(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5765164
(24)【登録日】2015年6月26日
(45)【発行日】2015年8月19日
(54)【発明の名称】エレベータドア装置
(51)【国際特許分類】
B66B 13/30 20060101AFI20150730BHJP
【FI】
B66B13/30 R
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2011-212222(P2011-212222)
(22)【出願日】2011年9月28日
(65)【公開番号】特開2013-71811(P2013-71811A)
(43)【公開日】2013年4月22日
【審査請求日】2014年1月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000112705
【氏名又は名称】フジテック株式会社
(72)【発明者】
【氏名】染田 雅弘
【審査官】
藤村 聖子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−015815(JP,A)
【文献】
特開2005−082314(JP,A)
【文献】
特開2004−323204(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 13/00−13/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータの出入口を開閉するドアと、前記出入口の下部に配置された敷居と、前記ドアの下部に設けられ、前記ドアの開閉動作に伴って前記敷居面を摺動する遮煙材と、前記敷居の前記遮煙材の摺動面を前記ドアの戸開方向へ延長するように前記敷居に取り付けられ、前記ドアが全開された際に、前記遮煙材を支持する敷居延長ガイドとを備えたものにおいて、
前記敷居延長ガイドは、前記遮煙材が摺動する摺動面と、前記敷居に取り付けられる取付部と、前記敷居の戸開側端面に接する接触部とを有しており、前記敷居延長ガイドの摺動面は前記敷居の摺動面よりもドア全開時の遮煙材に接する方向に突出して配置されているとともに、前記敷居延長ガイドの摺動面と、前記敷居延長ガイドの接触部との境界部は円弧面又は面取りとなっており、
前記敷居はアリ溝を有し、前記敷居延長ガイドの取付部は前記アリ溝に取り付けられており、
前記敷居延長ガイドの接触部は、前記敷居の戸開側端面に密着して取り付けられており、
前記敷居延長ガイドの摺動面の前記敷居の摺動面に対する突出量は調整可能であることを特徴とするエレベータドア装置。
【請求項2】
前記遮煙材は前記敷居の溝の側面を摺動する構成であることを特徴とする請求項1に記載のエレベータドア装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベータの出入口を開閉するドアの下端と敷居との隙間を閉塞する遮煙材が、ドアの下端に設置されたエレベータドア装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のエレベータドア装置を
図7〜
図10により説明する。
図7はエレベータの乗場ドア装置を昇降路側から見た図、
図8は
図7のII―II線に沿う断面図で、両図ともドア下部の一部を断面で示している。
図9は
図7の乗場ドアの全開状態における戸開側端部付近を示す図、
図10は
図9の右側面図である。
【0003】
図において、1,1は乗場出入口を開閉する一対の乗場ドア、3はドアハンガー4によって乗場ドア1の上部に取り付けられたローラであり、建築壁6に固定されたケース8に取り付けられたレール9に沿って乗場ドア1を開閉する。10は出入口の両側部及び上部を構成する三方枠、11は出入口下部の床に取り付けられた敷居、11aは敷居溝、1a,1bは乗場ドア1を構成している表面板及び裏面板であり、表面板1aの下部には敷居溝11aに挿入された乗場ドア1の開閉を案内する複数のドアガイドシュー13が設けられている。14はボルト及びピン等の固定用部材16によって表面板1aの下部に設けられた遮煙材であり、難燃性の弾性材で構成され、乗場ドア1の開閉に伴って敷居11上面を摺動する。14aは乗場ドア1の戸開側端部に配置された戸開側遮煙材である。これらのドアガイドシュー13,遮煙材14,14aによって、乗場ドア1の下端と敷居11の上面との隙間を閉塞している。
【0004】
一般のエレベータの場合、敷居11は、乗場ドア1が全開になったときに、ドアガイドシュー13が敷居溝11aから外れない程度の長さになっている。そのため、
図9に示すように、乗場ドア1の全開状態では、戸開側遮煙材14aの下部の一部は敷居11からはみ出すことになる。そうすると、乗場ドア1の開閉動作に伴って、戸開側遮煙材14aの下部が、敷居11の戸開側端部の角で擦られて磨耗し、戸開側遮煙材14aの早期劣化を招くことになる。
【0005】
そこでこの問題を解決するために、敷居11の戸開側端部に戸開側遮煙材14aをガイドするための敷居延長ガイドを設ける構成が考えられている。
この構成を
図11,
図12により説明する。
図11は
図9に相当する図、
図12は
図10に相当する図である。
【0006】
図において、22は縦断面Z字状(クランク状)の敷居延長ガイドであり、敷居25の上面を乗場ドア1の戸開方向に延長する延長部22aと敷居25の昇降路側端部に固定された固定部22bとを有している。戸開側遮煙材14aの下部は、乗場ドア1が全開状態になった際に敷居25及び延長部22aによって支持される。
敷居25の下部には、溝内部に比べ間口が狭いアリ溝25aが設けられており、このアリ溝25aの内部には、固定用部材であるボルト27のボルト頭27aがはめ込まれている。そしてボルト27には、固定部22bを貫通した後にナット28が螺合されている。これにより、固定部22bはボルト27及びナット28によって敷居25の戸開側端部に取り付けられる。
【0007】
この従来装置によれば、乗場ドア1が全開状態になった際には、敷居25の上面及び延長部22aによって戸開側遮煙材14aの下部が支持されるため乗場ドア1の開閉動作に伴う戸開側遮煙材14aの下部が、敷居11の戸開側端部の角で擦られる可能性が低くなる。これによって、戸開側遮煙材14aの早期劣化を防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−15815号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前記の構成では、敷居延長ガイド22と敷居25との接合部が完全に面一であれば問題ないが、取付誤差や製作誤差又は長年の使用により、敷居延長ガイド22と敷居25との接合部に段差ができることがある。するとこの段差で戸開側遮煙材14aの下部が擦られて、戸開側遮煙材14aの早期劣化を招く可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、エレベータの出入口を開閉するドアと、前記出入口の下部に配置された敷居と、前記ドアの下部に設けられ、前記ドアの開閉動作に伴って前記敷居面を摺動する遮煙材と、前記敷居の前記遮煙材の摺動面を前記ドアの戸開方向へ延長するように前記敷居に取り付けられ、前記ドアが全開された際に、前記遮煙材を支持する敷居延長ガイドとを備えたものにおいて、前記敷居延長ガイドは、前記遮煙材が摺動する摺動面と、前記敷居に取り付けられる取付部と、前記敷居の戸開側端面に接する接触部とを有しており、前記敷居延長ガイドの摺動面は前記敷居の摺動面よりもドア全開時の遮煙材に接する方向に突出して配置されているとともに、前記敷居延長ガイドの摺動面と、前記敷居延長ガイドの接触部との境界部
は円弧面又は面取り
となっており、前記敷居はアリ溝を有し、前記敷居延長ガイドの取付部は前記アリ溝に取り付けられており、前記敷居延長ガイドの接触部は、前記敷居の戸開側端面に密着して取り付けられており、前記敷居延長ガイドの摺動面の前記敷居の摺動面に対する突出量は調整可能であることを特徴とするものである。
【0012】
また本発明は、前記遮煙材は前記敷居の溝の側面を摺動するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、戸開側遮煙材の早期劣化を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施の形態による乗場ドアの全開状態における戸開側端部付近を示す図である。
【
図3】本発明の実施の形態による敷居の平面図である。
【
図5】本発明の他の実施の形態による乗場ドアの全開状態における戸開側端部付近を示す側面図である。
【
図6】本発明の他の実施の形態による敷居の平面図である。
【
図7】従来のエレベータの乗場ドア装置を昇降路側から見た部分断面図である。
【
図8】
図7のII―II線に沿う部分断面図である。
【
図9】
図7の乗場ドアの全開状態における戸開側端部付近を示す図である。
【
図11】従来の他の乗場ドアの全開状態における戸開側端部付近を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図において、30は敷居であり、31は敷居溝、32,33はアリ溝、34は敷居30の戸開側端面、35は戸開側遮煙材であり、敷居溝31の側面(摺動面)31aを摺動する。40は敷居延長ガイドであり、戸開側遮煙材35が摺動する摺動面41と、敷居30に取り付けられる取付部42と、敷居30の戸開側端面34に接する接触部43とを有しており、
図11,
図12と同様に、ボルト27及びナット28によってアリ溝32に取り付けられている。
また、
図3,
図4に示すように、接触部43と摺動面41との境界部44は円弧面(アール)になっており、更に敷居延長ガイド40の摺動面41は敷居溝31の摺動面31aよりも戸開側遮煙材35側へ突出して配置されている。
【0017】
前記構成のため、乗場ドア1の全開時に戸開側遮煙材35の戸開側端部は、敷居溝31の摺動面31aから、敷居延長ガイド40の境界部44のアールを介して、摺動面41にスムーズに移行することができる。また乗場ドア1の全開状態から戸閉する場合には、敷居延長ガイド40の摺動面41から敷居溝31の摺動面31aへスムーズに移行することができる。
【0018】
従って、敷居延長ガイド40の製作誤差や敷居30への取付誤差があっても、その誤差が、敷居溝31の摺動面31aからの前記敷居延長ガイド40の摺動面41の突出量よりも小さいならば、戸開側遮煙材35はスムーズに移行動作を行うことができる。
尚、敷居延長ガイド40の接触部43と敷居30の戸開側端面34とは隙間があっても戸開側遮煙材35はある程度スムーズに移行できるが、両者が密着しておればよりスムーズな動作が行える。
また、取付部42をボルト27及びナット28によってアリ溝32に取り付ける際に、アリ溝32の長手と直角方向の長手を有する長穴を取付部42に設けておくことにより、摺動面41の突出量を調整することができる。
【0019】
次に本発明の他の実施の形態について説明する。
図5は
図2に相当する図、
図6は
図5の敷居の平面図であり、
図1〜
図4と同一符号は同一のものを示している。
【0020】
図において、50は本実施の形態における敷居延長ガイドであり、戸開側遮煙材35が摺動する摺動面51と、敷居30に取り付けられる取付部52と、敷居30の戸開側端面34に接する接触部53とを有しており、ボルト27及びナット28によってアリ溝33に取り付けられている。また
図6のB部は
図4と同様の図になる。
【0021】
この実施の形態によれば、敷居延長ガイド50は、横断面Z字状(クランク状)になり、前記実施の形態に比べてシンプルな形状になり、製作や据付が容易になる。また取付部52とナット28との間に所望数のシムを挟むことにより、摺動面51の突出量を調整することができる。
【0022】
前記の各実施の形態においては、戸開側遮煙材35は敷居溝31の側面(摺動面)31aを摺動しているが、敷居溝31の底面や敷居31の上面を摺動する構成であっても同様に実施することができる。また、接触部と摺動面との境界部を円弧面としているが、斜めにカット(面取り)としてもよい。
尚、前記の各実施の形態では、乗場ドア1は中央両開き(センターオープン)タイプのもので説明しているが、片開き(サイドオープン)でも同様に実施できる。また、乗場ドアのみならず、かごドアに実施することもできる。
前記の説明では遮煙材14と戸開側遮煙材35は別体のものとして説明しているが、ドア下部全長に渡って1枚の遮煙材をドアガイドシューと並列に設置するタイプのものでは、遮煙材の戸開側部分が戸開側遮煙材となる。
【符号の説明】
【0023】
1 乗場ドア
13 ドアガイドシュー
30 敷居
31 敷居溝
31a 摺動面
32,33 アリ溝
34 戸開側端面
35 戸開側遮煙材
40,50 敷居延長ガイド
41,51 摺動面
42,52 取付部
43,53 接触部