(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5765292
(24)【登録日】2015年6月26日
(45)【発行日】2015年8月19日
(54)【発明の名称】鉄道車両の台車枠
(51)【国際特許分類】
B61F 5/52 20060101AFI20150730BHJP
B23K 9/00 20060101ALI20150730BHJP
【FI】
B61F5/52
B23K9/00 501C
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-115194(P2012-115194)
(22)【出願日】2012年5月21日
(65)【公開番号】特開2013-241081(P2013-241081A)
(43)【公開日】2013年12月5日
【審査請求日】2014年8月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】新日鐵住金株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001553
【氏名又は名称】アセンド特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100103481
【弁理士】
【氏名又は名称】森 道雄
(74)【代理人】
【識別番号】100134957
【弁理士】
【氏名又は名称】松永 英幸
(72)【発明者】
【氏名】萩尾 吉則
(72)【発明者】
【氏名】澤田 雅典
(72)【発明者】
【氏名】徳永 智史
(72)【発明者】
【氏名】二川 一彦
【審査官】
黒田 暁子
(56)【参考文献】
【文献】
特開平11−227602(JP,A)
【文献】
特開2012−046069(JP,A)
【文献】
特開2004−148948(JP,A)
【文献】
特開2002−187549(JP,A)
【文献】
特許第4292980(JP,B2)
【文献】
特許第3873659(JP,B2)
【文献】
松藤彰、志磨貴司、藤沢雅文,ニューヨークNYCT R142A電車,車両技術,日本,社団法人日本鉄道車輌工業会,2001年 3月,221号,161−173頁
【文献】
松藤彰、西村武宏、本村茂人,ニューヨークNYCT R143電車,車両技術,日本,社団法人日本鉄道車輌工業会,2002年 3月,223号,100−113頁
【文献】
機関車検査ハンドブック 新形式電気機関車編,日本,社団法人 日本鉄道車両機械技術協会,2003年10月30日,初版,166−167、176−177頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61F 5/52
B23K 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レール方向に沿って配置される左右に一対の側ばりと、これらの側ばりをつなぐ横ばりとを備えた鉄道車両の台車枠であって、
横ばりは、天板部材と、底板部材と、これらの天板部材と底板部材の間に配置されて溶接接合された前後に一対の側板部材とから構成され、主電動機および歯車装置をそれぞれ取り付けるための受座が配置される位置に対応して、天板部材および底板部材の前後の縁から受座支持部が延び出しており、受座支持部に受座が溶接接合されることを特徴とする鉄道車両の台車枠。
【請求項2】
前記受座支持部の左右の縁から前記天板部材および前記底板部材の前後の縁に至る輪郭形状が、3箇所以上で折れ曲がった裾状であることを特徴とする請求項1に記載の鉄道車両の台車枠。
【請求項3】
前記側ばりは、側ばり用天板部材と、側ばり用底板部材と、これらの側ばり用天板部材と側ばり用底板部材の間に配置されて溶接接合された左右に一対の側ばり用側板部材とから構成され、前記横ばりが配置される位置に対応して、側ばり用天板部材および側ばり用底板部材の左右の縁からつなぎ部が延び出しており、前記横ばりの左右の各端部をつなぎ部同士の間に挟み込んで溶接接合されていることを特徴とする請求項1または2に記載の鉄道車両の台車枠。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両の台車枠に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両は、台車枠に主電動機および歯車装置が取り付けられており、主電動機の動力が歯車装置を介して輪軸に伝達され、レール上を走行する。
【0003】
図1は、従来の台車枠を示す平面図である。
図2は、従来の台車枠の横ばりにおける受座の部位を拡大して示す平面図である。
図1に示すように、台車枠101は、レール方向に沿って配置される左右に一対の側ばり102と、これらの側ばり102をつなぐ横ばり103とを備える。横ばり103は円筒状の鋼管で構成され、その両端のそれぞれを溶接によって側ばり102に接合されている。
【0004】
横ばり103には、その外周面に、主電動機を取り付けるための受座(以下、「主電動機用受座」ともいう)104が溶接によって接合され、さらに、歯車装置を取り付けるための受座(以下、「歯車装置用受座」ともいう)105が溶接によって接合されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0005】
ここで、主電動機用受座104および歯車装置用受座105と横ばり103は、もともとは完全に独立した別部材である。主電動機用受座104は、鉄道車両の走行中に主電動機から動力の反力および主電動機の自重といったような高負荷を受けるので、リブ構造が多用される。歯車装置用受座105も同様である。このため、従来の台車枠101では、リブ構造の各受座104、105が円筒状の横ばり103に溶接されることから、溶接線の短い溶接部が多くなる。溶接部は溶接の始点部と終点部で溶接品質が低下する傾向にあり、短い溶接線の場合はその傾向が顕在化し易い。
【0006】
また、各受座104、105と横ばり103との溶接部には、鉄道車両の走行中に、各受座104、105が受ける高負荷によって応力集中が発生し易い。とりわけ、
図2に示すように、横ばり103に接合される各受座104、105の上面部および下面部の裾(
図2中、太線の円で囲った部分)には、「角止端」と称される隅肉溶接の止端が存在し、この角止端に応力が集中する。このため、角止端は、グラインダーなどによって滑らかに手入れすることが不可欠である。
【0007】
台車枠は、組立てに際し、その施工の大半を溶接が占めることから、溶接施工性に優れることが要求される。しかし、従来の台車枠101では、上述のとおり、主電動機用受座104および歯車装置用受座105を横ばり103に溶接接合する際に、溶接線の短い溶接部が多い上、角止端の手入れが不可欠であるため、溶接部の品質低下が顕在化し易く、溶接施工の能率が低い。したがって、従来の台車枠101は組立てに際しての溶接施工性に乏しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第4292980号公報
【特許文献2】特許第3873659号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、組立てに際して優れた溶接施工性を実現することが可能な鉄道車両の台車枠を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記目的を達成するため、主電動機用受座および歯車装置用受座を横ばりに溶接接合する際に、溶接部の品質を確保しつつ、溶接施工の能率を向上させることを目標にし、溶接線の短い溶接部を低減するとともに、手入れが必要な角止端を削減することができる技術について鋭意検討を重ねた。その結果、横ばりを4面板合わせ構造とし、さらに、4面のそれぞれを構成する板部材のうちの天板部材および底板部材において、これと一体で、主電動機用受座および歯車装置用受座の上面部および下面部に相当する受座支持部を形成し、この受座支持部に受座を溶接接合するのが有効であることを知見した。
【0011】
本発明は、このような知見に基づいて完成されたものであり、その要旨は、下記の鉄道車両の台車枠にある。すなわち、レール方向に沿って配置される左右に一対の側ばりと、これらの側ばりをつなぐ横ばりとを備えた鉄道車両の台車枠であって、横ばりは、天板部材と、底板部材と、これらの天板部材と底板部材の間に配置されて溶接接合された前後に一対の側板部材とから構成され、主電動機および歯車装置をそれぞれ取り付けるための受座が配置される位置に対応して、天板部材および底板部材の前後の縁から受座支持部が延び出しており、受座支持部に受座が溶接接合されることを特徴とする鉄道車両の台車枠である。
【0012】
また、上記の台車枠は、前記受座支持部の左右の縁から前記天板部材および前記底板部材の前後の縁に至る輪郭形状が、3箇所以上で折れ曲がった裾状であることが好ましい。
【0013】
以上の台車枠において、前記側ばりは、側ばり用天板部材と、側ばり用底板部材と、これらの側ばり用天板部材と側ばり用底板部材の間に配置されて溶接接合された左右に一対の側ばり用側板部材とから構成され、前記横ばりが配置される位置に対応して、側ばり用天板部材および側ばり用底板部材の左右の縁からつなぎ部が延び出しており、前記横ばりの左右の各端部をつなぎ部同士の間に挟み込んで溶接接合されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の鉄道車両の台車枠によれば、主電動機用受座および歯車装置用受座を横ばりに溶接接合する際に、溶接線の短い溶接部を低減するとともに、手入れが必要な角止端を削減することができる。その結果として、溶接部の品質を確保しつつ、溶接施工の能率を向上させることができ、組立てに際して優れた溶接施工性を実現することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図2】従来の台車枠の横ばりにおける受座の部位を拡大して示す平面図である。
【
図3】本発明の台車枠の一例を示す斜視図であって、同図(a)は斜め上から見た状態を、同図(b)は斜め下から見た状態をそれぞれ示す。
【
図5】本発明の台車枠の横ばりにおける受座支持部で安全率を向上させる工夫の一例として、受座支持部の部位を拡大して示す断面図である。
【
図6】本発明の台車枠の横ばりにおける受座支持部で安全率を向上させる工夫の別例として、受座支持部の部位を拡大して示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明の鉄道車両の台車枠について、その実施形態を詳述する。
【0017】
図3は、本発明の台車枠の一例を示す斜視図であって、同図(a)は斜め上から見た状態を、同図(b)は斜め下から見た状態をそれぞれ示す。
図4は、
図3に示す台車枠の平面図である。
図4では、横ばりと側ばりをつなぐ部分でその一部を破断して示している。
図3、
図4に示すように、台車枠1は、レール方向に沿って配置される左右に一対の側ばり2と、これらの側ばり2をつなぐ横ばり3とを備える。本発明の台車枠1において、横ばり3は4面板合わせ構造であり、側ばり2も同様に4面板合わせ構造である。
【0018】
具体的には、横ばり3は、天板部材(以下、「横ばり用天板部材」ともいう)31と、底板部材(以下、「横ばり用底板部材」ともいう)32と、前後に一対の側板部材(以下、「横ばり用側板部材」ともいう)33とから構成される。これらの板部材31〜33は、鋼板をプレス成形し、必要に応じて曲げ加工を施したものである。横ばり用側板部材33は横ばり用天板部材31と横ばり用底板部材32の間に配置され、横ばり用側板部材33の上縁が横ばり用天板部材31の下面に突き合わされて溶接接合されるとともに、横ばり用側板部材33の下縁が横ばり用底板部材32の上面に突き合わされて溶接接合され、これにより、横ばり3が組み立てられる。この横ばり3には、リブ構造の主電動機用受座4および歯車装置用受座5が溶接によって接合される。
【0019】
左右に一対の側ばり2は、それぞれ、側ばり用天板部材21と、側ばり用底板部材22と、左右に一対の側ばり用側板部材23とから構成される。これらの板部材21〜23も、鋼板をプレス成形し、必要に応じて曲げ加工を施したものである。側ばり用側板部材23は側ばり用天板部材21と側ばり用底板部材22の間に配置され、側ばり用側板部材23の上縁が側ばり用天板部材21の下面に突き合わされて溶接接合されるとともに、側ばり用側板部材23の下縁が側ばり用底板部材22の上面に突き合わされて溶接接合され、これにより、側ばり2が組み立てられる。
【0020】
なお、側ばり2の前後の各端には、ばね帽部材6が溶接接合される。ばね帽部材6は、輪軸を回転自在に支持する図示しない軸箱を取り付けるために用いられる。
【0021】
横ばり3は、その左右の端部に側ばり2が溶接接合され、側ばり2をつなぐ。横ばり3と側ばり2をつなぐ部分は、以下のように構成される。側ばり2は、横ばり3が配置される位置に対応して、側ばり用天板部材21および側ばり用底板部材22の左右の縁からつなぎ部24が延び出している。これらのつなぎ部24は、予め、それぞれの側ばり用天板部材21および側ばり用底板部材22と一体で形成されている。一方、横ばり3は、横ばり用天板部材31および横ばり用底板部材32が横ばり用側板部材33よりも短く形成され、横ばり用側板部材33の左右の端部が横ばり用天板部材31および横ばり用底板部材32より突出した格好になっている。
【0022】
そして、横ばり用側板部材33の端部は、それぞれ側ばり2のつなぎ部24同士の間に挟み込まれた状態で、その端縁が側ばり用側板部材23に突き合わされて溶接接合されるとともに、その上縁が横ばり用天板部材31の下面に、その下縁が横ばり用底板部材32の上面にそれぞれ突き合わされて溶接接合される。さらに、横ばり用天板部材31および横ばり用底板部材32の端縁が、側ばり2のつなぎ部24の端縁に同一面上で突き合わされて溶接接合される。こうして、横ばり3が側ばり2をつないだ状態になる。
【0023】
このように、側ばり2から延び出すつなぎ部24で横ばり3と側ばり2をつなぐことにより、横ばり3と側ばり2の上下面における溶接接合の位置が横ばり3上に配置されるようになるため、台車枠1に作用する荷重に伴う高応力を、強度が安定した横ばり3の両端部で安全に負担することができる。
【0024】
ところで、本発明の台車枠1は、上述のとおりに横ばり3を4面板合わせ構造とするのに加え、横ばり3に主電動機用受座4および歯車装置用受座5を溶接接合するために、以下のように構成されている。横ばり用天板部材31および横ばり用底板部材32は、主電動機用受座4が配置される位置に対応して、それぞれの前後の縁から受座支持部(以下、「主電動機用受座支持部」ともいう)34が延び出している。これらの受座支持部34は、主電動機用受座4の上面部および下面部に相当し、予め、それぞれの横ばり用天板部材31および横ばり用底板部材32と一体で形成されている。
【0025】
さらに、横ばり用天板部材31および横ばり用底板部材32は、歯車装置用受座5が配置される位置に対応して、それぞれの前後の縁から受座支持部(以下、「歯車装置用受座支持部」ともいう)35が延び出している。これらの受座支持部35は、歯車装置用受座5の上面部および下面部に相当し、予め、それぞれの横ばり用天板部材31および横ばり用底板部材32と一体で形成されている。リブ構造の主電動機用受座4および歯車装置用受座5は、それらの受座支持部34、35に、さらには横ばり用側板部材33に溶接によって接合される。
【0026】
このように、横ばり用天板部材31および横ばり用底板部材32、すなわち横ばり3と一体で、各受座4、5の上面部および下面部に相当する受座支持部34、35を形成し、これらの受座支持部34、35に受座4、5をそれぞれ溶接接合することにより、従来の台車枠101のような各受座104、105と横ばり103との溶接部の角止端(前記
図2参照)は存在しなくなるので、手入れ工数を削減することができる。しかも、従来の台車枠101のような鋼管の横ばり103にではなく、4面構造の横ばり3にリブ構造の受座4、5を溶接接合することになるので、溶接線の短い溶接部は少なくて済む。
【0027】
したがって、本発明の台車枠1は、各受座4、5を横ばり3に溶接接合する際に、溶接線の短い溶接部を低減するとともに、手入れが必要な角止端を削減することができる。その結果として、溶接部の品質を確保しつつ、溶接施工の能率を向上させることができ、組立てに際して優れた溶接施工性を実現することが可能になる。
【0028】
ここで、各受座4、5は鉄道車両の走行中に高負荷を受けるので、横ばり用天板部材31および横ばり用底板部材32から延び出す受座支持部34、35の根元に応力集中が発生し易い。とりわけ、受座支持部34、35の左右の縁と、横ばり用天板部材31および横ばり用底板部材32の前後の縁とが交差する隅部には、応力が集中する。そして、応力が集中するその隅部に、横ばり用天板部材31および横ばり用底板部材32と横ばり用側板部材33とを接合する溶接ビードが重なるか、近接していると、その隅部の疲労限度応力が低下することから、安全率が低下するおそれがある。このため、受座支持部34、35で安全率を向上させる工夫を施すことが望ましい。以下に、その工夫を例示する。
【0029】
図5は、本発明の台車枠の横ばりにおける受座支持部で安全率を向上させる工夫の一例として、受座支持部の部位を拡大して示す断面図である。同図に示すように、横ばり用天板部材31および横ばり用底板部材32の前後の縁31a、32aから、これらの板部材31、32と横ばり用側板部材33とを接合する溶接ビードWgの境界までの距離をLとし、横ばり用天板部材31および横ばり用底板部材32の前後の縁部を溶接ビードWgの境界より突出させる。
【0030】
この場合、距離Lを長くとれば、応力が集中する上記の隅部、すなわち、受座支持部34、35の左右の縁34a、35aと、横ばり用天板部材31および横ばり用底板部材32の前後の縁31a、32aとが交差する隅部が、溶接ビードから遠ざかり、これに伴ってその隅部の疲労限度応力が公称応力に近づくため、受座支持部34、35で安全率を向上させることができる。距離Lは、台車を構成する各種部品との配置関係で許容できれば、可能な限り長い方がよい。なお、上記の隅部は、丸面取りされている。
【0031】
図6は、本発明の台車枠の横ばりにおける受座支持部で安全率を向上させる工夫の別例として、受座支持部の部位を拡大して示す断面図である。同図に示すように、受座支持部34、35の左右の縁34a、35aから横ばり用天板部材31および横ばり用底板部材32の前後の縁31a、32aに至る輪郭形状を、横ばり用天板部材31および横ばり用底板部材32の縁31a、32a側から順に、点P1、点P2および点P3の3箇所で折れ曲がった裾状とするのが好ましい。折れ曲がった3箇所は、それぞれ丸面取りされている。
【0032】
このように3箇所で折れ曲がった裾状の輪郭形状を採用することにより、特に、横ばり用天板部材31および横ばり用底板部材32の縁31a、32a側の2箇所(点P1、点P2)に応力集中が分散し、これに伴ってその各箇所の疲労限度応力が公称応力に近づくため、受座支持部34、35で安全率を向上させることができる。もっとも、3箇所以上の折れ曲がりであれば、同様の効果を奏する。
【実施例】
【0033】
本発明の台車枠による効果を確認するため、下記の評価を行った。
【0034】
[溶接施工性]
前記
図3に示す本発明の台車枠と、前記
図1に示す従来の台車枠について、主電動機用受座および歯車装置用受座を横ばりに溶接接合し、受座の溶接部に限定して溶接線の短い溶接部の数を調査した。ここでは、溶接線の短い溶接部として、長さが99mm以下のものを抽出した。
【0035】
調査の結果、溶接線の短い溶接部は、従来の台車枠では74個であったのに対し、本発明の台車枠では12個と著しく少なかった。このことから、本発明の台車枠は、各受座を横ばりに溶接接合する際に、溶接線の短い溶接部を低減することができ、溶接部の品質を確保できることが明らかとなった。
【0036】
[受座に関する応力安全率]
前記
図3に示す本発明の台車枠について、4面板合わせ構造の横ばりから延び出し、主電動機用受座の上面部に相当する受座支持部での応力安全率を調査した。また、比較のため、前記
図1に示す従来の台車枠について、鋼管の横ばりに溶接接合された主電動機用受座の上面部での応力安全率を調査した。条件としては、受座に主電動機の上下荷重を負荷する静荷重試験を行い、その際に、本発明の台車枠では受座支持部に、従来の台車枠では受座の上面部にそれぞれ作用する応力を測定し、この応力から安全率を算出した。なお、溶接部の疲労限度は、JIS−E−4207に基づいた方法で整理した。
【0037】
調査の結果、安全率は、従来の台車枠では1.5にすぎなかったのに対し、本発明の台車枠では1.9と高くなった。このことから、本発明の台車枠は、受座に関する応力安全率を向上できることが明らかとなった。
【0038】
その他、本発明は上記の実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、種々の変更が可能である。例えば、個々に4面板合わせ構造の横ばりと側ばりを接合する際、上記の実施形態では、横ばり用天板部材および横ばり用底板部材の端縁を、側ばりのつなぎ部の端縁に同一面上で突き合わせ溶接する態様を示したが、横ばり用天板部材および横ばり用底板部材の端縁部を、側ばりのつなぎ部の端縁部の下に、直接または当て金を介して重ね合わせ、これらを隅肉溶接するようにしても構わない。また、個々に4面板合わせ構造の横ばりと側ばりの剛性を確保するため、横ばりと側ばりの内部に補強板を溶接接合してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明の鉄道車両の台車枠は、あらゆる鉄道車両に有用である。
【符号の説明】
【0040】
1:台車枠、 2:側ばり、 3:横ばり、 4:主電動機用受座、
5:歯車装置用受座、 6:ばね帽部材、
21:側ばり用天板部材、 22:側ばり用底板部材、
23:側ばり用側板部材、 24:つなぎ部、
31:横ばり用天板部材、 31a:横ばり用天板部材の前後の縁、
32a:横ばり用底板部材の前後の縁、
32:横ばり用底板部材、 33:横ばり用側板部材、
34:主電動機用受座支持部、 34a:主電動機用受座支持部の左右の縁、
35:歯車装置用受座支持部、 35a:歯車装置用受座支持部の左右の縁、
Wg:溶接ビード