(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このような自己集塵タイプの集塵カバーは、そのカバー本体がディスク形の先端工具の外周を全周に亘って覆う底付き円筒状に形成されているので、壁際などを研削する際には、集塵カバーを取り外して、スピンドルに先端工具のみを取り付けた状態で作業を行なう必要がある。
【0009】
従来の構造では、ディスクグラインダから集塵カバーを取り外す作業は、まず、スピンドルから先端工具と遠心ファンを順次取り外し、次いでケース本体をボス部から取り外した後、スピンドルの先端に先端工具を取り付けるようにしている。また、再度集塵カバーをディスクグラインダに装着する際には、上記とは逆の手順が行われる。
【0010】
このように、従来の集塵カバーでは、そのディスクグラインダへの着脱は、カバー本体、遠心ファンおよび先端工具をそれぞれ個別に取り外す必要があり、その作業は煩雑であった。
【0011】
本発明の目的は、携帯型のディスクグラインダへの集塵カバーの着脱作業を容易にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の集塵カバーは、スピンドルに先端工具が取り付け可能な携帯型のディスクグラインダに装着される集塵カバーであって、前記ディスクグラインダに取り付け可能な取付部と、前記取付部と反対側を向く軸方向端面に設けられ、前記先端工具の外周を覆う円筒状のカバー部と、排出口に連なるボリュート流路を備え、吸入口を前記先端工具の側に向けて前記ディスクグラインダに固定されるボリュートケース部と、前記ボリュートケース部に収容され、前記先端工具と前記取付部の間において前記スピンドルに取り付けられる遠心ファンと、前記ボリュートケース部が前記ディスクグラインダから取り外されたときに前記遠心ファンを前記ボリュートケース部の内部で径方向に位置決めする
第1の位置決め手段とを有し、前記遠心ファンを収容した状態のまま前記ボリュートケース部を前記ディスクグラインダに着脱可能であることを特徴とする。
【0013】
前記第1の位置決め手段は、前記ボリュートケース部の軸方向を向く内面に設けられた円形凹部と、前記遠心ファンに設けられて前記円形凹部に配置される円板状の基板とにより構成される。
【0014】
より具体的には、前記第1の位置決め手段は、前記ボリュート流路の内側であって前記ボリュートケース部の軸方向を向く内面に設けられた円形凹部と、前記遠心ファンに設けられて前記円形凹部に配置される円板状の基板とによ
り構成される
。
【0016】
本発明の
一態様では、
前記ボリュートケース部が前記ディスクグラインダから取り外されたときに前記遠心ファンを前記ボリュートケース部の内部で径方向に位置決めする第2の位置決め手段が設けられる。この第2の位置決め手段は、前記ボリュートケース部の軸方向を向く内面に軸方向に対して傾斜して設けられた環状の傾斜面と、前記遠心ファンの前記傾斜面に対向する端面に設けられて前記傾斜面と同一方向に傾斜する傾斜辺部とによ
り構成される
。
【0017】
本発明の
他の態様では、前記
第1の位置決め手段
と前記第2の位置決め手段とは、前記遠心ファンの軸方向両側にそれぞれ設けられている
。
【0018】
本発明の
他の態様では、前記取付部は、前記ディスクグラインダに取付可能とする固定手段を備え、前記固定手段は外部から手動により操作可能である
。
【0019】
本発明の
他の態様では、前記取付部は、前記ボリュートケース部に設けられ
、ボス部の外周面に係合する半円筒形の第1アダプタと、前記第1アダプタとは別体の半円筒形に形成され、前記ボス部を挟んで前記第1アダプタに組み合わされる第2アダプタと、前記第1アダプタと前記第2アダプタの一端側を連結する連結部材と、前記第1アダプタと前記第2アダプタの他端を連結するとともに互いの間隔を狭める方向に駆動可能なカム機構と、前記カム機構を操作するロックアームとを有し、前記第1アダプタと前記第2アダプタとが前記ボス部を挟持する固定状態となったときに、前記ロックアームは長手方向全体が前記ボリュートケース部の外面に沿って配置される
。
【0020】
本発明のディスクグラインダは、電動モータを収容するハウジングと、前記ハウジングから延出し、先端工具が装着されるスピンドルと、前記スピンドル周りに配置される被取付部と、前記被取付部に取り付けられて前記先端工具を覆う上記集塵カバーと、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、遠心ファンはボリュートケース部に収容され、ディスクグラインダから取り外された状態でも位置決め手段によりボリュートケース部の内部で径方向に位置決めされるので、集塵カバーをディスクグラインダに装着する際には、ボリュートケース部をボス部に固定することにより、遠心ファンを、その径方向位置を調整することなくスピンドルに装着することができる。また、集塵カバーをディスクグラインダから取り外す際には、ボリュートケース部をボス部から取り外すことにより、当該ケースとともに遠心ファンをスピンドルから取り外すことができる。このように、ボリュートケース部と遠心ファンとを1つのユニットとして集塵カバーをディスクグラインダに着脱することができるので、ディスクグラインダへの集塵カバーの着脱作業を容易にすることができる。
【0022】
本発明によれば、ボリュートケース部と遠心ファンのいずれか一方に設けた凹部に、ボリュートケース部と遠心ファンのいずれか他方に凹部と同軸に設けた凸部を配置することにより、遠心ファンをボリュートケース部に径方向に位置決めさせるようにしたので、位置決め手段を簡単な構成とすることができる。
【0023】
本発明によれば、ボリュートケース部の軸方向を向く内面に設けた円形凹部に遠心ファンに設けた円板状の基板を配置した構造により、遠心ファンをボリュートケース部の内部で径方向に位置決めするようにしたので、ボリュートケース部の遠心ファンから加えられる荷重を支持する部分の体積を大きくして、位置決め手段の強度や耐久性を高めることができる。
【0025】
本発明によれば、ボリュートケース部の軸方向を向く内面に軸方向に対して傾斜して設けた環状の傾斜面に、遠心ファンの傾斜辺部を対向させた構造により、遠心ファンをボリュートケース部の内部で径方向に位置決めするようにしたので、遠心ファンの各羽根に、これらの通過断面積を一定にするために設けられる傾斜辺部を利用した簡単な構成で位置決め手段を構成することができる。
【0026】
本発明によれば、ロックアームの操作によりボリュートケース部をボス部に固定し、また、固定を解除することができるので、ボリュートケース部を簡単な操作でボス部に着脱することができる。また、ボリュートケース部がボス部に固定されたときには、ロックアームの長手方向全体がボリュートケース部の外面に沿って配置されるようにしたので、操作性の向上のために長尺のロックアームを用いるようにしても、このロックアームを作業の邪魔にならないようにすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の一実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0029】
図1に示す携帯型(手持ち式)のディスクグラインダ11はディスクサンダーとも呼ばれるものであり、コンクリートや石材等の被削材の表面を平らに研削する平面研削作業に用いられる。
【0030】
このディスクグラインダ11は円筒形に形成された本体ケース13を備えており、この本体ケース13の内部には電動モータ14が収容されている。電動モータ14は本体ケース13の後端部から引き出された電源コード15を介して図示しない商用電源に接続され、この商用電源から供給される電力により作動する。
【0031】
本体ケース13の先端部分にはギヤケース16が取り付けられ、本体ケース13とギヤケース16とでこのディスクグラインダ11のハウジングが構成されている。
【0032】
このギヤケース16は本体ケース13の軸方向に直交する円筒状のボス部16aを備えており、このボス部16aに回転自在に支持されてギヤケース16にはスピンドル17が設けられている。スピンドル17はボス部16aと同軸に配置されており、その先端部分はボス部16aからギヤケース16の外部に向けて突出している。ギヤケース16の内部には一対のベベルギヤ18a,18bが収容されており、これらのベベルギヤ18a,18bにより電動モータ14の回転が90度方向を変えてスピンドル17に伝達されるようになっている。
【0033】
スピンドル17の先端には、ディスク形(ホイール形)の先端工具としてのダイヤモンド砥石ホイール19が取り付けられている。このダイヤモンド砥石ホイール19は鋼板によりカップ形に形成された基板19aを備えており、この基板19aの表面にはそれぞれ平面状に並べられた複数のダイヤモンド砥石19bが接着等の手段により固定されている。ダイヤモンド砥石ホイール19は、その基板19aの軸心においてスピンドル17の先端に装着され、このスピンドル17に装着されたワッシャ21とスピンドル17の先端にねじ結合されたナット22との間に挟み込まれて固定されている。また、ナット22を取り外すことにより、ダイヤモンド砥石ホイール19をスピンドル17から取り外すことができる。
【0034】
本体ケース13に設けられた図示しない電源スイッチがオンされると、電動モータ14に電力が供給され、スピンドル17とともにダイヤモンド砥石ホイール19が電動モータ14に駆動されて回転する。回転したダイヤモンド砥石ホイール19の表面全体を被削材の表面に均一に押し当てて前後左右に動かすことにより、被削材の表面を平らに研削する平面研削作業を行うことができる。
【0035】
なお、本実施の形態においては、ディスク形の先端工具としてダイヤモンド砥石ホイール19を用いるようにしているが、これに限らず、その表面全体を被削材の表面に押し当てることにより被削材の表面を平らに研削することができる工具であれば、例えばサンディングディスクなど、他の先端工具を用いるようにしてもよい。
【0036】
このディスクグラインダ11には、研削作業により発生する研削粉等の粉塵の飛散を防止するために、集塵カバー31が着脱自在に装着されている。この集塵カバー31は集塵アダプタとも呼ばれるものであり、遠心ファン32により粉塵を強制的に集塵バック33に集塵する自己集塵タイプとなっている。
【0037】
集塵カバー31はナイロン等の樹脂材料により形成されたボリュートケース部34を備えている。このボリュートケース部34は、集塵カバー31がディスクグラインダ11に装着されると、ディスクグラインダ11とダイヤモンド砥石ホイール19との間に配置される。
【0038】
図2に示すように、ボリュートケース部34は、カップ状に形成された第1ケース半体34aと第2ケース半体34bとを、その開口端を突き合わせるように軸方向に組み合わせ、図示しないボルト等の締結手段により互いに締結することにより構成されている。つまり、ボリュートケース部34は軸方向に分割可能となっている。
【0039】
ボリュートケース部34は、ダイヤモンド砥石ホイール19よりも大径の略円筒状に形成された周壁35と、スピンドル17の軸方向に垂直な略円板状に形成された天壁36、底壁37とを備えている。ボリュートケース部34の内部には、円柱状の空間としてファン収容室38が設けられ、このファン収容室38の外周側にはボリュート流路39が設けられている。ボリュート流路39は、周方向に向けて径方向寸法と軸方向寸法とが徐々に拡大し、つまり、その通過面積が徐々に拡大する形状に形成されている。ボリュート流路39の下流端はボリュートケース部34の周壁35に設けられた排出口としての排出ダクト41に連ねられている。排出ダクト41は、周壁35から接線方向に向けて突出する円筒状に形成されており、その先端に前述の集塵バック33が取り付けられている。
【0040】
ボリュートケース部34の天壁36には、ボリュートケース部34をディスクグラインダ11のスピンドル17周りに配置される被取付部としてのボス部16aに固定するために、取付部42が設けられている。この取付部42がボス部16aに取り付けられることにより、集塵カバー31はディスクグラインダ11に装着される。
【0041】
図4に示すように、取付部42はボス部16aの外径寸法と同一の内径寸法を有する半円筒形の第1アダプタ42aと、ボス部16aの外径寸法と同一の内径寸法を有する半円筒形に形成されて第1アダプタ42aと組み合わされる第2アダプタ42bとを備えている。第1アダプタ42aは天壁36と一体に形成されており、第2アダプタ42bは第1アダプタ42aとは別体に樹脂材料により形成されている。第1アダプタ42aはその内周面においてボス部16aの外周面に係合し、第2アダプタ42bはその内周面において第1アダプタ42aとは反対側からボス部16aの外周面に係合する。第1アダプタ42aの一端は第2アダプタ42bの一端に連結部材であるボルト43aとナット43bとにより連結され、第1アダプタ42aの他端は第2アダプタ42bの他端にボルト44aとナット44bとにより連結されている。
【0042】
第1アダプタ42aの他端を第2アダプタ42bの他端に連結するボルト44aには固定手段としてのカム機構45が設けられている。カム機構45は、ボルト44aにピン結合されたカム45aを有し、このカム45aを回転操作するためのロックアーム46がカム45aに固定されている。取付部42をボス部16aに嵌め込んだ状態つまり各アダプタ42a,42bの間にボス部16aを配置した状態でロックアーム46をロック方向に操作すると、カム45aにより第2アダプタ42bが第1アダプタ42aの方向に押し付けられて、第1アダプタ42aと第2アダプタ42bとが、互いの間隔を狭める方向に駆動される。これにより、第1アダプタ42aと第2アダプタ42bとの間にボス部16aを挟持して、取付部42はボス部16aに固定された固定状態とされる。反対に、ロックアーム46を解除方向に操作すると、カム45aによる第1アダプタ42aと第2アダプタ42bの押し付けが解除され、取付部42はボス部16aに着脱可能な非固定状態とされる。
【0043】
ロックアーム46は鋼板等により長尺の棒状に形成されており、その先端部は直角に曲げられて係止部46aとされている。カム機構45がボス部16aを挟持しない非固定状態のときには、
図4(a)に示すように、ロックアーム46は、その長手方向先端側の半分程度がボリュートケース部34の天壁36の外面から外側に突出している。これにより、ロックアーム46の先端側を用いた操作が容易になる。
【0044】
一方、ロックアーム46がロック方向に操作され、カム機構45がボス部16aを挟持する固定状態とされると、
図4(b)に示すように、ロックアーム46は、その長手方向全体がボリュートケース部34の天壁36の外面に沿って配置され、その先端の係止部46aがボリュートケース部34の周壁35に係合した状態となる。これにより、作業時にロックアーム46がボリュートケース部34から突出することがなく、つまり、ロックアーム46を作業の邪魔にならないようにすることができる。また、係止部46aがボリュートケース部34の周壁35に係合することにより、ロックアーム46の過度の回転を防止して、カム機構45を保護することができる。
【0045】
このように、本発明では、ロックアーム46を外部から手動で操作することにより、取付部42を容易にボス部16aに着脱することができるので、この集塵カバー31のディスクグラインダ11への着脱作業を容易にすることができる。また、ボリュートケース部34がボス部16aに固定されたときには、ロックアーム46の長手方向全体がボリュートケース部34の外面に沿って配置され、作業の邪魔にならないので、カム機構45の操作性の向上のために長尺のロックアーム46を用いることができる。
【0046】
なお、ボス部16aの外周面と各アダプタ42a,42bの内周面は、それぞれ、その先端側(スピンドル17が突出する側)の外径寸法が基端側の外径寸法よりも僅かに大きいテーパ状に形成されている。これにより、各アダプタ42a,42bがボス部16aから容易に抜けないようにして、ボリュートケース部34を確実にボス部16aに固定することができる。
【0047】
前述の遠心ファン(集塵ファン)32は、ボリュートケース部34の内部に設けられたファン収容室38に収容されている。
【0048】
遠心ファン32は樹脂材料により形成されており、径方向両端側が回転方向前方側に向けて湾曲する複数枚の前向き羽根32aが円形の基板32bの上に放射状に並べて配置されたシロッコファンとなっている。遠心ファン32の軸心には二面取りされた装着孔32cが設けられており、
図1に示すように、この装着孔32cにおいて遠心ファン32はスピンドル17に固定されるようになっている。
【0049】
遠心ファン32の各羽根32aは、その先端側の所定範囲における基板32bとは反対側を向く端面が、先端側ほど基板32bからの高さ寸法が低くなるように傾斜した形状に形成されており、この傾斜した端面部分は傾斜辺部32dとなっている。各羽根32aに傾斜辺部32dを設けることにより、隣り合う羽根32aの間の通過断面積が一定に近くなるように設定されている。これにより、回転時に遠心ファン32の各羽根32aの間を通過する空気の圧力変動を小さくして、遠心ファン32の騒音を低減させることができる。
【0050】
ボリュートケース部34の天壁36の取付部42の内側部分には、ファン収容室38と同軸にスピンドル17が挿通される円形の貫通孔47が設けられている。また、ボリュートケース部34のボス部16aとは反対側つまりダイヤモンド砥石ホイール19の側を向く底壁37にはファン収容室38と同軸に円形の吸入口48が設けられている。貫通孔47と吸入口48は、何れも、遠心ファン32よりも小径に形成されており、ボリュートケース部34に収容された遠心ファン32が貫通孔47や吸入口48から外部に脱落しないようにされている。このように、遠心ファン32はボリュートケース部34の内部に着脱不能に収容されており、つまり、ボリュートケース部34と遠心ファン32は1つのユニットとして構成されている。
【0051】
なお、遠心ファン32は、第1ケース半体34aと第2ケース半体34bとの間に配置され、これらのケース半体34a,34bを組み付けることでボリュートケース部34の内部に着脱不能に収容される。
【0052】
ボリュートケース部34のダイヤモンド砥石ホイール19の側を向く軸方向端面である底壁37の底面部分にはカバー部51が一体に設けられている。
【0053】
このカバー部51はダイヤモンド砥石ホイール19よりも大径の円筒状に形成されており、ファン収容室38と同軸に配置されている。ボリュートケース部34がボス部16aに固定されると、ボリュートケース部34を貫通したスピンドル17の先端がカバー部51の内部に突出し、スピンドル17の先端に取り付けられるダイヤモンド砥石ホイール19がカバー部51の内側に配置される。つまり、カバー部51は、スピンドル17に取り付けられたダイヤモンド砥石ホイール19の外周の全周を覆うようになっている。
【0054】
ダイヤモンド砥石ホイール19が被削材の表面に当接したときにカバー部51の先端と被削材の表面との間に生じる隙間を閉塞するために、カバー部51の先端部分にはスカート(シール部材)52が設けられている。
【0055】
このスカート52はカバー部51よりも小径の円筒状に形成されており、カバー部51の内側にその先端を突出させた状態で配置されている。図示する場合では、スカート52はフェルト製とされているが、ブラシやスポンジ等の他の部材で構成されてもよい。
【0056】
スカート52の上端には樹脂製の円環状の保持片53が固定され、保持片53と底壁37との間にはスプリング等のばね部材54が配置されている。スカート52は、保持片53とともにカバー部51の内側で軸方向に移動自在であるとともに、ばね部材54によりカバー部51の開口の側に向けた軸方向に付勢されている。
【0057】
研削作業時にダイヤモンド砥石ホイール19の表面が被削材の表面に押し付けられると、スカート52の先端部が被削材の表面に摺接する。これにより、カバー部51の先端と被削材の表面との間の隙間がスカート52により閉塞される。また、研削作業時に集塵カバー31が被削材の表面に対して傾斜した状態となっても、この傾斜に合わせてばね部材54が弾性変形することにより、スカート52は被削材の表面に追従することができる。これにより、研削作業により生じる粉塵がカバー部51の先端と被削材の表面との間からカバー部51の外部に漏れ出すことを防止することができる。
【0058】
ボリュートケース部34の取付部42がボス部16aに固定されて集塵カバー31がディスクグラインダ11に装着されると、ダイヤモンド砥石ホイール19の外周の全体がカバー部51により覆われるとともに、ダイヤモンド砥石ホイール19の研削面とは反対側となる背面側はボリュートケース部34により覆われる。また、集塵カバー31がディスクグラインダ11に装着されると、ボリュートケース部34の貫通孔47を貫通したスピンドル17が遠心ファン32の装着孔32cに挿通され、遠心ファン32はダイヤモンド砥石ホイール19と取付部42(ボス部16a)との間においてスピンドル17に固定される。
【0059】
したがって、集塵カバー31がディスクグラインダ11に装着された状態で電動モータ14が作動すると、遠心ファン32がダイヤモンド砥石ホイール19とともに回転し、ボリュートケース部34の吸入口48に吸引力を発生する。この吸引力により、研削作業でカバー部51の内部に発生する研削粉等の粉塵が、吸入口48からボリュートケース部34の内部に吸引され、遠心ファン32を介してボリュート流路39を通って排出ダクト41から排出されて集塵バック33に集塵される。
【0060】
次に、この集塵カバー31に設けられる位置決め手段について説明する。
【0061】
この集塵カバー31では、遠心ファン32をボリュートケース部34に着脱不能に収容するようにしているので、この集塵カバー31をディスクグラインダ11に着脱する際には、ボリュートケース部34と遠心ファン32とを1つのユニットとして着脱することができる。
【0062】
一方、ボリュートケース部34は、ファン収容室38の外周側にボリュート流路39を備えた構造であるので、遠心ファン32と周壁35の内面との間の間隔は周方向の各位置で相違しており、遠心ファン32を周壁35の内面により、ボリュートケース部34の内部でファン収容室38と同軸となるように径方向に位置決めすることは困難である。
【0063】
そこで、本発明では、ボリュートケース部34の軸方向を向く内面つまり天壁36の内面に円形凹部61を設け、この円形凹部61に遠心ファン32の基板32bを配置することにより、ボリュートケース部34がディスクグラインダ11(ボス部16a)から取り外されたときに、遠心ファン32をボリュートケース部34の内部で径方向に位置決めするようにしている。つまり、この集塵カバー31では、円形凹部61と基板32bとにより位置決め手段を構成するようにしている。
【0064】
円形凹部61は、天壁36の内面に軸方向に向けて円形に凹んだ形状に形成されており、ファン収容室38や貫通孔47と同軸に配置されている。また、円形凹部61の内径寸法は遠心ファン32の基板32bの外径寸法よりも僅かに大きくされており、その深さ寸法も、基板32bの厚み寸法より僅かに大きくされている。遠心ファン32は、基板32bが円形凹部61に配置されることにより、その基板32bの外周部分が円形凹部61の内周面に当接する範囲内で径方向に位置決めされる。つまり、遠心ファン32は、基板32bが円形凹部61に配置されることにより、ボリュートケース部34がボス部16aに固定されるときにスピンドル17と同軸となる、ファン収容室38の軸心に位置決めされることになる。
【0065】
集塵カバー31がディスクグラインダ11に装着された状態では、遠心ファン32は、その羽根32aが設けられる側の基板32bの表面が円形凹部61の開口端と軸方向位置が一致するように配置される。これにより、遠心ファン32からボリュート流路39へ風を滑らかに流すことができる。
【0066】
この集塵カバー31は、円形凹部61と基板32bとにより位置決め手段に加えて、ボリュートケース部34の底壁37の内面に設けられた傾斜面62と、この傾斜面62に対向する遠心ファン32の羽根32aに設けられた傾斜辺部32dとによっても位置決め手段を構成するようにしている。
【0067】
傾斜面62は、底壁37の内面に一体に、吸入口48とボリュート流路39との間を連ねるように環状に形成されている。また、傾斜面62は遠心ファン32の羽根32aに設けられた傾斜辺部32dと同一方向つまり径方向外側ほど天壁36に接近する方向に傾斜しており、その径方向中央部分が上方に向けて凸形状となるように僅かに湾曲している。
【0068】
遠心ファン32が径方向に荷重を受けて、その各羽根32aの傾斜辺部32dが傾斜面62に当接すると、遠心ファン32の径方向への移動が規制され、これにより、遠心ファン32はボリュートケース部34の内部で径方向に位置決めされる。また、遠心ファン32の自重を受けた状態で各羽根32aの傾斜辺部32dが傾斜面62に当接すると、遠心ファン32は傾斜面62に沿ってファン収容室38の軸心に向けて案内され、ボリュートケース部34の内部でファン収容室38の軸心に位置決めされる。
【0069】
このような位置決め手段が設けられることにより、本発明の集塵カバー31では、ボリュートケース部34の内部に着脱不能に収容された遠心ファン32を、集塵カバー31がディスクグラインダ11から取り外された状態でも、ボリュートケース部34の内部で位置決めして、ファン収容室38に位置させることができる。したがって、集塵カバー31をディスクグラインダ11に装着する際には、ボリュートケース部34の取付部42をボス部16aに装着すれば、遠心ファン32を、その径方向位置を大きく調整することなく、スピンドル17に装着することができる。つまり、ボリュートケース部34と遠心ファン32とを1つのユニットとしてディスクグラインダ11に着脱することができる。
【0070】
なお、集塵カバー31がディスクグラインダ11に取り付けられた後に、ナット22によりスピンドル17の先端にダイヤモンド砥石ホイール19が取り付けられることになる。
【0071】
一方、集塵カバー31をディスクグラインダ11から取り外す際には、ダイヤモンド砥石ホイール19をスピンドル17から取り外した後に、遠心ファン32をボリュートケース部34の内部に収容したままボリュートケース部34と遠心ファン32とを一体にディスクグラインダ11から取り外すことができる。
【0072】
このように、本発明では、遠心ファン32をボリュートケース部34に着脱不能に収容するとともに、集塵カバー31がディスクグラインダ11から取り外された状態でも、遠心ファン32がボリュートケース部34の内部で径方向に位置決めされるようにしたので、集塵カバー31をディスクグラインダ11に装着する際には、ボリュートケース部34をボス部16aに固定することにより、遠心ファン32を、その径方向位置を調整することなく、スピンドル17に装着することができる。また、集塵カバー31をディスクグラインダ11から取り外す際には、ボリュートケース部34をボス部16aから取り外すことにより、当該ケース部34とともに遠心ファン32をスピンドル17から取り外すことができる。これにより、ディスクグラインダ11への集塵カバー31の着脱作業を容易にすることができる。
【0073】
また、本発明では、ボリュートケース部34の軸方向を向く内面に設けた円形凹部61に遠心ファン32に設けた円板状の基板32bを配置した構造により、遠心ファン32をボリュートケース部34の内部で径方向に位置決めするようにしたので、簡単な構成で遠心ファン32をボリュートケース部34の内部で径方向に位置決めすることができ、また、ボリュートケース部34の遠心ファン32から加えられる荷重を支持する部分の体積を大きくして、その強度や耐久性を高めることができる。
【0074】
さらに、本発明では、ボリュートケース部34に設けた円形凹部61に遠心ファン32の基板32bを配置する構造に加えて、ボリュートケース部34の底壁37に設けた傾斜面62に、遠心ファン32の傾斜辺部32dを対向させた構造によっても遠心ファン32をボリュートケース部34の内部で径方向に位置決めするようにしたので、遠心ファン32をボリュートケース部34の内部で確実に径方向に位置決めすることができる。また、遠心ファン32の各羽根32aに、これらの通過断面積を一定にするために設けられる傾斜辺部32dを利用した簡単な構成で位置決め手段を構成することができるので、この集塵カバー31のコストを低減することができる。
【0075】
図5は
図2に示す集塵カバーの変形例であって、ボリュートケース部の内面に設けた環状凹部に遠心ファンに設けた円筒状凸部を配置した構造を示す断面図である。
【0076】
図2に示す場合では、位置決め手段は、ボリュートケース部34に設けた円形凹部61に遠心ファン32の基板32bを配置して構成されている。これに対して、
図5に示す変形例では、ボリュートケース部34の軸方向を向く内面である天壁36の内面に環状凹部63を設け、この環状凹部63に遠心ファン32の基板32bに設けた円筒状凸部64を配置するようにしている。つまり、この場合、位置決め手段は、ボリュートケース部34に設けられた環状凹部63と、遠心ファン32に設けられた円筒状凸部64とにより構成されている。
【0077】
環状凹部63は、断面矩形の環状の溝として形成されており、ファン収容室38と同軸に配置されている。一方、円筒状凸部64は、基板32bの天壁36に対向する裏面から軸方向に突出する円筒状に形成され、この遠心ファン32の基板32bと同軸に配置されている。環状凹部63の溝幅は、円筒状凸部64の厚みよりも僅かに大きく形成されており、遠心ファン32は、円筒状凸部64が環状凹部63に配置されることにより、その円筒状凸部64の側部が環状凹部63の側壁に当接する範囲内で径方向に位置決めされる。
【0078】
この変形例では、環状凹部63と円筒状凸部64が遠心ファン32に対して軸方向の一方側に配置されるので、遠心ファン32のボリュート流路39との間には位置決め手段が配置されない構成である。したがって、遠心ファン32の径方向外側に設けられるボリュート流路39の断面積を大きくすることができる。
【0079】
このように、
図5に示す変形例では、ボリュートケース部34の天壁36の内面に設けた環状凹部63に遠心ファン32の基板32bに設けた円筒状凸部64を配置して、遠心ファン32をボリュートケース部34の内部で径方向に位置決めするようにしたので、位置決め手段を遠心ファン32に対して軸方向側に配置して、遠心ファン32の径方向外側に形成されるボリュート流路39の断面積を大きくすることができる。
【0080】
なお、
図5においては、前述した部材に対応する部材には同一の符号を付してある。
【0081】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。例えば、前記実施の形態においては、本発明のディスクグラインダ11として、電動モータを駆動源としたものを例示しているが、これに限らず、例えばエアモータなど、他の駆動源を備えたディスクグラインダに本発明を適用するようにしてもよい。
【0082】
また、前記実施の形態においては、集塵カバー31に、ボリュートケース部34の天壁36に設けた円形凹部61に遠心ファン32の基板32bを配置した構造による位置決め手段に加えて、ボリュートケース部34の底壁37に設けた傾斜面62に遠心ファン32の傾斜辺部32dを係合させる構造による位置決め手段を設けるようにしているが、これに限らず、いずれか一方の位置決め手段のみを設けるようにしてもよい。
【0083】
さらに、前記実施の形態においては、位置決め手段として、ボリュートケース部34の天壁36に設けた円形凹部61に遠心ファン32の基板32bを配置した構造、ボリュートケース部34の天壁36に設けた環状凹部63に遠心ファン32の基板32bに設けた円筒状凸部64を配置した構造、およびボリュートケース部34の底壁37に設けた傾斜面62に遠心ファン32の傾斜辺部32dを係合させる構造を例示したが、これらに限らず、ボリュートケース部34と遠心ファン32のいずれか一方に設けた凹部に、ボリュートケース部34と遠心ファン32のいずれか他方に凹部と同軸に設けた凸部を配置することにより、遠心ファン32をボリュートケース部34の内部で径方向に位置決めするようにした構成であれば、凹部や凸部として別の形状を備えた位置決め手段を用いるようにしてもよい。
【0084】
さらに、前記実施の形態においては、ボリュートケース部34の天壁36に環状凹部63を設け、遠心ファン32の基板32bに円筒状凸部64を設けるようにしているが、ボリュートケース部34の天壁36に円筒状凸部64を設け、遠心ファン32の基板32bに環状凹部63を設けるようにしてもよい。