(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5764797
(24)【登録日】2015年6月26日
(45)【発行日】2015年8月19日
(54)【発明の名称】水の電気分解実験用キット
(51)【国際特許分類】
G09B 23/24 20060101AFI20150730BHJP
C01B 3/04 20060101ALI20150730BHJP
【FI】
G09B23/24
C01B3/04 R
【請求項の数】3
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2014-546971(P2014-546971)
(86)(22)【出願日】2013年11月11日
(86)【国際出願番号】JP2013080391
(87)【国際公開番号】WO2014077211
(87)【国際公開日】20140522
【審査請求日】2014年11月14日
(31)【優先権主張番号】特願2012-250512(P2012-250512)
(32)【優先日】2012年11月14日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】512275628
【氏名又は名称】杉山 正明
(74)【代理人】
【識別番号】100088214
【弁理士】
【氏名又は名称】生田 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】杉山 正明
【審査官】
宇佐田 健二
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭62−028878(JP,U)
【文献】
特開2011−131197(JP,A)
【文献】
特開平11−148978(JP,A)
【文献】
特開2009−030152(JP,A)
【文献】
実開昭52−062146(JP,U)
【文献】
実公昭38−007022(JP,Y1)
【文献】
実開昭56−176041(JP,U)
【文献】
実開昭59−161168(JP,U)
【文献】
実開昭59−060673(JP,U)
【文献】
実開昭49−054548(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09B 23/24
C01B 3/04
C25B 9/00
G01N 27/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水の電気分解実験用キットであって、
少なくとも一つの電気分解反応槽と、
一つの気体吸引手段とを含み、
該電気分解反応槽は、下端が開口し、上端が密閉手段で密閉された透明の筒状体と、該筒状体の内部に配置された電極と、該電極に接合されたリード線とを有し、
該密閉手段は、テーパーオス部及びテーパーメス部を有する三方活栓または二方活栓を有し、
該リード線は、該密閉手段を気密的に貫通してその一部が該筒状体の外部に延在し、少なくとも該筒状体内部で延在する部分が熱収縮チューブまたは樹脂で被覆され、かつ、該電極との接合部が接着剤で被覆され、
該気体吸引手段は、該三方活栓または二方活栓のテーパーメス部に着脱自在に嵌合できるように構成されている
ことを特徴とする水の電気分解実験用キット。
【請求項2】
水の電気分解実験用キットであって、
連結部を有する一対の電気分解反応槽であって、該連結部を介して相互に流体連通した一対の電気分解反応槽と、
該連結部と流体連通したチューブと、
該チューブと流体連通した液だめと、
一つの気体吸引手段とを有し、
該一対の電気分解反応槽のそれぞれは、下端が該連結部の一端と流体連通的に連結され、上端が密閉手段で密閉された透明の筒状体と、該筒状体の内部に配置された電極と、該電極に接合されたリード線とを有し、
該連結部は、該一対の電気分解反応槽を同一平面内で相互に並列に保持するように構成され、
該密閉手段は、テーパーオス部及びテーパーメス部を有する三方活栓または二方活栓を有し、
該リード線は、該密閉手段を気密的に貫通してその一部が該筒状体の外部に延在し、少なくとも該筒状体内部で延在する部分が熱収縮チューブまたは樹脂で被覆され、かつ、該電極との接合部が接着剤で被覆され、
該気体吸引手段は、該三方活栓または二方活栓のテーパーメス部に着脱自在に嵌合できるように構成されている
ことを特徴とする水の電気分解実験用キット。
【請求項3】
上記密閉手段が、貫通孔を有するゴム栓又は樹脂栓と、テーパーオス部及びテーパーメス部を有する三方活栓又は二方活栓とを含み、該テーパーオス部が該貫通孔に嵌合されていることを特徴とする請求項1〜2のいずれか1項に記載の水の電気分解実験用キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中学・高校等の教育現場で生徒が自ら容易、安全、かつ気楽に使用できると同時に、実験結果が、水の電気分解に関するファラデーの法則の理論値にできる限り近くなるような水の電気分解実験用キットに関する。
【背景技術】
【0002】
中学・高校等の教育現場で生徒にファラデーの法則を実体験させるために使用する水の電気分解の実験用具としては、優れた用具であると一般的に言われ、すでに150年近くも広く使われているホフマン(A. W. Hofmann)の電気分解実験用具がある。
【0003】
この実験用具は、内部が流体連通したH字形を有する比較的細いガラス管から構成され、H字形のそれぞれのI字の部分に相当する細いガラス管の下端付近の内側に電極を配置し、上端には、開閉自在の通気路を具備する。
【0004】
一方、ホフマンの電気分解実験用具の簡易型として、全体としてはホフマンの電気分解実験用具の場合のようにH字形のそれぞれのI字の部分に相当する細いガラス管の上端をゴム栓で密閉したH型電気分解用具と称するものもある。
【0005】
ホフマンの電気分解実験用具およびH型電気分解用具のどちらにおいても、I字の部分に相当する二つのガラス管の下端から約5cm上方の位置にI字の部分に相当する二つのガラス管の相互を流体連通させる中央連結管があり、その中央連結管の中央付近にはノズルが具備され、そのノズルに柔軟に曲がるセントラルチューブとそれに続いて液だめが接続されており、このセントラルチューブおよび液だめは、電解液をI字の部分のガラス管および中央連結管に満たし、あるいはI字の部分のガラス管内に集積する気体によって押し下げられる電解液を当該ガラス管内から受け入れて貯留する役割をする。
【0006】
これらの用具は、いずれの場合も、その使用時において、H字形の細いガラス管全体の中を電解液で完全に充満させた後、ガラス管全体を垂直に保持しつつ電極に通電して、電気分解によりI字の部分に相当する細いガラス管の下端近くに配置された電極の表面で水素ガス又は酸素ガスが生成して、それが気泡となりI字の部分に相当する細いガラス管内を充満している電解液中を上昇し、そのガラス管内の電極の上方に位置する電解液の液面を押し下げながら集積する全プロセスを直接観察することができ、また、生成した水素ガスと酸素ガスとの体積からファラデーの法則を確認することができるように構成されている。
【0007】
なお生成した水素ガスと酸素ガスとの体積は、液だめおよびセントラルチューブを上下させ、その液面と当該ガラス管内液面の高さを一致させることによって、ガラス管内に集積した気体の圧力を大気圧に等しくした後、測定する。
【0008】
ホフマンの電気分解実験用具は、電極として高価な白金板が使用されているので、用具が高価なものとなり、また、H字型の複雑な構造を有するガラス製であり、破損し易く、中学・高校等の教育現場において生徒自らが気楽に使用することを妨げており、更には、H字形の複雑なガラス管から構成されているために、実験終了後にその内部を洗浄しにくいという難点もある。
【0009】
廉価な金属を電極に用いた簡易な電気分解実験用具が一部提案され、また市販されているが、そのような場合の金属は、一般的には白金と比較すると酸化されやすく、陽極で起こる酸化反応として、酸素ガスが生成する反応だけが起こるのではなく、金属が酸化されて金属イオンとなって電解液中に溶出する反応も起こるため、集積した水素ガス、酸素ガスの体積からファラデーの法則を確かめるという実験の目的を達せられない。また、金属に代わる電極材料として炭素棒が使われることもあるが、陽極で炭素棒の表面が、電気分解反応の過程で破壊されるので、好ましいとは言えない。
【0010】
廉価なステンレスを電極に用いる場合、安全な硫酸ナトリウムや硫酸カリウムといった中性溶液を電解液としたときには、陽極でステンレス中の鉄が酸化されて鉄イオンになって電解液中に溶出してしまうが、水酸化ナトリウム水溶液のような強塩基性溶液を電解液としたときには、陽極での鉄の酸化は抑制されるので、ステンレス電極は、簡易な電気分解実験用具(非特許文献1,非特許文献2)の電極として使われるが、強塩基性溶液を電解液として電気分解実験操作することは、生徒にとっては危険な面もある。
【0011】
ホフマンの電気分解実験用具で電気分解の実験をする際には、電解液として取り扱い上危険な水酸化ナトリウム水溶液が使用されることが多い。その理由は、取り扱い上安全な硫酸ナトリウムや硫酸カリウムといった中性溶液より、水酸化ナトリウム水溶液の方が電気伝導度が大きいので、電流も多く流れ、水素、酸素の発生速度も速くなるからであり、一方、電解液として希硫酸を使用する例も一部あるが、この場合は、陽極側で過酸化水素が生成するので好ましくない。
【0012】
なお、ホフマンの電気分解実験用具の白金電極に接合するリード線(銅線)は、そのまま電解液中で浸漬している状態では、陽極で酸素が生成する酸化反応ではなく、リード線の内部の銅が酸化されて電解液中へ銅イオンとなって溶出する反応が起こる結果、集積した水素ガス、酸素ガスの体積からファラデーの法則を確かめるという実験の目的を達せられない。それを防ぐために、ホフマンの電気分解実験用具では、電解液中のリード線をガラス管でシールして、銅と電解液が接触することを防ぐ構造となっている。
【0013】
簡易型の水の電気分解用具(非特許文献1,非特許文献2)の場合は、ホフマンの電気分解実験用具のように電解液中のリード線をガラス管でシールするというような複雑な構造にするのではなく、棒状のステンレス電極が、電解液を収容する容器の底面に嵌められたゴム栓を貫通して円筒状体の内部に延在するように構成され、電解液で完全に内部が充満され、垂直に保持された下端全面開放の円筒状体(例えば、試験管又はガラス管)が、電極を上から覆いかぶせるように配置されている構造になっているのが一般的であり、この場合は、電極に接合するリード線は容器の外部にあって電解液とは直接接することがないので、陽極側のリード線の金属が電解液中に溶出することに起因する課題は避けることができる。また、ステンレス線を電極として使うこともあり、この場合は、ステンレス線にそのまま電解液中でリード線の役割もさせ、それを管外へ延在させることができる。
【0014】
ホフマンの電気分解実験用具、簡易型の水の電気分解用具(非特許文献1,非特許文献2)のいずれの場合も、その使用時において、特に電解液として強塩基性で危険な水酸化ナトリウム水溶液を使う場合には、電解液で内部が充満され、垂直に保持された円筒状体の下端側に嵌められたゴム栓が緩んだり、あるいは外れたりすると、電解液は下方に流れ出し、机上に広がるので、安全のため、実験用具の下にバットを置く必要がある。
【0015】
さらにホフマンの電気分解実験用具を使用するとき、(1)該ガラス管の空気を排出させながら当該試験管内を電解液で完全に充満させる操作では電解液がオーバーフローしやすい;(2)該ガラス管に集積した気体(水素、酸素)の性質を確かめるために外に取り出す操作が難しく、電解液が外に流れ出やすいので特に注意が必要である。
【0016】
ホフマンの電気分解実験用具、非特許文献1,非特許文献2のいずれの場合も、電気分解実験に使用するときには、その前準備として、電気分解反応槽内(H字のIに相当する垂直に配置された細長のガラス管内および中央連結管内)を一旦電解液で完全に充満させることが必要となる。ホフマンの電気分解実験用具の場合は、用具全体を垂直に保持して、流体連通した上端全面開放の液だめに電解液を入れた後、当該ガラス管の上端に具備された開閉自在の通気路を一旦開放して、セントラルチューブおよび液だめに収容された電解液の液だめにおける液面と、垂直に保持された当該ガラス管内に当該ガラス管の下側から侵入した電解液の液面との間の高低差による水圧でもって、当該ガラス管内の電解液の液面を重力に抗して上昇させ、当該ガラス管内に電解液を満たすと同時に該ガラス管の上端に具備されたコックを閉じる。この操作は熟練を必要とし、該コックを閉じる操作が遅れると、垂直に保持されたガラス管から電解液の一部がオーバーフローしてしまい、電解液が強塩基性の場合には、それが生徒の皮膚や眼に付着することもあり、生徒にとって危険である。簡易版としてのH型電気分解実験用具の場合は、同様な操作で、電解液を垂直に保持されたガラス管の上端まで満たした後、ガラス管の上端にゴム栓をするが、このとき電解液の一部がオーバーフローしてしまうことは避けられない。
【0017】
電気分解の結果生ずる気体であって、垂直に保持された透明なガラス管内の上部に集積した気体の性質を確かめるために、当該気体をガラス管の外部に取り出すに際して、ホフマンの電気分解実験用具の場合は、液だめおよびセントラルチューブを持ち上げて、その中に収容された電解液の液面の高さを、垂直に保持された透明なガラス管内の電解液の液面の高さよりも高くすることで、これらの二つの液面の間の高低差による水圧でもって、後者の液面の位置を押上げながら、当該気体をガラス管の上端に設けられた開閉自在の通気路を介して試験管などの中に移し取る操作が要求されるが、この移転方法は極めて難しく、その際に、ガラス管の上端に設けられた開閉自在の通気路から電解液がオーバーフローしやすい。
【0018】
また、簡易版としてのH型電気分解実験用具の場合は、ゴム栓等で開放端が密閉されて垂直に配置されたガラス管内において、電気分解により電極の表面で生成して当該ガラス管の上部に上昇して集積した気体の性質を調べるために、その気体を当該ガラス管の外に取り出す場合には、液だめあるいはセントラルチューブの液面の高さを当該ガラス管内の液面の高さに一致させた後、開放端を密閉しているゴム栓を外して、液だめの高さを徐々に上げると、当該気体は徐々に押し上げられ、上昇するところを別の試験管等で捕集せざるを得ないので、当該気体だけを取り出すことは困難であり、電解液が外にこぼれ出る危険もある。
【0019】
非特許文献1,非特許文献2のいずれの場合においても、その使用時において、電極は、電解液を収容する容器の底面に嵌められたゴム栓を貫通して円筒状体の内部に延在するように構成され、電解液で完全に内部が充満され、垂直に保持された下端全面開放の円筒状体(例えば、試験管又はガラス管)が、電極を上から覆いかぶせるように配置されている。電極表面で発生した気体は、該円筒状体の上端部に集積するが、非特許文献1,非特許文献2の場合は、上端に開閉手段を有しないので、上端部に集積した気体を外部に取り出すことは極めて難しい。
【0020】
高価な白金板を電極として使用しつつも、電気分解実験用具を高価にしないためには、白金の使用量が少ない、したがって表面積も小さい白金板を使用せざるを得ないが、電極の表面積を小さくすると、電気分解するときの電気抵抗が大きくなり、生徒が取り扱う上で安全な電圧(約12V以下)の下では、流れる電流は小さくなり、その結果、電気分解による水素ガス及び酸素ガスの発生速度が小さくなり、ファラデーの法則を確認するために必要な体積以上の水素ガス及び酸素ガスを得るのに長時間要する(例えば、1時間以上)ので、通常の授業時間内で実験を完了させることが困難である。
【0021】
簡易型の水の電気分解実験用具と称して、市販されている非特許文献1の場合は、電解液を収容する上端全面開放の容器であってその水平底部に具備された2つの孔のそれぞれに挿入されたゴム栓を貫通して容器の外部から内部へ延在する棒状電極が当該水平底部面と直交する態様で具備された容器と、当該棒状電極のそれぞれを、上方から覆いかぶせられるように構成された円筒状体であって上端完全密閉で下端完全開放の円筒状体(例えば、試験管)とから構成され、使用時において、電気分解実験の前準備の際に、当該容器に電解液を所定の深さまで入れ、当該円筒状体の完全密閉端を下にして完全開放端から当該円筒状体に電解液を注入し、注入された電解液の液面が当該完全開放端に達した段階で、手の指等で当該完全開放端を抑えながら当該円筒状体の上下を反転させ、その状態を維持しつつ、当該容器に入っている電解液の中に、手の指等で抑えた円筒状体の下端(開放端)を浸漬させた後、当該下端を抑えていた手の指等を離し、最後に、電解液で内部が充満された当該円筒状体を、垂直に具備された当該電極棒に上方から覆いかぶせるプロセスが必要となるので、電解液が強塩基性溶液の場合は、生徒の手が強塩基性溶液に晒されることとなり危険であり、また、電気分解の結果生成した気体を当該円筒状体からその外部に取り出すことが困難である。
【0022】
非特許文献2の場合は、電気分解実験の前準備段階において、電極を収容する空間(装置に具備された試験管内の空間)を一旦電解液で完全に充満させるに際して、装置全体を横向きにして、当該装置に具備された容器の一端に設けられた空気抜きから当該試験管内の空気を排出させながら当該試験管内を電解液で完全に充満させ、その後、装置全体を再び元の位置に戻して電気分解実験に供されるのであるが、生徒が電解液に指で触れる必要がない点は長所であるものの、装置と試験管との連結部(試験管が容器に差し込まれている部分)は電解液が漏れ易く、短い試験管を使わざるを得なく、更に、実験時には試験管の下端に嵌められたゴム栓でもって当該試験管内の電解液が外に漏れないような構成となっているので、そのゴム栓が緩んだり、外れたりしたときには、電解液が容器外へ流れ出る可能性があるので、電解液が強塩基性溶液の場合には、中学・高校等の教育現場における生徒にとって危険である。
【0023】
特許文献1(又は非特許文献3)の場合は、従来の簡易型の電気分解用具とは構造は大きく異なり、電極間の距離を1mm以下という極めて小さくして、陽極、陰極のそれぞれで発生した酸素および水素の気泡が混じり合わないように電極間に親水性の隔膜を挟む構造にして電気的な抵抗が著しく低くなる構造のもので、電解液として強塩基性溶液を使わず、水道水のような導電率が小さな溶液を電解液として、生徒にとって安全な12V以下の電圧で電気分解実験を行うことができるという長所は認められるが、電極の表面で水素ガス又は酸素ガスが生成して、それらが別個の気体捕集管内に集められるプロセスが見てわかりにくく、また、生成した気体の性質を調べる際に、気体の捕集部から、生成した気体だけを取り出すことは困難であり、さらに水酸化ナトリウム、硫酸ナトリウムといった一般的によく使われる電解液を使って電気分解しようとすると、電流が流れ過ぎ、かえって危険になるという欠点がある。
【0024】
【非特許文献1】ケニス理科株式会社製品カタログ
【非特許文献2】(株)リテンhttp://www.riten.jp/photo/11/116340.html
【非特許文献3】ケニス理科株式会社製品カタログ、(株)ヤガミhttp://ec.yagami-inc.co.jp/shop/o/o4575500-R01,
【特許文献1】特開2009−30152
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
ホフマンの電気分解実験用具および簡易な電気分解実験用具のように、電極の表面で水素ガス又は酸素ガスが生成して気泡となり、電解液中を上昇して集積する全プロセスが目で見てわかりやすい用具でありながら、電解液として、生徒にとって危険な強塩基性の水酸化ナトリウム水溶液を用いることに起因する危険性を取り除いた安全な、しかも廉価な電気分解実験用具が求められていた。
【0026】
さらに生徒にとって実験操作が難しくなく、取り扱う上で安全な電圧(約15V以下)の下であっても、水素ガスおよび酸素ガスの発生速度が大きく、通常の授業時間内に、ファラデーの法則を確認するために必要な量以上の水素ガス及び酸素ガスを得ることが可能で、かつ実験結果がファラデーの法則による理論値にできる限り近くなるような水の電気分解実験用具が求められていた。
【0027】
このような水の電気分解実験用具を提供するに際して、本発明者は、中学・高校等の教育現場で使用される従来技術の電気分解実験用具に潜在する特有な課題、即ち、
(1)簡易型の水の電気分解用具(非特許文献1,非特許文献2)では、実験器具の価格を廉価にすべく、ステンレスを電極として用いているが、その使用時において、気体捕集部となる試験管の下端の開口部が、電解液を収容する容器の底面に嵌められたゴム栓を貫通したステンレス棒(電極)を、上から覆いかぶせるような配置にさせ、電解液として、硫酸ナトリウム溶液や硫酸カリウム溶液といった安全な中性溶液を用いたときには、陽極で起こる酸化反応が、酸素が発生する反応だけではなく、ステンレス中の鉄が酸化されて、鉄イオンが電解液中に溶出する反応も起こるので、電極での水素、酸素の発生する体積は、ファラデーの法則から求められる水素、酸素の理論的な値との差は大きくなる。このことからステンレスを電極として用いる場合には、電解液として、取り扱い上危険性は高いが、鉄の酸化反応が抑制される水酸化ナトリウム溶液を使用することになり、このことは教育現場の生徒に危険な実験をさせることになる。
(2)ステンレス電極ではなくニッケル電極を使えば、白金電極ほどではないとしても、電解液として、硫酸ナトリウム溶液や硫酸カリウム溶液といった安全な中性溶液を用いたときでも、陽極でニッケルが酸化されてニッケルイオンが電解液中に溶出する量は極めて少ないので、実験で得られる水素、酸素の体積は、ファラデーの法則から求められる水素、酸素の理論的な値からの誤差は小さい。しかしニッケル板を簡易な電気分解実験用具(非特許文献1,非特許文献2)のステンレス電極の代わりに使うと、すなわちニッケル板を、気体捕集部となる試験管の下端の開口部に嵌められたゴム栓を貫通させて電解液に浸漬させるとき、ニッケル板が貫通するゴム栓の切れ目の部分から電解液が漏れるので、電解液中でニッケル板を電極として電気分解する場合、電極としてのニッケル板全体を電解液中に浸漬させ、それに接合するリード線も電解液中に浸漬させるも、リード線として例えば銅線が用いられたとき、その内部の銅が電解液と接触して銅が酸化されて銅イオンとなって溶出しないようにする工夫が必要である。
(3)上記のことに配慮しながらニッケルを電極として、リード線として、例えば、銅線が用いられたとき、電解液が銅線と接触しないように工夫ができれば、あるいは、リード線として、電解液と反応しにくい金属線(ニッケル線など)を使用すれば、電解液として、危険な水酸化ナトリウム溶液ではなく、硫酸ナトリウム溶液や硫酸カリウム溶液といった安全な中性溶液を用いて電気分解実験を行っても、実験結果の理論値からの誤差は小さい。しかし、さらに正確さを求めるためには、電解液として水酸化ナトリウム水溶液を使用した場合の方が、中性の電解液を使用したときと比較して、電気抵抗が小さくなり、陽極のニッケルがより酸化されにくく、過酸化水素も生成されにくいなどの利点がある。電解液として水酸化ナトリウム水溶液を使う場合は、次のような点が課題となる。
(i)ホフマンの電気分解用具および簡易な電気分解実験用具のいずれも、気体捕集部でもあるガラス管または試験管の開口部に嵌められたゴム栓が該ガラス管または該試験管の下端にあるそのため、それらの電気分解用具で実験するときは、ゴム栓が緩んだり外れたりしたとき、電解液が下に流れ出て実験台の上に流れないように、安全のため装置全体をバットの中に置いて行う必要がある。
(ii)これに対する1つの方法として、該ガラス管または該試験管の開口部に具備する密閉手段を、その下端ではなく、その上端に具備させ、該密閉手段(ゴム栓)に電極に接合したリード線を密閉手段に貫通させ、外部へ延在させるようにすれば、ゴム栓が緩んだり、あるいは外れたりしても、電解液は漏れ出ることはなく、実験用具の下にバットを置く必要がない。リード線を貫通させた密閉手段をガラス管の上端に具備できるようにするためには、該ガラス管内で、電極に接合するリード線は電解液中に浸漬するも、リード線としてニッケル線などの電解液と反応しにくい金属線を用いるか、リード線として銅線を用いるときには、その内部の銅が電解液と全く接触しないようにすることが必要である。また、リード線が該ガラス管内で、ガラス管上部に集積した気体の部分の中を通過して、ゴム栓の下方から貫通する部分で、外部から空気が全く侵入しないようにすることが必要である(ホフマンの電気分解実験用具、簡易型などの従来からの水の電気分解実験用具では、該ガラス管の下端にリード線の貫通する密閉手段を有し、密閉手段の上に電解液が滞留しているので、その必要はない)。これらのことの実現は容易ではなく、それを有効的な方法で実現させている実験用具はまだ市販されていない。
(iii)また別の方法として、電気分解実験の通電前にガラス管内を電解液で満たした上で、ガラス管の下端の開口部を、容器の中に保持された電解液の中の所定の深さまで浸し、ガラス管内に内在した電極のリード線を、ガラス管の開口部を越えて外部に延在させる方法も考えられる。
(4)水の電気分解実験の前準備段階において、電気分解に供される電解液を、電気分解が生じる空間である垂直に保持された透明なガラス管内に完全に充満させる操作は生徒にとって難しく、また以下のような危険な側面がある。
(i)ホフマンの電気分解実験用具の場合は、液だめおよびセントラルチューブに収容された電解液の液面と、垂直に保持された透明なガラス管内に一部侵入した電解液の液面との間の高低差による水圧でもって、当該ガラス管の下側から重力に抗して上向きに充満させる方法は、当該ガラス管内に侵入する電解液の液面の上昇を制御することが容易ではない。生徒は、当該ガラス管内を強塩基性の電解液で完全に充満させると同時に、当該ガラス管の上端のコックを閉じ、その電解液がオーバーフローしないようにすることが求められる。もし生徒が、強塩基性溶液を当該ガラス管の上端からオーバーフローさせてしまったときには、強塩基性溶液が生徒の手に触れ、眼に入る危険性(失明の危険性)がある。(ii)簡易な電気分解実験用具としての、非特許文献1、非特許文献2においては、ホフマンの電気分解用具に具備されているような、液だめおよびセントラルチューブを備えていないので、当該容器に電解液を所定の深さまで入れ、手の指等で当該完全開放端を抑えながら当該円筒状体の上下を反転させ、その状態を維持しつつ、当該容器に入っている電解液の中で開放端を手の指等で抑えることが必要なので、生徒の手が危険な水酸化ナトリウム水溶液に触れる。
(5)電気分解の結果生ずる気体であって垂直に保持された透明なガラス管内の上部に集積した気体の性質を確かめるために当該気体をガラス管の外部に取り出す操作は難しい。具体的には、ホフマンの電気分解実験用具の場合は、液だめおよびセントラルチューブを持ち上げて、その中に収容された電解液の液面の高さを垂直に保持された透明なガラス管内の電解液の液面の高さよりも高くすることでこれらの二つの液面の間の高低差による水圧でもって、後者の液面の位置を押上げながら、当該気体をガラス管の上端に設けられた開閉自在の通気路を介して試験管などの中に移し取る移転方法は、極めて難しい。非特許文献1,非特許文献2のいずれの場合においても、電極表面で発生した気体は、該円筒状体の上端部に集積するが、非特許文献1,非特許文献2の場合は、上端に開閉手段を有しないので、上端部に集積した気体を外部に取り出すことは極めて難しい。
(6)ホフマンの電気分解用具および簡易な電気分解用具では、電極間の距離は固定されているので、気体の発生速度は制限される。具体的には、ホフマンの電気分解用具での各電極での水素、酸素の発生速度が小さいのは、電極として白金が高価であるので表面積の小さなものを使わざるを得ないということの他、発生する水素、酸素の気泡が混じり合わないようにするため、また中央連結管の中央にセントラルチューブに接続するためにノズル設けているので、電極を内在させる、垂直の2つのガラス管の位置、従って陽極、陰極の電極間を5〜7cmの距離で離して固定せざるを得ないことに起因している。
(7)ホフマンの電気分解実験用具およびH型電気分解用具のガラス管は、複雑なH字形であるので、電気分解の実験終了後、電解液が付着した該ガラス管の内部は大変洗浄しにくい。
(8)電気抵抗が小さくなるように相互の電極間の距離を極めて短く(多くは1mm以下)固定させ、また相互の電極間に薄い隔膜を間挿して陰極、陽極で発生する水素、酸素が混じり合わないようにし、電気伝導度の小さい水道水を電解液として使用する水の電気分解実験用具(特許文献1、非特許文献3)の場合は、危険な強塩基性の水溶液を電解液として用いる必要がないという点は長所であるが、電極の表面で水素ガス又は酸素ガスが生成して、それらが別個の気体捕集管内に集められるプロセスが見てわかりにくく、また、その用具を使用して一般的な塩基や塩の水溶液を電解液として使用した場合には、電気分解実験の際に、相互の電極間に電流が流れすぎて、電源に過剰な負荷がかかり、電源が損傷する危険性がある。
と言う従来認識されていない潜在的な課題をそれぞれ初めて認識・特定した。
【課題を解決するための手段】
【0028】
本発明者は、かかる課題を全て同時に解決すべく鋭意研究を重ねた結果、以下のようなことを発見した。即ち、
(a)電解液として、水酸化ナトリウムのような強塩基性で危険な溶液を使わないでも、硫酸ナトリウム溶液や硫酸カリウム溶液といった安全な中性溶液中でも、酸化されにくいニッケル板を電極として電気分解すると、陽極のニッケルは陽イオンとして溶出する量は極めて少ないので、それによる実験結果はファラデーの法則から計算される理論値からの誤差は小さい。
(b)ニッケル板を電極として電気分解実験を行う場合、透明な筒状体の内部の下端近くに位置する電極に接合するリード線は金属線とし(銅線を使うときは外径が約1mmあると剛性があって、小さなゴム栓の穴にも密着して通しやすく、また熱収縮チューブまたは樹脂で被覆しやすい)、それを透明な筒状体の上端または下端の密閉手段(ゴム栓)を貫通させる。リード線の、透明な筒状体内にあって電解液と接する可能性のある部分は熱収縮チューブまたは樹脂で被覆し、また金属線が透明な筒状体の該開口部の密閉手段(ゴム栓)を貫通する部分では、金属線が電解液に接触しないように、また外部の空気が透明な筒状体内に侵入するのを完全に防ぐために、金属線を被覆する熱収縮チューブまたは樹脂と該密閉手段(ゴム栓)との接合面を接着剤で接着し、完全に被覆する。金属線をゴム栓に通しただけでは、その部分で外部から空気が侵入する。ゴム栓の細い穴に密着して通すことのできる線は、表面が硬くてなめらかで、剛性があることが必要で、ビニール被覆線のような表面が軟らかい物質で覆われた線は、通すことはできない。
(c)ホフマンの電気分解用具および簡易な電気分解用具(非特許文献1,非特許文献2)ではいずれもリード線が貫通している密閉手段(ゴム栓)が気体捕集部となる透明な筒状体の下端に具備されているが、該密閉手段を透明な筒状体の上端に具備させれば、該密閉手段(ゴム栓)が緩んでいても、あるいは開口部から外れても、電解液が強塩基性の溶液である場合でも、それが下方に流れ出ることはないので生徒たちに危険はない。
そのようにすれば、電極に接合したリード線は、透明な筒状体の上端の密閉手段(ゴム栓)を越えて延在させることになり、透明な筒状体の下端の開口部は開放され、電極およびリード線もないので、2つの透明な筒状体に内在する陽極と陰極間の距離を5〜7cmも離して固定させる必要はなく、電極を内在する2つの透明な筒状体を垂直方向に近接させることで、電極間の距離を小さくでき(この場合、電極間の距離は約2cmになる)、しかも透明な筒状体の管壁があるため水素および酸素の気泡は混じりあうことはなく、この場合、電極、熱収縮チューブまたは樹脂で被覆されたリード線を内在させた2つの透明な筒状体を、どこにでもあるビーカーの中の電解液に浸漬させるだけで、極めてシンプルな水の電気分解用具を構成でき、また、ホフマンの電気分解実験用具の中央連結管や、透明な筒状体内の開口部を浸す電解液を収容するための特別の容器も必要でないので、実験終了後の、その電解槽内部の洗浄は極めて容易である。
(d)ホフマンの電気分解用具および簡易な電気分解用具(非特許文献1,非特許文献2)では、リード線が貫通している密閉手段(ゴム栓)が気体捕集部となる透明な筒状体の下端に具備されているので、下端にある該密閉手段(ゴム栓)が緩むと、あるいは開口部から外れると電解液が下方に流れるが、その一方、リード線が貫通している密閉手段(ゴム栓)の上部に電解液が存在するので、金属線が透明な筒状体の該開口部の密閉手段(ゴム栓)を貫通する部分では、外部の空気は透明な筒状体内に侵入しない。
(e)水の電気分解実験の前準備段階において、垂直に保持された細長いガラス管内を電解液で完全に充満させるに際して、従来技術の常識に反して、垂直に保持された細長いガラス管内において未だ電解液で充満されていない空間を、当該ガラス管の上端に設けられた開閉自在の通気部を介してシリンジ等で減圧することで、中学・高校等の教育現場の生徒であっても、当該ガラス管内に侵入する電解液の液面の上昇速度を容易にかつ正確に制御することが可能となり、また、当該ガラス管内を電解液で完全に充満させるときに、当該ガラス管の上端から通気部を通して電解液がオーバーフローさせてしまっても、生徒がそのオーバーフローした電解液に一切手を触れることなくシリンジ等の中に吸引することが可能となり、その結果、電解液が強塩基性溶液であっても、実験操作に熟練していない生徒でも簡易に、かつ、安全に、垂直に保持された透明なガラス管内に強塩基性溶液を充満させることができる。
(f)垂直に保持された透明なガラス管内の上部に集積した気体の性質を確かめるために当該気体をガラス管の外部に取り出すに際して、当該ガラス管の上端に取り付けられた三方活栓または二方活栓のテーパーメス部(内側の形状は、医療用に使われるために、シリンジの流出部である先端突起部にぴったり嵌合するように構成されている)に、外径4mm、内径2mm、適当な長さ(一例として約20cm)のシリコーンゴム製チューブの一端を軽く押し込み、その反対側の端をシリンジの先端突起部につないで、集積した気体をシリンジ内に吸引する操作は、実験操作に熟練していない生徒にも簡易に行うことができる操作である。
(g)このような構造の電気分解用具で、硫酸ナトリウムや硫酸カリウムの中性溶液中でも酸化されにくく、かつ廉価なニッケル板を電極に用いたとき、通常の50分前後の授業時間内で、ファラデーの法則を確かめるために十分な量の水素、酸素を得ることができ、またホフマンの電気分解実験用具にも劣らない精度で、ファラデーの法則から得られる理論値に近い、水の電気分解の実験結果を得ることができる。
ということを発見し、これらの総合的な知見に基づいて、本発明を成したのであります。
【0029】
即ち、第1の発明に係る電気分解実験用キットは、少なくとも一つの電気分解反応槽と、一つの気体吸引手段とを含み、該電気分解反応槽は、下端が開口し,上端が密閉手段で密閉された透明の筒状体と、該筒状体の内部に配置された電極と、該電極に接合されたリード線とを有し、該密閉手段は、テーパーオス部及びテーパーメス部を有する三方活栓または二方活栓を有し、該リード線は、該密閉手段を気密的に貫通してその一部が該筒状体の外部に延在し、少なくとも該筒状体内部で延在する部分が熱収縮チューブまたは樹脂で被覆され、かつ、該電極との接合部が接着剤で被覆され、
該気体吸引手段は、該三方活栓または二方活栓のテーパーメス部に着脱自在に嵌合できるように構成されていることを特徴とする水の電気分解実験用キットである。
【0030】
第2の発明に係る水の電気分解実験用キットは、連結部を有する一対の電気分解反応槽であって、該連結部を介して相互に流体連通した一対の電気分解反応槽と、該連結部と流体連通したチューブと、該チューブと流体連通した液だめと、一つの気体吸引手段とを有し、該一対の電気分解反応槽のそれぞれは、下端が該連結部の一端と流体連通的に連結され、上端が密閉手段で密閉された透明の筒状体と、該筒状体の内部に配置された電極と、該電極に接合されたリード線とを有し、該連結部は、該一対の電気分解反応槽を同一平面内で相互に並列に保持するように構成され、該密閉手段は、テーパーオス部及びテーパーメス部を有する三方活栓または二方活栓を有し、該リード線は、該密閉手段を気密的に貫通してその一部が該筒状体の外部に延在し、少なくとも該筒状体内部で延在する部分が熱収縮チューブまたは樹脂で被覆され、かつ、該電極との接合部が接着剤で被覆され、該気体吸引手段は、該三方活栓または二方活栓のテーパーメス部に着脱自在に嵌合できるように構成されていることを特徴とする水の電気分解実験用キットである。
【0031】
第3の発明に係る水の電気分解実験用キットは、連結部を有する一対の電気分解反応槽であって、該連結部を介して相互に流体連通した一対の電気分解反応槽と、該連結部と流体連通したチューブと、該チューブと流体連通した液だめと、一つの気体吸引手段とを有し、該一対の電気分解反応槽のそれぞれは、下端および上端が密閉手段で密閉された透明の筒状体と、該筒状体の内部に配置された電極と、該電極に接合されたリード線とを有し、該連結部は、該一対の電気分解槽のそれぞれの下端における密閉手段による密閉を阻害しないように該一対の電気分解反応槽を流体連通し、かつ、該一対の電気分解槽を同一平面内で相互に並列に保持するように構成され、該一対の電気分解反応槽のそれぞれの上端の該密閉手段は、テーパーオス部及びテーパーメス部を有する三方活栓または二方活栓を有し、該リード線は、該一対の電気分解反応槽のそれぞれの下端の該密閉手段を気密的に貫通してその一部が該筒状体の外部に延在し、少なくとも該筒状体内部で延在する部分が熱収縮チューブまたは樹脂で被覆され、かつ、該電極との接合部が接着剤で被覆され、該気体吸引手段は、該三方活栓または二方活栓のテーパーメス部に着脱自在に嵌合できるように構成されていることを特徴とする水の電気分解実験用キットである。
【0032】
第4の発明に係る水の電気分解実験用キットは、少なくとも一つの電気分解反応槽と、一つの気体吸引手段と、該電気分解反応槽は、下端が開口し上端が密閉手段で密閉された透明の筒状体と、該筒状体の内部に配置された電極と、該電極に接合されたリード線とを有し、該密閉手段は、テーパーオス部及びテーパーメス部を有する三方活栓または二方活栓を有し、該リード線は、少なくとも該筒状体内部で延在する部分が熱収縮チューブまたは樹脂で被覆され、かつ、リード線が該電極と異なる金属と、はんだ付け(または、ろう付け)で接合されているときは、該リード線と該電極との接合部は接着剤で被覆され、該リード線は、該開口した一端を越えてその一部が該筒状体の外部に延在し、該気体吸引手段は、該三方活栓または二方活栓のテーパーメス部に着脱自在に嵌合できるように構成されていることを特徴とする水の電気分解実験用キットである。
【0033】
第5の発明に係る水の電気分解実験用キットは、上記第1〜4の発明において、透明の筒状体が、透明なプラスチックまたはガラスから構成されることを特徴とする水の電気分解実験用キットである。
【0034】
第6の発明に係る水の電気分解実験用キットは、上記第1〜5の発明において、密閉手段が、貫通孔を有するゴム栓又は樹脂栓とテーパーオス部及びテーパーメス部を有する三方活栓又は二方活栓とを含み、該テーパーオス部が該貫通孔に嵌合されていることを特徴とする水の電気分解実験用キットである。
【0035】
第7の発明に係る水の電気分解実験用キットは、上記第1〜6の発明において、電極が、ニッケルで作製されていることを特徴とする水の電気分解実験用キットである。
【0036】
第8の発明に係る水の電気分解実験用キットは、上記第1〜7の発明において、気体吸引手段が、シリンジ、又は、シリンジ及び該シリンジと流体連通的に嵌合されたシリコーンゴム製チューブを含むことを特徴とする水の電気分解実験用キットである。
【発明の効果】
【0037】
教育現場における水の電気分解実験において、電解液として、生徒にとって危険な強塩基性の水酸化ナトリウム水溶液が用いられることが多いが、本発明に係る水の電気分解実験用キットは、電極として廉価なニッケル板を用いて、硫酸ナトリウム溶液や硫酸カリウム溶液といった安全な中性溶液を用いて水の電気分解の実験をすることができ、そのとき、通常の授業時間内でファラデーの法則を確かめることのできる量の水素と酸素を得ることができ、得られる実験結果は、ファラデーの法則から計算される理論値からの誤差も小さい。
【0038】
本発明に係る水の電気分解実験用キットは、その電気分解反応槽を構成する透明な筒状体の上端の密閉手段を金属線から成るリード線が貫通し、筒状体の下端付近にある電極に接合する。リード線の筒状体内にある部分は熱収縮チューブまたは樹脂で完全に被覆されており、また、リード線が該電極と、はんだ付け(または、ろう付け)で接合されているときは、該リード線と該電極との接合部、およびリード線を被覆する熱収縮チューブまたは樹脂と密閉手段が接合する部分も接着剤で完全に被覆されているため、透明な筒状体内の陽極においてもリード線の金属が酸化され、陽イオンとなって電解液中に溶出することはない。また透明な容器密閉手段を貫通するリード線の部分から外部の空気が侵入することはないので、集積した水素および酸素の体積から、ファラデーの法則からの理論値に近い実験結果を得ることができる。
【0039】
さらに本発明の第1および第2の発明に係る水の電気分解実験用キットは、水酸化ナトリウム水溶液のような強塩基性の電解液を用いて水の電気分解の実験を行ったとしても、実験操作の中で、透明な筒状体などから電解液が開口部に嵌められたゴム栓が緩んだり、外れたりしても下方に流れ出たり、オーバーフローすることはほとんどないので安全である。さらにホフマンの電気分解用具を操作するときのように熟練を要する操作をする必要もなく、また実験用具が廉価で、壊れにくい構造であるので、化学実験に熟達していない生徒であっても、容易に、安全に、また気楽に実験を楽しめることができる。
【0040】
本発明の第1および第2の発明に係る水の電気分解実験用キットは、その電気分解反応槽を構成する透明な筒状体の上端の密閉手段を、金属線から成るリード線が貫通するので、下向きの開口部は開放され、ゴム栓も具備されていない。それゆえ該ゴム栓が緩んでも電解液が下に流れ出る心配はなく、安全のために実験用具の下にバットを置く必要もない。
【0041】
本発明に係る水の電気分解実験用キットは、その電気分解反応槽を構成する筒状体が透明であるので、電気分解実験中に電気分解反応槽内の電極の表面で水素ガス又は酸素ガスが生成してそれが気泡となり電気分解反応槽内の電解液中を上昇し、電極の上方に集積する全プロセスを直接観察することができる。
【0042】
本発明の第1および第4の発明に係る電気分解実験用具は、それを使用した実験の前準備プロセスにおいて、電気分解反応槽内の空間(電気分解が生じる空間)を構成する垂直に保持された筒状体内を電解液で充満させるに際して、当該筒状体の開放端である下端を、一端開放の容器に収容された電解液に浸漬させて、下端が電解液に浸漬された当該筒状体内において未だ電解液が侵入していない空間を当該筒状体の密閉端である上端に具備された開閉自在の通気部を介してシリンジ等で減圧することで、化学実験に熟達していない生徒であっても筒状体内に侵入する電解液の液面の上昇速度を容易にかつ正確に制御することが可能となり、その結果、電解液が強塩基性溶液であっても、化学実験に熟達していない生徒であっても容易に、かつ、安全に、垂直に保持された電気分解反応槽内である筒状体内の空間を電解液で充満させることができる。
【0043】
本発明の第2および第3の発明に係る電気分解実験用具は、それを使用した実験の前準備プロセスにおいて、電気分解反応槽内の空間(電気分解が生じる空間)を構成する垂直に保持された筒状体内を電解液で充満させるに際して、当該筒状体の開放端である下端と連通したセントラルチューブおよび液だめに収容された電解液を移動させながら、当該筒状体内において未だ電解液が侵入していない空間を当該筒状体の密閉端である上端に具備された開閉自在の通気部を介してシリンジ等で減圧することで、化学実験に熟達していない生徒であっても筒状体内に侵入する電解液の液面の上昇速度を容易にかつ正確に制御することが可能となり、その結果、電解液が強塩基性溶液であっても、化学実験に熟達していない生徒であっても容易に、かつ、安全に、垂直に保持された電気分解反応槽内の空間である筒状体内の空間を電解液で充満させることができる。
【0044】
本発明に係る電気分解実験用具は、その使用時において、電気分解反応槽を構成する筒状体が、その中を電解液で充満され垂直に保持された状態で、電気分解の結果生成して当該円筒状体の上部に集積した気体を当該円筒状体の外に取り出してその性質を確かめるためには、当該円筒状体の上端である密閉端に具備された開閉自在の通気部(電気分解反応中は閉鎖されている)に気体吸引手段を気密的に接続して当該通気部を開放して、管の上端の開閉自在の通気部に取り付けられた三方活栓また二方活栓のテーパーメス部(内側の形状は、医療用に使われるために、シリンジの流出部である先端突起部にぴったり嵌合するように構成されている)に、外径4mm、内径2mm、適当な長さ(一例として約20cm)のシリコーンゴム製チューブの一端を軽く押し込み、その反対側の端をシリンジの先端突起部につないで、集積した気体をシリンジ内に吸引する操作は、実験に慣れていない生徒にも容易に可能である。
【0045】
本発明の第1の発明に係る水の電気分解実験用キットは、透明な筒状体の内部の下端近くに配置させた電極に接合したリード線を、透明な筒状体の上端の栓を越えて延在させることによって、2つの透明な筒状体の下端の開口部は開放され、電極およびリード線も具備されていないので、2つの透明な筒状体の位置は固定されず(垂直を維持するためのホルダーはあった方が望ましいが)、それらを垂直方向に近接させることで、電気抵抗が小さくなるように電極間の距離を小さくでき、しかも透明な筒状体の管壁があるので水素および酸素の気泡は混じりあうことはない。
【0046】
本発明の第3の発明に係る実験用具は、気体の捕集部となるガラス管の下端の開口部に、本発明に係る、熱収縮チューブまたは樹脂で被覆したリード線を貫通させたゴム栓を嵌めるものであり、この場合、電解液を収容する透明な筒状体はホフマンの電気分解実験用具と類似の構造で、2つの透明な筒状体の下端近くに連結管を設けて、下端の2つの開口部にリードを貫通させたゴム栓を嵌めている構造にするので、透明な筒状体のリード線が貫通する下端の開口部に嵌められるゴム栓が緩むと、電解液が下方に流れ出る問題はあるが、リード線を貫通するゴム栓の上に電解液を収容しているので、リード線が貫通する部分で、外部から空気が侵入することはなく、また、透明な筒状体の上端の密閉手段は第1の発明、第2の発明と同様であり、これらのいずれの場合も安全な中性の電解液を用いることができ、なお白金板または白金めっきされた金属の電極を使わないでニッケル電極を使う、廉価な電気分解実験用具となる。
【0047】
本発明の第4の発明に係る実験用具の使用時においては、下端が開口した2つの、内部が電解液で満たされた透明な筒状体の下端の開口部を、上端全面開放の容器内電解液中に所定の深さで浸漬させながら、透明な筒状体が、その下端の開口部から、それぞれの電極および本発明に係る熱収縮チューブまたは樹脂で被覆したリード線を上から覆いかぶさるようにすることによって、各電極から発生する気体が透明な筒状体内の上部に集積することとなるが、この場合の透明な筒状体の上端の密閉手段は第1の発明、第2の発明と同様であり、安全な中性の電解液を用いることができ、なお白金電極を使わないでニッケル電極を使う、廉価な電気分解実験用具となる。
【0048】
本発明の第1の発明に係る水の電気分解実験用キットは、内部に電極を備えた2つの透明な筒状体を、電解液を収容した、どこにでもあるビーカーの中に浸漬させるだけで、極めてシンプルな水の電気分解用具を構成できる。2つの透明な筒状体を並列させるだけで実験は可能である。この場合、イオンが通過する間隙が狭いことも有り得るので、管の下端側の壁に、谷部が管の上端に向かって形成された切り欠きを具備し、あるいは開放端が透明な筒状体の下端が容器底部表面から隔離されるように、下端側の外側に、当該下端を越えて当該プラスチック管の長手方向に沿って延在する透明な板を具備させても良い。これら方法によって、電極間の電気抵抗が小さくなり、また陽極で生成した酸(オキソニウムイオン)と陰極で生成した塩基(水酸化物イオン)が反応して水を生成する反応が促進される効果も生じる。
【0049】
また、2つの透明な筒状体は形が単純であるゆえ、実験終了後、電解液が付着したその内部の洗浄も極めて容易である。
【0050】
第2の発明に係る連結部を有する構成の場合は、2つの筒状体の位置は固定であるが、2つの筒状体を垂直に保持しながら近接させれば、電極間の距離を十分に短くでき、電極での気体発生速度も第1の発明に劣らないものを提供することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0051】
以下、図を参照しつつ本発明を説明する。本発明の電気分解実験用キットに含まれる電気分解反応槽は
図1に例示的に図示されているように、透明な管4(プラスチック管またはガラス管)と、その内部に収容された電極1と、当該電極と接合部17において接合されたリード線2とを有し、当該リード線は、栓14(ゴム栓、樹脂栓など)を気密的に貫通して管4の外部の延在部7にて終焉している。
【0052】
透明な管4の内部で延在するリード線2の部分は、当該部分の金属が電解液と接触して金属イオンとなって溶液中に溶出することのないように、熱収縮性チューブまたはその他の有機材で被覆されており、また、電極の金属とは異なった、かつ電解液中で酸化されやすい金属、例えば銅線がリード線として用いられるときには、リード線2と電極1との接合部17も電解液と接触して金属イオンとなって溶液中に溶出することのないように樹脂状接着剤で被覆されている。更に、リード線2が栓14を貫通する部分を気密にすることを資すると同時に、当該部分に電解液が侵入することを防止するために、リード線2が栓14に下方から入る部分18、すなわちリード線の熱収縮チューブまたは樹脂と栓が接合する部分は樹脂状の接着剤で被覆されている。なお、リード線2が栓14の上端から外部に延在した部分も接着剤で密閉し、さらに外部に延在したリード線の少なくとも1〜2cmの部分が動かないように金具で固定すると、接着剤がリード線から剥離されにくくなり、その部分から空気が侵入することをより確実に防ぐことができる。
【0053】
電極1の材料としては、電気分解実験に使用する電解液の特性に応じて、陽極で酸化されにくい(陽イオンになって電解液中に溶出しにくい)金属を用いるのが好ましい。
【0054】
栓14が透明な管4に挿入されて嵌合する部分の周囲は、外部からの空気の侵入を防ぐために粘着性のテープ15を巻くことが好ましい。栓14には、一例として、そこに開けられた径4mmほどの穴に、三方活栓または二方活栓6(おもに医療器具として使われるもので、テーパーオス部およびテーパーメス部を有する)のテーパーオス部12が差し込まれ、これが開閉自在の密閉手段を構成する。使用時において、その活栓を開閉する(例えば、
図1における参照番号13で示された部材を回転させて開閉する)ことによって、透明な管4内の気体や液体を外部へ排出できる。活栓が利用できないときは、栓14に開けられた内径4mmほどの孔に外径4mmほどのポリエチレン管を通し、それにシリコーンゴム管、クリップをつけて代用することもできる。
【0055】
本発明の電気分解実験用キットに含まれる気体吸引手段には、一例として、プラスチックシリンジ(プラスチック製注射器から注射針を取り除いたもの)単独(
図2bの参照番号11)、又はプラスチックシリンジの先端突起部である流出部にシリコーンゴム製チューブ(
図2bの参照番号10)の一端を嵌合させたもの(
図2bの参照番号11と参照番号10との組み合わせ)を使用しても良い。使用時においては、プラスチックシリンジの先端突起部である流出部を栓14に具備された三方活栓または二方活栓6のテーパーメス部(
図1の参照番号11)に直接嵌合させることも可能であるが、その場合は、活栓の真上にシリンジを垂直に立てる形で操作せざるを得なく、それに伴って、操作者の顔も活栓の真上に持って来ることとなるので、操作が容易ではなく、また安全でもないので、好ましくは、一例として、プラスチックシリンジの先端突起部である流出部に一端が嵌合された外径4mm、内径2mm、長さ約20cmのシリコーンゴム製チューブの他端を、栓14に具備された三方活栓または二方活栓6のテーパーメス部(
図1の参照番号11)に嵌合させて操作することで、電気分解反応槽の上部に集積した気体をその外部に取り出すことができる。
【0056】
図1において、本発明の電気分解実験用キットに含まれる電気分解反応槽を構成する透明な管4は、使用時において、その中を電解液で充満させた後には、電気分解により電極から発生する水素(陰極)または酸素(陽極)をその上部に捕集する機能をも有するが、捕集された水素(陰極)または酸素(陽極)の体積の測定を容易にするために、必要に応じて、一例として、透明な管4の上端近傍の外側表面に体積の目盛(0〜30mL)が印刷された、透明なテープ(またはシール)16を貼り、さらにテープ(またはシール)16が水にぬれないように、その上を薄い透明なフィルムでラミネートする構成としても良い。あるいは目盛のついたテープを貼る代わりに、目盛が印刷された透明なシールを管の表面に貼り付けるか、管の表面に直接目盛を付け、0mLを示す目盛の位置が、ちょうど栓14の下端の位置と一致するように構成しても良い。
【0057】
上記構成の電気分解反応槽は、使用時において、その一対でもって電気分解実験における1組とし、
図2aに例示するような態様で使用される(
図2aにおいて、一対の透明なプラスチック管4を相互に並列させ垂直に保持するスタンドは図示せず)。
図2a及び
図2bにおいて、1はニッケル電極、2はリード線(熱収縮性チューブで被覆)、3は電解液を収容する容器、4は発生する気体を捕集する透明なプラスチック管、6は三方活栓である。
図2aは、1組の透明なプラスチック管4が、使用時において、図示されていないスタンドにより、垂直かつ相互に並列に配置された状態で、それぞれの下端が容器3に収容された電解液の中に浸漬され、かつ、容器3の底部との間に間隙を有するように保持されている状態を図示する。
【0058】
図2aでは、図示されていないスタンドでもって1組の透明なプラスチック管4のそれぞれがその下端が容器3の底辺から上方に隔離された状態で保持されている状態を図示するが、本発明においては、透明なプラスチック管4の開口下端を全面開放型であるので、それぞれ自立させる構成としても良い。
【0059】
また、使用時における
図2aに例示の容器3の変形タイプとして、電解液を収容する蓋付の容器であって、当該蓋が透明なプラスチック管4から構成される電気分解反応槽の一対を、それぞれの開放下端が当該容器の底面と接触しないように垂直かつ並列に保持するように構成された容器を本発明の電気分解実験用キットに含ませても良い。
【実施例】
【0060】
長さ約21.5cm、内径約17mm、外径約22mmの透明なアクリル樹脂管(または、ポリカーボネート管以下同様)でもって
図1に示すような透明な管を作製し、その上端の開放端をゴム栓14で封止し、その栓の中を通してリード線2(例えば、径約1mmのニッケル線または銅線)を管の内部の下部まで延在させ、そのリード線2の終端が、縦横約2.5cm×約1.2cm、厚さ0.3mmのニッケル板から成る電極に電気溶接またははんだ付けされている。リード線2は、管外の端子まで繋がっており、使用時において、この端子が直流電源と接続される。
【0061】
外径1mmの銅線をリード線として使用し、そのリード線のうち、管内で延在する部分(約18cm)は、電解液に接触することのないように熱収縮チューブで被われている。またリード線として銅線など電解液と反応する金属が使用されたときには、銅線などのリード線と電極(ニッケル板など)との接合部17、およびリード線が栓14に入る部分18も、電解液に接触することのないように、また、電気分解の結果管の上部に集積した気体が管の外に漏れたり、あるいは外部から空気が侵入しないように、リード線の熱収縮チューブと栓が接合する部分は樹脂状の接着剤で被覆されている。
【0062】
ゴム栓14には、径1mmおよび径4 mmほどの穴を開けておく。外径1mmはリード線(銅線)を通すもので、径4 mmほどの穴は、三方活栓のテーパーオス部を差し込むものである。
【0063】
ゴム栓の周囲から管内に外部からの空気の侵入を防ぐために、栓が透明な管4に挿入される部分の周囲には粘着性のテープ15が巻かれている。
【0064】
ゴム栓14の径4mmの穴に、テーパーオス部12およびテーパーメス部11を有する活栓6(三方活栓または二方活栓)のテーパーオス部12が差し込まれており、その活栓を開閉することによって、管内の気体や液体を外部へ取り出すことができる。三方活栓は、おもに医療器具として使われるものである。
【0065】
そのテーパーメス部11に直接プラスチックシリンジの先端突起部である流出部を差し込むことも可能ではあるが、外径4mm、内径2mm、長さ約20cmのシリコーンゴム製チューブの一方の端を、上記テーパーメス部に軽く押し込み、その反対の端をプラスチックシリンジの先端突起部である流出部に気密的に接続すると、従来技術の場合と同様な操作で、気体の漏れなく、大変容易に管内の気体および溶液をシリンジ内に吸引することができる。シリンジに吸引された気体の性質は、従来技術の場合と同様な操作で容易に確かめられる。
【0066】
なお上記のような活栓が利用できないときは、栓に径4mmのポリエチレン管を通し、それにシリコーンゴム製チューブ、クリップをつけて代用することもできる。
【0067】
透明なプラスチック管(アクリル樹脂管、ポリカーボネート管など)内で、電極から発生した水素(陰極)または酸素(陽極)の体積を測定するために、透明なポリカーボネート管の表面に、体積の目盛(0〜30mL)が印刷された、透明なテープ(またはシール)16を貼り、さらにテープ(またはシール)16が水にぬれないように、その上を薄い透明なフィルムでラミネートする構成としても良い。あるいは目盛のついたテープを貼る代わりに、透明なプラスチック管(アクリル樹脂管、ポリカーボネート管など)の表面に直接目盛を付け、0mLを示す目盛の位置が、ちょうど栓14の下端の位置と一致するように構成しても良い。目盛はゴム栓の下端の高さが、ちょうど0の目盛に一致するようにしても良い。
【0068】
電気分解の結果生成した気体が集積する管の上端に具備されたゴム栓の下面が平面であるために、集積した水素ガスまたは酸素ガスの気泡がゴム栓の下面に滞留して穴から抜けにくい時がある。それゆえゴム栓の下面における、三方活栓に通じる開口部付近を当該開口部に向かった傾斜をつける加工をすれば、ゴム栓の下面に気泡が滞留するのを防ぐことができる。
【0069】
また、気体が気泡となって集積する部分の透明な管の内面は、気泡が付着すると目盛が読みにくいので、管の内面を親水性にする処置をしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【
図1】
図1は、本発明の電気分解実験用具キットに含まれる電気分解反応槽の概念図である。
【
図2】
図2aは本発明の電気分解実験用具キットに含まれる一対の電気分解反応槽から成る1組のセットが図示されていないスタンドによりそれぞれ垂直に並列に保持されているところを例示するものであり、
図2bは本発明の電気分解実験用具キットに含まれる一対の電気分解反応槽を連結部でもって一体化したものを例示するものである。