【実施例1】
【0019】
本実施例は、本発明に係る光吸収組成物の製造に関するものである。
まず、アンチモン錫酸化物(日本石原産業株式会社から購入)と、3−アミノプロピルトリエトキシシランとを濃度が95体積パーセントのアルコールに混合撹拌することにより、アンチモン錫酸化物サスペンションを獲得する。このアンチモン錫酸化物におけるアンチモンと錫との比率は1:9である。また、このアンチモン錫酸化物は、光吸収微粒子とされ、その粒径が10ナノメートルないし20ナノメートルのものである。なお、アンチモン錫酸化物と、3−アミノプロピルトリエトキシシランと、アルコールとの重量比は、30:2:68である。
【0020】
粒径が1ミリメートルのジルコニウムビーズと、1000rpmのビーズミル機とを用い、前記アンチモン錫酸化物サスペンションの粉砕・分散を6時間行い、アンチモン錫酸化物スラリーを得る。
【0021】
それから、工程条件としての乾燥温度をセ氏100度に設定し、前記アンチモン錫酸化物スラリーにスプレー乾燥を行い、乾燥されたアンチモン錫酸化物混合粉末を得る。アンチモン錫酸化物と、3−アミノプロピルトリエトキシシランとを含有する、前記乾燥されたアンチモン錫酸化物混合粉末を、光吸収微粒子組成物とする。
【0022】
最後に、前記乾燥されたアンチモン錫酸化物混合粉末と、ホモポリエチレンテレフタレート樹脂顆粒とを混合させ、二軸スクリュー押出機に注入させ、セ氏240度ないしセ氏270度の押出温度での混合押出により、光吸収組成物を得る。アンチモン錫酸化物は、該光吸収組成物において、10重量パーセントを占める。
【0023】
製造された前記光吸収組成物は、アンチモン錫酸化物と、3−アミノプロピルトリエトキシシランと、ホモポリエチレンテレフタレート樹脂との3つの成分を含有する。前記光吸収組成物の総重量を100重量パーセントとする、各成分の含量は、下記の表1に示す。表内に記された数値は、小数第2位で四捨五入されたものである。
【実施例2】
【0024】
本実施例において、上述した実施例1とほぼ同様の方法により光吸収組成物を製造するが、製造工程においてスリップ剤としてステアリン酸を加わることで異なる。
まず、アンチモン錫酸化物と、3−アミノプロピルトリエトキシシランと、ステアリン酸とを濃度が95体積パーセントのアルコールに混合撹拌することにより、アンチモン錫酸化物サスペンションを獲得する。前記アンチモン錫酸化物サスペンションにおいて、アンチモン錫酸化物と、3−アミノプロピルトリエトキシシランと、ステアリン酸と、アルコールとの重量比は、30:1:1:68である。
【0025】
粒径が1ミリメートルのジルコニウムビーズと、1000rpmのビーズミル機とを用い、前記アンチモン錫酸化物サスペンションの粉砕・分散を6時間行い、アンチモン錫酸化物スラリーを得る。
【0026】
それから、工程条件としての乾燥温度をセ氏100度に設定し、前記アンチモン錫酸化物スラリーにスプレー乾燥を行い、乾燥されたアンチモン錫酸化物混合粉末を得る。アンチモン錫酸化物と、3−アミノプロピルトリエトキシシランと、ステアリン酸とを含有する、前記乾燥されたアンチモン錫酸化物混合粉末を、光吸収微粒子組成物とする。
【0027】
最後に、前記乾燥されたアンチモン錫酸化物混合粉末と、ホモポリエチレンテレフタレート樹脂顆粒とを混合させ、二軸スクリュー押出機に注入させ、セ氏240度ないしセ氏270度の押出温度での混合押出により、光吸収組成物を得る。アンチモン錫酸化物は、該光吸収組成物において、10重量パーセントを占める。
【0028】
製造された前記光吸収組成物は、アンチモン錫酸化物と、3−アミノプロピルトリエトキシシランと、ステアリン酸と、ホモポリエチレンテレフタレート樹脂との4つの成分を含有する。前記光吸収組成物の総重量を100重量パーセントとする、各成分の含量は、下記の表1に示す。表内に記された数値は、小数第2位で四捨五入されたものである。
【実施例6】
【0035】
本実施例において、上述した実施例1とほぼ同様の方法により光吸収組成物を製造するが、3-(メタクリロイルオキシ)プロピルトリメトキシシランを分散剤とすること及び、製造された光吸収サスペンションにおいて、アンチモン錫酸化物と、3-(メタクリロイルオキシ)プロピルトリメトキシシランと、アルコールとの重量比が30:5:65であることで異なる。
【0036】
本実施例において製造された光吸収組成物における光吸収微粒子、分散剤、及びポリマーの具体的の成分・含量は、下記の表1に示す。
【0037】
(比較例1)
本比較例は、光吸収組成物の製造に関するものであり、分散・乾燥されていないアンチモン錫酸化物を原料とする。このアンチモン錫酸化物におけるアンチモンと錫との比率は1:9である。また、このアンチモン錫酸化物の粒径は10ナノメートルないし20ナノメートルである。アンチモン錫酸化物と、ホモポリエチレンテレフタレート樹脂顆粒とを重量比1:9で混合させてから、前記実施例1で述べたように、二軸スクリュー押出機に注入させ、セ氏240度ないしセ氏270度の押出温度での混合押出により、光吸収組成物を得る。
【0038】
得られた前記光吸収組成物は、分散剤を有しない。この光吸収組成物の総重量を100重量パーセントとする、光吸収微粒子、及びポリマーの具体的の成分・含量は、下記の表1に示す。
【0039】
(比較例2)
本比較例は、上述した比較例1と同様に、分散・乾燥されていないアンチモン錫酸化物を原料とする方法により、光吸収組成物の製造を行う。
【0040】
本比較例は、上述した比較例1と比べ、分散・乾燥されていないアンチモン錫酸化物と、3−アミノプロピルトリエトキシシランと、ポリエチレンテレフタレート樹脂顆粒とを直接に混合させ、二軸スクリュー押出機に注入させ、セ氏240度ないしセ氏270度の押出温度での混合押出により、光吸収組成物を得る。この光吸収組成物において、アンチモン錫酸化物と、3−アミノプロピルトリエトキシシランと、ホモポリエチレンテレフタレートとの重量比は、1:0.1:8.9である。
【0041】
得られた前記光吸収組成物は、アンチモン錫酸化物と、3−アミノプロピルトリエトキシシランと、ホモポリエチレンテレフタレート樹脂との3つの成分を含有する。前記光吸収組成物の総重量を100重量パーセントとする、各成分の含量は、下記の表1に示す。表内に記された数値は、小数第2位で四捨五入されたものである。
【0042】
(比較例3)
本比較例は、上述した実施例1とほぼ同様の方法を用いるが、米国Lubrizol社のSolsperse 21000を3−アミノプロピルトリエトキシシランの代わりに、メチルエチルケトンをアルコールの代わりに採用し、アンチモン錫酸化物サスペンションを製造することで異なる。係る光吸収組成物の製造方法の詳細は後述する。
【0043】
まず、アンチモン錫酸化物と、Solsperse 21000とをメチルエチルケトンに混合撹拌することにより、アンチモン錫酸化物サスペンションを得る。このアンチモン錫酸化物サスペンションにおける、アンチモン錫酸化物と、Solsperse 21000と、メチルエチルケトンとの重量比は、30:0.6:69.4である。
【0044】
粒径が1ミリメートルのジルコニウムビーズと、1000rpmのビーズミル機とを用い、前記アンチモン錫酸化物サスペンションの粉砕・分散を6時間行い、アンチモン錫酸化物スラリーを得る。
【0045】
それから、工程条件としての乾燥温度をセ氏100度に設定し、前記アンチモン錫酸化物スラリーにスプレー乾燥を行い、乾燥されたアンチモン錫酸化物混合粉末を得る。この乾燥されたアンチモン錫酸化物混合粉末は、アンチモン錫酸化物と、Solsperse 21000とを含有する。
【0046】
最後に、前記乾燥されたアンチモン錫酸化物混合粉末と、ホモポリエチレンテレフタレート樹脂顆粒とを混合させ、二軸スクリュー押出機に注入させ、セ氏240度ないしセ氏270度の押出温度での混合押出により、光吸収組成物を得る。アンチモン錫酸化物は、該光吸収組成物において、10重量パーセントを占める。
【0047】
製造された前記光吸収組成物は、アンチモン錫酸化物と、Solsperse 21000と、ホモポリエチレンテレフタレート樹脂との3つの成分を含有する。前記光吸収組成物の総重量を100重量パーセントとする、各成分の含量は、下記の表1に示す。表内に記された数値は、小数第2位で四捨五入されたものである。
【0048】
(比較例4)
本比較例は、上述した本比較例3とほぼ同様の方法を用いるものであるが、Solsperse 21000の代わりに、Solsperse 30000を採用し、光吸収組成物を製造すを製造することで異なる。
【0049】
本比較例において製造された光吸収組成物は、アンチモン錫酸化物と、Solsperse 30000と、ホモポリエチレンテレフタレート樹脂との3つの成分を含有する。前記光吸収組成物の総重量を100重量パーセントとする、各成分の含量は、下記の表1に示す。表内に記された数値は、小数第2位で四捨五入されたものである。
【0050】
(比較例5)
本比較例は、上述した比較例1と同様に、分散・乾燥されていないアンチモン錫酸化物を原料とする方法により、光吸収組成物の製造を行う。
【0051】
本比較例は、上述した比較例1と比べ、分散・乾燥されていないアンチモン錫酸化物と、Evonik社から購入されたH−Si6440Pと、ホモポリエチレンテレフタレート樹脂顆粒とを直接に混合させ、二軸スクリュー押出機に注入させ、セ氏240度ないしセ氏270度の押出温度での混合押出により、光吸収組成物を得る。この光吸収組成物において、アンチモン錫酸化物と、H−Si6440Pと、ホモポリエチレンテレフタレートとの重量比は、1:0.2:8.8である。
【0052】
本比較例で製造された前記光吸収組成物は、アンチモン錫酸化物と、本比較例と、ホモポリエチレンテレフタレート樹脂との3つの成分を含有する。前記光吸収組成物の総重量を100重量パーセントとする、各成分の含量は、下記の表1に示す。表内に記された数値は、小数第2位で四捨五入されたものである。
各実施例及び比較例に係る光吸収組成物における光吸収微粒子、分散剤、及びポリマーの含量、ならびにその光吸収組成物における光吸収微粒子構成物の平均粒径を示す。
【表1】
【0053】
(試験例1)
本試験例は、各実施例及び各比較例で製造された光吸収組成物をフェノールで溶解させ、粒径分析器で、この溶融押出成型加工より得られた光吸収組成物における光吸収微粒子構成物の粒径を測定する。
【0054】
各実施例及び各比較例に係る光吸収組成物の光吸収微粒子構成物における粒径の測定数値が前記の表1に記される。
【0055】
表1に示すように、実施例1ないし実施例6に係る前記分散、乾燥及び溶融押出成型加工より得られた光吸収組成物における光吸収微粒子構成物の粒径は、800ナノメートル以下のものであるが、比較例1、比較例2、比較例5に係る分散・乾燥が行われていなかった工程により製造された光吸収組成物は、光吸収微粒子構成物の平均粒径が、ナノメートル級以下にすることができなかったものである。また、比較例3、比較例4は分散・乾燥が行われていた工程によるものであるが、好適な分散剤を使用していなかったので、製造された光吸収微粒子構成物の平均粒径は、800ナノメートルを上回るものであった。
【0056】
(試験例2)
本試験例は、各実施例及び各比較例で製造された光吸収組成物を原料とし、下記の工程により製造された光吸収パネルにおける光吸収放熱効果を測定する。
【0057】
各実施例及び各比較例に係る光吸収組成物と、ホモポリエチレンテレフタレート樹脂とを、1:19の重量比で混合させ、シート押出成型機により、0.4ミリメートルの厚さを有する光吸収パネルを作成する。
【0058】
前記光吸収パネルを、500ワットのハロゲンランプから100センチメートルの距離を置き、45度の角度をなし、10分間照射する。
【0059】
本試験例において、実施例1〜6及び比較例1〜5の対照例として、0.4ミリメートルの厚さを有するホモポリエチレンテレフタレートパネルを用意し、上述した通り、それを500ワットのハロゲンランプから100センチメートルの距離を置き、45度の角度をなし、10分間照射する。
【0060】
最後に、サーモグラフィ装置により各実施例、各比較例、前記ホモポリエチレンテレフタレートパネルの表面温度を測定する。また、各実施例及び各比較例の光吸収放熱効果を表現するために、各実施例及び各比較例における光吸収パネルの数値から前記ホモポリエチレンテレフタレートパネルの数値を引くことで得られた表面温度の差を、表2に記す。
各実施例及び各比較例に係る光吸収組成物により作製された光吸収パネルの表面温度とホモポリエチレンテレフタレートパネルとの表面温度の差、並びに、それら光吸収パネルにおける可視光線透過率、近赤外線遮断率及び断熱性能係数を示す。
【表2】
【0061】
表2に示すように、本試験例の結果において、各実施例における光吸収パネルと、対照例としてのホモポリエチレンテレフタレートパネルとの表面温度の差が、各比較例における光吸収パネルと、対照例としてのホモポリエチレンテレフタレートパネルとの表面温度の差より、その優れた効果が明らかであることがわかった。これにより、実施例1ないし実施例6に係る光吸収組成物から作製された光吸収パネルが優れた光吸収放熱効果を有することが実証された。
【0062】
(試験例3)
本試験例は、光吸収組成物から作製された光吸収パネルにおける可視光線透過率及びその断熱性能係数に関するものである。
【0063】
本試験例において、300ナノメートルないし2500ナノメートルの波長を有する光線で各実施例及び各比較例の光吸収パネルを照射することにより、波長が550ナノメートルでの可視光線透過率、赤外線遮断率(1から波長が950ナノメートルでの近赤外線透過率を引くもの)、及び両者の和と100との積である断熱性能係数を得る。
【0064】
図1に示すように、実施例1及び実施例3の光吸収パネルは、550ナノメートルの波長の可視光線スペクトルにおける透過率は、70パーセント以上、または80パーセントまで達したが、その950ナノメートルの波長の近赤外線スペクトルにおける透過率は低下したものであることから、本発明に係る光吸収組成物は、同時に可視光線透過率及び近赤外線遮断率を向上させることができることが分かった。
【0065】
また、可視光線透過率と近赤外線遮断率との和に100を掛けることにより算出される各光吸収パネルの断熱性能係数の数値が表2に記される。
【0066】
前記各実施例及び各比較例における、可視光線透過率及び断熱性能係数の測定結果で実証されたように、実施例1〜6の光吸収組成物から作製された光吸収パネルは優れた可視光線透過率を有するのみならず、兼ねて理想的な断熱性能係数をも有するである。