特許第5764986号(P5764986)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5764986
(24)【登録日】2015年6月26日
(45)【発行日】2015年8月19日
(54)【発明の名称】バイオチップ
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/64 20060101AFI20150730BHJP
   G01N 21/03 20060101ALI20150730BHJP
【FI】
   G01N21/64 Z
   G01N21/03 Z
【請求項の数】2
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2011-54196(P2011-54196)
(22)【出願日】2011年3月11日
(65)【公開番号】特開2012-189489(P2012-189489A)
(43)【公開日】2012年10月4日
【審査請求日】2014年2月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089875
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 茂
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 展雄
【審査官】 横尾 雅一
(56)【参考文献】
【文献】 特表2009−505066(JP,A)
【文献】 特開2004−069397(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/117651(WO,A1)
【文献】 特開2009−063310(JP,A)
【文献】 特開2003−344288(JP,A)
【文献】 特開2010−071675(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/62−21/83
G01N 35/00−37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光透過性の合成樹脂材料からなる円板状基板と、
前記基板の厚さ方向の中間部で該基板の外周部に周方向に間隔をおいて形成された複数の反応槽とを備え、
前記反応槽は、前記基板の厚さ方向の一方に位置する底面と、前記底面に対向する上面と、前記上面と前記底面との周縁同士を接続する側面とによって検体および試薬の混合液が格納される収容空間を形成し、
前記基板の厚さ方向の一方の面および前記底面を透過して前記収容空間に入射される励起光前記混合液に照射することで前記混合液から励起される蛍光が、前記基板の半径方向において前記収容空間の前記半径方向の外側に位置する前記側面を透過して前記基板の外周面から外方へ射出される蛍光を検出するバイオチップであって、
前記蛍光が透過する前記各外周面の箇所に、前記蛍光を集束して外方へ射出するフレネルレンズが前記反応槽毎にそれぞれ形成されている、
ことを特徴とするバイオチップ。
【請求項2】
前記基板は該基板の中心の箇所が回転軸に脱着可能に取着されるように構成され、
前記基板が前記回転軸に取着された状態で前記回転軸と共に回転される、
ことを特徴とする請求項1記載のバイオチップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はバイオチップに関する。特に、蛍光検出法を用いたバイオチップに関する。
【背景技術】
【0002】
DNA(デオキシリボ核酸)型の一致/不一致を調べるための技術として蛍光検出法が公知である。この蛍光検出法は、調べたい塩基配列部分と特異的に相互作用するDNA断片を蛍光色素で染色し、蛍光強度によってDNA型の一致/不一致を検出・可視化する方法である。そして、この蛍光検出法を用いてDNA型を調べるにあたり、検体と蛍光試薬が入った容器に対して励起光を照射し、そこからの蛍光強度を検出している。
【0003】
容器として、数乃至数百マイクロリットル程度の容量の小型試験管が存在する。一般に、使い捨てでプラスチック製で汚染や蒸発損失を防ぐための蓋が付随し、チューブと呼ばれる。また、チューブを8×12程度のアレイ状に配列してひと纏めにした、プレートと呼ばれる容器も存在する。これらの容器を用いて蛍光検出を行う装置として、特許文献1が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−2955号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の発明は、従来の容器を用い、フレネルレンズを含む光学系を全て装置側で構成している。容器自体の加工・工夫は行っていない。そのため、容器とフレネルレンズとの間に必然的に隙間が生じる光学系となっていた。
【0006】
また、前処理・増幅・検出といった一連の工程を連続して実行するため、流路で繋いだ複数の反応槽に予め各工程用の試薬をセットしたバイオチップが存在する。チューブ等に比べてバイオチップは汎用性を犠牲にして各用途に特化されており、多種多様なバイオチップが存在する。回転運動させながら蛍光検出を行うバイオチップも存在し、この場合、バイオチップとフレネルレンズとの隙間が広がり、十分な蛍光強度を得辛い傾向があった。
【0007】
本発明は、検出される蛍光強度を改善することができるバイオチップを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、光透過性の合成樹脂材料からなる円板状基板と、前記基板の厚さ方向の中間部で該基板の外周部に周方向に間隔をおいて形成された複数の反応槽とを備え、前記反応槽は、前記基板の厚さ方向の一方に位置する底面と、前記底面に対向する上面と、前記上面と前記底面との周縁同士を接続する側面とによって検体および試薬の混合液が格納される収容空間を形成し、前記基板の厚さ方向の一方の面および前記底面を透過して前記収容空間に入射される励起光前記混合液に照射することで前記混合液から励起される蛍光が、前記基板の半径方向において前記収容空間の前記半径方向の外側に位置する前記側面を透過して前記基板の外周面から外方へ射出される蛍光を検出するバイオチップであって、前記蛍光が透過する前記各外周面の箇所に、前記蛍光を集束して外方へ射出するフレネルレンズが前記反応槽毎にそれぞれ形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、蛍光が基板の半径方向において収容空間の半径方向の外側に位置する側面を透過して基板の外周面から外方へ射出される各外周面の箇所に、蛍光を集するフレネルレンズが応槽毎にそれぞれ形成されているため、バイオチップとフレネルレンズとの間に形成される隙間を実質的になくした光学系を形成することができる。したがって、蛍光指向性を制御できて蛍光強度が上がるため、検体の判定精度を向上することができる。
また、バイオチップを動径方向(基板の半径方向)に厚くすることなく、また、ウェル内壁形状(反応槽の内壁形状)に影響を与えることなく、回転中のバイオチップの蛍光指向性を制御できて蛍光強度が上がるため、DNA型の一致/不一致の判定精度が向上する。
【0010】
なお、一般に、バイオチップは急加熱と急冷却を繰り返すために厚さが重要である。また、検体と試薬の攪拌混合流動のためにウェル内壁形状が重要である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】バイオチップ1の構成を示す図である。
図2図1のバイオチップ1のA−A断面図であり、装置と関連した光線の概略図である。
図3】従来型のバイオチップの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態によるバイオチップについて図面を参照して説明する。
図1は、同実施形態によるバイオチップの構成を示す図であり、バイオチップと装置の配置を示す図である。
バイオチップ1は、反応槽2、フレネルレンズ3から構成されており、検体及び試薬の混合液4が格納されている。
【0013】
具体的に説明すると、バイオチップ1は、基板1Aと、複数の反応槽2と、フレネルレンズ3とを含んで構成されている。
基板1Aは円板状を呈している。
基板1Aは該基板1Aの中心の箇所が後述する装置10の回転軸11に脱着可能に取着されるように構成されており、基板1Aが回転軸11に取着された状態で回転軸11と共に回転されるように構成されている。
本実施の形態では、基板1Aは光が透過可能な合成樹脂材料で構成されている。このような合成樹脂材料としてポリプロピレンなど従来公知のさまざまな合成樹脂材料が採用可能である。
複数の反応槽2は、基板1Aの厚さ方向の中間部で該基板1Aの外周部に周方向に間隔をおいて形成されている。
本実施の形態では、複数の反応槽2は同形同大を呈し、周方向に等間隔をおいて形成されている。
反応槽2は、基板1Aの厚さ方向の一方に位置する底面102と、底面102に対向する上面104と、上面104と底面102とを接続する側面106とによって検体および試薬の混合液4が格納される収容空間Sを形成している。
励起光は、基板1Aの厚さ方向の一方の面と底面102との間に位置する基板1Aの部分を透過して、すなわち、基板1Aの厚さ方向の一方の面および底面102を透過して収容空間Sに格納された混合液4に照射される。
これにより励起光が照射されることにより混合液4から発生する蛍光は、側面106と基板1Aとの間に位置する基板1Aの部分を透過して、すなわち、側面106および基板1Aの外周面を透過して外周面から検出される。
フレネルレンズ3は、蛍光を集光するものであり、蛍光が透過する基板1Aの外周面の箇所に反応槽2毎に形成されている。
【0014】
また、装置10は、回転用モータ7、回転軸11、光源12、検出部13、図示しない温調部を含んで構成されている。
回転用モータ7の駆動軸と回転軸11とは、図示しないベルトで連結され、回転用モータ7の回転駆動力が前記ベルトを介して回転軸11に伝達されるように構成されている。
回転軸11は、基板1Aの中心の箇所が脱着可能に取着されるものであり、回転用モータ7の回転駆動力によりバイオチップ1を回転させる。
光源12は、回転軸11に取着された基板1Aの反応槽2の下方に配置され、励起光を反応槽2に向けて照射することにより、収容空間Sに格納された混合液4に励起光を照射させるものである。
検出部13は、回転軸11に取着された基板1Aの外周面に対向して配置され、収容空間Sに格納された混合液4で発生しフレネルレンズ3を介して集光された蛍光を検出することにより蛍光強度を検出するものである。
前記温調部は、反応槽2の収容空間に格納された検体および試薬の混合液4の温度調整を行うものである。
【0015】
(実施例)
図1を用いて、バイオチップ1の実施例について説明する。
バイオチップ1の形状は円盤状で、外径は80mm、厚さは2mm、反応槽2の容量は20μLである。反応槽2は18あり、バイオチップ1の円周付近に、回転中心から同心円上に配置されている。バイオチップ1の素材はポリプロピレンである。
【0016】
血液由来の検体に対してPCRを行い選択的にDNAを増幅し、体細胞変異検出試薬を混合して十分に攪拌した後、99℃から60℃に冷却しながら蛍光強度を検出する。冷却速度は、遅い速度1℃/分を保持する。バイオチップ1を回転させながら蛍光検出を行うのは、それぞれの反応槽2に対してビーム(励起光)を走査するためでもあるが、全ての反応槽2で同じ冷却速度を得るためでもある。
【0017】
回転しているバイオチップ1の下面から励起光を照射し、反応槽2からの蛍光を側面から検出する。蛍光は、側面に形成されたフレネルレンズ3によって集束される。
言い換えると、反応槽2において検体に試薬を混合することで混合液4を調整し、この混合液4を温調部によって加熱する。
回転用モータ7によりバイオチップ1を回転させつつ、光源12から反応槽2の混合液4に励起光を照射する。
励起光が照射されることによって混合液4から発生した蛍光は、フレネルレンズ3によって集光され検出部13に導かれ、これにより検出部13によって蛍光強度が検出される。
【0018】
本発明者は鋭意研究を重ねた結果、図で示すような、従来型のバイオチップに比較して、検出される蛍光強度が上がり、DNA型の一致/不一致の判定精度が向上することを見出した。
すなわち、図に示す従来型のバイオチップでは、装置側にフレネルレンズを設けるという構成上、反応槽2の混合液4とフレネルレンズとの間に隙間が生じるので、検出部によって十分な蛍光強度を得る上で不利がある。
これに対して本発明のバイオチップ1では、蛍光が透過する基板1Aの外周面の箇所に、蛍光を集光するフレネルレンズ3が、反応槽2毎に形成されているため、バイオチップ1とフレネルレンズ3との間に形成される隙間を実質的になくした光学系を形成できる。したがって、蛍光指向性を制御できて蛍光強度が上がるため、検体の判定精度を向上することができるという効果が得られる。
【符号の説明】
【0019】
1・・・バイオチップ
1A・・・基板
102・・・底面
104・・・上面
106・・・側面
2・・・反応槽
3・・・フレネルレンズ
4・・・検体と試薬の混合液
11・・・回転軸
12・・・光源
13・・・検出部
S・・・収容空間
図1
図2
図3