(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5765462
(24)【登録日】2015年6月26日
(45)【発行日】2015年8月19日
(54)【発明の名称】電気コネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 13/639 20060101AFI20150730BHJP
【FI】
H01R13/639 Z
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-91516(P2014-91516)
(22)【出願日】2014年4月25日
【審査請求日】2014年4月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】592028846
【氏名又は名称】第一精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099508
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 久
(74)【代理人】
【識別番号】100093285
【弁理士】
【氏名又は名称】久保山 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100182567
【弁理士】
【氏名又は名称】遠坂 啓太
(72)【発明者】
【氏名】八木 境
(72)【発明者】
【氏名】椋木 淳
(72)【発明者】
【氏名】松下 大介
【審査官】
楠永 吉孝
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−317349(JP,A)
【文献】
特開2006−004901(JP,A)
【文献】
特開2000−311747(JP,A)
【文献】
実開平04−102174(JP,U)
【文献】
特許第5708854(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/639
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロック係止部を有するアウターハウジング内に嵌入されるインナーハウジングの、前記アウターハウジングのロック係止部に対向する面(以下、「第1面」と称す。)に、前記アウターハウジングのロック係止部に係止されるロック突起が設けられたロックアームを有する電気コネクタであって、
前記アウターハウジング内に、前記インナーハウジングの嵌入方向に延びるリブを備え、
前記ロックアームは、
前記インナーハウジングの嵌入方向の前端部が前脚部により、前記インナーハウジングの嵌入方向の後端部が後脚部によりそれぞれ前記第1面に支持され、前記後脚部が、前記インナーハウジングの前記第1面に直角に立ち上がる立ち上がり部と、前記立ち上がり部の上端から前記インナーハウジングの前記第1面に略平行に延出する延出部とからなり、前記第1面に直交する方向の弾性撓みが可能なロックアーム本体と、
前記ロックアームのロック突起を前記アウターハウジングのロック係止部からロック解除するための解除操作部であり、前記ロックアームのロック突起よりも前記インナーハウジングの嵌入方向の後方であって前記ロックアーム本体の中途部から前記後端部の前記インナーハウジングから離れる方向へ立ち上がる立壁部と、前記第1面と略平行な板状の指当て部であり、前記立壁部の上端に連結され、前記後脚部の前記延出部と間隔を空けて配置された指当て部とからなる解除操作部と、
前記アウターハウジング内に前記インナーハウジングが嵌入される際に、前記リブが進入可能な前記インナーハウジングの嵌入方向に延びるガイド空間とを備え、
前記解除操作部が押し下げられた際に、前記ロックアームの前端部および後端部を支点として前記ロックアームが撓み、前記解除操作部の前記指当て部の下部後端部のみが前記ロックアームの前記後脚部の前記延出部に当接し、次いで前記ロックアームの前端部および後端部を支点とし、かつ、前記解除操作部と前記ロックアームの前記後脚部の前記延出部との当接部を作用点として前記ロックアームが撓むことにより前記ロックアームのロック突起が前記アウターハウジングのロック係止部からロック解除されることを特徴とする電気コネクタ。
【請求項2】
前記ロックアームが、前記ガイド空間によって分割されたものである請求項1記載の電気コネクタ。
【請求項3】
前記ガイド空間が、前記ロックアームに形成された溝である請求項1記載の電気コネクタ。
【請求項4】
前記ロックアームは、後端部が、幅方向の左右両端部にそれぞれ設けられた左右脚部と、この左右脚部の間に設けられた1または複数の中間脚部とを含む脚部により、前記インナーハウジングの、前記アウターハウジングのロック係止部に対向する面に支持されたものである請求項1記載の電気コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車や産業機械等に搭載される各種機器の電気接続に使用される電気コネクタに係り、より詳しくは、コネクタ同士の嵌合をロックするためのロックアームを備えた電気コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
ロックアームを備えたコネクタとして、例えば特許文献1には、ロックアームの後端部に解除操作部が形成され、ロックアームと雌側ハウジングの上面との間に、前後方向に延びる可撓性を有する支持部が形成されたものが記載されている。このコネクタでは、支持部の前端が、ロックアームに対しその後端よりも前方の位置において連なっているので、ロックアームの後端に連なる形態のものに比べると、雌側ハウジングの上面におけるロックアームと支持部の配置スペースが小さくて済み、雌側コネクタFの小型化を図ることができるとされている。
【0003】
また、特許文献2には、ロックアームに形成された基板用コネクタのハウジングへの挿入時に基板用コネクタのハウジングに形成された係止孔を係止する係止爪を備え、ロックアームが、係止爪よりもハウジングの後端側に、押圧されることにより係止孔の係止を解除させるロック解除部を有し、後端側支点の位置が、先端側支点の位置よりも、係止爪の突出方向と反対側に配置されているコネクタが記載されている。
【0004】
また、
図13は従来のロックアームを備えた電気コネクタのインナーハウジングの例を、
図14は
図13のインナーハウジングが嵌合されるアウターハウジングの例を示している。
図13に示すように、インナーハウジング50の上面にはロックアーム51が形成されている。一方、
図14に示すように、アウターハウジング40は、インナーハウジング50が嵌入される角筒状のフード部41を有し、フード部41の上面壁側には嵌入されるインナーハウジング50のロックアーム51が進入するための凹部42を有する。フード部41内には、端子金具43が突出させて設けられている。
【0005】
また、インナーハウジング50のロックアーム51は、ロックアーム本体52と、ロックアーム本体52の前端部を支持する前脚部53と、ロックアーム本体52の後端部をインナーハウジング50の上面に支持する後脚部54と、
図14に示すアウターハウジング40のフード部41の凹部42内に設けられたロック部(図示せず。)にロックされるロック部55と、ロック部55をロック解除するための解除操作部56とを有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−135751号公報
【特許文献2】特開2013−30323号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、
図14に示すように、アウターハウジング40のフード部41の間口が広い電気コネクタでは、ロック部55の幅が狭いと、インナーハウジング50の端子金具に接続されたケーブルが引っ張られたときにアウターハウジング40に対してインナーハウジング50が傾きやすい。そこで、このインナーハウジング50の傾きを防止するために、ロック部55の幅を広げることが考えられる。
【0008】
図15に示すように、ロック部55の幅Aを幅Bに広げると、インナーハウジング50が傾くときの起点が外側へ移動し、その結果としてインナーハウジング50の傾きは小さくなる。ところが、このようにロック部55の幅を広げると、アウターハウジング40にインナーハウジング50を嵌入する際に、
図16に示すようにインナーハウジング50を斜めに入れてしまうと、インナーハウジング50が奥まで挿入されてしまい、アウターハウジング40内に突出させて設けられている端子金具43に接触して、端子金具43を曲げてしまう可能性がある。
【0009】
そこで、本発明においては、インナーハウジングをアウターハウジングに嵌入する際にインナーハウジングがアウターハウジング内に斜めの状態で奥まで入ることを防止した電気コネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の電気コネクタは、ロック係止部を有するアウターハウジング内に嵌入されるインナーハウジングの、アウターハウジングのロック係止部に対向する面に、アウターハウジングのロック係止部に係止されるロック突起が設けられたロックアームを有する電気コネクタであって、アウターハウジング内に、インナーハウジングの嵌入方向に延びるリブを備え、ロックアームは、アウターハウジング内にインナーハウジングが嵌入される際に、リブが進入可能なインナーハウジングの嵌入方向に延びるガイド空間を備えたものである。
【0011】
本発明の電気コネクタによれば、アウターハウジング内にインナーハウジングの嵌入方向に延びるリブが備えられているため、インナーハウジングをアウターハウジングに嵌入する際に、インナーハウジングはアウターハウジング内に斜めの状態で奥まで入ることが防止される。一方、インナーハウジングのロックアームは、アウターハウジング内に備えられたリブが進入可能な嵌入方向に延びるガイド空間を備えているため、アウターハウジング内にインナーハウジングが嵌入される際には、アウターハウジング内に備えられたリブが邪魔になることはなく、アウターハウジング内にインナーハウジングを正しい姿勢で嵌入することができる。
【0012】
ここで、ロックアームは、後端部が、幅方向の左右両端部にそれぞれ設けられた左右脚部と、この左右脚部の間に設けられた1または複数の中間脚部とを含む脚部により、インナーハウジングの、アウターハウジングのロック係止部に対向する面に支持されたものであることが望ましい。これにより、ロックアームを撓ませてロック突起をアウターハウジングのロック係止部からロック解除する際、支点であるロックアームの後端部の幅方向の中間部分の撓みが防止されるので、ロックアームのロック突起の変位をしっかりと確保することができる。
【0013】
また、ロックアームは、インナーハウジングの、アウターハウジングのロック係止部に対向する面に、インナーハウジングの嵌入方向の前端部および後端部が支持され、アウターハウジングのロック係止部に対向する面に直交する方向の弾性撓みが可能なものであり、かつ、ロックアームのロック突起をアウターハウジングのロック係止部からロック解除するための解除操作部であり、ロックアームのロック突起よりもインナーハウジングの嵌入方向の後方であってその中途部から後端部のインナーハウジングから離れる方向へ向かって延設された解除操作部を備え、解除操作部が押し下げられた際に、ロックアームの前端部および後端部を支点としてロックアームが撓み、解除操作部がロックアームに当接し、次いでロックアームの前端部および後端部を支点とし、かつ、解除操作部とロックアームとの当接部を作用点としてロックアームが撓むことによりロックアームのロック突起がアウターハウジングのロック係止部からロック解除されるものであることが望ましい。
【0014】
これにより、インナーハウジング、アウターハウジングのロック係止部に対向する面に前端部および後端部が支持されたロックアームのロック突起よりも後方であってその中途部から後端部の上方へ向かって延設された解除操作部が押し下げられた際に、ロックアームの前端部および後端部を支点としてロックアームが撓み、解除操作部がロックアームに当接し、次いでロックアームの前端部および後端部を支点とし、かつ、解除操作部とロックアームとの当接部を作用点としてロックアームが撓むことにより、解除操作部の少ない変位量でロックアームのロック突起が大きく変位し、ロックアームのロック突起がアウターハウジングのロック係止部からロック解除される。
【発明の効果】
【0015】
(1)アウターハウジング内に、インナーハウジングの嵌入方向に延びるリブを備え、ロックアームは、アウターハウジング内にインナーハウジングが嵌入される際に、リブが進入可能なインナーハウジングの嵌入方向に延びるガイド空間を備えた構成により、インナーハウジングはアウターハウジング内に斜めの状態で奥まで入ることが防止され、アウターハウジング内に端子金具が突出させて設けられていても、インナーハウジングが端子金具に接触して曲げてしまうことがなくなる。
【0016】
(2)ロックアームは、後端部が、幅方向の左右両端部にそれぞれ設けられた左右脚部と、この左右脚部の間に設けられた1または複数の中間脚部とを含む脚部により、インナーハウジングの、アウターハウジングのロック係止部に対向する面に支持されたものとすることで、ロックアームの後端部の幅方向の中間部分の撓みが防止されるので、ロックアームのロック突起の変位をしっかりと確保することができ、ロックアームの少ない変位量で確実にロックを解除することが可能となる。
【0017】
(3)ロックアームは、インナーハウジングの、アウターハウジングのロック係止部に対向する面に、インナーハウジングの嵌入方向の前端部および後端部が支持され、アウターハウジングのロック係止部に対向する面に直交する方向の弾性撓みが可能なものであり、かつ、ロックアームのロック突起をアウターハウジングのロック係止部からロック解除するための解除操作部であり、ロックアームのロック突起よりもインナーハウジングの嵌入方向の後方であってその中途部から後端部のインナーハウジングから離れる方向へ向かって延設された解除操作部を備え、解除操作部が押し下げられた際に、ロックアームの前端部および後端部を支点としてロックアームが撓み、解除操作部がロックアームに当接し、次いでロックアームの前端部および後端部を支点とし、かつ、解除操作部とロックアームとの当接部を作用点としてロックアームが撓むことによりロックアームのロック突起がアウターハウジングのロック係止部からロック解除されるものであることにより、解除操作部の少ない変位量でロックの解除が可能となり、電気コネクタの高さを低くすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施の形態における電気コネクタの離脱状態を示す断面図である。
【
図4】
図3のA−A線で切断したアウターハウジングの斜視図である。
【
図7】インナーハウジングにおけるロックアームのみを示す左側面図である。
【
図9】ロックアームの別の実施形態を示す背面図である。
【
図10A】雄側コネクタに雌側コネクタを嵌合する途中の状態を示す断面図である。
【
図10B】雄側コネクタに雌側コネクタを嵌合する途中の状態を示す断面図である。
【
図10C】雄側コネクタに雌側コネクタを嵌合した状態を示す断面図である。
【
図11A】インナーハウジングをアウターハウジング内に斜めに嵌入する様子を示す斜視図である。
【
図11B】インナーハウジングをアウターハウジング内に斜めに嵌入する様子を示す横断面図である。
【
図12A】雄側コネクタに雌側コネクタを嵌合した状態のロックアームを示す左側面図である。
【
図12B】ロックアームの第1押し下げ段階を示す左側面図である。
【
図12C】ロックアームの第2押し下げ段階を示す左側面図である。
【
図13】従来のロックアームを備えた電気コネクタのインナーハウジングの例を示す斜視図である。
【
図14】従来のロックアームを備えた電気コネクタのアウターハウジングの例を示す斜視図である。
【
図15】ロック部の幅の違いによるインナーハウジングの傾きの差についての説明図である。
【
図16】インナーハウジングをアウターハウジング内に斜めに嵌入する様子を示す横断面図である。
【
図17A】従来のロックアームの例を示す左側面図である。
【
図17B】従来のロックアームの押し下げ途中の状態を示す左側面図である。
【
図17C】従来のロックアームの押し下げ完了の状態を示す左側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は本発明の実施の形態における電気コネクタの離脱状態を示す断面図、
図2は
図1のアウターハウジングの斜視図、
図3は
図2のアウターハウジングの正面図、
図4は
図3のA−A線で切断したアウターハウジングの斜視図、
図5は
図1のインナーハウジングの斜視図、
図6は
図5のインナーハウジングの平面図、
図7はインナーハウジングにおけるロックアームのみを示す左側面図、
図8は
図7のロックアームの背面図である。なお、
図1および後述する
図10A〜
図10Cは、
図6のB−B線の位置にて電気コネクタを切断した断面を示している。
【0020】
図1において、本発明の実施の形態における電気コネクタ1は、雄側コネクタMと、雄側コネクタに嵌合される雌側コネクタFとから構成される。雄側コネクタMは、雄側ハウジングとしてのアウターハウジング10の雌側コネクタF側に向かって開口した角筒状のフード部11を有する。フード部11内には、端子金具としての雄端子金具12が突出させて設けられている。また、フード部11の上面壁の雌側コネクタF側端部には、その幅方向(
図1に現れる面に対して垂直な方向をいう。以下同じ。)中央部を下方へ突出させたロック係止部13が設けられている。
【0021】
また、アウターハウジング10のフード部11内には、
図2〜
図4に示すように、インナーハウジング20の嵌入方向に延びるリブ14,15が設けられている。なお、ロック係止部13およびリブ14は、フード部11の上面壁の中央に設けられた凹部16内に設けられている。凹部16は、後述するインナーハウジング20のロックアーム21が進入するためのガイド空間であり、ロックアーム21に対応する形状となっている。リブ14は、凹部16の中央に設けられている。リブ15は、フード部14の下面壁の中央に設けられている。
【0022】
雌側コネクタFは、
図5および
図6に示す雌側ハウジングとしての角柱状のインナーハウジング20内に、雄側コネクタMの雄端子金具12と接続される図示しない雌端子金具を収容したものである。インナーハウジング20は、雄側コネクタMのアウターハウジング10のフード部11内に嵌入される。なお、以下の説明においては、インナーハウジング20の嵌入方向の前方(
図1において左側)を前、後方(
図1の右側)を後として説明する。
【0023】
インナーハウジング20の上面(アウターハウジング10のロック係止部13に対向する面)には、ロックアーム21が一体的に形成されている。ロックアーム21は、
図7に示すように、インナーハウジング20の前後に細長い平板状のロックアーム本体22と、ロックアーム本体22の前端部をインナーハウジング20に支持する脚部としての前脚部23と、ロックアーム本体22の後端部をインナーハウジング20に支持する脚部としての後脚部24と、アウターハウジング10のロック係止部13にロックされるロック突起25と、ロック突起25をアウターハウジング10のロック係止部13からロック解除するための解除操作部26とを、インナーハウジング20に一体形成したものである。
【0024】
ロックアーム本体22は、インナーハウジング20の上面の上方に、インナーハウジング20の平面状の上面と間隔を空けて配置されている。ロック突起25は、ロックアーム本体22の中途部から上方へ突出する突起として形成されている。ロック突起25の前面はロックアーム本体22の上面から斜め後上方へ立ち上がる傾斜面25aとなっており、後面はロックアーム本体22の上面に対して垂直面25bとなっている。解除操作部26は、ロック突起25よりも後方であってその中途部から後端部の斜め上方、すなわちインナーハウジング20から離れる方向へ向かって延設されている。
【0025】
前脚部23は、ロックアーム本体22の前端部から下方へ突出して設けられている。前脚部23の下端は、インナーハウジング20の上面前端部に接続されている。ロックアーム本体22は、前脚部23の上端から後方に向かって上り勾配で傾斜しており、ロック突起25より後方ではインナーハウジング20の上面と略平行となっている。
【0026】
また、ロックアーム本体22および前脚部23の幅方向中央部には、インナーハウジング20がアウターハウジング10内に嵌入される際にアウターハウジング10内のリブ14の進入をガイドするガイド空間28が設けられている。ガイド空間28は、アウターハウジング10に設けられたリブ14に対応する形状でインナーハウジング20の嵌入方向に延びている。ロックアーム21は、ガイド空間28によってロック突起25の後方位置まで左右に2分割されている。なお、インナーハウジング20の下面には、アウターハウジング10内のリブ15に対応する形状であって、リブ15が進入可能なガイド凹部32が設けられている。
【0027】
後脚部24は、インナーハウジング20の上面後端から直角に立ち上がる立ち上がり部24aと、この立ち上がり部24aの上端から前方に向かって略水平に延出する延出部24bとからなる。なお、本実施形態においては、後脚部24は、
図8に示すように、幅方向の左右両端部にそれぞれ設けられた左脚部27aおよび右脚部27bと、この左右脚部27a,27bの間に設けられた中間脚部27cとからなる。左右脚部27a,27bおよび中間脚部27cは、それぞれが前述の立ち上がり部24aおよび延出部24bを有する。
【0028】
上記構成により、ロックアーム21は、その前端部が前脚部23によりインナーハウジング20に支持され、後端部が後脚部24の立ち上がり部24aによりインナーハウジング20に支持され、前脚部23および立ち上がり部24aを支点として上下方向(インナーハウジング20の上面に直交する方向)へ弾性変形することにより撓むようになっている。なお、ロックアーム21は、ロックアーム本体22および後脚部24の延出部24bを湾曲させるような弾性変形が可能となっている。
【0029】
解除操作部26は、ロックアーム本体22の上面から斜め後上方へ立ち上がる立壁部28a,28b,28cと、立壁部28a,28b,28cの上端同士を連結する略水平板状の指当て部29とからなる。解除操作部26の指当て部29は、後脚部24の延出部24bの上面の上方に、延出部24bと間隔を空けて配置されている。
【0030】
上記構成の電気コネクタ1において、雄側コネクタMに雌側コネクタFを嵌合する際には、
図10Aに示すように、アウターハウジング10の後方からフード部11内にインナーハウジング20を嵌入する。このとき、
図11Aおよび
図11Bに示すように、インナーハウジング20をアウターハウジング10内に斜めに嵌入しようとしても、インナーハウジング20はアウターハウジング10のフード部11内のリブ14によって斜めの状態で奥まで入ることが防止される。そのため、インナーハウジング20がアウターハウジング10内の雄端子金具12に接触して曲げてしまうことがない。なお、リブ15もリブ14と同様に機能する。
【0031】
また、アウターハウジング10内に正しくインナーハウジング20が嵌入される際には、インナーハウジング20が、アウターハウジング10内に備えられたリブ14,15が進入可能な嵌入方向に延びるガイド空間28,32を備えているため、このアウターハウジング10内に備えられたリブ14,15が邪魔になることはなく、アウターハウジング10内にインナーハウジング20を正しい姿勢で嵌入することができる。
【0032】
そして、インナーハウジング20のロック突起25をアウターハウジング10のロック係止部13に突き当てて押し込むと、
図10Bに示すように、ロックアーム21の中央部分が下方へ凹むようにして弾性変形し、インナーハウジング20のロック突起25がアウターハウジング10のロック係止部13の下に潜り込み、正規嵌合状態に至ると、
図10Cに示すように、ロックアーム21が復元してインナーハウジング20のロック突起25がアウターハウジング10のロック係止部13に係止され、ロックされる。
【0033】
そして、この正規嵌合状態にロックされている雄側コネクタMから雌側コネクタFを離脱させる際には、解除操作部26を下方へ押し下げる。このとき、ロックアーム21は、
図12Aに示す状態から前端部の前脚部23および後端部の立ち上がり部24aを支点として撓み、
図12Bに示すように解除操作部26がロックアーム21の延出部24bに当接する(第1押し下げ段階)。次いで、ロックアーム21は、ロックアーム21の前端部の前脚部23および後端部の立ち上がり部24aを支点とし、かつ、解除操作部26とロックアーム21との当接部31を作用点として、
図12Cに示すように撓む(第2押し下げ段階)。これにより、ロックアーム21のロック突起25がアウターハウジング10のロック係止部13からロック解除される。そして、このロック解除状態を保ちつつ、雌側コネクタFを雄側コネクタMから引き離す。
【0034】
このように、本実施形態における電気コネクタ1では、
図12Bに示す前端部の前脚部23および後端部の立ち上がり部24aを支点として撓む第1押し下げ段階の状態から、ロックアーム21の前端部の前脚部23および後端部の立ち上がり部24aを支点とし、かつ、解除操作部26とロックアーム21との当接部31を作用点として撓む第2押し下げ段階に遷移してロックアーム21が撓むことにより、解除操作部26の少ない変位量でロックアーム21のロック突起25が大きく変位し、ロックアーム21のロック突起25がアウターハウジング10のロック係止部13からロック解除される。すなわち、解除操作部26の少ない変位量でロックの解除が可能となり、電気コネクタ1の高さを低くすることが可能となる。
【0035】
なお、
図13に示した従来のロックアーム51と比較すると、
図17Aに示すように、従来のロックアーム51では、ロック解除の際に解除操作部56を下方へ押し下げると、
図17Bに示すように、前端部の前脚部53および後端部の後脚部54を支点として撓む。このとき、ロックアーム51は、
図17Cに示すように、ロックアーム51の下面がインナーハウジング50の上面に当接するまで撓むことにより、ロック部55がアウターハウジングのロック部からロック解除される。
【0036】
このような従来のロック形状では、解除操作部56に受ける力のみでロックアーム51が撓むので、ロック部55がロック解除可能な状態となるためには、解除操作部56の操作変位量を大きく確保する必要がある。そのため、ロックアーム51の下面とインナーハウジング50の上面との空間が大きく必要となり、コネクタの高さが高くなるという問題があるが、上述のように本実施形態におけるロックアーム21では、解除操作部26の少ない変位量でロックの解除が可能となり、電気コネクタ1の高さを低くすることが可能となっている。
【0037】
また、本実施形態におけるロックアーム21は、後脚部24が左右脚部27a,27bおよび中間脚部27cによりインナーハウジング20の上面に支持されたものであるため、第2押し下げ段階において、ロックアーム21の前端部の前脚部23および後端部の立ち上がり部24aを支点とし、かつ、解除操作部26とロックアーム21との当接部31を作用点としてロックアーム21が撓む際に、支点であるロックアーム21の後端部の幅方向の中間部分の撓みが防止されている。したがって、ロックアーム21のロック突起25の変位をしっかりと確保することができ、解除操作部26の少ない変位量で確実にロックを解除することが可能となっている。
【0038】
なお、後脚部24の中間脚部27cは左右脚部27a,27bの中央に配置されていなくても良い。また、中間脚部27cは複数配置することも可能である。あるいは、
図9に示すように、中間脚部27cを省略した構成とすることも可能である。また、ロックアーム21のロック突起25は突起として形成されていなくても良い。要するに、アウターハウジング10のロック係止部13にロックされれば良く、凹部とすることもある。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明の電気コネクタは、自動車や産業機械等に搭載される各種機器の電気接続に使用される電気コネクタとして有用である。
【符号の説明】
【0040】
1 電気コネクタ
10 アウターハウジング
11 フード部
12 雄端子金具
13 ロック係止部
14,15 リブ
20 インナーハウジング
21 ロックアーム
22 ロックアーム本体
23 前脚部
24 後脚部
25 ロック突起
26 解除操作部
27a 左脚部
27b 右脚部
27c 中間脚部
【要約】
【課題】インナーハウジングをアウターハウジングに嵌入する際にインナーハウジングがアウターハウジング内に斜めの状態で奥まで入ることを防止した電気コネクタの提供。
【解決手段】ロック係止部13を有するアウターハウジング10内に嵌入されるインナーハウジング20の上面に、アウターハウジング10のロック係止部13に係止されるロック突起25が設けられたロックアーム21を有する電気コネクタ1であって、アウターハウジング10内に、インナーハウジング20の嵌入方向に延びるリブ14を備え、ロックアーム21は、アウターハウジング10内にインナーハウジング20が嵌入される際に、リブ14が進入可能なインナーハウジング20の嵌入方向に延びるガイド空間28を備える。
【選択図】
図1