(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5764791
(24)【登録日】2015年6月26日
(45)【発行日】2015年8月19日
(54)【発明の名称】ガラス用合紙とガラス板に付着した汚れの除去方法
(51)【国際特許分類】
D21H 19/20 20060101AFI20150730BHJP
D21H 11/14 20060101ALI20150730BHJP
B65D 85/86 20060101ALI20150730BHJP
B65D 57/00 20060101ALI20150730BHJP
C03C 23/00 20060101ALI20150730BHJP
【FI】
D21H19/20 C
D21H11/14
B65D85/38 R
B65D57/00 B
C03C23/00 A
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2011-54269(P2011-54269)
(22)【出願日】2011年3月11日
(65)【公開番号】特開2012-188785(P2012-188785A)
(43)【公開日】2012年10月4日
【審査請求日】2014年2月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】391064120
【氏名又は名称】長良製紙株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】304019399
【氏名又は名称】国立大学法人岐阜大学
(74)【代理人】
【識別番号】100085523
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 文夫
(74)【代理人】
【識別番号】100078101
【弁理士】
【氏名又は名称】綿貫 達雄
(74)【代理人】
【識別番号】100154461
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 由布
(74)【代理人】
【識別番号】100161403
【弁理士】
【氏名又は名称】喜多 静夫
(72)【発明者】
【氏名】野々村 修一
(72)【発明者】
【氏名】大橋 史隆
(72)【発明者】
【氏名】家田 利一郎
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 静男
【審査官】
中尾 奈穂子
(56)【参考文献】
【文献】
特開平07−101483(JP,A)
【文献】
特開2008−208478(JP,A)
【文献】
特開2001−196619(JP,A)
【文献】
特開2007−070752(JP,A)
【文献】
特開平09−292713(JP,A)
【文献】
国際公開第2007/034818(WO,A1)
【文献】
特開2002−311571(JP,A)
【文献】
特開昭57−077397(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D21B 1/00− 1/38
D21C 1/00−11/14
D21D 1/00−99/00
D21F 1/00−13/12
D21G 1/00− 9/00
D21H 11/00−27/42
D21J 1/00− 7/00
B65D 57/00
B65D 85/86
C03C 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
古紙を原料として抄造された合紙本体の表面に、フッ素コーティング皮膜を形成したことを特徴とするガラス用合紙。
【請求項2】
請求項1に記載のガラス用合紙を、積層した各ガラス板の間に挿入して運搬、保管、荷役を行う際に、前記ガラス用合紙からガラス板へ転写される不純物の汚れを、フッ素コーティング皮膜由来のフッ素を介在させた状態でガラス板表面に付着させ、その後、水で洗浄処理した場合に前記汚れをフッ素コーティング皮膜由来のフッ素の疎水性を利用してガラス板表面から剥離させ、洗い流すようにしたことを特徴とするガラス板に付着した汚れの除去方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高度な表面製が要求されるガラス板の間に挿入されるガラス用合紙に関し、特に、合紙からガラス板へ転写される汚れの低減、及びガラス板に付着した汚れの洗浄除去の向上を図ることができるガラス用合紙とガラス板に付着した汚れの除去方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、液晶や太陽光発電等に用いられるガラス板は高度な表面性が要求されているため、このようなガラス板を運搬、保管、荷役する際には、複数枚重ね合わせた各ガラス板の間にガラス用合紙を挿入し、ガラス板同士の接触による傷の生成を防いでいる。このようなガラス用合紙としては、既に種々のものが開発され実用に供されている(例えば、特許文献1、2を参照)。
【0003】
また、最近では更に付加価値を加えたものが提案されており、例えば、特許文献3に示されるように、合紙に水解性(ほぐれやすさ)をもたせてパルプ原料として再利用を図るようにしたものや、特許文献4に示されるように、表面に発泡性マイクロカプセルを含む塗工層を設けて擦れ傷のより一層の防止を図ったものがあり、いずれもガラス板同士の接触による傷の生成を防いでいる。
【0004】
一方、液晶デバイスや太陽電池等の需要が高まるのに従い、合紙の需要も大きくなってきており、コスト削減の観点から安価な古紙を利用してコストの低減が検討されている。しかし、古紙を用いた場合は、古紙に汚れや印刷インク等の不純物が含まれているため、これらの不純物が合紙からガラス板へ転写され汚れを発生させるという現象があった。そのため、品質を確保するには高品質なパルプ原料を用いることが望ましいが、コスト高になるという問題があった。
【0005】
また、ガラス板の場合は高度な表面性が要求されるため、最終的に洗浄処理を施して表面に付着した汚れを洗い落としている。この洗浄装置は大掛かりで設備コストが高いものであり、大量の洗浄水の使用は処理コストを高くし、処理時間も長くなるため、コスト削減や省エネルギーの観点から簡単な洗浄処理によって汚れを除去することが望まれている。しかし、本発明者の研究によれば、古紙を用いた場合は、合紙からガラス板へ転写される不純物の汚れの中にはアクリルアミドからなる炭素系粘着物が存在しており、この炭素系粘着物が洗浄処理ではうまく除去できないものであることを解明した。
【0006】
このように、古紙を利用して安価に製造することと、簡単な洗浄処理により汚れを除去することとは相矛盾しており、両者を満足できる合紙は現時点では存在していない。
従って、古紙を利用して安価に製造することができ、しかもガラス板へ転写された不純物の汚れも洗浄処理で簡単に除去することができる新たなガラス用合紙の開発が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−248409号公報
【特許文献2】特開2007−51386号公報
【特許文献3】特開2009−179379号公報
【特許文献4】特開2008−7172号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は前記のような問題点を解決して、古紙を利用して低コストで製造することができ、しかも、古紙に含まれた不純物が合紙からガラス板へ転写されて汚れを発生させることを低減することができ、また汚れが生じたとしても、その汚れを簡単な浄化処理によって確実に除去することができるガラス用合紙とガラス板に付着した汚れの除去方法を提供することを目的として完成されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するためになされた本発明は、古紙を原料として抄造された合紙本体の表面に、フッ素コーティング皮膜を形成したことを特徴とするガラス用合紙である。
【0010】
また、前記ガラス用合紙を、積層した各ガラス板の間に挿入して運搬、保管、荷役を行う際に、前記ガラス用合紙からガラス板へ転写される不純物の汚れを、
フッ素コーティング皮膜由来のフッ素を介在させた状態でガラス板表面に付着させ、その後、水で洗浄処理した場合に前記汚れを
フッ素コーティング皮膜由来のフッ素の疎水性を利用してガラス板表面から剥離させ、洗い流すようにしたことを特徴とするガラス板に付着した汚れの除去方法である。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明では、古紙を原料として抄造された合紙本体の表面に、フッ素コーティング皮膜を形成したので、古紙の利用により生産コストの低減化を図ることができ、また、古紙に含まれた不純物がガラス板へ転写されて汚れを発生させたとしても、その汚れをフッ素の疎水性を利用して簡単な浄化処理により容易に除去することができることとなる。
【0012】
また、請求項2に係る発明では、前記ガラス用合紙を、積層した各ガラス板の間に挿入して運搬、保管、荷役を行う際に、前記ガラス用合紙からガラス板へ転写される不純物の汚れを、
フッ素コーティング皮膜由来のフッ素を介在させた状態でガラス板表面に付着させ、その後、水で洗浄処理した場合に前記汚れを
フッ素コーティング皮膜由来のフッ素の疎水性を利用してガラス板表面から剥離させ、洗い流すようにしたので、洗浄処理により容易に除去することが可能で、効率よく安価にガラス用合紙の生産が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明のガラス用合紙を押し付けた後のガラス板表面を示す電子顕微鏡画像である。
【
図2】本発明のガラス用合紙を押し付けた後、洗浄処理したガラス板表面を示す電子顕微鏡画像である。
【
図3】従来例のガラス用合紙を押し付けた後のガラス板表面を示す電子顕微鏡画像である。
【
図4】従来例のガラス用合紙を押し付けた後、洗浄処理したガラス板表面を示す電子顕微鏡画像である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の好ましい実施の形態を示す。
本発明は、古紙を原料として抄造された合紙本体の表面に、フッ素コーティング皮膜を形成したことを特徴とするガラス用合紙である。
前記古紙は、新聞古紙や各種の印刷物古紙や各種の紙容器古紙などに代表されるが、パルプ古紙として使用されるあらゆる古紙を対象とするものである。これらの古紙を利用した場合は、インク由来の鉱油成分(有機成分)や自然分解で生じるリグノセルロース成分(有機系成分)由来の不純物の汚れが発生し、これがガラス板へ転写されて汚れを発生させると言われている。そして、前記汚れの発生がガラス用合紙の原料として古紙を利用することの阻害要因となっていた。
【0015】
一方、本発明者の研究によれば、この汚れの中で特にアクリルアミド(C
3H
5NO)からなる炭素系粘着物は、ガラス板に付着すると水による洗浄処理では除去が困難であることを解明した。そこで本発明者は、前記炭素系粘着物を簡単に除去できればガラス用合紙の原料として古紙を利用することが可能になると考え、フッ素の疎水性を利用することにより、ガラス板に付着している前記炭素系粘着物を水の洗浄処理で容易に剥離することができるとの技術思想に基づき、本発明を完成するに至ったのである。
即ち、合紙本体の表面にフッ素コーティング皮膜を形成することで、古紙に含まれた不純物が合紙からガラス板へ転写されるのを低減することができ、更に、汚れが付着したとしても、フッ素を介在させた状態でガラス板表面に付着していれば、その後、水で洗浄処理した際に前記汚れをフッ素の疎水性を利用してガラス板表面から容易に剥離して洗い流すことができることを解明した。
【0016】
前記フッ素コーティング皮膜は、例えば、ポリテトラフルオエチレン、フッ素樹脂誘導体、フッ素系界面活性剤の1種又は2種以上を、溶剤及びイオン水とともに混合して水溶性のフッ素樹脂乳化液(粘度:1500〜2500cps/20℃)を作成し、これを合紙本体の表面にスプレー処理や塗布処理を施したり、あるいは合紙本体をフッ素樹脂乳化液に浸漬処理するなどの任意の手法でコーティング処理を行い、形成することができる。
【0017】
次に、本発明のガラス用合紙を用いてガラス板に付着した汚れの除去方法について説明する。
前記のガラス用合紙は、積層した各ガラス板の間に挿入して使用に供され、この状態でガラス板が運搬、保管、荷役などが行われる。この時、合紙内の不純物がガラス板へ転写されて汚れを発生させるが、本発明ではガラス用合紙が古紙を原料として抄造されているため、不純物の汚れの中にはアクリルアミドからなる炭素系粘着物が存在している。本発明者は、この炭素系粘着物が洗浄処理ではうまく除去できないことを解明している。
そこで本発明では、合紙本体の表面にフッ素コーティング皮膜を形成しておき、汚れが該フッ素コーティング皮膜を通過してガラス板へ転写されるようにし、この結果、前記汚れはフッ素を介在させた状態でガラス板表面に付着することになる。その後、ガラス板を水で洗浄処理すると、フッ素は疎水性を有するため、前記汚れはフッ素の疎水性によってガラス板表面からから簡単に剥離され、洗い流されることとなる。
このように、不純物の汚れの中にアクリルアミドからなる炭素系粘着物が存在していても、フッ素の疎水性を利用することでガラス板から容易に剥離することが可能となる。従って、小規模の洗浄装置で、かつ短時間の洗浄処理によって汚れを除去することができ、コスト削減及び省エネルギーが図れることとなる。
【実施例】
【0018】
古紙を原料として抄造された合紙本体の表面に、フッ素コーティング皮膜を形成したガラス用合紙を準備した。
フッ素コート材は、ポリテトラフルオエチレン、フッ素樹脂誘導体、フッ素系界面活性剤、パラフィン系低沸点溶剤、マイナスイオン水を混合してなる水溶性のフッ素樹脂乳化液(ゆかわ株式会社製:FE−112)を使用し、これを合紙本体の表面にスプレーコーティングして、ガラス用合紙を成形した。
一方、ガラス板として7×7mmの太陽電池用ガラス基板(旭硝子株式会社製)を準備し、蒸留水で1時間にわたり超音波洗浄して表面の汚れを取り除いた。
【0019】
このガラス板上に前記ガラス用合紙を敷設し、上から2kgの重りを押し付けた。その後、合紙を取り除き、ガラス板の表面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し汚れの有無を確認した。また、分散型X線分析(EDX)を行うことにより、ガラス板に付着している汚れの種類を判別した。
電子顕微鏡で得られた画像を
図1に示すが、ガラス板上に汚れが付着していることがわかる。また、この汚れを分散型X線分析した結果、C、H、N、Oのスペクトルが分析されアクリルアミドからなる炭素系粘着物であることがわかった。更に、フッ素が混入していることも分析され、炭素系粘着物がフッ素を介在させた状態でガラス板表面に付着しているものと推察された。
【0020】
その後、ガラス板を更に蒸留水で20分間にわたり超音波洗浄し、再びガラス板の表面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察するとともに、分散型X線分析(EDX)を行った。なお、20分の洗浄処理は、通常の処理(1時間)に比べると、1/3である。
電子顕微鏡で得られた画像を
図2に示すが、洗浄処理で付着していた汚れが完全に除去されていることがわかる。また、分散型X線分析した結果は、C、H、N、Oのスペクトルは検出されず、更に、フッ素のスペクトルも一切検出されなかった。
【0021】
<比較例>
比較例として、古紙を原料として抄造されたガラス用合紙を準備し、実施例と同様に、超音波洗浄して表面の汚れを取り除いたガラス板上に比較例のガラス用合紙を敷設し、上から2kgの重りを押し付けた。その後、合紙を取り除き、ガラス板の表面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し汚れの有無を確認した。また、分散型X線分析(EDX)を行うことにより、ガラス板に付着している汚れの種類を判別した。
電子顕微鏡で得られた画像を
図3に示すが、ガラス板上に汚れが付着していることがわかる。また、この汚れを分散型X線分析した結果、C、H、N、Oのスペクトルが分析されアクリルアミドからなる炭素系粘着物であることがわかった。
【0022】
その後、ガラス板を更に蒸留水で20分間にわたり超音波洗浄し、再びガラス板の表面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察するとともに、分散型X線分析(EDX)を行った。電子顕微鏡で得られた画像を
図4に示すが、洗浄処理では繊維状の物質などの合紙由来と考えられる汚れを除去できていないことがわかった。また、分散型X線分析した結果は、C、H、N、Oのスペクトルが検出され、洗浄処理前の汚れがそのまま残っていることがわかった。
【0023】
以上の実施例からも明らかなように、本発明によれば古紙を利用できるので製造コストを低減することができ、また、表面にフッ素コーティング皮膜があるので、古紙に含まれた不純物がガラス板側へ転写されて汚れを発生させるのを低減することができることとなる。更には、汚れが生じたとしても、その汚れをフッ素の疎水性を利用してガラス板表面から剥離するようにしたので、簡単な浄化処理によって確実に除去できるという優れた効果を奏することができ、ガラス用合紙に古紙の利用を実現するという新たな道を開くものである。