特許第5765232号(P5765232)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5765232樹脂組成物、プリプレグ、および金属箔張積層板
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5765232
(24)【登録日】2015年6月26日
(45)【発行日】2015年8月19日
(54)【発明の名称】樹脂組成物、プリプレグ、および金属箔張積層板
(51)【国際特許分類】
   C08L 79/04 20060101AFI20150730BHJP
   C08L 63/02 20060101ALI20150730BHJP
   C08K 5/03 20060101ALI20150730BHJP
   C08L 69/00 20060101ALI20150730BHJP
   C08K 7/18 20060101ALI20150730BHJP
   C08L 75/00 20060101ALI20150730BHJP
   C08J 5/24 20060101ALI20150730BHJP
【FI】
   C08L79/04 Z
   C08L63/02
   C08K5/03
   C08L69/00
   C08K7/18
   C08L75/00
   C08J5/24CEZ
【請求項の数】11
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2011-549019(P2011-549019)
(86)(22)【出願日】2011年1月6日
(86)【国際出願番号】JP2011050096
(87)【国際公開番号】WO2011083818
(87)【国際公開日】20110714
【審査請求日】2013年12月17日
(31)【優先権主張番号】特願2010-3362(P2010-3362)
(32)【優先日】2010年1月8日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(72)【発明者】
【氏名】柳沼 道雄
(72)【発明者】
【氏名】土田 隆樹
(72)【発明者】
【氏名】深澤 絵美
【審査官】 井津 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−075012(JP,A)
【文献】 特開2004−182850(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/047866(WO,A1)
【文献】 特開平11−217489(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/087890(WO,A1)
【文献】 特開平03−037264(JP,A)
【文献】 特開2003−231762(JP,A)
【文献】 特開2004−175925(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/0−101/16
C08K 3/00−13/08
C08G 59/00−73/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子内に2個以上のシアネート基を有するシアン酸エステル樹脂(a)と、
分子内に2個以上のエポキシ基を有するビスフェノールA型エポキシ樹脂(b)と、
分子内に2個以上のエポキシ基を有するノボラック型エポキシ樹脂(c)と、
臭素化ポリカーボネートオリゴマー(d)と、
スチレンおよび/または置換スチレンの低重合体(e)と、
平均粒径が3μm以下の球状シリカ(f)と、
湿潤分散剤(g)と、
を含んでなり、
前記湿潤分散剤が、ウレタン構造をベースとする高分子共重合物からなる、樹脂組成物。
【請求項2】
前記湿潤分散剤(g)が、前記平均粒径が3μm以下の球状シリカ(f)に対して、2〜7質量%含まれてなる、請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記平均粒径が3μm以下の球状シリカ(f)が、樹脂組成物中の樹脂固形分100質量部に対して、25〜65質量部含まれてなる、請求項1または2記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記シアン酸エステル樹脂(a)が、樹脂組成物中の樹脂固形分100質量部に対して、25〜65質量部含まれてなる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記ビスフェノールA型エポキシ樹脂(b)が、樹脂組成物中の樹脂固形分100質量部に対して、5〜40質量部含まれてなる、請求項1〜4のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記前記ビスフェノールA型エポキシ樹脂(b)が、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂を含んでなる、請求項5に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
前記ノボラック型エポキシ樹脂(c)が、樹脂組成物中の樹脂固形分100質量部に対して、5〜30質量部含まれてなる、請求項1〜6のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
前記臭素化ポリカーボネートオリゴマー(d)が、樹脂組成物中の樹脂固形分100質量部に対して、3〜25質量部含まれてなる、請求項1〜7のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
前記スチレンおよび/または置換スチレンの低重合体(e)が、樹脂組成物中の樹脂固形分100質量部に対して、3〜20質量部含まれてなる、請求項1〜8のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の樹脂組成物を、基材に含浸または塗布してなるプリプレグ。
【請求項11】
請求項10記載のプリプレグを、少なくとも1枚以上重ね、その片面もしくは両面に金属箔を配して積層成形して得られる、金属箔張積層板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント配線板材料用の樹脂組成物、その組成物を用いたプリプレグ、および積層板に関し、より詳細には、成形外観が良好であり、吸湿後の耐熱性や誘電特性に優れ、とりわけ、高周波用分野の多層プリント配線板材料として好適な樹脂組成物に関する。
【発明の背景】
【0002】
近年、パーソナルコンピューター、サーバーをはじめとする情報端末機器およびインターネットルーター、光通信などの通信機器は、大容量の情報を高速で処理することが要求され、電気信号の高速化・高周波化が進んでいる。それに伴い、これら機器に用いられるプリント配線板用の積層板には、高周波への要求に対応するため、低誘電率化、低誘電正接化、中でも低誘電正接が求められている。また、環境問題から溶融温度が高い鉛フリーはんだが使用され始めており、プリント配線板用の積層板には更なる耐熱性も要求されている。
【0003】
従来、高周波用途の積層板材料としては、主として、ポリフェニレンエーテル樹脂(例えば、特開2005−112981号公報)や、シアン酸エステル樹脂(例えば、特開2005−120173号公報)などが使用されていた。しかしながら、ポリフェニレンエーテル樹脂は、分子量が比較的大きいため溶融粘度が高く、成形時の流動特性が不十分であるため、特に多層板において制約が大きく、実用性に問題があった。また、シアン酸エステル樹脂は、溶融粘度が低く成形性は良好であるが、低誘電率や低誘電正接の点でやや不十分であった。また、高温処理される鉛フリーはんだ環境下では、耐熱性の高い材料が求められるため、シアン酸エステル樹脂を用いた積層板は、耐熱性においても改善が必要であった。
【0004】
一方、高耐熱性と低誘電正接との両立のため、樹脂組成物に、無機充填材としてシリカを添加することが行われている(例えば、特開2008−75012号公報や特開2008−88400号公報など)。しかしながら、樹脂組成物中に、一定量以上のシリカを添加すると、樹脂とシリカとの分散不良により、成形外観にムラが発生するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−112981号公報
【特許文献2】特開2005−120173号公報
【特許文献3】特開2008−75012号公報
【特許文献4】特開2008−88400号公報
【発明の概要】
【0006】
本発明らは、シアン酸エステル樹脂とエポキシ樹脂と特定の熱可塑性樹脂と球状シリカと湿潤分散剤を必須成分とする樹脂組成物を特定の範囲での配合することにより、成形外観が良好で、誘電特性や耐熱性に優れる金属箔張積層板が得られることを見出した。本発明はかかる知見によるものである。
【0007】
したがって、本発明の目的は、耐熱性および誘電特性に優れ、かつ成形外観が良好な、高多層、高周波用プリント配線板用のシアン酸エステル樹脂組成物、およびこれを用いたプリプレグ、ならびに金属箔張積層板を提供することである。
【0008】
そして、本発明による樹脂組成物は、 分子内に2個以上のシアネート基を有するシアン酸エステル樹脂(a)と、分子内に2個以上のエポキシ基を有するビスフェノールA型エポキシ樹脂(b)と、分子内に2個以上のエポキシ基を有するノボラック型エポキシ樹脂(c)と、臭素化ポリカーボネートオリゴマー(d)と、スチレンおよび/または置換スチレンの低重合体(e)と、平均粒径が3μm以下の球状シリカ(f)と、湿潤分散剤(g)と、を含んでなるものである。
【0009】
また、本発明の態様においては、前記湿潤分散剤(g)が、前記平均粒径が3μm以下の球状シリカ(f)に対して、2〜7質量%含まれてなることが好ましい。
【0010】
前記平均粒径が3μm以下の球状シリカ(f)が、樹脂組成物中の樹脂固形分100質量部に対して、25〜65質量部含まれてなることが好ましい。
【0011】
また、本発明の態様においては、前記シアン酸エステル樹脂(a)が、樹脂組成物中の樹脂固形分100質量部に対して、25〜65質量部含まれてなることが好ましい。
【0012】
また、本発明の態様においては、前記ビスフェノールA型エポキシ樹脂(b)が、樹脂組成物中の樹脂固形分100質量部に対して、5〜40質量部含まれてなることが好ましい。
【0013】
また、本発明の態様においては、前記前記ビスフェノールA型エポキシ樹脂(b)が、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂を含んでなることが好ましい。
【0014】
また、本発明の態様においては、前記ノボラック型エポキシ樹脂(c)が、樹脂組成物中の樹脂固形分100質量部に対して、5〜30質量部含まれてなることが好ましい。
【0015】
また、本発明の態様においては、前記臭素化ポリカーボネートオリゴマー(d)が、樹脂組成物中の樹脂固形分100質量部に対して、3〜25質量部含まれてなることが好ましい。
【0016】
また、本発明の態様においては、前記スチレンおよび/または置換スチレンの低重合体(e)が、樹脂組成物中の樹脂固形分100質量部に対して、3〜20質量部含まれてなることが好ましい。
【0017】
また、本発明の別の態様によれば、上記の樹脂組成物を、基材に含浸または塗布してなるプリプレグ、および、そのプリプレグを、少なくとも1枚以上重ね、その片面もしくは両面に金属箔を配して積層成形して得られる、金属箔張積層板も提供される。
【0018】
本発明による樹脂組成物から得られるプリプレグや、これを硬化した金属箔張積層板は、誘電特性や耐熱性に優れ、成形外観も良好であることから、とりわけ、高多層、高周波用途の多層プリント配線板材料に好適であり、工業的な実用性は極めて高いものである。
【発明の具体的説明】
【0019】
本発明による樹脂組成物は、分子内に2個以上のシアネート基を有するシアン酸エステル樹脂(a)と、分子内に2個以上のエポキシ基を有するビスフェノールA型エポキシ樹脂(b)と、分子内に2個以上のエポキシ基を有するノボラック型エポキシ樹脂(c)と、臭素化ポリカーボネートオリゴマー(d)と、スチレンおよび/または置換スチレンの低重合体(e)と、平均粒径が3μm以下の球状シリカ(f)と、湿潤分散剤(g)とを必須成分として含有する。以下、樹脂組成物を構成する各成分について、以下、説明する。
【0020】
<シアン酸エステル樹脂(a)>
本発明において使用されるシアン酸エステル樹脂(a)は、1分子中に2個以上のシアネート基を有する化合物であれば特に限定されない。具体的には、1,3−ジシアネートベンゼン、1,3,5−トリシアネートベンゼン、ビス(3,5−ジメチル−4−シアネートフェニル)メタン、1,3−、1,4−、1,6−、1,8−、2,6−または2,7−ジシアネートナフタレン、1,3,8−トリシアネートナフタレン、4,4’−ジシアネートビフェニル、ビス(4−シアネートフェニル)メタン、2,2−ビス(4−シアネートフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−シアネートフェニル)プロパン、ビス(4−シアネートフェニル)エーテル、ビス(4−シアネートフェニル)チオエーテル、ビス(4−シアネートフェニル)スルフォン、およびフェノール、ナフトールなどの各種ノボラック樹脂と臭素化シアンとの反応によって得られるシアン酸エステル樹脂などが例示でき、これらを1種または2種以上を適宜混合して使用してもよい。好ましいシアン酸エステル化合物(a)としては、2,2−ビス(4−シアネートフェニル)プロパン、ビス(3,5−ジメチル−4−シアネートフェニル)メタン、フェノールノボラック型シアン酸エステル、ナフトールアラルキルノボラック型シアン酸エステル、およびそれらのプレポリマーが挙げられる。
【0021】
樹脂組成物中のシアン酸エステル樹脂(a)の含有量は、樹脂組成物中の樹脂固形分100質量部に対して、25〜65質量部の範囲が好ましく、35〜50質量部の範囲がより好ましい。シアン酸エステル樹脂(a)の含有量を下限値以上とすることで、ガラス転移温度を向上させることができ、かつ、電気特性、特に誘電正接を低くすることができる。また、上限値以下とすることで、吸湿時の材料物性、特に吸湿耐熱性の低下を抑制することができる。ここで「樹脂組成物中の樹脂固形分」とは、樹脂組成物に含まれる球状シリカ、湿潤分散剤、溶剤を除いた成分を意味する。本明細書において、「樹脂組成物中の樹脂固形分」とは、上記の成分を示すものとする。
【0022】
<ビスフェノールA型エポキシ樹脂(b)>
本発明において使用されるビスフェノールA型エポキシ樹脂(b)は、1分子内に2個以上のエポキシ基を有するビスフェノールA型エポキシ樹脂であれば、特に制限なく使用することができる。本発明においては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(b)として、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂を含んでなることが好ましい。
【0023】
樹脂組成物中のビスフェノールA型エポキシ樹脂(b)の含有量は、樹脂組成物中の樹脂固形分100質量部に対して、5〜40質量部の範囲が好ましく、10〜30質量部の範囲がより好ましい。ビスフェノールA型エポキシ樹脂(b)の含有量を、下限値以上とすることで電気特性、特に誘電正接を低くすることができる。また、上限値以下とすることで吸湿時の材料物性、特に吸湿耐熱性を上げることができる。
【0024】
<ノボラック型エポキシ樹脂(c)>
本発明において使用されるボラック型エポキシ樹脂(c)は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するノボラック型エポキシ樹脂であれば、特に制限なく使用することができる。具体的には、フェノールノボラックエポキシ樹脂、臭素化フェノールノボラックエポキシ樹脂、クレゾールノボラックエポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラックエポキシ樹脂、フェノールアラルキルノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキルノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキルノボラック型エポキシ樹脂、リン含有ノボラック型エポキシ樹脂、シクロペンタジエン型エポキシ樹脂、イソシアネート変性エポキシ樹脂などが挙げられる。これらの中でも、フェノールノボラックエポキシ樹脂、臭素化フェノールノボラックエポキシ樹脂、クレゾールノボラックエポキシ樹脂が好ましい。また、上記したノボラック型エポキシ樹脂を、1種または2種類以上適宜混合して使用してもよい。
【0025】
樹脂組成物中のノボラック型エポキシ樹脂(c)の含有量は、樹脂組成物中の樹脂固形分100質量部に対して、5〜30質量部の範囲が好ましく、10〜20質量部がより好ましい。ノボラック型エポキシ樹脂(c)の含有量を下限値以上とすることで、吸湿時の材料物性、特に吸湿耐熱性を上げることができる。また、上限値以下とすることで電気特性、特に誘電正接を低くすることができる。
【0026】
本発明の樹脂組成物は、上記したエポキシ樹脂(b)および(c)以外のエポキシ樹脂を含有していてもよい。このようなエポキシ樹脂としては、具体的には、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、トリスフェノールメタン型エポキシ樹脂、多官能フェノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂などが挙げられる。また、これらエポキシ樹脂を1種または2種類以上適宜混合して使用してもよい。
【0027】
<臭素化ポリカーボネートオリゴマー(d)>
本発明において使用される臭素化ポリカーボネートオリゴマー(d)は、ポリカーボネート構造を有する臭素原子含有オリゴマーであれば、特に制限なく使用することができる。臭素化ポリカーボネートオリゴマー(d)の分子量は特に限定されるものではないが、本発明においては、質量平均分子量が500〜3000のものが好ましい。
【0028】
樹脂組成物中の臭素化ポリカーボネートオリゴマー(d)の含有量は特に限定されるものではないが、樹脂組成物中の樹脂固形分100質量部に対して、3〜25質量部の範囲が好ましく、5〜20質量部の範囲がより好ましい。臭素化ポリカーボネートオリゴマー(d)の含有量を下限値以上とすることで、誘電率、誘電正接を低くすることができる。また、上限値以下とすることで耐熱性の低下を抑制することができる。
【0029】
<スチレンおよび/または置換スチレンの低重合体(e)>
本発明において使用されるスチレンおよび/または置換スチレンの低重合体(e)は、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレンなどからなる芳香族ビニル化合物の1種または2種以上を重合したものであり、かつ、その重合体の数平均分子量が178〜800であり、平均の芳香核数が2〜6であり、芳香核数の2〜6の合計の含有量が50質量%以上であり、沸点が300℃以上である分岐構造のない化合物または樹脂である。
【0030】
樹脂組成物中のスチレンおよび/または置換スチレンの低重合体(e)の含有量は特に限定されるものではないが、樹脂組成物中の樹脂固形分100質量部に対して、3〜20質量部の範囲が好ましく、5〜15質量部の範囲がより好ましい。低重合体(e)の含有量を下限値以上とすることで、誘電率、誘電正接を低くすることができる。また、上限値以下とすることで吸湿時の材料物性、特に吸湿耐熱性を上げることができる。
【0031】
<球状シリカ(f)>
本発明において使用される球状シリカ(f)としては、球状溶融シリカ、球状合成シリカが挙げられ、これらを1種または2種類以上適宜混合して使用してもよい。球状シリカ(f)の平均粒径としては、3μm以下のものが用いられ、特に平均粒径0.1〜1μmのものがより好適である。
【0032】
樹脂組成物中の球状シリカ(f)の含有量は特に限定されるものではないが、樹脂組成物中の樹脂固形分100質量部に対し、25〜65質量部の範囲が好ましく、35〜50質量部の範囲がより好ましい。球状シリカ(f)の含有量を下限値以上とすることで、電気特性、特に誘電正接を低くすることができる。また、上限値以下とすることでドリル加工性・成形時の流れ特性が良好な樹脂組成物とすることができる。球状シリカの平均粒径が3μmを超える場合や、球状シリカの含有量が上記範囲の上限値を超える場合は、小径ドリルビットの使用時の折損や、成形時の流れ特性が悪化するなどの問題が生じる。また、球状シリカの含有量が上記範囲の下限値以下では電気特性、特に誘電正接が増加する。
【0033】
本発明において使用される球状シリカは、表面処理されていてもよい。表面処理については、積層板用途において一般に使用されるものであれば適用可能であり、例えば、エポキシシラン処理、アミノシラン処理などが挙げられる。
【0034】
<湿潤分散剤(g)>
本発明において使用される湿潤分散剤(g)としては、長鎖ポリアミノアマイドと高分子量酸エステルの塩、高分子量ポリカルボン酸の塩、長鎖ポリアミノアマイドと極性酸エステルの塩、高分子量不飽和酸エステル、高分子共重合物、変性ポリウレタン、変性ポリアクリレート等が挙げられこれらを1種または2種類以上適宜混合して使用してもよい。これらのなかでも、ウレタン構造をベースとする高分子共重合物は、多くの顔料親和基が充填材の表面に吸着して、充填材同士の凝集を防ぎ、湿潤分散剤同士が絡み合って充填材の沈降等を防止できるため、好ましい。上記のような湿潤分散剤として、市販のものを使用してもよく、例えば、ビックケミー・ジャパン製のDisperbyk−116、161、184、等を好適に使用できる。また、これらを1種または2種類以上適宜混合して使用してもよい。
【0035】
樹脂組成物中の湿潤分散剤(g)の含有量は、樹脂組成物中に含まれる球状シリカ(f)の含有量の2〜7質量%であることが好ましい。湿潤分散剤(g)の含有量を下限値以上とすることで、樹脂組成物中の樹脂と球状シリカの分散を高め、成型ムラを抑制することができる。また、上限値以下とすることで耐熱性の低下を抑制することができる。
【0036】
<その他の成分>
本発明の樹脂組成物には、必要に応じて、硬化促進剤を添加してもよい。硬化促進剤としては、公知の、一般に使用されているものであれば特に限定されるものではない。代表例としては、銅、亜鉛、コバルト、ニッケル等の有機金属塩類、イミダゾール類およびその誘導体、第3級アミンなどが挙げられ、具体的には、オクチル酸亜鉛などを使用することができる。
【0037】
<樹脂組成物の製造方法>
本発明による樹脂組成物は、上記した各成分を混合することにより製造できる、従来公知の方法を採用できる。例えば、シアン酸エステル樹脂(a)、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(b)、ノボラック型エポキシ樹脂(c)、臭素化ポリカーボネートオリゴマー(d)、スチレンおよび/または置換スチレンの低重合体(e)、平均粒径が3μm以下の球状シリカ(f)、湿潤分散剤(g)を、順次溶剤に加えて、これを十分に攪拌することにより、樹脂組成物を製造することができる。
【0038】
樹脂組成物の製造に使用される本溶剤としては、シアン酸エステル樹脂(a)とビスフェノールA型エポキシ樹脂(b)とノボラック型エポキシ樹脂(c)との混合物と溶解するものであれば、特に限定されない。具体的には、アセトン、メチルエチルケトン、メチルセルソルブ、プロピレングリコールメチルエーテルおよびそのアセテート、トルエン、キシレン、ジメチルホルムアミドなどが挙げられ、これらは1種または2種以上を適宜混合して使用してもよい。
【0039】
<プレプリグ>
本発明によるプレプリグは、上記した樹脂組成物を基材に含浸または塗布したものである。基材としては、各種のプリント配線板用材料に用いられている周知のものを使用することができる。例えば、Eガラス、Dガラス、Sガラス、Tガラス、NEガラスなどの無機繊維、ポリイミド、ポリアミド、ポリエステルなどの有機繊維などが挙げられるが、これらに限定されるものではなく、目的とする用途や性能により適宜選択してよい。
【0040】
基材の形状としては、織布、不織布などが例示される。基材の厚みは特に制限されるものではないが、通常は0.02〜0.2mm程度である。また、基材をシランカップリング剤などで表面処理したものや物理的に開繊処理を施したものは、吸湿耐熱性の面から好適に使用できる。
【0041】
本発明によるプリプレグの製造方法は、シアン酸エステル樹脂(a)、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(b)、ノボラック型エポキシ樹脂(c)、臭素化ポリカーボネートオリゴマー(d)、スチレンおよび/または置換スチレンの低重合体(e)、平均粒径が3μm以下の球状シリカ(f)、湿潤分散剤(g)を含んでなる樹脂組成物と基材とを組み合わせてプリプレグが得られる方法であれば、特に限定されるものではない。例えば、上記した樹脂組成物を基材に含浸または塗布させた後、加熱することにより樹脂を半硬化(Bステ−ジ化)させて、プリプレグとすることができる。Bステ−ジ化は、例えば、100〜200℃の乾燥機中で、基材に含浸または塗布した樹脂組成物を1〜30分間、加熱することにより行うことができる。プリプレグにおける樹脂組成物(球状シリカを含む)の量は、基材に対して30〜90質量%の範囲が好ましい。
【0042】
<金属箔張積層板>
本発明による金属箔張積層板は、上述のプリプレグを用いて積層成形したものである。具体的には、前述のプリプレグを、1枚または複数枚を重ね、所望によりその片面もしくは両面に、銅やアルミニウムなどの金属箔を配置し、積層成形したものである。使用する金属箔は、プリント配線板材料に用いられるものであれば、特に限定されないが、圧延銅箔、電解銅箔などの公知の銅箔が好ましい。金属箔の厚みは、3〜70μmが好ましく、好適には5〜18μである。
【0043】
積層成形の条件としては、通常のプリント配線板用積層板および多層板で使用されている条件を適用できる。例えば、多段プレス、多段真空プレス、連続成形、オートクレーブ成形機などを使用し、温度は150〜300℃、圧力は2〜100kgf/cm、加熱時間は0.05〜5時間の範囲が一般的である。また、プリプレグと、別途作成した内層用の配線板とを組み合わせて積層成形することにより、多層板としてもよい。
【実施例】
【0044】
以下に実施例、比較例を示し、本発明を詳細に説明するが、本発明がこれら実施例に限定して解釈されるものではない。
【0045】
<両面銅張積層板の作製>
実施例1
2,2−ビス(4−シアネートフェニル)プロパンのプレポリマー(CA210、三菱ガス化学製)40質量部、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エピクロン153、DIC製)14質量部、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂(DER515、ダウケミカルジャパン)15質量部、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(N680、DIC製)12質量部、臭素化ポリカーボネートオリゴマー(FG8500、質量平均分子量3000、Br.含有量 58%、帝人化成製)9質量部、低分子量ポリスチレン(PICCOLASTIC A−5、米国Eastman Chemical Company社製)10質量部、球状合成シリカ(SC2050、平均粒径0.5μm、アドマテックス製)55質量部、湿潤分散剤(Disperbyk−161、ビックケミー・ジャパン製)1.5質量部、オクチル酸亜鉛0.02重両部を攪拌混合しワニスを得た。
【0046】
得られたワニスをメチルエチルケトンで希釈し、厚さ0.08mmのEガラスクロスに含浸させ、160℃で8分加熱させて、樹脂組成物量が54質量%のプリプレグを得た。次に、このプリプレグを8枚重ねたものの上下面に18μmの電解銅箔を配置し、温度200℃、面圧30kgf/cmで160分間プレスし、厚さ0.8mmの両面銅張積層板を得た。
【0047】
実施例2
2,2−ビス(4−シアネートフェニル)プロパンのプレポリマー(CA210)45質量部、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エピクロン153)16質量部、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂(DER515)8質量部、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(N680)15質量部、臭素化ポリカーボネートオリゴマー(FG8500)9質量部、α−メチルスチレンオリゴマー(クリスタレックス3085、質量平均分子量:664、米国Eastman Chemical Company製)7質量部、球状合成シリカ(SC2050)45質量部、湿潤分散剤(Disperbyk−184、ビックケミー・ジャパン製)1質量部、オクチル酸亜鉛0.02質量部を攪拌混合しワニスを得た。このワニスを使用した以外は実施例1と同様に行い、厚さ0.8mmの両面銅張積層板を得た。
【0048】
実施例3
ワニスの調製において、湿潤分散剤として、Disperbyk−184に代えてDisperbyk−161(ビックケミー・ジャパン製)を使用した以外は、実施例2と同様にしてワニスを作製し、実施例2と同様にして厚さ0.8mmの両面銅張積層板を得た。
【0049】
実施例4
実施例3において、湿潤分散剤の配合量を、1質量部から3質量部に変えた以外は、実施例3と同様にしてワニスを作製し、実施例3と同様にして厚さ0.8mmの両面銅張積層板を得た。
【0050】
参考例5
ワニスの調製において、湿潤分散剤として、1質量部のDisperbyk−184に代えて、2質量部のDisperbyk−116(ビックケミー・ジャパン製)を使用した以外は、実施例2と同様にしてワニスを作製し、実施例2と同様にして厚さ0.8mmの両面銅張積層板を得た。
【0051】
実施例6
2,2−ビス(4−シアネートフェニル)プロパンのプレポリマー(CA210)50質量部、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エピクロン153)10質量部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エピコート828EL、ジャパンエポキシレジン製)5質量部、臭素化フェノールノボラック型エポキシ樹脂(BREN−S、日本化薬製)15質量部、臭素化ポリカーボネートオリゴマー(FG8500)10質量部、低分子量ポリスチレン(PICCOLASTIC A−5)10質量部、球状溶融シリカ(FB−3SDC、平均粒径3μm、電気化学工業製)25質量部、湿潤分散剤(Disperbyk−161)0.5質量部、オクチル酸亜鉛0.02質量部を攪拌混合しワニスを得た。このワニスを使用する以外は実施例1と同様に行い、厚さ0.8mmの両面銅張積層板を得た。
【0052】
実施例7
2,2−ビス(4−シアネートフェニル)プロパンのプレポリマー(CA210)35質量部、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エピクロン153)5質量部、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂(DER515)5質量部、クレゾールノボラック型エポキシエポキシ樹脂(N680)25質量部、臭素化ポリカーボネートオリゴマー(FG8500)20質量部、α−メチルスチレンオリゴマー(クリスタレックス3085)10質量部、球状合成シリカ(SC2050)60質量部、湿潤分散剤(Disperbyk−161)2質量部、オクチル酸亜鉛0.02質量部を攪拌混合しワニスを得た。このワニスを使用する以外は実施例1と同様に行い、厚さ0.8mmの両面銅張積層板を得た。
【0053】
実施例8
2,2−ビス(4−シアネートフェニル)プロパンのプレポリマー(CA210)50質量部、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エピクロン153)17質量部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エピコート828EL)8質量部、臭素化フェノールノボラック型エポキシ樹脂(BREN−S)10質量部、臭素化ポリカーボネートオリゴマー(FG8500)5質量部、低分子量ポリスチレン(PICCOLASTIC A−5)15質量部、球状合成シリカ(SC2050)45質量部、湿潤分散剤(Disperbyk−184)1質量部、オクチル酸亜鉛0.02質量部を攪拌混合しワニスを得た。このワニスを使用する以外は実施例1と同様に行い、厚さ0.8mmの両面銅張積層板を得た。
【0054】
比較例1
2,2−ビス(4−シアネートフェニル)プロパンのプレポリマー(CA210)40質量部、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エピクロン153)14質量部、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂(DER515)15質量部、クレゾールノボラック型エポキシエポキシ樹脂(N680)12質量部、臭素化ポリカーボネートオリゴマー(FG8500)9質量部、α−メチルスチレンオリゴマー(クリスタレックス3085)10質量部、球状合成シリカ(SC2050)55質量部、オクチル酸亜鉛0.02質量部を攪拌混合しワニスを得た。このワニスを使用する以外は実施例1と同様に行い、厚さ0.8mmの両面銅張積層板を得た。
【0055】
比較例2
2,2−ビス(4−シアネートフェニル)プロパンのプレポリマー(CA210)50質量部、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エピクロン153)20質量部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エピコート828EL)10質量部、臭素化ポリカーボネートオリゴマー(FG8500)10質量部、低分子量ポリスチレン(PICCOLASTIC A−5)10質量部、球状合成シリカ(SC2050)60質量部、湿潤分散剤(Disperbyk−161)2質量部、オクチル酸亜鉛0.02質量部を攪拌混合しワニスを得た。このワニスを使用する以外は実施例1と同様に行い、厚さ0.8mmの両面銅張積層板を得た。
【0056】
比較例3
2,2−ビス(4−シアネートフェニル)プロパンのプレポリマー(CA210)37質量部、臭素化フェノールノボラック型エポキシ樹脂(BREN−S)25質量部、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(N680)23質量部、臭素化ポリカーボネートオリゴマー(FG8500)10質量部、α−メチルスチレンオリゴマー(クリスタレックス3085)5質量部、球状シリカ(FB−3SDC)50重両部、湿潤分散剤(Disperbyk−184)1質量部、オクチル酸亜鉛0.02質量部を攪拌混合しワニスを得た。このワニスを使用する以外は実施例1と同様に行い、厚さ0.8mmの両面銅張積層板を得た。
【0057】
比較例4
2,2−ビス(4−シアネートフェニル)プロパンのプレポリマー(CA210)50質量部、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エピクロン153)17質量部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エピコート828EL)5質量部、臭素化フェノールノボラック型エポキシ樹脂(BREN−S)8質量部、臭素化ポリカーボネートオリゴマー(FG8500)10質量部、低分子量ポリスチレン(PICCOLASTIC A−5)10質量部、湿潤分散剤(Disperbyk−161)0.5質量部、オクチル酸亜鉛0.02質量部を攪拌混合しワニスを得た。このワニスを使用する以外は実施例1と同様に行い、厚さ0.8mmの両面銅張積層板を得た。
【0058】
比較例5
2,2−ビス(4−シアネートフェニル)プロパンのプレポリマー(CA210)40質量部、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エピクロン153)8質量部、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂(DER515)22質量部、クレゾールノボラック型エポキシエポキシ樹脂(N680)15質量部、臭素化ポリカーボネートオリゴマー(FG8500)10質量部、低分子量ポリスチレン(PICCOLASTIC A−5)5質量部、粒径4.9μmの破砕シリカ(FS−20、電気化学工業製)80質量部、湿潤分散剤(Disperbyk−161)2質量部、オクチル酸亜鉛0.02質量部を攪拌混合しワニスを得た。このワニスを使用する以外は実施例1と同様に行い、厚さ0.8mmの両面銅張積層板を得た。
【0059】
比較例6
2,2−ビス(4−シアネートフェニル)プロパンのプレポリマー(CA210)45質量部、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エピクロン153)15質量部、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂(DER515)17質量部、臭素化フェノールノボラック型エポキシ樹脂(BREN−S)8質量部、α−メチルスチレンオリゴマー(クリスタレックス3085)15質量部、球状溶融シリカ(SC2050)40質量部、湿潤分散剤(Disperbyk−184)1質量部、オクチル酸亜鉛0.02質量部を攪拌混合しワニスを得た。このワニスを使用する以外は実施例1と同様に行い、厚さ0.8mmの両面銅張積層板を得た。
【0060】
比較例7
2,2−ビス(4−シアネートフェニル)プロパンのプレポリマー(CA210)30質量部、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エピクロン153)8質量部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エピコート828EL)15質量部、クレゾールノボラック型エポキシ(N680)12質量部、臭素化ポリカーボネートオリゴマー(FG8500)35質量部、球状溶融シリカ(SC2050)55質量部、湿潤分散剤(Disperbyk−161)1質量部、オクチル酸亜鉛0.02質量部を攪拌混合しワニスを得た。このワニスを使用する以外は実施例1と同様に行い、厚さ0.8mmの両面銅張積層板を得た。
【0061】
比較例8
実施例3において、湿潤分散剤の配合量を、1質量部から4質量部に変えた以外は、実施例3と同様にしてワニスを作製し、実施例3と同様にして厚さ0.8mmの両面銅張積層板を得た。
【0062】
比較例9
実施例3において、湿潤分散剤の配合量を、1質量部から5質量部に変えた以外は、実施例3と同様にしてワニスを作製し、実施例3と同様にして厚さ0.8mmの両面銅張積層板を得た。
【0063】
<評価>
(1)ガラス転移温度
得られた樹脂のガラス転移温度を、JIS C6481に準拠しDMA法にて測定した(n=2)。
【0064】
(2)誘電特性
0.8mm銅張積層板の銅箔をエッチング除去後に110×1.0mmの大きさに切断し、空洞共振法[Agilent製 NETWORK ANALAYZER 8722ES]で1GHzの値を測定した(n=6)。なお、一般的に、誘電正接は0.0065以下のものは合格、それより大きいものを不合格とされている。
【0065】
(3)T−288(time to delamination)
IPC TM−650に準じて、18μm銅箔付きの試験片(5mm×5mm×0.8mm)を使用し、TMA装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー製EXSTAR6000TMA/SS6100)を用い、昇温速度10℃/minで288℃まで加熱し、288℃に到達後温度を一定に保持し、288℃到達時からデラミネーションが発生するまでの時間を測定した(n=2)。なお、一般的に、デラミネーション発生時間が10分以上のものは合格、10分未満のものは不合格(NG)とされている。
【0066】
(4)吸湿耐熱性
60mm×60mmのサンプルの片面の半分以外の全銅箔をエッチング除去した試験片をプレッシャークッカー試験機(平山製作所社製、PC−3型)で121℃、2気圧で3時間処理後、260℃の半田の中に30秒間浸漬したときの外観変化を目視で観察した。同様の試験を行い(n=4)、フクレが発生した回数の割合(フクレ発生数/試験数)で吸湿耐熱性を評価した。
【0067】
(5)ドリル折損
厚さ0.1mmのEガラスクロスを使用した樹脂量54質量%のプリプレグ8枚の両面に厚さ12μmの銅箔を配置し、厚さ0.8mmの銅張積層板を作製した。この試験片(510mm×340mm×0.8mm)を1枚使用し、エントリーシート(LE800厚さ0.070mm、三菱ガス化学製)を重ね、ドリルビット(MD J492B0.105×1.6mm、ユニオンツール製)、回転数160krpm、送り速度1.2m/minの条件で、0.2mmピッチで5000穴まで、NCドリルマシン(H−MARK−20V日立ビアメカニクス製)で加工し、5000穴までドリル折損がないものは合格(○)とし、ドリル折損があったものを不合格(×)とした(n=3)。
【0068】
(6)成形ムラ
積層板の銅箔をエッチング後、積層板を目視により判定した。成形ムラ(流れスジ)がないものを合格(○)、成形ムラがあるものを不合格(×)とした(n=3)。
【0069】
上記の(1)〜(6)の評価結果は、下記の表1及び2に示される通りであった。
【0070】
【表1】
【0071】
【表2】
【0072】
表1および表2に示された評価結果からも明らかなように、上記したシアン酸エステル樹脂(a)と、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(b)と、ノボラック型エポキシ樹脂(c)と、臭素化ポリカーボネートオリゴマー(d)と、スチレンおよび/または置換スチレンの低重合体(e)と、平均粒径が3μm以下の球状シリカ(f)と、湿潤分散剤(g)とを含む樹脂組成物を用いて形成した積層板(実施例1〜10)は、これらの成分のいずれか1種以上を含まない樹脂組成物を用いて形成した積層板(比較例1〜7)と比較して、耐熱性および誘電特性に優れ、かつ成形外観も良好なことがわかる。