(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態に係る空気圧縮機1を図面を用いて説明する。
図1及び
図2は、空気圧縮機1の外観側面図及び上面一部断面図である。空気圧縮機1は、
図1に示すように、ハンドル101を備えた可搬型の空気圧縮機であり、カバー102により覆われている。空気圧縮機1は、
図2に示すように、圧縮空気生成部110と、駆動部120と、冷却部130と、空気タンク部140と、操作パネル部150と、制御回路部160(
図3参照)と、から構成される。
【0012】
圧縮空気生成部110は、アルミニウム等の金属材料から形成されたシリンダ及びピストンから主に構成され、シリンダ内でピストンを駆動部120の圧縮用モータ121により往復運動させ、シリンダの吸気弁からシリンダ内に引き込まれた空気を圧縮することにより、圧縮空気を生成する。圧縮空気生成部110は、具体的には、
図2に示すように、1段目圧縮装置111と、2段目圧縮装置112とから構成され、1段目圧縮装置111と2段目圧縮装置112はクランクケース113を介し、対向するように配置される。1段目圧縮装置111は、クランクケース113の内部を経由して流入した外部空気(大気圧)を圧縮し、2段目圧縮装置112に圧縮空気を供給する。2段目圧縮装置112は、1段目圧縮装置111から供給される圧縮空気を、例えば3.0〜4.5MPaの許容最高圧力まで圧縮し、空気タンク141a、141bに供給する。
【0013】
また、
図3に示すように、圧縮空気生成部110には、圧縮空気生成部110の温度を検出するための温度センサ114が設けられている。温度センサ114は、例えば、2段目圧縮装置112のシリンダヘッドに設けられ、検出信号を制御回路部160に出力する。
【0014】
駆動部120は、
図2に示すように、圧縮空気生成部110のピストンを往復運動させるための駆動力を発生させる電動モータである圧縮用モータ121と、圧縮用モータ121の回転軸に取り付けられたクランク軸122とから構成される。圧縮用モータ121は、クランク軸122を介して圧縮空気生成部110のピストンを往復運動させる。また、圧縮用モータ121は、制御回路部160により、その運転状態を、運転している状態を示すオン状態、または運転を停止している状態を示すオフ状態のいずれかに制御される。
【0015】
冷却部130は、冷却ファン131と、冷却ファン131を回転駆動させる電動モータである冷却用モータ132とから構成され、圧縮空気生成部110と圧縮用モータ121を通風冷却する。冷却用モータ132は、その運転の開始・停止、回転数等を制御される。
【0016】
空気タンク部140は、1対の空気タンク141a、141bと、圧力センサ142と、減圧弁143と、カプラ144とから構成される。
【0017】
空気タンク141a、141bは、長胴型に形成され、互いに長手方向に略平行になるように配置されている。空気タンク141aと空気タンク141bとは連結管により連通しており、空気タンク141aと空気タンク141b内の圧力は、略同一に保たれる。圧縮装置110で生成された圧縮空気は、配管を介して空気タンク部140に供給され、空気タンク141aと空気タンク141bの双方に貯留される。
【0018】
圧力センサ142は、空気タンク141a、141b内の圧縮空気の圧力を検出する。圧力センサ142による検出信号は、制御回路部160に出力され、圧縮用モータ121の運転制御に用いられる。
【0019】
減圧弁143a、143bは、空気タンク141a、141bに貯留された圧縮空気を所定の圧力(例えば、0.8MPa)に減圧する。カプラ144a、144bは、減圧弁143a、143bにより減圧された圧縮空気の取り出し口であり、エアホースを介して接続された空気工具に圧縮空気を供給する。
【0020】
操作パネル部150は、電源スイッチ151と、表示部152とから構成される。電源スイッチ151は、空気圧縮機1に供給される交流電源2(
図3参照)のオン・オフ操作を行うためのスイッチである。電源スイッチ151を介して供給される交流電源2は、後述する電源回路162により直流電源に変換され、制御回路部160、圧縮用モータ121、及び冷却用モータ132の駆動電源として用いられる。表示部152は、例えば空気タンク141a、141b内の圧力、推奨される使用するタンクの数、過負荷等の警告を表示する。表示部152は、例えばLED(Light-Emitting Diode)から構成される。
【0021】
制御回路部160は、圧力センサ143により検出された空気タンク141a、141b内の圧力に基づいて、圧縮用モータ121を制御する。また、制御回路部160は、温度センサ114により検出された圧縮空気生成部110の温度に基づいて、冷却用モータ132を制御する。制御回路部160は、
図3に示すように、制御部161と、電源回路162と、駆動回路163a、163bと、電流検出回路164とから構成される。
【0022】
制御部161は、例えば、内部にタイマを備えるCPU(Central Processing Unit)161aと、ワークエリアとなるRAM(Random Access Memory)161bと、後述する処理を実行するための各種プログラム等を格納するROM(Read-Only Memory)161cと、入出力インターフェイス(I/F)161dと、回転数設定DB161eとから構成される。CPU161aは、入出力インターフェイス161dを介して圧力センサ142からの空気タンク141a、141b内の圧力を示す信号を取得し、その信号に基づいて、圧縮用モータ121のオン・オフを制御する運転制御処理を実行する。また、CPU161aは、入出力インターフェイス161dを介して電流検出回路164からの圧縮用モータ121の運転状態を示す信号と、温度センサ114からの圧縮空気生成部110の温度を示す信号を取得し、その取得した信号に基づいて、冷却用モータ132の回転数を制御する冷却制御処理を実行する。
【0023】
回転数設定DB161eは、ハードディスク等の書き換え可能な記憶装置から構成され、圧縮空気生成部110の温度と、圧縮用モータ121の運転状態と、冷却用モータ132の回転数と、を対応付けて記憶するものである。
図4に回転数設定DB161eの一例を示す。本実施形態における制御部161は、
図4に示す回転数設定DB161eを参照して、冷却用モータ132の回転数を3段階、すなわちN0、N1、N2に制御する。ここで、N0、N1、N2は、それぞれ、N0=0rpm、N1=2500rpm、N2=3500rpmである。なお、本発明はこのような例に限定されるものではなく、冷却用モータ132の回転数を多段階に制御することも可能であり、また、N0、N1、N2の値は、N0<N1<N2の関係を満たす限り、任意に設定することができる。また、所定温度Ta、Tbは、冷却用モータ132の回転数を制御する際の基準となる温度であって、例えば、Ta=100℃、Tb=150℃である。これらの所定温度Ta、Tbは、圧縮空気生成部を構成する材料に応じて適宜設定することができる。
【0024】
電源回路162は、整流回路、平滑回路、定電圧回路等から構成され、交流電源2から圧縮用モータ121、冷却用モータ132等に供給される電源を直流に変換する。
【0025】
駆動回路163a、163bは、制御部161からの制御信号に従って、それぞれ圧縮用モータ121と冷却用モータ132の運転開始・停止、回転数を制御する。
【0026】
電流検出回路164は、駆動回路163aから圧縮用モータ121に流れる電流を検出する。電流検出回路164により検出された検出信号は、制御部161に出力され、圧縮用モータ121の運転状態を判別するために用いられる。
【0027】
次に、以上のように構成される空気圧縮機1の制御部161が実行する処理について説明する。
【0028】
まず、制御部161が実行する圧縮用モータ121の運転制御処理について説明する。制御部161が実行する運転制御処理は、例えば特開2010−031741号公報等に記載された手法を用いて実行される。具体的には、電源スイッチ151がオンされると、制御部161に電源電力が供給され、制御部161は、圧縮用モータ121への電力の供給を開始する。これにより、圧縮用モータ121が駆動し、圧縮空気生成部110のシリンダ内をピストンが往復動して圧縮空気が生成される。そして、生成された圧縮空気は、空気タンク141a、141b内に貯留される。
【0029】
また、制御部161は、圧力センサ142により検出された空気タンク141a、141b内の圧力が、停止圧力よりも高いと判別した場合、圧縮用モータ121への電力供給を停止し、圧縮空気生成部110による圧縮空気の生成を停止させる。ここで、停止圧力とは、空気タンク141a、141b内に圧縮空気を蓄積する予定量として、予め設定されている圧力を表す。
【0030】
また、制御部161は、圧力センサ142により検出された空気タンク141a、141b内の圧力が、再起動圧力よりも低いと判別した場合、圧縮用モータ121を起動し、圧縮空気生成部110による圧縮空気の生成を再開させる。ここで、再起動圧力は、停止圧力よりも低い圧力であって、圧縮空気が消費されることにより空気タンク141a、141b内の圧力が低下した場合に圧縮用モータ121を再起動させる基準となる圧力を表す。以上の処理を、制御部161は、例えば、電源スイッチ151がオフされるまで繰り返す。
【0031】
次に、以上のようの構成される空気圧縮機1の制御部161が実行する冷却制御処理について
図5のフローチャートを用いて説明する。
【0032】
制御部161は、例えば、空気圧縮機1が交流電源2に接続され、電源スイッチ151が操作されることにより、制御部161に電源が供給されたことを契機として、冷却制御処理を開始する。
【0033】
制御部161は、温度センサ114により圧縮空気生成部110の温度Tを検出する(ステップS11)。
【0034】
次に、制御部161は、圧縮用モータ121の運転状態を検出する(ステップS12)。具体的には、制御部161は、電流検出回路164により駆動回路163aから圧縮用モータ121に流れる電流値を取得する。そして取得した電流値が所定値以上である場合に、圧縮用モータ121がオン状態であると判別する。また、取得した電流値が所定値よりも小さい場合に、圧縮用モータ121がオフ状態であると判別する。
【0035】
次に、制御部161は、ステップS11において検出された温度TとステップS12において検出された圧縮用モータ121の運転状態とに基づいて、冷却用モータ132の回転数を取得する(ステップS13)。
【0036】
具体的には、制御部161は、ステップS11において取得された温度Tと、ステップS12において検出された圧縮用モータ121の運転状態とに基づいて、回転数設定DB161eを参照して、冷却用モータ132の回転数を取得する。例えば、ステップS11において検出した温度TがTa<T<Tbであり、ステップS12において取得された圧縮用モータ121の運転状態がオン状態である場合、制御部161は、回転数設定DB161eを参照して、冷却用モータ132の回転数としてN0を取得する。
【0037】
次に、制御部161は、ステップS13において取得した冷却用モータ132の回転数で駆動する旨の制御信号を駆動回路163bに出力する(ステップS14)。この制御信号を受信した駆動回路163bは、冷却用モータ132をステップS13において取得した冷却用モータ132の回転数で駆動する。そして、制御部161は、処理をステップS11に戻す。
【0038】
そして、制御部161は、例えば、空気圧縮機1の電源スイッチ151が操作されることにより、圧縮用モータ121の運転が停止するまで、以上の処理を繰り返す。
【0039】
次に、以上のように構成される空気圧縮機1の動作を
図6を用いて説明する。
図6は、(a)空気圧縮機1の空気タンク141a、141b内圧力P、(b)圧縮空気生成部110の温度T、(c)圧縮用モータ121の運転状態、及び(d)冷却用モータ132の回転数のタイミングチャートの一例である。
【0040】
まず、時刻t=0で、空気圧縮機1の圧縮用モータ121は運転を開始する。なお、この時点において温度TはTaよりも低いため、冷却用モータ132の回転数はN0、すなわち停止している。
【0041】
そして、圧縮空気生成部110の駆動により温度Tが上昇し、時刻t=t
1において、温度TがTaに達する。この時、圧縮用モータ121は運転しているため、冷却用モータ132の回転数はN0、すなわち停止している。
【0042】
そして、時刻t=t
2において、温度TがTbに達する。このとき、圧縮用モータ121は運転しているため、冷却用モータ132は、回転数N1で運転を開始する。以降、圧縮空気生成部110は運転している状態のまま、冷却ファン131により冷却される。これにともない、温度Tは時刻t
2以前よりもゆるやかに温度が上昇する。
【0043】
そして、時刻t=t
3において、空気タンク141a、141b内の圧力Pが停止圧力である4.5MPaに達すると、圧縮用モータ121は運転を停止する。この時点以降、温度TはTbを超え、かつ圧縮用モータ121は運転を停止しているため、冷却用モータ132は回転数N2で運転を開始する。そのため、時刻t=t
3以降、温度Tは減少する。
【0044】
そして、時刻t=t
4において、温度TがTbに達する。この時点において、圧縮用モータ121は運転を停止しているため、冷却用モータ132は、回転数N1で運転を開始する。
【0045】
時刻t=t
5以降、カプラ144a、144bに接続された空気工具により空気タンク141a、141b内の圧縮空気が消費される。これにともない、空気タンク141a、141b内の圧力Pが減少していく。
【0046】
そして、時刻t=t
6において、温度TがTaに達する。この時点において、圧縮用モータ121は運転を停止しているため、冷却用モータ132は、運転を停止する。
【0047】
そして、時刻t=t
7において、1次タンク131a内の圧力Pが再起動圧力である3.5MPaに達すると、圧縮用モータ121は運転を開始する。そして、圧縮空気生成部110の駆動により温度Tは上昇する。この時点において、温度TはTaよりも低いため、冷却用モータ132の回転数はN0、すなわち停止している。
【0048】
このように、本実施形態に係る空気圧縮機1において、冷却ファン131は、圧縮用モータ121と直結するように設けられず、冷却用モータ132により、駆動される。そして、冷却用モータ132は、圧縮空気生成部110の温度と圧縮用モータ121の運転状態とに基づいて、運転を制御される。従って、空気圧縮機1の運転時における騒音を、冷却ファンと圧縮用モータが同期して駆動する従来の空気圧縮機の騒音よりも低減することができる。
【0049】
また、本実施形態において、圧縮空気生成部110の温度Tが所定温度Tb以下である場合には、圧縮用モータ121が運転していても、冷却用モータ132は運転しない。そのため、圧縮空気生成部110の温度が高温となって冷却が必要な時のみ冷却用モータ132が運転し、圧縮空気生成部110の温度低い場合には冷却用モータ132は運転しない。従って、効率的に圧縮空気生成部110を冷却しつつ、圧縮用モータ121の運転中における騒音を低減することができる。
【0050】
また、本実施形態において、圧縮空気生成部110の温度Tが所定温度Tよりも高い場合、圧縮用モータ121がオフ状態における冷却用モータ132の回転数は、圧縮用モータ121がオン状態における冷却用モータ132の回転数よりも高い。そのため、圧縮用モータ121がオン状態の場合、冷却用モータ132の回転数を低くすることにより、耳障りな高周波数の騒音レベルを低下させることができる。また、圧縮用モータ121がオフ状態の場合、冷却用モータ132を駆動させても、圧縮用モータ121は停止しているため、共鳴が起きない。従って、冷却用モータ132を、圧縮用モータ121がオン状態における回転数よりも高い回転数で運転させることにより、効果的に冷却することができる。
【0051】
なお、本発明は、上記の実施形態に限定されず、種々の変形及び応用が可能である。
【0052】
例えば、本実施形態に係る空気圧縮機1において、温度センサ114は2段目圧縮装置112に設けられているが、温度センサ114が設けられる位置はこれに限られない。空気圧縮機の運転により発生する熱による強度低下のおそれがある材料で構成されている部分の温度を検出できる位置であればよい。例えば、1段目圧縮装置111、または圧縮用モータ121に設けてもよい。なお、圧縮空気生成部110に温度センサ114を設けることで、圧縮効率の向上と静音化を両立することができ、好ましい。一方、圧縮用モータ121に温度センサ114を設けた場合は、1つの温度センサからの信号により、冷却用モータ132の制御と圧縮用モータ121過熱時の焼損防止を兼ねることができ、合理的である。また、圧縮空気生成部110及び圧縮用モータ121の両方に温度センサ114を設けてもよい。複数箇所に温度センサ114を設けることで、熱による強度低下をより広範囲に渡って防止することができる。
【0053】
また、本実施形態に係る空気圧縮機1において、圧縮用モータ121がオン状態における冷却用モータ132の回転数を、圧縮用モータ121の回転数より小さくしてもよい。これにより、圧縮用モータ121により発生する騒音と冷却用モータ132により発生する騒音とは、周波数が異なるため、共鳴しない。従って、空気圧縮機1から発生する騒音の騒音レベルを低下させることができる。