるにつれて、架橋密度が高くなり、塗膜の脆性が大きくなる恐れがある。
【0051】
また、本発明のUV硬化型塗料組成物において、前記光重合性モノマーの種類は、特に限定されないが、好ましくは、単官能または多官能アクリレート系モノマーであってもよい。前記多官能アクリレート系モノマーは、分子中に2以上のアクリレート残基を有する光重合性アクリレート系モノマーを意味する。
【0052】
前記単官能アクリレート系モノマーの種類は、特に制限されず、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n‐プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n‐ブチル(メタ)アクリレート、t‐ブチル(メタ)アクリレート、sec‐ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、2‐エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2‐エチルブチル(メタ)アクリレート、n‐オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、アクリルモルホリン(ACMО)、テトラヒドロフリル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、またはヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられ、本発明では、上記のうち、1種または2種以上の混合を用いてもよい。
【0053】
また、前記多官能アクリレート系モノマーの具体的な例としては、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリオキシエチルジ(メタ)アクリレート、アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシレーテッドトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロポキシレーテッドトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、またはペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等が挙げられ、本発明では、上記のうち、1種または2種以上の混合を用いてもよい。
【0054】
本発明のUV硬化型塗料組成物において、前記光開始剤は、UV硬化型塗料組成物100重量部に対して0.1重量部〜30重量部、好ましくは1重量部〜10重量部で含まれ得る。前記光開始剤の含量が、0.1重量部未満であると、光重合反応が生じなく、光重合反応が極めて遅く生じ、UV照射による塗膜の硬化が不可能であり、硬化時間が長期化する恐れがあり、30重量部を超えると、光反応により、光開始剤がラジカル形態に転移された状態で残存し、光重合反応を抑制し、または塗膜の物性を低下させる恐れがある。
【0055】
また、本発明のUV硬化型塗料組成物において、前記光開始剤の種類は、特に制限されず、前記塗料組成物の硬化に用いられる紫外線灯により、単波長用光開始剤または長波長用光開始剤を選択的に用いることができるが、好ましくはベンゾフェノン系化合物、ベンゾイン系化合物、ベンゾインエーテル系化合物、ベンジルケタール系化合物、アセトフェノン系化合物、アントラキノン系化合物、及びチオキサントン系化合物からなる群より選ばれる一つ以上を用いてもよいが、これに制限されない。
【0056】
商業的に市販されている前記光開始剤の例としては、例えば、イルガキュア184(Irgacure 184TM)、イルガキュア754(Irgacure 754TM)、イルガキュア819(Irgacure 819TM)、ダロキュア1173(Darocure 1173TM)、及びダロキュアTPО(Darocure TPОTM)等のチバスペシャルティケミカル社(Ciba specialty chemicals社)製品、及びミキュアCP‐4(Micure CP−4TM)、ミキュアMP‐8(Micure MP−8TM)、ミキュアBP(Micure BPTM)、及びミキュアTPО(Micure TPOTM )等のミウォン商事の製品等が挙げられるが、これに制限されるものではない。本発明の無溶剤型のUV硬化型塗料組成物の特性を生かすためには、上記市販されている製品のうち、製造過程における容易性を勘案して、液相の光開始剤であるイルガキュア754(Irgacure 754TM)、ダロキュア1173(Darocure 1173TM)、またはミキュアMP‐8(Micure MP−8TM)等を用いることが好ましい。
【0057】
本発明のUV硬化型塗料組成物は、UV硬化型塗料組成物100重量部に対して、前記添加剤は、UV硬化型塗料組成物100重量部に対して0.1重量部〜15重量部、好ましくは0.3重量部〜10重量部、より好ましくは0.5重量部〜6重量部で含まれ得る。
【0058】
本発明のUV硬化型塗料組成物において、前記添加剤は、前記含量の範囲内で含まれることにより、UV硬化型塗料組成物に要求される物性を変化させることなく、添加剤そのものの効果を発揮することができる。
【0059】
前記添加剤の種類は、特に制限されず、この分野において通常的に用いられる添加剤であれば、いずれも使用可能であるが、好ましくは、消泡剤、レベリング剤、付着増進剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、熱重合禁止剤、平滑剤、分散剤、帯電防止剤、可塑剤、有機充填剤、及びこれらの混合物からなる群より選ばれる一つ以上が挙げられる。
【0060】
前記消泡剤は、本発明のUV硬化型塗料組成物を用いた前記下塗層上におけるコート作業時に発生する気泡を除去するためのものであって、具体的な例として、TEGО Airex 920、TEGO Airex 932、BYK088、またはBYK1790等が挙げられるが、これに制限されるものではない。
【0061】
前記レベリング剤は、塗膜の外観及び耐傷つき性を向上させるものであって、具体的な例として、TEGO Glide 410、TEGO Glide 440、TEGO Rad 2250、BYK−UV3500、またはBYK−UV3510等が挙げられるが、これに制限されるものではない。
【0062】
前記付着増進剤は、UV硬化型塗料組成物の下塗層への付着力を向上させるためのものであって、具体的な例として、ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェートまたはヒドロキシエチルメタアクリレートホスフェート等のアクリルホスフェート系付着増進剤が挙げられるが、これに制限されるものではない。
【0063】
前記酸化防止剤の例としては、イルガノックス1010(Irganox 1010)、イルガノックス1035(Irganox 1035)、イルガノックス1076(Irganox 1076)、またはイルガノックス1222(Irganox 1222)等のBASF社の製品が挙げられ、光安定剤の例としては、チヌビン292(Tinuvin 292)、チヌビン144(Tinuvin 144)、またはチヌビン622LD(Tinuvin 622LD)等のBASF社の製品、及びサノールLS‐770(Sanol LS‐770)、サノールLS‐765(Sanol LS‐765)、サノールLS‐292(Sanol LS‐292)、またはサノールLS‐744(Sanol LS‐744)等の三共社の製品が挙げられ、紫外線吸収剤の例としては、チヌビンP(Tinuvin P)、チヌビン234(Tinuvin 234)、チヌビン320(Tinuvin 320)、またはチヌビン328(Tinuvin 328)等のBASF社の製品、及びスミソーブ110(SUMISORB 110)、スミソーブ130(SUMISORB 130)、スミソーブ140(SUMISORB 140)、スミソーブ220(SUMISORB 220)、スミソーブ250(SUMISORB 250)、スミソーブ320(SUMISORB 320)、またはスミソーブ400(SUMISORB 400)等の住友社の製品が挙げられるが、これに制限されるものではない。
【0064】
前記平滑剤及び分散剤は、BYK社、TEGО社、及びEFKA社等の通常の塗料用添加剤の製造会社の製品を選択して用いてもよい。
【0065】
本発明の表面処理鋼板において、前記上塗層の厚さは、特に制限されないが、好ましくは1μm〜20μmであってもよい。前記上塗層の厚さが1μm未満であると、UV硬化型塗料組成物の硬化物が充分ではなく、耐傷つき性及び光沢度等が低下し、20μmを超えると、通電不良及びスパッタが生じ、一定の電圧での抵抗溶接が不可能である。
【0066】
本発明の表面処理鋼板は、優れた外観、耐傷つき性、及び耐食性を有するのみならず、溶接性も優れているので、建材用素材として有用に活用され得る。
【0067】
本発明はまた、素材鋼板の一面または両面に本発明によるUVコート層の下塗用樹脂組成物をコートし、下塗層を形成するステップと、前記形成された下塗層上にオリゴマ、光重合性モノマー、及び光開始剤を含むUV硬化型塗料組成物をコートし、上塗層を形成するステップと、を含む表面処理鋼板の製造方法に関する。
【0068】
本発明の表面処理鋼板を製造するために、先ず、一面または両面にめっき層が形成された素材鋼板を準備乃至製造することができる。一面または両面にめっき層が形成された素材鋼板を製造する場合は、素材鋼板に耐食性に優れた金属をめっきしてもよい。本発明において、めっきに用いられる金属としては、上述のように、亜鉛、亜鉛系合金、アルミニウム、またはアルミニウム合金等が挙げられるが、特に制限されるものではない。
【0069】
本発明において、鋼板上に金属をめっきする方法は、特に限定されず、この分野において一般に公知された全ての手段を用いることができる。本発明では、例えば、めっき量の制御が容易であり、めっき量の均一度に優れた電気めっきを用いることができるが、これに制限されるものではない。
【0070】
本発明の表面処理鋼板の製造方法において、前記素材鋼板についての具体的な内容は、上述したものと同一である。
【0071】
上記のように、準備乃至製造された素材鋼板において、素材鋼板の一面または両面に下塗層を形成するために、UVコート層の下塗用樹脂組成物を素材鋼板の表面にコートするステップを行ってもよい。
【0072】
本発明において、前記UVコート層の下塗用樹脂組成物は、上述のように、主剤樹脂及び金属粉末を含み、前記一般式1の条件を満たすことができる。
【0073】
具体的に、前記UVコート層の下塗用樹脂組成物は、溶剤である水に主剤樹脂を添加し、次いで、金属粉末及び添加剤を添加した後、適宜熟成させて製造することができる。前記UVコート層の下塗用樹脂組成物についての具体的な内容は、上述したものと同一であるので、これについての説明を省略する。
【0074】
本発明では、このように製造されたUVコート層の下塗用樹脂組成物を素材鋼板上にコートすることにより、下塗層を形成することができ、前記コート方法は、特に限定されず、この分野において一般的に公知されている全ての手段を採用することができる。本発明では、例えば、ロールコート、スプレー、または浸漬法等を用い、下塗層形成用組成物を素材鋼板上にコートすることができ、特に鋼板の片面及び両面の両方に適用可能であり、下塗層の付着量の調節が容易なロールコートを用いてもよいが、これに制限されるものではない。
【0075】
本発明の製造方法において、下塗層の形成ステップは、UVコート層の下塗用樹脂組成物を素材鋼板上にコートする工程以降、追加で乾燥工程を行ってもよい。
【0076】
本発明において、下塗層の形成のための前記乾燥工程は、110℃〜250℃、好ましくは120℃〜220℃の焼付温度において、5秒以上の間、行われてもよい。前記焼付温度は、加熱乾燥温度を意味する。前記焼付温度、具体的には鋼板の温度(Metal Temperature)が110℃未満であると、主剤樹脂と金属粉末との間の反応が進行され難く、水で洗浄時、一部成分が脱落し、耐食性の確保が充分ではない恐れがあり、250℃を超えると、硬化反応は、これ以上進行せず、熱量損失によるエネルギー費用が増加する恐れがある。
【0077】
本発明の表面処理鋼板の製造方法は、このように形成された下塗層上に上塗層を形成するために、UV硬化型塗料組成物を下塗層上にコートするステップを行ってもよい。
【0078】
本発明の製造方法において、前記UV硬化型塗料組成物は、上述のようにオリゴマ、光重合性モノマー、及び光開始剤を含んでもよい。具体的に、前記UV硬化型塗料組成物は、オリゴマ、光重合性モノマー、及び光開始剤を混合して製造することができ、好ましくはオリゴマ、光重合性モノマー、及び光開始剤とともに添加剤を混合して製造することができる。前記各成分の種類及び含量は、上述したものと同一のであるので、これについての説明を省略する。
【0079】
本発明では、このように製造されたUV硬化型塗料組成物を下塗層上にコートすることにより、上塗層を形成することができ、前記コート方法は、特に限定されず、この分野において一般的に公知されている全ての手段を採用することができる。本発明では、例えば、ロールコート、スプレー、または浸漬法等を用いて、UV硬化型塗料組成物を下塗層上にコートすることができ、特に鋼板の片面または両面の両方に適用可能であり、上塗層の付着量の調節が容易なロールコートを用いてもよいが、これに制限されるものではない。
【0080】
本発明の製造方法において、上塗層の形成ステップは、UV硬化型塗料組成物を下塗層上にコートする工程以降、追加的にUVを照射して硬化させる工程を行ってもよい。
【0081】
本発明の製造方法において、上塗層の形成のための前記硬化工程は、下塗層上にコートされているUV硬化型塗料組成物にUVを照射して行ってもよく、前記UVを照射する方法は、特に制限されず、この分野において通常的に知られたUV照射装置を制限無しに採用することができる。本発明では、UV照射装置の例として、UVランプを用いてもよいが、これに制限されるものではない。
【0082】
前記UV照射時間も、特に制限されず、UV硬化型塗料組成物が充分硬化されるように適宜選択され得る。
【0083】
このように下塗層上にコートされたUV硬化型塗料組成物にUVを照射すると、光開始剤がラジカルを形成しながら、オリゴマ及び光重合性モノマー間の反応を開始し、UV硬化が進行し、これにより、下塗層上にUV硬化型塗料組成物の硬化物を含有する上塗層が形成される。
【0084】
本発明の表面処理鋼板の製造方法により製造された表面処理鋼板は、優れた外観、耐傷つき性、及び耐食性を維持するのみならず、優れた溶接性も確保することができ、建材用素材として有用に適用され得る。
【実施例】
【0085】
以下、本発明による実施例及び本発明によらない比較例を通じて、本発明をより詳細に説明するが、本発明の範囲が下記に提示された実施例により制限されるものではない。
【0086】
金属粉末を含有したUVコート層の下塗用樹脂組成物を素材鋼板上にコートし、前記UVコート層の下塗用樹脂組成物の硬化物を含む下塗層上にUV硬化型塗料組成物をコートして表面処理鋼板を製造した。前記金属粉末の形態、平均粒径、及び含量を変更しながら、前記UVコート層の下塗用樹脂組成物の組成を変更した。
【0087】
実施例1
素材鋼板の準備
素材鋼板としては、片面の亜鉛付着量が60g/mである溶融亜鉛めっき鋼板を用いた。
【0088】
UVコート層の下塗用樹脂組成物の製造及び下塗処理
UVコート層の下塗用樹脂組成物の固形分100体積部に対して、ジイソシアネート、ポリオール、及びジアミンが共重合され、数平均分子量3,000〜10,000を有する水溶性ポリウレタン樹脂60体積部、及びブロック化したポリイソシアネート、アミン系硬化剤、エポキシ系硬化剤、及びメラミン樹脂で構成された硬化剤15体積部を、溶媒である水に希釈した後、長軸の平均粒径が6.3μmであり、短軸の平均粒径が0.4μmであり、板形を有するアルミニウム金属粉末2体積部を前記混合物に配合し、UVコート層の下塗用樹脂組成物を製造した。前記配合方法としては、インペラを用いた高速攪拌方法を用いた。
【0089】
次いで、前記製造されたUVコート層の下塗用樹脂組成物をロールコーターを用いて、前記製造された電気めっき亜鉛鋼板上にコートし、鋼板温度が140℃となるように焼付乾燥し、厚さが1μmである下塗層を形成した。
【0090】
UV硬化型塗料組成物の製造及び上塗処理
変性エポキシアクリレートオリゴマ[CN 150/80、Sartomer、米国]35g、ウレタンアクリレートオリゴマ[UA‐5221、HSケムトロン、韓国]15g、テトラヒドロパーフリルアクリレート(THFA)[SR285、Sartomer、米国]30g、ヘキサンジオールジアクリレート(HDDA)[Miramer M200、ミウォン商事、韓国]10g、光開始剤[Darocure 1173、Ciba Chemicals、スイス]8g、消泡剤[TEGO Airex920、Evonik、ドイツ]0.5g、レベリング剤[TEGO Rad2250、Evonik、ドイツ]0.5g、及び付着増進剤1gを混合し、UV硬化型塗料組成物を製造した。
【0091】
次いで、前記UV硬化型塗料組成物を前記金属粉末が含有された下塗層上にロールコーターを用いてコートした後、UVランプを用いて2,000mJ/cmの光量で照射し、前記UV硬化型塗料組成物を硬化させることにより、厚さが6μmである上塗層を形成した。
【0092】
実施例2乃至40
金属粉末の種類、形態、平均粒径、及び含量と、下塗層及び上塗層の厚さを下記の表1に記載のように変更したことを除いては、実施例1と同一の方法で行い、表面処理鋼板を製造した。
【0093】
【表1】
【0094】
比較例1乃至26
金属粉末の種類、形態、平均粒径、及び含量と、下塗層及び上塗層の厚さを下記の表2に記載のように変更したことを除いては、実施例1と同様の方法で行い、表面処理鋼板を製造した。
【0095】
【表2】
【0096】
前記実施例及び比較例において製造された表面処理鋼板の品質評価としては、溶接性、耐食性、及び耐傷つき性の物性を評価し、各物性は、下記のような方法で測定された。
【0097】
1.溶接性
銅‐クロム合金RWMA classIIの溶接電極が装着されたAC空気圧式スポット溶接機を用い、前記製造された実施例及び比較例の表面処理鋼板に対する電極寿命を測定した。前記電極寿命の測定は、加圧力1.8kN、溶接時間6サイクル、スクイズ時間24サイクル、及び維持時間12サイクルの測定条件で行い、溶接電流及び印加電圧は、溶接可能な電流範囲を測定した後、適宜調節し、溶接部のナゲットの平均直径が鋼板の厚さの平方根の4倍、すなわち(鋼板の厚さ)1/2の4倍以上となる最大溶接打数を電極寿命として測定した。前記溶接性の評価基準は、下記のとおりである。
【0098】
≪溶接性の評価基準≫
◎:連続打点数が800以上である場合
○:連続打点数が600以上800未満である場合
△:連続打点数が300以上500未満である場合
X:連続打点数が0以上300未満である場合
【0099】
2.耐食性
実施例及び比較例で製造された表面処理鋼板を加工してコップ状の試片を製造し、前記試片に塩水噴霧試験機(SST、Salt Spray Tester)を用いて、5%の塩水濃度、及び35℃の温度を有する塩水を1kg/cmの噴霧圧で均一に噴射した後、コップ状の試片の側面において赤さびが発生する時間を測定した。前記耐食性の評価基準は、下記のとおりである。
【0100】
<耐食性の評価基準>
◎:赤さび発生時間が480時間以上である
○:赤さび発生時間が360時間以上480時間未満である
△:赤さび発生時間が240時間以上360時間未満である
X:赤さび発生時間が240時間未満である
【0101】
3.耐傷つき性
JIS K5600‐5‐4KSにより、鉛筆硬度を用いて測定した。前記鉛筆硬度は、9B〜9H段階に区分され、前記9B段階に行くほど硬度が弱いものであり、9Hに行くほど硬度が強いものである。
【0102】
<耐傷つき性の評価基準>
◎:HB以上
○:B以上〜F以下
△:4B以上〜2B以下
X:5B以下
【0103】
上記した実施例1乃至40の表面処理鋼板についての物性測定結果を下記の表3に記載した。
【0104】
【表3】
【0105】
上記した比較例1乃至26の表面処理鋼板についての物性測定結果を下記の表4に記載した。
【0106】
【表4】
【0107】
上記した表1及び表2に示すように、本発明による実施例1乃至40の場合、上記した一般式1の条件を満たし、UVコート層の下塗用樹脂組成物に含まれた金属粉末の含量が1体積部〜30体積部の範囲内にあり、下塗層の厚さ(Tb)が10μm以下であり、上塗層の厚さ(Tt)が20μm以下であるので、表面処理鋼板の溶接性に優れるとともに、耐食性及び耐傷つき性に極めて優れることがわかる。
【0108】
これに対して、比較例1乃至6及び24乃至26の場合、金属粉末の含量が0.5体積部であって、本発明において特定した含量の範囲を外れており、溶接性が不良であることがわかり、比較例7、9、11及び13の場合、表面処理鋼板の下塗層の厚さが10μmを超えており、溶接性に優れておらず、普通または不良であることがわかり、比較例8、10、12及び14乃至17の場合、表面処理鋼板の上塗層の厚さが20μmを超えており、溶接性が不良であることがわかり、比較例18乃至23の場合、金属粉末の長軸の平均粒径(Dl)がTb/3よりも小さいので、溶接性が不良であることがわかる。
【0109】
すなわち、本発明の表面処理鋼板は、下塗層の厚さ、上塗層の厚さ、UVコート層の下塗用樹脂組成物に含まれた金属粉末の含量を特定の範囲内に調節し、一般式1の要件を満たすことにより、優れた溶接性を維持するとともに、極めて優れた耐食性及び耐傷つき性も維持することができる。
【産業上の利用可能性】
【0110】
本発明の表面処理鋼板は、優れた外観、耐傷つき性、耐食性、及び溶接性を有しているので、建材用素材として有用に用いられる。
【符号の説明】
【0111】
10、20 表面処理鋼板
11 素材鋼板
12 下塗層
13 上塗層
14 金属粉末
図1
図2