(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、観察者の選択によって手動で、または被写体距離が所定の距離よりも近い場合に自動で撮像モードを3Dモードから2Dモードに切り換えることが記載されている。しかしながら、観察者が被写体位置等によって手動で3Dモードから2Dモードに切り換えることは煩雑、面倒である。また被写体距離によって自動的に切り換える場合、前後方向だけでなく左右それぞれの撮像部からの被写体の存在する角度方向の距離を適切に測定する必要があるが、これを実現することは難しい。
【0005】
本発明では、このような課題に鑑み、撮像する被写体の状態によって適切に3Dモードと2Dモードを自動的に切り換える立体映像撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した課題を解決するために本発明は次の
(a)の立体映像撮像装置を提供する。
(a)複数の撮像部(102L,102R)と、複数の撮像部で撮像した第1の映像と第2の映像から、左目用映像と右目用映像を選択する映像選択部(107)と、被写体を特定する被写体特定部(204)と、被写体が第1の映像と第2の映像のそれぞれの所定の範囲内に位置するか否か、被写体の第1の映像内と第2の映像内における移動
方向および移動速度に基づいて、被写体がそれぞれの所定の範囲
から外れるか否かを判定する判定部(204)と、を有し、映像選択部は、判定部が、被写体が第1の映像
と第2の映像の所定の範囲内に位置し、被写体の第1の映像内
と第2の映像内における移動
方向および移動速度に基づいて、被写体が所定の範囲
から外れないと判定した場合、第1の映像
と第2の映像をそれぞれ左目用映像と右目用映像として選択し、被写体が第1の映像または第2の映像の一方の映像の所定の範囲内に位置し、他方の映像の所定の範囲内に位置せず、被写体の第1の映像内
と第2の映像内の移動
方向および移動速度に基づいて、被写体が所定の範囲
から外れないと判定した場合、第1の映像
と第2の映像の内、被写
体の位置が所定の範囲内にある方の映像を左目用映像および右目用映像として選択し、被写体が第1の映像
と第2の映像の所定の範囲内に位置し、被写体の第1の映像
内または第2の映像内の移動
方向および移動速度に基づいて、被写体の一方が所定の範囲
から外れず、他方が所定の範囲
から外れると判定した場合、第1の映像と第2の映像の内、被写
体の移動
方向および移動速度に基づいて、被写体が所定の範囲
から外れない方の映像を左目用映像および右目用映像として選択することを特徴とする立体映像撮像装置。
【0008】
更に、上記した課題を解決するために本発明は次の
(b)の立体映像撮像装置を提供する。
(b)判定部は、映像選択部が、第1の映像を左目用映像、第2の映像を右目用映像として選択している状態で判定する場合に基準とする所定の範囲と、第1の映像または第2の映像のどちらか一方を左目用映像および右目用映像として選択している状態で判定する場合に基準とする所定の範囲とを異なる範囲とすることを特徴とする
(a)記載の立体映像撮像装置。
【発明の効果】
【0009】
本発明の立体映像撮像装置によれば、撮像する被写体の状態によって適切に3Dモードと2Dモードを自動的に切り換える。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(実施形態1)
図1に、本発明の実施形態1における立体映像撮像装置の構成を示す。立体映像撮像装置100は、左撮像部102L、右撮像部102R、被写体位置判定部104、フォーカス調整部106、映像選択部107、左映像処理部108L、右映像処理部108R、左右映像合成部110、圧縮部112、記録部114から構成される。
【0012】
左撮像部102L、右撮像部102Rはそれぞれ撮像した映像データを被写体位置判定部104と映像選択部106に送る。被写体位置判定部104は、撮像信号から得られた被写体映像信号の高周波成分を抽出し、この高周波成分が最も大きくなるレンズ位置をフォーカスの最良点として検出し検出結果をフォーカス最良点信号としてフォーカス調整部106に送る。また、被写体位置判定部104は、撮像する被写体や背景が暗い場合等で撮像信号から得られた被写体映像信号の高周波成分が精度良く検出できない等の場合には、別途撮像部の周辺に配置され撮像方向に赤外線を照射し応答から被写体の距離を測定する測定部を備え、その距離測定信号をフォーカス調整部106に送ってもよい。このフォーカス最良点信号または距離測定信号を以下、被写体距離情報とも呼ぶ。また被写体位置判定部104は、本発明に係る被写体としての対象となる、例えば人の顔を検出する顔検出機能や、車のナンバープレートを検出する機能を有していて、特定の人物や特定の車のナンバープレート等を特定被写体として認識し、認識した特定被写体の撮像画面内の位置を検出する。また、検出した特定被写体の位置が、撮像画面内の所定の範囲内にあるか否かを判定し、判定結果を映像選択部106に送る。
【0013】
映像選択部107は、被写体位置判定部104から受け取った判定結果を元に、左撮像部102Lおよび右撮像部102Rから受け取った2つの映像信号から、左映像処理部108Lと右映像処理部108Rそれぞれに出力する映像信号を選択する。具体的には、被写体位置判定部104が、左撮像部102Lで撮像した映像内の特定被写体の位置と右撮像部102Rで撮像した映像内の特定被写体の位置が両方とも所定の範囲内にあると判定した場合、映像選択部107は、左撮像部102Lから受け取った映像信号を左映像処理部108Lに送り、右撮像部102Rから受け取った映像信号を右映像処理部108Rに送る。
【0014】
左映像処理部108Lは受け取った映像信号を左目用映像信号として処理し、左右映像合成部110に送る。右映像処理部108Rは受け取った映像信号を右目用映像信号として処理し、左右映像合成部110に送る。このように左撮像部と右撮像部で撮像した映像をそれぞれ左目用映像/右目用映像として処理するモードを3Dモードとする。
【0015】
被写体位置判定部104が、左撮像部102Lで撮像した映像内の特定被写体の位置が所定の範囲内にあり、右撮像部102Rで撮像した映像内の特定被写体の位置が所定の範囲内にないと判定した場合、映像選択部107は左撮像部102Lから受け取った映像信号を左映像処理部108Lと右映像処理部108Rに送る。左映像処理部108Lは受け取った映像信号を左目用映像信号として処理し、左右映像合成部110に送る。右映像処理部108Rは受け取った映像信号を右目用映像信号として処理し、左右映像合成部110に送る。このように左撮像部または右撮像部のどちらかで撮像した映像を右目用映像と左目用映像として処理するモードを2Dモードとする。2Dモードは、3Dモードで表示しても観察者が映像を立体視するのが困難なほど被写体が至近距離に位置する場合に用いられ、3Dモードはそれ以外の場合に用いられる。
【0016】
被写体位置判定部104が、左撮像部102Lで撮像した映像内の特定被写体の位置が所定の範囲内になく、右撮像部102Rで撮像した映像内の特定被写体の位置が所定の範囲内にあると判定した場合、映像選択部107は右撮像部102Rから受け取った映像信号を左映像処理部108Lおよび右映像処理部108Rに送る。この場合も2Dモードとなる。
左右映像合成部110は受け取った左目用映像信号と右目用映像信号を合成して立体映像信号を生成し、圧縮部112に送る。生成する立体映像信号の方式は、ラインバイライン方式や時分割方式等、視聴時の条件に応じて任意の方式とすれば良い。圧縮部112は受け取った立体映像信号を圧縮し、記録部114に送る。記録部114はフラッシュメモリー等の半導体メモリーやHDD等で構成され、受け取った圧縮信号を記録する。また映像撮像装置100は、図示しないインターフェースを介して左目用映像信号と右目用映像信号を合成し、または、左目用映像信号と右目用映像信号をそれぞれ、外部に伝送する。
【0017】
更に
図2を用いて、被写体位置判定部104の判定動作を説明する。
図2(a)は、特定被写体を左撮像部102Lと右撮像部102Rで撮像している様子を示す。丸図形は特定被写体を表わし、特定被写体は、ある時にaの位置にあり、別の時にbの位置にある。左撮像部撮像範囲と右撮像部撮像範囲として示した範囲は、各撮像部で撮像される範囲を示す。
図2(b)〜(e)はaまたはbの位置にある特定被写体をそれぞれの撮像部で撮像した映像を示したものである。
【0018】
図2(b)はaの位置にある特定被写体を左撮像部102Lで撮像した映像を示し、
図2(c)はbの位置にある特定被写体を左撮像部102Lで撮像した映像を示す。
図2(b)、(c)の映像内の点線は、予め決めた所定の撮像範囲の境界線を模式的に示したもので、被写体位置判定部104は特定被写体の映像が点線の左側にあるとき、特定被写体が左撮像部の所定の撮像範囲内にあると判定する。
図2(d)はaの位置にある特定被写体を右撮像部で撮像した映像を示し、
図2(e)はbの位置にある特定被写体を右撮像部で撮像した映像を示す。
図2(d)、(e)の映像内の点線は、予め決めた所定の撮像範囲の境界線を模式的に示したもので、被写体位置判定部104は特定被写体の映像が点線の右側にあるとき、特定被写体が右撮像部の所定の撮像範囲内にあると判定する。
【0019】
図2で特定被写体がaの位置にある場合、
図2(b)、(d)から判るように、特定被写体の映像は左撮像部による撮像の所定の範囲内にも右撮像部による撮像の所定の撮像範囲内にも入っている。この時、映像選択部106は、
図2(b)で示す映像信号を左目用映像信号として左映像処理部108Lに送り、
図2(d)で示す映像信号を右目用映像信号として右映像処理部108Rに送る。この時、3Dモードとなる。
一方、
図2で特定被写体がbの位置にある場合、
図2(c)、(e)から判るように、特定被写体の映像は左撮像部の所定の撮像範囲内に入ってなく、右撮像部の所定の撮像範囲内には入っている。この時、映像選択部107は、
図2(e)で示す映像信号を左目用映像信号として左映像処理部108Lに、右目用映像信号として右映像処理部108Rに送る。この時、2Dモードとなる。
【0020】
以上のように、本実施時形態の立体映像撮像装置によれば、特定被写体の映像が、左右両方の映像内の所定の範囲内にある場合だけ3Dモードとなり、左右どちらかの映像内の所定の範囲内にない場合は2Dモードとなるので、視聴者が立体映像として知覚できなかったり、立体映像として知覚できても、眼精疲労等の影響を視聴者に与えるような立体映像を生成することを防ぐことができる。また、2Dモードとする場合に、特定被写体が映像内の所定の範囲内にある方の映像を優先的に出力するので、より良好な特定被写体映像を得ることができる。
【0021】
本実施例では各撮像部で撮像した映像に所定の範囲を設定し、特定被写体の映像が所定の範囲内にあるか否かで3Dモードと2Dモードを切り換えるとしたが、3Dモードから2Dモードに切り換える時と2Dモードから3Dモードに切り換える時で基準とする特定被写体の位置は異なる位置とすることが望ましい。例えば左撮像部で撮像した映像に対しては3Dモードから2Dモードに切り換える時に基準とする特定被写体の位置に対し、2Dモードから3Dモードに切り換える時に基準とする特定被写体の位置が左側になるように設定する。右撮像部で撮像した映像に対しては3Dモードから2Dモードに切り換える時の特定被写体の基準とする位置に対し、2Dモードから3Dモードに切り換える時の特定被写体の基準とする位置が右側となるように設定する。これら基準とする位置の設定は固定値としてもよいし、ある程度ユーザーが調整できる構成としても良い。
【0022】
このように、3Dモードから2Dモードに切り換える時と2Dモードから3Dモードに切り換える時で基準とする特定被写体の位置をヒステリシスを持たせて異なる位置に設定することで、特定被写体が切り換え位置付近に留まったり、切り換え位置付近で往復移動をした場合等に頻繁なモード切替を行うことによって視聴しにくい映像を生成することや頻繁な切り換えによって不要な電力を消費することを防ぐことができる。
【0023】
(実施形態2)
実施形態1では、3Dモードと2Dモードの切り換えの判定基準および、2Dモードに切り換えた時に出力する映像を右撮像部で撮像した映像にするか左撮像部で撮像した映像にするかの選択の基準を特定被写体映像の位置によって選択した。実施形態2では、更に特定被写体の移動状態を検出して選択を行なう。
【0024】
図3は実施形態2に関る立体映像撮像装置の構成を示すブロック図である。実施形態1の構成と異なるのは、
図1の被写体位置判定部104が
図3では被写体位置/移動速度判定部204に変わった点であり、他の構成と動作は実施形態1で説明した
図1のブロック図と同じである。図中、
図1と同様の動作をするブロックには同じ記号を付し、説明を省略する。被写体位置/移動速度判定部204は左撮像部102Lで撮像した映像と右撮像部102Rで撮像した映像それぞれについて、特定被写体の映像内の位置と移動方向および移動速度を検出し、後述する判定基準に従って、3Dモードとするか2Dモードとするか、或いは2Dモードとする場合に左撮像部から受け取った映像と右撮像部から受け取った映像のどちらを選択するかを決め、判定結果を映像選択部107に送る。
【0025】
更に
図4を用いて、被写体位置/移動速度判定部204の判定動作を説明する。
図4は
図2と同様に左撮像部102Lと右撮像部102Rで特定被写体を撮像している様子を示す。特定被写体はa,b,cの順に移動している。
図4(b),(d),(f)はa,b,cの順に移動する特定被写体を左撮像部102Lで撮像した映像を示し、
図4(c),(e),(g)はa,b,cの順に移動する特定被写体を右撮像部102Rで撮像した映像を示す。また、映像内の点線は、
図2で説明したように、予め決めた所定の撮像範囲の境界線を模式的に示したものである。
【0026】
特定被写体がa,b,cの位置に順に移動したとき、
図4(b),(d),(f)に示すように、特定被写体の映像は左撮像部で撮像した映像内にはあるが、所定の範囲内には位置していない。右撮像部で撮像した映像では、特定被写体がaの位置にある時、
図4(c)に示すように特定被写体の映像は撮像範囲の中央付近に位置し、所定の範囲内にある。特定被写体がbの位置にある時、
図4(e)に示すように特定被写体の映像はまだ所定の範囲内にある。特定被写体がcの位置にある時、
図4(f)に示すように特定被写体の映像は撮像範囲から外れている。
【0027】
実施形態1で説明した装置では、
図4のa,b,cの位置に特定被写体がある時に、2Dモードとなる。また、特定被写体がaの位置からbの位置に移動する間、右撮像部で撮像した映像を左目用映像および右目用映像として選択する。しかし、特定被写体が
図4で示すような動きをした場合、右撮像部で撮像した映像ではなく、左撮像部で撮像した映像を選択した方が良いことがわかる。このように、特定被写体の移動の仕方によっては実施形態1のように特定被写体の位置だけで映像選択することには無理がある。実施形態2では特定被写体の位置だけでなく、移動状態も検出して映像の選択を行う。具体的には、時間的に前の時間の被写体の位置を記憶しておき、これとの差を求めることにより映像内の特定被写体の位置と移動の方向および速度を検出して、特定被写体が次の時間に映像から外れるか否かを判断して、外れると判断した場合には外れる方の映像を選択しない。
【0028】
実施形態2では3Dモードと2Dモードの切換え時の判断にも、特定被写体の位置に加え、移動方向と移動速度を判断基準とする。具体的には、実施形態1では特定被写体の映像内の位置が所定の範囲から外れた場合に2Dモードとしたが、実施形態2では特定被写体の位置と移動方向と移動速度を検出して、次の時間に特定被写体の映像内の位置が所定の範囲から外れると判断した場合に、2Dモードとする。このことで、特定被写体が映像内の所定の範囲から外れたときには既に2Dモードに切り換わっているというような動作設定が可能となり、より適切に2Dモードへの切り換えができる。特定被写体が映像内のどの位置にある場合に3Dモードと2Dモードの切り換えを行うかは、特定被写体の移動方向と移動速度によって適宜設定すればよい。この場合、実施例1と同様に3Dモードから2Dモードに切り換える時と2Dモードから3Dモードに切り換える時で基準とする特定被写体の位置は異なる位置とすることが望ましい。また、これら基準とする位置の設定は固定値としてもよいし、ある程度ユーザーが調整できる構成としても良い。
【0029】
以上のように、本実施時形態の立体映像撮像装置によれば、特定被写体の映像内の位置と移動を検出して、3Dモードと2Dモードの切換を行うので、より適切なモード切り換えができる。また、2Dモードとする場合に優先的に出力する映像を、特定被写体の位置と移動方向および移動速度を検出して判定するので、より良好な特定被写体映像を得ることができる。