【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、水膨潤性物質を造粒あるいは整粒することにより得られる核粒子の周囲に、医薬化合物を含有する薬物層を形成し、さらに該薬物層の外側に胃溶性ポリマーを含有する被膜層を形成することで、薬物の不快な味を遮蔽し、且つ消化管内における速やかな薬物の放出可能な医薬組成物を製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は以下の発明に関する。
【0011】
本発明は、水膨潤性物質を主として含む成分を造粒あるいは整粒することにより得られる核粒子の周囲に、医薬化合物を含有する薬物層を形成し、さらに該薬物層の外側に胃溶性ポリマーを含有する被膜層を形成してなる経口投与用粒子状医薬組成物を提供する。
【0012】
また、本発明は、前記水膨潤性物質が、カルボキシメチルスターチナトリウム、ヒドロキシプロピルスターチ、クロスカルメロースナトリウム、クロスカルメロースカルシウム、クロスポビドン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースおよびアルファ化デンプンからなる群から選択される1または2以上の成分であることを特徴とする上記の粒子状医薬組成物を提供する。
また、本発明は、前記水膨潤性物質が、カルボキシメチルスターチナトリウム、ヒドロキシプロピルスターチ、クロスポビドンおよび/またはアルファ化デンプンであることを特徴とする上記の粒子状医薬組成物を提供する。
また、本発明は、前記水膨潤性物質が、カルボキシメチルスターチナトリウムであることを特徴とする上記の粒子状医薬組成物を提供する。
【0013】
本発明は、前記核粒子と薬物層の間に被覆層が形成されたことを特徴とする上記の粒子状医薬組成物を提供する。
また、本発明は、前記被覆層が糖アルコールを主成分とすることを特徴とする上記の粒子状医薬組成物を提供する。ここで前記糖アルコールとしては、マンニトール、特にD−マンニトールが好ましい。
【0014】
本発明は、前記胃溶性ポリマーが、アミノアルキルメタクリレートコポリマーEであることを特徴とする上記の粒子状医薬組成物を提供する。
また、本発明は、前記胃溶性ポリマーを含有する被膜層が、さらに軽質無水ケイ酸、含水二酸化ケイ素、重質無水ケイ酸、無水ケイ酸水加物、ケイ酸アルミン酸マグネシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、ケイ酸アルミニウム、水酸化アルミナマグネシウム、酸化チタン、またはタルクである添加剤を1または2以上含有することを特徴とする上記の粒子状医薬組成物を提供する。
さらに本発明は、前記添加剤が軽質無水ケイ酸であることを特徴とする上記の粒子状医薬組成物を提供する。
さらに本発明は、前記胃溶性ポリマーを含有する被膜層に、さらにステアリン酸マグネシウム、タルクなどの滑沢剤を含有することを特徴とする上記の粒子状医薬組成物を提供する。
さらに本発明は、前記胃溶性ポリマーを含有する被膜層に、さらにポリビニルアセタールジエチルアミノアセテートを含有することを特徴とする上記の粒子状医薬組成物を提供する。
また、本発明は、被膜層を形成する前に、ヒプロメロースなどでスムージングを目的とした被膜を形成してもよい。
【0015】
本発明は、前記医薬化合物が不快な味を有する薬物であることを特徴とする上記の粒子状医薬組成物を提供する。
また、本発明は、前記医薬化合物が不快な味を有する酸性薬物であることを特徴とする上記の粒子状医薬組成物を提供する。
さらに本発明は、前記医薬化合物がレバミピドおよびその塩であることを特徴とする上記の粒子状医薬組成物を提供する。
【0016】
本発明は、前記粒子状医薬組成物を含有することを特徴とする口腔内崩壊錠を提供する。
【0017】
本発明は、表面に活性成分が被覆されるためのレイヤリング用核粒子であって、水膨潤性物質を主として含む成分を造粒することにより得られる核粒子の表面に、被覆層が形成されたことを特徴とするレイヤリング用核粒子を提供する。
【0018】
また、本発明は、前記水膨潤性物質が、カルボキシメチルスターチナトリウム、ヒドロキシプロピルスターチ、クロスカルメロースナトリウム、クロスカルメロースカルシウム、クロスポビドン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースおよびアルファ化デンプンからなる群から選択される1または2以上の成分であることを特徴とする上記のレイヤリング用核粒子を提供する。
また、本発明は、前記水膨潤性物質が、カルボキシメチルスターチナトリウムであることを特徴とする上記のレイヤリング用核粒子を提供する。
【0019】
本発明は、前記被覆層が糖アルコールを主成分とすることを特徴とする上記のレイヤリング用核粒子を提供する。ここで前記糖アルコールとしては、マンニトール、特にD−マンニトールが好ましい。
【0020】
本発明は、表面に活性成分が被覆されるためのレイヤリング用核粒子の製造方法であって、
水膨潤性物質を主として含む成分を造粒することにより得られる核粒子を製造する核粒子製造工程と、
前記核粒子の表面に、被覆層を形成する被覆層形成工程とを有することを特徴とするレイヤリング用核粒子の製造方法を提供する。
【0021】
本発明で用いる「水膨潤性物質」とは水と接触したとき膨潤する物質である。具体例としては、カルボキシメチルスターチナトリウム、ヒドロキシプロピルスターチ、クロスカルメロースナトリウム、クロスカルメロースカルシウム、クロスポビドン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、アルファ化デンプンなどが挙げられ、本発明においてはこれらの1または2以上の成分を用いてもよい。好ましくは、カルボキシメチルスターチナトリウム、ヒドロキシプロピルスターチ、クロスポビドンおよび/またはアルファ化デンプンであり、より好ましくは、カルボキシメチルスターチナトリウムである。
【0022】
本発明で用いる「核粒子」には、上記水膨潤性物質以外にも、非活性成分を含んでいてもよく、その非活性成分としては、結合剤として、ヒドロキシプロピルセルロースなどの水溶性セルロース類、ポリビニルピロリドン、賦形剤として、乳糖、D-マンニトール、トウモロコシデンプン、結晶セルロースなどが挙げられる。核粒子内における水膨潤性物質の質量割合は50重量部〜100重量部であり、好ましくは80重量部〜100重量部、さらに好ましくは95重量部〜100重量部である。
核粒子の大きさは、平均粒子径で30μm〜200μmであり、造粒することで得られる核粒子では、好ましくは75μm〜200μm、さらに好ましくは100μm〜200μm、整粒することで得られる核粒子では、好ましくは30μm〜150μm、さらに好ましくは50μm〜100μmである。
粒子径は、ふるい分け法やレーザー回折法など従来の手法によって測定する。
【0023】
本発明で用いる「造粒」とは、水膨潤性物質を主として含む成分を、水平に設置した回転皿を回転させ、更にエアーを吹き込むことにより転動流動させ、該成分にバインダー液を噴霧することにより顆粒を形成する工程である。造粒装置としては、本発明においては、前記成分を転動流動させることができるものであれば特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、複合型造粒コーティング装置(例えばフロイント産業(株)製「スパイラフロー」など)、遠心転動造粒コーティング装置(例えば、フロイント産業(株)製「グラニュレックス」など)、遠心流動型コーティング造粒装置(例えばフロイント産業(株)製「CFグラニュレーター」など)などが好適に挙げられる。
また「整粒」とは、比較的球形な形状を有する上記水膨潤性物質を分級処理方法によって粒度の揃った「核粒子」を調製する方法である。装置としては、前記成分を分級することができるものであれば特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、ふるい分け分級機(例えば(株)セイシン企業製、「連続スピンエアシーブ」など)、気流式分級機(例えば日清エンジニアリング(株)製、「ターボクラシファイア」など)などが好適に挙げられる。
【0024】
本発明で用いる「被覆層」とは、適宜前記核粒子の表面を球形に整えるために被覆された膜の層であり、非活性成分であれば特にその原料は制限されない。ここで用いられる被覆層の原料としては、マンニトールなどの糖アルコール類、ヒドロキシプロピルセルロースなどの水溶性セルロース類、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコールなどが挙げられるが、好ましくは糖アルコールを主成分とした原料で、さらに好ましくはマンニトール、特にD−マンニトールを主成分とした原料が最も好ましい。
被覆層は、転動流動コーティング造粒機などの装置を用いて上記「核粒子」にエタノールあるいはエタノール/水混合液に溶解させた「被覆層」成分をスプレーコーティングして形成される。
コーティング装置としては、本発明においては、前記核顆粒を転動流動させることができるものであれば特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、複合型造粒コーティング装置(例えばフロイント産業(株)製「スパイラフロー」など)、遠心転動造粒コーティング装置(例えば、フロイント産業(株)製「グラニュレックス」など)、遠心流動型コーティング造粒装置(例えばフロイント産業(株)製「CFグラニュレーター」など)などが好適に挙げられる。
【0025】
本発明で用いる「医薬化合物」とは、通常経口投与剤として用いる医薬化合物であればよく、不快な味を有する薬物において、その効果が発揮される。ここで、「不快な味」とは、服用時に不快感をもたらす味を意味し、具体的には苦味、渋味、えぐ味等の味、さらには収斂性等を意味する。具体的に適用される医薬化合物としては、レパミピド、アセトアミノフェン、テオフィリン、無水カフェイン、フマル酸クレマスチン、塩酸プロメタジン、メキタジン、塩酸ジフェンヒドラミン、dl−マレイン酸クロルフェニラミン、塩酸フェニレフリン、塩酸メチルエフェドリン、塩酸エフェドリン、デキストロメトルファン、塩酸ノスカピン、塩酸メチルエフェドリン、塩酸ブロムヘキシン、サリチルアミド、イブプロフェン、フェナセチン、ジクロフェナクナトリウム、クエン酸モサプリド、キニーネ、ジギタリス、塩化ベルベリン、塩酸メクロフェノキサート、塩酸エチレフリン、塩酸トリヘキシフェニジルなどが挙げられる。本発明の薬物層においては、医薬化合物以外にも、非活性成分を含んでいてもよく、その非活性成分としては、ヒドロキシプロピルセルロースなどの水溶性セルロース類、ポリビニルピロリドンなどが挙げられる。
医薬化合物を含有する薬物層は、転動流動コーティング造粒機などの装置を用いて上記「核粒子」、「被覆層で被覆された核粒子」あるいは後述の「レイヤリング用核粒子」にエタノールあるいはエタノール/水混合液に薬物と上記非活性成分とを溶解あるいは懸濁させた「薬物層」成分をスプレーコーティングして形成される。得られた「コーティング用核粒子」は必要に応じて篩処理してもよく、平均粒子径として75〜250μmの粒度の揃った核粒子を得ることが好ましい。
コーティング装置としては、本発明においては、前記核粒子を転動流動させることができるものであれば特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、複合型造粒コーティング装置(例えばフロイント産業(株)製「スパイラフロー」など)、遠心転動造粒コーティング装置(例えば、フロイント産業(株)製「グラニュレックス」など)、遠心流動型コーティング造粒装置(例えばフロイント産業(株)製「CFグラニュレーター」など)などが好適に挙げられる。
医薬化合物の配合量は、医薬化合物の種類、用途等により適宜選択されるが、治療上の有効量であれば特に制限されない。好ましくは被膜後の粒子状医薬組成物全体の10〜80重量%、さらに好ましくは10〜60重量%である。
【0026】
本発明で用いる「被膜層」とは、経口投与後口腔内ではほとんど破損せず、下層の医薬化合物の不快な味をマスキングし、消化管内において速やかに破損して下層の医薬化合物を放出することができる膜であり、通常胃溶性ポリマーであるアミノアルキルメタクリレートコポリマーEを主成分とする原料が用いられる。
被膜層にはさらに軽質無水ケイ酸、含水二酸化ケイ素、重質無水ケイ酸、無水ケイ酸水加物、ケイ酸アルミン酸マグネシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、ケイ酸アルミニウム、水酸化アルミナマグネシウム、酸化チタン、またはタルクである添加剤を1または2以上を含んでいてもよい。好ましくは軽質無水ケイ酸である。
被膜層には、さらにステアリン酸マグネシウム、タルクなどの滑沢剤を含んでいてもよい。
被膜層には、さらにポリビニルアセタールジエチルアミノアセテートを含んでいてもよく、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテートは、通常胃溶性ポリマーを含有する被膜層の被膜と同時にまたは別にオーバーコーティングなどして被膜してもよい。
被膜層は、上記被膜層に含有される成分をエタノール、水、またはエタノール/水混合液に溶解あるいは懸濁させた被膜液を、転動流動コーティング造粒機などの装置を用いて上記「コーティング用核粒子」にスプレーコーティングして形成される。被膜液の溶媒としては、エタノール/水混合液が好ましい。
また、本発明の被膜層においては、上記で挙げた成分以外にも、界面活性剤、粘着防止剤、消泡剤、甘味料、着色料、香料など一般にコーティングに用いられている添加剤を配合してもよく、その添加剤としては特に限定されるものではない。
コーティング装置としては、本発明においては、前記「コーティング用核粒子」を転動流動させることができるものであれば特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、複合型造粒コーティング装置(例えばフロイント産業(株)製「スパイラフロー」など)、遠心転動造粒コーティング装置(例えば、フロイント産業(株)製「グラニュレックス」など)、遠心流動型コーティング造粒装置(例えばフロイント産業(株)製「CFグラニュレーター」など)などが好適に挙げられる。
本発明における被膜層をコーティングする前に、薬物層表面のスムージングを目的として、水溶性被膜を形成してもよく、その水溶性被膜の成分としては、ヒプロメロースなどの水溶性セルロース類、マンニトールなどの糖アルコール類、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコールなどが挙げられ、転動流動コーティング造粒機などの装置を用いて上記「コーティング用核粒子」に水あるいはエタノール/水混合液に上記水溶性被膜成分を溶解させた液をスプレーコーティングして形成される。
被膜後の粒子状医薬組成物の粒子径は、口腔内崩壊錠に含有して服用する場合も含め、服用後口腔内で砂のようなザラツキ感を与えない大きさであれば特に制限されないが、好ましくは、平均粒子径が250μm以下、さらに好ましくは75μm〜250μmである。
【0027】
本発明において、粒子状医薬組成物を含有する口腔内崩壊錠とは、本発明の粒子状医薬組成物を用い、さらに賦形剤あるいは他の成分とともに、通常の錠剤製造に用いられる回転式錠剤機などを用い、通常の打錠方法によって得られる。
【0028】
本発明で用いる「レイヤリング用核粒子」とは、本発明の水膨潤性物質を主として含む成分を造粒することにより得られる核粒子、特に被覆層で核粒子表面がコーティングされた上記核粒子を意図する。好ましい大きさは、平均粒子径が30〜250μm、好ましくは50μm〜200μm、さらに好ましくは100μm〜200μmである。