(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数列の行列要素を含む左行列と、複数行の行列要素を含む右行列と、当該左行列と右行列との間の乗算記号とからなる行列の乗算式を表示部に表示させる行列乗算式表示手段と、
この行列乗算式表示手段により表示された行列の乗算式の一方の行列をユーザ操作に応じて複数の小行列に分割する行列分割手段と、
この行列分割手段により分割された一方の行列の分割位置を識別表示させる第1の分割位置表示手段と、
この第1の分割位置表示手段により識別表示された一方の行列の分割位置と行列の積の定義とに基づいて他方の行列の分割位置を決定する分割位置決定手段と、
この分割位置決定手段より決定された他方の行列の分割位置を識別表示させる第2の分割位置表示手段と、
を備えたことを特徴とする行列計算装置。
前記第1の分割位置表示手段と前記第2の分割位置表示手段により分割位置が識別表示された左の分割行列と右の分割行列を対象にユーザ操作に応じて任意の小行列を指定する小行列指定手段と、
この小行列指定手段により指定された小行列の行列要素を当該小行列が属する分割行列の行列名に当該小行列の行列位置に応じた添字を付加した小行列名に置き換えて表示させる小行列置換え表示手段と、
を備えたことを特徴とする請求項1ないし請求項3の何れか1項に記載の行列計算装置。
前記小行列置換え表示手段により前記分割行列の各小行列が各対応する小行列名または単位行列記号またはゼロ行列記号に置き換えられた状態で左の分割行列と右の分割行列との乗算を実行する分割行列乗算手段と、
この分割行列乗算手段により乗算された乗算結果を表示部に表示させる乗算結果表示手段と、
この乗算結果表示手段により表示された乗算結果に含まれる小行列名を前記小行列置換え表示手段により当該小行列名に置き換えられる前の行列要素に変換して表示させる乗算結果変換手段と、
を備えたことを特徴とする請求項5に記載の行列計算装置。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下図面により本発明の実施の形態について説明する。
【0013】
図1は、本発明の行列計算装置の実施形態に係るタッチパネル式情報端末装置10の電子回路の構成を示すブロック図である。
【0014】
このタッチパネル式情報端末装置10は、以下に説明するタブレットPC10Pとして構成されるか関数電卓10Fなどとして構成される。
【0015】
このタッチパネル式情報端末装置(タブレットPC10P)10の電子回路には、コンピュータであるCPU11が備えられる。CPU11は、メモリ12に予め記憶された端末制御プログラム、あるいはメモリ・カードなどの外部記録媒体13から記録媒体読み取り部14を介してメモリ12に読み込まれた端末制御プログラム、あるいは通信ネットワークN上のWebサーバ(ここでは教育サーバ)20から通信部15を介してメモリ12に読み込まれた端末制御プログラムに従い、同メモリ12を作業領域として回路各部の動作を制御する。
【0016】
前記メモリ12に記憶される端末制御プログラムとしては、通信部15を介して外部の各種電子機器と通信するための通信制御プログラム、テキスト処理,テーブル処理,画像/音声再生処理,メール処理,演算処理等を行うための各種のアプリケーションプログラムの他、外部記録媒体13から読み込まれるか教育サーバ20からダウンロードされた行列計算処理プログラム12aが記憶される。この行列計算処理プログラム12aは、行列の積の計算を分割行列を用いて効率よく計算する手順を学習するための教育用プログラムである。
【0017】
前記端末制御プログラムは、キー入力部16からのユーザ操作に応じたキー入力信号、あるいはタッチパネル式カラー表示部17からのユーザ操作に応じたタッチ入力信号、あるいは通信部15を介して外部から受信される通信信号に応じて起動される。
【0018】
そして、前記メモリ12には、各種作業用の記憶領域として、行列計算式データ領域12b、分割行列式データ領域12c、行列名/行列要素置換えデータ領域12d、表示データ領域12e、ワークエリア12fなどが確保される。
【0019】
行列計算式データ領域12bには、ユーザ操作に応じて手書き入力(数式認識処理)されるかあるいはキー入力された行列の計算式が記憶される。
【0020】
分割行列式データ領域12cには、前記行列計算式データ領域12bに記憶された計算式が行列の積の計算式である場合に、前記行列計算処理プログラム12aに従い生成された分割行列の積の計算式が記憶される。
【0021】
行列名/行列要素置換えデータ領域12dには、前記分割行列式データ領域12cに記憶された分割行列の計算式について、分割された個々の小行列の行列名と当該小行列に含まれる行列要素とが対応付けられて記憶される。なお、分割行列を構成する各小行列の行列名は、当該小行列が属する分割行列の行列名に同分割行列内での行列位置に応じた添字を付加して生成される。
【0022】
表示データ領域12eは、タッチパネル式カラー表示部17の表示画面領域に対応するカラービットマップデータの記憶領域を有し、この記憶領域12dには、実行中のプログラムに従い生成された表示画面データが記憶される。
【0023】
このように、CPU11には、メモリ12、記録媒体読み取り部14、通信部15、キー入力部16、およびタッチパネル式カラー表示部17が接続されて構成される。
【0024】
そして、この情報端末装置10は、ユーザ入力されて表示された行列の積の計算式を対象に、行列の積の定義に基づき分割行列を生成して表示する機能、生成された分割行列の各小行列をそこに含まれる行列要素から当該小行列の行列名(小行列名)に置き換えて表示させる機能、各小行列の小行列名への置き換えに際し単位行列は単位行列記号「I」に置き換え、ゼロ行列はゼロ行列記号「0」に置き換えて表示させる機能、分割行列の各小行列がそれぞれその小行列名、単位行列記号「I」、ゼロ行列記号「0」に置き換えられた状態で当該分割行列の積の計算を実行する機能、この分割行列の積の計算を実行した後にその計算結果を構成する小行列名を当該小行列名に置き換える前の行列要素に変換して表示させる機能を有する。
【0025】
このように構成された情報端末装置10は、CPU11が前記端末制御プログラム(12a)に記述された命令に従い回路各部の動作を制御し、ソフトウエアとハードウエアとが協働して動作することにより、以下の動作説明で述べる行列の積の計算式を対象とした分割行列の生成・計算・表示機能を実現する。
【0026】
次に、前記構成の分割行列の生成・計算・表示機能を備えた情報端末装置10の動作について説明する。
【0027】
図2Aは、前記タッチパネル式情報端末装置(タブレットPC10P)10による行列計算処理(その1)を示すフローチャートである。
【0028】
図2Bは、前記タッチパネル式情報端末装置(タブレットPC10P)10による行列計算処理(その2)を示すフローチャートである。
【0029】
(第1実施例)
図3Aは、前記タッチパネル式情報端末装置(タブレットPC10P)10による行列計算処理に伴う第1実施例の分割行列計算表示動作(その1)を示す図である。
【0030】
図3Bは、前記タッチパネル式情報端末装置(タブレットPC10P)10による行列計算処理に伴う第1実施例の分割行列計算表示動作(その2)を示す図である。
【0031】
図3Cは、前記タッチパネル式情報端末装置(タブレットPC10P)10による行列計算処理に伴う第1実施例の分割行列計算表示動作(その3)を示す図である。
【0032】
図3Dは、前記タッチパネル式情報端末装置(タブレットPC10P)10による行列計算処理に伴う第1実施例の分割行列計算表示動作(その4)を示す図である。
【0033】
図3Eは、前記タッチパネル式情報端末装置(タブレットPC10P)10による行列計算処理に伴う第1実施例の分割行列計算表示動作(その5)を示す図である。
【0034】
図3Fは、前記タッチパネル式情報端末装置(タブレットPC10P)10による行列計算処理に伴う第1実施例の分割行列計算表示動作(その6)を示す図である。
【0035】
図3Gは、前記タッチパネル式情報端末装置(タブレットPC10P)10による行列計算処理に伴う第1実施例の分割行列計算表示動作(その7)を示す図である。
【0036】
図3Hは、前記タッチパネル式情報端末装置(タブレットPC10P)10による行列計算処理に伴う第1実施例の分割行列計算表示動作(その8)を示す図である。
【0037】
図3Iは、前記タッチパネル式情報端末装置(タブレットPC10P)10による行列計算処理に伴う第1実施例の分割行列計算表示動作(その9)を示す図である。
【0038】
図3Jは、前記タッチパネル式情報端末装置(タブレットPC10P)10による行列計算処理に伴う第1実施例の分割行列計算表示動作(その10)を示す図である。
【0039】
図3Kは、前記タッチパネル式情報端末装置(タブレットPC10P)10による行列計算処理に伴う第1実施例の分割行列計算表示動作(その11)を示す図である。
【0040】
図3Lは、前記タッチパネル式情報端末装置(タブレットPC10P)10による行列計算処理に伴う第1実施例の分割行列計算表示動作(その12)を示す図である。
【0041】
行列計算の学習を行うため、例えば教育サーバ20からダウンロードされメモリ12に記憶された行列計算処理プログラム12aが起動されると、行列計算式の入力待機状態になる。
【0042】
タッチパネル表示部17またはキー入力部16に対するユーザ操作に応じて、
図3Aに示すように、行列ABの積の計算式として、左側の正方行列A(4×4)の各行列要素、乗算記号「×」、右側の正方行列B(4×4)の各行列要素が順次入力されると、入力された計算式は行列計算式データ領域12bに記憶されると共にタッチパネル表示部17に表示される(ステップS1,S2)。
【0043】
この行列ABの積の計算式において、分割行列を用いた計算を行うため、
図3Bに示すように、ペンPまたはカーソル操作により左行列Aを2列ずつの小行列A
1とA
2とに分ける第1の分割線d1が入力されて表示されると(ステップS3(Yes))、当該第1の分割線d1が入力された行列は乗算の左側の行列Aであると判断され(ステップS4(Yes))、さらに当該第1の分割線d1は列を分割する分割線であると判断される(ステップS5a(Yes))。
【0044】
すると、左行列の列数と右行列の行数とが等しくなければならないという行列の積の定義に基づき、
図3Cに示すように、右行列Bに対し当該右行列Bを2行ずつの小行列B
1とB
2とに分ける第2の分割線d2が識別表示される(ステップS6a)。この分割行列ABの計算式は分割行列式データ領域12cに記憶される。
【0045】
ここで、分割行列ABそれぞれの小行列A
1,A
2,B
1,B
2の小行列名「A
1」「A
2」「B
1」「B
2」に、各小行列A
1,A
2,B
1,B
2の行列要素が対応付けられて行列名/行列要素置換えデータ領域12dに登録される。なおこの際、小行列がゼロ行列のときには小行列名(ゼロ行列記号)「0」、単位行列のときには小行列名(単位行列記号)「I」に設定されて登録される(ステップS7)。
【0046】
これにより、行列ABの積の計算式において、ユーザ(学生)の操作により左行列Aに第1の分割線d1が入力されると、これに連動して右行列Bの適切な位置に第2の分割線d2が入力されて表示され、行列の積の定義に従った正しい分割行列ABを生成できる。
【0047】
この後、
図3Dに示すように、左側の分割行列Aの小行列A
1がペンPによりシングルタッチされるかカーソルによりシングル指定されると(ステップS8(Yes))、指定された分割行列Aは乗算の一方の行列であると判断され(ステップS9(Yes))、
図3Eに示すように、当該指定された分割行列Aの小行列A
1と乗算の組み合わせで対応関係にある分割行列Bの小行列B
1とが同じ黄色yeにより識別表示される(ステップS10)。
【0048】
さらに、左側の分割行列Aの小行列A
2がペンPによりシングルタッチされるかカーソルにより指定されると(ステップS8(Yes))、前記同様に、指定された分割行列Aは乗算の一方の行列であると判断され(ステップS9(Yes))、
図3Fに示すように、当該指定された分割行列Aの小行列A
2と乗算の組み合わせで対応関係にある分割行列Bの小行列B
2とが同じ青色buにより識別表示される(ステップS10)。
【0049】
これにより、ユーザ(学生)は、生成された分割行列ABにおいて、一方の分割行列Aの各小行列A
1,A
2を他方の分割行列Bの各小行列B
1,B
2とどのような組み合わせで乗算しなければならないかを容易かつ明確に学習することができる。
【0050】
この後、
図3Gに示すように、ユーザ操作に応じて左の分割行列Aをさらに2行ずつ上下に分ける分割線d3が入力されて表示されると(ステップS3(Yes))、当該分割線d3が入力された行列は乗算の左側の行列Aであると判断され(ステップS4(Yes))、さらに当該分割線d3は列を分割する分割線ではないと判断される(ステップS5a(No))。
【0051】
すると、分割行列Aの小行列A
11,A
12,A
21,A
22の小行列名「A
11」「A
12」「A
21」「A
22」に、各小行列A
11,A
12,A
21,A
22の行列要素が対応付けられて行列名/行列要素置換えデータ領域12dに登録される。この際、小行列A
12は単位行列であるので小行列名(単位行列記号)「I」、小行列A
21はゼロ行列であるので小行列名(ゼロ行列記号)「0」に設定されて登録される(ステップS7)。
【0052】
そして、左の分割行列Aの小行列A
12とA
21とが、ペンPによりダブルタッチされるかカーソルによりダブル指定されると(ステップS11(Yes))、当該指定された小行列A
12,A
21は行列要素による表示状態であると判断される(ステップS12(Yes))。
【0053】
すると、前記分割行列Aの指定された小行列A
12は単位行列であると判断され(ステップS13(Yes))、
図3Hに示すように、その行列要素が小行列名(単位行列記号)「I」に置き換えられて表示される(ステップS14)。
【0054】
また、前記分割行列Aの指定された小行列A
21はゼロ行列であると判断され(ステップS15(Yes))、
図3Hに示すように、その行列要素が小行列名(ゼロ行列記号)「0」に置き換えられて表示される(ステップS16)。
【0055】
さらに、
図3Iに示すように、左の分割行列Aの小行列A
11とA
22、右の分割行列Bの小行列B
1とB
2とがペンPにより順次ダブルタッチされるかカーソルによりダブル指定されると(ステップS11(Yes))、その都度、前記同様に各小行列A
11,A
22,B
1,B
2は行列要素による表示状態であると判断される(ステップS12(Yes))。
【0056】
すると、前記分割行列ABの指定された各小行列A
11,A
22,B
1,B
2は、何れも単位行列でなく(ステップS13(No))、ゼロ行列でもないと判断され(ステップS15(No))、
図3Jに示すように、各小行列A
11,A
22,B
1,B
2が属する分割行列ABの行列名「A」「B」に同分割行列AB内での行列位置に応じた添字を付加した小行列名「A
11」「A
22」「B
1」「B
2」に置き換えられて表示される(ステップS17)。
【0057】
これにより、ユーザ(学生)は、生成された分割行列ABの各小行列をそれぞれその小行列に応じた小行列名に置き換え、また単位行列は単位行列記号「I」に、ゼロ行列はゼロ行列記号「0」に置き換え、分割行列ABを簡略化して表示させることができる。
【0058】
そして、タッチパネル表示部17に表示された[実行]アイコン(図示せず)がペンタッチされるか実行キーが操作されることで行列計算の実行が指示されると(ステップS19(Yes))、前記簡略化された分割行列ABのまま乗算が実行され、
図3Kに示すようにその計算結果が表示される(ステップS20)。
【0059】
この簡略化された分割行列ABの乗算結果において、当該乗算結果の構成要素である各小行列名A
11,B
1,B
2,A
22,B
2が、順次ペンPによりダブルタッチされるかカーソルによりダブル指定されると(ステップS11(Yes))、その都度当該指定された小行列名A
11,B
1,B
2,A
22,B
2は行列要素による表示状態ではないと判断される(ステップS12(No))。
【0060】
すると、前記分割行列ABの乗算結果の構成要素である各小行列名A
11,B
1,B
2,A
22,B
2は、
図3Lに示すように、前記ステップS7において行列名/行列要素置換えデータ領域12dに登録された各対応する行列要素に置き換えられて表示される(ステップS18)。
【0061】
これにより、ユーザ(学生)が、行列式のどの部分を分割すべきか判断できず、また、分割行列にした後の計算手順が分からない初学者であっても、分割行列を用いて効率よく計算する手順を容易に学習することができる。
【0062】
(第2実施例)
図4Aは、前記タッチパネル式情報端末装置(タブレットPC10P)10による行列計算処理に伴う第2実施例の分割行列計算表示動作(その1)を示す図である。
【0063】
図4Bは、前記タッチパネル式情報端末装置(タブレットPC10P)10による行列計算処理に伴う第2実施例の分割行列計算表示動作(その2)を示す図である。
【0064】
図4Cは、前記タッチパネル式情報端末装置(タブレットPC10P)10による行列計算処理に伴う第2実施例の分割行列計算表示動作(その3)を示す図である。
【0065】
図4Dは、前記タッチパネル式情報端末装置(タブレットPC10P)10による行列計算処理に伴う第2実施例の分割行列計算表示動作(その4)を示す図である。
【0066】
図4Eは、前記タッチパネル式情報端末装置(タブレットPC10P)10による行列計算処理に伴う第2実施例の分割行列計算表示動作(その5)を示す図である。
【0067】
タッチパネル表示部17またはキー入力部16に対するユーザ操作に応じて、
図4Aに示すように、行列ABの積の計算式として、左側の正方行列A(4×4)の各行列要素、乗算記号「×」、右側の正方行列B(4×4)の各行列要素が順次入力されて表示された状態で(ステップS1,S2)、分割行列を用いた計算を行うため、ペンPまたはカーソル操作により右行列Bを2行ずつの小行列B
1とB
2とに分ける第1の分割線d1が入力されて表示されると(ステップS3(Yes))、当該第1の分割線d1が入力された行列は乗算の左側の行列Aではない(右側の行列Bである)と判断され(ステップS4(No))、さらに当該第1の分割線d1は行を分割する分割線であると判断される(ステップS5b(Yes))。
【0068】
すると、左行列の列数と右行列の行数とが等しくなければならないという行列の積の定義に基づき、
図4Bに示すように、左行列Aに対し当該左行列Aを2列ずつの小行列A
1とA
2とに分ける第2の分割線d2が識別表示される(ステップS6b)。この分割行列ABの計算式は分割行列式データ領域12cに記憶される。
【0069】
ここで、分割行列ABそれぞれの小行列A
1,A
2,B
1,B
2の小行列名「A
1」「A
2」「B
1」「B
2」に、各小行列A
1,A
2,B
1,B
2の行列要素が対応付けられて行列名/行列要素置換えデータ領域12dに登録される。なおこの際、小行列がゼロ行列のときには小行列名(ゼロ行列記号)「0」、単位行列のときには小行列名(単位行列記号)「I」に設定されて登録される(ステップS7)。
【0070】
これにより、行列ABの積の計算式において、ユーザ(学生)の操作により右行列Bに第1の分割線d1が入力されると、これに連動して左行列Aの適切な位置に第2の分割線d2が入力されて表示され、行列の積の定義に従った正しい分割行列ABを生成できる。
【0071】
この後、
図4Cに示すように、ユーザ操作に応じて右の分割行列Bをさらに2列ずつ左右に分ける分割線d3が入力されて表示されると(ステップS3(Yes))、当該分割線d3が入力された行列は乗算の左側の行列Aではない(右側の行列Bである)と判断され(ステップS4(No))、さらに当該分割線d3は行を分割する分割線ではないと判断される(ステップS5b(No))。
【0072】
すると、分割行列Bの小行列B
11,B
12,B
21,B
22の小行列名「B
11」「B
12」「B
21」「B
22」に、各小行列B
11,B
12,B
21,B
22の行列要素が対応付けられて行列名/行列要素置換えデータ領域12dに登録される。この際、小行列B
12は単位行列であるので小行列名(単位行列記号)「I」、小行列B
21はゼロ行列であるので小行列名(ゼロ行列記号)「0」に設定されて登録される(ステップS7)。
【0073】
さらに、ユーザ操作に応じて左の分割行列Aをさらに2行ずつ上下に分ける分割線d4が入力されて表示されると(ステップS3(Yes))、当該分割線d4が入力された行列は乗算の左側の行列Aであると判断され(ステップS4(Yes))、さらに当該分割線d4は列を分割する分割線ではないと判断される(ステップS5a(No))。
【0074】
すると、分割行列Aの小行列A
11,A
12,A
21,A
22の小行列名「A
11」「A
12」「A
21」「A
22」に、各小行列A
11,A
12,A
21,A
22の行列要素が対応付けられて行列名/行列要素置換えデータ領域12dに登録される。この際、小行列A
12は単位行列であるので小行列名(単位行列記号)「I」、小行列A
21はゼロ行列であるので小行列名(ゼロ行列記号)「0」に設定されて登録される(ステップS7)。
【0075】
そして、左の分割行列Aの小行列A
12とA
21とが、ペンPによりダブルタッチされるかカーソルによりダブル指定されると(ステップS11(Yes))、当該指定された小行列A
12,A
21は行列要素による表示状態であると判断される(ステップS12(Yes))。
【0076】
すると、前記分割行列Aの指定された小行列A
12は単位行列であると判断され(ステップS13(Yes))、その行列要素が小行列名(単位行列記号)「I」に置き換えられて表示される(ステップS14)。
【0077】
また、前記分割行列Aの指定された小行列A
21はゼロ行列であると判断され(ステップS15(Yes))、その行列要素が小行列名(ゼロ行列記号)「0」に置き換えられて表示される(ステップS16)。
【0078】
さらに、左の分割行列Aの小行列A
11とA
22、右の分割行列Bの小行列B
11とB
12とB
21とB
22とがペンPにより順次ダブルタッチされるかカーソルによりダブル指定されると(ステップS11(Yes))、その都度、前記同様に各小行列A
11,A
22,B
11,B
12,B
21,B
22は行列要素による表示状態であると判断される(ステップS12(Yes))。
【0079】
すると、前記分割行列ABの指定された各小行列A
11,A
22,B
11,B
22は、何れも単位行列でなく(ステップS13(No))、ゼロ行列でもないと判断され(ステップS15(No))、
図4Dに示すように、各小行列A
11,A
22,B
11,B
22が属する分割行列ABの行列名「A」「B」に同分割行列AB内での行列位置に応じた添字を付加した小行列名「A
11」「A
22」「B
11」「B
22」に置き換えられて表示される(ステップS17)。
【0080】
また、前記分割行列Bの指定された小行列B
12は単位行列であると判断され(ステップS13(Yes))、その行列要素が小行列名(単位行列記号)「I」に置き換えられて表示される(ステップS14)。
【0081】
さらに、前記分割行列Bの指定された小行列B
21はゼロ行列であると判断され(ステップS15(Yes))、その行列要素が小行列名(ゼロ行列記号)「0」に置き換えられて表示される(ステップS16)。
【0082】
これにより、ユーザ(学生)は、生成された分割行列ABの各小行列をそれぞれその小行列に応じた小行列名に置き換え、また単位行列は単位行列記号「I」に、ゼロ行列はゼロ行列記号「0」に置き換え、分割行列ABを簡略化して表示させることができる。
【0083】
そして、タッチパネル表示部17に表示された[実行]アイコン(図示せず)がペンタッチされるか実行キーが操作されることで行列計算の実行が指示されると(ステップS19(Yes))、前記簡略化された分割行列ABのまま乗算が実行され、
図4Eに示すようにその計算結果が表示される(ステップS20)。
【0084】
この簡略化された分割行列ABの乗算結果において、当該乗算結果の構成要素である各小行列名A
11,B
11,A
11,B
22,A
22,B
22が、順次ペンPによりダブルタッチされるかカーソルによりダブル指定されると(ステップS11(Yes))、その都度当該指定された小行列名A
11,B
11,A
11,B
22,A
22,B
22は行列要素による表示状態ではないと判断される(ステップS12(No))。
【0085】
すると、前記分割行列ABの乗算結果の構成要素である各小行列名A
11,B
11,A
11,B
22,A
22,B
22は、前記ステップS7において行列名/行列要素置換えデータ領域12dに登録された各対応する行列要素に置き換えられて表示される(ステップS18)。
【0086】
これにより、ユーザ(学生)が、行列式のどの部分を分割すべきか判断できず、また、分割行列にした後の計算手順が分からない初学者であっても、分割行列を用いて効率よく計算する手順を容易に学習することができる。
【0087】
なお、前記各実施例では、正方行列ABの乗算式を対象に分割行列ABを生成して積の計算を行う場合について説明したが、次の他の実施例において説明するように、正方行列ではない行列ABの乗算式であっても、前記各実施例同様の行列計算処理を実行することで、分割行列を用いた効率のよい計算手順を学習することができる。
【0088】
(他の実施例)
図5は、前記タッチパネル式情報端末装置(タブレットPC10P)10による行列計算処理に伴う他の実施例の分割行列計算表示動作を示す図である。
【0089】
すなわち、
図5に示すように、行列ABの積の計算式として、左側の行列A(3×5)の各行列要素、乗算記号「×」、右側の行列B(5×2)の各行列要素が順次入力されて表示された状態で(ステップS1,S2)、分割行列を用いた計算を行うため、ペンPまたはカーソル操作により左行列Aを2列と3列の小行列A
1とA
2とに分ける第1の分割線d1が入力されて表示されると(ステップS3(Yes))、当該第1の分割線d1が入力された行列は乗算の左側の行列Aであると判断され(ステップS4(Yes))、さらに当該第1の分割線d1は列を分割する分割線であると判断される(ステップS5a(Yes))。
【0090】
すると、左行列の列数と右行列の行数とが等しくなければならないという行列の積の定義に基づき、右行列Bに対し当該右行列Bを2行と3行の小行列B
1とB
2とに分ける第2の分割線d2が識別表示される(ステップS6a)。
【0091】
これにより、正方行列ではない行列ABの積の計算式であっても、ユーザ(学生)の操作により一方の行列Aに第1の分割線d1が入力されると、これに連動して他方の行列Bの適切な位置に第2の分割線d2が入力されて表示され、行列の積の定義に従った正しい分割行列ABを生成できる。
【0092】
この後も前記各実施例と同様に、生成された分割行列AとBとの間での各小行列同士の乗算の組み合わせの確認、各小行列に対応する小行列名や単位行列記号「I」・ゼロ行列記号「0」への置き換えによる乗算式の簡単化、簡単化した乗算式での計算の実行、計算結果に応じた行列要素への変換処理等を順次行うことで、分割行列を用いて効率よく計算する手順を容易に学習することができる。
【0093】
したがって、前記構成の分割行列の生成・計算・表示機能を備えた情報端末装置10によれば、n×n又はn×mの行列A、乗算記号「×」、n×n又はm×nの行列Bからなる行列の乗算式を入力表示させ、乗算の左側の行列Aの場合には列を分割する第1の分割線d1、乗算の右側の行列Bの場合には行を分割する第1の分割線d1を入力表示させると、左行列の列数と右行列の行数とが等しくなければならないという行列の積の定義に基づき、右行列Bの行を分割する第2の分割線d2、左行列Aの列を分割する第2の分割線d2が識別表示され、分割行列ABによる乗算式が生成表示される。
【0094】
これにより、ユーザ(学生)の操作により一方の行列A(B)に第1の分割線d1が入力されると、これに連動して他方の行列B(A)の適切な位置に第2の分割線d2が入力されて表示されるので、行列の積の定義に従った正しい分割行列ABを生成でき、分割行列を用いた効率のよい計算手順を容易に学習することができる。
【0095】
また、前記構成の分割行列の生成・計算・表示機能を備えた情報端末装置10によれば、前記生成された分割行列を構成する各小行列の行列名を、当該小行列が属する分割行列の行列名に同分割行列内での行列位置に応じた添字を付加して生成し、ユーザ操作に応じて、各小行列の行列要素をその小行列名に置き換えて表示させることができる。この際、置き換え対象となる小行列の行列要素が単位行列であれば単位行列記号「I」に置き換えられて表示され、ゼロ行列あればゼロ行列記号「0」に置き換えられて表示される。
【0096】
これにより、ユーザ(学生)は、生成された分割行列ABの各小行列をそれぞれその小行列に応じた小行列名に置き換え、また単位行列は単位行列記号「I」に、ゼロ行列はゼロ行列記号「0」に置き換え、分割行列ABを簡略化して表示させることができる。
【0097】
また、前記構成の分割行列の生成・計算・表示機能を備えた情報端末装置10によれば、前記生成された分割行列の各小行列がそれぞれその小行列名、単位行列記号「I」、ゼロ行列記号「0」に置き換えられた状態で当該分割行列の積の計算を実行することができ、この後、その計算結果を構成する小行列名を当該小行列名に置き換える前の行列要素に変換して表示させることができる。
【0098】
よって、行列の積の計算を行う際に、分割行列を用いて効率よく計算する手順を学習することが可能になる。
【0099】
なお、前記実施形態において記載したタッチパネル式情報端末装置10による各処理の手法、すなわち、
図2Aのフローチャートに示す行列計算処理(その1)、
図2Bのフローチャートに示す行列計算処理(その2)などの各手法は、何れもコンピュータに実行させることができるプログラムとして、メモリ・カード(ROMカード、RAMカード等)、磁気ディスク(フロッピディスク、ハードディスク等)、光ディスク(CD−ROM、DVD等)、半導体メモリ等の外部記憶媒体13に格納して配布することができる。そして、タッチパネル式の表示部(17)を備えた電子機器のコンピュータは、この外部記憶媒体13に記憶されたプログラムを記憶装置(12)に読み込み、この読み込んだプログラムによって動作が制御されることにより、前記実施形態において説明した分割行列の生成・計算・表示機能を実現し、前述した手法による同様の処理を実行することができる。
【0100】
また、前記各手法を実現するためのプログラムのデータは、プログラムコードの形態としてネットワークN上を伝送させることができ、このプログラムデータを、ネットワークNに接続されたタッチパネル式の表示部(17)を備えた電子機器のコンピュータに通信部15によって取り込むことで、前述した分割行列の生成・計算・表示機能を実現することもできる。
【0101】
本願発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。さらに、前記実施形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜な組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されたり、幾つかの構成要件が異なる形態にして組み合わされても、発明が解決しようとする課題の欄で述べた課題が解決でき、発明の効果の欄で述べられている効果が得られる場合には、この構成要件が削除されたり組み合わされた構成が発明として抽出され得るものである。
【0102】
以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
【0103】
[1]
複数列の行列要素を含む左行列と、複数行の行列要素を含む右行列と、当該左行列と右行列との間の乗算記号とからなる行列の乗算式を表示部に表示させる行列乗算式表示手段と、
この行列乗算式表示手段により表示された行列の乗算式の一方の行列をユーザ操作に応じて複数の小行列に分割する行列分割手段と、
この行列分割手段により分割された一方の行列の分割位置を識別表示させる第1の分割位置表示手段と、
この第1の分割位置表示手段により識別表示された一方の行列の分割位置と行列の積の定義とに基づいて他方の行列の分割位置を決定する分割位置決定手段と、
この分割位置決定手段より決定された他方の行列の分割位置を識別表示させる第2の分割位置表示手段と、
を備えたことを特徴とする行列計算装置。
【0104】
[2]
前記行列分割手段は、前記行列乗算式表示手段により表示された行列の乗算式の左行列の列位置を指定して左右の小行列に分割し、
前記分割位置決定手段は、前記第1の分割位置表示手段により識別表示された左行列の列位置と行列の積の定義とに基づいて当該左行列の列位置と同じ数の行位置を右行列の分割位置として決定する、
ことを特徴とする[1]に記載の行列計算装置。
【0105】
[3]
前記行列分割手段は、前記行列乗算式表示手段により表示された行列の乗算式の右行列の行位置を指定して上下の小行列に分割し、
前記分割位置決定手段は、前記第1の分割位置表示手段により識別表示された右行列の行位置と行列の積の定義とに基づいて当該右行列の行位置と同じ数の列位置を左行列の分割位置として決定する、
ことを特徴とする[1]に記載の行列計算装置。
【0106】
[4]
前記第1の分割位置表示手段と前記第2の分割位置表示手段により分割位置が識別表示された左の分割行列と右の分割行列を対象にユーザ操作に応じて任意の小行列を指定する小行列指定手段と、
この小行列指定手段により指定された小行列の行列要素を当該小行列が属する分割行列の行列名に当該小行列の行列位置に応じた添字を付加した小行列名に置き換えて表示させる小行列置換え表示手段と、
を備えたことを特徴とする[1]ないし[3]の何れかに記載の行列計算装置。
【0107】
[5]
前記小行列置換え表示手段は、
前記小行列指定手段により指定された小行列の行列要素に基づき、当該小行列が単位行列か否か、ゼロ行列か否かを判断する小行列判断手段と、
この小行列判断手段により前記指定された小行列が単位行列と判断された場合は当該小行列の行列要素を単位行列記号に置き換えて表示させる単位行列置換え表示手段と、
前記小行列判断手段により前記指定された小行列がゼロ行列と判断された場合は当該小行列の行列要素をゼロ行列記号に置き換えて表示させるゼロ行列置換え表示手段とを有し、
前記小行列判断手段により前記指定された小行列が単位行列でもゼロ行列でもないと判断された場合は当該小行列の行列要素を当該小行列が属する分割行列の行列名に当該小行列の行列位置に応じた添字を付加した小行列名に置き換えて表示させる、
ことを特徴とする[4]に記載の行列計算装置。
【0108】
[6]
前記小行列置換え表示手段により前記分割行列の各小行列が各対応する小行列名または単位行列記号またはゼロ行列記号に置き換えられた状態で左の分割行列と右の分割行列との乗算を実行する分割行列乗算手段と、
この分割行列乗算手段により乗算された乗算結果を表示部に表示させる乗算結果表示手段と、
この乗算結果表示手段により表示された乗算結果に含まれる小行列名を前記小行列置換え表示手段により当該小行列名に置き換えられる前の行列要素に変換して表示させる乗算結果変換手段と、
を備えたことを特徴とする[5]に記載の行列計算装置。
【0109】
[7]
表示部を備えた電子機器のコンピュータを制御するためのプログラムであって、
前記コンピュータを、
複数列の行列要素を含む左行列と、複数行の行列要素を含む右行列と、当該左行列と右行列との間の乗算記号とからなる行列の乗算式を表示部に表示させる行列乗算式表示手段、
この行列乗算式表示手段により表示された行列の乗算式の一方の行列をユーザ操作に応じて複数の小行列に分割する行列分割手段、
この行列分割手段により分割された一方の行列の分割位置を識別表示させる第1の分割位置表示手段、
この第1の分割位置表示手段により識別表示された一方の行列の分割位置と行列の積の定義とに基づいて他方の行列の分割位置を決定する分割位置決定手段、
この分割位置決定手段より決定された他方の行列の分割位置を識別表示させる第2の分割位置表示手段、
として機能させるためのプログラム。