(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
焼結パレット台車の車軸に回転可能に設けられて、該焼結パレット台車を駆動するスプロケットホイールと係合するプッシャーローラの損傷診断を行う損傷診断装置において、
前記プッシャーローラがスプロケットホイールと係合していないときに前記プッシャーローラを回転させる回転手段と、該プッシャーローラが回転されているときのプッシャーローラの回転抵抗を検出又は推定する検出手段と、該検出手段によって検出又は推定された回転抵抗に基づいてプッシャーローラの損傷診断を行う診断手段とを具備する、損傷診断装置。
前記回転付与手段は、焼結パレット台車が所定区間を走行している間に前記プッシャーローラに接触する接触面を有し、前記プッシャーローラは該接触面との接触摩擦抵抗により回転せしめられる、請求項4に記載の損傷診断装置。
【背景技術】
【0002】
従来から鉄鉱石や炭材等からなる焼結原料を焼結して焼結鉱を製造する焼結機が知られており、斯かる焼結機の一つの例としてドワイトロイト型の焼結機が知られている。
【0003】
ドワイトロイト型の焼結機は、給鉱部側と排鉱部側にそれぞれ配置された一対のスプロケットホイールと、これらスプロケットホイール間を繋ぐレールと、レールに沿って走行車輪によって走行する複数の焼結パレット台車と、焼結パレット台車上に鉄鉱石、炭材等の焼結原料を層状に装入する給鉱装置と、給鉱部後方の焼結パレット台車の上方に配置されて焼結パレット台車上に堆積した焼結原料に点火する点火炉と、焼結パレット台車の下方に配置されて焼結層と原料層を通して空気を吸引するウインドボックスとを具備する。
【0004】
このようなドワイトロイト型の焼結機では、長期に亘って使用し続けると、焼結パレット台車の走行車輪のベアリングが損傷してしまう。そこで、従来から、焼結パレット台車の走行車輪のベアリングにおける損傷を早期に発見すべく、焼結パレット台車の走行車輪のベアリングの診断を行うベアリング診断装置が提案されている(例えば、特許文献1)。
【0005】
特許文献1に記載のベアリング診断装置では、焼結機の復路側の焼結パレット台車の走行車輪を受けるレールの一部を切除し、この切除されたレールの近傍で焼結パレット台車の中ローラを受けるレールが敷設される。加えて、このベアリング診断装置では、レールの切除された部分に走行輪を強制的に高速回転させる回転付与装置が設けられると共に、この回転付与装置近傍にマイクロホンが配置される。このように構成されたベアリング診断装置では、回転付与装置によって走行輪が高速回転した際にベアリングから発せられる回転音をマイクロホンで集音し、これを音響分析することで走行車輪のベアリング診断を行うようにしている。特に、特許文献1の装置では、マイクロホンによって集音された音響が初期値の3倍の音響を発する時を要注意、初期値の6倍以上の音響を発する場合を異常と判断するようにしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、各焼結パレット台車は、レール上を走行するのに用いられる走行車輪に加えて、焼結パレット台車がスプロケットホイールによって駆動されている際にスプロケットホイールの凹部と係合するプッシャーローラを具備する。プッシャーローラは、スプロケットホイールの凹部と係合している間はスプロケットホイールによって前進せしめられ、これに伴って焼結パレット台車が前進せしめられる。
【0008】
プッシャーローラがスプロケットホイールの凹部と係合している間、プッシャーローラはスプロケットホイールの凹部との接触部において、焼結パレット台車の進行方向に向かう荷重を受ける。このようにプッシャーローラがスプロケットホイールの凹部の側壁から荷重を受けると、プッシャーローラは僅かながら変形することになる。このような微少な変形を繰り返すと、プッシャーローラの変形が大きくなってプッシャーローラが回転しにくくなり、やがてプッシャーローラが回転しなくなる。この状態でプッシャーローラが繰り返しスプロケットホイールの凹部の側壁から荷重を受けると、ついにはプッシャーローラに亀裂が発生して、プッシャーローラの破損を招き、最終的には焼結機の停止に陥る。
【0009】
斯かる突然の焼結機の停止を防止するためには、プッシャーローラの損傷を診断することが必要になる。ところが、現在では、焼結機の非稼働時に作業員による五感点検しか行われておらず、焼結機稼働時に損傷診断をリアルタイムで行うことが必要とされている。
【0010】
上記課題に鑑みて、本発明の目的は、焼結パレット台車のプッシャーローラの損傷を、焼結機の稼働時にリアルタイムで診断することができる損傷診断装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、焼結パレット台車のプッシャーローラの損傷診断に関して、プッシャーローラに特有の損傷要因を考慮して、様々な構成の損傷診断装置について検討を行った。
その結果、プッシャーローラを回転させると共に、プッシャーローラが回転されているときのプッシャーローラの回転抵抗を検出又は推定することにより、プッシャーローラの損傷度合いを診断することができることを見出した。
【0012】
本発明は、上記知見に基づいてなされたもので、その要旨は以下のとおりである。
(1)焼結パレット台車の車軸に回転可能に設けられて、該焼結パレット台車を駆動するスプロケットホイールと係合するプッシャーローラの損傷診断を行う損傷診断装置において、前記プッシャーローラがスプロケットホイールと係合していないときに前記プッシャーローラを回転させる
回転手段と
、該プッシャーローラが回転されているときのプッシャーローラの回転抵抗を検出又は推定す
る検出手段と、
該検出手段によって検出
又は推定された回転抵抗に基づいてプッシャーローラの損傷診断を行う診断手段とを具備する、損傷診断装置。
(2)前記回
転手段は、前記プッシャーローラがスプロケットホイールと係合していないときに前記プッシャーローラを回転させ
、前記検出手段は、前記プッシャーローラを回転させるのに必要なトルクを検出し、検出されたトルクに基づいて
前記プッシャーローラの回転抵抗を推定する、上記(1)に記載の損傷診断装置。
(3)前記回
転手段は、前記焼結パレット台車が所定区間を走行するときに前記プッシャーローラの外周面と接触してプッシャーローラを回転させる回転体
を具備し、前記検出手段は、前記プッシャーローラを回転させるときに該プッシャーローラを回転させるのに必要なトルクを検出するトルク検出装置とを具備する、上記(2)に記載の損傷診断装置。
(4)前記回
転手段は、前記プッシャーローラを回転させる回転付与手段
を具備し、前記検出手段は、前記プッシャーローラが回転されているときのプッシャーローラの回転抵抗を検出又は推定する
、前記回転付与手段とは別の回転抵抗検出手
段を具備し、前記回転抵抗検出手段は、前記プッシャーローラの回転速度を検出することによってプッシャーローラの回転抵抗を推定する、上記(1)に記載の損傷診断装置。
(5)前記回転付与手段は、焼結パレット台車が所定区間を走行している間に前記プッシャーローラに接触する接触面を有し、前記プッシャーローラは該接触面との接触摩擦抵抗により回転せしめられる、上記(4)に記載の損傷診断装置。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、焼結パレット台車のプッシャーローラの損傷を、焼結機の稼働時にリアルタイムで診断することができる損傷診断装置が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明では、同様な構成要素には同一の参照番号を付す。
【0016】
図1は、本発明の損傷診断装置が設けられる焼結機を概略的に示した側面図である。
図1からわかるように、ドワイトロイト型の焼結機1は、給鉱側(図中の左側)と排鉱側(図中の右側)にそれぞれ配置した一対のスプロケットホイール2a、2bと、これらスプロケットホイール2a、2b間で延びるレール3a、3bと、レール3a、3bに沿って走行する複数の焼結パレット台車4とを具備する。
【0017】
焼結パレット台車4は、互いに密接して往路側レール3aに沿って図中の矢印aの方向に走行し、排鉱側のスプロケットホイール2bの回転(図中の矢印bの方向)に伴ってスプロケットホイール2bの外周に沿って回動する。その後、復路側レール3bに沿って図中の矢印cの方向に走行し、給鉱側のスプロケットホイール2aの回転(図中の矢印dの方向)に伴ってスプロケットホイール2aに沿って回動し、これらの動作を繰り返す。
【0018】
さらに、焼結機1は、給鉱側において、往路側レール3aに沿って走行する焼結パレット台車4の上方に配置される給鉱装置5と、往路側レール3aに沿って走行する焼結パレット台車4の上方であって給鉱装置5よりも下流側に配置される点火炉6と、往路側レール3aに沿って走行する焼結パレット台車4の下方に配置されるウインドボックス7とを具備する。
【0019】
給鉱装置5は、焼結パレット台車4上に鉄鉱石、炭材等の焼結原料を装入し、点火炉6は、焼結パレット台車4上に堆積した焼結原料に点火し、ウインドボックス7は、焼結パレット台車4上に形成された原料層及び焼結層を介して空気を吸引する。これにより、給鉱装置5から焼結パレット台車4上に装入された焼結原料は、点火炉6において点火されて表面から下方に向かって徐々に焼結されていく。その際、ウインドボックス7により空気が焼結原料に供給されるため、焼結原料の焼結が促進せしめられる。
【0020】
図2は、
図1の矢印II−IIに沿ってみた焼結パレット台車4の概略的な断面図である。
図2からわかるように、各焼結パレット台車4は、底壁(グレートバー)4aと側壁4bとを具備する。これら底壁4a及び側壁4bによって画成される空間内には焼結原料Sが配置される。
【0021】
各側壁4bからは側方外側に向かって車軸(図示せず)が延びており、この車軸には走行車輪10及びプッシャーローラ11が車軸に対して回転可能に配置される。
図2からわかるように、各走行車輪10はレール3a上を走行する。また、
図2に示した例では、走行車輪10と側壁4bとの間にプッシャーローラ11が配置されている。
【0022】
図3は、排鉱側のスプロケットホイール2bを拡大した概略側面図である。
図3からわかるように、スプロケットホイール2bの外周には複数の凹部13が周方向に一定間隔で形成されている。各凹部13は、プッシャーローラ11が嵌るような大きさとされる。排鉱側のスプロケットホイール2bは動力源(図示せず)により
図3に矢印bで示した方向に回転駆動される。
【0023】
このように構成されたスプロケットホイール2bでは焼結パレット台車4は以下のように駆動される。まず、走行車輪10が往路側レール3a上を走行することで焼結パレット台車4が往路側レール3aに沿って移動する。焼結パレット台車4がスプロケットホイール2bに近づくと、スプロケットホイール2bの凹部13内にプッシャーローラ11が嵌合せしめられる。凹部13内にプッシャーローラ11が嵌合すると、プッシャーローラ11は凹部13の側壁に押されてスプロケットホイール2bの周方向に駆動せしめられる。その後、走行車輪10が復路側レール3b上に配置され、焼結パレット台車4は復路側レール3b上を、排鉱側のスプロケットホイール2bから離れる方向に走行する。なお、スプロケットホイール2aにおいても同様な操作が行われる。
【0024】
図4〜
図6は、本発明の第一実施形態におけるプッシャーローラ11の損傷診断装置を示す。
図4は、第一実施形態の損傷診断装置の概略斜視図であり、
図5は、第一実施形態の損傷診断装置の概略平面図であり、
図6は、第一実施形態の損傷診断装置の概略側面図である。
【0025】
図4は、復路側レール3b上を走行している焼結パレット台車4の走行車輪10を示している。上述したように、本実施形態では、走行車輪10は、焼結パレット台車4の側壁4bから側方外側に向かって延びる車軸回りに回転可能に配置され、プッシャーローラ11は側壁4bと走行車輪10との間において車軸に対して回転可能に配置されている。
【0026】
加えて、
図4〜
図6からわかるように、本実施形態の損傷診断装置は、各復路側レール3bから僅かに内側(一対の復路側レール3bの互いに向かう方向)且つ上方に位置する壁15に揺動可能に配置された揺動バー16と、揺動バー16の先端に揺動バー16に対して回転可能に取り付けられた回転体17とを具備する。加えて、損傷診断装置は、揺動バー16の先端及び回転体17を下方に付勢するバネ18を具備する。
【0027】
回転体17の周囲には回転体17がプッシャーローラ11に接触した際に両者の間に滑りが生じないように、摩擦力の高い材料が設けられている。また、回転体17は駆動装置(例えばモータ)に接続されて所定の回転速度で駆動されると共に、回転体17には、回転体17を所定の回転速度で回転させるのに必要な力(トルク)を検出するためのトルク検出装置(図示せず)が内蔵されている。トルク検出装置はプッシャーローラ11の損傷診断を行う診断装置(図示せず)に接続されており、トルク検出装置の出力は診断装置に入力される。
【0028】
このように構成された回転体17は、各復路側レール3bから僅かに内側に配置されているため、プッシャーローラ11の走行路上に位置する。したがって、復路側レール3bに沿って焼結パレット台車4が走行すると、回転体17は焼結パレット台車4が所定区間を走行しているときにプッシャーローラ11の外周面に接触せしめられる。特に、回転体17はバネ18によって下方に付勢されているため、回転体17はバネ18の付勢力に応じてプッシャーローラ11の外周面に押しつけられる。回転体17の周囲には摩擦力の高い材料が設けられているため、回転体17がプッシャーローラ11の外周面に押しつけられると、両者の間には滑りが生じなくなる。したがって、プッシャーローラ11が回転体17の下方を通過すると、これに伴ってプッシャーローラ11が回転体17によって回転せしめられることになる。
【0029】
次に、このように構成された本実施形態の損傷診断装置の診断方法及びその効果について説明する。ところで、プッシャーローラ11がスプロケットホイール2a、2bの凹部13と係合している間、プッシャーローラ11はスプロケットホイール2a、2bから進行方向(接線方向)に荷重を受ける。このようにプッシャーローラ11が荷重を受けると、プッシャーローラ11(特に、プッシャーローラ11を構成するベアリング両側の内輪及び外輪のうち外輪)は僅かながら変形することになる。
【0030】
一方、プッシャーローラ11は、回転体17が配置されていない場合、焼結パレット台車4がスプロケットホイール2a、2b間でレール3a、3bに沿って移動する間、他の部材等と接触せず、よって全く回転しない。その結果、常にプッシャーローラ11の同一の部分がスプロケットホイール2a、2bの凹部13と係合することになり、よってプッシャーローラ11の同一の箇所がスプロケットホイール2a、2bの凹部13の側壁から荷重を受けることになる。このように同一の箇所のみが荷重を受けると、やがてプッシャーローラ11の一カ所が大きく変形してプッシャーローラ11が回転不能になり、ついにはプッシャーローラ11に亀裂が発生して、プッシャーローラ11の破損を招き、最終的には焼結機の停止に陥る。
【0031】
これに対して、本実施形態では、上述したように回転体17によってプッシャーローラ11が強制的に回転せしめられる。したがって、焼結パレット台車4がスプロケットホイール2a、2b間でレール3a、3bに沿って移動する間、プッシャーローラ11は回転せしめられる。このため、各スプロケットホイール2a、2b毎にプッシャーローラ11に荷重が加わる箇所は変化し、よって、プッシャーローラ11の一カ所のみが大きく変形してしまうことが抑制され、その結果、プッシャーローラ11に破損が生じるのが抑制される。
【0032】
また、上述したように回転体17によってプッシャーローラ11を強制的に回転させることで、プッシャーローラ11の一カ所のみが大きく変形することは抑制される。しかしながら、回転体17によってプッシャーローラ11を強制的に回転させても、変形箇所は分散されるが、プッシャーローラ11が僅かながら変形することに変わりはない。したがって、回転体17によってプッシャーローラ11を強制的に回転させると、プッシャーローラ11の寿命を延ばすことはできるが、やがてはプッシャーローラ11の変形によりプッシャーローラ11が回転不能になる。
【0033】
プッシャーローラ11が回転不能になってプッシャーローラ11に亀裂が発生し、プッシャーローラ11の交換が必要になると、その都度、焼結機全体を停止させることが必要になる。また、プッシャーローラ11が破損すると、焼結機の他の部品に悪影響を及ぼす可能性もある。焼結機の停止回数を低減したりプッシャーローラ11の破損可能性を事前に把握したりするためにはプッシャーローラ11の破損診断を行う必要がある。
【0034】
ここで、プッシャーローラ11の変形が或る程度大きくなると、それに伴ってプッシャーローラ11が回転しにくくなり、よってプッシャーローラ11を回転させるときの回転抵抗が大きくなる。このようにプッシャーローラ11の回転抵抗が増大すると、プッシャーローラ11を強制的に回転させるのに必要な力(トルク)が増大する。上述したトルク検出装置は、回転体17を回転させるのに必要な力(トルク)を、すなわちプッシャーローラ11を回転させるのに必要な力(トルク)を検出することができる。したがって、プッシャーローラ11の変形が大きくなるにつれて、トルク検出装置によって検出されるトルクが大きくなるといえる。
【0035】
そこで、本実施形態では、各プッシャーローラ11についてトルク検出装置によりトルクを検出すると共に、検出されたトルクが予め定められた一定値以上であるプッシャーローラ11については損傷可能性が高いと判断して、プッシャーローラ11の交換を促すようにしている。これにより、一定の期間毎にまとめてプッシャーローラ11を交換することができ、よって焼結機全体を停止させる頻度を少なくさせることができる。加えて、プッシャーローラ11が破損する前に破損する可能性のあるプッシャーローラ11を発見することができるため、実際にプッシャーローラ11が破損して焼結機の他の部品に悪影響を及ぼすことが防止される。
【0036】
なお、上記実施形態では、回転体17は駆動装置によって駆動されている。しかしながら、回転体17は駆動されずに停止しているようにされてもよい。この場合、トルク検出装置は、回転体17を停止状態に維持するのに必要な力(トルク)を検出するように構成される。回転体17が停止状態に維持される場合であっても回転体17がプッシャーローラ11の外周面と接触するとプッシャーローラ11は回転せしめられ、また、トルク検出装置は、プッシャーローラ11を回転させるのに必要なトルクを検出しているといえる。したがって、本実施形態の回転体及びトルク検出装置についてこれらの場合を含むように表現すると、回転体は焼結パレット台車4が所定区間を走行するときにプッシャーローラ11の外周面と接触してプッシャーローラ11を回転させるものであり、トルク検出装置はプッシャーローラ11を回転させるときにプッシャーローラ11を回転させるのに必要なトルクを検出する装置であるといえる。
【0037】
次に、本発明の第二実施形態におけるプッシャーローラ11の損傷診断装置について説明する。
図7〜
図9は、本発明の第二実施形態におけるプッシャーローラ11の損傷診断装置を示す。
図7は、第二実施形態の損傷診断装置の概略斜視図であり、
図8は、第二実施形態の損傷診断装置の概略平面図であり、
図9は、第二実施形態の損傷診断装置の概略側面図である。
【0038】
図7は、
図4と同様に、復路側レール3bに沿って走行している焼結パレット台車4の走行車輪10を示している。特に、
図7からわかるように、本実施形態では、復路側レール3bは部分的に切除されている。この復路側レール3bの切除された領域には、復路側レール3bよりも僅かに内側(一対の復路側レール3bの互いに向かう方向)に補助レール20が設けられる。補助レール20は一定の高さを有する中央部20aと、中央部20aが高くなるように傾斜した傾斜部20b、20cとを具備する。このような補助レール20により、復路側レール3bが切除されている領域においては、プッシャーローラ11が補助レール20上を走行することになる。
【0039】
加えて、
図7〜
図9からわかるように、本実施形態の損傷診断装置は、補助レール20の上方に位置する壁15に揺動可能に配置された揺動バー21と、揺動バー21の先端に揺動バー21に対して回転可能に取り付けられた回転体22とを具備する。加えて、損傷診断装置は、揺動バー21の先端及び回転体22を下方に付勢するバネ23を具備する。
【0040】
回転体22の周囲には、回転体22がプッシャーローラ11に接触した際に両者の間に滑りが生じないように、摩擦力の高い材料が設けられている。また、回転体22には、回転体22の回転速度を検出するための速度検出装置(図示せず)が内蔵されている。速度検出装置は、プッシャーローラ11の損傷診断を行う診断装置(図示せず)に接続されており、速度検出装置の出力は診断装置に入力される。
【0041】
このように構成された回転体22では、補助レール20上をプッシャーローラ11が走行すると、回転体22がプッシャーローラ11に接触せしめられる。特に、回転体22はバネ23によって下方に付勢されているため、回転体22はバネ23の付勢力に応じてプッシャーローラ11の外周面に押しつけられる。回転体22の周囲には摩擦力の高い材料が設けられているため、回転体22がプッシャーローラ11の外周面に押しつられると両者の間に滑りが生じなくなる。したがって、プッシャーローラ11が回転体22の下方を回転しながら通過すると、これに伴ってプッシャーローラ11も回転せしめられることになる。
【0042】
次に、このように構成された本実施形態の損傷診断装置の診断方法及びその効果について説明する。ここで、プッシャーローラ11がほとんど変形していない間は、プッシャーローラ11には回転抵抗がない。このため、プッシャーローラ11が補助レール20上を走行する際には、プッシャーローラ11と補助レール20との間にはほとんど滑りは生じない。
【0043】
ところが、プッシャーローラ11の変形が或る程度大きくなると、それに伴ってプッシャーローラ11が回転しにくくなり、よってプッシャーローラ11を回転させるときの回転抵抗が大きくなる。このようにプッシャーローラ11の回転抵抗が増大すると、プッシャーローラ11と補助レール20との間に滑りが生じ、プッシャーローラ11の回転速度が低くなる。
【0044】
一方、上述したように、回転体22がプッシャーローラ11の外周面に押しつけられると、両者の間には滑りが生じない。したがって、回転体22はプッシャーローラ11に接触している間、プッシャーローラ11の回転速度に比例した回転速度となる。このため、回転体22の回転速度を検出する速度検出装置によって、プッシャーローラ11の回転速度を検出することができる。したがって、プッシャーローラ11の変形が大きくなるにつれて、速度検出装置によって検出される速度が低くなるといえる。
【0045】
そこで、本実施形態では、各プッシャーローラ11について速度検出装置によって速度を検出すると共に、検出された速度が一定値以下であるプッシャーローラ11については損傷可能性が高いと判断して、プッシャーローラ11の交換を促すようにしている。これにより、上記第一実施形態と同様に、これにより、一定の期間毎にまとめてプッシャーローラ11を交換することができ、よって焼結機全体を停止させる頻度を少なくさせることができる。加えて、プッシャーローラ11が破損する前に破損する可能性のあるプッシャーローラ11を発見することができるため、実際にプッシャーローラ11が破損して焼結機の他の部品に悪影響を及ぼすことが防止される。
【0046】
また、上述したように、プッシャーローラ11は、回転体22や補助レール20が配置されていない場合、焼結パレット台車4がスプロケットホイール2a、2b間でレール3a、3bに沿って移動する間、全く回転しない。このため、プッシャーローラ11の一カ所が大きく変形してプッシャーローラ11が回転不能になる。
【0047】
これに対して、本実施形態では、回転体22は補助レール20上を走行するため、補助レール20によって強制的に回転せしめられる。したがって、焼結パレット台車4がスプロケットホイール2a、2b間でレール3a、3bに沿って移動する間、プッシャーローラ11は回転せしめられる。このため、各スプロケットホイール2a、2b毎にプッシャーローラ11に荷重が加わる箇所は変化し、よって、プッシャーローラ11の一カ所のみが大きく変形してしまうことが抑制される。
【0048】
なお、上記第二実施形態では、プッシャーローラ11を回転させる回転付与手段として補助レール20が用いられている。しかしながら、プッシャーローラ11を強制的に回転させることができれば、回転付与手段は必ずしも補助レール20でなくてもよい。例えば、焼結パレット台車が所定区間を走行している間にプッシャーローラ11に接触する接触面を有し、プッシャーローラ11が接触面との接触摩擦抵抗により回転せしめられるような構成であれば、補助レール20の代わりにベルトコンベア等を用いることも可能である。
【0049】
また、上記第二実施形態では、プッシャーローラ11の回転速度を検出する速度検出装置として回転体22を用いた装置を用いている。しかしながら、回転速度を検出することができれば、必ずしも回転体22を用いた装置である必要はなく光学的なセンサ等、他の速度装置を用いることも可能である。
【0050】
また、上記第一実施形態では回転体17によってプッシャーローラ11が回転せしめられ、上記第二実施形態では補助レール20によってプッシャーローラ11が回転せしめられる。加えて、上記第一実施形態では、プッシャーローラ11を回転させるのに必要なトルクに基づいて、プッシャーローラ11の回転抵抗を算出しているといえ、これに基づいてプッシャーローラ11の損傷診断を行っているといえる。同様に、上記第二実施形態では、プッシャーローラ11の回転速度に基づいてプッシャーローラ11の回転抵抗を算出していると言え、これに基づいてプッシャーローラ11の損傷診断を行っているといえる。したがって、これらをまとめて表現すると、両実施形態の損傷診断装置は、プッシャーローラ11を回転させると共にプッシャーローラ11が回転されているときのプッシャーローラ11の回転抵抗を検出又は推定する回転・検出手段と、回転・検出手段によって検出された回転抵抗に基づいてプッシャーローラの損傷診断を行う診断手段とを具備しているといえる。特に、第二実施形態では、回転・検出手段は、プッシャーローラ11を回転させる回転付与手段(例えば、補助レール20)と、プッシャーローラ11が回転されているときのプッシャーローラの回転抵抗を検出又は推定する回転抵抗検出手段(例えば、速度検出装置)とを別々に具備している。