【実施例1】
【0010】
図1は、本発明による雑音低減装置付きヘッドフォン(以下、ノイズキャンセルヘッドフォンともいう。)HSの一例を示す図である。
【0011】
図1に示すように、ノイズキャンセルヘッドフォンHSは、イヤーパッド1A及び1B、ヘッドバンド2、マイク3A及び3B、雑音低減装置付き増幅部(以下、雑音キャンセル増幅部という。)4、外部マイク5、光センサ6、スピーカ7A及び7B、プラグ8、学習モニタLED9a及び9bから構成される。イヤーパッド1A内にはマイク3A及スピーカ7Aが設置されており、イヤーパッド1B内にはマイク3B及スピーカ7Bが設置されている。また、ヘッドバンド2には、外部マイク5及び光センサ6が設置されている。
【0012】
マイク3Aは、イヤーパッド1A内で集音(検出)して得られた信号をパッド内音信号AX
1として雑音キャンセル増幅部4に供給する。すなわち、マイク3Aは、イヤーパッド1Aの外部からこのイヤーパッド1A内に漏れ込む外部音と、スピーカ7Aで音響出力された音とを集音してパッド内音信号AX
1を生成し、これを雑音キャンセル増幅部4に供給するのである。マイク3Bは、イヤーパッド1B内で集音して得られた信号をパッド内音信号AX
2として雑音キャンセル増幅部4に供給する。すなわち、マイク3Bは、イヤーパッド1Bの外部からこのイヤーパッド1B内に漏れ込む外部音と、スピーカ7Bで音響出力された音とを集音(検出)してパッド内音信号AX
2を生成し、これを雑音キャンセル増幅部4に供給するのである。
【0013】
外部マイク5は、イヤーパッド1A及び1Bの外部の音を集音して得られた信号を外部音信号AZとして雑音キャンセル増幅部4に供給する。
【0014】
光センサ6は、その周辺の照度を検出し照度を表す照度信号ALを雑音キャンセル増幅部4に供給する。
【0015】
スピーカ7Aは、雑音キャンセル増幅部4から供給された増幅オーディオ信号G
1に応じた音響出力をイヤーパッド1A内において行う。スピーカ7Bは、雑音キャンセル増幅部4から供給された増幅オーディオ信号G
2に応じた音響出力をイヤーパッド1B内において行う。
【0016】
プラグ8は、オーディオ装置(図示しない)のライン出力端子に接続されることにより、このオーディオ装置から供給された2チャンネル分のオーディオ信号の内で、右チャンネルに対応したものを入力オーディオ信号AUD
1、左チャンネルに対応したものを入力オーディオ信号AUD
2として雑音キャンセル増幅部4に供給する。尚、オーディオ装置とは、例えばCD(compact disc)、DVD(Digital Versatile Disc)、半導体メモリ、磁気ディスク等に記録されている楽曲又は会話音声を表すオーディオ信号を再生、或いは、放送波(ラジオ、テレビジョン)中の楽曲又は会話音声を表すオーディオ信号を受信復調して、これを上記ライン出力端子を介して出力するものを例示することができる。
【0017】
学習モニタLED9aは、緑色発光を行うLED(Light Emitting Diode)であり、雑音キャンセル制御部4から供給された緑色発光制御信号LD
Gに応じて、点灯、点滅又は消灯状態となる。学習モニタLED9bは、赤色発光を行うLEDであり、雑音キャンセル制御部4から供給された赤色発光制御信号LD
Rに応じて、点灯、点滅又は消灯状態となる。
【0018】
雑音キャンセル増幅部4は、入力オーディオ信号AUD
1及びAUD
2をそれぞれ所望の増幅度で増幅したものを上記増幅オーディオ信号G
1及びG
2としてスピーカ7A及び7Bに供給しつつ、上記外部音信号AZ、照度信号AL、パッド内音信号AX
1及びAX
2に基づき入力オーディオ信号AUD
1及びAUD
2に対して雑音キャンセル処理を施す。
【0019】
図2は、かかる雑音キャンセル増幅部4の内部構成の一例を示す図である。
図2において、イコライザ(EQ)11は、マイク3Aから供給されたパッド内音信号AX
1の波形に対して、イヤーパッド1A内の音響空間及びマイク3Aの特性の影響に伴う変形を補正させるべき処理を施して得られたパッド内音信号CN
1をアンプ12に供給する。アンプ12は、パッド内音信号CN
1を増幅して得られたパッド内音信号CNQ
1を加算器13に供給する。可変抵抗器14は、プラグ8を介して供給された入力オーディオ信号AUD
1の信号レベルを、コントローラ30から供給された音量調整信号VRで示される音量レベルに調整して得られたオーディオ信号AUV
1をローパスフィルタ(LPF)15及びハイパスフィルタ(HPF)16の各々に供給する。ローパスフィルタ15は、上記のように音量調整処理の施されたオーディオ信号AUV
1中から可聴帯域以下の信号成分を抽出し、オーディオ信号AU
1として遅延素子17及び差動アンプ18の非反転入力端子にそれぞれ供給する。尚、ローパスフィルタ15のカットオフ周波数fcは、例えば40KHzである。遅延素子17は、オーディオ信号AU
1を所定期間だけ遅延させたものをオーディオ信号DAU
1として加算器13に供給する。尚、所定期間とは、スピーカ7Aから音響出力されたオーディオ信号AU
1に基づく音がマイク3Aで検出され、その信号成分が上記パッド内音信号CNQ
1に反映されるまでに費やされる期間である。加算器13は、上記パッド内音信号CNQ
1からオーディオ信号DAU
1を減算したものをパッド内雑音信号N
1として可変利得アンプ19に供給する。ここで、パッド内音信号CNQ
1とは、イヤーパッド1A内においてマイク3Aが検出した音である。つまり、パッド内音信号CNQ
1は、イヤーパッド1Aの外部からイヤーパッド1A内に漏れ込む外部音(雑音)と、オーディオ装置から供給されたオーディオ信号(AU
1、DAU
1)に応じてスピーカ7Aで音響出力された音との合成音を表す信号である。従って、上述したように、加算器13において、パッド内音信号CNQ
1からオーディオ信号DAU
1の減算を行うと、イヤーパッド1A内に漏れ込む外部音(雑音)のみを表す信号成分がパッド内雑音信号N
1として得られる。可変利得アンプ19は、パッド内雑音信号N
1を、コントローラ30から供給された利得指定信号VGで指定される利得で増幅したものをパッド内雑音信号NR
1として、差動アンプ18の反転入力端子に供給する。差動アンプ18は、上記オーディオ信号AU
1とパッド内雑音信号NR
1との差分に対応した信号を、スピーカを駆動し得るオーディオ信号に増幅したものをオーディオ信号G
1としてスピーカ7Aに供給する。これにより、オーディオ装置(図示しない)から供給されたオーディオ信号AU
1に基づく音と、イヤーパッド1Aの外部から漏れ込む雑音(NR
1)の逆位相の音(以下、逆位相雑音と称する)とが、スピーカ7Aからイヤーパッド1A内に音響出力されることになる。よって、イヤーパッド1A内では、イヤーパッド1Aの外部から漏れ込む雑音と、その逆位相雑音とが互いに相殺されることになり、ユーザは、オーディオ装置から供給されたオーディオ信号AU
1に基づく音だけを聴取することになる。
【0020】
イコライザ(EQ)21は、マイク3Bから供給されたパッド内音信号AX
2の波形に対して、イヤーパッド1B内の音響空間及びマイク3Bの特性の影響に伴う変形を補正させるべき処理を施して得られたパッド内音信号CN
2をアンプ22に供給する。アンプ22は、かかるパッド内音信号CN
2を増幅して得られたパッド内音信号CNQ
2を加算器23に供給する。可変抵抗器24は、プラグ8を介して供給された入力オーディオ信号AUD
2の信号レベルを、コントローラ30から供給された音量調整信号VRにて示される音量レベルに調整して得られたオーディオ信号AUV
2をローパスフィルタ25に供給する。ローパスフィルタ25は、上記のように音量調整処理の施されたオーディオ信号AUV
2中から可聴帯域以下の信号成分を抽出し、これをオーディオ信号AU
2として遅延素子27及び差動アンプ28の非反転入力端子にそれぞれ供給する。遅延素子27は、オーディオ信号AU
2を所定期間だけ遅延させたものをオーディオ信号DAU
2として加算器23に供給する。尚、所定期間とは、スピーカ7Bから音響出力されたオーディオ信号AU
2に基づく音がマイク3Bで検出され、その信号成分が上記パッド内音信号CNQ
2に反映されるまでに費やされる期間である。加算器23は、上記パッド内音信号CNQ
2からオーディオ信号DAU
2を減算したものをパッド内雑音信号N
2として可変利得アンプ29に供給する。ここで、パッド内音信号CNQ
2とは、イヤーパッド1B内においてマイク3Bが検出した音である。つまり、パッド内音信号CNQ
2は、イヤーパッド1Bの外部からイヤーパッド1B内に漏れ込む外部音(雑音)と、オーディオ装置から供給されたオーディオ信号(AU
2、DAU
2)に応じてスピーカ7Bで音響出力された音との合成音を表す信号である。従って、上述したように、加算器23において、パッド内音信号CNQ
2からオーディオ信号DAU
2の減算を行うと、イヤーパッド1B内に漏れ込む外部音(雑音)のみを表す信号成分がパッド内雑音信号N
2として得られる。可変利得アンプ29は、パッド内雑音信号N
2を、コントローラ30から供給された利得指定信号VGで指定される利得で増幅したものをパッド内雑音信号NR
2として、差動アンプ28の反転入力端子に供給する。差動アンプ28は、上記オーディオ信号AU
2とパッド内雑音信号NR
2との差分に対応した信号を、スピーカを駆動し得るオーディオ信号に増幅したものをオーディオ信号G
2としてスピーカ7Bに供給する。これにより、オーディオ装置(図示しない)から供給されたオーディオ信号AU
2に基づく音と、イヤーパッド1Bの外部から漏れ込む雑音(NR
2)の逆位相の音(以下、逆位相雑音と称する)とが、スピーカ7Bからイヤーパッド1B内に音響出力されることになる。よって、イヤーパッド1B内では、イヤーパッド1Bの外部から漏れ込む雑音と、その逆位相雑音とが互いに相殺されることになり、ユーザは、オーディオ装置から供給されたオーディオ信号AU
2に基づく音だけを聴取することになる。
【0021】
ハイパスフィルタ16は、上述のように音量調整処理の施されたオーディオ信号AUV
1中から、所定帯域以上の信号成分を抽出し、これをリミッタ40に供給する。尚、ハイパスフィルタ16のカットオフ周波数fcは、例えば100KHzである。リミッタ40は、かかる信号成分の上限レベルを所定レベルに制限させたオーディオ信号HAをコントローラ30に供給する。
【0022】
時刻タイマ31は、時刻を計時しつつ、現在時刻を表す時刻データTMをコントローラ30に供給する。A/D変換器32は、外部マイク5から供給された外部音信号AZをディジタル信号に変換し、得られたディジタル外部音信号ADZを周波数分析部33及びコントローラ30に供給する。周波数分析部33は、ディジタル外部音信号ADZに対して、所定の測定期間毎に高速フーリエ変換処理を施すことにより、周波数毎にそのパワーレベルを表す周波数スペクトルデータとして外部音周波数データFDを生成し、これをメモリ34に供給する。メモリ34は、所定測定期間毎に生成された外部音周波数データFDを順次取り込んで記憶しつつ、かかる外部音周波数データFDを取り込んだ順に読み出してコントローラ30に供給する。
【0023】
EPROM(erasable programmable read-only memory)35には、緊急車両のサイレン音、電車の踏切音、電話の呼び出し音、知人(家族を含む)からの呼びかけ声等のような、ノイズキャンセルヘッドフォンのユーザがその聞き取りを必要する各種の特定音毎に、その特定音の周波数スペクトルを表す特定音周波数データFが記憶されている。
【0024】
EPROM35は、例えば
図3に示すように、メーカ側が用意した各種の特定音毎にその特定音周波数データが予め記憶されているメーカ設定領域と、ユーザの指示に応じて作成(後述する)された各特定音毎の特定音周波数データが記憶されるユーザ設定領域とを備える。EPROM35のメーカ設定領域には、特定音として、例えば
図3に示すように、パトロールカーのサイレン音、消防車のサイレン音、救急車のサイレン音、及び電車の踏切音にそれぞれ対応した特定音周波数データF1〜F4が予め記憶されている。尚、特定音周波数データF1〜F4は、メーカ側において、上記したサイレン音及び踏切音の各々に対し、上記した周波数分析部23と同様な高速フーリエ変換処理を施すことにより得られたものであり、それぞれ、製品出荷前までにEPROM35に書き込まれる。一方、ユーザ設定領域には、例えば
図3に示すように、電話の呼び出し音、知人からの呼びかけ声、火災警報音にそれぞれ対応した特定音周波数データF5〜F8が記憶されている。尚、ユーザ設定領域に記憶されている特定音周波数データF5〜F8は、このノイズキャンセルヘッドフォンのユーザによって録音された特定音、例えば、このユーザが所有する電話器の呼び出し音、知り合いの呼びかけ声、火災警報音に基づき、後述するように、コントローラ30によって生成されたものである。
【0025】
操作部36は、ユーザからの各種操作を受け付け、その操作によって指示された動作を示す操作信号をコントローラ30に供給する。例えば、操作部36は、ユーザによる雑音キャンセル動作の開始指令操作、停止指令操作、或いは学習モードの開始指令操作を受け付け、その指示内容を表す操作信号をコントローラ30に供給する。又、操作部36は、ユーザによる音調調整操作を受け付け、その音量調整操作によって指定された音量レベルを示す音量操作信号をコントローラ30に供給する。この際、コントローラ30は、かかる音量操作信号によって示される音量レベルで、オーディオ装置から供給されたオーディオ信号を音響出力させるべく、この音量レベルを示す音量調整信号VRを可変抵抗器14及び24に供給する。
【0026】
バッテリ37は、ユーザによる電源スイッチ(図示しない)のオン操作に応じて、上述した雑音キャンセル増幅部4内の各素子を動作させるための各種電源電圧の供給を開始する一方、この電源スイッチのオフ操作に応じて、電源電圧の供給を停止する。また、バッテリ37は、コントローラ30から供給された電源オフ信号OFFに応じて、雑音キャンセル動作を司る回路ブロック、つまり
図2の一点鎖線にて囲まれている回路ブロック内の各素子に対する電源供給を停止する。この際、コントローラ30から供給された電源オン信号ONに応じて、かかる回路ブロック内の各素子に対する電源供給を開始する。
【0027】
すなわち、マイク3A,3B、イコライザ11,21、加算器13,21、遅延素子17,27、可変利得アンプ19,29、及び差動アンプ18,28が雑音キャンセル部を構成する。また、外部マイク5、周波数分析部33、メモリ34、EPROM35及びコントローラ30が特定音判断部を構成し、コントローラ30が雑音キャンセルの制御部として動作する。
【0028】
次に、コントローラ30が行う雑音キャンセルの制御動作についてフローチャートを参照して説明する。コントローラ30は、
図4に示す雑音キャンセル制御ルーチンに従って、この雑音キャンセル増幅部4における雑音キャンセル制御を行う。コントローラ30は、例えば
図4に示す雑音キャンセル制御ルーチンを実行する。
【0029】
図4において、先ず、コントローラ30は、EPROM35に記憶されている全ての特定音周波数データF1,F2,・・・,Fn(Fj:j=1〜n)を取り込む(ステップS0)。次に、コントローラ30は、イヤーパッド1A、1Bの外部から、このイヤーパッド内に漏れ込む雑音を除去させるべく、利得K
1を指定する利得指定信号VGを可変利得アンプ19,29にそれぞれ供給する(ステップS1)。ステップS1の実行により、可変利得アンプ19,29は、イヤーパッド内に漏れ込む外部音(雑音)を表すパッド内雑音信号N
1,N
2をそれぞれ上記利得K
1で増幅して得たパッド内雑音信号NR
1,NR
2を、差動アンプ18,28各々の反転入力端子に供給する。これにより、オーディオ装置から供給されたオーディオ信号AU,AU
2に基づく音と共に、外部からイヤーパッド内に漏れ込む雑音に対する逆位相雑音が、スピーカによってこのイヤーパッド内に音響出力されることになる(雑音キャンセル有効化)。これにより、イヤーパッド内では、外部からの雑音と、その逆位相雑音とが互いに相殺されることになり、ユーザは、オーディオ装置から供給されたオーディオ信号に基づく音だけを聴取することになる。
【0030】
次に、コントローラ30は、上記音量調整信号VRによって指定された音量レベルが所定の音量レベルV
THよりも大であるか否かを判定する(ステップS2)。尚、音量レベルV
THとは、ユーザが比較的大音量で音楽鑑賞(または外国語会話レッスン)を行う際に指定する音量レベル(例えば、最大音量の1/2の音量よりも大なる音量レベル)である。
【0031】
ステップS2において、音量調整信号VRにて指定された音量レベルが音量レベルV
THよりも大ではないと判定された場合、つまり、音量レベルV
THよりも小音量で音楽鑑賞が為されていると判定された場合、コントローラ30は、メモリ34から読み出された外部音周波数データFDを取り込む(ステップS3)。次に、コントローラ20は、外部音周波数データFDと、上記ステップS0で取り込んだ特定音周波数データF1〜Fnの各々との類似度を求め、各類似度を表す類似度NE1,NE2,・・・,NEn(NEj:j=1〜n)を生成する(ステップS4)。なお、類似度NE(NEj:j=1〜n)は、一般的な種々の方法により求めることができる。例えば、当該特定音の周波数範囲(類似区間)における周波数成分毎の強度比較(マッチング)を行う、あるいは、相互相関係数を算出すること等を含む種々の統計的方法によって求めることができる。
【0032】
次に、コントローラ20は、類似度NE1〜NEnの内で、所定の閾値THよりも大なる類似度が存在するか否かを判定する(ステップS5)。すなわち、ステップS5では、外部マイク5で検出された外部音が、EPROM35に記憶されている特定音周波数データF1〜Fnにて表される各種の特定音(例えば
図3に示すような緊急車両のサイレン音、電車の踏切音、知人からの呼びかけ声、火災警報音等)の内の1つに該当するか否かを判定する。ステップS5において、閾値THよりも大なる類似度NEが存在しないと判定された場合、つまり外部マイク5で検出された外部音がEPROM35に記憶されている特定音のいずれにも該当しないと判定された場合、コントローラ30は、ステップS1の実行に戻って前述した動作を繰り返し実行して、上記雑音キャンセル動作を継続する。
【0033】
一方、ステップS5において、閾値THよりも大なる類似度NEが存在すると判定された場合、或いはステップS2において音量調整信号VRにて示される音量レベルが、所定の音量レベルV
THよりも大であると判定された場合には、以下のステップS6を実行する。つまり、オーディオ信号AU
1,AU
2を音響出力させる際の音量が音量レベルV
THよりも大音量である場合、或いは、この音量が音量レベルV
THよりも小音量であるものの外部マイク5で検出された外部音がEPROM35に記憶されている特定音のいずれか1つに該当する場合には、コントローラ30は、上記利得K
1よりも小なる利得K
2を示す利得指定信号VGを可変利得反転アンプ19及び29に供給する(ステップS6)。
【0034】
ステップS6の実行により、可変利得アンプ19,29は、上記利得K
1よりも小なる増幅率を示す利得K
2で、パッド内雑音信号N
1,N
2を増幅することになる。これにより、イヤーパッド1A,1B内に漏れ込む雑音の大きさに対して、スピーカ7A,7Bから音響出力される逆位相雑音のレベルが小さくなるので、その分だけ、雑音に対するキャンセル量が低下する。尚、ステップS6では、利得K
2として利得「0」(ゼロ)を示す利得指定信号VGを可変利得アンプ19,29に供給するようにしても良い。要するに、上記ステップS6の実行により、雑音キャンセル動作を強制的に無効化させるのである。
【0035】
かかるステップS6の実行後、コントローラ30は、雑音キャンセル制御を停止させるべき停止指令操作がユーザによって為されたか否かの判定を行う(ステップS7)。ステップS7において停止操作が為されていないと判定された場合、コントローラ30は、上記ステップS2の実行に戻って前述した動作を繰り返し実行する。一方、停止操作が為されたと判定された場合、コントローラ30は、
図4に示す如き雑音キャンセル制御ルーチンを抜ける。これにより、雑音キャンセル動作が終了する。
【0036】
このように、上記ノイズキャンセルヘッドフォンでは、外部からイヤーパッド内に漏れ込む雑音をキャンセルしつつオーディオ信号をイヤーパッド1A,1B内に音響出力するにあたり、その再生音量が所定の音量レベルよりも大なる場合、または外部で所定の特定音が発せられた場合には、自動的に雑音キャンセル動作を無効化するようにしている。これにより、ユーザは、オーディオ装置から供給されたオーディオ信号に基づく音楽鑑賞(または外国語会話レッスン)中において、その音量を下げずとも、外部で発せられた電話の呼び出し音、知人の呼び掛け声、緊急車両のサイレン音、各種警告音等の特定音を聞き取ることが可能になる。更に、その音量が所定の音量レベルより大なる場合、すなわち比較的大音量で音楽(音声)鑑賞を行っている間は、例え雑音キャンセル動作を有効化していてもユーザは特定音を聞き取ることは出来ないので、雑音キャンセル動作を無効化している。よって、この間、雑音キャンセル動作を司る回路ブロック(
図2の一点鎖線にて囲まれている回路ブロック)で消費される電力消費量が低下するので、バッテリ37の持続時間に対して、ノイズキャンセルヘッドフォンの連続使用可能時間を延ばすことが可能となる。
【0037】
尚、上記実施例では、可変利得アンプ19,29の利得を、利得K
1(雑音キャンセル有効)と利得K
2(雑音キャンセル無効)の2段階で切り替えているが、イヤーパッド1A,1B内に漏れ込む特定音の大きさに追従させてその利得の値を変更することにより、雑音キャンセル量を調整するようにしても良い。つまり、コントローラ30は、外部マイク5で検出した外部音信号ADZ中から上記したような特定音を抽出し、その音の大きさを検出する。そして、コントローラ30は、この特定音が小なるほど、小なる利得を示す利得指定信号VGを可変利得アンプ(19,29)に供給することにより雑音キャンセル量を低下させるという制御を、
図4に示すステップS6に代えて実行するのである。かかる制御によれば、イヤーパッド1A,1B内で認識される特定音が小なるほど、雑音キャンセル量も低下するので、外部で発せられる特定音を聞き取ることができる程度に、常時、雑音キャンセル動作を有効化しておくことが可能となる。この際、音量調整後のオーディオ信号のレベルをも考慮して、
図5Aに示すように、特定音のレベルに応じて雑音キャンセル量を制御するようにしても良い。
【0038】
また、オーディオ装置から供給されたオーディオ信号を音響出力する際の音量が極めて小さい場合、つまりユーザが実質的に音楽(音声)を聞き取ることが出来ない程度の微小音量である場合には、雑音キャンセル動作は不要となる。そこで、
図5Bに示すように、オーディオ信号の音量レベルが所定期間(例えば10秒間)以上に亘り所定音量以下となった場合にも、上記ステップS6を実行して雑音キャンセル動作を強制的に無効化させるようにしても良い。
【0039】
また、上記実施例において、雑音の主成分の逆位相の音としては、入力された雑音から抽出しても良いし、又は予め特定の雑音(例えば、電車内の音)中の最大ピークを有する単一周波数の波形とその2次高調波等を、入力雑音と同期させて再生するようにしても良い。
【0040】
また、上記実施例では、ステップS2において、ユーザの音量調整操作によって指定された音量(VR)が音量レベルV
THよりも大であるか否かを判定しているが、音量調整前又は音量調整後のオーディオ信号のレベルが音量レベルV
THよりも大であるか否かを判定するようにしても良い。すなわち、コントローラ30は、オーディオ信号のピークまたは平均レベルを検出し、かかるピークまたは平均レベルが上記音量レベルV
THよりも大であるか否かを判定させるべき制御を、
図4に示すステップS2に代えて実行するのである。
【0041】
図6は、音量調整前のオーディオ信号(AUD
1、AUD
2)のレベルが音量レベルV
THよりも大であるか否かを判定する場合に採用される雑音キャンセル増幅部4の内部構成の他の一例を示す図である。尚、
図6に示す雑音キャンセル増幅部4においては、
図2に示す構成に、加算器41、A/D変換器42及びレベル検出器43を付加したものであるので、以下に、これら加算器41、A/D変換器42及びレベル検出器43の動作のみ説明する。
【0042】
加算器41は、プラグ8から供給された入力オーディオ信号AUD
1及びAUD
2同士を加算して得られたアナログオーディオ信号をA/D変換器42に供給する。A/D変換器42は、かかるアナログオーディオ信号をディジタルのオーディオ信号ADに変換して、これをレベル検出器43に供給する。レベル検出器43は、オーディオ信号ADにおけるピークレベル又は平均レベルを検出し、その検出レベルを音量レベルとして示す音量レベル検出信号ALDをコントローラ30に供給する。これにより、コントローラ30は、
図4に示すステップS2において、音量調整信号VRに代えて音量レベル検出信号ALDを用いて、音量レベル検出信号ALDのレベルが音量レベルV
THよりも大であるか否かを判定するのである。尚、上記ステップS2において、音量調整後のオーディオ信号のレベルと音量レベルV
THとを比較する場合には、加算器41において、可変抵抗器14及び24から夫々出力されたオーディオ信号AUV
1及びAUV
2同士を加算して得られたアナログオーディオ信号をA/D変換器42に供給する。
【0043】
また、上記実施例では、ステップS6において可変利得アンプ19,29の利得を利得K
1からK
2(またはゼロ)に低下させることにより、雑音キャンセル動作を無効化しているが、電源を切ることにより雑音キャンセル動作を無効化させるようにしても良い。つまり、コントローラ30は、電源オフ信号OFFをバッテリ37に供給することにより、雑音キャンセル動作を司る回路ブロック(
図2の一点鎖線にて囲まれている回路ブロック)内の各素子に対する電源供給を停止して雑音キャンセル動作を無効化させるという制御を、
図4に示すステップS6に代えて実行するのである。尚、かかる制御を実行する場合には、ステップS1の直前において、コントローラ30は、電源オフ信号ONをバッテリ37に供給することにより、雑音キャンセル動作を司る回路ブロック内の各素子に対する電源供給を開始させる。このような電源制御によれば、雑音キャンセル動作を無効化させている間は、雑音キャンセル動作を司る回路ブロックの電力消費量は0となるので、ノイズキャンセルヘッドフォンの連続使用可能時間を更に延ばすことが可能となる。
【0044】
また、上記実施例においては、検出した外部音が上述したような特定音であるか否かを判断する為に、特定音の周波数分析データをEPROM35に記憶しておくようにしているが、特定音の波形データをEPROM35に記憶しておくようにしても良い。かかる構成を採用した場合には、検出した外部音の波形と、EPROM35に記憶されている特定音の波形との類似度を求めることにより、検出した外部音が特定音であるか否かを判断する。ここで、特定音としての緊急車両サイレン音又は電車の踏切音等は各国毎に異なり、電話の呼び出し音、知人の呼びかけ声等はユーザ毎に異なる。そこで、雑音キャンセル増幅部4では、この特定音を記憶する記憶媒体としてEPROMなどの書き換え可能な媒体を採用している。よって、各国毎にその国独自の特定音を書き込んでおけば、各国に対応した製品を提供することが可能となり、更に、ユーザ毎の独自の特定音を随時、追加して書き込んでおくことが可能となる。
【0045】
図7は、ユーザ毎の独自の特定音をノイズキャンセルヘッドフォンに学習させてEPROM35に書き込むべく実施する学習モード制御ルーチンの一例を示す図である。
【0046】
コントローラ30は、ユーザからの学習モードの開始指令操作を受け付けた場合に、
図7に示す学習モード制御ルーチンに従った制御を開始する。先ず、コントローラ30は、点灯を示す緑色発光制御信号LD
Gを学習モニタLED9aに供給する(ステップS10)。ステップS10の実行により、学習モニタLED9aは点灯し、緑色で発光する。これにより、ユーザに対して学習処理の準備が出来た旨を知らせる。ここで、ユーザは、学習対象とする特定音、例えば、自身が所有する携帯電話機の呼び出し音を外部マイク5にて集音させる。この間、コントローラ30は、外部音信号ADZに基づき、音声入力が為されたか否かの判定を行う(ステップS11)。ステップS11において、音声入力が為されていないと判定された場合、コントローラ30は、上記ステップS10の実行に戻って前述した如き動作を繰り返し実行する。一方、かかるステップS11において音声入力が為されていると判定された場合、コントローラ30は、点滅を示す緑色発光制御信号LD
Gを学習モニタLED9aに供給する(ステップS12)。ステップS12の実行により、学習モニタLED9aは緑色で発光する状態及び消灯する状態を繰り返す、いわゆる点滅状態となる。これにより、ユーザに対して学習処理の実行中である旨を知らせる。この間、周波数分析部33は、外部マイク5にて集音して得られたディジタル外部音信号ADZに対して、所定の測定期間毎に高速フーリエ変換処理を施すことにより、周波数毎にそのパワーレベルを表す周波数スペクトルデータとして外部音周波数データFDを生成し、これをメモリ34に供給する。すなわち、ユーザから提供された特定音に対する周波数分析結果としての外部音周波数データFDがメモリ34に記憶される。ここで、コントローラ30は、メモリ34から読み出された外部音周波数データFD、つまり、ユーザから提供された特定音に対する周波数分析結果を取り込む(ステップS13)。次に、コントローラ30は、この外部音周波数データFDに基づきその特定音に対する特徴量を算出する(ステップS14)。次に、コントローラ30は、ステップS14において算出された特徴量が、
図3に示す如き、EPROM35に記憶済みの各種特定音に対応した特徴量とは異なる新たな特徴量であるか否かの判定を行う(ステップS15)。ステップS15において新たな特徴量であると判定された場合、コントローラ30は、上記ステップS13において取り込んだ外部音周波数データFDを新たな特定音周波数データとして、EPROM35のユーザ設定領域に記憶する(ステップS16)。ステップS16の実行後、コントローラ30は、点灯を示す緑色発光制御信号LD
Gを学習モニタLED9aに供給する(ステップS17)。ステップS17の実行により、学習モニタLED9aは点滅状態から点灯状態に遷移し、ユーザに対して特定音の学習が成功裏に終了した旨を知らせる。一方、上記ステップS15において新たな特徴量ではないと判定された場合、コントローラ30は、点灯を示す赤色発光制御信号LD
Rを学習モニタLED9bに供給する(ステップS18)。ステップS18の実行により、学習モニタLED9bが点灯し、赤色で発光する。これにより、ユーザに対して特定音の学習が失敗した旨を知らせる。上記ステップS17又はS18の終了後、コントローラ30は、
図7に示す学習モード制御ルーチンを抜けて、この学習モードの動作を終了する。
【0047】
また、上記実施例では、
図4に示すステップS3〜S5において、EPROM35に記憶されている全ての特定音を対象として、その特定音が外部で発せられたか否かを判定するようにしているが、ノイズキャンセルヘッドフォンを使用している環境に応じて、判定対象とすべき特定音を絞り込むようにしても良い。例えば、コントローラ30は、まず、時刻タイマ31から供給された時刻データTMにて示される現在時刻、及び光センサ6から供給された照度信号ALにて示される周辺の照度に基づいて、ノイズキャンセルヘッドフォンの使用環境が室内であるか室外であるかを判定する。この際、室内であると判定された場合、コントローラ30は、
図3に示すようにEPROM35に記憶されている特定音周波数データF1〜Fnの内で、室内でその聞き取りを必要とする特定音、例えば火災警報音、家族からの呼びかけ声、及び電化製品の警告音に対応した特定音周波数データFのみを対象として
図4に示すステップS3〜S5を実行する。一方、室外であると判定された場合には、コントローラ30は、
図3に示すようなEPROM35に記憶されている特定音周波数データF1〜Fnの内で、室外でその聞き取りを必要とする特定音、例えば緊急車両のサイレン音、及び電車の踏切音に対応した特定音周波数データFのみを対象として
図4に示すステップ3〜S5を実行する。
【0048】
また、
図2に示される構成において、イコライザ11(21)及び遅延素子17(27)の機能を1つの伝達関数で表すような構成を採用しても良い。すなわち、この伝達関数に対応したフィルタリング処理をオーディオ信号AU
1,AU
2にそれぞれ施すことにより、パッド内音信号AX
1,AX
2に重畳されているオーディオ信号成分を抽出し、これをパッド内音信号AX
1,AX
2から減算したものをパッド内雑音信号N
1,N
2として可変利得アンプ19,29に供給するのである。
【0049】
以上、説明したように、電話の呼び出し音、知人からの呼びかけ声等の特定音を検出した場合には、自動的に雑音キャンセル動作を無効化、あるいは当該特定音を聞き取ることができる程度に雑音キャンセル量を低減させる調整を行うので、ユーザは、鑑賞中の音楽(音声)を停止又はその音量を低下させることなく、かかる特定音を良好に聞き取ることが可能となる。更に、ユーザが比較的大音量で音楽(音声)鑑賞を行っている場合には、雑音キャンセルを行う必要がないことから、この際、自動的に雑音キャンセル動作を無効化させることにより、この雑音キャンセル動作に伴う電力消費を抑制させて、バッテリ駆動による連続使用可能時間の引き延ばしを図るようにしている。
【0050】
なお、
図1に示すノイズキャンセルヘッドフォンでは、イヤーパッド1A,1Bの外部からこのイヤーパッド内に漏れ込む雑音を検出する為に、マイク3A、3Bをイヤーパッド内に設けるようにしているが、これらマイク3A、3Bをイヤーパッドの外部に設けるようにしても良い。
【実施例2】
【0051】
本実施例2においては、上記のようなマイク3A、3Bをイヤーパッド1A,1Bの外部に設けた場合のノイズキャンセルヘッドフォンの構成について説明する。
【0052】
図8は、実施例2におけるノイズキャンセルヘッドフォンHSの構成を示す図である。
図8に示すノイズキャンセルヘッドフォンHSでは、イヤーパッド1A内にはスピーカ7Aが設置されており、イヤーパッド1Aの外部にマイク3Aが設置されている。尚、
図8に示すヘッドバンド2、外部マイク5、光センサ6、及びスピーカ7A,7Bについては、
図1に示すものと同一である。この際、マイク3Aは、イヤーパッド1Aの外部においてその周辺の音を検出して得られたパッド外音信号AY
1を雑音キャンセル増幅部4に供給する。マイク3Bは、イヤーパッド1Bの外部においてその周辺の音を検出して得られたパッド外音信号AY
2を雑音キャンセル増幅部4に供給する。
【0053】
図9は、
図8に示すノイズキャンセルヘッドフォンにおいて採用される雑音キャンセル増幅部4の構成の他の一例を示す図である。尚、
図9に示す雑音キャンセル増幅部4においては、
図2の一点破線にて囲まれた回路ブロック及び差動アンプ18,28に代わり、イコライザ51,61、可変利得反転アンプ52,62、イコライザ53,63、加算器54,64及びアンプ55,65を採用したものであり、その他の構成は、
図2に示すものと同一である。よって、以下に、これらモジュールを中心に、
図9に示す雑音キャンセル増幅部4の動作について説明する。
【0054】
イコライザ(EQ)51は、マイク3Aから供給されたパッド外音信号AY
1に対して、その外部音がイヤーパッド1Aの内部に漏れ込んだ際に得られるであろうパッド内音信号を求めるべき減衰処理を施して得られたパッド内音信号CN
1を可変利得反転アンプ52に供給する。可変利得反転アンプ52は、パッド内音信号CN
1の極性を反転させた信号を、コントローラ30から供給された利得指定信号VGで指定される利得で増幅して得られた逆位相パッド内雑音信号CR
1をイコライザ(EQ)53に供給する。イコライザ53は、逆位相パッド内雑音信号CR
1に対して、回路内部での減衰及び遅延分を補償すべき処理を施して得られた逆位相パッド内雑音信号CT
1を加算器54に供給する。加算器54は、ローパスフィルタ15から供給されたオーディオ信号AU
1に、上記逆位相パッド内雑音信号CT
1を重畳させたオーディオ信号をアンプ55に供給する。アンプ55は、かかるオーディオ信号をスピーカを駆動し得るオーディオ信号に増幅したオーディオ信号G
1をスピーカ7Aに供給する。これにより、スピーカ7Aは、オーディオ装置から供給されたオーディオ信号に、イヤーパッド1A内に漏れ込む雑音の位相を逆転させた逆位相雑音を重畳させた音を、このイヤーパッド1A内に音響出力する。
【0055】
イコライザ(EQ)61は、マイク3Bから供給されたパッド外音信号AY
2に対して、その外部音がイヤーパッド1Bの内部に漏れ込んだ際に得られるであろうパッド内音信号を求めるべき減衰処理を施して得られたパッド内音信号CN
2を可変利得反転アンプ62に供給する。可変利得反転アンプ62は、パッド内音信号CN
2の極性を反転させた信号を、コントローラ30から供給された利得指定信号VGで指定される利得で増幅して得られた逆位相パッド内雑音信号CR
2をイコライザ(EQ)63に供給する。イコライザ63は、逆位相パッド内雑音信号CR
2に対して、回路内部での減衰及び遅延分を補償すべき処理を施して得られた逆位相パッド内雑音信号CT
2を加算器64に供給する。加算器64は、ローパスフィルタ25から供給されたオーディオ信号AU
2に、上記逆位相パッド内雑音信号CT
2を重畳させたオーディオ信号をアンプ65に供給する。アンプ65は、かかるオーディオ信号をスピーカを駆動し得るオーディオ信号に増幅したオーディオ信号G
2をスピーカ7Bに供給する。これにより、スピーカ7Bは、オーディ装置から供給されたオーディオ信号に、イヤーパッド1B内に漏れ込む雑音の位相を逆転させた逆位相雑音を重畳させた音を、このイヤーパッド1B内に音響出力する。
【0056】
このように、
図8及び
図9に示される構成では、マイク3A,3Bをイヤーパッド1A,1Bの外部にそれぞれ設置する。そして、マイク3A,3Bで検出した外部音に基づき、イヤーパッド内に漏れ込むであろうパッド内音信号CN
1,CN
2、つまり雑音成分を求め、その逆位相の音をオーディオ信号と共にイヤーパッド内で音響出力させることにより雑音キャンセルを行うようにしている。
【0057】
一方、実施例1では、上記した雑音成分のみならずオーディオ装置からの再生音もマイク3A,3Bで検出してしまう。そこで、マイク3A,3Bで検出して得られたパッド内音信号AX
1,AX
2中に混入してしまった再生音の成分を、オーディオ装置から送出されたオーディオ信号に基づいて求め、これをパッド内音信号AX
1,AX
2から除去する(フィードバック方式)ことにより雑音成分を求め、この雑音成分についてキャンセルを行う構成となっている。
【0058】
本実施例2では、マイク3A,3Bで検出された外部音に基づき、イヤーパッド1A,1B内に漏れ込むであろう雑音成分を直接求めるというフィードフォワード方式の構成を採用している。従って、フィードバック方式に比して、遅延に伴う位相ずれ量が少なくなるので、より高精度(広帯域)に雑音キャンセルを行うことが可能となる。
【0059】
尚、
図9に示す雑音キャンセル増幅部4においても、
図2又は
図6に示すものと同様に、コントローラ30が
図4に示す雑音キャンセル制御処理を実行することにより、外部で所定の特定音が発せられた場合、並びに所定音量よりも大音量で音楽(音声)鑑賞を行っている場合には、自動的に雑音キャンセル動作を無効化するようにしている。これにより、
図2に示す構成を採用した場合と同様に、ユーザは、鑑賞中の音楽(音声)を停止又はその音量を低下させることなく、かかる特定音を良好に聞き取ることが可能となる。更に、ユーザが比較的大音量で音楽(音声)鑑賞を行っている場合には、雑音キャンセルを行う必要がないことから、この際、自動的に雑音キャンセル動作を無効化させることにより、この雑音キャンセル動作に伴う電力消費を抑制させて、バッテリ駆動による連続使用可能時間の引き延ばしを図るようにしている。