(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
業務システムの要素として登録されている業務の個々のステップの情報と該業務システムの要素として登録されている個々のアプリケーションの情報とそれらの関係性を記憶すると共に、前記業務システムの変更毎に、前記個々のアプリケーションに成された変更についての工数と規模の増減を変更履歴として記憶する記憶手段と、
前記変更履歴への追加、変更、削除を既存の情報への上書を行わずに、該既存の情報とは別に登録すると共に、少なくとも業務のステップの指定を含む利用者から指定された範囲内について、前記記憶手段に記録されている前記変更履歴から、該当する業務の個々のステップに対する業務変更回数を追加、変更、削除に分けて集計処理し、該個々のステップを受持つアプリケーションの業務変更に伴う延べ工数と総規模の増減を集計処理し、集計した情報を個々のステップを基準とする業務変更回数の変動量と総規模の変動量と延べ工数の一覧として出力する処理手段と、
を含み成ることを特徴とする業務システム変更支援システム。
前記処理手段は、出力する集計した情報を、業務システムの要素として登録されている業務の個々のステップを木構造状に関連付けた一覧に対応付けて、利用者に検討すべき情報として木構造状の位置と延べ工数の大きさとを視覚的に認知可能に区分して出力する
ことを特徴とする請求項6記載の業務システム変更支援システム。
【背景技術】
【0002】
業務システムとして情報処理技術を活用し、様々なサービスや情報提供などを行ってきた。これらの業務システムは、時代変化と共に入換や、改良、修繕、改変などが行われている。
【0003】
企業にとっては、サービス指向開発やクラウド環境の台頭など基盤技術の成長に合せた市場環境・ユーザニーズの変化に対応し、且つ迅速に新しいビジネスを展開できるような体制を作る必要がある。その為、短期間で要件に応じた業務システムの立ち上げや、業務システムの再構築を行なえることが望まれる。
【0004】
業務システムは、自社の情報システム部門が企画、開発、運用、および維持する責務を担うことが多い。
また、業務システムを使用する企業では、自社の情報システム部門を開発における監督部門としての役割を与え、その業務システムのアプリケーションのソフトウェア開発工程における下流工程(設計〜製造、テスト、運用)の作業を1ないし複数のSIer(System Integrator)へ外注して、情報システム部門の監督のもと業務システムを開発することが多い。
【0005】
上記業務システムの導入に関連する技術としては、特許文献1が挙げられる。特許文献1には、販売管理プログラム、営業支援プログラム、スケジュール管理プログラム、及び在庫管理プログラムの2以上のプログラムを複数ある部品プログラムを適宜組み合わせて構築し、部門間でそれぞれ用いるプログラムを連係させると共に、部品プログラムを共通化した統合業務システムが記載されている。この統合業務システムでは、システム立ち上げ時に、部品プログラムの共通化に伴い開発コストの削減や開発期間の短期間化などを図れる。必要に応じて適宜参照されたい。
【0006】
業務アプリケーションを構築、運用するためには様々な管理や工夫が必要である。
一つの側面として、システム全体の変化を把握した上で変化に応じた対処を行う管理が重要である。企業のビジネス規模にもよるもののアプリケーションの開発や更新におけるソフトウェア開発工程の下流工程の作業を複数のSIerへ外注し、システム全体の責任を負うユーザ企業が業務の実行状況やシステム運用状況、業務要件に合せたシステム企画のみを担当するケースが多くある。ユーザ企業は、このような把握と対処のために以下の観点から管理を行う必要も生ずる。
【0007】
1.ビジネスが滞りなく動いていること
(1)業務システム上を流れるビジネスデータから発見したビジネス上の問題に迅速に対処
(2)業務システムの稼動状況が原因で発生したビジネス上の問題に迅速に対処
2.業務システムの在り方が適切であること
(1)業務システムに発生したシステム停止などの障害に迅速に対処
(2)業務の更新・変化・再構築に対応できる、効率的なアーキテクチャの構築と維持
1.については、業務プロセスを記述する代表的な手法であるBPMN(Business Process Modeling Notation)を用いて設計した業務プロセス設計情報を元に、業務の進行状況をリアルタイムで監視するためのBAM(Business Activity Monitoring)製品が存在する。BAMでは、欠陥品率、リードタイム、クレーム件数、販売件数、品切れ率、業務処理時間などの情報が把握可能で、主にユーザ企業の経営者やビジネスマネージャーに向けた機能が提供されている。
【0008】
2.については、一般的にユーザ企業の情報システム管理部門、及び発注を受けたSIerが責任を負い管理する範疇である。
2−(1)については、システム監視や障害対応に特化した運用管理製品が解決する分野である。
2−(2)については、既存の業務システムがその後の業務の更新・変化・再構築に対応できるよう適切に構築されており、その後の変更などの際に追従する効率的なアーキテクチャを都度開発すればよい。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施の形態を
図1ないし
図14に基づいて実施例を用いて説明する。
【0021】
図1は、第1の実施例にかかる業務システム変更支援システム100の構成を示すブロック図である。
【0022】
業務システム変更支援システム100では、必要なデータを保管する記憶装置110、データを蓄積・集計・加工する処理装置120、利用者が入力操作を行う入力装置130、利用者が処理の結果を閲覧する表示装置140から構成される。
【0023】
記憶装置110には、次の業務設計情報格納部112、システム情報格納部113、変更履歴格納部114、および関係情報格納部115が含まれる。
・業務設計情報格納部112は、業務の流れを所定の作業単位に分解したステップとステップの処理をルール化した業務ルールとについて、業務設計に関する情報などを保管する。
・システム情報格納部113は、システム構成とソースコードのまとまりを示すアプリケーションとソースコード、それらの格納先とについて、ソフトウェア設計に関する情報などを保管する。
・変更履歴格納部114は、業務やシステムの変更履歴に関する情報を格納する。変更履歴は、業務システムの変更毎に、システムに成された変更についての工数とその規模の増減などを記録する。
・関係情報格納部115は、業務のステップおよびルールと、システムおよびアプリケーションの関係性を保管する。
【0024】
処理装置120には次の変更登録部121、変更履歴分析部122が含まれる。
・変更登録部121は、記憶装置110の各格納部へ情報を新規登録、追加、変更、削除を行う。
・変更履歴分析部122は、入力装置130から利用者が入力した条件の範囲で変更履歴を参照しつつ所望の情報に集計、加工して処理結果を表示装置140へ出力する。
【0025】
また、記憶装置110の業務設計情報格納部112、システム情報格納部113、変更履歴格納部114、関係情報格納部115には、それぞれ
図2〜
図5に例示するデータテーブルが格納される。なお、図中、矩形がテーブルおよびテーブルを構成するデータ項目を示し、矩形間の線は関連を示す。関連線の両端に記載された文字(0,1,0〜*,1〜*)とはレコードの多重度を表す。
【0026】
図2は、業務設計情報格納部112のテーブル及びデータ項目を示す。ここでの業務設計情報とは、業務を各作業の粒度に応じてレイヤを設定し、作業単位に分解したものを業務ステップと呼び、業務ステップに含まれる業務の特性を業務ルールと呼び、それらの集合で構成される情報である。一つの業務ステップに対し、業務ルールを0個以上定義する事が可能で、それぞれの情報を業務ステップテーブル、業務ルールテーブルに記録する。業務ステップには前ステップ、後ステップを特定できる情報も記録する。
なお、業務ステップと業務ルールの対応関係は、関係情報格納部115に定義する。
【0027】
図3は、システム情報格納部113のテーブル及びデータ項目を示す。ここでのシステム情報とは、ファイル単位のソースコードに関する情報と、それらの塊が成すアプリケーションの単位の情報を指し、それらの集合で構成される情報である。なお、塊は利用者が設定する任意の単位で構わない。
ソースコードテーブルでは、ソースコードのファイル格納先パスとバージョンやソースコードの位置づけを示す論理的なソースコード名などを記録する。
【0028】
図4は、変更履歴格納部114のテーブル及びデータ項目を示す。ここでの変更履歴とは、利用者があるタイミングで変更した業務情報とシステム情報の工数を含む変更内容、及び、アプリケーション単位のソースコード変更量を、逐次蓄積した情報を指す。
【0029】
図5は、関係情報格納部115のテーブル及びデータ項目を示す。
業務構成テーブルには、業務設計情報格納部112に記録されている業務ステップとその下位ステップの関係を保管する。
ルール適用関係テーブルには、業務設計情報格納部112に記録されている業務ルールがどの業務ステップに適用されているかの関係を保管する。
システム構成テーブルには、システム情報のアプリケーションとそれに包含されるアプリケーションの関係を保管する。
業務−システム対応関係テーブルには、業務ステップとアプリケーションの対応関係を保管する。
【0030】
ここで
図6を用いて業務設計情報とシステム情報の関係を可視化して説明する。
図6は、業務設計情報を木構造で表している。業務には、頂点をレイヤ0として割り当て、ブレークダウンされた各作業ステップがそれぞれレイヤ1〜3に存在する。
図6の例示では、図示した業務は、レイヤ1の業務ステップ[L1-S1]、[L1-S2]、[L1-S3]・・・から構成される。また、業務ステップ[L2-S1]を分解したものが、レイヤ2の業務ステップ[L2-S1]、[L2-S2]・・・[L2-S8]であり、業務ステップ[L2-S2]を分解したものが、レイヤ3の業務ステップ[L3-S1]、[L3-S2]、[L3-S3]・・・である。
また、図示するように所定の各業務ステップに対し、業務ルールA、B、Cが紐付けられており、それぞれ業務ルールAが業務ステップ[L2-S2][L2-S8]、業務ルールBが業務ステップ[L3-S2]、業務ルールCが業務ステップ[L3-S3][L3S11]に適用されている。これらの各情報と情報間の関係とが、業務設計格納部112の業務ステップテーブルおよび業務ルールテーブルと関係情報格納部115の業務構成テーブルおよびルール適用関係テーブルに記録される。
【0031】
これに対し、システム情報としては、アプリケーションとしてAP200、AP220、APc10、APc01が定義されている。図示するように、業務を実現するアプリケーションとして、AP200が業務ステップ[L1-S2]、[L1-S3]とその下位ステップに対応したソースコード群を用いる。同様に、AP220が業務ステップ[L2-S2]とその下位ステップ、AP280が業務ステップ[L2-S8]とその下位ステップのソースコード群を用いる。
また、業務の中で共通的に利用されるアプリケーションとしてAPc10が業務ステップ[L3-S2] [L3-S3]、APc01が業務ステップ[L3-S3] [L3-S11]に対応するよう関係付けられている。
【0032】
このようにアプリケーションとは、ある一連の処理の流れを構成する単位から、局所的に利用される処理の共通ロジックまで様々な粒度で定義可能である。また、APc10として定義されるアプリケーションは、APc01の定義とその他のAPc10に関係するソースコードと管理する。これと同様、AP220に紐付けられるソースコード群は、APc10とその他のAP220に関係するソースコードと管理する。
【0033】
これらの各情報と情報間の関係は、システム情報格納部113のアプリケーションテーブルおよびソースコードテーブルと、関係情報格納部115のシステム構成テーブルおよび業務−システム対応関係テーブルに記録される。
なお、アプリケーションの登録単位は任意である。つまり下位レベルの業務に紐付く小粒度のソースコード群をアプリケーションとして登録すると、業務の変更とシステムの変更履歴をより詳細に管理できる。
【0034】
次に、業務システム変更支援システム100の動作について、
図7から
図13を用いて説明する。
ここで操作を行う利用者は、ユーザ企業の情報システム部門とシステム開発の発注先であるSIerである。すなわち、業務システム変更支援システム100の業務設計情報をユーザ企業の情報システム部門が操作し、システム情報をSIerが操作する事とする。
【0035】
<変更登録部121の動作説明>
図7は、業務設計情報格納部112に対するデータの新規登録を行なう場合における、変更履歴格納部114への関連データ登録も含めた処理のフローを示している。
図7では、入力装置130から入力された業務設計情報とシステム情報とがそれぞれの格納部に登録されると共に、それらの関係性が関係情報格納部115に登録される。
【0036】
図8は、業務設計情報格納部112へのデータ追加、変更、削除を行う場合における、変更履歴格納部114への関連データの追加、変更、削除も含めた処理のフローを示している。なお、データの変更については既存の情報を上書きするのではなく、新規として扱い新しくレコードを登録する。削除については、テーブルに設けた削除フラグを設定し、既存の情報は保存したままとする。
【0037】
図9は、システム情報格納部113へのデータ追加、変更、削除を行う場合における、変更履歴格納部114への関連データの追加、変更、削除も含めた処理フローを示す。なお、データの変更については既存の情報を上書きするのではなく、新規として扱い新しくレコード登録する。削除についてはテーブルに設けた削除フラグを設定し、既存の情報は保存したままとする。
【0038】
<変更履歴分析部122の動作説明>
変更履歴分析部122の処理動作は、
図10に示す販売業務に関する注文管理業務を題材とした業務例を用いて説明する。
【0039】
図10は、業務名:注文管理(レイヤ0)について作業の粒度よりレイヤ1、2、3にブレークダウンする形式で業務の流れを示している。例示したような業務設計を元に業務設計情報が登録されている場合に、変更履歴分析部122が表示装置140に対して出力する画面例が
図11、12である。
【0040】
図11は、変更履歴分析部122が出力する変更履歴表示画面の例である。表示画面1410は、指定期間1411、指定業務1412、変更履歴サマリ1413を含み構成される。指定期間1411および指定業務1412の情報は、利用者が変更履歴分析部122へ問合せの際に入力した情報である。
【0041】
変更履歴サマリ1413には、指定業務1412に指定されたレイヤ0の業務を構成するレイヤ1の業務ステップ毎に、指定された期間に該当する変更履歴から所望の情報を集計、加工した結果サマリを表示する。また、変更履歴サマリ1413には、業務ステップ毎に、下位に定義されている業務ステップおよび業務ルールの追加、変更、削除の回数と、紐付くアプリケーションのソースコード行の追加・変更・削除規模とを業務やシステムの変更の度合いとして表示する。
【0042】
また
、業務ステップ
毎、業務ルール毎に、追加、変更、削除した回数の累積値を変動量として算出し、各アプリケーション総規模に対するソースコード行の増減値を総規模増減(規模の
延べ増減)として表示する。変更コストには、各アプリケーションを修正するために必要であった工数(変更コスト)の累積値(延べ工数)を表示する。
【0043】
ここで
図11に示す画面例から読み取れる情報や分析例を説明する。なお、提供する情報は以下のように利用できると想定している。
・業務の変更の頻度が高いと判断した箇所は、処理ロジックの局所化や、複数アプリケーション間の共通機能のライブラリ化、基盤側で変更を前提とした機能強化により、変更作業の工数や手間を削減できないか検討する
・業務の変更の頻度が低いと判断した箇所は、最適化の優先度を落とす
・業務の変更の度合いに比べて、システムの変更の度合いが大きい場合はシステム側でどのような変更を行っているか確認した上で、変更作業のボリュームを削減できないか検討する
利用者は、表示画面1410を参照し、業務設計情報から注文管理の業務では注文確定(L1-S2)に含まれる業務ステップ数や業務ルール数が他と比較して多いのに対し、対応システム情報から受注情報登録(L1-S4)や代金請求(L1-S5)に対応するアプリケーションのソースコード規模は300KLと同じであることを読取れる。
次に、業務変更内容欄から業務の変動量を確認すると、注文確定(L1-S2)に含まれる業務ルールに対する変動量が他と比較して大きく、他には大きな開きはないことを読取れる。
また、システム変更内容欄の変更コストから、注文確定(L1-S2)および注文は確定したか?(L1-S3)に対応するアプリケーションAP200と、代金請求(L1-S5)に対応するアプリケーションAP400の変更に、それぞれ累積1000人・Hずつ費やしていることがわかる。同様に、アプリケーション変更規模から、AP200は追加、変更規模が他と比較して大きく、AP400については変更の規模が突出していることがわかる。
【0044】
これらの事を踏まえ、システム変更に関する保守コストの低減を検討する。この場合、システム変更は、変更履歴サマリを参照することで注文管理の業務システム全体を俯瞰することが可能となりシステム最適化について以下のことが考察できる。
【0045】
(1)注文確定(L1-S2)では、業務ステップの変更は少量であるが、度重なる業務ルールの変更により、対応するアプリケーションのソースコードが大きく追加、変更、削除され、ソースコード全体の増加量も大きく、それに応じて変更コストが大である
(2)代金請求(L1-L5)では、業務ステップ、業務ルールの変更は少量であるが、アプリケーションの変更規模が大きく累積されており、それに応じて変更コストが大である
このことから、まずは(1)、(2)についてよりブレークダウンした業務設計情報とシステム情報の変更内容、および変更コストの明細を確認すると共に、その他の業務ステップについては、全体に占めるコストの割合が小さいため最適化の優先度を落とすよう判断できる。
なお、
図11の画面例では、業務ステップ名のリンクをクリックする事で下位レイヤの業務についての情報を表示する事を可能としている。下位レイヤについては、インデントするなどして同時的に表示できるようにしてもよい。
【0046】
また、変更履歴分析部122は、出力する一覧として集計した情報の中から、利用者に検討すべき情報として検討に役立つ箇所について、色分けや下線、強調表示、文字の拡大など行い抽出結果を目立つように出力するようにしてもよい。この際、変更履歴分析部122は、所定箇所の抽出処理として、例えば、個々の業務のステップの変更の頻度が相対的に高い箇所や、業務のステップの変更の変動量に対する延べ工数が相対的に高い箇所、業務のステップの変更の変動量に対する規模の述べ増減が相対的に高い箇所などを閾値や比較演算によって抽出すればよい。また、それぞれの抽出方法毎に、その情報を用いた検討方法を示す文字情報や音声説明などをアドバイスとして出力できるようにしてもよい。
【0047】
図12では、(1)についてブレークダウンした情報を表示している変更履歴表示画面の例を示す。表示項目については
図11と同様である。
利用者がブレークダウンして下位レイヤの業務について確認することによって、(1)の変更コストの大半を占めているのが代金算出(L2-S2)であることが判明したとする。そのため、その下位レイヤであるレイヤ3の各業務ステップについて確認する場面とする。
図12の画面例から
図11の分析の続きを行う。
変更コストに占める割合を俯瞰すると、中でもメーカー値引き判定(L3-S2)とメーカー値引き適用(L3-S3)とに対応するアプリケーションAP222の変更コストが代金算出(L2-S2)の8割を占めているため、その業務設計情報とシステム情報の変更内容に注目すると、業務ルールの追加や変更の回数が目立つ。
これらの事実から、利用者は、これから行なうシステム変更にかかるコストを低減するための一つの方針として、これから追加する業務ルールと類似する業務ルールが他に存在しないかをサーチすることが想起できるようになる。存在する場合は、その業務ルールが適用されている業務ステップに集約できる類似の処理ロジックが含まれていないか、もしくは、追加や変更されたソースコードに集約できる類似の処理ロジックが含まれないか、など保守対象となるソースコードの最適化を検討する事に至ることができる。
【0048】
図13(
図13−1、
図13−2)は、
図11および
図12の画面例を出力する際の変更履歴分析部122の行った処理フローである。
図示するように、変更履歴分析部122に対して、指定期間と指定業務を入力することによって、図示する処理例に沿って、利用者から指定された範囲内について、変更履歴サマリとする各種情報を記憶装置110の各格納部から抽出すると共にその情報から演算して集計して求めて出力する。
【0049】
このように業務システム変更支援システム100を動作させることにより、以下のような効果を得られる。
【0050】
第一の効果は、過去に逐次蓄積された変更履歴から業務設計情報とシステム情報のそれぞれの変動規模、と作業コストの累積値を定量的に参照する事が可能となる。このことによって、利用者となるユーザ企業の情報システム部門が、それぞれの変動量の状況により、システムのアーキテクチャやソースコードなどを詳細に把握せずとも、保守コスト低減のためのシステム最適化の場面で優先順位付けの判定や要件抽出に役立てることが可能な有益な情報を把握できる。
【0051】
第二の効果は、既存の業務設計書、ソフトウェア設計書、ソースコードなどの資産が存在する場合でも、後から業務とシステムの紐付けと変更履歴間の管理が可能であるため、利用者にとって導入負担が軽い。
【0052】
すなわち、情報処理システムに、業務設計情報とシステム情報とそれらの対応関係をあらかじめ登録でき、変更が発生した際に逐次変更対象や変更量を変更履歴として蓄積できることで、利用者(監督部門)による変更コストの削減に用いられる俯瞰した情報を、指定期間や指定業務などのように指定範囲を入力することで得られることとなる。
【0053】
次に、第2の実施例について
図14を用いて説明する。
【0054】
図14は、第2の実施例にかかる業務システム変更支援システム200の構成を示すブロック図である。
業務システム変更支援システム200では、必要なデータを保管する記憶装置110、データを蓄積・加工する処理装置220、利用者が入力操作を行う入力装置130、利用者が処理の結果を閲覧する表示装置140から構成される。業務システム変更支援システム200と業務システム変更支援システム100との違いは、処理装置120が処理装置220に置き換わっている。
【0055】
処理装置220には、変更登録部121と変更履歴分析部122に加えて、業務設計情報抽出部223とシステム情報抽出部224が設けられている。
【0056】
業務設計情報抽出部223は、BPMNなどで作成され可視化された業務設計を入力として、業務設計情報格納部112に入力される各情報(業務ステップ、業務ルール)を抽出処理し、記録装置110に登録する。
【0057】
システム情報抽出部224は、UMLなどで作成され可視化されたソフトウェア設計、ソースコード、ビルドスクリプトを入力として、システム情報格納部113に入力される各情報(アプリケーション、ソースコード)を抽出処理し、記録装置110に登録する。
【0058】
このように処理装置220に、業務設計情報抽出部223を加えることで、業務設計に関する情報の入力負担を削減できる。また、業務設計に関する情報の不足箇所の抽出にも使用できる。同様に、システム情報抽出部224を加えることで、システム情報の入力負担を削減できる。
【0059】
以上説明したように、本発明を適用した業務システム変更支援システムは、既存システムが存在する場合でも業務処理の特性と業務システムを構成する実体、及びそれらの変更履歴を紐付け、変更の度合いを過去から現在まで蓄積、把握できる仕組みをもって、情報システム部門の立場でもSIerの作業見積が妥当かどうかの判断や、業務システム最適化における優先順位付け、要件抽出に参考となる情報を提供する。
【0060】
なお、業務システム変更支援システムは、一般的な情報処理装置を用いて構築すればよい。すなわち、業務システム変更支援システムの各部は、ハードウェアとソフトウェアの組み合わせを用いて、RAMに業務システム変更支援プログラムが展開され、そのプログラムに基づいてCPU等のハードウェアを動作させることにより、各部を各種手段として実現する。また、前記プログラムは、記憶媒体に記録されて頒布されても良い。当該記録媒体に記録されたプログラムは、有線、無線、又は記録媒体そのものを介して、メモリに読込まれ、制御部等を動作させる。尚、記録媒体を例示すれば、オプティカルディスクや磁気ディスク、半導体メモリ装置、ハードディスクなどが挙げられる。
【0061】
上記実施の形態を別の表現で説明すれば、業務システム変更支援システムとして動作させる情報処理装置を、RAMに展開された業務システム変更支援プログラムに基づき上記した記憶装置や処理装置として動作させ、変更登録部、変更履歴分析部、業務設計情報抽出部、システム情報抽出部として機能させ、入力装置および表示装置と協働させて動かすことが可能となる。
【0062】
また、業務ルールの親子関係や構成をあらかじめ抽出し、関係情報格納部へテーブルとして登録しておき、変更履歴を分析する際の検索性を高める事も有効である。
【0063】
また、業務設計情報の業務ステップ、及び業務ルールに重要度や粒度を示す重み付け数値を予め定義し、業務設計情報の変動量の算出に加味する処理を変更履歴分析部に追加する事で、利用者のニーズに合せた意味づけを考慮した業務の変化を定量的に算出する事も有効である。
【0064】
また、表示装置に表示する変更履歴分析部の出力結果は、グラフ表示や業務の個々のステップを木構造状に関連付けた一覧に対応付けて、利用者に検討すべき情報として木構造状の位置と述べ工数の大きさなどを可視効果のある表示にすることも有効である。
【0065】
このように、既存の業務システムを繰り返し変更する際に、業務システムの有する業務処理の特性と既存の業務システムを俯瞰的に捉えられるような情報として変更履歴から得た情報を提供することによって、利用者が最適化における優先付けなどを容易に把握できる。
【0066】
なお、本発明の具体的な構成は前述の実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の変更があってもこの発明に含まれる。
【0067】
また、上記の実施形態の一部又は全部は、以下のようにも記載されうる。尚、以下の付記は本発明をなんら限定するものではない。
[付記1]
業務システムの要素として登録されている業務の個々のステップの情報と該業務システムの要素として登録されている個々のアプリケーションの情報とそれらの関係性を記憶すると共に、前記業務システムの変更毎に、前記アプリケーションに成された変更についての工数と規模の増減を変更履歴として記憶する記憶手段と、
前記変更履歴への追加、変更、削除を既存の情報への上書を行わずに、該既存の情報とは別に登録すると共に、利用者から指定された範囲内について、前記記憶手段に記録されている前記変更履歴から、該当する業務のステップに対する業務変更回数を追加、変更、削除に分けて集計処理し、該ステップを受持つアプリケーションの業務変更に伴う延べ工数と規模の述べ増減を集計処理し、集計した情報を一覧として出力する処理手段
を含み成ることを特徴とする業務システム変更支援システム。
【0068】
[付記2]
前記処理手段は、利用者から指定される範囲として、個々の業務のステップ及び/又は前記変更履歴を参照する期間を受け付け、指定されたステップ及び/又は期間に対する業務変更回数を追加、変更、削除に分けて集計処理し、該ステップを受持つアプリケーションの業務変更に伴う延べ工数と規模の述べ増減を集計処理し、集計した情報を一覧として出力する
ことを特徴とする上記付記記載の業務システム変更支援システム。
【0069】
[付記3]
前記処理手段は、利用者から指定された範囲内について、該当する業務のステップに対する業務変更回数を集計処理すると共に、ステップを受持つアプリケーションが同一である2以上のステップについて、該アプリケーション毎に の業務変更に伴う延べ工数と規模の述べ増減を集計処理し、集計した情報を一覧として出力する
ことを特徴とする上記付記記載の業務システム変更支援システム。
【0070】
[付記4]
前記変更履歴として登録される情報には、人為的に変更回数を示す情報が登録されないことを特徴とする上記付記記載の業務システム変更支援システム。
【0071】
[付記5]
前記処理手段は、前記個々のステップに対して、予め登録された重要度/粒度を示す重み付け値を、利用者によって指定された範囲での業務変更内容の変動量に反映させ、利用者の業務システム内の個々の業務への重要度/粒度の割振りによって、集計して出力する一覧に、優先付けるべき変更を想起させる意図を付与する
ことを特徴とする上記付記記載の業務システム変更支援システム。
【0072】
[付記6]
前記処理手段は、出力する一覧として集計した情報の中から、個々の業務のステップの変更の頻度が相対的に高い箇所、業務のステップの変更の変動量に対する延べ工数が相対的に高い箇所、および業務のステップの変更の変動量に対する規模の述べ増減が相対的に高い箇所を抽出処理し、利用者に検討すべき情報として他の情報と認知可能に区分して抽出結果を出力すると共に、予め抽出処理毎に対応付けて登録されている前記区分した箇所への検討方法についてのアドバイスを出力する
ことを特徴とする上記付記記載の業務システム変更支援システム。
【0073】
[付記7]
前記処理手段は、出力する集計した情報を、業務システムの要素として登録されている業務の個々のステップを木構造状に関連付けた一覧に対応付けて、利用者に検討すべき情報として木構造状の位置と述べ工数の大きさとを視覚的に認知可能に区分して出力する
ことを特徴とする上記付記記載の業務システム変更支援システム。
【0074】
[付記8]
業務システムを形成するアプリケーションに関する情報と該アプリケーションの構成要素であるソースコードに関する情報とを関連付けてシステム構成を示すシステム情報を記録格納する手段と、
業務の流れを所定の作業単位に分割したステップを関連付けて業務構成として含み、ステップの処理関係をルール化した業務ルールの適用関係として含む業務設計情報を記録格納する手段と、
前記業務設計情報によって示される業務構成及び業務ルールの適用関係の変更毎に、前記システム情報によって示されるアプリケーション及びソースコードに成された変更について工数と共に規模の増減を変更履歴に関する情報として関連付けて記録格納する手段と、
前記業務設計情報によって示される業務構成及び業務ルールの適用関係と、前記システム情報によって示されるシステム構成とを関連付ける情報を関連情報として記録格納する手段と、
前記業務設計情報および前記システム情報への追加、変更、削除を既存の情報への上書を行わずに、該既存の情報とは別に登録する変更登録手段1210と、
利用者から指示された業務のステップに含まれる範囲内について、前記変更登録手段を介して既存の業務システムを繰り返し変更した際に登録されている前記業務設計情報、前記システム情報、前記変更履歴に関する情報、および前記関連情報を取得して、下位ステップ毎にその業務変更回数を追加、変更、削除に分けて集計すると共に、前記下位ステップを受持つアプリケーション毎に業務変更に伴う延べ工数と規模の増減を集計し、集計した情報を一覧に加工して出力する変更履歴分析手段と、
を含み成ることを特徴とする業務システム変更支援システム。
【0075】
[付記9]
情報処理装置の制御部を、
業務システムの要素として登録されている業務の個々のステップの情報と該業務システムの要素として登録されている個々のアプリケーションの情報とそれらの関係性を記憶すると共に、前記業務システムの変更毎に、前記アプリケーションに成された変更についての工数と規模の増減を変更履歴として記憶する記憶手段と、
前記変更履歴への追加、変更、削除を既存の情報への上書を行わずに、該既存の情報とは別に登録すると共に、利用者から指定された範囲内について、前記記憶手段に記録されている前記変更履歴から、該当する業務のステップに対する業務変更回数を追加、変更、削除に分けて集計処理し、該ステップを受持つアプリケーションの業務変更に伴う延べ工数と規模の述べ増減を集計処理し、集計した情報を一覧として出力する処理手段
として動作させることを特徴とする業務システム変更支援プログラム。
【0076】
[付記10]
前記処理手段に、利用者から指定される範囲として、個々の業務のステップ及び/又は前記変更履歴を参照する期間を受け付け、指定されたステップ及び/又は期間に対する業務変更回数を追加、変更、削除に分けて集計処理し、該ステップを受持つアプリケーションの業務変更に伴う延べ工数と規模の述べ増減を集計処理し、集計した情報を一覧として出力させる
ことを特徴とする上記付記記載のプログラム。
【0077】
[付記11]
前記処理手段に、利用者から指定された範囲内について、該当する業務のステップに対する業務変更回数を集計処理すると共に、ステップを受持つアプリケーションが同一である2以上のステップについて、該アプリケーション毎に の業務変更に伴う延べ工数と規模の述べ増減を集計処理し、集計した情報を一覧として出力させる
ことを特徴とする上記付記記載のプログラム。
【0078】
[付記12]
前記変更履歴として登録される情報には、人為的に変更回数を示す情報が登録される項目を有さないことを特徴とする上記付記記載のプログラム。
【0079】
[付記13]
前記処理手段に、前記個々のステップに対して、予め登録された重要度/粒度を示す重み付け値を、利用者によって指定された範囲での業務変更内容の変動量に反映させ、利用者の業務システム内の個々の業務への重要度/粒度の割振りによって、集計して出力する一覧に、優先付けるべき変更を想起させる意図を付与させる
ことを特徴とする上記付記記載のプログラム。
【0080】
[付記14]
前記処理手段に、出力する一覧として集計した情報の中から、個々の業務のステップの変更の頻度が相対的に高い箇所、業務のステップの変更の変動量に対する延べ工数が相対的に高い箇所、および業務のステップの変更の変動量に対する規模の述べ増減が相対的に高い箇所を抽出処理し、利用者に検討すべき情報として他の情報と認知可能に区分して抽出結果を出力すると共に、予め抽出処理毎に対応付けて登録されている前記区分した箇所への検討方法についてのアドバイスを出力させる
ことを特徴とする上記付記記載のプログラム。
【0081】
[付記15]
前記処理手段に、出力する集計した情報を、業務システムの要素として登録されている業務の個々のステップを木構造状に関連付けた一覧に対応付けて、利用者に検討すべき情報として木構造状の位置と述べ工数の大きさとを視覚的に認知可能に区分して出力させる
ことを特徴とする上記付記記載のプログラム。
【0082】
[付記16]
情報処理装置の制御部を、
業務システムを形成するアプリケーションに関する情報と該アプリケーションの構成要素であるソースコードに関する情報とを関連付けてシステム構成を示すシステム情報を記録格納する手段と、
業務の流れを所定の作業単位に分割したステップを関連付けて業務構成として含み、ステップの処理関係をルール化した業務ルールの適用関係として含む業務設計情報を記録格納する手段と、
前記業務設計情報によって示される業務構成及び業務ルールの適用関係の変更毎に、前記システム情報によって示されるアプリケーション及びソースコードに成された変更について工数と共に規模の増減を変更履歴に関する情報として関連付けて記録格納する手段と、
前記業務設計情報によって示される業務構成及び業務ルールの適用関係と、前記システム情報によって示されるシステム構成とを関連付ける情報を関連情報として記録格納する手段と、
前記業務設計情報および前記システム情報への追加、変更、削除を既存の情報への上書を行わずに、該既存の情報とは別に登録する変更登録手段1210と、
利用者から指示された業務のステップに含まれる範囲内について、前記変更登録手段を介して既存の業務システムを繰り返し変更した際に登録されている前記業務設計情報、前記システム情報、前記変更履歴に関する情報、および前記関連情報を取得して、下位ステップ毎にその業務変更回数を追加、変更、削除に分けて集計すると共に、前記下位ステップを受持つアプリケーション毎に業務変更に伴う延べ工数と規模の増減を集計し、集計した情報を一覧に加工して出力する変更履歴分析手段と、
して動作させることを特徴とする業務システム変更支援プログラム。
【0083】
[付記17]
情報処理システムに、
業務システムの要素として登録されている業務の個々のステップの情報と該業務システムの要素として登録されている個々のアプリケーションの情報とそれらの関係性を記憶し、
前記業務システムの変更毎に、前記アプリケーションに成された変更についての工数と規模の増減を変更履歴として、追加、変更、削除を既存の情報への上書を行わずに、該既存の情報とは別に登録して記憶し、
前記業務システムの変更の検討の際に、利用者から指定された範囲内について、記録されている前記変更履歴から、該当する業務のステップに対する業務変更回数を追加、変更、削除に分けて集計処理し、
該ステップを受持つアプリケーションの業務変更に伴う延べ工数と規模の述べ増減を集計処理し、
集計した情報を一覧として出力する
ことを特徴とする業務システム変更支援方法。