特許第5765537号(P5765537)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 山栄化学株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5765537
(24)【登録日】2015年6月26日
(45)【発行日】2015年8月19日
(54)【発明の名称】カールヘア用毛髪仕上げ剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/44 20060101AFI20150730BHJP
   A61K 8/64 20060101ALI20150730BHJP
   A61K 8/42 20060101ALI20150730BHJP
   A61K 8/98 20060101ALI20150730BHJP
   A61K 8/365 20060101ALI20150730BHJP
   A61Q 5/00 20060101ALI20150730BHJP
【FI】
   A61K8/44
   A61K8/64
   A61K8/42
   A61K8/98
   A61K8/365
   A61Q5/00
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-182731(P2012-182731)
(22)【出願日】2012年8月3日
(65)【公開番号】特開2014-31356(P2014-31356A)
(43)【公開日】2014年2月20日
【審査請求日】2013年12月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】591028980
【氏名又は名称】山栄化学株式会社
(72)【発明者】
【氏名】田村 裕臣
(72)【発明者】
【氏名】太田 敏夫
【審査官】 小出 直也
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−169616(JP,A)
【文献】 特開2009−190985(JP,A)
【文献】 特開2007−302615(JP,A)
【文献】 特開2009−161519(JP,A)
【文献】 特開2011−088828(JP,A)
【文献】 特開2010−275285(JP,A)
【文献】 特開2004−035520(JP,A)
【文献】 特開2007−131581(JP,A)
【文献】 特表2001−525822(JP,A)
【文献】 特開2005−239663(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00−8/99
A61Q 1/00−90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルギニン及び/又はPPG−2アルギニン0.001〜10.0重量%、下記化合物(I)及び/又は化合物(II)0.001〜10.0重量%、並びにカチオン化ハチミツ0.001〜5.0重量%を含有することを特徴とする毛髪仕上げ剤。
化合物(I):コメタンパク質加水分解物と、下記化学構造式(化−2)にて表される脂肪酸アミドアミンとが、イオン結合によりイオンコンプレックスを形成したもの
化合物(II):アシル化加水分解エンドウタンパクと、下記化学構造式(化−2)にて表される脂肪酸アミドアミンとが、イオン結合によりイオンコンプレックスを形成したもの
[式(化−2)中、RはC11〜25の直鎖又は分岐鎖炭化水素基、RはC1〜3のアルキレン基、並びにR及びRは独立にC1〜3のアルキル基、をそれぞれ表す。]
【請求項2】
更に、二塩基脂肪族ヒドロキシカルボン酸0.001〜10.0重量%を含有することを特徴とする請求項1に記載の毛髪仕上げ剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、毛髪仕上げ剤、特にカールヘア用毛髪仕上げ剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、毛髪は、化学処理(ブリーチ処理、染毛処理、パーマ処理)等が頻繁に施されるようになり、損傷を受けている場合が多い。
ところで、毛髪仕上げ剤としては、高分子セット成分を配合したもの(特許文献1)が知られる。
【0003】
しかし、従来の毛髪仕上げ剤を用いて毛髪(特に、損傷毛が含まれる毛髪)をカールしようとした場合、カール形成後の毛髪は弾力が無く、綺麗なカールを形成できない、更には一旦、形成されたカールが長持ちしない、といった問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−126519号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記事情に鑑み、本願発明は、健康毛は勿論、損傷毛であっても、カール形成後の毛髪は弾力に優れ、綺麗なカールを形成でき、且つカールを保持できる、カールヘア用毛髪仕上げ剤、を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本願発明者が鋭意、検討した結果、本願発明を成すに到った。
即ち、本願第1発明は、アルギニン及び/又はPPG−2アルギニン0.001〜10.0重量%、下記化合物(I)及び/又は化合物(II)0.001〜10.0重量%、並びにカチオン化ハチミツ0.001〜5.0重量%を含有することを特徴とする毛髪仕上げ剤、を提供する。
化合物(I):コメタンパク質加水分解物と、下記化学構造式(化−2)にて表される脂肪酸アミドアミンとが、イオン結合によりイオンコンプレックスを形成したもの
化合物(II):アシル化加水分解エンドウタンパクと、下記化学構造式(化−2)にて表される脂肪酸アミドアミンとが、イオン結合によりイオンコンプレックスを形成したもの
[式(化−2)中、RはC11〜25の直鎖又は分岐鎖炭化水素基、RはC1〜3のアルキレン基、並びにR及びRは独立にC1〜3のアルキル基、をそれぞれ表す。]
【0007】
本願第2発明は、更に二塩基脂肪族ヒドロキシカルボン酸0.001〜10.0重量%を含有することを特徴とする本願第1発明の毛髪仕上げ剤、を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本願発明により、健康毛は勿論、損傷毛であっても、カール形成後の毛髪は弾力に優れ、綺麗なカールを形成でき、且つカールを保持できる、カールヘア用毛髪仕上げ剤、を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本願発明を、最良の実施形態に基づき、詳述する。
本願発明の毛髪仕上げ剤には、アルギニン及び/又はPPG−2アルギニンを含有する。PPG−2アルギニンとしては、下記化学構造式(化−1)にて表されるものが挙げられる。
【0010】
【化1】
本願発明の毛髪仕上げ剤には、下記化合物(I)及び/又は下記化合物(II)を含有する。
【0011】
化合物(I)は、コメタンパク質加水分解物(コメ由来ペプチド)と、下記化学構造式(化−2)にて表される脂肪酸アミドアミンとが、イオン結合によりイオンコンプレックスを形成したもの、である。コメ由来ペプチドは、例えば米(及び/又は米糠)に含まれるタンパク質を酸、アルカリ、酵素等によって部分加水分解して得られる。
【0012】
【化2】
[式(化−2)中、RはC11〜25の直鎖又は分岐鎖炭化水素基、RはC1〜3のアルキレン基、並びにR及びRは独立にC1〜3のアルキル基、をそれぞれ表す。]
【0012】
【化2】
[式(化−2)中、RはC11〜25の直鎖又は分岐鎖炭化水素基、RはC1〜3のアルキレン基、並びにR及びRは独立にC1〜3のアルキル基、をそれぞれ表す。]
【0013】
化合物(II)は、エンドウタンパク質加水分解物(エンドウ由来ペプチド)のアシル化誘導体(アシル化加水分解エンドウタンパク)と、上記化学構造式(化−2)にて表される脂肪酸アミドアミンとが、イオン結合によりイオンコンプレックスを形成したもの、である。エンドウ由来ペプチドは、例えばエンドウに含まれるタンパク質を酸、アルカリ、酵素等によって部分加水分解して得られる。アシル化加水分解エンドウタンパクとしては、エンドウ由来ペプチド主鎖の末端アミノ基の少なくとも一部と、コハク酸とがアミド結合したもの、が挙げられる。
【0014】
上記何れの化合物も、例えば特許第4947749号公報に記載の方法により、製造することができる。また、セテアラミドエチルジエトニウム加水分解コメタンパク」[商品名「Vegetamide(登録商標)18MEA−R」として成和化成社より市販されている。セテアラミドエチルジエトニウムサクシニル加水分解エンドウタンパク」[商品名「Vegetamide(登録商標)18MEA−NJ」として成和化成社より市販されている。
【0015】
本願発明の毛髪仕上げ剤には、カチオン化ハチミツを含有する。カチオン化ハチミツは、ハチミツにカチオン性官能基を導入した構造を有する物質であり、例えば“International Cosmetic Ingredient Dictionary and Handbook”に記載された“hydroxypropyl trimonium honey”等が挙げられる。ヒドロキシプロピルトリモニウムハニーとしては、下記化学構造式(化−3)にて表されるものが挙げられ、商品名「HONEYQUAT 50 PF」としてArch Personal Care Products L.P.社より市販されている。
【0016】
【化3】
[式(化−3)中、Rはハチミツ脂肪酸残基を表す。]
【0017】
本願発明の毛髪仕上げ剤には、カールヘアの弾力性向上等の観点から、更に二塩基脂肪族ヒドロキシカルボン酸(リンゴ酸等)を含有するのが好ましい。
【0018】
本願発明の毛髪仕上げ剤には、上記成分の他、更に添加材として、一塩基脂肪族カルボン酸類(乳酸等)、カチオン・アニオン・ノニオン界面活性剤(モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン等)、一価・多価アルコール類(エタノール、1,3−プロパンジオール等)、高分子類(酢酸ビニル・ビニルピロリドン共重合体、ビニルピロリドン・N、N−ジメチルアミノエチルメタクリル酸共重合体ジエチル硫酸液等)、アミノ酸類、シリコーン類(アミノエチルアミノプロピルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体等)、防腐剤、pH調整剤、タンパク類[(ジヒドロキシメチルシリルプロポキシ)ヒドロキシプロピル加水分解シルク等]、糖類、帯電防止剤(コハク酸ビスエトキシジグリコール等)を含有してよい。
【0019】
本願発明の毛髪仕上げ剤の配合組成において、アルギニン若しくはPPG−2アルギニン又はこれらの合量を0.001〜10.0(好ましくは0.05〜1.0)重量%、化合物(I)若しくは化合物(II)又はこれらの合量を0.001〜10.0(好ましくは0.05〜1.0)重量%、及びカチオン化ハチミツを0.001〜5.0(好ましくは0.01〜0.5)重量%、それぞれ含有する。これらの含有量が多過ぎると、毛髪にゴワつきが出ることがあり、また塗布した毛髪が重くなり、カールの弾力又は保持性が却って低下することがある。
【0020】
二塩基脂肪族ヒドロキシカルボン酸は、0.001〜10.0(特に0.01〜1.0)重量%、含有するのが好ましい。この含有量が多過ぎると、ゴワつきが出ることがある。
【実施例】
【0021】
以下、本願発明を、実施例に基づき、具体的に説明する。
<毛髪仕上げ剤の調製>
・実施例1〜7、及び比較例1〜6
表1に示す配合組成に従って、各配合成分を均一に撹拌混合し、毛髪仕上げ剤(各実施例1〜7、及び比較例1〜6)を調製した。
【0022】
<毛髪仕上げ剤の評価試験>
先ず、健康毛束(3g、長さ30cm)にブリーチI剤(過硫酸塩系パウダーブリーチ)3g及びブリーチII剤(6%過酸化水素水)9gを塗布した後、10分間、室温にて放置し、次いでお湯で濯ぎ、乾燥させた。その後、以上のブリーチ処理操作を再度、繰り返し、最後にシャンプー処理した。こうして、試験用損傷毛束(3g、長さ30cm)を作製した。
【0023】
毛髪仕上げ剤を、ポンプ容器に収容し、健康毛束又は損傷毛束に対し8回、ポンププッシュしてミスト状にて塗布した。
そして、この毛束をカールアイロン(150℃)に、1分間、巻きつけ、カールの形成作業を行なった。この際、「カールアイロンでの作業性」について評価した。
【0024】
次いで、カールアイロンから取り外した毛束について、「カールの弾力」、「毛髪の艶」、「毛髪のザラつきの無さ」、及び「毛髪のゴワつきの無さ」について官能評価した。
次いで、毛束の一端を固定し、1時間、吊り下げた後、毛束の「カールの保持性」について官能評価した。
【0025】
表1中、「カールの弾力」の評価基準において、「◎」は「非常に大きい」、「○」は「大きい」、「△」は「普通程度」、「×」は「無い」である。
「カールの保持性」の評価基準において、「◎」は「毛束の長さが吊り下げ直前のものと殆ど同じでカールの垂れ・延びが殆ど無く、且つ毛束の幅は斑が無く一様である」、「○」は「毛束の長さが吊り下げ直前のものより僅かに長くカールの垂れ・延びが僅かにあり、且つ毛束の幅は斑が無く一様である」、「△」は「毛束の長さが吊り下げ直前のものより長くなっておりカールの垂れ・延びがあり、且つ毛束の幅は斑がある」、「×」は「毛束の長さが吊り下げ直前のものよりかなり長くなっておりカールの垂れ・延びが大きく、且つ毛束の幅は斑が大きい」である。
【0026】
「毛髪の艶」の評価基準において、「◎」は「非常にある」、「○」は「ある」、「△」は「あまり無い」、「×」は「無い」である。
【0027】
「毛髪のザラつきの無さ」又は「毛髪のゴワつきの無さ」の評価基準において、ザラつき又はゴワつきが、「◎」は「全く認められない」、「○」は「殆ど認められない」、「△」は「認められる」、「×」は「かなり認められる」である。
【0028】
「カールアイロンでの作業性」の評価基準において、毛髪をカールアイロンに、「◎」は「極めて容易に巻きつけられる」、「○」は「容易に巻きつけられる」、「△」は「巻きつけるのがやや困難」、「×」は「巻きつけるのが非常に困難」である。
【0029】
【表1】
【0030】
1)(ジヒドロキシメチルシリルプロポキシ)ヒドロキシプロピル加水分解シルク、成和化成社製。