(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1鋼板を部分冷間鍛造することにより、裏面側に第1突部を離散して複数個形成するとともに、前記第1突部から第1突部の突出方向と同方向に突出した連結突起を形成するパンチ及びダイを備えた第1鋼板形状付与装置と、
裏面側に離散した複数個の第2突部が形成された第2鋼板の第2突部に透孔を開けるパンチ及びダイを備える第2鋼板形状付与装置と、
前記連結突起を前記透孔に貫通して第1鋼板の第1突部と第2鋼板の第2突部を接合した状態で、前記連結突起の外周縁を前記透孔の内周縁とをカシメるパンチ及びダイを備えたカシメ装置とを備え、
前記カシメ装置のパンチ及びダイは、互いに隣接する複数の第2突部に対し、共通の第1突部を接合した状態で、前記共通の第1突部に設けた複数の連結突起をそれぞれ前記複数の第2突部の透孔に貫通して、前記共通の第1突部に設けられた各連結突起の外周縁を、前記透孔の内周縁にカシメるパンチ及びダイを含むことを特徴とする積層鋼板形成装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、トラスコアパネル同士、或いはトラスコアパネルと平板パネルを積層する場合、パネル間の接合が難しい問題がある。
また、トラスコアパネルに代えて、複数の突部を形成した平板状の鋼板を、互いに対向させて、相互の突部同士を接合する積層鋼板も提案されている。
【0005】
ところが、相互の突部同士を接合するには、従来は、接合強度が十分とはいえない問題があった。
本発明の目的は、接合強度を十分に確保できる積層鋼板形成装置及び積層鋼板の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題点を解決するために、請求項1の発明は、第1鋼板を部分冷間鍛造することにより、裏面側に第1突部を離散して複数個形成するとともに、前記第1突部から第1突部の突出方向と同方向に突出した連結突起を形成するパンチ及びダイを備えた第1鋼板形状付与装置と、裏面側に離散した複数個の第2突部が形成された第2鋼板の第2突部に透孔を開けるパンチ及びダイを備える第2鋼板形状付与装置と、前記連結突起を前記透孔に貫通して第1鋼板の第1突部と第2鋼板の第2突部を接合した状態で、前記連結突起の外周縁を前記透孔の内周縁とをカシメるパンチ及びダイを備えたカシメ装置とを備え
、前記カシメ装置のパンチ及びダイは、互いに隣接する複数の第2突部に対し、共通の第1突部を接合した状態で、前記共通の第1突部に設けた複数の連結突起をそれぞれ前記複数の第2突部の透孔に貫通して、前記共通の第1突部に設けられた各連結突起の外周縁を、前記透孔の内周縁にカシメるパンチ及びダイを含むことを特徴とする積層鋼板形成装置を要旨としている。
【0008】
請求項
2の発明は、請求項
1において、前記第1突部及び第2突部の外形は、三角形状に形成されていることを特徴とする。
請求項
3の発明は、第1鋼板を部分冷間鍛造することにより、裏面側に第1突部を複数個離散して形成するとともに、前記第1突部から第1突部の突出方向と同方向に突出した連結突起を形成する第1工程と、裏面側に複数個離散した第2突部が形成された第2鋼板の第2突部に透孔を開ける第2工程と、前記連結突起を前記透孔に貫通して第1鋼板の第1突部と第2鋼板の第2突部を接合した状態で、前記連結突起の外周縁を前記透孔の内周縁とをカシメる第3工程を備え
、第3工程は、互いに隣接する複数の第2突部に対し、共通の第1突部を接合した状態で、前記共通の第1突部に設けた複数の連結突起をそれぞれ前記複数の第2突部の透孔に貫通して、前記共通の第1突部に設けられた各連結突起の外周縁を、前記透孔の内周縁にカシメることを特徴とする積層鋼板の製造方法を要旨としている。
【0010】
請求項
4の発明は、請求項
3において、前記第1突部及び第2突部の外形は、三角形状に形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明によれば、第1鋼板と第2鋼板とは、連結突起を透孔に貫通して第1突部と第2突部とを接合した状態で、冷間鍛造された連結突起の外周縁を前記透孔の内周縁とをカシメるため、第1鋼板と第2鋼板とは、接合強度を十分に確保することができる積層鋼板形成装置を提供できる。
【0012】
加えて、互いに隣接する複数の第2突部に対し、共通の第1突部を接合した状態で、前記共通の第1突部に設けた複数の連結突起をそれぞれ前記複数の第2突部の透孔に貫通して、前記共通の第1突部に設けられた各連結突起の外周縁を、前記透孔の内周縁にカシメるため、剛性に方向性がない積層鋼板を製造できる積層鋼板形成装置を提供できる。
【0013】
請求項
2の発明によれば、請求項
1において、第1突部及び第2突部を単純な三角形状にした積層鋼板を製造できる積層鋼板形成装置を提供できる。
請求項
3の発明によれば、第1鋼板と第2鋼板とは、連結突起を透孔に貫通して第1突部と第2突部とを接合した状態で、冷間鍛造された連結突起の外周縁を透孔の内周縁とをカシメるため、第1鋼板と第2鋼板とは、接合強度を十分に確保することができる積層鋼板が得ることができる。
【0014】
加えて、第1鋼板と第2鋼板は、相互の連結突起が近位に隣接する第1突部同士が共通の第2突部に接合した状態で、前記連結突起の外周縁を前記透孔の内周縁とをカシメるため、剛性に方向性がない積層鋼板を製造できる。
【0015】
請求項
4の発明によれば、請求項
3において、第1突部及び第2突部を単純な三角形状にした積層鋼板を製造できる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の積層鋼板形成装置及び積層鋼板の製造方法を具体化した一実施形態を
図1〜
図8を参照して説明する。
まず、本実施形態の積層鋼板形成装置及び製造方法により製造される積層鋼板の構造について説明する。
【0018】
積層鋼板は、
図1、
図2に示すように、第1鋼板10と第2鋼板50とが積層されることにより構成されている。
第1鋼板10は、平板状をなす鋼板から形成されている。第1鋼板10には、同じ大きさ及び形状の凹部12が、表面から裏面側に向かって複数個形成されることにより、
図2に示すように、裏面側に複数の第1突部14が離散して突出されている。なお、本実施形態では、凹部12の外形形状は正三角形状に形成されている。このため、凹部12が三角形状に形成されていることにより、第1突部14の外形形状も三角形状(本実施形態では、正三角形状)に形成されている。第1鋼板10において、凹部12が形成されていない部分は平板部10aである。
【0019】
複数の第1突部14(すなわち、凹部12)は、
図1に示すように、等ピッチで千鳥状に配列されている。
図1に示すように、各凹部12は、平面視した場合の中心O1が、直近に隣接する他の凹部12の中心O1に対して等距離に配置されている。又、各凹部12の各コーナーの内、2つのコーナーは、隣接する他の凹部の2つのコーナーとは直線状に並ぶように配置されている。
【0020】
図2に示すように、第1突部14の裏面16側の各コーナーから、第1突部14の突出方向と同方向に断面円形の連結突起18が突出され、第2鋼板50に貫通して連結されている。
【0021】
第1鋼板10において、連結突起18と対応する鏡面側には断面円形をなす穴部18aが形成されている。
第2鋼板50は、平板状をなす鋼板から形成されている。第2鋼板50には、表面(
図2においては下面)から裏面側(上側)に向かって、同じ大きさ及び形状の凹部52が複数個形成されることにより、
図2に示すように、裏面側に複数の第2突部54が離散して突出されている。なお、本実施形態では、第1鋼板の凹部12の大きさ及び外形形状に合わせるように凹部52の外形形状は正三角形状に形成されている。このため、凹部52が三角形状に形成されていることにより、第2突部54の外形形状も三角形状(本実施形態では、正三角形状)に形成されている。第2鋼板50において、凹部52が形成されていない部分を、以下では平板部50aという。
【0022】
複数の第2突部54(すなわち、凹部52)は、
図1に示すように、等ピッチで千鳥状に配列されている。又、第2突部54のピッチは、前記第1突部14のピッチと同ピッチとなっている。
図1に示すように、各凹部52は、平面視した場合の中心O2が、直近に隣接する他の凹部52の中心O2に対して等距離に配置されている。
【0023】
そして、各凹部52の各コーナーの内、2つのコーナーは、隣接する他の凹部52の2つのコーナーとは直線状に並ぶように配置されている。
又、第2突部54の各コーナーには、
図1、
図2に示すように、透孔56が形成されている。透孔56には第1突部14の連結突起18が貫通され、連結突起18先端面の外周縁全体が透孔56の内周縁全体にカシメ着されることにより、第1鋼板10と連結されている。
【0024】
(積層鋼板形成装置100の概略)
次に、積層鋼板形成装置100の概略について説明する。
図3に示すように、積層鋼板形成装置100は、第1鋼板10に第1突部14を形成する第1鋼板形状付与装置110と、第2鋼板50に第2突部54を形成する突部形成装置130と、第2鋼板50の第2突部54に透孔56を形成する第2鋼板形状付与装置150と、第1鋼板10及び第2鋼板50とを積層した状態で連結するカシメ装置170とからなる。
【0025】
第1鋼板形状付与装置110、突部形成装置130と、第2鋼板形状付与装置150及びカシメ装置170の基本構成は、プレス加工装置と原理的に同じであるため、第1鋼板形状付与装置110の基本構成について説明し、他の装置において、第1鋼板形状付与装置110の基本構成に相当する構成については、同一符号にそれぞれa,b,cの符号を付加してその説明を省略する。
【0026】
第1鋼板形状付与装置110は、土台部200とその土台部200の上に配設された枠体202とを有する。枠体202は、天井板204と底板206とこれらを連結固定する4本の支柱208とからなる。4本の支柱208には、可動プレート210が上下動自在に貫通して配置されている。可動プレート210は、その下面には上型212が固定されるとともに上面には、枠体202の天井板204に本体部214を固定した油圧シリンダ216のピストン218が固定されている。そして、可動プレート210は、油圧シリンダ216のピストン218により、枠体202に対して上下動可能に構成されている。枠体202の底板206の上面には、下型220が固定されている。
【0027】
第1鋼板形状付与装置110は、型開きした状態から、油圧シリンダ216のピストン218によって可動プレート210を下降させることにより、可動プレート210に固定された上型212を下降させることにより、下型220と型閉めすることができる。
【0028】
又、第1鋼板形状付与装置110は、型閉めした状態から、油圧シリンダ216のピストン218によって可動プレート210を上昇させることにより、上型212を上昇させることにより型開きが可能である。
【0029】
突部形成装置130は、型開きした状態から、油圧シリンダ216aのピストン218aによって可動プレート210aを下降させることにより、可動プレート210aに固定された上型212aを下降させることにより、下型220aと型閉めすることができる。又、突部形成装置130は、型閉めした状態から、油圧シリンダ216aのピストン218aによって可動プレート210aを上昇させることにより、上型212aを上昇させることにより型開きが可能である。
【0030】
第2鋼板形状付与装置150は、型開きした状態から、油圧シリンダ216bのピストン218bによって可動プレート210bを下降させることにより、可動プレート210bに固定された上型212bを下降させることにより、下型220bと型閉めすることができる。又、第2鋼板形状付与装置150は、型閉めした状態から、油圧シリンダ216bのピストン218bによって可動プレート210bを上昇させることにより、上型212bを上昇させることにより型開きが可能である。
【0031】
カシメ装置170は、型開きした状態から、油圧シリンダ216cのピストン218cによって可動プレート210cを下降させることにより、可動プレート210cに固定された上型212cを下降させることにより、下型220cと型閉めすることができる。又、カシメ装置170は、型閉めした状態から、油圧シリンダ216cのピストン218cによって可動プレート210cを上昇させることにより、上型212cを上昇させることにより型開きが可能である。 (第1鋼板形状付与装置110)
図4(a)に示すように、第1鋼板形状付与装置110はプレス加工装置であって、
図3に示す下型220(固定型)にはダイ111が固定されている。ダイ111には、第1突部14を形成するための複数の断面正三角形状をなす凹状の窪み部111aが形成されている。窪み部111aの内底面とダイ111上面111c間は傾斜面111bにより連結されている。窪み部111aの内底面は平坦面となっている。
【0032】
又、断面正三角形状の窪み部111aの各コーナーには、
図4(a)に示すように円形形状の加工穴112が設けられている。加工穴112には、図示しないクッションで支えられた断面円形のカウンタホルダ113が設けられている。カウンタホルダ113の上面は平坦面となっている。
【0033】
図3に示す上型212(可動型)には、窪み部111aに対峙するようにパンチ120が固定されている。パンチ120の下部には、傾斜面111bと対峙するテーパー面120aと、テーパー面120aに連結されるとともに窪み部111a内底面において傾斜面111bに近位側の部位に対峙する第1段部120bと、第1段部120bから下方に延出されるとともに窪み部111a内底面において傾斜面111bとは遠位側の部位に対峙する第2段部120cが設けられている。
【0034】
第1段部120b及び第2段部120cの外形形状は、正三角形状に形成されるとともに下面は平坦面となっている。
又、第2段部120cにおいて、各コーナーには
図4(a)に示すようにカウンタホルダ113に対峙するように断面円形の突起120dが突出されている。突起120dは、加工穴112と同軸状に配置されるとともに、その半径は加工穴112の半径よりも小径となっている。又、加工穴112と突起120dの半径の差は、第1鋼板10のプレス加工前の板厚よりも短くされている。又、突起120dの下面は平坦面になっている。
【0035】
又、第2段部120cからの突起120dの高さ(突出長さL)は、突起120dが、パンチ120が降下時(加工時)に加工穴112内に挿入された際に、窪み部111a内底面と第2段部120c間、及びカウンタホルダ113と突起120d間で、第1鋼板10に対して部分冷間鍛造が可能な長さに設定されている。すなわち、この突出長さLの設定により、大きな圧縮応力が、突起120dとカウンタホルダ113間で第1鋼板10に付与されて部分冷間鍛造が行うことが可能となっている。
【0036】
又、パンチ120が降下して、テーパー面120a,第1段部120b、第2段部120cが第1鋼板10を曲げ加工することにより、第1鋼板10の凹部12が形成されるとともに、突起120dが加工穴112に挿入されることにより、凹部12の各コーナーには、連結突起18が形成される。又、連結突起18の基端側には、凹部12の内底面よりもさらに凹設された穴部18aが形成される。
【0037】
(突部形成装置130)
次に、第2鋼板50に第2突部54を形成する突部形成装置130を、
図6を参照して説明する。
【0038】
図6(a)に示すように、突部形成装置130はプレス加工装置であって、
図3に示す下型220a(固定型)にはダイ131が固定されている。ダイ131には、第2突部54を形成するための複数の断面正三角形状をなす凹状の窪み部131aが形成されている。窪み部131aの内底面とダイ131の上面131b間は傾斜面131cにより連結されている。窪み部131aの内底面は平坦面となっている。
【0039】
図3に示す上型212a(可動型)にはダイ140が固定されている。ダイ140の下面140aには、各窪み部131aに対峙するように断面正三角形状をなす複数の突部142が形成されている。突部142の下端面は平坦面となっている。突部142の周面はテーパー面140bとなって、傾斜面131cと対峙している。
【0040】
(第2鋼板形状付与装置150)
次に、第2鋼板形状付与装置150を、
図7を参照して説明する。
図7(a)に示すように、第2鋼板形状付与装置150はプレス加工装置であって、
図3に示す下型220b(固定型)にはダイ151が固定されている。ダイ151の上面151aには、第2鋼板50の各第2突部54を凹部52側から支持するための複数の断面正三角形状をなす突部152が形成されている。すなわち、突部152の外形形状は、凹部52の外形形状と同一形状に形成されている。突部152の頂面とダイ151の上面151a間は傾斜面151bにより連結されている。突部152の頂面は平坦面となっている。
【0041】
又、断面正三角形状の突部152の各コーナーには、
図7(a)に示すように円形形状の抜き穴154が設けられている。
図3に示す上型212b(可動型)には、下型220b(固定型)の各抜き穴154に相対するパンチ160が複数固定されている。又、各パンチ160の周囲には、クッションパッド162が配置されている。本実施形態では、クッションパッド162は、バネ164を介して上型に連結されている。そして、上型212bが型締め時に下動した際、パンチ160の降下より先行して、クッションパッド162が降下し、第2鋼板50の第2突部54の頂面と接触するようにされている。そして、クッションパッド162とダイ151の突部152により第2鋼板50を挟持した状態で、さらに降下したパンチ160が、第2鋼板50を穴抜き加工して抜き穴154に挿入されることにより、第2突部54に、連結突起18用の透孔56を形成するように動作する。
【0042】
(カシメ装置170)
次に、カシメ装置170を、
図9を参照して説明する。
図9(a)に示すように、カシメ装置170はプレス加工装置であって、
図3に示す下型220c(固定型)にはダイ171が固定されている。ダイ171の上面171aには、第1鋼板10の各第1突部14を凹部12側から支持するための複数の断面正三角形状をなす突部172が形成されている。すなわち、突部172の外形形状は、凹部12の外形形状と同一形状に形成されている。このため、突部172の頂面は平坦面となっている。
【0043】
又、断面正三角形状の突部172の各コーナーには、第1鋼板10の凹部12に設けられた穴部18aに嵌合する嵌合突部173が形成されている。
図3に示す上型212c(可動型)には、下型220c(固定型)の嵌合突部173に相対するパンチ180が複数固定されている。パンチ180は、断面円形をなし、第1鋼板10の凹部12を
図9(a)に示すように嵌合した状態で、連結突起18の先端面と対向するとともに、その直径は連結突起18の直径よりも若干長くされている。
【0044】
パンチ180の先端面(プレス面)には、連結突起18の先端面の周縁部に近い部位に、カシメ部形成用の円形リング状の突条182が突出されている。又、各パンチ180の周囲には、クッションパッド183が配置されている。本実施形態では、クッションパッド183は、バネ184を介して上型に連結されている。
【0045】
そして、上型212cが型締め時に下動した際、パンチ180の降下より先行して、クッションパッド183が降下し、第1鋼板10の上に積層された第2鋼板50の平板部50aと接触するようにされている。又、クッションパッド183と、第2鋼板50、第1鋼板10を挟んだダイ171の上面171aにより、積層状態の第2鋼板50と第1鋼板10を挟持した状態で、さらに降下したパンチ180が、連結突起18の先端面に突条182が食い込みして連結突起18をカシメ変形し、突条182により外周方向に移動した肉18bにより、連結突起18を第2鋼板50の透孔56の周縁にカシメ着するようにされている。
【0046】
(実施形態の作用)
次に上記のように構成された積層鋼板形成装置100の作用について説明する。
まず、第1鋼板形状付与装置110による、第1鋼板10に対するプレス加工を
図4(a)〜
図4(e)を参照して説明する。
【0047】
型開きした状態で、加工前において全体が平板となっている第1鋼板10を第1鋼板形状付与装置110のダイ111に載置し、
図4(a)に示すように、上型を下動する。すると、各パンチ120の突起120d、第1鋼板10に当接して押圧して変形する。
【0048】
さらに、
図4(b)〜
図4(e)に示すように各パンチ120が降下して、各パンチ120の突起120dが、加工穴112内に挿入されて型締めすると、テーパー面120a,第1段部120b、第2段部120cが第1鋼板10を曲げ加工することにより、
図5に示すように第1鋼板10には、千鳥状に配置された凹部12及び第1突部14が形成されるとともに、突起120dが加工穴112に挿入されることにより、凹部12の各コーナーには、連結突起18が形成される。
図5に示すように、連結突起18の基端側には、凹部12の内底面よりもさらに凹設された穴部18aが形成される。
【0049】
このとき、第2段部120cからの突起120dの高さ(突出長さL)は、突起120dが、パンチ120が降下時(加工時)に加工穴112内に挿入された際に、窪み部111a内底面と第2段部120c間、及びカウンタホルダ113と突起120d間で、第1鋼板10に対して部分冷間鍛造が可能な長さに設定されていることから、型締め時に、大きな圧縮応力が突起120dとカウンタホルダ113間で第1鋼板10に付与されて部分冷間鍛造が行われる。
【0050】
次に、突部形成装置130並びに第2鋼板形状付与装置150による、第2鋼板50に対するプレス加工を
図6(a)、
図6(b)、
図7(a)、
図7(b)を参照して説明する。
【0051】
図6(a)に示すように、型開きした状態で、加工前において全体が平板となっている第2鋼板50を突部形成装置130のダイ131に載置し、
図6(b)に示すように、上型を下動して型締めする。すると、ダイ140の突部142が、窪み部131a側に変位してダイ131との協働により第2鋼板50を曲げ変形することにより、千鳥状に配置された凹部52及び第2突部54が形成される。
【0052】
次に、
図7(a)に示すように、型開きした第2鋼板形状付与装置150のダイ151の各突部152に、第2鋼板50の第2突部54を合わせて各凹部52に嵌合させた状態となるように載置する。
【0053】
そして、
図3に示す上型212bを下動させる。すると、パンチ160の降下より先行して、クッションパッド162が降下し、第2鋼板50の第2突部54の頂面と接触する。この後、クッションパッド162とダイ151の突部152により第2鋼板50が挟持された状態で、さらに降下したパンチ160が、第2鋼板50を穴抜き加工して抜き穴154に挿入されることにより、
図7(b)、
図8に示すように第2突部54に連結突起18用の透孔56が形成される。
【0054】
次に、
図9(a)に示すように、第1鋼板10と第2鋼板50とを、第2鋼板50の各透孔56に対して第1鋼板10の各連結突起18を挿入して第1突部14と第2突部54とを接合した状態にする。すなわち、
図1、
図2に示すように、第1鋼板10の第1突部14と、第2鋼板50の第2突部54は、相互に位置をずらして配置するとともに、1つの第1突部14の3つのコーナーの連結突起18を、互いに異なる第2突部54の1つのコーナーの透孔56に挿入する。
【0055】
そして、第1鋼板10と第2鋼板50を、この両突部を接合した状態で型開きしたカシメ装置170のダイ171において、各嵌合突部173に対して第1鋼板10の各穴部18aを嵌合する。すなわち、ダイ171の各突部172に対して第1鋼板10の各凹部12を嵌合する。
【0056】
この状態で、
図3に示す上型212cが型締めして下動すると、パンチ180の降下より先行して、クッションパッド183が降下し、第1鋼板10の上に積層された第2鋼板50の平板部50aと接触する。
【0057】
そして、クッションパッド183と、第2鋼板50、第1鋼板10を挟んだダイ171の上面171aにより、積層状態の第2鋼板50と第1鋼板10を挟持した状態で、さらに降下したパンチ180が、連結突起18の先端面に突条182が食い込みして連結突起18をカシメ変形する。すなわち、突条182により外周方向に移動したリング状の肉18bにより、連結突起18が第2鋼板50の透孔56の内周縁全体にカシメ着される。
【0058】
このようにして、
図1に示すように、第1鋼板10と第2鋼板50とがカシメ着されて積層された状態となり、第1鋼板10において、第1突部14の各コーナーの連結突起18は、第2鋼板50の異なる3つの第2突部54に強固に連結されたものとなる。この結果、積層鋼板の剛性が高められ、積層鋼板に加えられた荷重を、前記連結された部位を介して分散することができる。
【0059】
又、積層鋼板を平面視した場合、第1突部14間に第2突部54が配置され、第2突部54間に第1突部14が配置されて連結された構成であるため、方向性がない剛性を得ることが可能となる。
【0060】
さらに、連結突起18先端面の外周縁全体が透孔56の内周縁全体にカシメ着されているため、カシメされた部位において、前記方向性のない剛性を担保することができる。
この実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
【0061】
(1) 本実施形態の積層鋼板形成装置は、第1鋼板10を部分冷間鍛造することにより、裏面側に第1突部14を形成するとともに、第1突部14から第1突部14の突出方向と同方向に突出した連結突起18を形成するパンチ120及びダイ111を備えた第1鋼板形状付与装置110と、裏面側に第2突部54が形成された第2鋼板50の前記第2突部54に透孔56を開けるパンチ160及びダイ151を備える第2鋼板形状付与装置150と、連結突起18を透孔56に貫通して第1鋼板10の第1突部14と第2鋼板50の第2突部54を接合した状態で、連結突起18の外周縁を透孔56の内周縁とをカシメるパンチ180及びダイ171を備えたカシメ装置170とを備える。
【0062】
この結果、本実施形態の積層鋼板形成装置100によれば、第1鋼板10と第2鋼板50とは、連結突起18を透孔56に貫通して第1突部14と第2突部54とを接合した状態で、冷間鍛造された連結突起18の外周縁を透孔56の内周縁とをカシメるため、第1鋼板10と第2鋼板50とは、接合強度を十分に確保することができる。
【0063】
(2) 本実施形態では、カシメ装置170のパンチ180及びダイ171は、互いに隣接する複数の第2突部54に対し、共通の第1突部14を接合した状態で、共通の第1突部14に設けた複数の連結突起18をそれぞれ前記複数の第2突部54の透孔56に貫通して、共通の第1突部14に設けられた各連結突起18の外周縁を、透孔56の内周縁にカシメるようにした。この結果、剛性に方向性がない積層鋼板を製造できる。
【0064】
(3) 本実施形態は、第1突部14及び第2突部54の外形は、正三角形状に形成されている。この結果、第1突部及び第2突部を単純な三角形状にした積層鋼板を製造できる積層鋼板形成装置を提供できる。
【0065】
(4) 本実施形態の積層鋼板の製造方法は、第1工程として、第1鋼板10を部分冷間鍛造することにより、裏面側に第1突部14を形成するとともに、第1突部14から第1突部14の突出方向と同方向に突出した連結突起18を形成する、又、第2工程として、裏面側に第2突部54が形成された第2鋼板50の第2突部54に透孔56を開ける。又、第3工程として、連結突起18を透孔56に貫通して第1鋼板10の第1突部14と第2鋼板50の第2突部54を接合した状態で、連結突起18の外周縁を透孔56の内周縁とをカシメる。この結果、第1鋼板10と第2鋼板50とは、接合強度を十分に確保することができる積層鋼板を得ることができる。
【0066】
(5) 本実施形態の積層鋼板の製造方法は、第3工程では、互いに隣接する複数の第2突部54に対し、共通の第1突部14を接合した状態で、共通の第1突部14に設けた複数の連結突起18をそれぞれ複数の第2突部54の透孔56に貫通して、共通の第1突部14に設けられた各連結突起18の外周縁を、透孔56の内周縁にカシメる。この結果、剛性に方向性がない積層鋼板を製造できる。
【0067】
(6) 本実施形態の積層鋼板の製造方法は、第1突部14及び第2突部54の外形は、正三角形状に形成されているため、第1突部14及び第2突部54を単純な三角形状にした積層鋼板を製造できる。
【0068】
なお、本発明の実施形態は前記実施形態に限定されるものではなく、下記のように変更しても良い。
・ 前記実施形態では、凹部12の外形形状は断面正三角形状に形成したが、正三角形形状に限定するものではなく、二等辺三角形状に形成したり、直角三角形状にする等、他の三角形状にすることも可能である。
【0069】
・ 前記実施形態では、凹部12の外形形状を三角形状としたが、形状を限定するものではなく、四角形状、例えば、正方形形状、長方形形状等の矩形形状であってもよい。又、四角形状以外の多角形形状、例えば、五角形形状、六角形形状であってもよく、或いは、円形形状、楕円形形状であってもよい。
【0070】
・ 又、第1突部の連結突起は、必ずしもコーナー部に設ける必要はなく、第2鋼板の互いに隣接する3つ又は4つの第2突部にそれぞれ設けた透孔に、第1鋼板に設けられた共通の第1突部に設けた3つ又は4つの連結突起をそれぞれカシメ着できるように、前記各装置を構成するようにしてもよい。
【0071】
この場合でも、積層鋼板を平面視した場合、第1突部間に第2突部が配置され、第2突部間に第1突部が配置されて連結された構成であるため、方向性がない剛性を得ることが可能となる。
【0072】
・ 前記実施形態では、第1突部、及び第2突部は、均等に離散して形成したが、不均等に離散してもよい。
・ 前記実施形態では、複数個の第1突部は同じ大きさとしているが、第1突部の突出量は互いに同じとし、かつ、断面が相似する形状としてもよい。
【0073】
・ 前記実施形態では、複数個の第2突部は同じ大きさとしているが、第2突部の突出量は互いに同じとし、かつ、断面が相似する形状としてもよい。