【文献】
POTTIER, A. et al,Size tailoring of TiO2 anatase nanoparticles in aqueous medium and synthesis of nanocomposites. Characterization by Raman spectroscopy,J. Mater. Chem.,2003年 2月11日,Vol.13, No.4,p.877-882,DOI:10.1039/B211271J
【文献】
PARK, J. H. et al,Synthesis of Barium Titanate by Hydrothermal Method and Its Formation Mechanisms,JOURNAL OF CHEMICAL ENGINEERING OF JAPAN,2008年 7月20日,Vol.41, No.7,p.631-638,DOI:10.1252/jcej.07WE071
【文献】
牧俊夫,外,含水酸化チタン(IV)の諸性質におよぼす調製時の母液のpHの影響,日本化学会誌,1978年,Vol.1978, No.7,p.945-955,DOI:10.1246/nikkashi.1978.945
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
45〜65℃の温度に保持した水に、四塩化チタン水溶液とアルカリ水溶液を同時に加え、この際、生成した反応混合物の温度を45〜65℃の温度の範囲に保つと共に、pHを1.5〜3.5の範囲に保ちながら、四塩化チタンをアルカリで同時中和することによって、BET比表面積が200〜400m2/gの範囲にあると共に、X線回折によって測定される(101)面の回折ピークの半値幅が2.3°〜5.0°の範囲にあるアナターゼ型含水酸化チタンの水スラリーを得る工程、次いで、水酸化バリウム水溶液を常圧下に80℃から沸点までの温度に保ちつつ、これに上記アナターゼ型含水酸化チタンの水スラリーを加え、上記水酸化バリウムと上記含水酸化チタンを反応させて、チタン酸バリウム前駆体の水スラリーを得る工程、次いで、このようにして得られたチタン酸バリウム前駆体を24時間よりも短い時間にわたって水熱処理して、チタン酸バリウム粒子を得る工程を含む請求項1に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明によるチタン酸バリウム粉体の製造方法は、水酸化バリウム水溶液を常圧下に80℃から沸点までの温度に保ちつつ、これにBET比表面積が200〜400m
2/gの範囲にあると共に、X線回折によって測定される(101)面の回折ピークの半値幅が2.3°〜5.0°の範囲にあるアナターゼ型含水酸化チタンの水スラリーを加え、上記水酸化バリウムと上記含水酸化チタンを反応させて、チタン酸バリウム前駆体の水スラリーを得る工程、次いで、このようにして得られたチタン酸バリウム前駆体を24時間よりも短い時間にわたって水熱処理して、チタン酸バリウム粒子を得る工程を含むことを特徴とする。
【0015】
本発明において、用いるアナターゼ型含水酸化チタンのBET比表面積が400m
2/gよりも大きいときは、得られるチタン酸バリウムが結晶性に劣る。また、アナターゼ型含水酸化チタンのBET比表面積が200m
2/gよりも小さいときは、含水酸化チタンは結晶性は高いが、一方において、水酸化バリウムとの反応性が悪いため、得られるチタン酸バリウム粒子が結晶性において劣る。
【0016】
特に、本発明によれば、用いるアナターゼ型含水酸化チタンは、そのBET比表面積が200〜350m
2/gの範囲にあることが好ましく、特に、220〜330m
2/gの範囲にあることがより好ましい。
【0017】
更に、本発明によれば、用いるアナターゼ型含水酸化チタンは、X線回折によって測定される(101)面の回折ピークの半値幅が2.3°よりも小さいときは、含水酸化チタンは結晶性は高いが、水酸化バリウムとの反応性が悪いため、得られるチタン酸バリウム粒子は結晶性において低い。また、上記半値幅が5.0°よりも大きいときは、得られるチタン酸バリウム粒子が結晶性において低い。
【0018】
特に、本発明によれば、用いるアナターゼ型含水酸化チタンは、X線回折によって測定される(101)面の回折ピークの半値幅が2.3°〜4.0°の範囲にあるものが好ましく、なかでも、2.3°〜3.5°の範囲にあるものが好ましい。
【0019】
上述したように、BET比表面積が200〜400m
2/gの範囲にあると共に、X線回折によって測定される(101)面の回折ピークの半値幅が2.3°〜5.0°の範囲にあるアナターゼ型含水酸化チタンの水スラリーは、好ましくは、予め、45〜65℃の温度に保持した水に、それぞれ温度を45〜65℃の温度の範囲とした四塩化チタン水溶液とアルカリ水溶液を同時に加え、この際、生成した反応混合物のpHを1.5〜3.5の範囲として、好ましくは、2.0〜3.5の範囲として、四塩化チタンをアルカリで同時中和することによって得ることができる。
【0020】
従って、本発明によるチタン酸バリウム粉体の製造方法の最も好ましい製造方法は、45〜65℃の温度に保持した水に、四塩化チタン水溶液とアルカリ水溶液を同時に加え、この際、生成した反応混合物の温度を45〜65℃の温度の範囲に保つと共に、pHを1.5〜3.5の範囲に保ちながら、四塩化チタンをアルカリで同時中和することによって、BET比表面積が200〜400m
2/gの範囲にあると共に、X線回折によって測定される(101)面の回折ピークの半値幅が2.3°〜5.0°の範囲にあるアナターゼ型含水酸化チタンの水スラリーを得る工程、次いで、水酸化バリウム水溶液を常圧下に80℃から沸点までの温度に保ちつつ、これに上記アナターゼ型含水酸化チタンの水スラリーを加え、上記水酸化バリウムと上記含水酸化チタンを反応させて、チタン酸バリウム前駆体の水スラリーを得る工程、次いで、このようにして得られたチタン酸バリウム前駆体を24時間よりも短い時間にわたって水熱処理して、チタン酸バリウム粒子を得る工程を含む方法である。
【0021】
本発明によれば、上述したように、アナターゼ型含水酸化チタンの水スラリーは、好ましくは、四塩化チタンをアルカリで同時中和することによって得ることができるが、ここに、四塩化チタンをアルカリで同時中和するとは、予め、水を入れた容器中に四塩化チタン水溶液とアルカリ水溶液を同時に加え、上記容器中で混合して、四塩化チタンをアルカリで中和することをいう。
【0022】
上述した四塩化チタンのアルカリによる同時中和において、同時中和を終了した時点におけるスラリー中の含水酸化チタンの濃度は、特に限定されるものではないが、通常、TiO
2 換算で10〜50g/Lの範囲にあることが好ましい。同時中和を終了した時点におけるスラリー中の含水酸化チタンの濃度がTiO
2 換算で50g/Lよりも高いときは、アモルファス型含水酸化チタンが生成しやすいため、アナターゼ型含水酸化チタンを得難くなる。一方、同時中和を終了した時点におけるスラリー中の含水酸化チタンの濃度がTiO
2 換算で10g/Lより低いときは、生産性に劣ることとなる。
【0023】
上述した四塩化チタンのアルカリによる同時中和において、水、四塩化チタン水溶液及びアルカリ水溶液の温度はすべてが同じである必要はないが、相互に近接していることが好ましく、特に、すべてが同じであることが最も好ましい。
【0024】
上記アルカリ水溶液としては、水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物や、アンモニア水等が好ましく用いられる。また、アルカリ水溶液に代えて、固体のアルカリ性化合物を直接加えてもよい。
【0025】
上述した四塩化チタンのアルカリによる同時中和において、上記生成した反応混合物のpHが1.5〜3.5の範囲にあっても、中和温度が45℃よりも低いときは、アナターゼ型の含水酸化チタンを得ることができず、また、含水酸化チタンはそのBET法比表面積が400m
2/gを超える。また、中和温度が65℃よりも高いときは、四塩化チタンが加水分解し、ルチル型の含水酸化チタンが生成しやすくなるか、又は含水酸化チタンの半値幅が2.3°よりも小さくなる。ルチル型の含水酸化チタンは、水酸化バリウムとの反応性が悪く、得られるチタン酸バリウム粒子は結晶性に劣ることとなる。含水酸化チタンの半値幅が2.3°よりも小さいときも、得られるチタン酸バリウム粒子は結晶性に劣ることとなる。
【0026】
一方、上記中和温度が45〜65℃の範囲にあっても、生成した反応混合物のpHが3.5よりも大きいときも、アナターゼ型の含水酸化チタンを得ることができず、また、生成した含水酸化チタンのBET法比表面積が400m
2/gを超える。このような含水酸化チタンを用いるときは、得られるチタン酸バリウム粒子は、結晶性に劣る。また、生成した反応混合物のpHが1.5よりも小さいときは、生成する含水酸化チタンに塩化物イオンが不純物として多く残留し、その結果、水酸化バリウムとの反応性が悪くなり、得られるチタン酸バリウム粒子は結晶性に劣る。
【0027】
このように、本発明によれば、四塩化チタンを水中、アルカリで同時中和して、含水酸化チタンを生成させ、得られた水スラリーを濾過、水洗し、中和に伴って生成した塩化物イオン等を除去し、かくして得られたケーキを水に分散させることによって、チタン酸バリウム前駆体の水スラリーを得る工程において好ましく用いることができる含水酸化チタンの水スラリーを得る。
【0028】
本発明によれば、水酸化バリウム水溶液を常圧下に80℃から沸点までの範囲の温度に保ちつつ、これに上述したように、BET比表面積が200〜400m
2/gの範囲にあると共に、X線回折によって測定される(101)面の回折ピークの半値幅が2.3°〜5.0°の範囲にあるアナターゼ型含水酸化チタンの水スラリーを加え、上記水酸化バリウムと上記含水酸化チタンと反応させることによって、チタン酸バリウム前駆体の水スラリーを得る。
【0029】
ここに、上記水酸化バリウムと上記含水酸化チタンとの反応によって得られるチタン酸バリウム前駆体は、通常、BET比表面積が50〜200m
2/gの範囲にあるチタン酸バリウム微粒子である。上記水酸化バリウムと上記含水酸化チタンとの反応が常圧下での反応であるので、得られるチタン酸バリウム前駆体のBa/Ti比は1よりも小さいが、粉末X線回折によってチタン酸バリウムの結晶構造を有することが確認されている。
【0030】
上記水酸化バリウム水溶液において、溶媒は、水酸化バリウムと含水酸化チタンとの反応に有害な影響を与えない限りは、水溶性有機溶媒を含んでいてもよい。そのような水溶性有機溶媒として、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール等を挙げることができる。
【0031】
上記水酸化バリウムと含水酸化チタンとの反応によってチタン酸バリウム前駆体を得るに際して、水酸化バリウムと含水酸化チタンは、水酸化バリウム水溶液にアナターゼ型含水酸化チタンの水スラリーを加え終わった時点で、Ba/Tiモル比が1.1〜3.0の範囲であるように用いることが好ましい。上記水酸化バリウムと含水酸化チタンとの反応において、Ba/Tiモル比が1.1よりも小さいときは、アルカリ度が低いため、水酸化バリウムと含水酸化チタンの反応性が悪くなる。また、Ba/Tiモル比が3.0よりも大きいときは、水酸化バリウムと含水酸化チタンの反応性には問題はないが、反応に寄与しない水酸化バリウムを過剰に用いるので、製造費用が高くなる問題がある。
【0032】
上述したチタン酸バリウム前駆体の水スラリーを得る工程においては、水酸化バリウムと含水酸化チタンとの反応温度が重要である。上述したようなBET比表面積が200〜400m
2/gの範囲にあると共に、上記半値幅が2.3°〜5.0°の範囲にあるアナターゼ型含水酸化チタンであっても、水酸化バリウムとの反応温度が常圧下で80℃よりも低いときは、本発明に従って高結晶性のチタン酸バリウム粒子を得ることができない。反応温度の上限は、水酸化バリウムを含む反応混合物の沸点までの温度である。
【0033】
本発明の方法によれば、上述したようにして得られたチタン酸バリウム前駆体を24時間よりも短い時間にわたって水熱処理し、得られたスラリーを濾過し、水洗した後、乾燥することによって、目的とする結晶性にすぐれた均一な微粒子からなるチタン酸バリウム粉体を得ることができる。チタン酸バリウム前駆体を経ずに、水熱処理のみによってチタン酸バリウムを合成するときは、水酸化バリウムと含水酸化チタンの反応と粒子成長が同時に進行し、その結果、チタン酸バリウムの粒子内に水酸基が多く取り込まれるので、結晶性の高いチタン酸バリウム粒子を得ることが困難となる。
【0034】
この場合、水熱処理に供するチタン酸バリウム前駆体水スラリーは、BaTiO
3換算にて0.4〜1.0モル/L濃度の範囲のチタン酸バリウム前駆体を含むものであることが好ましい。
【0035】
本発明によれば、チタン酸バリウム前駆体の水スラリーは、通常は、濃縮したり、希釈したりすることなく、得られた濃度のまま、水熱処理に供すればよい。
【0036】
かくして、本発明によれば、チタン酸バリウム前駆体の水スラリーを、通常、そのまま、オートクレーブに仕込み、常圧下での沸点を超えて、通常、250℃以下であり、好ましくは、105〜250℃の範囲で、24時間よりも短い時間にわたって、好ましくは、0.5〜20時間にわたって水熱処理する。
【0037】
水熱処理の後、オートクレーブ内容物を常温まで冷却し、得られたスラリーを濾過、水洗し、乾燥して、チタン酸バリウム粉体を得る。乾燥温度は、通常、100〜150℃の範囲である。
【0038】
このようにして得られるチタン酸バリウム粉体は、結晶性にすぐれる均一な微粒子からなり、通常、BET比表面積は、10〜70m
2/gの範囲にある。
【0039】
本発明において、チタン酸バリウムの結晶性とは、その結晶子径の粒子径に対する比によって評価するものとし、結晶子径はチタン酸バリウム粉体の粉末X線回折から求めることができ、粒子径はチタン酸バリウム粉体のBET比表面積から求めることができる。本発明によって得られるチタン酸バリウム粉体は、上記意味における結晶性、即ち、結晶子径/粒子径が0.90〜1.10の範囲にあり、好ましい場合には、0.93〜1.07の範囲にあって、極めて1.00に近く、結晶性にすぐれている。本発明におけるこのような結晶性は、得られたチタン酸バリウム粉体におけるそれぞれの粒子の粒子径が結晶子径に極めて近いことを意味しており、それぞれの粒子が単結晶に近いことを示す。そこで、本発明においては、上述した意味の結晶性を単結晶性ということとする。
【0040】
このように、本発明によって得られるチタン酸バリウム粒子は、単結晶性が高く、それ故に熱収縮特性が著しく改善されている。その結果、本発明によって得られるチタン酸バリウム粉体は、これを成形し、焼結させたとき、収縮し始める温度が従来知られているものよりも高くなっており、従って、MLCCの製造における内部電極用共材や誘電体組成物として好適に用いることができる。
【0041】
以下に実施例を参照して、本発明を詳細に説明するが、本発明はそれら実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0042】
実施例1
(含水酸化チタン水スラリーの調製)
純水500mLをビーカーに入れ、60℃に加温した。四塩化チタン水溶液((株)大阪チタニウムテクノロジーズ製、TiO
2換算で3.8モル/L)350mLを2.5mL/分、純水7Lを50mL/分の速度で上記60℃に加温した水を入れたビーカーに加えると同時に、30重量%濃度の水酸化ナトリウム水溶液を加えて、pHを2.0、温度を60℃に調整しながら、四塩化チタンを同時中和することによって、TiO
2換算で14g/L濃度の含水酸化チタンの水スラリーを得た。
【0043】
この水スラリーを濾過、水洗して、ナトリウムイオンと塩化物イオンを除去した。得られたケーキに純水を加えて、TiO
2換算で110g/L濃度のアナターゼ型含水酸化チタンの水スラリーを得た。
【0044】
(チタン酸バリウム前駆体水スラリーの調製)
5L容量の反応容器に純水567mLと水酸化バリウム八水和物(堺化学工業(株)製)959gを入れ、100℃に加熱し、水酸化バリウム八水和物を水に溶解させて、水酸化バリウム水溶液を調製した。
【0045】
上記含水酸化チタンの水スラリーを温度100℃に保ちながら、同じく、温度を100℃に保った上記水酸化バリウム水溶液に1時間で加えた後、温度100℃で2時間反応させて、BaTiO
3換算で0.66モル/L濃度のチタン酸バリウム前駆体水スラリーを得た。水酸化バリウム水溶液に含水酸化チタンの水スラリーを加え終わった時点でのBa/Tiモル比は2.3であった。
【0046】
(チタン酸バリウム前駆体水スラリーの水熱処理)
上記BaTiO
3換算で0.66モル/L濃度のチタン酸バリウム前駆体水スラリーをオートクレーブ容器に入れ、190℃で0.5時間水熱処理した。この後、オートクレーブ内容物を室温まで放冷した。得られた水スラリーを濾過、水洗した後、130℃で乾燥して、チタン酸バリウム粉体を得た。
【0047】
実施例2
実施例1において、四塩化チタンの同時中和を温度50℃で行うと共に、チタン酸バリウム前駆体水スラリーの水熱処理を180℃で20時間行った以外は、実施例1と同様にして、チタン酸バリウム粉体を得た。
【0048】
実施例3
実施例1において、四塩化チタンの同時中和を温度50℃で行うと共に、チタン酸バリウム前駆体水スラリーの水熱処理を205℃で2時間行った以外は、実施例1と同様にして、チタン酸バリウム粉体を得た。
【0049】
実施例4
実施例1において、四塩化チタンの同時中和をpH3.0で行い、含水酸化チタンと水酸化バリウムとの反応を温度100℃で5時間行い、チタン酸バリウム前駆体水スラリーの水熱処理を130℃で0.5時間行った以外は、実施例1と同様にして、チタン酸バリウム粉体を得た。
【0050】
実施例5
実施例1において、四塩化チタンの同時中和を温度50℃で行うと共に、含水酸化チタンと水酸化バリウムとの反応を温度80℃で5時間行い、チタン酸バリウム前駆体水スラリーの水熱処理を200℃で2時間行った以外は、実施例1と同様にして、チタン酸バリウム粉体を得た。
【0051】
実施例6
実施例1において、四塩化チタンの同時中和をpH3.0で行い、水酸化チタンと含水酸化バリウムとの反応を温度95℃で5時間行い、チタン酸バリウム前駆体水スラリーの水熱処理を180℃で0.5時間行った以外は、実施例1と同様にして、チタン酸バリウム粉体を得た。
【0052】
また、このチタン酸バリウム粉体の熱収縮挙動を
図1に示す。このチタン酸バリウム粉体の熱収縮挙動は、チタン酸バリウム粉体を直径5mm、厚さ3mmのディスク状の成形物となるように成形用金型で1トン/cm
2の圧力で成形した後、熱機械分析装置((株)リガク製TMA8310)を用いて5℃/分の昇温速度で25℃から1350℃まで昇温して、その間の熱収縮率を測定した。この測定は、水素2%、残部が窒素である混合気体を200mL/分で流通させた還元雰囲気下で行った。
【0053】
実施例7
実施例1において、四塩化チタンの同時中和を温度50℃で行うと共に、含水酸化チタンと水酸化バリウムを温度100℃で2時間行い、チタン酸バリウム前駆体水スラリーの水熱処理を110℃で2時間行った以外は、実施例1と同様にして、チタン酸バリウム粉体を得た。
【0054】
実施例8
実施例1において、四塩化チタンの同時中和を温度45℃で行うと共に、チタン酸バリウム前駆体水スラリーの水熱処理を200℃で2時間行った以外は、実施例1と同様にして、チタン酸バリウム粉体を得た。
【0055】
実施例9
実施例1において、四塩化チタンの同時中和を温度45℃で行うと共に、チタン酸バリウム前駆体水スラリーの水熱処理を180℃で20時間行った以外は、実施例1と同様にして、チタン酸バリウム粉体を得た。
【0056】
実施例10
実施例1において、四塩化チタンの同時中和をpH3.5、温度45℃で行うと共に、チタン酸バリウム前駆体水スラリーの水熱処理を200℃で2時間行った以外は、実施例1と同様にして、チタン酸バリウム粉体を得た。
【0057】
比較例1
(含水酸化チタン水スラリーの調製)
純水500mLをビーカーに入れ、20℃に保った。四塩化チタン水溶液((株)大阪チタニウムテクノロジーズ製、TiO
2換算で3.8モル/L)350mLを2.5mL/分、純水7Lを50mL/分の速度で上記20℃に保った水を入れたビーカーに加えると同時に、30重量%濃度の水酸化ナトリウム水溶液を加えて、pHを5.0、温度を20℃に調整しながら、四塩化チタンを同時中和することによって、TiO
2換算で14g/L濃度の含水酸化チタンの水スラリーを得た。
【0058】
この水スラリーを濾過、水洗して、ナトリウムイオンと塩化物イオンを除去した。得られたケーキに純水を加えて、TiO
2換算で110g/L濃度のアモルファスの含水酸化チタンの水スラリーを得た。
【0059】
上記含水酸化チタンの水スラリーに、Ba/Tiモル比が2.3となるように、常温下、水酸化バリウム八水和物(堺化学工業(株)製)959gを加え、更に、純水を567mL加えて、含水酸化チタンと水酸化バリウムの混合物のスラリーを得た。
【0060】
上記含水酸化チタンと水酸化バリウムの混合物のスラリーをオートクレーブ容器に入れ、チタン酸バリウム前駆体を経ずに、200℃で2時間水熱処理した。この後、オートクレーブ内容物を室温まで放冷した。得られた水スラリーを濾過、水洗した後、130℃で乾燥して、チタン酸バリウム粉体を得た。
【0061】
比較例2
実施例1において、四塩化チタンの同時中和をpH3.0、温度30℃で行って、アモルファス含水酸化チタンの水スラリーを得た。実施例1において、このアモルファス含水酸化チタンの水スラリーを用いて、水酸化バリウムとの反応を温度100℃で5時間行い、得られたチタン酸バリウム前駆体水スラリーの水熱処理を200℃で2時間行った以外は、実施例1と同様にして、チタン酸バリウム粉体を得た。
【0062】
比較例3
実施例1において、四塩化チタンの同時中和をpH3.0、温度60℃で行って、アナターゼ型含水酸化チタンの水スラリーを得た。この含水酸化チタンの水スラリーと水酸化バリウムの反応を温度70℃で5時間行い、得られたチタン酸バリウム前駆体水スラリーの水熱処理を200℃で2時間行った以外は、実施例1と同様にして、チタン酸バリウム粉体を得た。また、このチタン酸バリウム粉体について、その熱収縮挙動を実施例6のチタン酸バリウム粉体と同様にして調べた。結果を
図1に示す。
【0063】
比較例4
実施例1において、四塩化チタンの同時中和をpH1.0で行い、含水酸化チタンと水酸化バリウムとの反応を温度100℃で5時間行い、チタン酸バリウム前駆体水スラリーの水熱処理を200℃で2時間行った以外は、実施例1と同様にして、チタン酸バリウム粉体を得た。
【0064】
比較例5
実施例1において、四塩化チタンの同時中和を温度80℃で行うと共に、チタン酸バリウム前駆体水スラリーの水熱処理を200℃で24時間行った以外は、実施例1と同様にして、チタン酸バリウム粉体を得た。
【0065】
比較例6
実施例1において、四塩化チタンの同時中和をpH1.5、温度20℃で行うと共に、チタン酸バリウム前駆体水スラリーの水熱処理を180℃で20時間行った以外は、実施例1と同様にして、チタン酸バリウム粉体を得た。
【0066】
比較例7
実施例1において、四塩化チタンの同時中和をpH4.0、温度40℃で行うと共に、チタン酸バリウム前駆体水スラリーの水熱処理を200℃で2時間行った以外は、実施例1と同様にして、チタン酸バリウム粉体を得た。
【0067】
比較例8
実施例1において、四塩化チタンの同時中和をpH4.0、温度40℃で行うと共に、チタン酸バリウム前駆体水スラリーの水熱処理を180℃で20時間行った以外は、実施例1と同様にして、チタン酸バリウム粉体を得た。
【0068】
上記実施例1〜10及び比較例2〜8における反応条件、即ち、四塩化チタンを水酸化ナトリウムで同時中和する際のpHと温度、含水酸化チタンと水酸化バリウムとの反応によるチタン酸バリウム前駆体を得る際の反応温度と時間、及びチタン酸バリウム前駆体水スラリーの水熱処理温度と時間を表1に示す。比較例1については、四塩化チタンを水酸化ナトリウムで同時中和する際のpHと温度、含水酸化チタンと水酸化バリウムの混合物の水熱処理温度と時間を表1に示す。また、上記実施例1〜10及び比較例1〜8において用いた含水酸化チタンの物性と得られたチタン酸バリウム粉体の物性を表2に示す。
【0069】
(含水酸化チタンの結晶構造)
四塩化チタンを水酸化ナトリウムで同時中和して得られた含水酸化チタン水スラリーを一部採取し、濾過、水洗、乾燥し、得られた粉体について、粉末X線回折装置((株)リガク製RINT−TTR III、線源CuKα)を用いて、その結晶構造を確認した。更に(101)面のピークから半値幅を算出して、含水酸化チタンの結晶性の指標とした。尚、表2において、比較例1、2、6、7及び8による含水酸化チタンはピークが非常にブロードであるので、アモルファスであるとした。
【0070】
(チタン酸バリウムの結晶子径)
チタン酸バリウム粉体について、粉末X線回折装置((株)リガク製 RINT−TTR III、線源CuKα)を用いて、粉末X線回折を行い、(111)面の積分幅を用いて、シェラー法にてチタン酸バリウムの結晶子径を算出した。
【0071】
(含水酸化チタン粉末とチタン酸バリウム粉末の比表面積と粒子径)
含水酸化チタン粉末とチタン酸バリウム粉末の比表面積は、全自動比表面積測定装置((株)マウンテック製HM model−1220)を用いて、205℃で30分脱気した後、BET1点法で測定した。
【0072】
また、粒子径については、チタン酸バリウムの密度を6.0g/cm
3として、上記チタン酸バリウムの比表面積から、換算式(粒子径=6/(密度×比表面積))にて算出した。
【0073】
【表1】
【0074】
【表2】
【0075】
表2に示すように、本発明によって得られたチタン酸バリウム粉体は、比表面積が10〜70m
2/gの範囲にあると共に、結晶子径/粒子径で表される単結晶性が0.90〜1.10、好ましくは、0.93〜1.07の範囲にあり、かくして、結晶性にすぐれた微粒子からなるものである。
【0076】
更に、本発明によるチタン酸バリウム粉体の熱収縮挙動を
図1に示すように、従来のチタン酸バリウム粉体と比較して、より高温で収縮を開始しており、熱収縮特性が改善されている。
/gの範囲にあると共に、X線回折によって測定される(101)面の回折ピークの半値幅が2.3°〜5.0°の範囲にあるアナターゼ型含水酸化チタンの水スラリーを加え、上記水酸化バリウムと上記含水酸化チタンを反応させて、チタン酸バリウム前駆体の水スラリーを得る工程、次いで、このようにして得られたチタン酸バリウム前駆体を24時間よりも短い時間にわたって水熱処理して、チタン酸バリウム粒子を得る工程を含むことを特徴とするチタン酸バリウム粉体の製造方法が提供される。