特許第5764772号(P5764772)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5764772
(24)【登録日】2015年6月26日
(45)【発行日】2015年8月19日
(54)【発明の名称】水電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 6/32 20060101AFI20150730BHJP
   H01M 6/36 20060101ALI20150730BHJP
   H01M 4/46 20060101ALI20150730BHJP
【FI】
   H01M6/32 A
   H01M6/36 A
   H01M4/46
【請求項の数】6
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-205450(P2014-205450)
(22)【出願日】2014年10月6日
【審査請求日】2014年10月15日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】510304760
【氏名又は名称】三嶋電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081271
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 芳春
(74)【代理人】
【識別番号】100162189
【弁理士】
【氏名又は名称】堀越 真弓
(72)【発明者】
【氏名】檀浦 ▲逸▼克
【審査官】 前田 寛之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−179294(JP,A)
【文献】 特開2014−002873(JP,A)
【文献】 特開2002−245998(JP,A)
【文献】 特許第5451923(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 6/32
H01M 4/46
H01M 6/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、該ハウジング内に設けられた電池セルとを備えており、使用時に前記ハウジング内に注水することによって作動する水電池であって、
前記電池セルは、マグネシウムよりイオン化傾向の小さい金属材料から構成される正極と、前記正極に電気的に接続された正極引出し電極と、マグネシウム合金材料から構成される負極と、該負極に電気的に接続された負極引出し電極と、前記正極の表面、又は前記正極と前記負極との間に設けられた吸水性及び保水性を有するシート材と、前記ハウジングに充填された水溶性の固体電解質とを備え、
前記固体電解質は、1種又は複数種のクエン酸塩から構成されており、
前記負極のマグネシウム合金材料は、マグネシウムに、アルミニウム成分が0.01%以下、マンガン成分が0.5〜1.3%含有されていることを特徴とする水電池。
【請求項2】
前記ハウジングは、蓋体と、側面に少なくとも1つの注水口が設けられた有底筒部とから構成され、
前記正極は、金属板から前記ハウジングに挿入可能な筒形に形成され、
前記負極は、一端に前記負極引出し電極を挿入するための穴を有し、前記正極に挿入可能な柱形に形成され、
前記シート材は、前記正極と前記負極との間に配置され、
前記固体電解質は、前記ハウジングの底部に充填されていることを特徴とする請求項1に記載の水電池。
【請求項3】
前記ハウジングは、少なくとも1つの注水口が設けられた蓋体と、箱本体とから構成され
記負極は、前記マグネシウム合金の板から構成され、
前記シート材は、多孔性樹脂シートであり、前記正極と前記負極との間に積層して配置されることを特徴とする請求項1又は2に記載の水電池。
【請求項4】
前記ハウジングは、少なくとも1つの注水口が設けられた蓋体と、箱本体とから構成され、
前記正極は、平板状の金属板から構成され、
前記負極は、前記マグネシウム合金の板から構成され、
前記シート材は、多孔性樹脂シートであり、前記正極の両面に積層して配置され、
前記正極と前記負極とは、上部において樹脂成形により一体化した電池セルを構成することを特徴とする請求項1又は2に記載の水電池。
【請求項5】
ハウジングと、該ハウジング内に設けられた複数の電池セルからなる電池セルユニットとを備えており、使用時に前記ハウジング内に注水することによって作動する水電池であって、
前記複数の電池セルは、電気的に直列又は並列接続されていることを特徴とする請求項又はに記載の水電池。
【請求項6】
前記複数の電池セルのうち互いに隣接する2つの電池セルの間には、共通の正極又は負極が設けられていることを特徴とする請求項に記載の水電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、正極及び負極にイオン化傾向の異なる異種電極を用い、水又は電解液を注入することによって、電気化学反応を起こし発電する水電池に関する。
【背景技術】
【0002】
イオン化傾向が互いに異なる異種電極を水や海水中に浸漬して起電力を得る水電池や海水電池は従来から良く知られており、この種の水電池や海水電池において、より高い性能を得るための提案も多数なされている。
【0003】
例えば、微量の水分の供給によって所定の起電力を発生させることのできる小型の水電池が提案されている(特許文献1)。
【0004】
特許文献1に開示された水電池は、正極電極板と負極電極板との間において、正極電極板の内面に当接する正極活物質の層と、正極電極板と負極電極板の内面との間に電気絶縁体の層とが介在し、正極電極板と負極電極板の両外面が外包シートによって被包されている。
【0005】
また、本出願人は、複数の電池セルを有し、長期間の保存ができ、非常用電源として使用可能な水電池を提案した(特許文献2)。
【0006】
特許文献2に開示された水電池の各電池セルは、正極を構成する炭素化布と、炭素化布に電気的に接続された正極引出し電極と、炭素化布に密着して設けられた塩含有布と、塩含有布に密着して設けられた吸水性を有する紙シートと、紙シートに密着して設けられていると共に負極を構成しており、正極よりイオン化傾向が高い材料で形成された金属板と、金属板に電気的に接続された負極引出し電極と、炭素化布、正極引出し電極、塩含有布、紙シート、金属板及び負極引出し電極を互いに圧着する収縮カバー部材とを備えており、塩含有布は、複数層織綿布に塩を含浸させた布で構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2011−222236号公報
【特許文献2】特許第4759659号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来の水電池は、例えば負極としてマグネシウム金属が使用されている水電池の場合、電気化学反応で生じた水酸化マグネシウムが負極の表面に析出するため、電解水の濃度が低い場合には、正負電極間での電気化学反応は非常に緩慢になり起電力が低下し、一方、電解水の濃度が高い場合には、正負電極間での電気化学反応は急激に起こり、負極の表面に析出した水酸化マグネシウムにより新たな電気化学反応が阻害されるという問題点があった。
【0009】
また、特許文献1の水電池は、所要の起電力を速やかに生じさせることができるが、それを長時間にわたって維持することができないという問題点があった。
【0010】
なお、近年では災害などの非常時用の緊急電池として、長期間の保存が可能であり、災害等の緊急時に水等の液体を注入するだけで発電できる水電池が期待されている。また、使用便利の観点から市販の乾電池と同じ形状を有する水電池も期待されている。
【0011】
従って、本発明の目的は、より大きな起電力を素早い立ち上がりで得ることができ、より長時間にわたって安定した放電を維持できる水電池を提供することにある。
【0012】
本発明のさらに他の目的は、低コストで容易に製造することができ、使用が簡単であり、かつ携帯に便利な水電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明によれば、ハウジングと、ハウジング内に設けられた電池セルとを備えており、使用時にハウジング内に注水することによって作動する水電池であって、電池セルは、マグネシウムよりイオン化傾向の小さい金属材料から構成される正極と、正極に電気的に接続された正極引出し電極と、マグネシウム合金材料から構成される負極と、負極に電気的に接続された負極引出し電極と、正極と負極との間に設けられた吸水性及び保水性を有するシート材と、ハウジングに充填された水溶性の固体電解質とを備え、固体電解質は、1種又は複数種のクエン酸塩から構成されている。
【0014】
このように本発明の水電池によれば、固体電解質として1種又は複数種のクエン酸塩を用いることで、より大きな起電力を素早い立ち上がりで得ることができ、長時間にわたって安定した放電を維持できる。
【0015】
負極のマグネシウム合金材料は、マグネシウムに、アルミニウム成分が0.01%以下、マンガン成分が0.5〜1.3%含有されていることが好ましい。これにより、長時間にわたって安定した放電を維持することができる。
【0016】
ハウジングは、蓋体と、側面に少なくとも1つの注水口が設けられた有底筒部とから構成され、正極は、金属板からハウジングに挿入可能な筒形に形成され、負極は、一端に負極引出し電極を挿入するための穴を有し、正極に挿入可能な柱形に形成され、シート材は、正極と負極との間に配置され、固体電解質は、ハウジングの底部に充填されていることが好ましい。これにより、低コストで容易に製造することができ、使用が簡単であり、かつ携帯に便利な水電池を得ることができる。
【0017】
ハウジングは、少なくとも1つの注水口が設けられた蓋体と、箱本体とから構成され、正極は、平板状の金属板と、金属板の片面に密着して設けられた導電性不織布と、金属板と導電性不織布との積層体の両側に配置された絶縁シートとから構成され、負極は、マグネシウム合金の板から構成され、シート材は、多孔性樹脂シートであり、正極と負極との間に積層して配置されることが好ましい。これにより、電解質セルの容量を大きくすることができる。
【0018】
ハウジングは、少なくとも1つの注水口が設けられた蓋体と、箱本体とから構成され、正極は、平板状の金属板から構成され、負極は、マグネシウム合金の板から構成され、シート材は、多孔性樹脂シートであり、正極の両面に積層して配置され、正極と負極とは、上部において樹脂成形により一体化した電池セルを構成することが好ましい。これにより、電池セルの交換が容易にできる。
【0019】
ハウジングと、ハウジング内に設けられた複数の電池セルからなる電池セルユニットとを備えており、使用時にハウジング内に注水することによって作動する水電池であって、複数の電池セルは、電気的に直列又は並列接続されていることが好ましい。これにより、水電池の起電力を向上することができ、長時間にわたって安定した放電を維持することができる。
【0020】
複数の電池セルのうち互いに隣接する2つの電池セルの間には、共通の正極又は負極が設けられていることが好ましい。これにより、電池セルユニットがコンパクトになり、コストの削減を図ることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の水電池は、固体電解質として1種又は複数種のクエン酸塩を用いることで、より大きな起電力を素早い立ち上がりで得ることができ、長時間にわたって安定した放電を維持できる。また、正極と負極との間に吸水性及び保水性を有するシート材を配置することにより、水電池の放置特性を改善することができ、非常時用の緊急電池として、災害等の緊急時に水等の液体を注入するだけで発電できる。
【0022】
また、市販の乾電池と同じ円筒形に形成することで、低コストで容易に製造することができ、様々の照明器具及び電子機器等に使用でき、かつ携帯に便利な水電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の第1の実施形態における水電池の構成を概略的に示す断面図である。
図2図1の実施形態における水電池の構成を示す分解斜視図である。
図3図1の実施形態における水電池の製造工程を示す図である。
図4】本発明の第2の実施形態における水電池の構成を概略的に示す斜視図である。
図5図3の実施形態における水電池の電池セルの構成を示す分解斜視図である。
図6】第2の実施形態に係る水電池の電池セルの他の構成を示す斜視図である。
図7】本発明の第3の実施形態における水電池の構成を概略的に示す図である。
図8図6の実施形態における水電池の電池セルの製造工程を示す図である。
図9】第3の実施形態に係る水電池の他の構成例を概略的に示す断面図である。
図10】各種の電池セルの構成における起電電流の差異を示す図である。
図11】電解質の塩基の濃度における推定起電電流の差異を示す図である。
図12】電解質の塩基の濃度と起電電圧の関係を示す図である。
図13】電解質のpH値における推定起電電流の差異を示す図である。
図14】電解質のpH値と起電電圧の関係を示す図である。
図15】本発明の水電池と従来の水電池の単位面積の起電電流の推移を示す図である。
図16】各種の電解質における起電電圧の差異を示す図である。
図17】各種の電解質における単位面積の起電電流の差異を示す図である。
図18】電池セルユニットの他の構成例を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係る水電池の実施形態を、図を参照して説明する。
【0025】
図1は本発明の第1の実施形態における水電池100の構成を示しており、図2は水電池100の具体的な構造を詳しく示している。また、図3は水電池100の製造工程を示している。
【0026】
図1及び図2に示すように、本実施形態に係る水電池100は、ハウジング10と、マグネシウムよりイオン化傾向の小さい金属材料から構成される正極20と、正極に電気的に接続された正極引出し電極30と、マグネシウム合金材料から構成される負極40と、負極に電気的に接続された負極引出し電極50と、正極と負極との間に密着して設けられた吸水性及び保水性を有するシート材60と、ハウジングに充填された水溶性の固体電解質70とを備えている。ここで、正極20と、正極引出し電極30と、負極40と、負極引出し電極50と、シート材60とは、1つの電池セルを構成する。
【0027】
ハウジング10は、例えばプラスチック材料から上面が開口した有底円筒形状に形成された筒部10aと、その上面を閉止する蓋体10bとを備えている。筒部10aは、側面に少なくとも1つの注水口11が設けられている。また、筒部10aの底面に突出部が形成されている。また、筒部10aの外表面が導電材料からなる導電層12が被覆されている。
【0028】
正極20は、金属板からハウジング10の筒部10aに挿入可能な筒形に形成されている。正極20は、比較的に導電性が高くマグネシウムよりイオン化傾向の小さい材料、例えば高純度アルミ又は高純度銅から形成されている。本実施形態では、高純度銅による平板を用いている。
【0029】
正極引出し電極30は、銅等の導電性金属材料による形成され、正極20に電気的に接続されたものである。本実施形態では、薄い金属片を用い、導電性接着剤で正極20に接着し、上部が外側へ折り曲げてハウジング10の筒部10aの外面に電気的に接続するように形成されている。ハウジング10の筒部10aの底面の突出部が正極端子31となる。また、正極引出し電極30と正極20との接着部に防水処理が施される。
【0030】
負極40は、正極20よりイオン化傾向が高い材料、例えば高純度マグネシウム合金材料から形成されている。例えば、マグネシウム合金材料は、高純度マグネシウムに、亜鉛(Zn)成分が含有されておらず、アルミニウム(Al)成分が0.01%以下、マンガン(Mn)成分が0.5〜1.3%含有されている。この負極40は、正極20に挿入可能な円柱形に形成されている。また、負極40の一端に負極引出し電極50を挿入するための穴41が設けられている。
【0031】
負極引出し電極50は、銅等の導電性金属材料から形成されたものであり、本実施形態では、負極端子としての円板部51と、この円板部51に垂直して配置された円柱部52とから構成さている。円板部51は、蓋体10bの外面に形成された凹部に嵌入可能である。円柱部52は、負極40の穴41に挿入し、負極40に電気的に接続されるように構成されている。また、円柱部52の表面には、負極導電層53が形成されている。
【0032】
シート材60は、吸水性及び保水性を有する不織布から構成されている。このシート材60は、正極20と負極40との間に設けられている。
【0033】
固体電解質70は、クエン酸塩類物質の粉体であり、ハウジング10の底部に充填されている。固体電解質70として、例えば、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、クエン酸アンモニウム、クエン酸鉄(III)アンモニウム等を用いることができる。なお、上記クエン酸塩のうち2種類を所定の割合で混合して用いても良い。例えば、クエン酸ナトリウムとクエン酸鉄(III)アンモニウムとの混合物、又はクエン酸カリウムとクエン酸鉄(III)アンモニウムとの混合物を用いても良い。
【0034】
水電池100の製造工程は、図3に示すように、正極側においては、正極20用金属板を形成した後、正極引き出し電極30を導電性接着剤で正極20に接着する。次いで、正極引き出し電極30の接着部を防水処理する。次いで、正極20を円筒形に加工し、正極引き出し電極30の上部を外側へ折り曲げる。ハウジング側においては、樹脂製の筒部10aの側面に注水口11を形成し、筒部10aの外表面に導電材料からなる導電層12を塗装(又は蒸着)等方法で被覆する。次いで、筒部10aの内側の底面に絶縁紙Pを配置する。そして、円筒形に加工された正極20をハウジング10の筒部10a内に挿入する。次いで、固体電解質70をハウジング10の筒部10aに充填する。一方、負極側においては、円柱状に形成された負極40の一端に穴41を形成する。また、負極引出し電極50の円柱部52の表面に負極導電層53を形成する。次いで、負極引出し電極50の円板部51を蓋体10bの凹部に嵌入し装着する。次いで、円柱部52を負極40の穴41に挿入することで負極組み立て品を構成する。次いで、負極40の表面にシート材60を巻き付ける。次いで、シート材60が巻かれた負極組み立て品を正極20の内側に挿入し、ハウジング10を密閉させる。最後に、ハウジング10の外表面に樹脂フィルム等からなる絶縁性の外装被覆層Fを被覆し、水電池100が完成する。
【0035】
以上説明したように、本実施形態の水電池100は、ハウジング10と、正極20と、正極引出し電極30と、負極40と、負極引出し電極50と、シート材60と、固体電解質70とを備えている。固体電解質70には、クエン酸塩を用い、負極40には、マグネシウムに、アルミニウム成分が0.01%以下、マンガン成分が0.5〜1.3%含有されているマグネシウム合金材料を用いることで、電気化学反応で生じた水酸化マグネシウムが負極の表面に析出することを抑制することができ、長時間にわたって安定した放電を維持することができる。また、市販の単1〜単4タイプの乾電池と同じ円筒形に形成することで、低コストで容易に製造することができ、様々の照明器具及び電子機器等に使用でき、かつ携帯に便利な水電池を提供することができる。
【0036】
図4は本発明の第2の実施形態における水電池100Aの構成を概略的に示している。図5は水電池100Aの電池セルの構成を示している。図4及び図5に示すように、水電池100Aは、ハウジング10Aと、正極20Aと、正極引出し電極30Aと、負極40Aと、負極引出し電極50Aと、シート材60Aと、固体電解質70と、導電層80Aとを備えている。ここで、正極20Aと、正極引出し電極30Aと、負極40Aと、負極引出し電極50Aと、シート材60Aとは、積層状の電池セルを構成する。固体電解質70は、水電池100と同様な材料を用いている。
【0037】
ハウジング10Aは、例えばプラスチック材料から上面が開口した箱本体10cと、その上面を閉止する蓋体10dとを備えている。箱本体10cの内側には、正極20A及び負極40Aを嵌入することができるスリットが設けられている。蓋体10dには、少なくとも1つの注水口11Aが設けられている。また、蓋体10dの上面には、正極端子12A及び負極端子13Aが設けられている。
【0038】
正極20Aは、比較的に導電性が高くマグネシウムよりイオン化傾向の小さい材料、例えば高純度アルミ又は高純度銅から形成された長方形の正極板21Aと、この正極板20Aの片面に密着して設けられた銅及びニッケルを含む導電性不織布22Aと、正極板20Aと導電性不織布22Aとの積層体の両側に配置された多孔性樹脂からなる絶縁シート23Aとから構成されている。本実施形態において、正極板20Aは銅板を用いている。
【0039】
正極引出し電極30Aは、銅等の導電性金属材料から板状に形成され、正極20Aの上部両面にそれぞれ設けられている。
【0040】
負極40Aは、正極20Aよりイオン化傾向が高い材料、例えば第1の実施形態の場合と同様の高純度マグネシウム合金材料から矩形板状に形成されている。この負極40Aは、正極20Aとほぼ同じ面積を有するように形成されている。
【0041】
負極引出し電極50Aは、銅等の導電性金属材料から板状に形成され、負極40Aの上部両面にそれぞれ設けられている。
【0042】
シート材60Aは、多孔性樹脂から、吸水性及び保水性を有する不織布から構成されている。このシート材60Aは、正極20Aと負極40Aとの間に密着して設けられている。
【0043】
導電層80Aは、正極20Aの上部とシート材60Aとの間、及び負極40Aの上部とシート材60Aとの間に密着して設けられている。
【0044】
以上説明したように、本実施形態の水電池100Aは、ハウジング10Aと、正極20Aと、正極引出し電極30Aと、負極40Aと、負極引出し電極50Aと、シート材60Aと、固体電解質70と、導電層80Aとを備えている。固体電解質70には、クエン酸塩を用い、負極40Aには、マグネシウムに、アルミニウム成分が0.01%以下、マンガン成分が0.5〜1.3%含有されているマグネシウム合金材料を用いて、さらに、積層状の電池セルを用いることで、電気化学反応で生じた水酸化マグネシウムが負極の表面に析出することを抑制することができると共に、長時間にわたって安定した放電を維持することができる。
【0045】
なお、水電池100Aは、1つの電池セルからなるものであるが、本発明はこれに限定されるものではない。複数の積層状の電池セルを用いて構成するようにしても良い。図6は複数の積層状の電池セルからなる電池セルユニットの例を示しており、同図(a)は1つの負極40Aと2つの正極20Aからなる電池セルユニットであり、(b)は2つの負極40Aと2つの正極20Aからなる電池セルユニットである。
【0046】
図7は本発明の第3の実施形態における水電池100Bの構成を概略的に示しており、同図(a)は上面から見た図であり、(b)は断面図であり、(c)は側面図である。図7に示すように、水電池100Bは、ハウジング10Bと、正極20Bと、正極引出し電極30Bと、負極40Bと、負極引出し電極50Bと、シート材60Bと、固体電解質70と、絶縁板80Bとを備えている。ここで、正極20Bと、正極引出し電極30Bと、負極40Bと、負極引出し電極50Bと、シート材60Bとは、上部において樹脂成形により一体化した電池セルを構成する。固体電解質70は、第1の実施形態の水電池100と同様な材料を用いている。
【0047】
ハウジング10Bは、例えばプラスチック材料から上面が開口した箱本体10cと、その上面を閉止する蓋体10dとを備えている。蓋体10dには、少なくとも1つ(例えば、2つ)の注水口11Bが設けられている。また、蓋体10dの上面には、電池セルを挿入する開口部が設けられている。
【0048】
正極20Bは、比較的に導電性が高くマグネシウムよりイオン化傾向の小さい材料、例えば高純度アルミ又は高純度銅から形成されている。本実施形態では、銅板を用いている。
【0049】
正極引出し電極30Bは、銅等の導電性金属材料から板状に形成され、正極20Bの上部両面に固着されている。
【0050】
負極40Bは、正極20Bよりイオン化傾向が高い材料、例えば第1の実施形態の場合と同様の高純度マグネシウム合金材料から長方形板状に形成されている。この負極40Bは、正極20Bとほぼ同じ面積を有するように形成されている。
【0051】
負極引出し電極50Bは、銅等の導電性金属材料から板状に形成され、負極40Bの上部両面に固着されている。
【0052】
シート材60Bは、多孔性樹脂からなる吸水性及び保水性を有するフィルムから構成されている。このシート材60Bは、正極20Bの表面に熱融着して設けられている。
【0053】
絶縁板80Bは、例えば樹脂材料から形成され、正極20B及び負極40Bの上部、正極20Bと負極40Bとの間に配置されている。
【0054】
図8は水電池100Bの電池セルの製造工程を示している。水電池100Bの電池セルの製造工程は、図8に示すように、正極板21Bの銅板の上部の所定範囲に導電性熱融着樹脂を塗布する。次いで、塗布した導電性熱融着樹脂の上に、正極引出し電極30Bを熱圧着加工にて固着する。次いで、正極板21Bの表面を覆うようにシート材60Bを熱融着して正極20B(正極組み立て品)を構成する。一方、負極40Bのマグネシウム合金板の上部の所定範囲に導電性熱融着樹脂を塗布する。次いで、塗布した導電性熱融着樹脂の上に、負極引出し電極50Bを熱圧着加工にて固着し、負極組み立て品を構成する。次いで、得られた正極組み立て品と負極組み立て品との間に絶縁板80Bを配置して積層する。次いで、正極組み立て品及び負極組み立て品の上部において樹脂成形にて固着し一体化する。最後に、樹脂成形部90Bを絶縁及び防水処理を行い、電池セルが完成する。
【0055】
以上説明したように、本実施形態の水電池100Bにおいて、正極20Bと、正極引出し電極30Bと、負極40Bと、負極引出し電極50Bと、シート材60Bとは、上部において樹脂成形により一体化した電池セルを構成することで、電気化学反応で生じた水酸化マグネシウムが負極の表面に析出することを抑制することができると共に、長時間にわたって安定した放電を維持することができる。また、電池セルの交換が容易にできる。本実施形態のその他の作用効果は、第1の実施形態の場合と同様であるため説明を省略する。
【0056】
なお、本実施形態の水電池100Bは、1つの電池セルからなるものであるが、本発明はこれに限定されるものではない。複数の電池セルからなる電池セルユニットを用いて構成するようにしても良い。図9において、3つの正極20Bと2つの負極40Bとからなる電池セルユニットを有する水電池100Cを示している。複数の電池セルからなる電池セルユニットを用いることで、電池容量が大きくなる。
【0057】
図10は各種の電池セルの構成における起電電流の差異を示している。同図中「SK」は1つ正極と1つ負極からなる電池セルであり、「DK」は1つ正極と2つ負極からなる電池セルであり、「TK」は2つ正極と3つ負極からなる電池セルであり、「DATK」は電極端子が並列に接続された2つ正極と3つ負極からなる電池セルであり、「円柱形」は円柱形乾電池の電池セルである。同図に示すように、電極端子が並列に接続された2つ正極と3つ負極からなる「DATK」タイプの電池セルの起電電流がもっとも大きい。
【0058】
図11は電解質の塩基の濃度における推定起電電流の差異を示している。同図に示すように、電解質の塩基の濃度が高いほど起電電流が大きくなる。図12は電解質の塩基の濃度と起電電圧の関係を示している。同図に示すように、電解質の塩基の濃度が高いほど起電電圧が低下する。図11及び図12に示す結果は「DK」タイプの電池セルを用いたものである。
【0059】
図13は電解質のpH値における推定起電電流の差異を示している。同図に示すように、pH値が12の場合、起電電流がもっとも大きい。pH値が7の場合、起電電流がもっとも小さい。図14は電解質のpH値と起電電圧の関係を示している。同図に示すように、pH値が7の場合、起電電圧がもっとも大きい。図13及び図14に示す結果は「DK」タイプの電池セルを用いたものである。
【0060】
図15は本発明の水電池と従来の水電池の単位面積の起電電流の推移を示している。同図に示すように、従来の水電池(旧負極)の場合、50時間で9mA/cm以下に降下した。これに対して、本発明の水電池(新負極)の場合、300時間以上でも14mA/cm以上に維持することができる。また、電極の表面に対して清掃を行うと、さらに長い時間を維持することができる。
【0061】
図16は各種の電解質における起電電圧の差異を示している。同図に示すように、クエン酸塩の場合、塩化ナトリウム及び塩化カリウムより高い起電電圧を得られる。図17は各種の電解質における単位面積の起電電流の差異を示している。同図に示すように、クエン酸塩の場合、塩化ナトリウム及び塩化カリウムより高い単位面積の起電電流を得られる。
【0062】
なお、前述した第3の実施形態の水電池100Bにおいて、図18に示すように、電池セルがハウジング10Bの蓋体10dと一体に形成されるようにしても良い。この場合、電池セルがハウジング10Bの蓋体10dと一体に形成されているので、電池セルの蓋体10dへの装着作業、及び装着部の防水処理が不要となり、密閉性を向上することができる。
【0063】
また、前述した実施形態の水電池100、100A、100B及び100Cにおいて、負極電極板の表面に対して防食処理を施すようにしても良い。これにより、電気化学反応で生じた水酸化マグネシウムが負極の表面に析出することを抑制でき、長時間にわたって安定した放電を維持することができる。
【0064】
前述した第2の実施形態の水電池100Aにおいて、正極20A、シート材60A及び負極40Aの積層体を互いに圧着し固定する固定部材をさらに備えるようにしても良い。例えば、固定部材としてテープ又は熱収縮チューブを用いて、正極20A、シート材60A及び負極40Aの積層体を互いに圧着し固定する。
【0065】
前述した第1の実施形態の水電池100において、正極20の内表面に導電性不織布を密着して設けるようにしても良い。この場合、集電効果を向上することができる。
【0066】
本発明は、上記の実施形態に限定されるものでなく、特許請求の範囲に記載された発明の要旨を逸脱しない範囲内での種々、設計変更した形態を技術的範囲に含むものである。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明は、災害等の緊急時に水等の液体を注入するだけで発電できる水電池を低コストで容易に製造し、かつ使用及び携帯の便利性を改良する目的に利用できる。
【符号の説明】
【0068】
10、10A、10B ハウジング
10a 筒部
10b、10d 蓋体
10c 箱本体
11、11A 注水口
12A 正極端子
13A 負極端子
20、20A、20B 正極
21A 正極板
30、30A、30B 正極引出し電極
40、40A、40B 負極
41 穴
50、50A、50B 負極引出し電極
51 円板部
52 円柱部
53 負極導電層
60、60A、60B シート材
70 固体電解質
80A 導電層
80B 絶縁板
100、100A、100B、100C 水電池
P 絶縁紙
F 外装被覆層
【要約】
【課題】より大きな起電力を素早い立ち上がりで得ることができ、より長時間にわたって安定した放電を維持できる水電池を提供する。
【解決手段】ハウジングと、ハウジング内に設けられた電池セルとを備えており、使用時にハウジング内に注水することによって作動する水電池であって、電池セルは、マグネシウムよりイオン化傾向の小さい金属材料から構成される正極と、正極に電気的に接続された正極引出し電極と、マグネシウム合金材料から構成される負極と、負極に電気的に接続された負極引出し電極と、正極の表面、又は正極と負極との間に設けられた吸水性及び保水性を有するシート材と、ハウジングに充填された水溶性の固体電解質とを備え、固体電解質は、1種又は複数種のクエン酸塩から構成されている。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18