特許第5765361号(P5765361)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5765361
(24)【登録日】2015年6月26日
(45)【発行日】2015年8月19日
(54)【発明の名称】レンズ保持装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 7/04 20060101AFI20150730BHJP
【FI】
   G02B7/04 E
【請求項の数】9
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-83178(P2013-83178)
(22)【出願日】2013年4月11日
(65)【公開番号】特開2014-206590(P2014-206590A)
(43)【公開日】2014年10月30日
【審査請求日】2014年4月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001494
【氏名又は名称】前田・鈴木国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】宇野 勝
(72)【発明者】
【氏名】伊美 和朋
(72)【発明者】
【氏名】河野 紀行
(72)【発明者】
【氏名】井上 和彦
(72)【発明者】
【氏名】後藤 真史
(72)【発明者】
【氏名】大畑 修
(72)【発明者】
【氏名】小池 信太朗
(72)【発明者】
【氏名】山下 保英
【審査官】 森内 正明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−85666(JP,A)
【文献】 特開2012−173713(JP,A)
【文献】 特開2013−24938(JP,A)
【文献】 特開2012−32615(JP,A)
【文献】 特開2012−32778(JP,A)
【文献】 特開2011−128583(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/02 − 7/16
G03B 5/00 − 5/08
H04N 5/222 − 5/257
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズの外周に配置された第1コイルを備えるレンズホルダと、
前記第1コイルに対向する第1面を含む第1マグネット部分と、前記第1面に垂直な第2面を含み前記第1マグネット部分とは異なる磁区を構成する第2マグネット部分と、を有するマグネット部と、
前記レンズホルダと前記マグネット部とを、光軸方向へ相対移動可能に接続するスプリングと、
前記第2面に対向する第2コイルが備えられるベース部と、を有し、
前記第1マグネット部分と前記第2マグネット部分とは一体に繋がっており、
前記第1コイルは、前記第1マグネット部分と前記第2マグネット部分のうち前記第1マグネット部分のみに対向しており、
前記第2コイルは、前記第1マグネット部分と前記第2マグネット部分のうち前記第2マグネット部分のみに対向しており、
前記レンズホルダと、前記マグネット部と、前記スプリングとを有するレンズ保持ユニットを、前記ベース部に対し前記光軸方向と垂直な方向へ相対移動可能に保持してあることを特徴とするレンズ保持装置。
【請求項2】
前記マグネット部は、前記スプリングを位置決めする位置決め部を有することを特徴とする請求項1に記載のレンズ保持装置。
【請求項3】
前記第1コイルに対して前記レンズの入射側に配置される入射側スプリングと、前記第1コイルに対して前記レンズの出射側に配置される出射側スプリングと、を含む複数の前記スプリングを有し、
前記マグネット部は、前記入射側スプリングを位置決めする入射側位置決め部と、前記出射側スプリングを位置決めする出射側位置決め部とを含む複数の前記位置決め部を有することを特徴とする請求項2に記載のレンズ保持装置。
【請求項4】
レンズの外周に配置された第1コイルを備えるレンズホルダと、
前記第1コイルに対向する第1面を含む第1マグネット部分と、前記第1面に垂直な第2面を含み前記第1マグネット部分とは異なる磁区を構成する第2マグネット部分と、を有するマグネット部と、
前記レンズホルダと前記マグネット部とを、光軸方向へ相対移動可能に接続するスプリングと、
前記第2面に対向する第2コイルが備えられるベース部と、を有し、
前記スプリングは、前記第1コイルに対して前記レンズの入射側に配置される入射側スプリングと、前記第1コイルに対して前記レンズの出射側に配置される出射側スプリングと、を含み
前記第1マグネット部分と前記第2マグネット部分とは一体に繋がっており、
前記マグネット部は、前記第1マグネット部分に設けられ前記入射側スプリングを位置決めする入射側位置決め部と、前記第2マグネット部分に設けられ前記出射側スプリングを位置決めする出射側位置決め部とを含む複数の位置決め部を有し、
前記レンズホルダと、前記マグネット部と、前記スプリングとを有するレンズ保持ユニットを、前記ベース部に対し前記光軸方向と垂直な方向へ相対移動可能に保持してあることを特徴とするレンズ保持装置。
【請求項5】
前記第1マグネット部分及び前記第2マグネット部分のうち少なくとも一方は、前記レンズの周方向に連続していることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれかに記載のレンズ保持装置。
【請求項6】
前記入射側位置決め部と前記出射側位置決め部との前記光軸方向に沿う間隔は、前記レンズホルダの前記光軸方向に沿う長さと等しいことを特徴とする請求項5に記載のレンズ保持装置。
【請求項7】
前記第2マグネット部分の前記第2面は、第2面凸部と、前記第2面凸部より前記第2コイルに対して離間するように前記光軸方向に凹んでいる第2面凹部とを有し、前記位置決め部の少なくとも一部は、前記第2面凹部に設けられていることを特徴とする請求項1から請求項までのいずれかに記載のレンズ保持装置。
【請求項8】
前記第1マグネット部分及び前記第2マグネット部分は、樹脂を含み、かつ、磁化容易軸が揃えられた異方性磁石であることを特徴とする請求項1から請求項までのいずれかに記載のレンズ保持装置。
【請求項9】
前記第2マグネット部分は、前記マグネット部における前記光軸方向の端部に位置する第2端部と、前記第2端部と前記第1マグネット部分との間に位置しており、前記第2端部及び前記第1マグネット部分とは異なる磁区を構成する第2中間部と、を有することを特徴とする請求項1から請求項までのいずれかに記載のレンズ保持装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば携帯電話のカメラモジュールなどに好適に用いられるレンズ保持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話のカメラモジュール等に好適に用いられるレンズ保持装置では、フォーカシング動作と手振れ補正等を行うことができるように、レンズホルダを光軸方向及び光軸方向に垂直な方向に移動させる機能を有するものが提案されている。
【0003】
また、このようなレンズ保持装置として、マグネットによって形成される磁場中にレンズホルダに取り付けられたコイルを配置し、コイルの電流値に応じて生じる電磁力によりレンズホルダを移動させる機構や、レンズホルダを光軸方向の両側からスプリングによって支持する機構が提案されている(特許文献1等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−58762号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来技術に係るレンズ保持装置に用いられるマグネットは、形状の自由度が低いために周方向に分離されており、マグネットが分離されていることにより、組み立てに手間がかかり、製造効率の点で問題があった。また、従来のレンズ保持装置では、コイルをマグネットの外周を取り囲むように配置しているため、レンズの径方向に関して装置のサイズを小さくすることが難しく、小型化の点で問題を有している。
【0006】
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、その目的は、マグネットの形状及び構造を改良したレンズ保持装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の第1の観点に係るレンズ保持装置は、
レンズの外周に配置された第1コイルを備えるレンズホルダと、
前記第1コイルに対向する第1面を含む第1マグネット部分と、前記第1面に垂直な第2面を含み前記第1マグネット部分とは異なる磁区を構成する第2マグネット部分と、を有するマグネット部と、
前記レンズホルダと前記マグネット部とを、光軸方向へ相対移動可能に接続するスプリングと、
前記第2面に対向する第2コイルが備えられるベース部と、を有し、
前記第1マグネット部分と前記第2マグネット部分とは一体に繋がっており、
前記レンズホルダと、前記マグネット部と、前記スプリングとを有するレンズ保持ユニットを、前記ベース部に対し前記光軸方向と垂直な方向へ相対移動可能に保持してある。
【0008】
本発明の第1の観点に係るレンズ保持装置が有するマグネット部は、互いに垂直な第1面と第2面とを有し、第1面及び第2面に対向するように第1コイル及び第2コイルを配置する構成であるため、レンズの径方向に関して装置のサイズを小さくすることが可能であり、小型化の点で有利である。また、前記第1マグネット部分と前記第2マグネット部分とは一体に繋がっているが、互いに異なる磁区を構成しているため、組み立てが容易でありながら、第1コイル及び第2コイルの周辺に強い磁場を形成することが可能である。
【0009】
また、例えば、前記第1マグネット部分及び前記第2マグネット部分のうち少なくとも一方は、前記レンズの周方向に連続していても良い。
【0010】
前記第1マグネット部分及び前記第2マグネット部分のうち少なくとも一方が周方向に連続しているマグネット部は、全体が一体であるため組み立てが容易である。また、第1マグネット部分が周方向に連続することにより、駆動力を発生する方向とは逆方向に第1コイルを鎖交する磁場が発生することを防止し、第1コイルに電流を流した際の駆動力を向上させることができる。
【0011】
前記マグネット部は、前記スプリングを位置決めする位置決め部を有しても良い。
【0012】
マグネット部にスプリングを位置決めするための位置決め部が形成されていることにより、スプリングをマグネット部に対して直接位置決めすることが可能である。したがって、このようなレンズ保持装置は、スプリングを含むレンズ保持ユニットを精度良く組み立てることができる。
【0013】
また、例えば、本発明に係るレンズ保持装置は、前記第1コイルに対して前記レンズの入射側に配置される入射側スプリングと、前記第1コイルに対して前記レンズの出射側に配置される出射側スプリングと、を含む複数の前記スプリングを有しても良く、
前記マグネット部は、前記入射側スプリングを位置決めする入射側位置決め部と、前記出射側スプリングを位置決めする出射側位置決め部とを含む複数の前記位置決め部を有しても良い。
【0014】
マグネット部が入射側スプリングを位置決めする入射側位置決め部と、出射側スプリングを位置決めする出射側位置決め部とを有することにより、入射側スプリングと出射側スプリングとの相対配置に誤差が生じることを効果的に防止し、レンズホルダ及びレンズが傾いたり斜めに移動したりする問題を低減できる。
【0015】
また、例えば、前記入射側位置決め部と前記出射側位置決め部との前記光軸方向に沿う間隔は、前記レンズホルダの前記光軸方向に沿う長さと略等しくても良い。
【0016】
また、例えば、前記第2マグネット部分の前記第2面は、第2面凸部と、前記第2面凸部より前記第2コイルに対して離間するように前記光軸方向に凹んでいる第2面凹部とを有し、前記位置決め部の少なくとも一部は、前記第2面凹部に設けられていても良い。
【0017】
入射側位置決め部と出射側位置決め部との光軸方向に沿う間隔を、レンズホルダの光軸方向に沿う長さと略等しくすることにより、入射側及び出射側スプリングの形状を単純化し、レンズホルダをバランス良く支持することが可能である。さらに、光軸方向に凹んでいる第2面凹部に位置決め部を形成することにより、マグネット部の光軸方向の長さを短くできるため、レンズ保持装置の低背化に資する。
【0018】
また、本発明の第2の観点に係るレンズ保持装置は、
レンズの外周に配置された第1コイルを備えるレンズホルダと、
前記第1コイルに対向する第1面を含む第1マグネット部分と、前記第1面に垂直な第2面を含み前記第1部分とは異なる磁区を構成する第2マグネット部分と、を有するマグネット部と、
前記レンズホルダと前記マグネット部とを、光軸方向へ相対移動可能に接続するスプリングと、
前記第2面に対向して第2コイルが固定されるベース部と、を有し、
前記第2マグネット部分は、前記レンズの周方向に連続しており、
前記レンズホルダと、前記マグネット部と、前記スプリングとを有するレンズ保持ユニットを、前記ベース部に対し光軸と垂直な方向に相対移動可能に保持してある。
【0019】
本発明の第2の観点に係るレンズ保持装置が有するマグネット部は、第1の観点に係るレンズ保持装置と同様に、レンズの径方向に関して装置のサイズを小さくすることが可能であり、小型化の点で有利である。また、第2マグネットが周方向に連続しているため、部品数が少なく組み立てが容易である。
【0020】
また、例えば、前記第1マグネット部分及び前記第2マグネット部分は、樹脂を含んでも良い。
【0021】
このような第1マグネット部分及び第2マグネット部分により構成されるマグネット部は、金属やフェライト等の磁性材料のみから成る従来の磁石に比べて成形の自由度が高く、このようなマグネット部には、スプリングのための位置決め部を容易に形成することが可能である。
【0022】
また、例えば、前記第2マグネット部分は、前記マグネット部における前記光軸方向の端部に位置する第2端部と、前記第2端部と前記第1マグネット部分との間に位置しており、前記第2端部及び前記第1マグネット部分とは異なる磁区を構成する第2中間部と、を有しても良い。
【0023】
第2マグネット部分が第2中間部と第2端部とを有することにより、第2コイルの周辺に強い磁場を形成することが可能であり、第2コイルに電流を流した際の駆動力を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、本発明の一実施形態に係るレンズ保持装置の斜視図である。
図2図2は、図1に示すレンズ保持装置の概略分解斜視図である。
図3図3は、レンズ保持装置に含まれるレンズ保持ユニットの詳細分解斜視図である。
図4図4は、レンズ保持装置に含まれるベース部の詳細分解斜視図である。
図5図5は、図1に示すレンズ保持ユニットを、レンズの出射側から見た斜視図である。
図6図6は、図1に示すレンズ保持装置の断面図である。
図7図7は、マグネット部の変形例を表す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1は、本発明の一実施形態に係るレンズ保持装置10の斜視図である。レンズ保持装置10は、略直方体形状の外形状を有している。レンズ保持装置10の中心部には、図示省略のレンズを保持するレンズホルダ50が配置されており、レンズホルダ50の外周側には、ケース12が配置されている。レンズ保持装置10は、断面図6に示すように、出射側に配置される撮像素子92と組み合わせて、フォーカス機構及び手振れ補正機構を有するカメラモジュール等として使用されるが、レンズ保持装置10の用途はこれに限定されない。なお、レンズ保持装置10の説明では、レンズの光軸αに沿って、撮影光がレンズに入射してくる側を入射側とし、入射した撮影光を出射する側を出射側として説明を行う。
【0026】
図2は、図1に示すレンズ保持装置10の概略分解斜視図である。レンズ保持装置10は、ケース12と、レンズ保持ユニット18と、ベース部19とを有する。ケース12は、レンズ保持ユニット18を、ベース部19との間で光軸方向に挟み込んだ状態で、ベース部19のボトム78に取り付けられる(図1参照)。
【0027】
図3は、レンズ保持ユニット18の詳細分解斜視図である。レンズ保持ユニット18は、レンズの外周に配置される第1コイル80が取り付けられたレンズホルダ50と、マグネット部40と、レンズホルダ50とマグネット部40とを、光軸方向へ相対移動可能に接続する入射側スプリング30及び出射側スプリング60とを有する。
【0028】
レンズ保持ユニット18は、第1コイル80に対して入射側に配置される入射側スプリング30と、第1コイル80に対して出射側に配置される出射側スプリング60とによって構成される2つのスプリング30,60を有する。入射側スプリング30は、マグネット部40とレンズホルダ50とを弾性的に接続する。入射側スプリング30は、互いに分離及び絶縁されている2つの部材である入射側スプリングR30aと、入射側スプリングL30bとによって構成されており、第1コイル80に電力を供給するための配線の一部を兼ねている。入射側スプリング30を構成する入射側スプリングR30aと入射側スプリングL30bは、それぞれ外環部32、ワイヤ保持部33、内環部34及びアーム部36とを有しており、入射側スプリング30は、多重のリング形状を有している。
【0029】
入射側スプリング30の外周部分を構成する外環部32は、マグネット部40の入射側端面に、接着又は熱カシメ等によって固定される。マグネット部40の入射側端面には、入射側スプリング30を位置決めする入射側位置決め部44が形成されている。入射側位置決め部44は、マグネット部40における第1マグネット部分43から光軸α方向に突出する凸部であり、凸部である入射側位置決め部44が、入射側スプリング30の外環部32に形成された貫通孔32aに対して係合することにより、入射側スプリング30がマグネット部40に対して位置決めされる。外環部32の四隅には、サスペンションワイヤ84の入射側端部が固定されるワイヤ保持部33が接続されている。
【0030】
入射側スプリング30の内周部分を構成する内環部34は、レンズホルダ50の入射側内環設置部54に、接着剤等によって固定される。外環部32と内環部34は、アーム部36によって連結されている。
【0031】
入射側スプリング30は、金属等の弾性材料によって構成されており、アーム部36は、弾性変形することができる。アーム部36が弾性変形することによって、内環部34は、外環部32に対して光軸α方向に相対移動することができる。
【0032】
なお、入射側スプリング30が第1コイル80への給電経路となる場合、入射側スプリング30の外環部32とマグネット部40との絶縁性を確保するために、入射側スプリング30やマグネット部40の表面に絶縁被膜処理等が施されてもよく、また、入射側スプリング30とマグネット部40の間に絶縁シート等が挿入されても良い。
【0033】
マグネット部40は、レンズホルダ50及び第1コイル80の外周側に配置されており、第1コイル80に対向する第1面43aを含む第1マグネット部分43と、第1面43aに垂直であって出射側を向く第2面45aを含む第2マグネット部分45とを有する。マグネット部40は、フェライト又は金属等の磁性材料と樹脂とを含むプラスチック磁石であり、通常のプラスチックと同様に比較的自由な形状に成形することができる。マグネット部40の具体的材質、製造方法等は特に限定されないが、マグネット部40は、マグネット部40に含まれる磁性材料中の磁化容易軸が揃えられた異方性磁石であることが好ましい。
【0034】
第1マグネット部分43と第2マグネット部分45とは一体に繋がっており、また、マグネット部40並びにこれを構成する第1マグネット部分43及び第2マグネット部分45は、レンズの周方向に連続している額縁形状を有している。
【0035】
断面図である図6に示すように、マグネット部40の第1マグネット部分43及び第2マグネット部分45は、磁化の方向が光軸方向と垂直方向である。また、第1マグネット部分43と第2マグネット部分45とは、互いに異なる磁区を構成している。さらに、第2マグネット部分45は、マグネット部40における光軸方向の出射側端部に位置する第2端部45bと、第2端部45bと第1マグネット部分43との間に位置しており、第1マグネット部分43及び第2端部45bとは異なる磁区を構成する第2中間部とを有する。したがって、マグネット部40における磁化の方向は、第1マグネット部分43と第2中間部45cとで反対方向であり、第2中間部45cと第2端部45bとで反対方向である。
【0036】
図2に示すように、レンズホルダ50は、中空無底の円筒形状を有しており、レンズホルダ50の内周面にはレンズ(不図示)が固定される。レンズホルダ50には、入射側スプリング30の内環部34が固定される入射側内環設置部54と、出射側スプリング60の内環部64が固定される出射側内環設置部56(図5参照)とが形成されている。
【0037】
第1コイル80は、レンズホルダ50の外周部に形成されているコイル設置部52に固定されており、第1コイル80を構成する巻線がレンズホルダ50の外周面とマグネット部40の内周面である第1面43aとの間を周回するように配置されている。第1コイル80を構成する巻線の端部は、入射側スプリング30を構成する入射側スプリングR30a及び入射側スプリングL30bに電気的に接続されており、第1コイル80には、入射側スプリング30を介して、レンズホルダ50をマグネット部40に対して光軸α方向に相対移動させるための電力が供給される。
【0038】
出射側スプリング60は、入射側スプリング30と同様に、マグネット部40とレンズホルダ50とを弾性的に接続する。出射側スプリング60は、外環部62と、内環部64と、アーム部66とからなる多重のリング形状を有している。
【0039】
図3に示すように、出射側スプリング60の外周部分を構成する外環部62は、マグネット部40の出射側端面である第2面45aに固定される。図5に示すように、第2面45aは、マグネット部40において最も出射側に位置する第2面凸部45aaと、第2面凸部45aaより第2コイル82aに対して離間するように光軸方向に凹んでいる第2面凹部45abとを有する。第2面凹部45abには、出射側スプリング60を位置決めするための凸部である出射側位置決め部46が設けられており、出射側位置決め部46が、外環部62に形成された貫通孔62aに係合することにより、出射側スプリング60がマグネット部40に対して位置決めされる。出射側スプリング60の外環部62は、マグネット部40に対して接着等により固定されても良いが、出射側位置決め部46が凸部である場合、外環部62は、出射側位置決め部46をカシメることにより、マグネット部40に固定されても良い。
【0040】
出射側スプリング60の内環部64は、レンズホルダ50の出射側内環設置部56(図5参照)に、接着等により固定される。出射側スプリング60における外環部62と内環部64とは、アーム部66によって連結されている。
【0041】
出射側スプリング60は、入射側スプリング30と同様に、金属等の弾性材料によって構成されており、アーム部66は弾性変形することができる。出射側スプリング60の内環部64は、入射側スプリング30と同様に、アーム部66が弾性変形することにより、外環部62に対して光軸α方向に相対移動することができる。
【0042】
図4は、図2に示すベース部19の詳細分解斜視図である。ベース部19は、サスペンションワイヤ84と、FPコイル82と、シート部材72と、FPC74と、ホールセンサ76と、ボトム78とを有する。サスペンションワイヤ84は、レンズ保持ユニット18を、ベース部19に対して光軸方向と垂直な方向へ相対移動可能に連結する。サスペンションワイヤ84の出射側端部は、FPコイル82の4角に連結されている。サスペンションワイヤ84は、りん青銅等の金属材料によって作製することができるが、サスペンションワイヤ84の材質は特に限定されない。
【0043】
4本のサスペンションワイヤ84のうち少なくとも2本は通電可能であり、図3に示す入射側スプリング30を介して第1コイル80に電力を供給することができる。給電経路として用いられるサスペンションワイヤ84は、FPC74に対して、電気的に接続されている。
【0044】
ボトム78の入射側表面には、FPコイル82(フレキシブルプリントコイル)、シート部材72及びFPC74(フレキシブルプリント基板)からなる3つのシート状の部材が、光軸方向に重ねられて配置される。FPコイル82は、先に述べた3つの部材の中で最も上面(入射側)に配置され、図6に示すように、マグネット部40の第2面45aに対向する。FPコイル82は、ベースフィルムに覆われた4つの第2コイル82aを有しており、4つの第2コイル82aは、図5に示す4つの第2面凸部45aaに対向するように、FPコイル82の周方向に沿って配置されている。
【0045】
FPC74は、ボトム78の入射側表面に固定されており、FPC74の入射側表面には、シート部材72を介してFPコイル82が固定される。シート部材72は、FPC74とFPコイル82の間で電気的なノイズが発生することを防止するために設けられている。FPC74には、第1コイル80及び第2コイル82aの電流値を制御等するための電子回路が形成されており、FPC74の端部には、外部の制御回路との信号の送受信や、電力の供給を行うための外部端子が形成されている。
【0046】
ボトム78は、レンズ保持ユニット18を支持するための剛性をベース部19に与えるフレームの役割を有しており、樹脂等で形成されている。ボトム78の入射側表面には、レンズ保持ユニット18の光軸方向に垂直な方向への移動を検出するための移動検出部としてのホールセンサ76が設置されている。ベース部19は、光軸に直交する2方向の位置を検出するために2つのホールセンサ76を有しており、それぞれのホールセンサ76は、第2マグネット部分45により形成された磁場の変化を好適に検出できるように、第2面凸部45aaの出射側に配置される。ベース部19に含まれるFPコイル82、シート部材72、FPC74及びボトム78の中央部には、レンズから出射した光を通過させるための孔が形成されている。
【0047】
図6に示すように、レンズホルダ50に固定された第1コイル80は、第1マグネット部分43の第1面43aに対向しており、第1コイル80と第1マグネット部分43により、フォーカス動作を行うボイスコイルモータを構成する。すなわち、第1コイル80に電流を流すことにより、第1コイル80と第1マグネット部分43との相互作用によって、第1面43aの延在する方向と平行な光軸方向へ、レンズホルダ50を移動させることができる。
【0048】
ベース部19の一部であるFPコイル82に含まれる第2コイル82aは、第2マグネット部分45の第2面45aに対向しており、第2コイル82aと第2マグネット部分45により、手振れ補正動作を行うボイスコイルモータを構成する。すなわち、第2コイル82aに電流を流すことにより、第2コイル82aと第2マグネット部分45との相互作用によって、第2面45aの延在する方向と平行である光軸方向に垂直な方向へ、レンズ保持ユニット18全体(図2参照)を移動させることができる。この際、ベース部19に備えられるホールセンサ76は、主として第2マグネット部分45によって形成される磁場の変化を検出することにより、レンズ保持ユニット18の光軸方向に垂直な方向に関する位置を検出する。
【0049】
レンズ保持装置10は、マグネット部40が互いに垂直な第1面43aと第2面45aとを有し、第1面43a及び第2面45aに対向するように第1コイル80及び第2コイル82aを配置する構成であるため、レンズの径方向に関して装置のサイズを小さくすることが可能であり、小型化の点で有利である。また、第1マグネット部分43と第2マグネット部分45とは一体に繋がっているが、互いに異なる磁区を構成しているため、組み立てが容易でありながら、第1コイル80及び第2コイル82aの周辺に強い磁場を形成することが可能である。これにより、フォーカス動作や手振れ補正動作を行うボイスコイルモータの駆動力を高めることができる。
【0050】
また、マグネット部40は、第1マグネット部分43と第2マグネット部分45とが光軸方向に繋がっており、かつ周方向に連続する一体形状であるため、組み立てが容易であるとともに、駆動力を発生する方向とは逆方向に第1コイルを鎖交する磁場が発生することを防止できる。また、マグネット部40が入射側位置決め部44と出射側位置決め部46とを含む複数の位置決め部44,46を有することにより、入射側スプリング30と出射側スプリング60とが、同一の部材であるマグネット部40に対して位置決めされる。これにより、レンズ保持装置10は、入射側スプリング30と出射側スプリング60との間の同軸度を高めることが可能であり、レンズホルダ50及びレンズが傾いたり斜めに移動したりする問題を低減できる。また、レンズホルダ50及びレンズを精度良く位置決めできるため、レンズのチルト調整工程等を省略若しくは簡略化することが可能であり、レンズ保持装置10は、組み立てが容易である。また、マグネット部40が射出成形等により一体に成形されることは、スプリング30,60の同軸度を高める観点からさらに好ましい。
【0051】
また、図5に示すように、第2面45aが第2面凹部45abを有し、第2面凹部45abに出射側スプリング60の外環部62を固定することにより、レンズ保持装置10全体の光軸方向の長さを短縮することができるため、低背化に対して有利である。
【0052】
その他の実施形態
レンズ保持装置10に含まれるマグネット部40やスプリング30,60の形状等は、レンズ保持装置10に対して要求される仕様に応じて適宜調整され得る。また、図7に示すように、レンズ保持装置10に含まれるマグネット40Aは、別々に成形された額縁状の第1マグネット部分143と第2マグネット部分145とを、接着等によって一体化されたものであっても良い。また、第2マグネット部分45は、磁化の方向が互いに反対方向である第2中間部45cと第2端部45bを有するものに限られず、第1マグネット部分43と異なる磁区を構成するものであれば特に限定されない。
【0053】
また、マグネット部とスプリング30,60の取り付け方法は、接着やカシメに限定されず、入射側スプリング30又は出射側スプリング60を金型内に位置決めし射出成形することによりマグネット部を形成することにより、スプリング60がマグネット部に取り付けられても良い。この場合も、スプリング30,60は、マグネットに対して高精度に位置決め及び固定される。さらに、ベース部19によるレンズ保持ユニット18の支持構造もサスペンションワイヤを用いる構造に限定されず、光軸に垂直なX方向とY方向にスライドするスライド面を有する構造など、その他の構造が採用されても良い。
【符号の説明】
【0054】
10…レンズ保持装置
18…レンズ保持ユニット
19…ベース部
30…入射側スプリング
60…出射側スプリング
30a…入射側スプリングR
30b…入射側スプリングL
40…マグネット部
43…第1マグネット部分
43a…第1面
44…入射側位置決め部
45…第2マグネット部分
45a…第2面
45aa…第2面凸部
45ab…第2面凹部
45b…第2端部
45c…第2中間部
46…出射側位置決め部
50…レンズホルダ
80…第1コイル
82a…第2コイル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7