(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記高分子膜の表面と前記第1薄膜センサおよび前記第2薄膜センサとの間に形成された緩衝層をさらに備えたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の圧力センサ。
閉じられたチャンバと、前記チャンバ中にガスを導入するガス導入手段と、前記チャンバ中のガスを排気して前記チャンバ内の圧力を大気圧以下とするガス排気手段とを備えた真空加工装置であって、
前記チャンバ内の少なくとも1つの圧力測定位置に1つずつ配置された、請求項1〜5のいずれかに記載の圧力センサのセンサ部と、
前記チャンバの外に配置された、前記圧力センサの制御部と、
前記圧力測定位置それぞれの目標とすべき雰囲気圧力の時間変化が格納された目標格納部と、
前記制御部から取得した前記圧力測定位置の雰囲気圧力の時間変化と、前記目標格納部に格納された目標とすべき時間変化との差異に基づいて異常を検知する異常検知部と、
を備えたことを特徴とする真空加工装置。
【背景技術】
【0002】
従来から、種々の薄膜形成プロセス等においては、チャンバ(例えば、製膜室)中に反応ガスを導入するガス導入手段と、チャンバ中の反応ガスを排気してチャンバ内の圧力を大気圧以下にするガス排気手段とを備えた真空加工装置が使用されている。薄膜形成プロセスでは、形成される膜の品質を維持するために、チャンバ中の雰囲気圧力(1×10
-5[Pa]〜大気圧)を精度良く測定することにより、何らかの異常が発生していないかどうかをリアルタイムで監視することが求められている。
【0003】
真空加工装置のチャンバ内の雰囲気圧力を測定するための従来の圧力センサとしては、細長い白金線を用いたピラニ真空計が知られている。このピラニ真空計によれば、気体分子が衝突することにより生じる白金線の抵抗値の変化に基づいて雰囲気圧力を間接的に測定することができる。しかしながら、ピラニ真空計は、サイズが大きいので、取り付け位置(測定位置)や取り付け可能な数(測定位置の数)が限られてしまうという問題があった。また、ピラニ真空計は、雰囲気温度が予め定められた基準温度から変化した場合に、測定精度が悪化してしまうという問題もあった。
【0004】
従来の圧力センサとしては、特許文献1に記載の雰囲気センサも知られている。この雰囲気センサは、凹部を有するシリコン基板と、凹部の上に架橋された橋架部と、橋架部の上に設けられた発熱抵抗体とを含む。この雰囲気センサは、ピラニ真空計に比べて非常に小型である。したがって、この雰囲気センサによれば、任意の位置の雰囲気圧力を測定できない問題や、測定位置の数が制限される問題を解決することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載の雰囲気センサは、橋架部の構造が脆弱であるために壊れやすく、しかも、製造工程が非常に複雑であるためにコストが高くつくという問題があった。また、この雰囲気センサは、依然として雰囲気温度の変化による測定精度の悪化の問題を解決することができていない。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、その課題とするところは、構造がシンプルかつ堅牢であり、かつ測定精度が高い小型の圧力センサ、および該圧力センサを備えた真空加工装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係る圧力センサは、熱伝導方式を採用したセンサ部と、該センサ部を制御する制御部とからなる圧力センサであって、
センサ部は、表面の中央部分に空洞部が形成されたステンレス鋼製の基台部と、空洞部を覆うように基台部の表面に設けられた高分子膜と、高分子膜の表面のうち、空洞部を覆う領域に設けられた第1薄膜センサと、高分子膜の表面のうち、空洞部を覆わない領域に設けられた第2薄膜センサと、一端が第1薄膜センサに接続され、他端が空洞部を覆わない領域に配置され、一端と他端とを結ぶ部分が空洞部を覆う領域内において一端と他端との間の距離が長くなるように引き回された一対の第1電極と、一端が第2薄膜センサに接続され、他端が空洞部を覆わない領域に配置された一対の第2電極とを備え、第1薄膜センサおよび第2薄膜センサは、温度に応じて抵抗値が変化するよう構成されており、
制御部は、第1薄膜センサの温度が予め定められた温度に維持されるように第1電極を通じて第1薄膜センサに電力を供給するとともに、電力に関する信号を出力する第1駆動部と、第2薄膜センサの温度に影響を与えない程度の微小電流を第2電極を通じて第2薄膜センサに供給することにより第2薄膜センサの温度を測定し、該温度に関する信号を出力する第2駆動部と、予め定められた基準温度における、第1駆動部から供給されている電力と雰囲気圧力との関係が格納された圧力記憶部と、第2薄膜センサの温度と電力補正量との関係が格納された補正量記憶部と、補正量記憶部に格納された関係および第2駆動部から出力された信号に基づいて電力補正量を決定し、第1駆動部から出力された信号により得た電力を電力補正量によって補正し、その後、圧力記憶部に格納された関係に基づいて補正後の電力に対応した雰囲気圧力を特定する圧力特定部とを備えている。
【0009】
上記圧力センサの第1薄膜センサおよび第2薄膜センサは、タンタル−アルミニウム複合窒化物からなることが好ましく、特に、式Ta
xAl
yN
z(ただし、0.67≦x≦0.7、0.01≦y≦0.02、0.28≦z≦0.32、x+y+z=1)で表されるタンタル−アルミニウム複合窒化物であることが好ましい。また、上記圧力センサの高分子膜は、ポリイミドフィルムからなることが好ましい。
【0010】
上記圧力センサは、高分子膜の表面と第1薄膜センサおよび第2薄膜センサとの間に形成された緩衝層をさらに備えていることが好ましい。
【0011】
上記課題を解決するために、本発明に係る真空加工装置は、閉じられたチャンバと、チャンバ中にガスを導入するガス導入手段と、チャンバ中のガスを排気してチャンバ内の圧力を大気圧以下とするガス排気手段とを備えた真空加工装置であって、
チャンバ内の少なくとも1つの圧力測定位置に1つずつ配置された、上記圧力センサのセンサ部と、チャンバの外に配置された、圧力センサの制御部と、圧力測定位置それぞれの目標とすべき雰囲気圧力の時間変化が格納された目標格納部と、制御部から取得した圧力測定位置の雰囲気圧力の時間変化と、目標格納部に格納された目標とすべき時間変化との差異に基づいて異常を検知する異常検知部とを備えている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、構造がシンプルかつ堅牢であり、かつ測定精度が高い小型の圧力センサ、および該圧力センサを備えた真空加工装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[圧力センサ]
以下、添付図面を参照しつつ、本発明に係る圧力センサの実施例について説明する。
【0015】
図1(A)に示すように、本発明に係る圧力センサ1は、センサ部2と、センサ部2を制御する制御部3とからなる。このうち、センサ部2は真空加工装置の内側(チャンバ内)に配置され、制御部3は真空加工装置の外側に配置される。センサ部2および制御部3は、4本のリード線によって電気的に接続されている。
【0016】
図1(A)および(B)に示すように、センサ部2は、表面の中央部分に空洞部4aが形成された基台部4と、空洞部4aを覆うように基台部4の表面に設けられた高分子膜5と、高分子膜5の表面のうち、空洞部4aを覆う領域5bに設けられた第1薄膜センサ6と、高分子膜5の表面のうち、空洞部4aを覆わない領域5cに設けられた第2薄膜センサ7とを備えている。
【0017】
基台部4は、ステンレス鋼(SUS)等の機械的強度が高い材料で構成されている。基台部4は、低背の円柱状を有し、中央部分が円形にくり貫かれることにより空洞部4aが形成されている。
図1(B)に示すように、本実施例では、空洞部4aが基台部4の裏面側まで貫通しているが、空洞部4aの深さは適宜変更可能である。ただし、空洞部4aを基台部4の裏面側まで貫通させない場合は、空洞部4aと外部とを連通させる穴を少なくとも1つ設ける必要がある。また、基台部4の形状も低背の円柱状に限定されず、適宜変更可能である。
【0018】
高分子膜5は、ポリイミド等の薄くしても機械的強度が比較的高く、比熱が小さく、かつ耐熱性に優れた高分子材料で構成されている。高分子膜5は、例えば熱可塑性を有する接着剤等で基台部4の表面のうち、空洞部4aを取り囲む縁領域に固定されている。高分子膜5は、基台部4の表面と同一寸法の円形を有しているが、空洞部4aを完全に覆うことができる任意の形状および寸法に適宜変更可能である。
【0019】
第1薄膜センサ6および第2薄膜センサ7は、雰囲気温度に応じて自身の抵抗値が変化する材料で構成されている。このような材料としては、例えば、特許第4436064号公報に開示されている、式Ta
xAl
yN
z(ただし、x+y+z=1)で表されるタンタル−アルミニウム複合窒化物がある。このタンタル−アルミニウム複合窒化物は、組成比x、y、zを、0.67≦x≦0.7、0.01≦y≦0.02、0.28≦z≦0.32の範囲内に設定することで、−8100〜−28000ppm/℃という非常に高い抵抗温度係数が得られる。
【0020】
温度変化に対する感度を高めるため、第1薄膜センサ6および第2薄膜センサ7は、厚みが200〜500nmとされていることが好ましい。また、第1薄膜センサ6および第2薄膜センサ7の厚み以外の寸法は、組成比x、y、zを上記の通りに設定した場合の比抵抗が4.0×10
-2〜3.8×10
-1Ω・cmであること、および好ましい厚みが200〜500nmであることを考慮して、自身の抵抗値が測定容易な範囲内で変動するように決定されることが好ましい。
【0021】
本実施例では、第1薄膜センサ6および第2薄膜センサ7の寸法を、それぞれ、1mm×0.5mm×400nm、0.5mm×0.5mm×400nmとした。第1薄膜センサ6および第2薄膜センサ7の厚みを同一としたのは、第1薄膜センサ6および第2薄膜センサ7を同一プロセスで同時に形成するためである。
【0022】
第1薄膜センサ6および第2薄膜センサ7は、反応性スパッタリング法により高分子膜5の表面に形成されている。より詳しくは、第1薄膜センサ6は、高分子膜5の表面のうちの空洞部4aを覆う領域5bに形成され、一方、第2薄膜センサ7は、空洞部4aを覆わない領域5cに形成されている。また、
図1(A)に示すように、第1薄膜センサ6および第2薄膜センサ7は、離間して配置されている。その理由については、後で詳しく説明する。
【0023】
図示していないが、センサ部2は、高分子膜5の表面と第1薄膜センサ6および第2薄膜センサ7との間に形成された緩衝層をさらに備えていることが好ましい。緩衝層を設けることにより、高分子膜5(ポリイミド)と薄膜センサ6、7(タンタル−アルミニウム複合窒化物)の熱膨張係数の違いにより高分子膜5と薄膜センサ6、7との界面に生じる応力を軽減し、薄膜センサ6、7が破損したり劣化したりするのを防ぐことができる。
【0024】
センサ部2は、第1薄膜センサ6に通電するための一対の第1電極8a、8bと、第2薄膜センサ7に通電するための一対の第2電極9a、9bとをさらに備えている。
【0025】
第1電極8aは、一端8a1において第1薄膜センサ6に接続されるとともに、他端8a2においてリード線に接続されている。同様に、第1電極8bも、一端8b1において第1薄膜センサ6に接続されるとともに、他端8b2においてリード線に接続されている。第1電極8aは、一端8a1から他端8a2に向かって真っ直ぐに延びるのではなく、領域5b内において一端8a1と他端8a2の間の距離が長くなるように引き回されている。これにより、高分子膜5および第1電極8aを介して第1薄膜センサ6と基台部4との間で行われる熱伝導が抑制される。第1電極8bについても、熱伝導を抑制するための同様の対策がなされている。
【0026】
第2電極9aは、一端9a1において第2薄膜センサ7に接続されるとともに、他端9a2においてリード線に接続されている。同様に、第2電極9bも、一端9b1において第2薄膜センサ7に接続されるとともに、他端9b2においてリード線に接続されている。第2電極9aは、一端9a1から他端9a2に向かってほぼ真っ直ぐに延びている。第2電極9bも同様である。
【0027】
第1電極8a、8bおよび第2電極9a、9bは、Pt、Ni、Cu、Ag、Au、Alのうちの1つ以上の金属材料からなる金属薄膜である。金属材料は、圧力センサ1の使用環境、例えば、雰囲気温度や腐食性ガスの有無等に応じて選択される。第1電極8a、8bおよび第2電極9a、9bは、第1薄膜センサ6および第2薄膜センサ7を形成した後、例えば、スパッタリング法、イオンプレーティング法またはCVD法により形成される。
【0028】
センサ部2と制御部3とを繋ぐ4本のリード線は、線径10〜100μmのNi線、Ag線、Au線、Al線またはCu線からなる。各リード線は、In合金、半田合金またはAg合金を用いて第1電極8a、8bおよび第2電極9a、9bの他端8a2、8b2、9a2、9b2に接続されている。
【0029】
図2に示すように、制御部3は、リード線を介して第1薄膜センサ6に接続された第1駆動部10と、リード線を介して第2薄膜センサ7に接続された第2駆動部11と、圧力記憶部12と、補正量記憶部13と、圧力特定部14とを備えている。
【0030】
第1駆動部10は、第1薄膜センサ6の温度T1が予め定められた温度(例えば、150℃)に維持されるように電力を供給して第1薄膜センサ6を加熱する。より詳しくは、第1駆動部10は、第1薄膜センサ6に対して電圧v1を印加し、その際に流れる電流i1を測定する。そして、式“v1/i1”を用いて第1薄膜センサ6の抵抗r1を求め、さらに温度T1と抵抗r1との既知の関係に基づいて、第1薄膜センサ6の温度T1を求める。求めた温度T1が150℃よりも低い場合、第1駆動部10は電圧v1を上昇させる。一方、温度T1が150℃よりも高い場合、第1駆動部10は電圧v1を下降させる。これらの動作が繰り返し行われることにより、第1薄膜センサ6の温度T1は150℃に維持される。
【0031】
第1駆動部10は、上記の動作を行いながら、第1薄膜センサ6に供給している電力p1(=v1×i1)に関する信号を圧力特定部14に向けて出力する。
【0032】
第2駆動部11は、第2薄膜センサ7の温度T2に影響を与えない程度の微小電流i2を第2薄膜センサ7に供給し、その際に発生する電圧v2を測定する。そして、式“v2/i2”を用いて第2薄膜センサ7の抵抗r2を求め、さらに温度T2と抵抗r2との既知の関係に基づいて、第2薄膜センサ7の温度T2を求める。第2駆動部11は、求めた温度T2に関する信号を圧力特定部14に向けて出力する。
【0033】
上記の通り、第2駆動部11から供給される微小電流i2によって第2薄膜センサ7の温度T2は上昇しない。したがって、第2駆動部11によって求められた温度T2は、雰囲気温度に実質的に等しい。なお、第2薄膜センサ7は、薄い高分子膜5を挟んで熱容量の大きい基台部4に接続され、しかも、第2薄膜センサ7は第1薄膜センサ6から離間して配置されている。このため、本発明では、150℃に維持された第1薄膜センサ6から発せられる輻射熱により第2薄膜センサ7の温度T2が上昇することは、考慮する必要がない。
【0034】
圧力記憶部12には、予め定められた基準温度(例えば、23℃)における、第1駆動部10から供給されている電力p1と雰囲気圧力との関係が格納されている。
図3に示されている曲線Cが、23℃における電力p1と雰囲気圧力との関係の一例である。曲線Cは、雰囲気圧力が高くなると電力p1が高くなることを示している。このような傾向になるのは、雰囲気圧力が高くなると、第1薄膜センサ6の露出面に衝突する気体分子の数が増え、第1薄膜センサ6からより多くの熱量が奪われるようになり、その結果、第1駆動部10が、第1薄膜センサ6の温度T1を維持するために、より高い電圧v1を印加してより多くの電流i1を第1薄膜センサ6に供給するからである。
【0035】
気体分子が衝突した際に奪われる熱量は、雰囲気温度(=第2薄膜センサ7の温度T2)に依存する。より詳しくは、雰囲気温度が23℃よりも低い場合は、1つの気体分子が衝突することにより奪われる熱量が23℃の場合よりも相対的に大きく、反対に、雰囲気温度が23℃よりも高い場合は、1つの気体分子が衝突することにより奪われる熱量が23℃の場合よりも相対的に小さい。このため、雰囲気温度が23℃よりも低い場合における電力p1と雰囲気圧力との関係は、
図3に示すように、曲線Cを上方向に所定のシフト量だけシフトさせた曲線CLとなる。また、雰囲気温度が23℃よりも高い場合における電力p1と雰囲気圧力との関係は、曲線Cを下方向に所定のシフト量だけシフトさせた曲線CHとなる。
【0036】
補正量記憶部13には、第2薄膜センサ7の温度T2と電力補正量との関係が格納されている。すなわち、補正量記憶部13には、雰囲気温度と上記シフト量との関係が格納されている。
【0037】
圧力特定部14は、第1駆動部10から出力された電力p1に関する信号、および第2駆動部11から出力された温度T2に関する信号を受け取る。そして、圧力特定部14は、補正量記憶部13に格納されている関係を参照して温度T2に対応した電力補正量を決定し、次いで、電力p1を当該電力補正量で補正し、補正後の電力p1’を得る。その後、圧力特定部14は、圧力記憶部12に格納されている関係(曲線C)を参照して、補正後の電力p1’に対応する雰囲気圧力を特定する。
【0038】
以下、雰囲気温度(=温度T2)が23℃よりも低い場合の温度補正と、雰囲気温度が23℃よりも高い場合の温度補正につき、具体的に説明する。
【0039】
雰囲気温度が23℃よりも低く、かつ第1薄膜センサ6に供給されている電力p1がPLであった場合は、補正により電力PLが電力PL’に引き下げられ、補正後の電力PL’と曲線Cとに基づいて雰囲気圧力が1×10
-2Paであることが特定される。なお、補正を行わない場合は、電力PLと曲線Cとに基づいて雰囲気圧力が3×10
-2Paであることが特定される。
【0040】
一方、雰囲気温度が23℃よりも高く、かつ第1薄膜センサ6に供給されている電力p1がPHであった場合は、補正により電力PHが電力PH’に引き上げられ、補正後の電力PH’と曲線Cとに基づいて雰囲気圧力が1.2×10
-1Paであることが特定される。なお、補正を行わない場合は、電力PHと曲線Cとに基づいて雰囲気圧力が8×10
-2Paであることが特定される。
【0041】
圧力特定部14は、特定した雰囲気圧力に関する信号を不図示の表示手段(ディスプレイ等)に向けて出力する。これにより、圧力センサ1周辺の雰囲気圧力がユーザに知らされる。
【0042】
以上のように、本発明に係る圧力センサ1によれば、第2薄膜センサ7を用いて測定した雰囲気温度に基づいて第1薄膜センサ6に供給されている電力p1を補正するので、チャンバ内の雰囲気温度の影響を受けることなく、雰囲気圧力を精度良く測定することができる。また、本発明に係る圧力センサ1は、機械的強度が高いポリイミド等の高分子材料からなるひと続きの高分子膜5上に第1薄膜センサ6が設けられているので、脆弱な橋架構造を有する従来の雰囲気センサに比べ、構造がシンプルかつ堅牢である。
【0043】
[真空加工装置]
次に、添付図面を参照しつつ、本発明に係る真空加工装置の実施例について説明する。
【0044】
図4は、チャンバ内にArガスを導入しながら基板上に製膜を行う真空加工装置において、チャンバ内の5カ所(圧力測定位置A〜E)の雰囲気圧力を測定した結果の一例である。同図に示すように、同一チャンバ内であっても、圧力測定位置が異なれば雰囲気圧力は変化する。具体的には、Arガス導入部に近い圧力測定位置Eは、製膜基板に近い圧力測定位置Bよりも雰囲気圧力が高い。また、圧力測定位置が同じであっても、製膜条件(Arガスの流量)が異なれば雰囲気圧力は変化する。さらに、
図4には示されていないが、圧力測定位置と製膜条件が同じであっても、各圧力測定位置の雰囲気圧力は、製膜プロセスの進行に伴って時間とともに変化していく。本発明に係る真空加工装置は、各圧力測定位置の雰囲気圧力の時間変化が適切であるか否かを判定することにより、異常の有無を検知するものである。
【0045】
本発明に係る真空加工装置は、閉じられたチャンバと、チャンバ中にガスを導入するガス導入手段と、チャンバ中のガスを排気してチャンバ内の圧力を大気圧以下とするガス排気手段と、チャンバ内の少なくとも1つの圧力測定位置に1つずつ配置された上記圧力センサ1のセンサ部2と、チャンバの外に配置された上記圧力センサ1の制御部3とを備えている。圧力センサ1のセンサ部2と制御部3は、前述の通り、リード線で電気的に接続されている。
【0046】
本発明に係る真空加工装置は、さらに、圧力測定位置それぞれの適正な雰囲気圧力の時間変化が格納された目標格納部と、圧力センサ1の制御部3から取得した圧力測定位置の雰囲気圧力の時間変化と目標格納部に格納された適正な時間変化との差異に基づいて異常を検知する異常検知部とを備えている。
【0047】
目標格納部には、例えば、Arガスの流量が20、40、60、80、100sccmの場合の各圧力測定位置A、B、C、D、Eの適正な雰囲気圧力の時間変化が格納されている。
【0048】
異常検知部は、各圧力センサ1の制御部3から出力された雰囲気圧力に関する信号を受け取るとともに、当該雰囲気圧力と目標格納部に予め格納されている適正な雰囲気圧力とを比較し、一定以上の差異があれば異常を検知する。どの程度の差異が生じた場合に異常と判定するのかについては、予め実験的に決定しておけばよい。
【0049】
図5に、本発明の第1実施例に係る真空加工装置20を示す。真空加工装置20は、フィルムFを繰り出す繰出ドラムUWを有する繰出室21と、フィルムFの表面処理を行う前処理室22と、複数のターゲット28およびメインドラムMDを有する製膜室23と、製膜後のフィルムF’の後処理(アニール等)を行う後処理室24と、フィルムF’を巻き取る巻取ドラムRWを有する巻取室25とを備えている。また、製膜室23は、ArガスまたはN
2ガスを導入するためのガス導入口26と、製膜室23内のガスを排気するガス排気口27も有している。製膜室23では、メインドラムMDに掛けられて走行しているフィルムFに向かって各ターゲット28が膜材料を飛ばすことにより、フィルムF上に製膜が行われる。
【0050】
同図に示すように、真空加工装置20は、繰出室21、前処理室22、製膜室23、後処理室24および巻取室25内の少なくとも1つの圧力測定位置(×印参照)に各1つ設けられた圧力センサ1と、不図示の異常検知部とをさらに備えている。前述の通り、真空加工装置20内には圧力センサ1のセンサ部2だけが配置され、圧力センサ1の制御部3(不図示)は真空加工装置20の外側に配置されている。
【0051】
本実施例に係る真空加工装置20によれば、製膜室23の雰囲気圧力だけでなく、その前後にある繰出室21、前処理室22、後処理室24および巻取室25の雰囲気圧力を測定することができるので、異常をいち早く検知することができる。また、この真空加工装置20によれば、製膜室23内の5カ所の雰囲気圧力を測定することができるので、膜の品質を高度に管理することができる。
【0052】
図6に、本発明の第2実施例に係る真空加工装置30を示す。真空加工装置30は、円筒状の製膜室31と、製膜室31の一端に4つ設けられた流量調整弁33付きのガス導入口32と、製膜室31の他端に設けられたガス排気口34と、製膜室31内に設けられたグリッド(格子)部35と、グリッド(格子)部35の交点に配置された圧力センサ1のセンサ部2と、製膜室31の外側に配置された不図示の制御部3と、不図示の異常検知部とを備えている。
【0053】
本実施例に係る真空加工装置30によれば、各圧力センサ1で測定された雰囲気圧力が適正であるか否かを検知するだけでなく、各圧力センサ1で測定された雰囲気圧力に差異がある場合、すなわち、ウェハWに到達するガスの流量が不均一となっている場合に、流量調整弁33を制御して各ガス導入口32から導入されるガスの量を調整し、ウェハWに到達するガスの流量を均一化することもできる。
【0054】
図7に、本発明の第3実施例に係る真空加工装置40を示す。真空加工装置40は、製膜室41と、製膜室41の側方から製膜室41内にガスを導入する複数のガス導入口42と、製膜室41の下方から製膜室41内のガスを排気するガス排気口43と、ウェハWの近傍に配置された圧力センサ1のセンサ部2と、製膜室41の外側に配置された不図示の制御部3と、不図示の異常検知部とを備えている。
【0055】
本実施例に係る真空加工装置40によれば、ウェハW近傍の雰囲気圧力をきめ細かく測定することにより、膜の品質を高度に管理することができる。
【0056】
以上、本発明に係る圧力センサおよび真空加工装置の実施例について説明したが、本発明はこれらの構成に限定されるものではなく、種々の変形例が存在することは言うまでもない。