(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
地編糸により鎖編組織からなる経編組織が形成され、前記経編組織にたて方向に挿入されるたて挿入糸として連続した炭素繊維糸条が挿入され、かつ、隣り合う前記鎖編組織の間を往き来する方向に挿入されるよこ挿入糸により前記鎖編組織が一体化された、スパーまたはストリンガー用の経編シートであって、前記たて挿入糸は、フィラメント数が12,000〜50,000本、引張強さが4GPa以上、引張弾性率が220〜450GPa、ドレープ値が4〜22の炭素繊維糸条であり、前記経編シートの少なくとも表面にバインダーが配置されており、該バインダーにより、たて挿入糸、鎖編組織、およびよこ挿入糸を部分的に固着され、前記経編シート内の隣り合うたて挿入糸が、互いに独立して移動可能であって、曲面形状に沿って配列することができるように構成されている、構造用経編シート。
前記炭素繊維糸条の最大移動可能距離が0.5〜10mmであって、半径0.1mの半球体に前記構造用経編シートを配したときに、前記炭素繊維糸条をその半球体の曲面形状に沿って配列することができるように構成されている、請求項1に記載の構造用経編シート。
請求項1〜3のいずれかに記載の構造用経編シートが最大厚部分で50〜300枚の範囲内で積層されるとともに、該構造用経編シート同士が部分的に接着および/または縫合されて形成された経編シート積層体であって、前記炭素繊維糸条は曲面部の最小曲率半径が0.1〜10mの範囲の曲面形状に沿って配列されており、前記経編シート積層体を構成する構造用経編シートの50重量%以上の構造用経編シートは、前記経編シート積層体の長手方向と前記たて挿入糸の繊維軸方向とが略一致するように配されている、経編シート積層体。
【背景技術】
【0002】
近年、構造物の翼構造(ウイング、ブレード)においては、その大型化および軽量化が強く要望されている。例えば、民間航空機用途では、燃料効率向上のために、主翼の複合材化が進み、また、風力発電のブレードに於いては、大型化による大出力化が進んでいる。本要望を踏まえ、特に軽量化が強く求められるスパーやストリンガーへの炭素繊維の適用が進んできた(例えば、特許文献1、2)。
【0003】
さらに、翼構造(ウイング、ブレード)は、高機能化の要求に伴い、特に曲面を有する形状に成形されることが多くなってきており、用いられる部材も曲面への追従性が必須となってきている。具体的には、航空機の主翼もしくは尾翼、ヘリコプターブレード、および、風車ブレードなどでは、空力特性の向上(燃費向上、回転効率向上、静粛性向上などを含む)のため、湾曲、ねじり、といった曲面を有する形状の要望がある。例えば、風車ブレードにおいては、その空力性能の向上のため、曲面を有する風車ブレードの設計や実証が進められている(例えば、非特許文献1)。
【0004】
しかしながら、これに対応する曲面を有するスパーに、炭素繊維プリプレグや一般的な炭素繊維織物(例えば、特許文献3)を用いたのでは、隣り合う炭素繊維糸条が、炭素繊維糸条の繊維方向や繊維軸の直角方向に独立して移動することができず、皺を形成することなく曲面形状に沿って炭素繊維糸条を配列することが困難であるという問題がある。このことは、特に曲面部の曲率半径が10m以下である場合に顕著となる。仮に、炭素繊維プリプレグや一般的な炭素繊維織物を無理矢理に曲面に適用しようとしたとしても、炭素繊維糸条は殆ど伸縮することができないので、曲面の内周側と外周側の周長差により内周側に存在する炭素繊維糸条が余り、皺が形成されることになる。よってコンポジットが所望する形に成形できないか、内蔵される皺が欠陥となって力学特性が大幅に低下する問題がある。かかる場合には、所望の特性を得ることができず大幅な重量アップに繋がり、炭素繊維を用いる意味が希薄になってしまう。
【0005】
上記事情を鑑み、曲面を有するスパーは、ハンド・レイアップ法にて形成され、手作業に頼ってその周長差を解消するように、少量ずつ炭素繊維糸条が配列されるか、皺が形成される部分に切込を入れて不連続繊維として配列するかのいずれかで製造されているのが現状であった。
【0006】
このような問題は、航空機の翼構造でも同様であり、スパー、ストリンガーの複雑な形状に追随して欠点のない成形体を製造するため、極めて長時間を必要としていた。
【0007】
加えて、翼構造におけるスパー、ストリンガーの場合は、負荷される大荷重を支持する必要があるが、かかる観点からは、板厚を厚く、例えば最大厚部分で基材を50〜300枚積層して形成する必要がある。しかしながら、従来の一般的な織物を基材とした場合は、かかる厚肉の構造体を、量産性に優れる成形方法(レジン・インフュージョン成形等)で形成するのは困難であった。
【0008】
すなわち、曲面を有するスパーやストリンガーは、工業製品化に大きな課題を有しており、製造効率およびコンポジット品質を高くする量産性に優れる成形方法の適用ができないところに課題があった。
【0009】
一方、橋脚等のコンクリート構造を補修補強する代表的な工法として、施工現場で炭素繊維シートに樹脂を含浸・固化させ、いわゆる炭素繊維強化プラスチックとした複合材料で、コンクリート構造を補修補強する炭素繊維シート工法が知られている。前記炭素繊維シートとしては、例えば、たて方向に編成された経編地に、所定間隔にて複数本の強化繊維糸条を経挿入した経編シートの提案がある(例えば、特許文献4〜9)。
【0010】
しかしながら、前記特許文献4〜9をはじめとした従来の技術は、ハンド・レイアップ法での成形を適用するもので、それらのシートを複数枚、特に50枚以上重ね合わせてプリフォームを構成することや、多量のシートからなる積層体の、曲面を有する構造への適用可能性は検証されていなかった。つまり、曲面を有するプリフォーム形状を多数の炭素繊維シートからなる積層体で達成すること、該積層体の製造効率、およびコンポジット品質を高くする成形方法への対応については、全く考慮されてこなかったのが実状である。
【0011】
そのため、翼(ウイング、ブレード)構造のスパーやストリンガーに用いられる炭素繊維シートとして、特に曲面を有するプリフォーム形状へ変形されたときに優れた追従性能を発揮するとともに、コンポジット品質を高くできる量産性に優れる成形方法を適用でき、コンポジットの所望する力学特性を満たすことができる材料及びその製造技術が渇望されている。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の構造用経編シート(以下、「経編シート」と称することもある。)は、地編糸により鎖編組織からなる経編組織が形成され、前記経編組織のたて方向に、連続した炭素繊維糸条がたて挿入糸として挿入され、かつ、隣り合う前記鎖編組織の間を往き来するようによこ挿入糸が挿入されて、前記鎖編組織が一体化されてなる。前記経編シートにおいては、隣り合う炭素繊維糸条が互いに独立して移動可能であり、前記経編シートが皺を形成することなく、曲面形状に沿って炭素繊維糸条が配列されるように構成されている。なお、かかる曲面形状とは、経編シートを、ある平面内(X−Y方向、X−Z方向あるいはY−Z方向の面)で例えば
図4に示すように弓なりに変形させたり(以下、湾曲という)、空間内(X−Y−Z方向)でねじったりすることになる、紙を折らずに曲げて形成しようとすると皺がよるような形状を指す。
【0020】
以下、本発明の経編シートの望ましい実施形態について、図面を用いて説明する。
【0021】
図1は、本発明の構造用経編シートの一実施態様を示す概略平面図である。
【0022】
図1に示す経編シート10においては、たて方向(長手方向または繊維方向とも称す)に配置された炭素繊維糸条からなるたて挿入糸3と、該たて挿入糸と同一の方向に、該たて挿入糸を包み縛るように経編組織された地編糸4とが、隣り合う該経編組織の間を往き来するよこ挿入糸5により一体化されている。このとき、隣接するたて挿入糸3の間には、隙間2が形成されている。かかる構成において、前記炭素繊維糸条は、たて挿入糸と同一方向に編成された経編組織によって包み縛られているが、経編組織側から見ると該鎖編組織に挿入されているので、たて挿入糸と呼ばれる。このように、炭素繊維糸条が経編組織で包み縛られ集束されることで最終的に簾状の経編シートが得られる。
【0023】
前記たて挿入糸と経編組織とは互いに対であって、たて挿入糸とそれと同一本数の経編組織とは、それらの長手方向が経編シートのたて方向となるように、並列に配列されている。前記たて挿入糸と経編組織とは、経編シートのたて方向に連続性を有する一方、それらだけでは経編シートのよこ方向(幅方向)への連続性を持たない。そのため、経編シートとするためには、前記たて方向に交差するよこ方向に連続性を付与する必要がある。かかる機能を担うのがよこ挿入糸5である。前記よこ挿入糸は、前述の複数の経編組織をよこ方向に連結してシートを形成する役割を担う。すなわち、前記よこ挿入糸5の存在によって、隣り合う地編糸4、さらに該地編糸4によって拘束されているたて挿入糸3が一体化され、たて挿入糸3の間に隙間2を有する簾状の経編シートが形成される。かかる隙間2は、レジン・トランスファー成形やレジン・インフュージョン成形時にマトリックス樹脂の流路となり、その含浸を促進する機能を果たす。
【0024】
具体的に、
図1に示した地編糸4の経編組織は、3〜10コース/cmで形成されるのが好ましい。上記範囲内であると、経編シートを曲面形状に変形した際、該経編シートはその曲面形状の内径と外径との周長差を容易に吸収することが可能となる。経編組織の編密度は、単位長さ(cm)当たりのループ数(コース)で表され、値が大きくなる程より細かな組織となり、値が小さい程より粗い組織が形成される。前記経編組織はたて挿入糸を包み縛る態様にて形成されており、前記編密度がたて挿入糸の集束性、真直性に直接影響する。これら特性は、経編シートないしコンポジットにおける、力学特性、マトリックス樹脂の含浸性に反映されることから、適切な密度設計が要求される。編密度がより大きいほど、すなわち、上記単位「コース/cm」の数値が大きいほど、たて挿入糸の集束性、真直性は高くなり、取扱性、コンポジットの力学特性は向上する傾向にあるものの、柔軟性、賦形性およびマトリックス樹脂含浸性は低下する傾向にある。例えば、経編シートの取扱性の観点からは、鎖編組織の編密度を大きくすることが好ましい一方、経編組織の編密度を大きくし過ぎると曲面を有する形状への追従性が低下する。また、経編シートにマトリックス樹脂を含浸させる場合、経編組織の編密度を大きくし過ぎると、炭素繊維糸条内にマトリックス樹脂が十分に含浸せずボイドや未含浸部を形成したり、また、地編糸である経編組織による炭素繊維糸条の表面被覆率が高くなりすぎて、炭素繊維糸条とマトリックス樹脂との接着性が阻害されたりと、補強効果を損なうことに繋がる。すなわち、編み密度を上げていくと、真直性向上によりコンポジット特性は向上するが、編み密度を上げすぎるとコンポジット特性は低下する傾向を示す。一方で編密度が小さ過ぎると、すなわち、上記単位「コース/cm」の数値が小さ過ぎると、炭素繊維糸条のクリンプや屈曲を誘発するため、コンポジットにおいて応力集中を誘発することによって炭素繊維糸条の本来のポテンシャルを発現できず、この場合も補強効果を損なうことに繋がる。生産性の観点からは、編密度が大きくなるほど生産性に劣る。これらトレードオフの関係にある各特性を総合的に鑑みた結果、上述のとおり、前記鎖編組織が3〜10コース/cmの範囲内であることが好ましく、さらに好ましくは5〜9コース/cmの範囲内である。なお、経編組織としては鎖編組織である。
【0025】
地編糸4は、合成繊維の捲縮加工糸やカバリング糸から構成されるのが好ましい。かかる構成であると、たて挿入糸3である炭素繊維糸条のクリンプや屈曲を最小限にすることができ、隣り合う炭素繊維糸条がたて方向に独立して動き易くなる。また、先述の独立した動きにより、曲面を有する形状の内径と外径との周長差を容易に吸収することが可能となる。
【0026】
たて挿入糸3として用いられる炭素繊維糸条としては、ポリアクリロニトリル(PAN)系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、セルロース系炭素繊維、およびこれらの2種類以上からなる糸条等を好ましく用いることができる。複合材料の強度や弾性率をさらに重要視する場合は、これらの中でもPAN系炭素繊維を用いることが好ましい。
【0027】
また、本発明の効果は、特に太い総繊度の炭素繊維糸条を用いた場合に顕著になるため、炭素繊維糸条のフィラメント数は12,000〜50,000本であり、好ましくは24,000〜50,000本である。さらに、本発明に用いる炭素繊維糸条は、総繊度が400〜4,000texであることが好ましく、より好ましくは650〜4,000texである。かかる太繊度の炭素繊維糸条は、生産性よく経編シートを製造できるだけでなく、安価に入手することができる。
【0028】
炭素繊維糸条の引張強さ(強度)は4GPa以上で、引張弾性率は220GPa以上450GPa以下である。一般に構造材料としては、引張強さ、引張弾性率とも高い方がよいが、引張弾性率が450GPaを越えると、ねじりや圧縮変形に対する強さが不足したり、価格が高くなったりするので、好ましくない。引張強度は、現時点で6.55GPaを超える炭素繊維糸条を入手することが容易でないため、6.5GPa以下が好ましい。
【0029】
ここで、炭素繊維糸条の引張強さ、引張弾性率は、ストランド状態で測定したものであり、次のようにして測定する。エポキシ樹脂としてERL4221(ダウケミカル日本(株)製)/三フッ化ホウ素モノエチルアミン(BF
3 ・MEA)/アセトン=100/3/4部からなる樹脂を炭素繊維束に含浸し、得られた樹脂含浸ストランドを130℃で30分間加熱して硬化させた後、JIS R7608(2007)に規定する樹脂含浸ストランド試験法にて測定する。
【0030】
また、炭素繊維糸条は、後述する方法で測定されるドレープ値が4〜22である必要があり、好ましくは6〜20である。22を越えると糸束が硬くなりすぎるため、経編シートの曲面に対する追随性が悪化する傾向にあり、鎖編組織のコース数を低下させて対応しようとしても、改善が困難となる。また、4未満であると、糸条が積層時や、樹脂含浸時に変形して、積層性が低下し、コンポジット特性が低下する。鎖編組織のコース数を増やしてそれらを改善しようとしても、樹脂含浸性の悪化など新たな問題が生じてしまうため好ましくない。
【0031】
ドレープ値は、炭素繊維糸条の総繊度、単糸繊度、フィラメント数を定めると、用いるサイジング剤の種類、付着量、サイジング剤付与時の乾燥方法、糸幅などを調整することによって4〜22の範囲とすることができる。
【0032】
具体的には、まず用いるマトリックス樹脂に適合したサイジングを選定し、サイジング剤を水分散液、或いは水溶液とする。炭素繊維糸条をサイジング浴中に浸漬し、水分を乾燥させるに際して、その糸幅を固定して、乾燥後の糸条が所望のドレープ値になる様調整する。熱風循環式の乾燥炉で炭素繊維糸条を乾燥する場合は、乾燥機に糸条を導入する際、糸幅規制ガイドを用いてその形状と張力を調整する。またホットドラムに接触させて乾燥する場合は、糸条張力を調整し、乾燥温度・時間によって所望のドレープ値に合わせればよい。
【0033】
炭素繊維糸条のドレープ値は、JIS L1096(2010)「織物及び編物の生地試験方法」8.21剛軟度 B法(スライド法)に類似の、
図2−1,
図2−2に示す下記方法によって測定する。
【0034】
すなわち、
図2−1に示すように、約50cmにカットされた炭素繊維糸条Fの試料を、温度23℃、湿度60%の雰囲気下で0.0375gf(0.000368N)/texの張力で30分以上放置する。その試料を約30cmの長さに切断し、その一端部を四角柱Aの上面に片持支持の状態で床面と平行となり、炭素繊維糸条Fが、四角柱Aの側面に対して直角になるように、かつ、四角柱Aの側面から、炭素繊維束Fの先端までの長さが25cmになるように平板B(図示しない)で添えて固定する。そのあと、平板Bだけを素早く取り除き、1秒後に重力によって垂れ下がった炭素繊維糸条Fの先端と四角柱Aの側面とがなす最も近い距離X(cm)を測定する(
図2−2)。測定する糸条本数は10本とし、かかる10本の距離X(cm)の平均値をドレープ値とする。
【0035】
たて挿入糸の挿入本数は25mmあたり3〜12本が好ましい。また別の観点からは、経編シートにおけるたて挿入糸の目付は190〜800g/m
2、好ましくは250〜500g/m
2である。本範囲の目付であれば、取扱性および成形時の樹脂含浸性に優れた経編シートを得ることが出来る。
【0036】
また、
図1に示すよこ挿入糸5は、隣り合う鎖編組織の間を往き来する頻度が2〜30コースの間に1回(すなわち1往復)であるのが好ましく、さらに3〜10コースの間に1回で有るのがより好ましい。以下、よこ挿入糸が隣り合う鎖編組織の間を往き来する頻度の逆数をよこ挿入糸間隔と呼ぶこととする。すなわち、よこ挿入糸が、隣り合う鎖編組織の間を往き来する頻度が3コースの間に1回である場合、よこ糸挿入糸間隔は、3コース/回である。上述した通り、よこ挿入糸はたて挿入糸および経編組織を経編シートのよこ方向に連結する機能を担い、経編シートの形態を維持する上で重要な役割を果たす。よこ糸挿入糸間隔が小さいほど、隣り合う経編組織の間を連結するよこ挿入糸の量が増加するため、経編シートの形態保持機能も向上する。この場合、隣り合うたて挿入糸同士の真直性、平行性も向上し、補強効果の観点からも好ましいが、よこ糸挿入糸間隔が2コース/回未満になると、よこ糸挿入糸が隣り合う炭素繊維糸条のたて方向に独立した動きを抑制してしまう。一方、よこ糸挿入糸間隔が30コース/回を越えると、長尺の経編シートを切り出して使用する場合、単位長さ当たりに配置されるよこ挿入糸の量が少なく形態安定性、取扱性に劣り、隣り合うたて挿入糸同士の平行度を保てないうえ、補強方向に対して所望の補強効果を確保できない場合がある。すなわち、よこ挿入糸5のよこ挿入糸間隔が上記範囲内であると、同様に隣り合う炭素繊維糸条がたて方向に独立して動き易くでき、曲面形状の内径と外径との周長差を容易に吸収することが可能となる。
【0037】
よこ挿入糸5としては、ガラス繊維や、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、アラミド繊維などの合成繊維フィラメントなどが使用できるが、合成繊維の捲縮加工糸やカバリングしたポリウレタン繊維を用いるのが好ましい。かかる捲縮加工糸とは、一例として合成繊維からなる糸条に撚りを掛け熱処理した後解撚することにより、嵩高(バルキー)となるように加工されたものであり、嵩高ゆえに繊維長手方向に引っ張った際に優れた伸縮性を示す。合成繊維の捲縮加工糸は、伸縮性の程度として捲縮加工糸のバルキー性を表す指標である伸縮復元率(CR)が、10〜60%の範囲内であることが好ましい。伸縮復元率が該範囲の捲縮加工糸を前記よこ挿入糸に適用することによって、経編シートのよこ方向の伸縮性をより優れたものとでき、経編シートの柔軟性、賦形性を向上させることができる。伸縮復元率(CR)とは、JIS L1013(2010)によって測定する値である。
【0038】
捲縮加工糸として用いる合成繊維としては、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、アラミド繊維、ポリアリレート繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、PBO繊維などが好ましい。かかる合成繊維を用いることにより、経編シートの製造工程での工程通過性が良好となり、毛羽や糸切の発生を抑制する効果が見込まれる。中でも特に安価で寸法安定性にも優れるポリエステル繊維が好ましい。捲縮加工糸の繊度としては、製編時の糸切れといった停機原因を最小限に抑制するため、1.5〜150texであることが好ましく、より好ましくは3.0〜100tex、さらに好ましくは5.0〜50texである。
【0039】
地編糸4としては、上述したよこ挿入糸5と同様に、ガラス繊維やポリエステル繊維、ポリアミド繊維、アラミド繊維、ポリアリレート繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、PBO繊維などが好ましい。中でも特に安価で寸法安定性にも優れるポリエステル繊維が好ましい。形態についても特に制限されるものでなく、フィラメントや紡績糸などいずれであってよいが、基材表面の平滑性が得られるため、マルチフィラメント糸が好ましい。また、よこ挿入糸と同様に、捲縮加工糸やカバリングしたポリウレタン繊維も好ましい。例えば捲縮加工糸の場合は、捲縮加工をしていない糸に比べて伸縮性が大きいことからたて挿入糸をソフトに集束させることができる。そのため、たて挿入糸である炭素繊維糸条内へのマトリックス樹脂の含浸性が優れるといった利点がある。繊度としては、製編時の糸切れといった停機原因を最小限に抑制するため、概ね1.5〜150tex程度の合成繊維の中から適宜選択することが好ましく、より好ましくは3.0〜100tex、さらに好ましくは5.0〜50texである。
【0040】
経編シートの形態としては、形成する曲面を有するストリンガーやスパーの構造によって、使用長、使用幅も様々であるが、一般的に150〜1300mm幅の巻物であることが好ましく、より好ましくは、300〜600mm幅の巻物である。かかる幅の範囲内で経編シートが巻物になっていると、後述の積層時に幅方向にカットする手間を最小限とすることができ、かつ、長手方向にカットする際もその手間を減少させることができ、さらにシート積層の工程を自動化することが容易となる。
【0041】
また、本発明の経編シートは、シート内の隣り合うたて挿入糸である炭素繊維糸条それぞれが地編糸で締結されつつ、よこ挿入糸でかかる地編糸が一体化されることで、隣り合うたて挿入糸が互いに一体化されているが、上記構成をとることによってシート内の隣り合う炭素繊維糸条が互いに独立して移動可能となる。この炭素繊維糸条の移動可能な距離の最大値は0.5〜10mmであることが好ましい。
【0042】
ここで、移動可能な距離の最大値は、以下のような方法で測定したものである。
(1)経編シートを25cm四方の四角形状に切断する。この際、四角形の2片を繊維方向に平行となるようにする。
(2)切断した四角形の経編シートを、糸条に張力の作用しない状態で平板上に静置する。
(3)経編シートの幅方向(繊維方向に直交する方向)でほぼ中央にあるたて挿入糸の一本を選定し、その両端を手で固定し、隣接するたて挿入糸を平板上で固定されているたて挿入糸から離れる方向に動かしたときに得られる糸条間の最大値を計測する。1つの経編シートについて5回計測し、その平均値を最大移動可能距離とする。
【0043】
なおこの測定は、よこ挿入糸に永久変形を起こさない範囲で、たて挿入糸を引き離すことができる最大距離を計測する。
【0044】
当該最大移動可能距離が0.5mm未満であると曲面への追随性が十分でなく、また成形時の樹脂含浸性が低下する。当該最大移動可能距離が10mmを越えると、変形性が大きくなりすぎて形態保持が困難になると共に、目付斑を生じ易くコンポジットの機械特性が低下しやすいという問題がある。さらに好ましい最大移動可能距離は1mm〜5mmである。
【0045】
また、このような好ましい様態の経編シートは、半径0.1mの半球体にシートを配したときに、その半球体の曲面形状に沿ってたて挿入糸が配列される。ここで曲面形状に沿って配列されるということは、具体的には、繊維方向を1辺として35cm角に切り出したシートを、
図3に示すような、平板台の上に固定した半径0.1mの半球体のマンドレルに沿うように配したときに、皺を形成することなく該シートを密着できることを意味している。ここで、「皺を形成することなく」とは、経編シートを構成するたて挿入糸が、賦型しようとする面(マンドレル)に対して追従することを意味し、たるんだり縮んだりして部分的に浮き上がったり、無理にマンドレルに密着させてたて挿入糸に折れ曲がりが生じたりすることがないことを意味する。すなわち、以下のステップで経編シートをマンドレルに密着しようとしたときに、総てのたて挿入糸に織り曲がりを生ぜず、マンドレルに密着できる状態を言う。
(i)35cm四方の経編シートの幅方向ほぼ中央部にあるたて挿入糸の0°方向を、半円球に密着して沿わせる。
(ii)その状態で、上記幅方向ほぼ中央部にあるたて挿入糸に対して90°方向に、シートを半円球に沿わせる。
(iii)その後、それ以外の部分をマンドレルに密着させるに際して、0°方向の糸は動かさず、90°方向の糸はたて挿入糸を折り曲げないように、たて挿入糸の間隔を調整しながら、マンドレルに密着させる。
【0046】
以上のような本発明の経編シートは、例えば後述するように積層されて用いられる。そのため、組織の形態保持を補助したりシートとシートの一体化を補助して取り扱い性を高めるため、たて挿入糸、鎖編組織、およびよこ挿入糸を部分的に固着することが好ましい。また、積層された経編シート同士を部分的に接着することが好ましい。そのために、前記経編シートの少なくともシート表面にはバインダーを部分的に配置し、該バインダーを該経編シート自体に融着させたり、経編シートを積層した後に該バインダーを融着させて層間を接着することが好ましい。
【0047】
かかるバインダーの付着形態としては、点状、線状または不連続線状が例として挙げられる。点状に付着させるためには、粒子形態のバインダーを経編シート表面に散布し、熱融着させるとよい。また、線状または、不連続線状に付着させるためには、バインダー成分からなる不織布や織物などの布帛を一旦作製した後、経編シート表面に貼り合わせ熱融着させるか、経編シート作製時に目どめ糸として経編シート内に配置するとよい。
【0048】
かかるバインダーとしては、熱硬化性樹脂あるいは熱可塑性樹脂、またはそれらの混合物を用いることができる。熱硬化性樹脂あるいは熱可塑性樹脂をそれぞれ単独で用いてもよいが、曲面を有するスパーまたはストリンガーに耐衝撃性が要求される場合においては、靭性の優れた熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂との混合物を用いることが好ましい。かかる混合物は、適度の靭性を有しながら経編シートへの適度な接着性を発現する。
【0049】
熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、フェノール樹脂などである。熱可塑性樹脂としては、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフイド、ポリアリレート、ポリエステル、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルフォルマールなどである。その中でも、特にエポキシ樹脂、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホンから選ばれる少なくとも1種以上を含む構成であると好ましい。
【0050】
目どめ糸の適用にあたっては、目どめ糸を炭素繊維糸条に引き揃えてもよいし、SまたはZ方向のシングルカバリングやSおよびZ方向のダブルカバリングのように目どめ糸を予め炭素繊維糸条に螺旋状に巻き付けておいてから、経編シートを編成してもよい。
【0051】
目どめ糸としては、地編糸およびよこ挿入糸が溶融しない温度で溶融するものであることが好ましい。例えば、地編糸およびよこ挿入糸にポリエステル繊維からなる糸条を用いた場合は、ポリエステル繊維の融点255℃よりも低い融点を有する繊維が好ましく、具体的には、融点が80〜200℃の低融点の共重合ポリエステル繊維、共重合ポリアミド繊維、およびポリオレフィン繊維などが好ましく用いられる。
【0052】
これらバインダーを付着させた経編シートは、所望の形状にカットしてから少なくともシート間を部分的に熱融着させながら、あるいは、自動設備によってカットしながら同時に熱融着して積層体に成形されることも好ましい。
【0053】
また本発明の別の態様としては、複数の経編シートが積層された形態を保持するため、部分的に縫い糸などを用いて該経編シート同士を縫合することも好ましい。使用可能な縫い糸の材質としては、ガラス繊維、炭素繊維、ポリアミドやポリエステルなどの合成繊維などである。
【0054】
以上のような構造用経編シートは、所定枚数を積層し、それを曲面を有する形状など所望する形状に変形して、スパーやストリンガー用の積層体とする。なお、一度に所望する厚みに相当する枚数の経編シートを積層して賦形する必要はなく、複数の経編シートからなる群を複数用意し、それらを別個に賦形して、該賦形した経編シートの群を重ねてスパーやストリンガー用の積層体としてもよい。
【0055】
以下、本発明の経編シートを用いた経編シート積層体(以下、「積層体」と称することもある。)の望ましい実施形態について、図面を用いて説明する。
【0056】
図4は、湾曲を有するスパー用積層体の一実施態様を示す概略斜視図である。
図5は、ねじりを有するスパー用積層体の一実施態様を示す概略斜視図である。
図6は、
図4に示す、湾曲を有するスパー用積層体の概略平面図(X−Y方向)である。
図7は、
図5に示す、ねじりを有するスパー用積層体の概略平面図(X−Y方向)である。
【0057】
図4、
図6における湾曲を有するスパー用積層体20、および、
図5、
図7におけるねじりを有するスパー用積層体21は、前記経編シート10が積層されて変形されたものであり、本発明の積層体の一実施態様である。これら積層体20、21の作製にあたっては、経編シート内の隣り合う炭素繊維糸条が、炭素繊維糸条の繊維方向に互いに独立して移動可能であるため、
図4、5に示すように、経編シートに、平面内で弓なり状に湾曲したり経編シートにねじれが生じるような荷重が負荷されても、かかる経編シートに皺を生じることなく隣接する炭素繊維糸条がそれぞれ移動し、
図6、7に示すように、それらの相対的な位置関係を変えて形状変化に追従する。
【0058】
かかる積層体20、21は、飛行機の翼や風車ブレードに負荷される大荷重を支持する、曲面を有するストリンガーやスパー、特に好ましくはスパーキャップを構成するため、厚肉とすることが好ましい。そのため、前記経編シートが最大厚部分で50〜300枚の範囲内で積層されていることが好ましい。ここで、ストリンガーやスパーを形成する際に、経編シートの積層枚数を部分的に変化させる場合がある。例えば負荷が最も作用するブレードなどの根元付近に相当する位置には、部分的に、長手方向などの全長にわたらないシート片を積層させることがある。前記最大厚部分の積層数とは、そのような部分的に積層されるシート片を含めた、最大厚み部分の積層数を意味する。
【0059】
積層体20、21は、平面内での湾曲部の最小曲率半径R(例えば
図4におけるx−y平面内での曲がり具合)、ないし、3次元空間における曲面部の最小曲率半径R1,R2(以後、これらR、R1、R2を纏めて、「曲面部の最小曲率半径」と称する。)が0.1〜10mの範囲内であると、本発明の効果が最大限に発現されるため好ましい。すなわち、上記のような最小曲率半径を有する構造体を製造する際に本発明の経編シートを用いて積層体とする場合には、前記経編シート内の隣り合う炭素繊維糸条が、炭素繊維糸条の繊維方向に互いに独立して移動する。そのため、前記経編シートに皺を形成することなく、炭素繊維糸条を曲面形状に沿って配列することが可能となるのである。また、積層体20、21は、積層体の長手方向とたて挿入糸の繊維軸方向が略一致していることが好ましい。
そして、上述したように経編シートの少なくとも表面にバインダーが配置されている経編シートを用いて積層体を構成する場合には、複数の経編シートを積層した後、該経編シート間に介在するバインダーを溶融して、経編シート同士を部分的に接着することが好ましい。かかるバインダーは、経編シートを積層するときや、経編シートにマトリックス樹脂を含浸させる際に、経編組織およびよこ挿入糸の組織の崩れや解れを抑制することができる。また同時に、積層された経編シート同士を部分的に接着することで、積層体の取扱性や形態安定性を高めることができる。このとき、バインダーが経編シート表面の全面を覆わないようにし、経編シート同士の接着を部分的にすることにより、コンポジット成形時に厚み方向へのマトリックス樹脂の含浸阻害を抑制することができる。この効果は特にレジン・トランスファー成形や、レジン・インフュージョン成形において顕著な効果を奏する。
【0060】
本発明の経編シートを用いた曲面を有する積層体は、スパー、ストリンガーなどに好適に使用される。特に剛性が要求されるスパーや、ストリンガーであれば、そのキャップ部分に好適に使用される。また特にスパーのキャップ部分に使用されるときに、大きな効果を発揮する。また、最小曲率半径が0.1〜10mの範囲内の曲面を有する積層体は、航空機の主翼もしくは尾翼、ヘリコプターブレード、または、風車ブレードのスパーを形成するのに好適に用いられる。翼構造(ウイング、ブレード)においては、その大型化、軽量化だけでなく、その空力特性の向上(燃費向上、回転効率向上、静粛性向上などを含む)の要求に伴い、特に曲面形状への追従性が求められており、本発明における積層体は、かかる用途に好適に用いることができる。
【0061】
スパーのキャップ部分に前記経編シート積層体を配する場合、スパーの長手方向にたて挿入糸の繊維軸を略一致させた、いわゆる炭素繊維糸条を0°方向に配列した経編シートを50重量%以上、好ましくは80重量%以上含む積層構成にすることが好ましい。必要に応じて炭素繊維糸条を他の角度に配列した経編シートやガラス繊維多軸基材などを加えたものであると良い。ここで、「スパーの長手方向にたて挿入糸の繊維軸を略一致させる」とは、スパーの長手方向と経編シートを構成する炭素繊維糸条の繊維配向方向のずれが±5°以内であることを指す。
【0062】
経編シートからなる積層体を用いてスパー、ストリンガーを製造するに際しては、積層体のみに樹脂を注入・含浸、固化してスパー、ストリンガーを成形してもよいし、樹脂を注入する前の、スパー、ストリンガーとなる積層体を、スキン材などの他の部材と合わせて一体化し、その後樹脂を注入・含浸、固化して成形してもよい。成形方法としては、ハンド・レイアップ法よりも製造効率およびコンポジット品質を高くし、量産性に優れるレジン・インフュージョン成形、レジン・トランスファー成形であるのが好ましい。この際、マトリックス樹脂として熱硬化性樹脂を用いると、得られるコンポジットの力学特性を高くできる。具体的には、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂などが例として挙げられ、中でもエポキシ樹脂を用いるのが最も好ましい。
【実施例】
【0063】
たて挿入糸として炭素繊維糸条(東レ(株)製 T700SC−24000、フィラメント数24000、繊度1650tex、引張強さ4.9GPa、引張弾性率230GPa)を用い、炭素繊維糸条のサイジング付着量、糸幅、サイジング付着後の糸の乾燥条件を調整することで、表1に示すドレープ性を有する炭素繊維糸条を得た。
【0064】
実施例1〜8、ならびに比較例1,2では、地編糸としてポリエステル捲縮加工糸(30tex CR値43%)を用いて経編組織を編成し、該経編組織にたて挿入糸(上記炭素繊維糸条)を25mmあたり5本(炭素繊維目付330g/m
2相当)の割合で挿入するとともに、よこ挿入糸(前記地編糸と同じポリエステル捲縮加工糸)を前記経編組織を行き来するように挿入して、これらを経編シートに一体化した。
【0065】
また、比較となる他の材料形態として、T700SC−24000の炭素繊維(ドレープ値19)を、平織り組織にて目付330g/m
2とした織物(比較例3)と、その織物に180℃硬化エポキシ樹脂を38質量%含浸したプリプレグ(比較例4)を用いた。
【0066】
ここで経編シートおよび平織織物については、その両面にガラス転移点70℃の微粒子バインダーを熱付着させて、積層性を向上させた。
【0067】
各実施例・比較例においては、上記のような基材を必要な大きさに切断し、10プライずつ積層したものを5つ用意し、それぞれを曲率半径0.1mの円筒に追随させてから、合わせて積層し、合計50プライの積層体とした。なお、必要時には加熱して積層した。そして、ドライプリフォーム(実施例1〜8、比較例1〜3)については180℃硬化系の2液タイプ液状エポキシ樹脂にてVaRTM(真空圧レジントランスファーモールディング)成形を行い、プリプレグ(比較例4)については、真空圧成形を行った。このエポキシ樹脂は、JIS K 7171(2008)に従って測定した3点曲げによる硬化物曲げ弾性率(厚さ2mm、幅10mm、長さ60mmの試験片、スパン間32mm)が3.0GPa、JIS K 7113(1995)に従って測定した引張伸び(厚み2mmの試験片、引張速度1mm/min)が5%の高靱性のものであった。
【0068】
これらに関する編成・積層・成形結果を表1に示す。ここで、積層作業性については、積層時の基材の取り扱い性、基材の炭素繊維の毛羽発生の状態を確認し、曲面追随性については、曲面に追随するように変形して積層したとき、基材の皺発生の有無、糸間隔のギャップ発生の有無と成形品の表面外観を確認し、それぞれ良好なものから順に、A、B、C、Dの4段階にランク付けした。
【0069】
表1に示すように、経編シートは、平織りをベースにしたドライファブリックやプリプレグに比較して改善された曲面追随性を示すが、特に本発明の範囲である、特定のドレープ値を有するものは、編成時や積層時の取り扱い性(表における「積層作業性」)および積層体の曲面追随性に優れていることがわかる。
【0070】
【表1】