(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について具体的に説明する。
一般に、細胞培養容器を用いた細胞培養では、培養した細胞の数や状態を観察するため、細胞培養容器の表面を介して、顕微鏡により内部の撮影が行われる。
本発明では、このような細胞培養容器における培養細胞を観察するための領域(以下、観察領域と称する)に皺が発生することを防止して、撮影された写真に皺が写り込むことを防ぎ、細胞の観察を適切に行うことを可能にしている。
【0017】
このような皺の発生を防止するための手段としては、以下の実施形態において説明するように、細胞培養容器に備えたもの、細胞培養装置における積載台に備えたもの、及び細胞培養容器と積載台の両方に備えたものを挙げることができる。
まず、本発明の概略構成について、皺の発生を防止するための手段を細胞培養容器に備えたものを例として、
図1〜
図3を参照して説明する。
図1〜
図3は、それぞれ本発明の細胞培養容器の概略構成、この細胞培養容器を有する細胞培養システムの概略構成、及び同システムの概略構成の縦断面を示す図である。
【0018】
本実施形態の細胞培養容器10は、
図1に示すように、固定部材11を備えたものとすることができる。同図の例では、例えば樹脂などからなる剛性を有するフレームが細胞培養容器10の片側表面の一部に貼り付けられて備えられている。このようなフレームを細胞培養容器10の表面に貼り付けることで、細胞培養容器10の表面におけるフレームに囲まれた部分には張力が付加されて引き伸ばされ、皺が発生しない状態となる。
これにより、例えば細胞培養容器10内の培養液を攪拌することによって細胞培養容器10の表面に皺12が発生した場合でも、固定部材11により張力が付加されて引き伸ばされた観察領域には皺12が入り込むことがない。
【0019】
図2は、このような細胞培養容器10を積載台20に載置した細胞培養装置を有する細胞培養システムを示している。細胞培養容器10は、観察領域が積載台20における観察孔21上に配置されるように、積載台20上に載置され、容器固定具22により固定されている。照明装置40は、この観察領域の上方に配置されて観察領域に光を照射し、顕微鏡30は、観察孔21を介して細胞培養容器10内の細胞を撮影する構成となっている。
【0020】
図3は、このような細胞培養システムの一部を側面から見た拡大断面図である。細胞培養容器10における観察領域には固定部材11が備えられ、これにより細胞培養容器10の下側表面に皺の発生が防止された領域が形成されている。細胞培養容器10内には、培養液13と細胞14が充填されている。顕微鏡30は、積載台20における観察孔21を介して細胞培養容器10内の細胞14を撮影することができる。
これによって、固定部材11により皺の発生が防止された観察領域を通じて、細胞培養容器10内の細胞を自動的に撮影することができ、細胞の数や状況を適切に観察することが可能となる。
【0021】
一方、
図15には、従来の細胞培養容器100の様子が示されている。このような細胞培養容器100において皺120が生じた場合、同図に示されるように、観察領域においても、皺120が発生してしまう。
図16は、このような従来の細胞培養容器100を積載台200に載置した細胞培養装置を有する細胞培養システムの一部を側面から見た拡大断面図である。細胞培養容器100には、培養液130と細胞140が充填されている。このような細胞培養容器100を自動攪拌するとともに、一定時間毎に顕微鏡300により培養細胞を自動的に撮影する場合、観察孔210上の観察領域に発生した皺により、写真は不鮮明となり、細胞数のカウントや細胞の状態の観察を適切に行うことができなかった。
本発明は、細胞培養容器、及び/又は細胞培養装置に皺の発生を防止する手段を備えることで、このような問題を解消している。
【0022】
[第一実施形態]
次に、本発明の第一実施形態の細胞培養容器及び細胞培養方法について、
図4及び
図5を参照して説明する。
図4は、本実施形態の細胞培養容器の構成を示す図である。
図5は、本実施形態の細胞培養容器の外観及び部分拡大を示す図である。
本実施形態の細胞培養容器10は、軟包材を材料として、袋状(バック型)に形成した容器である。細胞培養容器10の材料として軟包材を用いることで、細胞培養容器10に可撓性・柔軟性を付与することができる。軟包材としては、例えば、特開2009−247225号公報(培養容器)や、特開2006−262876号公報(培養バッグ、培地保存方法および細胞培養方法)に記載されているものなどを用いることができる。
また、細胞培養容器10は、細胞培養に必要なガス透過性を有しており、内容物を確認できるように、一部又は全部が透明性を有している。このような条件を満たす培養容器の材料としては、例えばポリオレフィン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、スチレン系エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、シリコーン系熱可塑性エラストマー、シリコーンゴム等を挙げることができる。
【0023】
このように本実施形態の細胞培養容器10は、軟包材を材料とするため、皺が生じやすいものであるが、当該細胞培養容器10は、皺の発生を防止するための固定部材11として、フレーム11aを備えている。フレーム11aは、細胞培養容器10の下側表面に接着されており、これによって、細胞培養容器10の表面におけるフレーム11aで囲まれた部分は、皺の発生が防止された領域となっている。
【0024】
すなわち、フレーム11aは、剛性を有する枠であり、細胞培養容器10の表面を引っ張って皺を伸ばした状態で細胞培養容器10に接着される。
図4では、矩形のものを例示しているが、その形状は任意のものとすることができる。また、このようなフレーム11aの材料としては、特に限定されないが、例えばポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、PET、PMMA、環状ポリオレフィン(COP)、ABS、ポリ塩化ビニル、ステンレス、アルミ、ガラス、及びMCナイロンやポリカーボネートなどのエンジニアリングプラスチック等を用いることができる。
【0025】
細胞培養容器10には、培養する細胞と培養液が充填されている。この培養細胞としては、ヒト、その他の動物、植物、微生物などにおける各種細胞を用いることができ、例えばヒトの白血病Tリンパ腫における細胞や正常末梢血単核球、浮遊化ヒト胎児腎臓由来細胞株、造血幹細胞等を用いることができる。培養液としては、培養細胞の増殖に適したものを適宜使用することができ、特に限定されるものではないが、例えば液体培地やジェル培地などを用いることができる。
【0026】
図5は、このような細胞培養容器10の例として製造した培養バッグ(写真)を示している。この培養バッグの右下部分にフレームが接着され、固定されている。部分拡大図(写真)に示されるように、フレームで囲まれた培養バッグの表面は、張力により皺が発生していない状態となっている。一方、フレームの周囲には多くの皺がよっている。このように培養バッグにおける観察領域にフレームを固定することで、その観察領域に皺が発生することを防止でき、細胞の観察精度を向上できることがわかる。
【0027】
本実施形態の細胞培養方法は、このような細胞培養容器10に細胞と培養液を封入して積載台に載置し、細胞培養を行うものである。このとき、所定のタイミングで、ローラなどの攪拌部材を細胞培養容器10に対して押圧しながら水平方向に移動させ、細胞培養容器10内の培養液を攪拌して培養液を均一化することができる。これにより、細胞の増殖効率を向上させることが可能となる。
【0028】
また、一定時間毎に、顕微鏡30により細胞培養容器10内の細胞の自動撮影が行われる。なお、顕微鏡30による細胞培養容器10内の細胞の撮影は、細胞培養容器10を載置する積載台における観察孔を介して行われるが、
図4では、積載台を省略している。
さらに、顕微鏡30はカメラ機能を備えた顕微鏡であり、図示しないが、撮影された画像データは、情報処理装置に入力されて、その画像データにおける細胞数がカウントされる。このような顕微鏡30と、自動撮影方法及び細胞数のカウント方法は、現在一般的に使用されているものを用いることができる。なお、カメラ機能は顕微鏡30と別個に設けても良い。
【0029】
このような本実施形態の細胞培養方法によれば、細胞培養容器10は軟包材からなるため、皺が発生しやすいが、フレーム11aで囲まれた観察領域は、皺の発生が防止される。
このため、本実施形態によれば、この観察領域を介して、顕微鏡30により細胞培養容器10内の細胞の撮影を行うことで、細胞の数や状態を明瞭に観察することが可能となっている。
【0030】
[第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態の細胞培養容器及び細胞培養方法について、
図6を参照して説明する。同図は、本実施形態の細胞培養容器の構成を示す図である。
本実施形態の細胞培養容器10は、皺の発生を防止するための固定部材11として、プレート11bを備えている。
すなわち、本実施形態の細胞培養容器10の下側表面の一部には、プレート11bが接着されており、これによって、細胞培養容器10の表面におけるプレート11bが接着された部分は、皺の発生が防止された領域となっている。
【0031】
プレート11bは、その全部又は一部が透明性を有し、かつ剛性を有する平面板であり、その透明な部分を介して細胞培養容器10内の細胞を観察することができるものである。このようなプレート11bの材料としては、例えば、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、PET、PMMA、環状ポリオレフィン(COP)、ABS、ポリ塩化ビニル、シリコーン、及びポリカーボネートなどのエンジニアリングプラスチック等を用いることができる。
なお、このプレート11bを、細胞培養容器10の下側表面全体に貼り付ける構成にすることもできる。
【0032】
また、プレート11bを細胞培養容器10における観察領域上方の上側表面に接着して備えた構成とすることも好ましい。このようにすれば、細胞培養容器10の上面に皺の発生が防止された領域を形成させることができるため、照明装置40から照射される光が不規則に散乱もしくは屈折することによって、光量が不均一になるのを防ぐことができ、顕微鏡30により撮影される写真の精度を向上させることが可能となる。
本実施形態の細胞培養容器10におけるその他の点については、第一実施形態と同様のものとすることができる。また、本実施形態の細胞培養方法についても、このようなプレート11bを備えた細胞培養容器10を使用する点以外については、第一実施形態と同様のものとすることができる。
【0033】
[第三実施形態]
次に、本発明の第三実施形態の細胞培養容器及び細胞培養方法について、
図7を参照して説明する。同図は、本実施形態の細胞培養容器の構成を示す図である。
本実施形態の細胞培養容器10は、表面の一部に、剛性を有する厚みに形成された高厚部11cを備えている。この高厚部11cは、細胞培養容器10を構成する軟包材の一部を厚く形成して、剛性を有しかつ透明で平坦な観察領域を構成したもので、皺の発生が防止された領域である。
本実施形態では、このような観察領域を介して顕微鏡30による撮影を行うことで、細胞培養容器10内の細胞を適切に観察できるようになっている。
【0034】
また、本実施形態において、高厚部11cを細胞培養容器10の下面のみならず、細胞培養容器10における観察領域上方の上面に備えることも好ましい。
このようにすれば、照明装置40から照射される光が不規則に散乱もしくは屈折することによって、光量が不均一になるのを防ぐことができ、顕微鏡30により撮影される写真の精度を向上させることが可能となる。
【0035】
本実施形態の細胞培養容器10におけるその他の点については、第一実施形態と同様のものとすることができる。また、本実施形態の細胞培養方法についても、このような高厚部11cを備えた細胞培養容器10を使用する点以外については、第一実施形態と同様のものとすることができる。
【0036】
[第四実施形態]
次に、本発明の第四実施形態の細胞培養装置及び細胞培養方法について、
図8を参照して説明する。同図は、本実施形態の細胞培養装置の構成を示す図である。
本実施形態の細胞培養装置は、細胞培養容器を積載する積載台20を備えている。
積載台20は、その上面に細胞培養容器が載置される平面の台である。積載台20には、細胞培養容器の両端を積載台20に固定するための容器固定具など、細胞培養容器を定置させるための各種構成を設けることができる。また、積載台20は、観察孔21を備えている。この観察孔21を介して、顕微鏡30により積載台20に積載された細胞培養容器内の細胞を観察することができるようになっている。
【0037】
本実施形態の細胞培養装置は、積載台20の観察孔21の周囲に、皺の発生を防止する手段として固定部材23を備えている。この固定部材23としては、剛性を有するフレームを用いることができる。また、固定部材23として、粘着性を有する部材、及び/又は、摩擦係数の高い材料により形成された部材、例えばゴムなどを用いることもできる。
本実施形態における細胞培養容器としては、一般的なものを用いることができ、その材料は、第一実施形態と同様のものとすることができる。なお、後述する、積載台20のみに皺の発生を防止する手段を備えた細胞培養装置に関する第五実施形態から第八実施形態においても同様に細胞培養容器は、一般的なものを使用することができる。
【0038】
本実施形態の細胞培養方法は、細胞培養容器に細胞と培養液を封入し、本実施形態における積載台20に載置して、細胞培養を行うものである。このとき、細胞培養容器内の培養液を攪拌して培養液を均一化することができる点や、一定時間毎に、顕微鏡30により細胞培養容器内の細胞の自動撮影が行われる点については、第一実施形態と同様である。
【0039】
ここで、本実施形態では、固定部材23を備えた積載台20に対して、細胞培養容器を押し当てることで、固定部材23により細胞培養容器の下側表面における一部の領域に張力が付加されて引き伸ばされ、皺の発生が防止された領域が形成される。
具体的には、例えば細胞培養容器を左右に引き伸ばした状態で、フレーム形状の固定部材23に押し当てることで、そのフレームで囲まれた部分を皺のない状態で固定することができる。また、積載台20に対する固定部材23の高さを高くして、例えばフレーム形状の固定部材23の厚みを5mm〜10mmの大きさにして、細胞培養容器を積載台20に押し当てることにより、そのフレームで囲まれた部分を皺のない状態で固定することもできる。
このように、本実施形態によれば、この皺の発生が防止された領域を観察領域として、顕微鏡30により細胞培養容器内の細胞の撮影を行うことで、細胞培養容器内の細胞を適切に観察できるようになっている。
【0040】
[第五実施形態]
次に、本発明の第五実施形態の細胞培養装置及び細胞培養方法について、
図9を参照して説明する。同図は、本実施形態の細胞培養装置の構成を示す図である。
本実施形態の細胞培養装置は、積載台20において、皺の発生を防止する手段として固定部材23ではなく、吸引手段24を備えている点で第四実施形態と異なっている。その他の点については第四実施形態と同様のものとすることができる。
【0041】
本実施形態における吸引手段24は、観察孔21のサイドに吸引孔24aを備えており、この吸引孔24aを介して細胞培養容器の表面に陰圧が与えられる。同図の例では吸引孔24aは観察孔21の周囲2箇所に備えられているが、3又は4箇所以上に備えることもできる。
この吸引手段24は、細胞培養容器が積載台20に載置されると、細胞培養容器の下側表面における、観察孔21の周囲上方部分を吸引する。これによって、細胞培養容器における観察領域に張力を加えて引き伸ばすことができ、当該領域に皺が発生することを防止できるようになっている。
吸引手段24は、細胞培養容器の表面を吸引し、観察領域に張力を加えて皺の発生を防止できるものであれば特に限定されない。
【0042】
本実施形態の細胞培養方法では、細胞培養装置として、積載台20に吸引手段24を備えたものが使用される。この積載台20に細胞培養容器を載置して細胞の培養が行われ、一定時間毎に顕微鏡30による細胞培養容器内の細胞の自動撮影が行われるが、本実施形態では、撮影に先立って、吸引手段24により観察領域の周囲が吸引されて引き伸ばされる。
これにより、例えば細胞培養容器を攪拌することなどによって観察領域に皺が発生していたとしても、これを除去することが可能となる。
【0043】
そして、このように吸引を行った後に、顕微鏡30により細胞培養容器内の細胞の撮影が行われる。なお、吸引手段24による吸引を行いながら、顕微鏡30による細胞培養容器内の細胞の撮影を行うこともできる。
このように、本実施形態の細胞培養装置及び細胞培養方法によれば、顕微鏡30により撮影される写真に皺が写り込まないため、細胞を適切に観察することが可能になっている。
【0044】
[第六実施形態]
次に、本発明の第六実施形態の細胞培養装置及び細胞培養方法について、
図10を参照して説明する。同図は、本実施形態の細胞培養装置の構成を示す図である。
本実施形態の細胞培養装置は、積載台20において、皺の発生を防止する手段として固定部材23ではなく、押圧手段25を備えている点で第四実施形態と異なっている。その他の点については第四実施形態と同様のものとすることができる。
押圧手段25は、積載台20における観察孔21の上方に上下に移動可能に備えられた平面板である。この押圧手段25の支持及び上下移動は、図示しないが、積載台20に押圧手段25の支持部材と駆動手段を設けて、これらにより行う構成とすることができる。
【0045】
押圧手段25を構成する平面板は、細胞培養容器における細胞を観察するための領域以上の大きさのものとすることが好ましい。押圧手段25をこのようにすれば、積載台20に細胞培養容器を載置して、押圧手段25を下方に移動させることで、細胞培養容器における細胞を観察するための領域を十分に押圧して、皺を除去することが可能となる。
【0046】
本実施形態の細胞培養方法では、細胞培養装置として、積載台20に押圧手段25を備えたものが使用される。
本実施形態の細胞培養方法においても、細胞培養容器を積載台20に載置して細胞の培養が行われ、一定時間毎に顕微鏡30による細胞培養容器内の細胞の自動撮影が行われるが、本実施形態では、撮影に先立って、まず押圧手段25を下方に移動させ、押圧手段25により細胞培養容器における細胞を観察するための領域を積載台20に対して押圧する。
これによって、細胞培養容器における観察領域が引き伸ばされ、例えば細胞培養容器を攪拌することなどによって観察領域に皺が発生していたとしても、これを除去することが可能となっている。
【0047】
そして、細胞培養容器を押圧した後、押圧手段25を静かに上方に移動させて、元の位置に戻し、顕微鏡30により細胞培養容器内の細胞の撮影が行われる。
このように、本実施形態の細胞培養装置及び細胞培養方法によれば、顕微鏡30により撮影される写真に皺が写り込まないため、細胞を適切に観察することが可能になっている。
【0048】
[第七実施形態]
次に、本発明の第七実施形態の細胞培養装置及び細胞培養方法について、
図11を参照して説明する。同図は、本実施形態の細胞培養装置の構成を示す図である。
本実施形態の細胞培養装置は、積載台20において、皺の発生を防止する手段として固定部材23ではなく、移動手段26を備えている点で第四実施形態と異なっている。その他の点については第四実施形態と同様のものとすることができる。
【0049】
この移動手段26は、細胞培養容器の表面に接触する固定部材26aと、固定部材26aを移動させるための駆動手段26bを備えており、同図に示すように、観察孔21の両側2箇所に配置することができる。また、観察孔21の周囲3箇所以上に配置させることも可能である。駆動手段26bは、例えばモータとボールスクリューにより構成することができる。
固定部材26aは、接着性を有する部材、及び/又は摩擦係数の高い部材により構成され、積載台20に細胞培養容器を載置すると、細胞培養容器の表面に接触する。そして、駆動手段26bが移動手段26を観察孔21に対して反対方向に移動させると、固定部材26aが細胞培養容器の表面に接着していることにより、又は摩擦力により、移動手段26の移動と共に、細胞培養容器における観察領域が引き伸ばされる。
図11の例では、積載台20に載置された細胞培養容器は、観察領域の両側2箇所で移動手段26と接触し、移動手段26が互いに反対方向に移動することで、観察領域が引き伸ばされるようになっている。
【0050】
本実施形態の細胞培養方法では、細胞培養装置として、積載台20に移動手段26を備えたものが使用される。
また、本実施形態の細胞培養方法においても、細胞培養容器を積載台20に載置して細胞の培養が行われ、一定時間毎に顕微鏡30による細胞培養容器内の細胞の自動撮影が行われるが、本実施形態では、撮影に先立って、まず移動手段26により観察領域が引き伸ばされる。これにより、例えば細胞培養容器を攪拌することなどによって観察領域に皺が発生していたとしても、これを除去することが可能となっている。
【0051】
そして、顕微鏡30により細胞培養容器内の細胞の撮影が行われた後に、移動手段26を元の位置に戻すようにすることができる。このとき、移動後の移動手段26を下方に移動させて細胞培養容器と引き離した後、移動手段26を元の位置に移動させることで、観察領域に皺を発生させることなく移動手段26を元の位置に戻すことができる。なお、このように観察領域に皺を発生させることなく移動手段26を元の位置に戻した後に、顕微鏡30による細胞培養容器内の細胞の撮影を行うこともできる。
このように、本実施形態の細胞培養装置及び細胞培養方法によっても、顕微鏡30により撮影される写真に皺が写り込まないため、細胞を適切に観察することが可能になっている。
【0052】
[第八実施形態]
次に、本発明の第八実施形態の細胞培養装置及び細胞培養方法について、
図12を参照して説明する。同図は、本実施形態の細胞培養装置の構成を示す図である。
本実施形態の細胞培養装置は、積載台20において、皺の発生を防止する手段として固定部材23ではなく、引張り手段27を備えている点で第四実施形態と異なっている。その他の点については第四実施形態と同様のものとすることができる。
【0053】
この引張り手段27としては、例えばクランプなどを用いることができ、細胞培養容器の両端を掴み、反対方向に引っ張ることで、細胞培養容器における観察領域を引き伸ばすことができる。本実施形態の細胞培養装置には、図示しないが、引張り手段27をこのように反対方向に移動させるための駆動手段が備えられている。この駆動手段は、例えばボールスクリューやシリンダなどにより構成することができる。
なお、本実施形態において、引張り手段27の一方を固定し、他の一方の引張り手段27のみを移動させることで、細胞培養容器を引き伸ばすこともできる。また、細胞培養装置に3個又は4個以上の引張り手段27を備え、細胞培養容器をより多くの方向に引っ張る構成にすることもできる。
【0054】
本実施形態の細胞培養方法では、細胞培養装置として、積載台20に引張り手段27を備えたものが使用される。
また、本実施形態の細胞培養方法においても、細胞培養容器を積載台20に載置して細胞の培養が行われ、一定時間毎に顕微鏡30による細胞培養容器内の細胞の自動撮影が行われるが、本実施形態では、撮影に先立って、まず引張り手段27により観察領域が引き伸ばされる。これにより、例えば細胞培養容器を攪拌することなどによって観察領域に皺が発生していたとしても、これを除去することが可能となっている。
このように、本実施形態の細胞培養装置及び細胞培養方法によっても、顕微鏡30により撮影される写真に皺が写り込まないため、細胞を適切に観察することが可能になっている。
【0055】
[第九実施形態]
次に、本発明の第九実施形態の細胞培養システム及び細胞培養方法について、
図13を参照して説明する。同図は、本実施形態の細胞培養システムの構成を示す図である。
本実施形態の細胞培養システムは、
図13に示すように、細胞培養容器10と、積載台20を備えた細胞培養装置を有している。本実施形態の細胞培養システムでは、細胞培養容器10と積載台20の両方に、細胞培養容器10における観察領域の皺の発生を防止するための手段が備えられており、これらを結合させることで、当該観察領域を引き伸ばすことが可能となっている。
【0056】
すなわち、本実施形態における細胞培養容器10には、下側表面上の観察領域の周囲四隅に、凸形状を有する結合部材11dが備えられている。また、積載台20の観察孔21の周囲四隅には、結合部材11dと嵌合する結合孔28が備えられている。細胞培養容器10を積載台20に載置するときに、細胞培養容器10の観察領域の周囲四隅に備えられた結合部材11dを、積載台20の観察孔21の周囲四隅に備えられた結合孔28にそれぞれ結合させる。これによって、観察領域に張力を加えて引き伸ばすことが可能となっている。
【0057】
なお、
図13の例では、細胞培養容器10の結合部材11dと積載台20の結合孔28をそれぞれ4個設けているが、それぞれ3個又は5個以上設けても良い。また、同図の例では、結合部材11dを凸形状とし、結合孔28に嵌合する構成にしているが、細胞培養容器10の結合部材11dを磁石で構成するとともに、積載台20に結合部材11dと結合する金属又は磁石からなる結合部材を備えるようにしても良い。
【0058】
本実施形態の細胞培養システムは、細胞培養容器10と積載台20の両方に、観察領域の皺の発生を防止するための手段を備え、これらを結合させることで、観察領域を引き伸ばすことができるものであれば良く、上記以外の皺の発生を防止するための手段を用いても良い。例えば、細胞培養容器10と積載台20の両方に、接着手段を備え、これらを結合させることで、観察領域を引き伸ばす構成とすることもできる。また、後述する第十実施形態も本実施形態の応用例である。
なお、細胞培養容器10の材料や顕微鏡30の構成など、その他の点については第一実施形態と同様のものとすることができる。
【0059】
本実施形態の細胞培養方法では、細胞及び培養液を封入した細胞培養容器10を積載台20に載置するときに、細胞培養容器10の観察領域の周囲四隅に備えられた結合部材11dを、積載台20の観察孔21の周囲四隅に備えられた結合孔28にそれぞれ結合させ、観察領域は張力が加えられて引き伸ばされる。
したがって、細胞培養中に例えばローラなどを細胞培養容器10に押圧して移動させることにより、細胞培養容器10内の培養液を攪拌した場合でも、観察領域における皺の発生を防止することができる。このため、観察領域を介して顕微鏡30より定期的に細胞培養容器10内の細胞を自動撮影するときに、皺が写り込むことがなく、細胞の観察を適切に行うことが可能になっている。
【0060】
[第十実施形態]
次に、本発明の第十実施形態の細胞培養システム及び細胞培養方法について、
図14を参照して説明する。同図は、本実施形態の細胞培養システムの構成を示す図である。
本実施形態の細胞培養システムは、
図14に示すように、細胞培養容器10と、積載台20を備えた細胞培養装置を有している。
細胞培養容器10は、その観察領域を積載台20に固定するための耳部材11eを備え、積載台20は、耳部材11eを掴んで引っ張るための引張り手段29を備えている。
【0061】
耳部材11eは、細胞培養容器10の下側表面上における観察領域の両側に配置されている。同図の例では、それぞれ細胞培養容器10の短尺方向に配置されているが、長尺方向に配置することもできる。また、耳部材11eの長さは、それぞれ側方の、観察領域の辺の長さ以上とすることが好ましい。
引張り手段29は、積載台20における観察孔21の両側に配置されており、積載台20に細胞培養容器10を載置したときに、それぞれ耳部材11eを掴んで下方に引っ張る構成となっている。具体的には、引張り手段29は、耳部材11dを掴むためのアクチュエータ29aと、アクチュエータ29aを下方に移動させるためのシリンダ29bを備えたものとすることができる。
【0062】
このように、本実施形態の細胞培養システムによれば、細胞培養容器10の観察領域の両側に配置された耳部材11eを、積載台20の観察孔21の両側に配置された引張り手段29により下方に引っ張ることができる。このため、観察領域は引き伸ばされて皺の発生が防止されるようになっている。なお、細胞培養容器10の材料や顕微鏡30の構成など、その他の点については第一実施形態と同様のものとすることができる。
【0063】
本実施形態の細胞培養方法では、細胞及び培養液を封入した細胞培養容器10を積載台20に載置するときに、積載台20の引張り手段29により、細胞培養容器10の耳部材11eを掴ませることができる。そして、細胞の培養が行われ、一定時間毎に顕微鏡30による細胞培養容器内の細胞の自動撮影が行われるが、本実施形態では、撮影に先立って、引張り手段29により耳部材11eを下方に引っ張り、観察領域を引き伸ばして皺を除去してから撮影することができる。また、このように引張り手段29により耳部材11eを下方に引っ張った状態で固定し、細胞培養を行うこともできる。
このように、本実施形態の細胞培養システム及び細胞培養方法によっても、顕微鏡30により撮影される写真に皺が写り込まないため、細胞を適切に観察することが可能になっている。
【0064】
本発明は、以上の実施形態や実施例に限定されるものではなく、本発明の範囲内において、種々の変更実施が可能であることは言うまでもない。
例えば、上記実施形態及び実施例では、細胞を培養する場合について説明しているが、例えば微生物や組織、器官などその他の有機体、又は無機物などの観察が必要となる場合において、細胞培養容器に皺が発生することを防止するなど適宜変更することが可能である。