【実施例】
【0018】
(実施例1)
ワーク処理装置にかかる実施例について、
図1〜
図10を参照して説明する。
図1に示すごとく、ワーク処理装置1は、ワークを保持すると共にテーブル軸31を中心に回転可能に設けられた回転テーブル3と、ツール配置円210(
図2)に沿って配置された3つのツール(211、212、213)を備えると共にツール配置円210の中心を通るホルダー軸201を中心に回転可能に設けられたツールホルダー20とを有している。テーブル軸31とホルダー軸201とは平行に配されており、ホルダー軸201の軸方向から見て、ツール配置円210が回転テーブル3上に保持されるワークと重なるよう配されている。
【0019】
ワーク処理装置1は、回転テーブル3の回転によって特定部位をツール配置円210上に移動させると共に、ツールホルダー20の回転によってツールを移動することにより、特定部位とツールとの位置合わせを行うように構成されている。尚、本例におけるワークは、トランスアクスルを構成するケース61とカバー62とからなり、特定部位は、
図3に示すケース61のケース側シール面613及びボルト穴614からなる。
【0020】
以下、さらに詳細に説明する。
本例に示すワーク処理装置1は、上述したワークであるケース61とカバー62との組み付けを行うものである。ケース61とカバー62との組み付け作業としては、ケース61への接着剤の塗布、ケース61上へのカバー62の配置及びケース61とカバー62との締結固定の3つの作業がある。
【0021】
図3及び
図4に示すごとく、トランクアクスルを構成するケース61は、底面部611と、底面部611の外周縁から立設した筒状のケース壁部612とを備えている。ケース壁部612の先端側に配された面はケース側シール面613をなしている。また、ケース側シール面613には、ケース壁部612の立設方向に形成された複数のボルト穴614を有しており、ボルト穴614は、固定ボルトを螺合可能に構成されている。
【0022】
図5及び
図6に示すごとく、カバー62は、上方に突出した凸状部621と、凸状部621の外周縁から外周側に向かって形成されたカバー鍔部622を有している。上方から見たとき、カバー鍔部622の外形は、ケース61の外形と対応した形状をなしており、その下面における外周縁近傍は、ケース側シール面613と対応したカバー側シール面623をなしている。また、カバー鍔部622には、ケース61のボルト穴614と対応した位置に、固定ボルトを挿通可能に構成された複数の挿通穴624が形成されている。
【0023】
図1に示すごとく、上記のケース61とカバー62とを組み付けるワーク処理装置1は、3つのツールを備えたツールユニット2と、ケース61を回転させる回転テーブル3と、これらを固定保持するフレーム4と、ケース61を供給するケース用コンベア51と、カバー62を供給するカバー用コンベア52とを備えている。
【0024】
フレーム4は、床面上に配置された矩形板状のベース部41と該ベース部41から上方に向かって立設した4本の支柱部42と、支柱部42の上端に配された天板部43とによって構成されている。
【0025】
フレーム4における天板部43には、ツールユニット2が配されている。
ツールユニット2は、3つのツールと、これらを保持するツールホルダー20と、ツールホルダー20を昇降及び回転させるツール側駆動部22とを備えている。
ツールユニット2が備える3つのツールは、接着剤の塗布を行うディスペンサー211、カバー62を把持する把持ツール212、及び固定ボルトの締結を行うナットランナー213からなる。
【0026】
ディスペンサー211は、予め接着剤の吐出量を設定することにより、その先端に配されたノズルから一定量の接着剤を吐出可能に構成されている。
把持ツール212は、カバー62のカバー鍔部622と係合する係合爪部(図示略)とカバー62の挿通穴624に挿通する位置決めピン(図示略)とを有する把持部215を備えており、カバー62を決まった姿勢で把持可能に構成されている。尚、把持ツール212は、把持したカバー62をケース61上に移動させた際に、カバー62とケース61とが対応した位置に配されるように構成されている。
【0027】
ナットランナー213は、その先端に配され回転可能に構成されたソケットと、図示しないボルト供給装置とを備えている。ボルト供給装置に投入された固定ボルトは、ボルト整列機(図示略)によって決まった姿勢に整列された後、ボルト供給ホース214を介して、ソケットの先端側に供給される。そして、固定ボルトの頭部とソケットとを係合させ、ソケットを回転させることにより、固定ボルトを螺合することができる。
【0028】
図1に示すごとく、上記の各ツールは、円板状のツールホルダー20の下面に垂下するように配されている。
図2に示すごとく、各ツールは、ツールホルダー20の外周縁からなる円周の同心円であるツール配置円210上に配されており、上方から見たとき、ナットランナー213から矢印R方向に90°移動した位置に把持ツール212が配されており、ナットランナー213から矢印F方向に90°移動した位置にディスペンサー211が配されている。
【0029】
図1に示すごとく、ツールホルダー20は、ツール側駆動部22と連結されており、ツール側駆動部22によって昇降移動および回転が可能に構成されている。ツール側駆動部22は、フレーム4の天板部43上面に配されたツールホルダー昇降部221と、ツールホルダー昇降部221によって昇降可能に配されると共に下端にツールホルダー20を配したツールホルダー回転部224とを備えている。
【0030】
図1に示すごとく、ツールホルダー昇降部221は、駆動源となる昇降駆動モータ222と、ボールネジ機構(図示略)を備えた昇降機構部223とを有しており、昇降駆動モータ222の回転運動を昇降機構部223のボールネジ機構によって直線運動に変換し、ツールホルダー回転部224を昇降移動可能に構成されている。
【0031】
図1に示すごとく、ツールホルダー回転部224は、駆動源となる回転駆動モータ225と、天板部43に形成された貫通孔に挿通配置された回転シャフト226とを備えており、回転シャフト226の下端にはツールホルダー20を備えている。尚、回転シャフト226とツールホルダー20とは、回転シャフト226の回転中心軸とツール配置円210の中心軸とが同心となるように連結されている。
【0032】
回転駆動モータ225の回転軸と回転シャフト226とには、図示しない伝達ベルトが巻き掛けられており、伝達ベルトを介して、回転駆動モータ225の回転運動を回転シャフト226に伝達することができる。したがって、ツールホルダー20回転シャフト226を回転させることによって、ツールホルダー20を回転可能に構成されている。尚、本例においては、回転シャフト226の回転中心軸がホルダー軸201となる。
【0033】
図1に示すごとく、フレーム4のベース部41上面には、回転テーブル3が配されている。回転テーブル3は、ケース用パレット511上に決められた姿勢で載置されたケース61を運搬するケース用コンベア51の内側に配されている。回転テーブル3は、ケース用パレット511の下面と連結される可動部33と、可動部33を昇降移動及び回転させるテーブル駆動部32を備えている。テーブル駆動部32は,ケース用パレット511の下面と連結される可動部33と、可動部33を昇降移動させるテーブル昇降機構と、上昇した可動部33を回転させるテーブル回転機構とを備えている。テーブル昇降機構及びテーブル回転機構は、駆動源として図示しないシリンダ装置及び駆動モータをそれぞれ備えている。
【0034】
図2に示すごとく、テーブル回転機構の回転中心軸からなるテーブル軸31は、回転テーブル3に配されたケース61の長手方向及び長手方向と直交する方向の略中央を通るように配されている。また、テーブル軸31は、上方から見たとき、ツール配置円210の円周上に配されている。
【0035】
図1に示すごとく、回転テーブル3と反対の位置には、カバー用コンベア52が配してある。カバー用コンベア52は、カバー用パレット521上に載置されたカバー62を搬送可能に構成されている。また、カバー62は、カバー用コンベア52の終端であるカバー待機位置に把持ツール212と対応した姿勢で搬送される。そのため、把持ツール212を下降させることによって、把持ツール212によってカバー62を把持することができる。
【0036】
次に、上記のごとく構成されたワーク処理装置1を用いて、ケース61とカバー62の組み付けを行う順序について説明する。
ケース用パレット511上に載置されたケース61は、ケース用コンベア51によって、回転テーブル3の上方へと搬送される。回転テーブル3は、可動部33を上昇させ、可動部33の上面とケース用パレット511の下面とを連結する。可動部33をさらに上昇させることでケース用パレット511とケース用コンベア51とを切り離し、ケース用パレット511及びケース61を回転可能な位置へと上昇させる。
【0037】
次に、ケース用パレット511と共に上昇したケース61のケース側シール面613へ接着剤の塗布を行う。
図7に示すごとく、ツールホルダー20を回転させ、上方から見てツール配置円210とケース側シール面613の交点P1上へとディスペンサー211を移動し、接着剤の吐出を開始する。このとき、ツール配置円210とケース側シール面613との交点が2つあり、いずれの交点へ移動してもよいが、ツールホルダー20の移動距離が小さい側へと移動することが好ましい。
【0038】
そして、可動部33を正転方向F又は逆転方向Rのいずれか一方に回転させながらケース側シール面613上に接着剤を塗布する。本例においては、可動部33を正転方向Fへと回転させた。このとき、ケース側シール面613とツール配置円210との交点P1と、テーブル軸31との距離が変化するため、ツールホルダー20を正転方向F及び逆転方向Rに適宜回転させ、ディスペンサー211がケース側シール面613上に配されるように位置調整を行う。そして、ディスペンサー211がケース側シール面613の接着剤の塗布を開始した位置へと戻り、ケース側シール面613の全周に接着剤が塗布される。
【0039】
次に、把持ツール21によって、カバー62を移動し、ケース61上に配置する。
図8に示すごとく、ツールホルダー20を逆転方向Rへと回転させ、把持ツール212によってカバー62を把持する。ツールホルダー20を下降させることにより、カバー待機位置に配置されたカバー62を、把持ツール212の把持部215によって把持する。
【0040】
そして、
図9に示すごとく、把持ツール212によってカバー62を把持した後、ツールホルダー20を上昇させ、ツールホルダー20を正転方向F又は逆転方向Rに180°回転させてケース61の上方へと把持ツール212を移動する。再度、ツールホルダー20を下降させケース61上にカバー62を載置する。
【0041】
次に、ナットランナー213を用いて固定ボルトを締結し、ケース61とカバー62とを固定する。
図10に示すごとく、カバー62をケース61上に載置した後、可動部33を回転させ、複数のボルト穴614のうちのいずれか一つをツール配置円210上に移動させる。 また、ナットランナー213とボルト穴614との移動距離が小さい逆転方向Rにツールホルダー20を回転させ、交点P2の上方にナットランナー213を配置する。
【0042】
上記のナットランナー213とボルト穴614との位置合わせは、軌跡円615とツール配置円210との交点P2の位置情報を求め、ツールホルダー20と回転テーブル3とを並行して回転移動させて、ナットランナー213とボルト穴614とを交点P2へと移動させた。また、軌跡円615とツール配置円210との交点は2つあるが、ナットランナー213と近い側に配された交点P2上へボルト穴614を移動することが好ましい。
【0043】
ナットランナー213及びボルト穴614の位置合わせを完了した後、ツールホルダー20を下降させ、ボルト供給装置から供給された固定ボルトをカバー62のボルト穴614の内側に挿通配置すると共に、ソケットを回転させ固定ボルトをケース61のボルト穴614に螺合する。
【0044】
ボルト穴614への固定ボルトの螺合を完了した後、ツールホルダー20を上昇させると共に、可動部33を回転させ、固定ボルトを螺合したボルト穴614と隣り合って配されたボルト穴614をツール配置円210上に移動させる。そして、ツールホルダー20を回転させ新たにツール配置円210上に配されたボルト穴614の上方にナットランナー213を移動させ、ナットランナー213によってボルト穴614に固定ボルトを螺合する。これを繰り返し、ケース61が有する全てのボルト穴614に固定ボルトを螺合することでケース61とカバー62の組み付けが完了する。
【0045】
次に、本例の作用効果について説明する。
回転テーブル3及びツールホルダー20は、テーブル軸31及びホルダー軸201を中心軸として回転することにより、上記特定部位とツールとの位置合わせを行うことができる。そのため、従来用いられていたXYテーブルや直交ロボットのように、回転テーブル3及びツールホルダー20を、平面上において移動させることなく、回転テーブル3及びツールホルダー20の外形よりも内側で処理を行うことができる。これにより、ワーク処理装置1の大きさを従来よりも小さくすることができる。
【0046】
また、ツール配置円210上に配された上記特定部位へツールを移動する際に、ツールの移動距離が小さくなる方向にツールホルダー20を回転させることにより、ツールと上記特定部位との位置合わせを短時間で効率よく行うことができる。
【0047】
また、ワーク処理装置1において、テーブル軸31を回転中心として特定部位を回転させた軌跡からなる軌跡円615とツール配置円210とのテーブル軸31方向から見た交点の位置を予め求め、交点へ特定部位およびツールを移動させることによって、特定部位とツールとの位置合わせを行うよう構成されている。そのため、回転テーブル3及びツールホルダー20を、並行して移動させることができる。これにより、特定部位とツールとの位置合わせをより確実にかつ素早く行うことができる。
【0048】
また、ツール配置円210は、テーブル軸31を通るように設けられている。そのため、ツールホルダー20が保持するツールによって、上記ワーク上の全ての領域において、処理を行うことができる。
【0049】
以上のごとく、本例に示したワーク処理装置1によれば、効率の向上及び小型化が可能となる。