特許第5764769号(P5764769)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5764769
(24)【登録日】2015年6月26日
(45)【発行日】2015年8月19日
(54)【発明の名称】高屈折率メタ物質
(51)【国際特許分類】
   H01Q 15/02 20060101AFI20150730BHJP
【FI】
   H01Q15/02
【請求項の数】11
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-554394(P2013-554394)
(86)(22)【出願日】2012年2月16日
(65)【公表番号】特表2014-508472(P2014-508472A)
(43)【公表日】2014年4月3日
(86)【国際出願番号】KR2012001174
(87)【国際公開番号】WO2012111991
(87)【国際公開日】20120823
【審査請求日】2013年8月15日
(31)【優先権主張番号】10-2011-0013556
(32)【優先日】2011年2月16日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2012-0000535
(32)【優先日】2012年1月3日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】592127149
【氏名又は名称】韓国科学技術院
【氏名又は名称原語表記】KOREA ADVANCED INSTITUTE OF SCIENCE AND TECHNOLOGY
(74)【代理人】
【識別番号】100109553
【弁理士】
【氏名又は名称】工藤 一郎
(72)【発明者】
【氏名】ミン ボンギ
(72)【発明者】
【氏名】イ スンフン
(72)【発明者】
【氏名】チィ ムハン
(72)【発明者】
【氏名】キ ミュシン
【審査官】 富澤 哲生
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2010/0066639(US,A1)
【文献】 特開2006−245926(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/039301(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体基板と、
前記誘電体基板に形成され、一定のギャップを形成する複数の単位格子からなる伝導層とを含み、
前記伝導層の厚さは、所定の周波数区間での表面厚さ(skin depth)以下であって、
所定の周波数区間で屈折率が前記基板の屈折率以上であることを特徴とする高屈折率メタ物質。
【請求項2】
所定の周波数区間で屈折率が35以上であることを特徴とする請求項1記載の高屈折率メタ物質。
【請求項3】
所定の周波数区間で屈折率が前記基板の屈折率の10倍以上であることを特徴とする請求項1記載の高屈折率メタ物質。
【請求項4】
前記単位格子が互いに強くカップリングされるように、前記ギャップ幅が調節されたことを特徴とする請求項1記載の高屈折率メタ物質。
【請求項5】
前記ギャップ幅が前記伝導層の厚さに比べて狭いことを特徴とする請求項1記載の高屈折率メタ物質。
【請求項6】
前記単位格子は、I形状であることを特徴とする請求項1記載の高屈折率メタ物質。
【請求項7】
前記単位格子は、四角形形状であることを特徴とする請求項1記載の高屈折率メタ物質。
【請求項8】
前記単位格子は、六角形形状であることを特徴とする請求項1記載の高屈折率メタ物質。
【請求項9】
前記単位格子は、回転対称構造を有することを特徴とする請求項1記載の高屈折率メタ物質。
【請求項10】
前記単位格子は、図15に示された4つの形態のうちいずれかの形態であることを特徴とする請求項1記載の高屈折率メタ物質。
【請求項11】
前記伝導層の形成された誘電体基板が複数層積層されたことを特徴とする請求項1記載の高屈折率メタ物質。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メタ物質に関するものであって、より詳細には、屈折率が自然界の物質では見かけられないほど非常に大きいメタ物質に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自然に存在する透明な物質は、硫化鉛(PbS)あるいは近赤外線領域(特に、共鳴近傍)で20以上の非常に高いピーク値の屈折率を有するストロンチウムチタン酸塩(SrTiO)のような、いくつかの半導体や不導体を除いては屈折率が小さい。
【0003】
ここ数年、マイクロ波および可視光領域に至る多様な波長領域で、有効誘電率と有効透磁率がいずれも負の値を有するようにすることで負の屈折率を有する負屈折率メタ物質が開発されてきた。しかし、反対の極限である正の高屈折率を有するメタ物質に対する研究は、理論的な実現可能性に焦点を当てたまま比較的不十分に研究された。従来の研究のうち、分離されたリング共振器において電気的な共鳴を活用する接近法が屈折率の増加を示したが、そのような設計は、そもそも狭い周波数帯域で高屈折率を有する。そのメタ物質は、共鳴周波数近傍で強い分散特性を示し、単に狭い周波数領域でのみ所望の屈折率を維持する。サブ波長(波長以下)のキャパシタ(蓄電器)の配列からなるメタ物質が広帯域で高い誘電率を有するように提案されたが、これも磁気透磁率値を抑制する強い反磁性効果によって依然として問題があった。最近ようやく、この反磁性効果を低減させる広帯域高屈折率メタ物質が理論的に提案された。しかし、その提案された構造も、それが持つ三次元的な特徴によって実現が容易でなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記の問題を改善するためのものであって、分極および磁化の程度が意図的に調節された屈折率の非常に高いメタ物質を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、誘電体基板と、前記誘電体基板に形成され、一定のギャップを形成する複数の単位格子からなる伝導層とを含み、所定の周波数区間で屈折率が前記基板の屈折率以上である高屈折率メタ物質が提供される。
【0006】
本発明にかかる高屈折率メタ物質は、所定の周波数区間で屈折率が35以上であり得、所定の周波数区間で屈折率が前記基板の屈折率の10倍以上であり得る。
【0007】
本発明にかかる高屈折率メタ物質の伝導層の厚さは、所定の周波数区間での表面厚さ(skin depth)以下であり得る。
【0008】
本発明にかかる高屈折率メタ物質は、前記単位格子が互いに強くカップリングされるように、前記ギャップが調節できる。前記ギャップが前記伝導層の厚さに比べて狭くなり得る。また、前記単位格子が平行板キャパシタの領域(parallel plate capacitor regime)に属するように、前記ギャップが調節できる。
【0009】
前記単位格子は、I形状、四角形状態、六角形形状であり得る。前記単位格子は、等方性を有するように、前記単位格子は、回転対称構造を有することができる。その形態は、図15に示された形態であり得る。
【0010】
本発明にかかる高屈折率メタ物質は、前記伝導層の形成された誘電体基板が複数層積層された多層の高屈折率メタ物質であり得る。
【発明の効果】
【0011】
本発明にかかるメタ物質は、分極および磁化の程度が意図的に調節され、非常に高い屈折率を有する。また、柔軟な材質の基板を用いると、3次元物質を容易に覆うことができ、多様な分野への応用が可能である。
【0012】
高屈折率メタ物質は、かつては取得できなかった高い屈折率を有するため、メタ物質の領域だけでなく、電磁波経路の任意的制御のために、最近脚光を浴びている変形光学の領域まで適用可能である。特に、透明マント技術、高広角メタ物質レンズ、高密度共振器、超小型光素子などに対する研究の始発点となり得る。
【0013】
高屈折率メタ物質は、マイクロ波、ラジオ波、近赤外線および可視光線などの低周波数帯域への拡大適用が可能である。また、高屈折率メタ物質は、波長以下のスケールの非常に小さい物体を区分するイメージングシステムの開発に大きい役割を果たすものと期待される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明にかかる高屈折率メタ物質の一実施形態の斜視図である。
図2図1に示された高屈折率メタ物質の基本構成単位を示す斜視図である。
図3】製造されたメタ物質の写真である。
図4】0.33THzの周波数で1層のメタ物質周辺の電場分布を計算した結果を示す図である。
図5】0.33THzの周波数で1層のメタ物質周辺の磁場分布を計算した結果を示す図である。
図6】高屈折率メタ物質の有効誘電率、透磁率を示す図である。
図7】高屈折率メタ物質の屈折率およびFOM値を示す図である。
図8】多層の高屈折率メタ物質の有効誘電率、透磁率を示す図である。
図9】多層の高屈折率メタ物質の屈折率およびFOM値を示す図である。
図10】多層の高屈折率メタ物質の伝送および反射スペクトルおよびバンド構造を示す図である。
図11】高屈折率メタ物質のギャップ間隔に応じて屈折率および屈折率の最大値が現れる周波数の変化を示す図である。
図12】高屈折率メタ物質の周波数に応じた屈折率の変化を示す図である。
図13】高屈折率メタ物質の製造過程を説明するための図である。
図14】2次元的に等方性の高屈折率メタ物質の屈折率を示す図である。
図15】等方性の高屈折率メタ物質の基本構成単位の他の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付した図面を参照して、本発明にかかる高屈折率メタ物質を詳細に説明する。以下ではテラ波領域を例に挙げて説明したが、マイクロ波、ラジオ波、近赤外線および可視光線などの低周波数帯域に拡大可能である。
【0016】
図1は、本発明にかかる高屈折率メタ物質の一実施形態の斜視図であり、図2は、図1に示された高屈折率メタ物質の基本構成単位を示す斜視図である。図1図2を参照すれば、本発明にかかる高屈折率メタ物質の一実施形態は、一対の誘電体基板1、3と、一対の誘電体基板1、3の間に形成された複数の単位格子2からなる伝導層とを含む。
【0017】
図2において、Kは入射するテラ波の偏光方向を示す。使用された基板1は、ポリアミド(屈折率n=1.8)であり、伝導層としては、(若干のクロム上に製作された)金またはアルミニウムを使用した。製作された大面積(2×2cm)の柔軟性メタ物質を図3に示した。顕微鏡写真とその拡大写真から確認できるように、多層の場合には、層間の精巧な整列があることが分かる。基板として柔軟なポリアミドが使用されたため、図3に挿入された写真から分かるように製作されたメタ物質も非常に柔軟である。
【数(1)】
【0018】
数(1)で定義される基本構成単位間のギャップ幅(g)は、有効誘電率を増加させるのに非常に重要な役割を果たす。薄いI字形状の金属パッチ構造の場合、ギャップ幅に応じて弱くカップルされた領域および強くカップルされた領域で互いに異なる漸近的特性(asymptotic behavior)を示す。強くカップルされた領域では、ギャップが近くなるにつれ、互いに反対の電荷を引き寄せるため、数多くの表面電荷がキャパシタ(I字形状を個別の蓄電池と称する)の各腕に蓄積される。キャパシタの角に蓄積された電荷はおびただしく大きいダイポールモーメントを作り、その大きさは数(2)に示すようにギャップ幅に反比例する。
【数(2)】
このおびただしい電荷蓄積は、単位格子の内部におびただしいダイポールモーメントを作り(または大きい偏曲密度)、窮極的に大きい有効誘電率を導き出す。反面、弱くカップルされた領域では、電荷の量が、ギャップ幅が減少するうえで数(3)に示すような二次関数の関係を有する。
【数(3)】
【0019】
ギャップ幅の減少に伴って有効誘電率を増加させることができるが、大きい屈折率を得るためには、依然として反磁性効果を低減させる必要がある。薄い厚さを有するI字形状の金属面は、その薄い厚さのために、回転電流が生じ得る面積を最小化し、結果的に、反磁性を最小化する効果を有する。この理論的な議論を実際に実現するためには、メタ物質がテラ波領域での表面厚さ(skin depth、100nm)以下の厚さを有する薄い膜に製作されなければならない。高屈折率メタ物質の物理学的背景を検証するために、1層のメタ物質が0.33THzの周波数でその周辺にどのような電気および磁場分布を有するかを計算した結果を図4図5にそれぞれ示した。前述のように、電場は単位構造間隔の間に強く集束する様子を示し、磁場は、金属の体積が非常に小さいため、単位構造に深く透過することが分かる。
【数(4)】
【数(5)】
【0020】
提案されたメタ物質で大きい双極子モーメントと弱い反磁性がどのように現れるかを定量化するために、有効物質定数抽出法を利用した。この方法を通じて、屈折率nとインピーダンスz(あるいは同じ意味を有する誘電率( 数(4)に示す)と透磁率( 数(5)に示す)、Zは真空のインピーダンスを意味する)を散乱パラメータから求めた。図6に示されるように、強力な電気共振現象が現れる0.504THzでは583の誘電率を、静電場に近い現象が現れる低周波数領域では122の誘電率が現れる。これらは、ポリイミドフィルムの誘電率である3.24よりはるかに大きい値である。
【0021】
透磁率の場合には、誘電率とは異なり、強い電気共振現象がある周波数領域近傍を除いては、ほぼ1に近い大きさを有する。単に強力な電気共振周波数近傍でのみこれに伴う弱い磁性反共振現象が観測される。図7に示されるように、反磁性を最小化すると同時に誘電率を極大化することにより、屈折率は0.516THzで最大値27.25を有し、準静電領域では11.1の値を有する。このメタ物質の厚さ(2.45mm)はテラ波の有効波長範囲内に属するため、均質化理論と有効物質定数を定義するための条件によく符合する。分析の一貫性のために、メタ物質の実際の厚さを用いて有効屈折率などを抽出した。しかし、これにより、実際の有効屈折率は、メタ物質の実際の厚さを用いて抽出した屈折率より小さい値を有する。これは、単一層のメタ物質の有効厚さがモードの減殺程度で決定されるからである。
【0022】
有効屈折率が増加するのを実験的に測定するために、0.1〜1.5THzの周波数範囲でTHz時間領域分光法を利用した。すべてのサンプルは、後述のように、通常のマイクロおよびナノリソグラフィ技術を利用して製作した。THz時間領域実験で信頼性のある複素数屈折率抽出のためにサンプルに透過された電磁場信号(transmission)に繰り返しアルゴリズムを適用した。次に、THz時間領域の測定から抽出された複素数屈折率は、S−媒介変数抽出方法を利用して数学的に得られた屈折率と比較した。物質媒介変数の不確実性を考慮することは、シミュレーションとギャップの距離測定誤差を補正するのに用いられ、図7に示されるように、実験的に得られた複素数屈折率は、シミュレーションされた屈折率と見事に一致した。単層のメタ物質は、0.522THzで最高屈折率(n=24.34)を有し、準静的限度(quasi−static limit)で11.18の屈折率を有すると測定された。単層のメタ物質での損失は、FOM(FOMは、figure of meritの略字で、電磁波がメタ物質を通る時、エネルギー損失がどれほど起こるかが容易に分かる尺度で、Re(n)/Im(n)で定義される。FOMが高いほど損失が小さい)によって定量化され、FOMの実験および計算値は図7から確認することができる。大部分の周波数領域、特に、電気的共鳴以下の低周波数領域において、FOMは10を超え、ピーク値は100を超える。
【0023】
発明者らは、これまで屈折率増加の可能性を単層のメタ物質で実験的に示した。これからは3次元で高屈折メタ物質を取得する方向で行われる。物質のバルク特性(物質の概念を利用するために2次元フィルムから3次元に拡大する)を調べるために、5層までを含む準3次元高屈折メタ物質を製作してテストをした。小さい層間間隔(1.62μm)を有している5層の高屈折メタ物質で計算または測定された誘電率、透磁率、複素数屈折率とFOMは図8図9に示し、シミュレーション値とよく符合した。THz時間領域測定法と媒介変数抽出法から最高屈折率33.22という値を0.851THzで得ることができた。興味深いことに、屈折率は、高周波数領域で急激に低下せず、FWHM(full width at half maximum)が1.15THzと、非常に広帯域にわたって高屈折率を示すことを確認した。ここでは、すべての有効屈折率がメタ物質の平面に垂直に入射する電磁波で測定された値であるが、本実験に用いられた高屈折メタ物質は入射角の変化に大きく影響されない。入射角に応じた屈折率の変化が大きくないのは、入射した磁場方向で有効透磁率に対する依存度が弱いからである。
【0024】
準−3次元メタ物質で存在する多層間のカップリングは、単層の構造と比較すると、屈折率と透過スペクトルで顕著な差をもたらす。層数による影響をより深く理解するために、発明者らは、バンド構造(band structure)を分析し、分散関係(dispersion relation)を図10に示した。層間のカップリングとそれに伴う透過スペクトルの変化を明確に調べるために、単位格子(unit cell)の厚さ(d=12.2μm)は、高い屈折率のために設計されたサンプルより意図的に増やした。そのバンド構造は、z方向に完璧に周期的なメタ物質、すなわち、極限の場合を示す。有効変数説明(effective parameter description)と共に、0.833および1.734THzのバンドギャップは、負の有効誘電率領域に対応する。図10に明確に示されるように、このバンドギャップに相当する透過(透過率)は、レイヤの個数に応じて次第に減少する。これは、バンドギャップが形成されていくことを意味する。バンドギャップの形成と共に、透過率の最高点(peak)がスペクトルに現れるが、これは、様々な方法で解釈できる。均一な薄膜からみると(From a homogeneous slab description)、このメタ物質はファブリペローエタロン(Fabry−Perot etalon)で扱い可能である。往復あたりの位相遅延は2πの負でない整数倍でなければならず、薄膜の透過率は、数(6)に示す条件
【数(6)】
が満足される時に最大化される。ここで、fは透過率最高点の周波数であり、pは負でない整数、そして、cは光速を示す。ミクロ的な観点からみると、透過率最高点は、メタ物質薄膜のFファブリペローエタロン共振と位相整合されるBloch−likeなモードである。例えば、2層のメタ物質から観察される単一(single)透過率最高点は、数(7)に示す正規化された波数(wavenumber)
【数(7)】
のブロッホ(Bloch)モードに相当する。多層構造のサンプルに一般化すると、透過されるモードは数(8)に示す正規化された波数(wavenumber)
【数(8)】
を有するブロッホ(Bloch)モードに相当し、ここで、pは0,...,N−1である。
【0025】
提案された高屈折率メタ物質の屈折率は、ギャップ(gap)に敏感な関数である。これを念頭においた時、屈折率をどれほど大きくすることができるか、自然に疑問となってくるはずである。この問題に対する答えを実験的に得るために、間隔を80nmから30μmまで変化させてメタ物質の屈折率を測定した。屈折率の測定値と計算された予測値(屈折率の最大値と近似停止限界(quasi−static limit:グラフにおいて、ピーク値前に周波数の低い領域でほぼ直線の区間を意味する))を図11の上段図表に、ギャップ幅を変数として最大値が発生する周波数を下段図表に表示した。近似停止限界(quasi−static limit)漸近経験式(empirical asymptotic formula)で求めた理論的な屈折率値を図表で表した。近似停止限界で屈折率の予測値は26.6であり、80nm間隔の場合、0.315THzから54.87まで増加した(実験値は近似停止限界で20を超えており、最大値は38.64であった。図12参照)。弱くカップルされた(coupled)領域では、単位格子間の蓄電容量(capacitance)は無視できるため、屈折率は数(9)のように近似可能である。
【数(9)】
【0026】
ここで、α、βは単位のない近似(fitting)係数である。しかし、間隔が減少するほど、単位格子間のカップリングによる蓄電容量によって支配される。結局、屈折率は、間隔の(1−β)/2次項の逆数に比例して目立つほど増加する(ただし、間隔の大きさが金属の厚さに比べて大きいという仮定下で)。追加的に、間隔が金属の厚さに比べて小くなると、有効屈折率は、平行板キャパシタ領域(parallel plate capacitor regime)に至った後、より速い速度で増加する。したがって、間隔または層間距離をさらに減少させることにより、屈折率をより大きくすることができる。間隔がさらに減少するほど、トマス−フェルミ長さ(Thomas−Fermi length scale)または量子トンネリングのスケールに至るまで継続して増加することが考えられる。間隔調整のほか、有効屈折率は基板の屈折率にも比例する。したがって、基板を屈折率がより高い物質で作ると、屈折率をより大きく増幅させ、はるかに高い有効屈折率を得ることができる。
【0027】
以下、図13を参照して、マイクロギャップを有するメタ物質の製造過程を説明する。
【0028】
ポリアミド溶液をシリコン基板10にスピンコーティングをした後、対流オーブンで180℃にてソフトベイクを進行する。キュアリング(高分子混和過程)過程は、石英チューブ炉(furnace)で、350℃、不活性ガス雰囲気(inert gas atmosphere)で進行する。この時、図13(a)に示されるように、ポリアミド溶液が溶けにくいポリアミドフィルム1となる。ポリアミドフィルム1上に陰性感光剤(negative photoresist)をスピンコーティングし、フォトリソグラフィ技術を利用してパターンを形成する。次に、クロムと金を順次に電子ビーム蒸着器を用いて蒸着した後、リフトオフ(lift−off)工程で、図13(b)に示されるように、I字形状に配列されたパターン2を形成する。図13(c)に示されるように、その上にさらにポリアミドフィルム3を作る工程を行う。ここで犠牲層として用いられたシリコンウエハ10から柔軟なポリアミド/金属/ポリアミド構造を引き離すことにより、柔軟なメタ物質を製作することができる。必要に応じて、図13(d)、図13(e)に示されるように、ポリアミド層3上に金属層4とポリアミド層5を形成する過程をさらに行った後、図13(f)に示されるように、シリコンウエハ10から柔軟なポリアミド1、3、5と金属2、4とからなる構造を引き離すことにより、柔軟な多層のメタ物質を得ることができる。マイクロギャップメタ物質の構造的な大きさは、顕微鏡、表面測定器、3次元測定器を用いて測定した。
【0029】
ナノギャップメタ物質は、電子ビームリソグラフィを用いたナノギャップ形成ステップを除いては、前記マイクロギャップメタ物質のような方法を利用して製作した。アルミニウムをポリアミド溶液のコーティングされたシリコン基板に蒸着し、リフトオフ(lift−off)工程でI字形状がついて配列されたパターンを形成する。大面積電子ビームリソグラフィでメタ物質のギャップだけを描いた後、電子ビームレジストをエッチングマスクとして用いてアルミニウムをエッチングし、ギャップを形成した。
【0030】
図14は、本発明の他の実施形態である2次元的に等方性の高屈折率メタ物質の屈折率を示す図である。等方性の高屈折率メタ物質を製作するために、図14に示されるように、2つの構造を製作した。1つは「田」字形状の構造であり、もう1つは六角形環形状のメタ物質である。等方性が得られる構造はこれに限定されるものではなく、回転対称構造を有する場合、等方性性質を有する。図14から分かるように、回転対称構造を有する2つの構造は、0〜90度の偏光光を入射させた時、ほぼ同じ反応を示す等方性を有する。図15は、等方性の高屈折率メタ物質の基本構成単位の他の実施形態を示す図である。
【0031】
以下、メタ物質の共鳴振動数を調節する方法について説明する。誘電率および透磁率だけを考慮した場合には、三角形、四角形あるいは六角形の薄い膜や、あるいは中空の三角、四角あるいは六角環構造が好適である。しかし、四角形環構造の空いた部分に2つの棒を連結して「田」字形状を作るように、環構造の空いた部分に連結棒を添加して、構造の内部に小さい環をさらに追加すると、メタ物質の誘導系数(インダクタンス)が変化して単位格子の共鳴周波数が変化する。小さくなった構造はより小さい誘導係数を有し、共鳴振動数はその平方根に反比例するので、結果的に、より大きい共鳴振動数を有する。これを用いてメタ物質の共鳴振動数を調節することができる。
【0032】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、上述した特定の実施形態に限定されず、請求の範囲で請求する本発明の要旨を逸脱しない範囲内で当該発明の属する技術分野における通常の知識を有する者によって多様な変形実施が可能であることはいうまでもなく、このような変形実施は、本発明の技術的思想や見込みから個別的に理解されてはならない。
【0033】
例えば、単位格子は金属層であると説明したが、電気伝導が可能なすべての物質を使用することができる。例えば、グラフェンを使用することができる。
【0034】
また、ポリイミドフィルムを基板として用い、金を使用して単位格子を製作したが、大部分の誘電体薄膜は基板として使用可能であり、大部分の金属もメタ物質の単位格子を作るために使用できる。
【0035】
さらに、上述した単位格子のほか、平面で単位格子を構成するすべての構造(三角形、四角形、六角形など)を非常に小さい間隔をおいて配列した構造はすべて高屈折率メタ物質を製作するのに使用可能である。
【符号の説明】
【0036】
1、3、5:誘電体基板
2、4:単位格子
10:シリコン基板(シリコンウエハ)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15