(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1の成形体の構成材料がポリカーボネート樹脂を含むものであり、前記第2の成形体の構成材料がポリカーボネート樹脂及びポリエステル樹脂を含むものであることを特徴とする請求項1ないし11のいずれか1項に記載の多色成形品の成形方法。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明するが、本発明は具体的な実施形態のみに限定されない。
【0025】
図1(a)は実施の形態に係る多色成形品の成形方法により成形されたパネルの全体断面図、
図1(b)はその一部の拡大図、
図1(c)はこのパネルの平面図である。なお、
図1(a)は
図1(c)のA−A線断面図である。
図2(a)は、このパネルを成形するための成形装置の断面図、
図2(b)はその一部の拡大図、
図3はパネル成形途中の
図2(b)と同一部分の断面図である。
【0026】
このパネル4は、車輌の樹脂製窓ガラスである。このパネル4は、
図2に示す二色成形装置によって二色成形されたものであり、一次成形体としての透明板状のパネル本体1と、該パネル本体1の後面の全周縁部を周回するように設けられた二次成形体としての枠状部2とを備えている。なお、枠状部2は不透明であり、枠状部2よりも内周側すなわち枠状部2が重なっていないパネル板央部は透明領域3となっている。枠状部2の後面には、
図3のように、バルブピン16を押し込むことにより生じた凹陥部2hが存在している。
【0027】
パネル本体1の厚みt
1は1〜10mm、特に2〜8mm、とりわけ2〜5mmであることが好ましい。枠状部2の凹陥部2h以外の厚みt
2は1〜5mm、特に1.5〜4mm、とりわけ2〜3.5mmであることが好ましい。t
1/t
2は0.75〜5.0、特に1.25〜4.0、とりわけ1.5〜3.0程度が好ましい。凹陥部2hの深さt
3と枠状部の厚さt
2との比t
3/t
2は0.05〜0.5、特に0.1〜0.4、とりわけ0.15〜0.3程度が好ましい。凹陥部2hの深さt
3と直径dとの比t
3/dは0.01〜1.0、特に0.025〜0.5、とりわけ0.03〜0.3程度が好ましい。
【0028】
枠状部2の厚さt
2が1mmよりも小さい場合、充填圧力が高くなりすぎて未充填が生じたり、ゲートシールが早く充填密度が下がってディンプル状微小凹部が生じるおそれがある。
【0029】
枠状部2の厚さt
2が5mmよりも大きい場合、肉厚が大きすぎるため、バルブピンを押し込んでも、ゲート付近における枠状部2の収縮の方が大きくなってしまい、パネル本体1にディンプル状微小凹部が生じるおそれがある。
【0030】
一次成形品としてのパネル本体1の厚さt
1が1mmよりも小さいと、枠状部2(二次成形体)を成形する際のパネル本体1の剛性強度が不足し、枠状部2の収縮の影響を顕著に受け、枠状部2の収縮による引き込み力に対して抵抗がなくなるため、パネル本体(一次成形体)1に微小凹部が生じるおそれがある。
【0031】
パネル本体1の厚さt
1が10mm超である場合、パネル本体1の肉厚中心部の冷却固化が遅いため、枠状部2にバルブピンを押し込んでも、パネル本体1に微小凹部が生じるおそれがある。
【0032】
凹陥部2hの深さt
3と枠状部の厚さt
2との比t
3/t
2が0.05より小さい場合、押し込み(圧縮)の効果が小さく、樹脂の収縮を効果的に抑制することができずに、微小凹部が改善されないおそれがある。
【0033】
凹陥部2hの深さt
3と枠状部の厚さt
2との比t
3/t
2が0.5を超える場合は、押し込み力がパネル本体側にも伝わり、逆にパネル本体に残留歪や変形を生じ意匠性を損なうおそれがある。
【0034】
このパネル4は、パネル本体1の前面(第1図の上面)側が凸となるように湾曲している。このパネル4は略長方形状であるが、正方形状など他の形状であってもよい。パネル4の寸法には特に制限はなく、その用途に応じて適宜選択して決定すればよい。通常、自動車の窓材用途としては、パネル本体1の面積として0.1〜2.5m
2、その透明領域3の面積として400cm
2〜2m
2程度、枠状部2の幅は20〜200mm程度である。中でも、パネル本体1の面積として0.2〜2m
2、透明領域3の面積として800cm
2〜1m
2、枠状部2の幅は30〜150mmであることが好ましい。
【0035】
このパネル4は二色成形により成形されたものである。以下に、
図2(a),(b)及び
図3を参照してパネル4の成形装置及びそれを用いた成形方法について説明する。
【0036】
可動型11にパネル本体1を成形するためのキャビティ11aが設けられている。この可動型11を、図示しない第1の固定型に型締めし、第1の合成樹脂材料(1次材)を射出してパネル本体1を成形する。第1の固定型から可動型11を型開きした後、この可動型11を第2の固定型12に型締めし、枠状部成形用のキャビティ12aにホットランナ13からゲート14を介して第2の合成樹脂材料(2次材)を射出し、枠状部2を成形する。ゲート14のキャビティ12a内面における直径が凹陥部2hの直径dに相当する。
【0037】
ゲート14を開閉するためにバルブピン16が設けられている。バルブピン16は、シリンダ装置等の駆動装置20によってその軸心線方向に進退動される。バルブピンの駆動源はエアシリンダー、油圧シリンダー、モーターなど、圧縮に必要な軸力を発生させることが出来れば特に限定されないが、十分な軸力の発現の点からは油圧シリンダー、モーターが好ましく、金型への装着効率の点からは、油圧シリンダーが好ましい。バルブピン16の先端部外周縁のテーパ面が、ゲート14の内部に設けられたテーパ面よりなるバルブシート14tに対し離反又は当接することにより、ゲート14が開又は閉となる。
【0038】
キャビティ12a内面におけるゲート14の直径は、1mm以上、例えば1〜20mm、特に2〜16mm、とりわけ3〜12mmであることが好ましい。ゲート14の直径が1mm未満であると、ゲートシール時間が早まり、充填密度が下がって、ディンプル状微小凹部が発現しやすくなる危険性がある。2次材(枠状部2を成形するための第2の合成樹脂材料)の射出成形時の樹脂の充填圧力が高くなりすぎ、充填不足(充填不良)を生じたり、高圧による歪がパネル本体1の前面に生じる場合がある。
【0039】
バルブピン16の先端部以外の直径は2〜24mm、特に3〜16mm、とりわけ4〜12mm程度が好ましい。バルブピン16の直径が2mmよりも小さいと、軸径が細く、ゲートが小さくなる影響でゲートシール時間が早まり、充填密度が下がって、微小凹部が発現しやすくなる危険性がある。加えて、軸径が細くなりすぎて圧縮する領域が狭くなりすぎ、収縮の抑制につながらず、微小凹部が発現しやすくなるおそれがある。バルブピン16の直径が24mmよりも大きいと、ホットランナ先端温度の影響を大きく受け、枠状部2の冷却速度が小さくなり、収縮力が大きくなって微小凹部が生じるおそれがある。加えて、圧縮に必要な軸力が大きくなり、駆動源の能力では圧縮しにくくなり、微小凹部が効果的に改善されなかったり、また、駆動源のサイズが大きくなり金型内に装着できない問題が発生したりする場合がある。
【0040】
バルブピン16は、先端部の外周縁がテーパ状となっており、バルブシート14tに当接可能となっている。バルブピン16先端部のテーパ角とバルブシート14tのテーパ角とは等しい。バルブピン16の先端テーパ部がバルブシート14tに当接した状態において、バルブピン16の先端はキャビティ12a内に突出する。この突出高さは、前記凹陥部2hの深さt
3と同一である。
【0041】
ホットランナ13はマニホールド17、ノズル19等を加熱するためのヒータ(図示略)を内蔵している。バルブピン16を後退させたバルブ開状態で、射出成形機(図示略)からの第2の合成樹脂材料がノズルタッチ部18、マニホールド17、ノズル19及びゲート14を介してキャビティ12a内に射出される。
【0042】
キャビティ12a内への第2の合成樹脂材料(2次材)の充填が完了した後、駆動装置20によってバルブピン16を前進させ、
図3のようにバルブシート14tに当接させる。このとき、バルブピン16の先端は、ゲート14からキャビティ12a内に突出し、ゲート14付近の2次材が圧縮される。バルブピン16を前進させるタイミングは第2の合成樹脂材料充填完了後0〜20秒、好ましくは0〜10秒、さらに好ましくは0〜5秒である。バルブピン前進のタイミングが0秒より短いと、樹脂充填時にバルブピンを前進させ始めることになるので、充填圧力が急激に上昇し、充填不足(充填不良)を生じたり、バルブピンによる2次材の圧縮の効果が無くなるため微小凹部が発現しやすくなる。20秒より長いと、樹脂の固化が進み過ぎていて、駆動源の軸力で圧縮をかけることができず、収縮の抑制効果が小さくなり、微小凹部が発現してしまう場合がある。さらに、射出圧縮成形を併用した場合には、第2の合成材料の逆流が生じ充填密度が下がりやすくなるため、微小凹部の改善効果が十分ではなくなるおそれがある。
【0043】
バルブピン16のストローク量は、最前進位置において第2の合成樹脂材料を圧縮することができ、かつ、ノズル先端の開口を十分に確保することができれば特に限定はされないが、5〜30mm、特に10〜25mm、とりわけ15〜20mm程度が好ましい。ストローク量が5mmを下回ると、ホットランナノズル先端の開口が妨げられ、充填圧力の圧力損失により樹脂未充填が生じたり、充填密度が低くなって微小凹部の発現に繋がりやすくなったりする。30mmを上回ると、駆動装置の長さが長くなるため金型内に装着しにくくなったり、樹脂の抵抗力を受け十分な圧縮ができなくなり、微小凹部の改善効果が十分ではなくなったりするおそれがある。
【0044】
バルブピン16が押し込まれる部位及びその周辺部を適切な温度に制御するために、金型の冷却機構や、バルブピン16の温度を適切に調整することが好ましい。このようにバルブピンを冷却することにより、押し込まれたバルブピンの外周に再溶融固化した樹脂が付着することや、次の射出のためにバルブピンが後退した際に、それらの付着物がホットランナ内に引き込まれることによって起こるコールドスラッグやシルバーなどの不具合が発生しにくくなる。
なお、バルブピン16の温度調整は、バルブピン16の駆動装置20に冷却配管を配設し、駆動装置20を介して行うことが好ましい。この場合、冷却水の温度は0〜40℃であることが好ましく、5〜30℃がより好ましく、10〜20℃がさらに好ましい。
【0045】
キャビティ12a内の第2の合成樹脂材料が硬化した後、型開きし、パネル4を脱型する。このパネル4の枠状部2のゲート14部分には、ゲートピン16先端部の抜去痕よりなる凹陥部2hが生じる。この実施の形態では、ゲート14を4ヶ所に設けているが、これに限定されない。
【0046】
上記のように金型から脱型したパネル4を好ましくは100〜130℃、特に120〜130℃に1〜5時間、特に1〜2時間保持するアニール処理を施し、除歪することもできる。
【0047】
また、このパネル4のパネル本体1の前面の全体と、パネル本体1の後面のうち透明領域3とにハードコート原液を塗布した後、UV照射又は加熱により硬化処理し、硬質被膜(ハードコート層)を形成してもよい。
【0048】
この硬質被膜を形成する場合には、硬質被膜形成時のパネル本体の温度上昇によって、例えば熱硬化性硬質被膜形成の熱硬化処理によってアニール処理を兼用させてもよい。
【0049】
従来の工法により成形されたパネルにあっては、後工程の熱処理によって生じる枠状部の2次収縮によって、パネル本体1の前面にディンプル状微小凹部が発現したり、その深さが大きくなったりする場合がある。しかし、このようにして成形された本発明のパネルにあっては、枠状部2のゲート14付近がバルブピン16によって押圧され、圧縮されるため、ゲート14付近における2次材(枠状部2)の冷却固化時の収縮力が小さいものとなる。このため、後工程においてもパネル本体1のゲート14付近の前面にディンプル状微小凹部が生じることが防止される。
【0050】
なお、
図2,3のように第2の合成樹脂材料をキャビティ12aに射出する場合、ゲート14から射出された第2の合成樹脂材料がパネル本体1の後面のうちゲート14と対峙するゲート対峙部付近を侵食し、ゲート対峙部付近におけるパネル本体1の肉厚が小さくなることがある。このようなゲート対峙部付近の侵食(入り込み)を抑制するためには、2次材が一次成形体に与える熱履歴を抑制することが好ましい。熱履歴を抑制する方法としては、2次材の樹脂温度を低めに設定したり、2次材の充填速度を早めに設定し、充填時間を短くすることが効果的である。2次材の充填時間はその樹脂温度によっても変わってくるが、通常1〜10秒、好ましくは2〜8秒、さらに好ましくは3〜5秒である。充填時間を短くするには、ゲートの数を増やして、1つのゲートからの射出樹脂量を少なくするのが好ましい。
【0051】
一次成形体(パネル本体1)の冷却時間を長めに設定し、十分に固化を進行させることが微小凹部防止に効果的である。二色成形における一次成形体の冷却時間は、樹脂温度や金型温度によっても変わるが、通常10〜90秒、好ましくは20〜85秒、さらに好ましくは30〜80秒である。また、インサート成形方式とすることも入り込みに対しては効果的である。
【0052】
圧縮に必要な軸力は、二次成形体に圧縮をかけ、ディンプル状凹部の抑制に効果が発揮される軸力とすればよいが、通常10〜4,300N、好ましくは20〜2,400N、さらに好ましくは43〜1,700Nである。軸力が10N未満では、バルブピンによる圧縮が効果的にできなる場合があり、4,300Nを超えると、軸力が強すぎて圧力が一次成形体側にも伝わり、逆に一次成形体に残留歪や変形を生じ意匠性を損なうおそれがある。
【0053】
また、
図1(a)、(b)においては、バルブピン16を押し込むことにより生じた凹陥部2hの形状がバルブシート14tの形状から延在するテーパ状で示されているが、凹陥部2hの形状は特に限定されるものではなく、バルブピン先端部は、例えば、円柱状になっていてもよい。特に、バルブピン16を押し込む際の抵抗力を考えると、テーパ状が延在していることがより好ましい。
【0054】
本発明方法によって成形されるパネルでは、枠状部2を成形した際、特に枠状部2の内周付近における収縮力の影響を低減するため、枠状部2の内周部をパネル中心側ほど肉厚が連続的または段階的に薄くなる厚さ漸減領域を備える構成としてもよい。
【0055】
本発明では、
図4の固定型12Bのように、ゲート14直前のノズル19末端部にシリンダボア部14sを設け、このシリンダボア14s内に充填された樹脂(2次材)を充填工程の最末期にバルブピン16Bによってキャビティ12a内に押し込み、これによってキャビティ12a内のゲート14付近における2次材を圧押し、パネル表面におけるディンプル状凹部の発生を防止するようにしてもよい。
【0056】
この実施の形態では、ゲート14のテーパ状バルブシート14tは、シリンダボア部14sの反キャビティ側に設けられている。バルブピン16Bには、このバルブシート14tと係合するテーパ部16aがその先端よりも反キャビティ側に設けられている。テーパ部16aとバルブシート14tのテーパ角は同一である。また、バルブピン16Bには、このテーパ部16aからキャビティ側に突出するプランジャ部16bが設けられている。プランジャ部16bの外径はシリンダボア部14sの内径よりもごくわずかに小さくなっており、プランジャ部16bがシリンダボア部14sに内嵌して摺動可能となっている。
【0057】
この実施の形態では、プランジャ部16bの軸方向長さはシリンダボア部14sの軸方向長さと同一であり、テーパ部16aがバルブシート14tに当接した状態においてプランジャ部16bの先端面は、その周囲のキャビティ12a内面と面一状となる。
【0058】
シリンダボア部14sの軸方向長さLは1〜10mm、特に1.5〜7mm、とりわけ2〜5mmであることが好ましい。また、リンダボア部14sの軸方向長さLと内径i(L,iは図中に記載なし。)との比L/iは0.25〜1.7、特に0.5〜1.0であることが好ましい。
【0059】
図4の成形装置のその他の構成は
図2,3の成形装置と同一であり、同一符号は同一部分を示している。
【0060】
この成形装置を用いてパネルを成形する場合も、可動型11を、図示しない第1の固定型に型締めし、第1の合成樹脂材料(1次材)を射出してパネル本体1を成形する。第1の固定型から可動型11を型開きした後、この可動型11を第2の固定型12Bに型締めし、枠状部成形用のキャビティ12aにホットランナ13からゲート14を介して第2の合成樹脂材料(2次材)を射出する。キャビティ12a内に2次材を充填した後、バルブピン16Bを前進させる。テーパ部16aがバルブシート14tに当接するよりも前に、プランジャ部16bがシリンダボア部14sに入り込み、バルブピン16の前進に伴って、シリンダボア部14s内の2次材がキャビティ12a内に押し込まれる。これにより、キャビティ12a内におけるゲート14付近の2次材が押圧され、この2次材の冷却固化時の収縮力が小さいものとなる。このため、パネル本体1の前面にディンプル状微小凹部が生じることが防止される。
【0061】
図4では、バルブピン16Bのテーパ部16aがバルブシート14tに着座したバルブ閉状態において、バルブピン16Bの先端面は、その周囲のキャビティ12a内面と面一となっていたが、
図5のバルブピン16Cのように、バルブ閉状態においてバルブピン16Cの先端部がキャビティ12a内に突出し、ゲート14付近の2次材をさらに押圧するようにしてもよい。また、図示はしていないが、シリンダボア部14s内の2次材をキャビティ12a側に押し込むことができれば、バルブ閉状態においてプランジャ部16aの先端がゲート14から若干反キャビティ側に後退してもよい。
図5のその他の構成は
図4と同一であり、同一符号は同一部分を示している。
【0062】
本発明においては、上記のように、バルブピン16Cの先端面がキャビティ12aの内面と同一な場合、シリンダボア部14s内の2次材が残留する場合は、バルブピンの先端形状が製品形状として残存するため、バルブピンの先端形状は、テーパのない円柱形状であることが好ましい。
【0063】
本発明の成形方法にあっては、バルブピン16によってゲート14付近の2次材を圧縮することに加え、二次成形体のゲート14付近の厚さをその周囲部よりも小さくし、二次成形体の冷却固化時に該ゲート14付近に生じる収縮力を小さくし、一次成形体の表面に微小凹部が生じることを防止するようにしてもよい。
図6(a)はこの成形方法により成形されたパネル4Aの一部断面図、
図6(b),(c)はその成形装置を示す断面図である。
【0064】
図6(a)の通り、このパネル4Aにあっては、枠状部2の後面のうちゲート14付近に凹所2aが設けられ、ゲート14付近の枠状部2が肉薄部2bとなっている。凹陥部2hは、この凹所2aの中央に設けられている。
【0065】
このパネル4Aを成形するには、第2の固定型12の代わりに、
図6(b),(c)に示す第2の固定型12Aを用いる。第2の固定型12Aのゲート14付近は、キャビティ12aに向って突出する凸部15となっている。この凸部15を設けたことにより、枠状部2の後面に凹所2aが形成され、これにより枠状部2に肉薄部2bが形成される。凸部15は、この実施の形態では円盤形状である。凸部15の側周面は、キャビティ12a内に突出するほど直径が小さくなるように傾斜している。
図6のその他の構成は前記実施の形態と同一であり、同一符号は同一部分を示している。
【0066】
このパネル4Aを成形する場合も、可動型11を、図示しない第1の固定型に型締めし、第1の合成樹脂材料(1次材)を射出してパネル本体1を成形し、第1の固定型から可動型11を型開きした後、この可動型11を第2の固定型12Aに型締めし、枠状部成形用のキャビティ12aにホットランナ13からマニホールド17、ノズル19及びゲート14を介して第2の合成樹脂材料(2次材)を射出し、枠状部2を成形する。
【0067】
キャビティ12a内への第2の合成樹脂材料の充填後、前記実施の形態と同様にバルブピン16をキャビティ12a内に突出させる。キャビティ12a内の第2の合成樹脂材料が冷却固化した後、型開きし、パネル4Aを脱型する。このパネル4Aの枠状部2には、凸部15の脱型痕よりなる凹所2aが存在し、この凹所2aの奥底面から肉薄部2bに食い込むように凹陥部2hが存在する。
【0068】
枠状部2の肉薄部2bの厚さ(凹所2h以外の部分の厚さ)t
4は0.5mm以上、特に1〜2mmであることが好ましく、この肉薄部2bの厚さt
4と肉薄部2b以外の部分の厚さt
2との比t
4/t
2は0.25〜0.75、特に0.3〜0.5程度が好ましい。t
4/t
2が0.25よりも小さいと肉薄部2bが過度に薄肉化し、枠状部2の射出成形時の充填圧力が高くなりすぎて、充填不足(充填不良)を生じたり、高圧による歪がパネル本体1の前面に生じたりする場合がある。さらに、外力や衝撃力が加わった場合に応力集中を生じ、枠状部2の強度、耐久性が損なわれる場合がある。また、肉薄部2bをさらにバルブピン16を用いて押し込むことになるため、押し込み力が一次成形体側にも伝わり、逆に一次成形体に残留歪や変形を生じ意匠性を損なうおそれがある。また、t
4/t
2が0.75よりも大きいと、ゲート部の収縮が抑制されず、微小凹部の抑制効果が小さくなる。
【0069】
肉薄部2bを生じさせるための凹所2aは、凹陥部2hを中心とした円形凹所であることが好ましい。この場合、円形凹所2aの外周縁の直径すなわち肉薄部2bの直径Dは、凹陥部2hの直径dの1〜5倍、特に1.5〜4.5倍、とりわけ2〜4倍であることが好ましい。ただし、凹所2aは非円形(例えば楕円形)であってもよく、その場合、直径は短径と長径の平均とする。
【0070】
肉薄部2bの直径Dが凹陥部2hの直径dすなわちゲート14の直径の5倍を超えると、2次材の射出成形時の樹脂の充填圧力が高くなりすぎ、充填不足(充填不良)を生じたり、高圧による歪がパネル本体1の前面に生じたりする場合がある。
【0071】
図4の固定型12Bでは、ゲート14付近のキャビティ12a内面は、その周囲と面一状の平面となっているが、
図7の固定型12Cのように、ゲート14付近のキャビティ12a内面にキャビティ12a内に突出する凸部15’を設け、これによってゲート14付近の枠状部2の厚みを小さくするようにしてもよい。この凸部15’は、ゲート14から離れるほど突出高さが小さくなる円錐状であるが、前記
図6の凸部15と同様の形状であってもよく、さらに他の形状であってもよい。
図7のその他の構成は
図4と同一であり、同一符号は同一部分を示している。
【0072】
図7ではバルブ閉状態においてバルブピン16Bの先端はゲート14と面一状となっているが、
図6のバルブピン16Cのように、先端をキャビティ12a内に突出させてもよい。図示は省略するが、
図4(b)、
図7のようにシリンダボア部14s内の2次材をプランジャ部16aでキャビティ12a内に押し込む場合、バルブ閉状態においてプランジャ部16aの先端がゲート14から若干反キャビティ側に後退してもよい。
【0073】
上記のように、本発明の多色成形品及びその成形方法にあっては、2次材を二次成形体用キャビティに充填した後、バルブピンによって押圧し、ゲート付近の2次材を圧縮することによって、二次成形体の冷却固化時に該ゲート付近に生じる収縮力が小さくなり、一次成形体の表面(第1の板面)に微小凹部が生じることを抑制できる。
【0074】
ホットランナ金型を使用した単色、多色射出成形においては、ゲートの開閉を担うバルブピンで成形体を押圧しようとは、通常は考えない。これは、ホットランナ内部に後退したバルブピンが高温に加熱された状態となり、特に多色成形の場合、このような高温のバルブピンが二次成形体内に押し込まれることは、冷却固化した樹脂の再溶融、ゲート付近の樹脂固化速度の低下、それによるヒケの発生につながり、結果、一次成形体の表面微小凹部の発生につながることが予想されるためである。
【0075】
さらに、押し込まれたバルブピンの外周に再溶融固化した樹脂が付着し、次の射出のためにバルブピンが後退した際に、それらの付着物がホットランナ内に引き込まれ、それによって、コールドスラッグやシルバーなどの不具合が発生しやすくなることも予想される。このことからも、やはり、ゲート開閉のためのバルブピンを用いて成形体を押圧、圧縮することは、到底行なおうとは考えない。
【0076】
このように、ホットランナ金型を用いた射出成形において、バルブピンで押圧、圧縮することは、上記のような問題の発生が懸念され本発明に想到することは容易ではなかったが、驚くべきことに、本発明者は、ホットランナ金型を使用した多色成形において、ゲート開閉を担うバルブピンで二次成形体を押圧、圧縮することより、一次成形体の表面微小凹部の問題を解決することができたのである。
【0077】
本発明においては、上記のような懸念点を回避し、一次成形体の表面微小凹部の発生をより効果的に抑制するために、バルブピンを適当な温度に冷却したり、ストローク量を調整したりすることが、より好ましい態様となる。また、一次成形体、二次成形体の厚さを考慮し、バルブピン押圧、圧縮に必要な軸力を調整して凹陥部の深さを適宜調整することも、より好ましい一態様となる。
【0078】
本発明は二色成形に限定されるものではなく、二色以上の多色成形に適用できる。また、多色成形の成形方法にも限定されるものでなく、対向反転式やプラテン回転式などの多色成形機を利用する場合や、インサート式の多色成形共に適用できる。特に多色成形機を用いた多色成形の場合、一次成形体の冷却時間を必要以上に長くすることが難しいため、一次成形体の温度が比較的高い状態で二次成形材が成形される場合が多く、本発明の効果をより有効に発揮することができる。
【0079】
<パネルの構成材料>
次に、本発明方法によって自動車用窓ガラス等を成形する場合に好適な材料について説明する。
【0080】
パネル本体の構成材料は、透光性の樹脂であれば、従来公知の任意のものから適宜選択することが出来る。ここで、透光性とは、JIS K7105に準拠して測定された表面の平滑な厚み3mmの板状成形品における全光線透過率として、通常10%以上、好ましくは15%以上、更に好ましくは20%以上であり、Haze値が通常10%以下、好ましくは5%以下、更に好ましくは3%以下であることを意味する。染料または顔料を含有する透光性の樹脂においては、斯かる染料または顔料の使用割合は、樹脂100重量部に対し、通常0.001〜2重量部、好ましくは0.005〜1重量部、更に好ましくは0.005〜0.5重量部である。
【0081】
パネル本体1の構成材料としては、例えば、ポリスチレン樹脂、ハイインパクトポリスチレン樹脂、水添ポリスチレン樹脂、ポリアクリルスチレン樹脂、ABS樹脂、AS樹脂、AES樹脂、ASA樹脂、SMA樹脂、ポリアルキルメタクリレート樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリフェニルエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、非晶性ポリアルキレンテレフタレート樹脂、ポリエステル樹脂、非晶性ポリアミド樹脂、ポリ−4−メチルペンテン−1、環状ポリオレフィン樹脂、非晶性ポリアリレート樹脂、ポリエーテルサルフォン、スチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー等の熱可塑性エラストマーが挙られる。これらの中では、ポリカーボネート樹脂やポリメチルメタクリレート樹脂等の透光性の樹脂が好ましく、耐衝撃性や耐熱性の面から、ポリカーボネート樹脂(PC)、中でも、芳香族ポリカーボネート樹脂を主構成樹脂とするものが好ましい。なお、主構成樹脂とするとは、全樹脂成分中の芳香族ポリカーボネート樹脂の割合が通常50重量%以上、好ましくは60重量%以上、更に好ましくは70重量%以上であることを意味する。
【0082】
PCを主構成樹脂とする場合に併用する樹脂は、ポリスチレン樹脂、ABS樹脂、AS樹脂、AES樹脂、ASA樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリメタクリルメタクリレート樹脂、ポリエステル樹脂などが挙げられ、その形態は、透明性を維持する形態であればアロイでも共重合体でもよい。
【0083】
本発明で使用するPCは、例えば、芳香族ジヒドロキシ化合物とカーボネート前駆体とを、または、これらに併せて少量のポリヒドロキシ化合物などを反応させて得られる、直鎖または分岐の熱可塑性の重合体または共重合体である。PCは公知の方法によって製造することが出来、製造方法としては、界面重合法、溶融エステル交換法、ピリジン法、環状カーボネート化合物の開環重合法、プレポリマ−の固相エステル交換法などが挙げられる。
【0084】
原料として使用される芳香族ジヒドロキシ化合物としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(別名:ビスフェノールA)、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン(別名:テトラブロモビスフェノールA)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−ブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1−トリクロロプロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサクロロプロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン等のビス(ヒドロキシアリ−ル)アルカン類;1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン等のビス(ヒドロキシアリ−ル)シクロアルカン類;9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン等のカルド構造含有ビスフェノール類;4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルエーテル等のジヒドロキシジアリ−ルエーテル類;4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルフィド等のジヒドロキシジアリ−ルスルフィド類;4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルホキシド等のジヒドロキシジアリ−ルスルホキシド類;4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルホン等のジヒドロキシジアリ−ルスルホン類;ハイドロキノン、レゾルシン、4,4’−ジヒドロキシジフェニル等が挙げられる。
【0085】
上記の中では、好ましくはビス(4−ヒドロキシフェニル)アルカン類であり、耐衝撃性の点から特に好ましくは2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(別名:ビスフェノールA)である。これらの芳香族ジヒドロキシ化合物は、2種類以上を併用してもよい。
【0086】
芳香族ジヒドロキシ化合物と反応させるカーボネート前駆体としては、カルボニルハライド、カーボネートエステル、ハロホルメ−ト等が使用され、具体的には、ホスゲン;ジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート等のジアリ−ルカーボネート類;ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等のジアルキルカーボネート類;二価フェノールのジハロホルメ−ト等が挙げられる。これらのカーボネート前駆体は2種類以上を併用してもよい。
【0087】
また、本発明において、PCは、三官能以上の多官能性芳香族化合物を共重合した、分岐した芳香族ポリカーボネート樹脂であってもよい。三官能以上の多官能性芳香族化合物としては、フロログルシン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ヘプテン−2、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、2,6−ジメチル−2,4,6−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ヘプテン−3、1,3,5−トリ(4−ヒドロキシフェニル)べンゼン、1,1,1−トリ(4−ヒドロキシフェニル)エタン等のポリヒドロキシ化合物類の他、3,3−ビス(4−ヒドロキシアリ−ル)オキシインド−ル(別名:イサチンビスフェノール)、5−クロロイサチン、5,7−ジクロロイサチン、5−ブロムイサチン等が挙げられ、これらの中では、1,1,1−トリ(4−ヒドロキシフェニル)エタンが好ましい。多官能性芳香族化合物は、前記の芳香族ジヒドロキシ化合物の一部を置換して使用され、その使用量は、芳香族ジヒドロキシ化合物に対し、通常0.01〜10モル%、好ましくは0.1〜2モル%である。
【0088】
本発明に使用するPCの分子量は、任意であるが、溶液粘度から換算した粘度平均分子量[Mv]として、通常10,000〜35,000である。粘度平均分子量を10,000以上とすることにより、機械的強度が向上して機械的強度の要求の高い用途に好適なものとなる。一方、粘度平均分子量を35,000以下とすることにより、流動性が低下して成形加工が容易なものとなる。なお、後工程でハードコートなどの硬化被膜を形成する場合、粘度平均分子量は、好ましくは18,000〜35,000であり、更に好ましくは20,000〜30,000である。粘度平均分子量を18,000以上とすることにより表面に硬化被膜を形成した際の衝撃強度の低下を抑制することが可能となる。また、粘度平均分子量の異なる2種類以上のPCを混合してもよい。
【0089】
ここで、粘度平均分子量[Mv]とは、溶媒としてメチレンクロライドを使用し、ウベローデ粘度計で温度20℃での極限粘度[η](単位dl/g)を求め、Schnellの粘度式(η=1.23×10
−4M
0.83)から算出される値を意味する。
【0090】
本発明で使用するPCの末端水酸基濃度は、通常2,000ppm以下、好ましくは1,500ppm以下、更に好ましくは1,000ppm以下である。また、その下限は、特にエステル交換法で製造するPCでは、通常10ppm、好ましくは30ppm、更に好ましくは40ppmである。
【0091】
末端水酸基濃度を10ppm以上とすることにより、分子量の低下が抑制でき、樹脂組成物の機械的特性がより向上する傾向にある。また、末端基水酸基濃度を2,000ppm以下にすることにより、樹脂組成物の滞留熱安定性や色調がより向上する傾向にある。ハードコートなどの硬化被膜を形成する場合、末端水酸基濃度を100〜2,000ppm、好ましくは200〜1,000ppm、更に好ましくは300〜1,000ppmと末端水酸基濃度の高いものを適用することで、その密着性や耐久性が向上する。なお、末端水酸基濃度の単位は、PC重量に対する、末端水酸基の重量をppmで表示したものであり、測定方法は、四塩化チタン/酢酸法による比色定量(Macromol.Chem.88 215(1965)に記載の方法)である。
【0092】
また、成形品外観の向上や流動性の向上を図るため、本発明で使用するPCは、芳香族ポリカーボネートオリゴマーを含有していてもよい。この芳香族ポリカーボネートオリゴマーの粘度平均分子量[Mv]は、通常1,500〜9,500、好ましくは2,000〜9,000である。芳香族ポリカーボネートオリゴマーの使用量は、PCに対し、通常30重量%以下である。
【0093】
更に、本発明で使用するPCは、バージンPCだけでなく、使用済みの製品から再生されたPC、所謂マテリアルリサイクルされたPCを含有してもよい。使用済みの製品としては、光学ディスク等の光記録媒体、導光板、自動車窓ガラス・自動車ヘッドランプレンズ・風防などの車輌透明部材、水ボトル等の容器、メガネレンズ、防音壁・ガラス窓・波板等の建築部材などが挙げられる。また、製品の不適合品、スプルー、ランナ等から得られた粉砕品またはそれらを溶融して得たペレット等も使用可能である。再生されたPCの使用割合は、バージンPCに対し、通常80重量%以下、好ましくは50重量%以下である。
【0094】
パネル本体の構成材料には、前述の染料または顔料以外に、従来公知の任意の助剤を添加することが出来、その例としては、離型剤、熱安定剤、酸化防止剤、耐候性改良剤、熱線吸収剤、熱線反射剤、アルカリ石鹸、金属石鹸、可塑剤、流動性改良剤、造核剤、難燃剤、ドリッピング防止剤などが挙げられる。これらの助剤の使用量は公知の範囲から適宜選択される。
【0095】
枠状部の構成材料としては、特に制限されず、各種公知の任意の熱可塑性樹脂が使用できる。具体的には、例えば、ポリカーボネート樹脂;ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート樹脂などの熱可塑性ポリエステル樹脂;ポリスチレン樹脂、高衝撃ポリスチレン樹脂(HIPS)、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、アクリロニトリル−スチレン−アクリルゴム共重合体(ASA樹脂)、アクリロニトリル−エチレンプロピレン系ゴム−スチレン共重合体(AES樹脂)等のスチレン系樹脂;ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン樹脂;ポリアミド樹脂;ポリイミド樹脂;ポリエーテル樹脂;ポリウレタン樹脂;ポリフェニレンエーテル樹脂;ポリフェニレンサルファイド樹脂;ポリスルホン樹脂;ポリメタクリレート樹脂などが挙げられ、これらは2種以上を併用してもよい。これらの中では、熱安定性、剛性、パネル本体との密着性の点から、PCや熱可塑性ポリエステル樹脂が好ましい。特に、枠状部の構成材料が結晶性樹脂を含む場合に、枠状部の収縮による微小凹部が形成されやすいことから、本発明の微小凹部改善効果が顕著となり好ましい。また、成形後の後工程において熱処理を行う場合も、枠状部の2次収縮によって、パネル本体4の前面にディンプル状微小凹部が発現したり、その深さが大きくなったりする場合があるため、このような場合においても本発明の効果がより顕著に発揮される。中でも、PCを主材としたもの、特にPCと熱可塑性ポリエステル樹脂との併用が好ましい。
【0096】
本発明においては、パネル本体の構成材料が透光性であり、枠状部の構成材料が不透光性であることが、微小凹部の改善効果が顕著となり好ましい。また、パネル本体と枠状部の構成樹脂材料のうち10重量%以上配合される主成分は、両者の結合性を高めるために同一であることが望ましい。
【0097】
枠状部の構成材料として、PCと熱可塑性ポリエステル樹脂とから成るポリマーアロイを使用する場合、両成分の合計量に対するPCの割合は通常50〜95重量%である。
【0098】
上記の熱可塑性ポリエステル樹脂は、ジカルボン酸類またはその反応性誘導体から成るジカルボン酸成分と、ジオール類またはそのエステル誘導体から成るジオール成分とを縮合反応して得られる重合体または共重合体を示す。
【0099】
上記の熱可塑性ポリエステル樹脂の製造は、一般的には、チタン、ゲルマニウム、アンチモン等を含有する重縮合触媒の存在下、ジカルボン酸成分とジオール成分とを反応させ、副生する水または低級アルコールを系外に排出することにより行われる。なお、縮合反応は、バッチ式または連続式の何れの形式でもよく、固相重合により重合度を上げてもよい。
【0100】
ジカルボン酸類としては、芳香族ジカルボン酸および脂肪族ジカルボン酸の何れでもよいが、耐熱性、寸法安定性などの点から、芳香族ジカルボン酸が好ましい。芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、4,4’−ビフェニルエーテルジカルボン酸、4,4’−ビフェニルメタンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルスルホンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルイソプロピリデンジカルボン酸、1,2−ビス(フェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボン酸、2,5−アントラセンジカルボン酸、2,6−アントラセンジカルボン酸、4,4’−p−タ−フェニレンジカルボン酸、2,5−ピリジンジカルボン酸などが挙げられる。また、5−メチルイソフタル酸などのアルキル基置換体;テレフタル酸ジメチル、テレフタル酸ジエチル等のアルキルエステル誘導体などの反応性誘導体も使用することが出来る。
【0101】
上記の中では、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸およびそれらのアルキルエステル誘導体が好ましく、テレフタル酸およびそのアルキルエステル誘導体が更に好ましい。これらの芳香族ジカルボン酸は2種以上を併用してもよく、また、芳香族ジカルボン酸と共に、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸などの脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸を併用することも可能である。
【0102】
また、ジオール類としては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、デカメチレングリコール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール等の脂肪族ジオール類;1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオール、トランス−またはシス−2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール等の脂環族ジオール類;p−キシレンジオール、ビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールA−ビス(2−ヒドロキシエチルエーテル)等の芳香族ジオール類が挙げられる。また、これらの置換体も使用することが出来る。
【0103】
上記の中では、熱安定性、耐衝撃性、剛性等の点から、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールが好ましく、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオールが更に好ましく、エチレングリコールが特に好ましい。これらは2種以上を併用してもよい。また、ジオール成分として、分子量400〜6,000の長鎖ジオール類、すなわち、ポリエチレングリコール、ポリ−1,3−プロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等の1種以上を上記のジオール類と併用して共重合させてもよい。
【0104】
また、本発明で使用する熱可塑性ポリエステル樹脂は、少量の分岐剤を導入することにより分岐させることも出来る。分岐剤としては、トリメシン酸、トリメリチン酸、トリメチロ−ルエタン、トリメチロ−ルプロパン、ペンタエリスリト−ル等が挙げられる。
【0105】
枠状部で使用する熱可塑性ポリエステル樹脂の好適な具体例としては、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、ポリプロピレンテレフタレート樹脂(PPT)、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT),ポリへキシレンテレフタレート樹脂、ポリエチレン−ナフタレート樹脂(PEN)、ポリブチレンナフタレート樹脂(PBN)、ポリ(1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート)樹脂(PCT)、ポリシクロヘキシルシクロヘキシレート(PCC)等が挙げられる。これらの中では、流動性と耐衝撃性の点から、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、ポリプロピレンテレフタレート樹脂(PPT)、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)が好ましい。
【0106】
上記のポリエチレンテレフタレート樹脂は、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸を主成分とし、且つ、ジオール成分としてエチレングリコールを主成分とし、これらの縮合反応によって得られる飽和ポリエステル重合体または共重合体である。繰り返し単位としてのエチレンテレフタレート単位の割合は、通常70モル%以上、好ましくは80モル%以上である。また、ポリエチレンテレフタレート樹脂中には、重合時の副反応生成物であるジエチレングリコールが共重合成分として含まれることがあるが、このジエチレングリコールの量は、重合反応に使用するジオール成分の全量に対し、通常0.5〜6モル%、好ましくは0.5〜5モル%である。
【0107】
他の熱可塑性ポリエステル樹脂の具体例としては、例えば、ラクトンの開環重合によるポリピバロラクトン樹脂、ポリ(ε−カプロラクトン)樹脂、溶融状態で液晶を形成する液晶ポリマ−(Thermotropic Liquid Crystal Polymer;TLCP)等が挙げられる。具体的には、市販の液晶ポリエステル樹脂としては、イ−ストマンコダック社製「X7G」、ダ−トコ社製「Xyday(ザイダ−)」、住友化学社製「エコノール」、セラニ−ズ社製「ベクトラ」等が挙げられる。
【0108】
本発明で使用する熱可塑性ポリエステル樹脂の固有粘度は、通常0.4〜1.5dl/g、好ましくは0.5〜1.3dl/gである。ここで、固有粘度は、フェノール/テトラクロロエタン=50/50(重量比)の溶媒中30℃で測定した値を意味する。固有粘度が0.4dl/g未満の場合は耐衝撃性が低下し易く、1.5dl/gを超える場合は流動性が低下し易い。また、熱可塑性ポリエステル樹脂の末端カルボキシル基量は、通常5〜50μeq/g、好ましくは10〜30μeq/gである。末端カルボキシル基量が5μeq/g未満の場合は耐衝撃性が低下し易く、50μeq/gを超える場合は、耐湿熱性、熱安定性が不十分となり易い。
【0109】
更に、本発明で使用する熱可塑性ポリエステル樹脂としては、バージン原料だけでなく、使用済みの製品から再生された熱可塑性ポリエステル樹脂、所謂マテリアルリサイクルされた熱可塑性ポリエステル樹脂の使用も可能である。使用済みの製品としては、容器、フィルム、シート、繊維などが主として挙げられ、好ましくはPETボトル等の容器である。また、再生熱可塑性ポリエステル樹脂としては、製品の不適合品、スプルー、ランナ等から得られた粉砕品またはそれらを溶融して得たペレット等も使用可能である。
【0110】
また、枠状部の構成材料には、剛性、寸法安定性、耐熱性を向上させる目的でフィラーを配合することが好ましい。斯かるフィラーとしては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、硫酸バリウム、シリカ、炭酸カルシウム、酸化鉄、アルミナ、チタン酸カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸ナトリウム、亜硫酸カルシウム、珪酸マグネシウム(タルク)、珪酸アルミニウム(マイカ)、珪酸カルシウム(ウォラストナイト)、クレー、ガラスビーズ、ガラスパウダー、ガラス繊維、カーボン繊維、アラミド繊維、生分解繊維、けい砂、けい石、石英粉、シラス、けいそう土、ホワイトカーボン、鉄粉、アルミニウム粉などが挙げられる。これらの中では、ガラス繊維、カーボン繊維、アラミド繊維、生分解繊維、珪酸マグネシウム(タルク)、珪酸アルミニウム(マイカ)、珪酸カルシウム(ウォラストナイト)が好ましい。フィラーは2種類以上を併用することも出来る。
【0111】
上記のフィラーの形状は、球状、立方形状、粒状、針状、板状、繊維状などの何れの形状であってもよいが、最終的に得られる熱可塑性樹脂組成物の寸法安定性を向上させ、剛性を高く、外観を良好にすると言う観点から、板状または針状が好ましく、レーザー回折粒度(D50)が10μm以下のフィラーが好ましい。
【0112】
フィラーの使用量は、枠状部の全構成材料100重量部に対し、通常2〜50重量部、好ましくは5〜40重量部である。フィラーの配合量が2重量部未満の場合は、剛性、寸法安定性、耐熱性の改良効果が小さく、50重量部を超える場合は耐衝撃性が低下する場合がある。
【0113】
上記のフィラーは、無処理のままであってもよいが、樹脂成分との親和性または界面結合力を高める目的で、表面処理剤、高級脂肪酸またはそのエステル、塩などの誘導体、カップリング剤などで処理するのが好ましい。表面処理の際は、非イオン、陽イオン、陰イオン型などの各種の界面活性剤、各種の樹脂などの分散剤による処理を併せて行うならば、機械的強度および混練性が向上して好ましい。
【0114】
枠状部の構成材料には、帯電防止性や静電塗装が可能な導電性を付与する目的で導電性カーボンブラック及び/又は中空ナノカーボン繊維を配合することが出来る。導電性カーボンブラックとしては、アセチレンガスを熱分解して得られるアセチレンブラック、原油を原料としファーネス式不完全燃焼によって製造されるケッテェンブラック等が挙げられる。中空ナノカーボン繊維は、規則的に配列した炭素原子の本質的に連続的な多数層から成る外側領域と、内部中空領域とを有し、各層と中空領域とが実質的に同心に配置されている本質的に円柱状のフィブリルである。更に、上記の外側領域の規則的に配列した炭素原子が黒鉛状である。上記の中空領域の直径は通常2〜20nmである。この様な中空ナノカーボン繊維は、ハイペリオン・カタルシス社により、「グラファイト・フィブリル」と言う商品名で販売しており、容易に入手できる。
【0115】
また、本発明においては、枠状部の構成材料の曲げ弾性率がパネル本体の構成材料の曲げ弾性率以上であることが、パネルの剛性や強度の確保、構造部品への取付などの点から好ましい。さらに、枠状部の構成材料の曲げ弾性率がパネル本体の構成材料の曲げ弾性率以上である場合は、枠状部の収縮による微小凹部が形成されやすいことから、本発明の微小凹部改善効果が顕著となる。
【0116】
さらに、本発明においては、パネル本体は非強化系樹脂組成物で構成されるのに対し、枠状部はパネルの剛性や強度の確保、構造部品への取付などの点から強化系樹脂組成物で構成されるのが好ましい。すなわち、枠状部の樹脂材料には強化用フィラーを配合するのが好ましい。強化用フィラーとしては、例えば、ガラス繊維、カーボン繊維、芳香族ポリアミド繊維(アラミド繊維)、生分解繊維等の強化用繊維、タルク、マイカ、ウォラストナイトの群から選ばれる1種以上のものを使用でき、ガラス繊維が好ましい。さらに、枠部材に熱伝導性機能を持たせるために、熱伝導性を有する強化フィラーを含有することができる。熱伝導性を有するフィラーとしては、炭素繊維、黒鉛、窒化硼素、珪酸マグネシウム塩などが挙げられる。
強化用フィラーとしてガラス繊維等の強化用繊維を使用する場合は、強化用繊維の重量平均繊維長は、強度および分散性観点から、通常1.5〜10mm、好ましくは1.8〜5mmである。また、機械的強度、寸法精度、耐熱性を向上させるため、枠状部中の繊維の重量平均繊維長は通常0.1〜5mm、好ましくは0.2〜4mm、更に好ましくは0.3〜3mmである。枠状部中の繊維の重量平均繊維長を高く保つためには、射出成形機の射出シリンダーの構成が肝要で、特にスクリューの圧縮比を緩圧縮に、クリアランスを広く、チェックリングのクリアランスを広く取ることが効果的である。また、射出成形時の条件としては、樹脂温度の設定を高く、計量時の背圧を低く、射出速度を低く成形することが効果的である。
【0117】
パネル本体などの1次材側が非強化樹脂組成物で構成され、枠状部などの2次材側が強化系樹脂組成物の場合、1次材と2次材の金型側表面に生じる剛性差により2次材の収縮が1次材の前面を引きこみやすくなる。そのため、このような樹脂材料の組み合わせの場合に本発明を適用する効果が顕著となる。さらに、二次成形体は構造部品との接合部にもなるため、その接合部分が意匠面側から視認できない様に不透明であることが好ましい。一次成形体が透明性を有し、二次成形体が有色の場合、一次成形体側から見る際の色目に奥深さが出るため、パネル本体等の一次成形体前面の微小凹部が視認しやすくなる。このような組み合わせの場合も本発明の効果が顕著となる。
【0118】
前述の通り、本発明においては、パネル本体の傷つきや劣化を主に防止するため、保護膜としてのハードコート(硬質被膜)が設けられてもよい。斯かる硬質被膜は枠状部と反対側の前面にのみ設けられてもよいし、前面と後面の両方に設けられていてもよい。例えば、パネル本体の前面の全体と、パネル本体の後面のうちの透明領域とに硬質被膜を設けることも可能である。硬質被膜の厚さはパネル本体の厚さの1/100以下が好ましく、通常は1〜50μm特に5〜20μmが好ましい。
【0119】
上記の硬質被膜は、単層でもよいが、保護機能を高めるため、耐候性を高めるために2層以上の多層構造としてもよい。当該多層構造においては、最外層の硬度を最大に設定するのが好ましい。多層構造を有する硬質被膜としては、例えば、熱線遮蔽、紫外線吸収、サーモクロミック、フォトクロミック、エレクトロクロミックの各機能性層やプライマー層、着色加飾層などのうち、少なくとも一つ以上の機能を備えているのが好ましい。
【0120】
硬質被膜の構成材料は透明樹脂が好適である。斯かる透明樹脂としては、ハードコート剤として知られている公知の材料を適宜使用することが出来、例えば、シリコーン系、アクリル系、シラザン系、ウレタン系などの種々のハードコート剤を使用することが出来る。これらの中では、接着性や耐候性を向上させるために、ハードコート剤を塗布する前にプライマー層を設ける2コートタイプのハードコートが好ましい。コーティング方法としては、スプレーコート、ディップコート、フローコート、スピンコート、バーコート等が挙げられる。また、フィルムインサートによる方法、転写フィルムに好適な薬剤を塗布して転写する方法なども採用し得る。
【0121】
上記の硬質被膜を最外層として、その内層側に、各種機能(熱線遮蔽、紫外線吸収、サーモクロミック、フォトクロミック、エレクトロクロミックの各機能)の薄膜が形成されてもよい。また、車内側を構成する面には、防曇性を有する機能性層や熱伝導性を有する層、デフォッギングのための熱線などを配設しても良い。この際、防曇性を有する機能性層は再外層であることが好ましい。
【0122】
パネル本体の表面と上記の硬質被膜との間に透明樹脂層が設けられてもよい。
【0123】
本発明では、パネル本体1の後面と枠状部2との境界部に凹凸部を形成し、パネル本体1と枠状部2との結合強度を大きくしてもよい。本発明では、枠状部に、他部品を取り付けるための取付片を突設してもよい。
【0124】
本発明は広く工業的用途に有用であり、意匠面側の意匠性を求められる多層成形体に好適である。本発明は、特に、自動車用途に幅広く応用が可能であり、特に、バックドアウインドウ、サンルーフ、リアクォーターウインドなどの自動車用グレージング部材や、バックドアパネル、サイドドアパネル、ルーフ、フェンダー、ボンネットなどの外装パネル、など自動車用の外装パネル部品に好適である。また、本発明は、自動車用外装パネル部品以外にも、建設機械のキャノピーや、照灯用レンズ、ミラー、バイクの風防、銘板、太陽電池カバーまたは太陽電池基材、ディスプレー装置用カバーなどの幅広い用途に使用可能である。