(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5765421
(24)【登録日】2015年6月26日
(45)【発行日】2015年8月19日
(54)【発明の名称】脆性的な部材を切断する装置、方法、および切断された脆性的な部材
(51)【国際特許分類】
B23K 26/38 20140101AFI20150730BHJP
B23K 26/16 20060101ALI20150730BHJP
B23K 26/40 20140101ALI20150730BHJP
B23K 26/60 20140101ALI20150730BHJP
C03B 33/09 20060101ALI20150730BHJP
【FI】
B23K26/38 A
B23K26/16
B23K26/40
B23K26/60
C03B33/09
【請求項の数】11
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-522838(P2013-522838)
(86)(22)【出願日】2012年6月25日
(86)【国際出願番号】JP2012066118
(87)【国際公開番号】WO2013002165
(87)【国際公開日】20130103
【審査請求日】2013年10月2日
(31)【優先権主張番号】特願2011-143035(P2011-143035)
(32)【優先日】2011年6月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】山田 淳一
(72)【発明者】
【氏名】河口 紀仁
(72)【発明者】
【氏名】和田 芳幸
(72)【発明者】
【氏名】久住 智勇
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 敬晃
(72)【発明者】
【氏名】中山 雄一朗
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 俊明
【審査官】
青木 正博
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−049375(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00−26/70
C03B 33/09
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
脆性的な部材を切断する装置であって、
前記部材上の第1の領域にレーザ光を第1の空間を通して照射するべく構成されたレーザ発振器と、
前記第1の領域とは異なる第2の領域に冷却媒体を噴射するべく構成された冷却ノズルと、
前記部材に対して間隙を有するべく且つ前記第1の空間を囲まない状態に置くべく配置され、前記第2の領域からの飛沫及びミストの流れを前記第1の空間から逸らすように向けられたバッフルと、
前記間隙に向けて気体を噴射するべく構成された気体ノズルと、
を備え、
前記バッフルは前記間隙に向いたテーパ端を備える装置。
【請求項2】
請求項1に記載された装置であって、前記バッフルは、平板、閉じていない曲面板、および前記冷却ノズルを囲むべく寸法づけられた円筒板、よりなる群より選択された一である装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載された装置であって、前記第1の領域から前記第2の領域へ向かう方向に沿って前記気体を方向づける配置と、前記第1の領域から前記第2の領域へ向かう方向に対して0度を越えて90度未満の角度を有する方向に前記気体を方向づける配置と、よりなる群より選択された何れかの配置に、前記気体ノズルが置かれている装置。
【請求項4】
請求項1ないし3の何れか1項に記載された装置であって、前記冷却ノズルは、前記部材の表面に対して直交する方向と、前記部材の表面に対して前記第1の領域へ0度を越えて90度未満に傾いた方向と、よりなる群より選択された何れかの方向から前記冷却媒体を噴射するべく配置されている装置。
【請求項5】
脆性的な部材を切断する装置であって、
前記部材上の第1の領域にレーザ光を第1の空間を通して照射するべく構成されたレーザ発振器と、
前記第1の領域とは異なる第2の領域に冷却媒体を噴射するべく構成された冷却ノズルと、
前記部材に対して間隙を有するべく且つ前記第1の空間を囲まない状態に置くべく配置され、前記第2の領域からの飛沫及びミストの流れを前記第1の空間から逸らすように向けられたバッフルと、
前記間隙に向けて気体を噴射するべく構成された気体ノズルと、
を備え、
前記気体ノズルは前記バッフルに内蔵されている装置。
【請求項6】
脆性的な部材を切断する方法であって、
レーザ発振器より前記部材上の第1の領域にレーザ光を第1の空間を通して照射し、
冷却ノズルより前記第1の領域とは異なる第2の領域に冷却媒体を噴射し、
前記部材に対して間隙を有し且つ前記第1の空間を囲まない状態に置くバッフルを、前記第2の領域からの飛沫及びミストの流れを前記第1の空間から逸らすように向け、
前記バッフルに前記間隙に向いたテーパ端を設け、
気体ノズルより前記間隙に向けて気体を噴射する、
ことよりなる方法。
【請求項7】
請求項6に記載された方法であって、前記バッフルを、平板、閉じていない曲面板、および前記冷却ノズルを囲むべく寸法づけられた円筒板、よりなる群より選択された一とすることを、さらに含む方法。
【請求項8】
請求項6または7に記載された方法であって、前記第1の領域から前記第2の領域へ向かう方向に沿って前記気体を方向づける配置と、前記第1の領域から前記第2の領域へ向かう方向に対して0度を越えて90度未満の角度を有する方向に前記気体を方向づける配置と、よりなる群より選択された何れかの配置に、前記気体ノズルを置くことを、さらに含む方法。
【請求項9】
請求項6ないし8の何れか1項に記載された方法であって、前記冷却ノズルを、前記部材の表面に対して直交する方向と、前記部材の表面に対して前記第1の領域へ0度を越えて90度未満に傾いた方向と、よりなる群より選択された何れかの方向から前記冷却媒体を噴射するべく配置することを、さらに含む方法。
【請求項10】
脆性的な部材を切断する方法であって、
レーザ発振器より前記部材上の第1の領域にレーザ光を第1の空間を通して照射し、
冷却ノズルより前記第1の領域とは異なる第2の領域に冷却媒体を噴射し、
前記部材に対して間隙を有し且つ前記第1の空間を囲まない状態に置くバッフルを、前記第2の領域からの飛沫及びミストの流れを前記第1の空間から逸らすように向け、
気体ノズルを前記バッフルに内蔵し、
前記気体ノズルより前記間隙に向けて気体を噴射する、
ことよりなる方法。
【請求項11】
請求項6乃至10の何れか1項に記載された方法により切断された脆性的な部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラスのごとき脆性的な部材を切断する装置、方法、および切断された脆性的な部材に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス板のごとき脆性的な部材は、切断工具によらなくても、熱的ショックを与えることによっても切断することができる。例えば、レーザ光のごとき局所的加熱手段によってガラス板に熱を印加し、かかる局所加熱を受けた部位に冷却媒体を噴射することによって熱的ショックが与えられると、かかる熱的ショックを受けた部位は劈開を起こす。そこで、レーザ光の照射を受ける領域と冷却媒体の噴射を受ける領域とを適宜に近づけ、ガラス板を前者の領域から後者の領域に向けて適宜の速度で送れば、熱的ショックを受ける領域が直線的に延びることとなるので、ガラス板はかかる直線に沿って切断される。
【0003】
特許文献1は、関連する技術を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】日本国特許出願公開2008−49375号
【発明の概要】
【0005】
冷却媒体の飛沫又はミスト、あるいはガラス板上を流れる廃液は、レーザ光が通過する領域に侵入することによりレーザ光を吸収してしまう。その分を補償するためにレーザ発振器の出力を調整する必要があり、これは工程管理の労を増大し、またより大出力のレーザ発振器を必要とする要因である。
【0006】
本発明は上述の問題に鑑みて為されたものである。本発明の第1の局面によれば、ガラスのごとき脆性的な部材を切断する装置は、前記部材上の第1の領域にレーザ光を第1の空間を通して照射するべく構成されたレーザ発振器と、前記第1の領域とは異なる第2の領域に冷却媒体を噴射するべく構成された冷却ノズルと、前記部材に対して間隙を有するべく且つ前記第1の空間を囲まない状態に置くべく配置され、前記第2の領域からの飛沫及びミストの流れを前記第1の空間から逸らすように向けられたバッフルと、前記間隙に向けて気体を噴射するべく構成された気体ノズルと、を備え
、前記バッフルは前記間隙に向いたテーパ端を備える。
本発明の他の第1の局面によれば、ガラスのごとき脆性的な部材を切断する装置は、前記部材上の第1の領域にレーザ光を第1の空間を通して照射するべく構成されたレーザ発振器と、前記第1の領域とは異なる第2の領域に冷却媒体を噴射するべく構成された冷却ノズルと、前記部材に対して間隙を有するべく且つ前記第1の空間を囲まない状態に置くべく配置され、前記第2の領域からの飛沫及びミストの流れを前記第1の空間から逸らすように向けられたバッフルと、前記間隙に向けて気体を噴射するべく構成された気体ノズルと、を備え、前記気体ノズルは前記バッフルに内蔵されている。
【0007】
本発明の第2の局面によれば、脆性的な部材を切断する方法は、レーザ発振器より前記部材上の第1の領域にレーザ光を第1の空間を通して照射し、冷却ノズルより前記第1の領域とは異なる第2の領域に冷却媒体を噴射し、前記部材に対して間隙を有し且つ前記第1の空間を囲まない状態に置くバッフルを、前記第2の領域からの飛沫及びミストの流れを前記第1の空間から逸らすように向け、
前記バッフルに前記間隙に向いたテーパ端を設け、気体ノズルより前記間隙に向けて気体を噴射する、ことよりなる。
本発明の他の第2の局面によれば、脆性的な部材を切断する方法であって、レーザ発振器より前記部材上の第1の領域にレーザ光を第1の空間を通して照射し、冷却ノズルより前記第1の領域とは異なる第2の領域に冷却媒体を噴射し、前記部材に対して間隙を有し且つ前記第1の空間を囲まない状態に置くバッフルを、前記第2の領域からの飛沫及びミストの流れを前記第1の空間から逸らすように向け、気体ノズルを前記バッフルに内蔵し、前記気体ノズルより前記間隙に向けて気体を噴射する、ことよりなる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1A】
図1Aは、本発明の一実施形態による切断装置の概略的側面図である。
【
図1B】
図1Bは、切断対象の部材の平面図であって、レーザ照射領域と冷却領域とを例示する図である。
【
図2】
図2は、変形例による切断装置の概略的側面図である。
【
図3A】
図3Aは、他の変形例による切断装置の概略的側面図である。
【
図3B】
図3Bは、切断対象の部材の平面図であって、レーザ照射領域と冷却領域とに重ねてバッフルの配置を例示する図である。
【
図4】
図4は、さらに他の変形例による切断装置の概略的側面図である。
【
図5A】
図5Aは、切断対象の部材、レーザ発振器および気体ノズルの配置の例を示す平面図である。
【
図5B】
図5Bは、切断対象の部材、レーザ発振器および気体ノズルの配置の他の例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
添付の図面を参照して以下に本発明の幾つかの例示的な実施形態を説明する。
【0010】
本実施形態による装置は、ガラス板の切断に好適に利用することができるが、もちろん他の脆性的な部材を切断するのに利用できる。以下の説明においてガラス板2を切断する場合を例にとるが、これは例示に過ぎず、本発明に対して限定的でない。
【0011】
また以下の説明において、概して、「飛沫」の語は液滴であって飛び散る性質のものを意味し、「ミスト」の語は霧および霧に近い微細な液滴を包含し、漂う性質のものを意味する。
【0012】
図1A,2,3A,4を参照するに、本実施形態によるガラス板2を切断する装置1,1A,1B,1Cは、ガラス板2を載せるテーブル3と、レーザ光をガラス板2に照射するためのレーザ発振器4と、冷却媒体を噴射するための冷却ノズル5と、バッフル(baffleすなわち整流板)6,6tまたは8と、気体を噴射するための気体ノズル7と、を備える。装置1Cにおいてはバッフル6tが気体ノズルを兼ねている。
【0013】
テーブル3は、ガラス板2を、例えば矢印Aに示す方向に送ることができるよう、適宜の搬送手段を備える。あるいは、ガラス板2は固定されていて、レーザ発振器4,冷却ノズル5および他の要素を矢印Aと逆の方向に送ってもよい。またレーザ発振器4に対する距離が安定するならば、浮上搬送装置を利用してもよい。以下に、ガラス板2が矢印Aの方向に送られる例のみを説明するが、これは説明の便宜のために過ぎず、これらの変形例の何れも可能である。
【0014】
レーザ発振器4には、例えば出力100〜数百Wの出力を有する炭酸ガスレーザ発振器が好適に利用できるが、あるいは他の出力範囲または他の発振機構によるレーザ発振器も利用できる。レーザ発振器4の配置は、好ましくは、ガラス板2により反射されたレーザ光を避けるべく、ガラス板2に対して適宜の角度を為す斜めの方向からレーザ光40を照射する配置とする。
【0015】
レーザ光40は一定の幅を持って照射することができ、それ故、図中においてレーザ光40が通過する領域41(第1の空間)は幅を持って描かれている。また参照番号22はガラス板2においてレーザ光40が照射される領域(第1の領域)である。
【0016】
冷却ノズル5は、冷却媒体50を噴射するノズルである。冷却媒体50としては、例えば水が利用でき、これは安価であって入手し易い点で有利である。あるいは冷却効率等の観点から、水に代えてアルコール、ドライアイス、窒素、アルゴン等が利用できる。これらは、可能ならば、液相、気相、気体により搬送される霧、の何れの態様でも利用できる。
【0017】
冷却媒体50は必然的に一定の幅51を持って噴射され、ガラス板2において領域23(第2の領域)に噴射される。
図1Bを参照するに、冷却媒体50が噴射される領域23は、レーザ光40が照射される領域22と異なり、矢印Aの方向に適宜に離れている。
【0018】
ガラス板2は矢印Aの方向に送られるので、領域22において加熱された後、即座に領域23において冷却され、以って熱的ショックが与えられる。予め、ガラス板2の端部にダイヤモンドカッタ等によりスコーリング(scoring)を行なっておき、切断の起点とする。切断予定線20が領域22,23の両方を通過するように、ガラス板2を送れば、これに沿ってガラス板2に熱的ショックが与えられる。以ってガラス板2は切断予定線20に沿って実線25のように切断される。
【0019】
冷却ノズル5は、
図1Aに示されるごとく、ガラス板2の表面に対して直交する方向から冷却媒体50を噴射するように配置できる。あるいは冷却ノズル5は、
図2に示されるごとく、ガラス板2の表面に対して、領域22へ角度θ傾いた方向から冷却媒体50を噴射するように配置できる。ここでθは0度を越えて90度未満の適宜の角度である。
【0020】
噴射された冷却媒体50は、ガラス板2に衝突した後、部分的には飛沫となり、部分的にはミストとなって、図中の参照番号52のごとく周囲に飛散する。かかる飛沫ないしミストの流れ52を、レーザ光40が照射される領域22から逸らす目的で、バッフル6が配置される。かかる目的に照らしてバッフル6は適宜に配置することができるが、例えば図示のごとく領域22と領域23との間、あるいは領域41と領域51との間に配置することを選択できる。またバッフル6は、飛沫ないしミストの流れ52を逸らす目的に鑑みて適宜に傾けることができるが、レーザ光40が通過する領域41に干渉しない傾きが選択されるべきである。
【0021】
バッフル6は、例えば平板あるいは曲面板である。バッフル6を曲面とする場合、曲面が一周してその一方の縁が他方の縁と連結して
図3Bのごとく閉じた円筒であってもよい。あるいはバッフル6は、その全周において閉じていない曲面板でもよい。いずれにせよ、レーザ光40が通過する領域41はバッフル6により囲われず、領域41の側方は、および好ましくは後方(矢印Aと反対方向)も、開放されている。このような構成によれば、バッフル6はレーザ光40による熱が外部に放射されることを妨げない。すなわち、レーザ光40による熱は領域22の周囲に滞留せず、以って熱影響は領域22に集中し、ぼやけることがない。これは、切断線25を切断予定線20に正確に沿わせることができる点で有利である。
【0022】
もちろん、周囲の作業者ないし装置を保護する目的で、領域22または領域41から十分に離れた位置においてレーザ光を遮蔽する手段が設けられていてもよい。
【0023】
バッフル6がガラス板2に接触するのを避けるべく、バッフル6においてガラス板2に近接した端60とガラス板2との間には、適宜の隙間が確保される。かかる隙間から飛沫ないしミストが領域22に漏れるのを防ぐべく、気体ノズル7は、かかる間隙に向けて気体70を噴射するように向けられている。気体70が噴射される領域は、領域22と領域23との間であって、
図1Bにおいて参照番号24の付された領域である。
【0024】
ノズル7から噴出されるものとしては、通常の空気が利用できるが、これに代えて窒素ないしアルゴン等の他の気体であってもよい。
【0025】
あるいは、気体ノズルは、
図4に示すごとく、バッフルに内蔵されていてもよい。中空なバッフル6tは、内部の空洞6cを通って気体70を流すことができ、気体ノズルとしても作用する。噴出された気体70は、バッフル6tの先端から、上述と同様に、バッフル6t下の隙間であって領域22と領域23との間の領域に噴出される。この場合に、別途気体ノズル7を設けてもよいし、図示のごとく省略してもよい。
【0026】
あるいは、気体ノズル7は、
図5Aに示すごとく、領域22から領域23へ向かう方向に沿って気体70を方向づける配置であってもよい。かかる配置は、飛沫ないしミストを領域22から遠ざけるのに有利である。あるいは、気体ノズル7は、
図5Bに示すごとく、領域22から領域23へ向かう方向に対して0度を越えて90度未満の角度を有する方向に気体70を方向づける配置であってもよい。かかる配置は、ガラス板2上の冷却媒体50をその側方に押し流し、排除するように気体70を流させるので、冷却媒体50の廃液処理に有利である。またかかる配置によれば、ガラス板2の下側に気体70が入り込みにくい。特に搬送手段として浮上搬送装置を利用した場合に、ガラス板2の下側に侵入した気体70がガラス板2の浮上高さを撹乱しない点で、かかる配置は有利である。
【0027】
またバッフル6においてガラス板2に向いた端60、あるいは円筒体8においてガラス板2に向いた端82は、
図1A,2,3A,4に示すごとくテーパ61,84を備えてもよい。テーパ61,84は、気体70を領域23へ向かう方向に導き、特に冷却媒体50をガラス板2上から排除するように気体を導く。
【0028】
バッフルを
図3A,3Bのごとく閉じた円筒体8とした場合、その上部も閉じていてもよい。その場合においても、下部は図示のごとく開いており、また下端83とガラス板2との間に間隙が確保される。上部が閉じている場合、冷却ノズル5と円筒体8とは密に接していてもよい。またその場合、側壁80または他の部位に、貫通孔81を設けてもよい。貫通孔81は、飛沫ないしミストを外部に排出するのに役立つ。あるいは貫通孔81に接続して、吸引装置を設けてもよい。何れも、飛沫ないしミストの流れ52が領域22に漏れるのを防ぐのに有効である。
【0029】
レーザ発振器4、冷却ノズル5、バッフル6および気体ノズル7の位置および傾きは、固定しなくてもよく、またこれらを調整するべく、マイクロメータのごとき適宜の調整手段を設けてもよい。
【0030】
使用後の冷却媒体を回収するべく、適宜の回収回路を設け、以って冷却媒体を再利用してもよい。
【0031】
上述の装置1,1A,1Bあるいは1Cによれば、ガラス板2の切断の手順は以下の通りである。切断しようとするガラス板2には、切断予定線20の一端あるいは線上の何れかの点において、上述のごとくスコーリング21を与える。装置1,1A,1Bあるいは1Cにおいて、テーブル3上にガラス板2が固定され、制御された速度で矢印Aの方向に送られつつ、レーザ光40がガラス板2上の領域22に照射され、冷却媒体50が領域23に噴射される。このとき、レーザ光40の照射または冷却媒体50の噴射に同期して、気体70がバッフル6下の隙間に向けて噴射される。すると、ガラス板2上において切断予定線20に沿って加熱と冷却とが起こり、以ってガラス板2に熱ショックが与えられ、専ら引張応力が生ずる。かかる引張応力のみにより、あるいは、切断予定線20に沿って曲げるなどの方法によって補助的に適宜の応力を印加することにより、切断予定線20に沿って亀裂が進展し、ガラス板2は切断予定線20に沿って割れる。
【0032】
上述の実施形態によれば、バッフルと気体との作用により、冷却媒体の飛沫ないしミストは、レーザ光が通過ないし照射される領域に侵入しない。それ故、レーザ光が冷却媒体に吸収されることがない。レーザ光の損失を補償するためにレーザ発振器の出力を調整する必要がなく、工程管理の労を軽減し、また、より大出力のレーザ発振器を必要としない。
【0033】
好適な実施形態により本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上記開示内容に基づき、当該技術分野の通常の技術を有する者が、実施形態の修正ないし変形により本発明を実施することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0034】
脆性的な部材を切断する装置であって、レーザ光の損失を低減した装置が提供される。
【符号の説明】
【0035】
1,1A,1B 切断装置
2 ガラス板
3 テーブル
4 レーザ発振器
5 冷却ノズル
6,6t バッフル
6c 空洞
7 気体ノズル
8 円筒体
22 領域(第1の領域)
23 領域(第2の領域)
41 領域(第1の空間)
51 領域
61,84 テーパ