(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御装置は、前記画像データを利用して、前記対象ワークをピッキングするときの前記ピッキング部のピッキング姿勢を設定するためのデータであるピッキング姿勢データを生成するピッキング姿勢データ生成部を更に有し、
前記第1区間では、前記ピッキング部の姿勢がピッキングのための初期姿勢から前記ピッキング姿勢に変更される請求項2に記載のロボットピッキングシステム。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら本発明を実施するための形態を詳細に説明する。図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0010】
<ロボットピッキングシステム>
図1は、本実施形態のロボットピッキングシステム1を示す図である。また、
図2は、
図1に示されているロボットRの機構を示す図である。
図1に示すように、ロボットピッキングシステム1は、第1ストッカ(容器)2内のワークWを1つずつピッキングし(取り出し)、第2ストッカ(容器)3に移送するものである。第1ストッカ2は、樹脂製又は金属製の箱であり、内部には複数のワークWが、いわゆるバラ積みの状態で収容されている。第1ストッカ2に収容されているワークWは、例えばボルトといった同一の形状を有する部品である。第1ストッカ2からピッキングされたワークWは、例えば、予め定められた配置や姿勢に従って第2ストッカ3内に収容される。
【0011】
ロボットピッキングシステム1は、ワークWを第1ストッカ2からピッキングして第2ストッカ3に移送するロボットRと、ロボットRの動作を制御する制御装置4と、ワークWの画像データが含まれた画像を取得する画像取得装置6と、を備えている。
【0012】
<ロボット>
図2は、ロボットRを説明するための図である。
図2に示すように、ロボットRは、いわゆる多関節ロボットであり、ベース7と、アーム8と、グリッパ(ロボットエンドエフェクタ)11とを有している。ベース7は、ロボットRの基礎部であり、床面12に固定されている。アーム8は、複数のアーム部8aと、アーム部8a同士を連結する複数の回転関節J1〜J7とを有している。従って、ロボットRは、3次元空間における動作に必要な6自由度の構成に、更に冗長自由度を加えた7自由度の構成を有している。但し、本発明の適用対象ロボットは7自由度機構に限定されず、6自由度或いはそれ以外の機構に対して、軸構成を問わず適用可能である。アーム部8aには、回転関節J1〜J7を回転駆動するためのサーボモータ(不図示)が内蔵され、制御装置4から入力される制御信号により制御される。また、回転関節J1〜J7には、回転角度を検出するためのセンサ9が内蔵されている。センサ9は、検出した角度値をセンサデータとして制御装置4に出力する(
図4参照)。グリッパ11は、ロボットRのアーム8の先端に取り付けられている。グリッパ11は、一対の部材を開閉動作させることによりワークWを保持する。このグリッパ11の開閉動作は制御装置4から入力される制御信号により制御される。
【0013】
ロボットRには、ロボット座標系Cが設定されている。例えば、ロボット座標系Cは、ロボットRが配置された床面12に対して垂直な方向をZ方向とし、床面12に平行な方向をX方向とする。さらに、X方向及びZ方向に直交する方(紙面に垂直な方向)をY方向とする。また、例えば、床面12に対してロボットRを固定した点を固定点Pとし、固定点Pをロボット座標系Cの原点とする。
【0014】
<画像取得装置>
画像取得装置6は、ワークWに関する情報が含まれた画像データを取得して、画像データを制御装置4に出力する。画像データは、第1ストッカ2内の複数のワークWの撮像データが含まれた画像情報と、画像に映された物体の距離情報とを含んでいる。このような画像データを取得可能な画像取得装置6には、例えば、ステレオカメラ、距離画像センサ、又は画像センサと測距センサとを組み合わせた構成を用いることができる。
【0015】
<制御装置>
制御装置4は、角度データ、画像データ及びロボットRに関するリンク情報等を利用して、第1軌跡データ及び第2軌跡データを生成する。そして、制御装置4は、第1軌跡データ及び第2軌跡データを利用して、ロボットRを動作させることにより対象ワークWOをピッキングして、第1ストッカ2から第2ストッカ3に移送する。
【0016】
図3は、第1軌跡データ及び第2軌跡データを説明するための図である。第1軌跡データ及び第2軌跡データは、所定の2点間をグリッパ11が移動する際の軌跡を示す情報と、移動中におけるグリッパ11の姿勢に関する情報とを含んでいる。
図3に示されるように、ピッキング動作の一例として、作業空間WSにおいて、開始点Prに存在するグリッパ11が、目標点Pdに位置する対象ワークWOをピッキングして、終点Peまで移送する場合を例に説明する。作業空間WSは、ロボット座標系Cにより規定されている。
【0017】
グリッパ11には、グリッパ11の位置を代表して示す代表点Phが設定されている。第1軌跡及び第2軌跡は、この代表点Phの移動軌跡である。対象ワークWOの位置は、作業空間WSに設定される目標点Pdにより示される。この目標点Pdは対象ワークWOごとにロボット座標系Cに基づいて作業空間WS内に設定される点である。対象ワークWOのピッキング時には、グリッパ11の代表点Phが対象ワークWOの目標点Pdに重複される。作業空間WSには、ピッキング動作の開始時に代表点Phが存在する開始点Prと、対象ワークWOの移送先を示す終点Peが設定されている。終点Peは、例えば、第2ストッカ3の内部に設定されている。
【0018】
第1軌跡T1は、開始点Prから目標点Pdまでのグリッパ11の代表点Phの移動経路であり、グリッパ11の姿勢をピッキング姿勢に変更するための区間である。第1軌跡T1は、第1中間点(中間点)Pm1により分割される第1区間Z1と第2区間Z2とを含んでいる。すなわち、第1中間点Pm1は、第1軌跡T1を第1区間Z1と第2区間Z2に分割する。第1区間Z1は、開始点Prから第1中間点Pm1までの区間である。第1区間Z1では、グリッパ11の代表点Phが開始点Prから第1中間点Pm1に移動されると共に、グリッパ11の姿勢が初期姿勢からピッキング姿勢に変更される。初期姿勢とは、グリッパ11がピッキング動作を開始する際の姿勢であり、例えば開始点Prでのグリッパ11の姿勢である。第1中間点Pm1は、第1区間Z1の距離が第2区間Z2よりも長くなり、対象ワークWOよりも上方に設定され、且つ、第1ストッカ2の外側に設定されている。
【0019】
第2区間Z2は、第1中間点Pm1から目標点Pdまでのグリッパ11の代表点Phの移動経路であり、第1区間Z1においてピッキング姿勢に変更されたグリッパ11を対象ワークWOに接近させるための区間である。第2区間Z2では、グリッパ11の姿勢をピッキング姿勢に保持しつつ、グリッパ11の代表点Phが第1中間点Pm1から目標点Pdに移動される。第2区間Z2は、さらに第2中間点Pm2により分割され、第1中間点Pm1を介して第1軌跡T1と連続する第3区間Z3と、第2中間点Pm2を介して第3区間Z3と連続する第4区間Z4とを含んでいる。第2中間点Pm2は、目標点Pdから接近方向ALに延びた延長線上に設定される点である。第3区間Z3は、第1中間点Pm1から第2中間点Pm2まで障害物を避けつつ最短距離でグリッパ11を移動させるための区間である。第4区間Z4は、第2中間点Pm2から目標点Pdまで、接近方向ALに沿ってグリッパ11を移動させるため区間である。
【0020】
第2軌跡T2は、目標点Pdから終点Peまでのグリッパ11の移動経路である。第2軌跡T2では、対象ワークWOを保持したグリッパ11が障害物と干渉することなく目標点Pdから終点Peまで移動される。この終点Peは、対象ワークWOの移送先の位置を示す点である。
【0021】
制御装置4は、制御信号をロボットRに出力してロボットRの動作を制御する。制御装置4は、ロボットRと相互に通信可能に接続されたコンピュータにより構成されている。
図4は、制御装置4を実現するコンピュータ100を説明するための図である。また、
図5は、制御装置4の機能ブロック図である。
図4に示すように、コンピュータ100は、本実施形態の制御装置4を構成するハードウエアの一例である。コンピュータ100は、CPUを具備しソフトウエアによる処理や制御を行なうパーソナルコンピュータ等の情報処理装置を含む。コンピュータ100は、CPU101、主記憶装置であるRAM102及びROM103、キーボード、マウス及びプログラミングペンダント等の入力装置104、ディスプレイ等の表示部105、ハードディスク等の補助記憶装置106などを含むコンピュータシステムとして構成されている。
図5に示す機能的構成要素は、CPU101、RAM102等のハードウエア上に所定のコンピュータソフトウェアを読み込ませることにより、CPU101の制御のもとで入力装置104、表示部105を動作させるとともに、RAM102や補助記憶装置106におけるデータの読み出し及び書き込みを行うことで実現される。
【0022】
図5に示すように、制御装置4には、センサ9から角度データが入力されると共に画像取得装置6から画像データが入力される。この制御装置4は、初期姿勢データ生成部13と、対象ワークデータ生成部14と、ピッキング姿勢データ生成部16と、軌跡データ生成部17とを有している。
【0023】
<初期姿勢データ生成部>
初期姿勢データ生成部13には、複数のセンサ9から角度データが入力される。そして、初期姿勢データ生成部13は、後述する初期姿勢データを生成した後に、対象ワークデータ生成部14及び軌跡データ生成部17に出力する。ここで初期姿勢データとは、初期状態におけるロボットRのリンクL1〜L5及びグリッパ11の姿勢の情報、並びに位置を示す座標情報を含むデータである。これら姿勢及び位置は、ロボット座標系Cに基づいて規定されている。初期姿勢データは、角度データ及びロボットRのリンクL1〜L5の情報を利用して、順運動学に基づく計算により算出する。
【0024】
<対象ワークデータ生成部>
対象ワークデータ生成部14には、画像取得装置6から画像データが入力されると共に、初期姿勢データ生成部13から初期姿勢データが入力される。対象ワークデータ生成部14は、画像データ及び初期姿勢データを利用して、対象ワークデータを生成し、ピッキング姿勢データ生成部16及び軌跡データ生成部17に出力する。ここで対象ワークデータとは、第1ストッカ2に収容された複数のワークWにおいてピッキング対象となる対象ワークを特定するための情報を含むデータである。対象ワークは、例えば、グリッパ11とワークWとの間の距離に基づいて選択してもよい。また、初期姿勢データに含まれたグリッパ11の初期姿勢の情報を利用して、グリッパ11の初期位置及び初期姿勢からそれぞれのワークWに至るまでの所要時間を利用して選択してもよい。
【0025】
<ピッキング姿勢データ生成部>
ピッキング姿勢データ生成部16には、画像取得装置6から画像データが入力されると共に、対象ワークデータ生成部14から対象ワークデータが入力される。ピッキング姿勢データ生成部16は、画像データ及び対象ワークデータを利用して、後述するピッキング姿勢データを生成し、軌跡データ生成部17に出力する。ピッキング姿勢データは、対象ワークWOをピッキングするときのグリッパ11の状態を設定するためのデータである。ピッキング姿勢データは、対象ワークWOの位置を示す目標点Pdの座標、対象ワークWOをピッキングするためのグリッパ11のピッキング姿勢、及びグリッパ11を対象ワークWOに接近させる方向を示す接近方向AL(
図9(a)参照)の情報を含む。目標点Pdは、対象ワークデータにより特定される対象ワークWOについて、距離情報を含む画像データを利用して、公知の方法によりロボット座標系Cに基づいて設定される。グリッパ11のピッキング姿勢は、対象ワークWOの形状情報を利用して算出する。グリッパ11の接近方向ALは、対象ワークWOの形状情報及び対象ワークWOの周辺に存在する別のワークWの形状情報を利用して算出する。
【0026】
<軌跡データ生成部>
軌跡データ生成部17は、軌跡算出部18と、位置設定部19と、軌跡確認部21とを含んでいる。軌跡データ生成部17には、画像取得装置6から画像データが入力され、対象ワークデータ生成部14から対象ワークデータが入力され、初期姿勢データ生成部13から初期姿勢データが入力されると共に、ピッキング姿勢データ生成部16からピッキング姿勢データが入力される。軌跡データ生成部17は、これらデータを利用して、開始点Prから目標点Pdを結ぶ第1軌跡T1の情報を含む第1軌跡データ及び対象ワークWOをピッキングした位置(目標点Pd)から終点Peを結ぶ第2軌跡T2の情報を含む第2軌跡データを生成し、それらデータをロボット駆動部22に出力する。
【0027】
<軌跡算出部>
軌跡算出部18は、2点間のグリッパ11の移動情報を含む軌跡データを生成する。軌跡データは、2点間における移動軌跡に関する情報と、2点間における姿勢に関する情報とを含んでいる。この軌跡算出部18は、第1軌跡T1と第2軌跡T2を生成する。また、軌跡算出部18は、必要に応じて、周囲の障害物との干渉を避けるように第1軌跡T1及び第2軌跡T2を修正する。干渉を避ける軌跡を計算する方法は、公知の方法を用いることができる。
【0028】
第1軌跡T1は、開始点(初期位置)Pr、第2中間点Pm2、及び目標点Pdの座標情報を利用して算出する。開始点Prから第2中間点Pm2までの区間(第1区間Z1、第3区間Z3)の間の軌跡を算出すると共に、第2中間点Pm2から目標点までの区間(第4区間Z4)の軌跡を算出して両軌跡を連結することにより第1軌跡T1が算出される。開始点Prから第2中間点Pm2までの区間は、第1ストッカ2の外部から内部に亘る区間であるため、例えば、第1ストッカ2の側壁との干渉を避けるように直線、曲線又は直線及び曲線を組み合わせた軌跡が設定される。また、第2中間点Pm2から目標点Pdまでの区間(第4区間)では、グリッパ11が接近方向ALに沿って移動させるため、直線状の軌跡が算出される。
【0029】
また、軌跡算出部18は、開始点Prにおけるグリッパ11の姿勢が初期姿勢であり、第1中間点Pm1、第2中間点及び目標点Pdにおけるグリッパ11の姿勢がピッキング姿勢である情報を第1軌跡データに追加する。
【0030】
第2軌跡T2は、目標点Pd及び終点Peの座標情報を利用して算出する。この第2軌跡T2は、第1ストッカ2の内部から外部に亘る軌跡であるため第1ストッカ2の側壁との干渉を避けるように直線、曲線又は直線及び曲線を組み合わせた軌跡が設定される。また、軌跡算出部18は、目標点Pdにおけるグリッパ11の姿勢がピッキング姿勢であり、終点におけるグリッパ11の姿勢が終了姿勢であることを示す情報を第2軌跡データに追加する。なお、終了姿勢とは、対象ワークWOを解放するときのグリッパ11の姿勢である。終了姿勢は、例えば、第2ストッカ3内におけるワークの配置及び姿勢等に基づいて設定される。
【0031】
ここで、2点間を補間する軌跡の生成法について具体例を示しつつ説明する。
図6及び
図7は、軌跡の生成法を説明するための図である。軌跡の生成法には、関節空間に基づく軌跡の生成法と、直交空間に基づく軌跡の生成法がある。
【0032】
図6に示すように、関節空間に基づく軌跡Taの生成法について説明する。ここで関節空間とは、能動関節ベクトルが形成する空間をいう。関節空間による補間方法では、開始点PrにおけるロボットRの関節角度と、目標点PdにおけるロボットRの関節角度との差に基づいて各回転関節J1〜J7の角速度指令を生成する。即ち、開始点Prから目標点Pdまでの距離と、予め設定される角速度とに基づいて各回転関節J1〜J7の角速度指令を生成する。
図7(a)は、各回転関節J1〜J7に与えられる角速度指令の一例である。G1は回転関節J2に与えられる角速度指令であり、G2は回転関節J3に与えられる角速度指令であり、G3は回転関節J5に与えられる角速度指令であり、G4は回転関節J6に与えられる角速度指令である。
図7(a)に示すように、ロボットRの回転関節J2,J3,J5,J6の角速度が動作開始及び終了時を除き一定値となるように角速度指令が生成される。なお、
図7(a)に示した角速度指令の例は、ロボット座標系CにおけるXZ平面内の動作を想定したものである。従って、アーム8のY方向への動作を与える回転関節J1,J4及びJ7の角速度は0とされている。
【0033】
また、直交空間に基づく軌跡Tbの生成法について説明する。直交空間による補間方法では、開始点Prにおけるグリッパ11の姿勢及び位置と、目標点Pdにおけるグリッパ11の姿勢及び位置との差に基づいて、ロボット座標系CにおけるX軸方向及びZ軸方向の並進速度と、Z軸回りの回転速度の直交速度指令を生成する。即ち、開始点Prから目標点Pdまでの距離と、予め設定される所定速度とに基づいて並進速度及び回転速度の履歴が生成される。
図7(b)は、X軸及びZ軸方向の並進速度と、Z軸回りの回転速度の履歴の一例である。G7はX軸方向への並進速度の履歴であり、G8はZ軸方向への並進速度の履歴であり、G9はZ軸回りの回転速度の履歴である。
図7(b)に示すように、動作開始時および終了時を除き、並進速度及び回転速度が一定となるように直交速度指令が生成される。そして、
図7(b)に示される直交速度指令を各回転関節J1〜J7への角速度指令に変換する。この変換には逆運動学に基づく計算を実施する。
図7(c)は、直交速度指令を角速度指令に変換した結果を示す。G9は回転関節J2に与えられる角速度の指令であり、G10は回転関節J3に与えられる角速度の指令であり、G11は回転関節J5に与えられる角速度の指令であり、G12は回転関節J6に与えられる角速度の指令である。
【0034】
<位置設定部>
図5に示すように、位置設定部19は、第1軌跡T1上に第1中間点Pm1及び第2中間点Pm2を設定し、それら第1中間点Pm1及び第2中間点Pm2を示すロボット座標系Cに基づく座標情報を生成する。第1中間点Pm1は、第1軌跡T1と、画像データから生成された目標点Pdの座標情報と、第1ストッカ2の形状情報とを利用して、対象ワークWO設定される。第2中間点Pm2は、目標点Pdの座標情報と、ピッキング姿勢データに含まれた接近方向ALの情報とを利用して設定される。また、位置設定部19は、所望の位置に終点Peを設定し、終点Peを示すロボット座標系Cに基づく座標情報を生成する。
【0035】
ここで、第1中間点Pm1及び第2中間点Pm2は、対象ワークWOに関する情報及び第1ストッカ2に関する情報に基づいて対象ワークWOごとに設定される点である。
【0036】
<軌跡確認部>
ロボットR及び対象ワークWOの周囲には、ピッキング動作の障害物となる物体が存在することがある。ピッキング動作の障害物となる物体には、例えば、第1ストッカ2の側壁などがある。軌跡確認部21は、第1軌跡T1及び第2軌跡T2に沿ったグリッパ11の動作がこれら障害物と干渉することにより妨げられるか否かを判断する。ここで、軌跡データは、ロボット座標系Cを基準として規定されている。障害物である第1ストッカ2もロボット座標系Cを基準座標としてデータ化されている。そうすると、軌跡と障害物とは同一のロボット座標系Cの空間内に規定されているので、公知の計算方法により干渉の有無を確認することができる。軌跡確認部21は、干渉がある場合には、軌跡算出部18に対して第1軌跡T1又は第2軌跡T2を修正するように命令を出力する。
【0037】
また、軌跡確認部21は、ロボットRの可動範囲を超えることなく軌跡に沿って動作することが可能であるか否かを判断する。ロボットRの回転関節J1〜J7には、それぞれ可動範囲が設定されている。これら回転関節の可動範囲及びリンクL1〜L5の長さに基づいて、ロボットR全体として可動し得る範囲が設定される。なお、本実施形態の可動範囲は、ロボットR全体として可動し得る範囲に対して、さらに安全マージンを加えた範囲であってもよい。また、可動範囲は、回転関節J1〜J7の可動範囲に加え、リンクL1〜L5が有する特異点を考慮して設定されたものであってもよい。軌跡確認部21は、可動範囲を超えない動作が不可能である場合には、軌跡算出部18に対して第1軌跡T1又は第2軌跡T2を修正するように命令を出力する。
【0038】
<ロボット駆動部>
ロボット駆動部22には、第1軌跡データ及び第2軌跡データが入力される。ロボット駆動部22は、第1軌跡データ及び第2軌跡データに基づいてロボットRに含まれたモータを制御することにより、グリッパ11を第1軌跡T1及び第2軌跡T2に沿って移動させると共に、グリッパ11の姿勢を所定の姿勢に変更する。
【0039】
続いて、ロボットピッキングシステム1によるピッキング動作の工程を説明する。
図8は、ピッキング動作を実行する主要な工程を説明するための図である。
図9及び
図10は、軌跡を生成する一工程を説明するための図である。
【0040】
図8に示すように、まず、画像取得装置6を用いて第1ストッカ2内の画像データを取得して、画像データを制御装置4に出力する(工程S1)。次に、対象ワークデータ生成部14により対象ワークデータを生成する(工程S2)。初期姿勢データ生成部13により初期姿勢データを生成した後に(工程S3)、ピッキング姿勢データ生成部16によりピッキング姿勢データを生成する(工程S4)(
図9(a)参照)。
図9(a)ではグリッパ11のピッキング姿勢を二点鎖線でイメージしている。
【0041】
次に、軌跡データ生成部17により軌跡データを生成する。まず、位置設定部19により第2中間点Pm2の座標情報を算出する(工程S5)(
図9(b)参照)。続いて、軌跡算出部18により開始点Prと第2中間点Pm2とを結ぶ軌跡T3aと,第2中間点Pm2と目標点Pdを結ぶ軌跡T4とを生成する(工程S6)(
図10(a)参照)。
【0042】
この工程S6で生成された軌跡T3aについて、軌跡確認部21により第1軌跡T1に沿った動作が可能か否かついて確認する(工程S7)。
図10(a)に示された例では、軌跡T3aでは、第1ストッカ2と干渉が生じている(工程S7:NO)。従って、軌跡算出部18により第1軌跡T1の第1区間T3aを第1区間T3bに修正する(工程S8)。修正された曲線状の第1区間T3bと直線状のT4とを含む第1軌跡T1によれば、第1ストッカ2との干渉が生じていない(工程S7:YES)。従って、この場合には次工程S9に移行する。
【0043】
次に、位置設定部19により第1軌跡T1上に第1中間点Pm1を設定する(工程S9)と共に、第2ストッカ3内に終点Peを設定する(工程S10)。次に、軌跡算出部18により目標点Pdと終点Peとを最短距離で結ぶ第2軌跡T3を生成する(工程S11)。そして、工程S11で生成された第2軌跡T3について、軌跡確認部21により第2軌跡T3に沿った動作が可能か否かついて確認する(工程S12)。
【0044】
図10(b)に示された例では、目標点Pdと終点Peとを結ぶ直線状の第2軌跡T3によれば、第1ストッカ2と干渉が生じている(工程S12:NO)。従って、軌跡算出部18により第2軌跡T3を第2軌跡T2に修正する(工程S13)。修正された第2軌跡T2によれば、第1ストッカ2との干渉が生じていない(工程S12:YES)。従って、この場合には次工程S14に移行する。そして、ロボット駆動部22によりロボットRが駆動され、ピッキング動作が実行される(工程S14)。
【0045】
ところで、グリッパ11を対象ワークWOに接近させた後にグリッパ11の姿勢をピッキング姿勢に変更した場合には、対象ワークWO又は対象ワークWO近傍のワークWにグリッパ11が接触する場合がある。さらに、グリッパ11の接触により対象ワークWOの位置や姿勢が変化する場合がある。ピッキング姿勢データは変化前の位置及び姿勢に基づいて生成されている。従って、対象ワークWOの位置や姿勢が変化すると、グリッパ11によるピッキング動作の成功確率が低減するおそれがある。
【0046】
一方、本実施形態のロボットピッキングシステム1によれば、制御装置4がピッキング姿勢及び接近方向ALを算出する。そして、ロボット駆動部22が、対象ワークWO等との接触がない第1区間Z1においてグリッパ11の姿勢をピッキング姿勢に変更し、第2区間Z2においてピッキング姿勢を維持しつつ接近方向ALに沿ってグリッパ11を対象ワークWOに接近させる。この動作によれば、グリッパ11の姿勢変更により、対象ワークWOの位置及び姿勢を変化させることがない。従って、ピッキング動作の成功確率を高めて、対象ワークWOを効率よく取り出すことができる。
【0047】
本実施形態のロボットピッキングシステム1によれば、制御装置4が軌跡データ生成部17を有しているので、第1軌跡T1を生成することができる。この第1軌跡T1は、グリッパ11の姿勢を初期姿勢からピッキング姿勢に変更するための第1区間Z1と、ピッキング姿勢を維持しつつ対象ワークWOに接近させるための第2区間Z2とを含んでいる。従って、姿勢変更の制御と、対象ワークWOへ接近させる制御とが別動作として実行されるので、グリッパ11の位置及び姿勢の制御を容易かつ確実に実行することができる。
【0048】
本実施形態のロボットピッキングシステム1によれば、制御装置4が位置設定部19を含んでいるので、第1軌跡T1上において第1ストッカ2等との干渉を防止可能な第1区間Z1を設定することができる。
【0049】
本実施形態のロボットピッキングシステム1によれば、制御装置4がピッキング姿勢データ生成部16を有している。このピッキング姿勢データ生成部16によれば、対象ワークWOの状態に応じたピッキング姿勢及び接近方向ALを設定するため、ピッキングの成功確率を高めることができる。従って、更に効率よく対象ワークWOを取り出すことができる。
【0050】
本実施形態のロボットピッキングシステム1によれば、第1区間Z1の長さが第2区間Z2よりも長くなる位置に位置設定部19が第1中間点Pm1を設定する。この設定によれば、姿勢変更のための十分な時間を確保できるので、グリッパ11の姿勢制御を容易に実行することができる。
【0051】
また、対象ワークWOよりも高い位置に位置設定部19が第1中間点Pm1を設定する。この設定によれば、対象ワークWOよりも高い位置においてグリッパ11の姿勢変更が実行される。従って、グリッパ11をワークWへ接触させることなくグリッパ11の姿勢を変更することができる。
【0052】
また、第1ストッカ2の外側に位置設定部19が第1中間点Pm1を設定する。この設定によれば、第1ストッカ2の外部においてグリッパ11の姿勢変更が実行される。従って、グリッパ11をワークW及び第1ストッカ2へ接触させることなくグリッパ11の姿勢を変更することができる。
【0053】
本実施形態のロボットピッキングシステム1によれば、第1軌跡T1と第2軌跡T2とは互いに異なる移動ルートに設定される。このため、第1軌跡T1を対象ワークWOへのアプローチに適したルートに設定することが可能であり、且つ、第2軌跡T2を対象ワークWOの取り出しに適したルートに設定することが可能である。従って、開始点Prから対象ワークWOをピッキングする目標点Pdを経由して対象ワークWOをリリースする終点Peまで移動するための所要時間を短くすることができる。
【0054】
本実施形態のロボットピッキングシステム1によれば、対象ワークWOに関する情報及び第1ストッカ2に関する情報等を利用して、位置設定部19が対象ワークWOごとに固有の第1中間点Pm1及び第2中間点Pm2を設定する。これによれば、個々の対象ワークWOに応じた第1区間Z1及び第2区間Z2を含む第1軌跡T1を設定することができる。従って、それぞれの対象ワークWOに対応するピッキング条件を設定できるので、対象ワークWOを効率よく取り出すことができる。
【0055】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。例えば、画像取得装置6はロボットRのアーム8の先端に取り付けられている必要はなく、第1ストッカ2のワークWが撮影可能な任意の位置に配置してもよい。
【0056】
また、上記実施形態において、対象ワークWOを選択する方法、軌跡を算出する方法、及び干渉の有無を確認する方法は一例であり、本実施形態に記載の方法に限定されるものではない。
【0057】
また、上記実施形態では、位置設定部19が第1区間Z1の長さが第2区間Z2よりも長くなる位置に設定する条件と、対象ワークWOよりも高い位置に設定する条件と、更に第1ストッカ2の外側に設定する条件との3つの条件を適用して第1中間点Pm1を設定した。位置設定部19が第1中間点Pm1を設定する場合には、これらの条件を全て適用する必要はなく、1又は1以上の条件を組み合わせて適用してもよい。
【0058】
また、上記実施形態において、ロボットRは垂直双腕ロボットであってもよい。
【0059】
また、上述したロボットピッキングシステム1を用いて所望の製品(被加工物)を製造してもよい。