(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5765585
(24)【登録日】2015年6月26日
(45)【発行日】2015年8月19日
(54)【発明の名称】シート分割巻取装置
(51)【国際特許分類】
B65H 18/04 20060101AFI20150730BHJP
B65H 18/10 20060101ALI20150730BHJP
【FI】
B65H18/04
B65H18/10
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-274125(P2012-274125)
(22)【出願日】2012年12月14日
(65)【公開番号】特開2014-118253(P2014-118253A)
(43)【公開日】2014年6月30日
【審査請求日】2015年2月6日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000154705
【氏名又は名称】株式会社片岡機械製作所
(72)【発明者】
【氏名】片岡 雄
【審査官】
西本 浩司
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−029545(JP,A)
【文献】
実開平01−143745(JP,U)
【文献】
特開2010−189125(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 18/00 − 18/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
広幅の帯状シートをスリッターで複数条の細幅帯状シートに分割しながら、その分割された複数の細幅帯状シートを、その幅方向に並ぶ順に複数のフリクション巻軸へ振り分けて供給すると共に前記フリクション巻軸により個々の巻芯のまわりに一斉に巻取るシート分割巻取装置において、前記フリクション巻軸は、中心駆動軸と、該中心駆動軸に第1のころがり軸受を介して回転自在に装着した環状の多数の巻取カラーと、前記多数の巻取カラーに摩擦部材を個別に押付けることにより、前記中心駆動軸の回転力を前記巻取カラーに、前記中心駆動軸に対して個々にスリップ回転可能に伝達する回転力伝達手段と、前記多数の巻取カラーからなる巻取カラー群上に前記巻芯を装着するための、巻芯毎の環状の巻芯アダプターと、前記巻取カラー群が貫通している前記巻芯毎の巻芯アダプターからなる巻芯アダプター群を、前記巻取カラー群の長手方向における所定位置に拘束する巻芯アダプター群位置決め手段とからなり、前記巻芯アダプターは、前記巻取カラー群に外挿して巻取カラー上に固定する環状本体と、前記環状本体に外挿した前記巻芯を前記環状本体上に固定する巻芯固定手段と、前記環状本体の一方の端部にのみ該環状本体と同心に装着した第2のころがり軸受とを備え、前記巻芯アダプター群において隣り合う関係にある巻芯アダプターの環状本体同士は夫々前記第2のころがり軸受を挟んで接することと、前記スリッターにより広幅の帯状シートを複数条の最小幅の細幅帯状シートに分割して巻取るとき、前記細幅帯状シートは、前記環状本体の巻取カラー群上への取付け幅を前記フリクション巻軸の数で除算して得られる商に等しい幅を有しており、かつ前記環状本体は夫々1個の巻取カラーに対応させて配置してあることを特徴とするシート分割巻取装置。
【請求項2】
前記巻芯アダプターは、前記第2のころがり軸受を備える代わりに、前記環状本体の一方の端面にのみ該環状本体と同心に形成した環状溝と、その環状溝に収容した複数の球体とを備え、前記巻芯アダプター群において隣り合う関係にある巻芯アダプターの環状本体同士は夫々前記複数の球体を挟んで互い接するようにした請求項1に記載のシート分割巻取装置。
【請求項3】
前記巻芯アダプター群位置決め手段は、前記巻芯アダプター群にその長手方向の所定の押圧力を付与することができる請求項1に記載のシート分割巻取装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチックフィルム、紙、金属箔等の広幅の帯状シートをスリッターで複数条の細幅帯状シートに分割しながら、その分割された複数の細幅帯状シートを、その幅方向に並ぶ順に複数本のフリクション巻軸へ振り分けて供給すると共に、そのフリクション巻軸により個々の巻芯のまわりに一斉に巻取るシート分割巻取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のシート分割巻取装置が備えるフリクション巻軸としては、中心駆動軸と、該中心駆動軸に同心かつ回転自在に装着した環状の多数の巻取カラーと、前記中心駆動軸の回転力を前記各巻取カラーに、該巻取カラーが中心駆動軸に対してスリップ回転可能に伝達する回転力伝達手段とを備え、前記巻取カラー外挿した円筒状の巻芯の内周面に球体を押付けることにより、その巻芯を巻取カラーに固定することができるように構成したものがある(例えば、特開平2−132043号公報参照)。
【0003】
しかし、このフリクション巻軸では、巻芯の幅が、例えば1個の巻取カラーの幅と同程度に狭い場合、その巻芯が巻取カラーに傾いた状態、つまり巻芯の中心軸線に直角に交わる該巻芯の端面が巻取カラーの中心軸線に直角に交わらない状態で保持され易い。そして、このように傾いた状態で保持された巻芯は、巻取中に、その端部外周面がその半径方向に往復移動すると共にその端面がその幅方向に往復移動する状態で回転するので、つまり巻芯に振れ回り
が生ずるので、この巻芯上に帯状シートを巻取ると、その巻取ロールの端面が不揃いとなったり、巻崩れを生じたりする。
【0004】
また、従来のフリクション巻軸には、複数の幅の狭い巻芯とその巻芯相互間に配置した円筒状のスペーサとからなる巻芯群を管状の巻芯アダプターの本体によって貫通し、その巻芯群を管状の本体の長手方向に沿って締付けることにより、巻芯アダプターに装着し、その巻芯アダプターを、中心駆動軸に同心かつ回転可能に装着してある巻取カラー群の外周に装着し、中心駆動軸を回転駆動すると共に、中心駆動軸の回転力を巻取カラー群にスリップ回転可能に伝達し、巻取カラーから巻芯アダプターに回転力を伝達して巻取りを行うものがある(例えば特開2006−315836号公報参照)。
【0005】
上述の巻芯アダプターによれば、1個の巻取カラーの幅より狭い幅の巻芯を保持することができるが、巻芯群の締付力を大きくすると、巻芯が例えば紙管や合成樹脂管のように機械的強度が比較的小さいものでは、その巻芯が巻取途中で圧縮応力に抗しきれずに弾性限界を超えて縮んでしまい、各巻芯に適正な回転力を伝達できなくなってしまうことがある。また巻芯群の締付力が大き過ぎると巻芯群はアダプター本体に固定され、帯状シート巻取中には巻芯アダプター本体と各巻芯とは一体的に回転するため、帯状シートの厚みムラ等に起因して各巻芯上の巻取ロールの半径に差異が生じると、巻取ロール間で外周速度に差が生じる。その結果、各帯状シートの巻取張力の大きさにばらつきが生じて巻取ロールの巻崩れや巻絞りが発生して巻取不能になる。そこで、巻芯群の締付力を小さくすれば、巻芯群はアダプター本体に対して個々にスリップ回転し得るが、巻取中に巻芯群とアダプター本体とがスリップして摩擦損失が生ずると共に、スペーサと巻芯との間でもスリップが生じて摩擦損失が生ずる。ところが、上述のように巻芯群を長手方向に締付けて各巻芯に回転力を伝達する場合、巻芯アダプター本体の回転力が巻芯群の両端部から中央部へ巻芯とスペーサとの摩擦力によって伝達されるので、摩擦損失が生ずると、巻芯が巻芯群の端から遠い位置にあるものほど、その巻芯に伝達される回転力が低減する。そのため、各巻芯に所要の回転力を正確に付与することができず、同時に形成した巻取ロールであっても、その巻取ロール間で巻取品質が不均一になり易い。そして細幅帯状シートの幅が狭くなればなるほど摩擦損失の悪影響は顕著になる傾向にある。また巻芯が紙管等ように比較的機械的強度が小さい材料でできている場合、巻取中に巻芯の端面がスペーサの端面と擦れて磨耗することで粉塵が発生し、それが細幅帯状シートに付着して不良品になるという問題も発生し易い。
【0006】
更に、巻芯群を巻芯アダプターに装着するには、複数の巻芯だけでなく巻芯毎にスペーサを装着する必要があり、スペーサと巻芯とを手作業で交互に巻芯アダプターの本体の一端から外挿して巻芯群とした後、巻芯アダプターの本体の一端にロックナットを取付けて適正な締付力で巻芯群を締付けなければならないので、この装着作業は手間と時間がかかる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平2−132043号公報
【特許文献2】特開2006−315836号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上述のような問題点に鑑み、細幅帯状シートがフリクション巻軸における巻取カラーの中心駆動軸への取付け幅より狭い幅ものであっても、その細幅帯状シートをフリクション巻軸により品質よく巻芯のまわりに巻取ることができるシート分割巻取装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで、本発明は、広幅の帯状シートをスリッターで複数条の細幅帯状シートに分割しながら、その分割された複数の細幅帯状シートを、その幅方向に並ぶ順に複数のフリクション巻軸へ振り分けて供給すると共に前記フリクション巻軸により個々の巻芯のまわりに一斉に巻取るシート分割巻取装置において、前記フリクション巻軸は、中心駆動軸と、該中心駆動軸に第1のころがり軸受を介して回転自在に装着した環状の多数の巻取カラーと、前記多数の巻取カラーに摩擦部材を個別に押付けることにより、前記中心駆動軸の回転力を前記巻取カラーに、前記中心駆動軸に対して個々にスリップ回転可能に伝達する回転力伝達手段と、前記多数の巻取カラーからなる巻取カラー群上に前記巻芯を装着するための、巻芯毎の環状の巻芯アダプターと、前記巻取カラー群が貫通している前記巻芯毎の巻芯アダプターからなる巻芯アダプター群を、前記巻取カラー群の長手方向における所定位置に拘束する巻芯アダプター群位置決め手段とからなり、前記巻芯アダプターは、前記巻取カラー群に外挿して巻取カラー上に固定する環状本体と、前記環状本体に外挿した前記巻芯を前記環状本体上に固定する巻芯固定手段と、前記環状本
体の一方の端部にのみ該環状本体と同心に装着した第2のころがり軸受とを備え、前記巻芯アダプター群において隣り合う関係にある巻芯アダプターの環状本体同士は夫々前記第2のころがり軸受を挟んで接することと、
前記スリッターにより広幅の帯状シートを複数条の最小幅の細幅帯状シートに分割して巻取るとき、前記細幅帯状シートは、前記環状本体の巻取カラー群上への取付け幅を前記フリクション巻軸の数で除算して得られる商に等しい幅を有しており、かつ
前記環状本体は夫々1個の巻取カラーに対応させて配置してあることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、フリクション巻軸は、細幅帯状シートの幅が当該フリクション巻軸における巻取カラーの中心駆動軸への取付け幅より狭くても、その細幅帯状シートの巻芯を精度良く所定の間隔をとって保持すると共に振れ回りが生じないよう確実に保持することができ、しかも、その巻芯に付与する回転力の誤差を小さくすることができる。それゆえ、その細幅帯状シートを巻芯のまわりに品質よく巻取ることができる。そしてシート分割巻取装置において分割巻取り可能な細幅帯状シートの幅を一層狭幅化することができるようになる。また従来のように複数の細幅帯状シートをその幅方向に捌き装置等を介して離間させてから巻取る必要もなく、また巻芯が紙管等であっても巻芯がスペーサと擦れながら回転することがないので巻芯の磨耗粉による帯状シートの汚損の心配もない。更に、巻芯アダプターへの巻芯装着時における巻芯群の締付力の調節や巻芯相互間へのスペーサの装着は不要であり、巻取カラー群上への巻芯アダプター装置着時にも巻芯アダプター相互間へのスペーサの装着は不要であるので、巻芯アダプターへの巻芯装着作業や、巻取カラー群上への巻芯アダプター装着作業を比較的簡単に短時間で行うことができ、シート分割巻取装置の稼働率の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本発明の一実施例に係るシート分割巻取装置の概略説明図である。
【
図2】
図2は、
図1に示すフリクション巻軸の要部を示す縦断面図である。
【
図3】
図3は、
図2におけるフリクション巻軸のA−A矢視断面図である。
【
図4】
図4はフリクション巻軸の概略正面図である。
【
図5】
図5は巻芯アダプターの巻芯装着前の状態を示す斜視図である。
【
図6】
図6は巻芯アダプターの他の実施態様を説明するための要部断面図である。
【
図7】
図7は巻芯アダプターの更に他の実施態様を説明するための要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1に示すシート分割巻取装置は、広幅の帯状シートS0をスリッターKで複数条の細幅帯状シートSに分割しながら、その分割された複数の細幅帯状シートSを、その幅方向に並ぶ順に二つのフリクション巻軸1へ振り分けて供給し、フリクション巻軸1によって所定の相互間隔をおいて保持した個々の巻芯Cのまわりに一斉に巻取る。巻芯Cのまわりに巻取った細幅帯状シートSは巻取ロールRとなる。スリッターKは、複数の円筒状の下刃2を有する被駆動の下刃ローラ3と、回転支持軸4に装着した、広幅の帯状シートS0を挟んで下刃2に噛み合う複数の円板状の上刃5とからなる公知のものである。下刃2は細幅帯状シートSの最小幅と同じピッチで並んでおり、回転支持軸4に装着する上刃5の個数と、上刃5の回転支持軸4への固定位置を変えることで、帯状シートS0の分割幅を変更することができる。広幅の帯状シートS0は、図示しない原反ロールから巻戻されてスリッターKへ供給されるようになっている。スリッターKを通過した直後に帯状シート幅方向に並んでいる複数の細幅帯状シートSは案内ローラ6上で上下に振り分けられて上下の振り分け細幅帯状シート群となり、その上下の振り分け細幅帯状シート群は夫々案内ローラ7を経てフリクション巻軸1上の巻芯Cに至る。
【0013】
図2に示すように、フリクション巻軸1は、中心駆動軸8と、該中心駆動軸8に第1のころがり軸受9を介して回転自在に装着した環状の多数の巻取カラー10と、多数の巻取カラー10に摩擦部材11を個別に押付けることにより、中心駆動軸8の回転力を巻取カラー10に、中心駆動軸8に対して個々にスリップ回転可能に伝達する回転力伝達手段12と、多数の巻取カラー10からなる巻取カラー群上13に巻芯Cを装着するための、巻芯C毎の環状の巻芯アダプター14と、巻取カラー群13が貫通している巻芯C毎の巻芯アダプター14からなる巻芯アダプター群15を、巻取カラー群13の長手方向における所定位置に拘束する巻芯アダプター群位置決め手段16とからなる。
【0014】
巻芯アダプター14は、巻取カラー群13に外挿して巻取カラー10上に固定する環状本体8と、環状本体8に外挿した巻芯Cをその環状本体8上に固定する巻芯固定手段18と、環状本体17の一方の端部に該環状本体17と同心に装着した第2のころがり軸受19とを備え、巻芯アダプター群15において隣り合う関係にある巻芯アダプター14の環状本体17同士は夫々第2のころがり軸受19を挟んで接する。
【0015】
第1のころがり軸受9並びに第2のころがり軸受19はこの実施例では4点接触玉軸受である。第2のころがり軸受19は、その外輪19aを環状本体17の左側の端部に形成した穴に装着してある。巻芯アダプター14を巻取カラー群13の外周に装着したとき、第2のころがり軸受19の内輪19bの左側の端面は、左隣りの巻芯アダプター14の環状本体17の右側の端面に当接する。なお、第2のころがり軸受19は、所定のスラスト荷重を受けることができるものであれば、例えば深みぞ玉軸受等、他のころがり軸受であってもよい。
【0016】
巻芯Cは、環状本体17の巻取カラー群13上への取付け幅を、シート分割巻取装置が備えるフリクション巻軸1の数で除算して得られる商に等しい幅を有しており、環状本体17の内周面の幅は巻取カラー10の中心駆動軸8への取付け幅より狭くしてある。それゆえ、この環状本体17は1個の巻取カラー10で把持することができるが、2個の巻取カラー10で把持することができない。つまり1個の環状本体17を1個の巻取カラーに対応させて配置してある。それによって、中心駆動軸8から1個の巻取カラー10に伝達される所要の回転力を、1個の環状本体17に伝達し、更に環状本体17に固定した1個の巻芯Cに伝達することができる。そして巻芯Cの幅より環状本体14の幅を大きくすることができるので、巻芯Cを適正な姿勢で確実に保持することができる巻芯アダプター14を得ることが可能になる。
図4に示すように巻芯Cは細幅帯状シートSの幅と同じ幅である。
【0017】
この実施例の場合、
図2において、環状本体17の巻取カラー群13上への取付け幅は、例えば隣り合う環状本体17に装着してある2個の第2のころがり軸受19の内輪19bのうちの片方の内輪19bの左側端面から、もう片方の内輪19bの左側端面までの距離であり、5ミリメートルにしてある。また巻取カラー10の中心駆動軸8への取付け幅は、例えば隣り合う巻取カラー10について、それらを支持する2個の第1のころがり軸受9の内輪9bのうちの片方の内輪9bの右側端面から、もう片方の第1のころがり軸受9の内輪9bの右側端面までの距離であり、5ミリメートルにしてある。また、
図4に示す各細幅帯状シートSは夫々最小幅に分割されたものである。
図1に示すように、このシート分割巻取装置はフリクション巻軸1を二つ備えているので、各細幅帯状シートSの幅は、夫々環状本体17の取付け幅の半分であり、2.5ミリメートルである。また環状本体17の内周面の幅は、第2のころがり軸受19を装着するための穴の部分を除く内周面の幅であり、約2ミリメートルである。
【0018】
図5は巻芯Cを装着する前の巻芯アダプター14を示しており、この巻芯アダプター14において、環状本体17は一方の端部に、巻芯Cの一方の端面が当接する鍔20を備えている。巻芯固定手段18は、環状本体17の、巻芯Cを外挿する外周面17aを挟んで鍔20と反対側に外周面17aと同心に形成した小径部17bと、小径部17bの外周面にすきまばめすることができる内周面21a並びに、この内周面21aに同心に形成した円錐台状の傾斜外周面21bを前部に有する押圧リング21と、環状本体17の外周面17aと小径部17bの間の肩の部分に固着した永久磁石22と、この永久磁石22に逆の磁極が対向するように押圧リング21に固着した永久磁石23とからなる。この巻芯アダプター14に巻芯Cを装着するには、環状本体17から押圧リング21を取外した状態で、環状本体17の外周面17aに巻芯Cを外挿した後、環状本体17の小径部17bに押圧リング21の穴21aを嵌め合わせることにより、環状本体17に押圧リング21を装着し、押圧リング21を巻芯Cに押付ける。そうすると押圧リング21の円錐台部21bが巻芯Cの鍔20と反対側の端部内周面に係合して巻芯Cを鍔20へ向けて押すと共に円錐台部21bと同心になるように半径方向に押し、巻芯Cの端面が鍔20に当接することで、環状本体17の中心軸線と巻芯Cの端面が直角に交わるように姿勢が修正され、巻芯Cは鍔20と円錐台部21bで挟圧した状態で保持される。その後、押圧リング21は永久磁石22と永久磁石23との吸引力を受けるので、巻芯Cへの押圧を維持することができ、巻芯Cは環状本体17に固定して保持される。巻芯Cの環状本体17に対する円周方向の保持力は主に巻芯Cと鍔20との摩擦力により生じ、その摩擦力は押圧リング21に作用する永久磁石22と永久磁石23とによる吸引力に基づいて生じるため、その吸引力が必要な大きさになるように永久磁石22、23の個々の吸引力や個数や配置が考慮してある。巻芯アダプター14から巻芯Cを取外すには、手で押圧リング21を環状本体から磁石22、23の吸引力に抗して抜取った後、巻芯Cから環状本体17を抜取る。この実施例の巻芯アダプター14は、巻芯Cの着脱が容易であり、構造も簡素であるので、細幅帯状シートを巻取る場合には都合が良い。
【0019】
図3に示すように、巻取カラー10は環状体でできており、巻芯アダプター14の環状本体17の内周面を把持する把持機構24を備えている。把持機構24は、巻取カラー10の円周方向の少なくとも3箇所(この実施例では6箇所)に等間隔に形成した、中心駆動軸8の回転方向に次第に深くなる細溝25と、細溝25に夫々配置した球体26と、球体26を細溝25の深い部分と浅い部分とに転動可能かつ脱落不能に保持する、巻取カラー10の外周に回転可能に装着した保持環27とからなる。保持環27の球体26の収容部は、保持環27の外周面の開口の幅が球体26の直径より僅かに狭くなるように形成してある。なお巻取カラー10、球体26及び巻芯アダプター14の環状本体17等は、例えば炭素鋼のような比較的機械的強度の大きい材料でできており、十分な加工精度を有している。
【0020】
図4に示すように、巻取カラー群13は、それを挟むように中心駆動軸8上に配置して固定したカラー8cとカラー8dとによって、中心駆動軸1の長手方向における所定位置に拘束してある。中心駆動軸8の左端部は、軸受装置Bにより回転可能に支持してあり、中心駆動軸8の右端部の端面には、スピンドル28の先端に設けた円錐台状の軸頭29に嵌め合わせ可能に穴が形成してある。スピンドル28はモータMにより回転駆動することができ、中心駆動軸8の右端部の穴に軸頭29を嵌め合わせることにより、中心駆動軸8の右端部は、スピンドル28によって支持されると共に中心駆動軸8の右端部と軸頭29とに設けた爪が噛合ってスピンドル28の回転が中心駆動軸8に伝達されるようになっている。帯状シートSの巻取中は、中心駆動軸8の右端部をスピンドル28により支持しておき、巻取ロールRを取外したり巻芯Cを装着したりするときは、中心駆動軸8の右端部を軸頭29から後退させ、中心駆動軸8を片持ち支持の状態にすることができるようになっている。
【0021】
巻芯アダプター群位置決め手段16は、この実施例では巻取カラー群13上において巻芯アダプター群15を挟むように所定位置に配置した左右の位置決め環30、31からなる。左右の位置決め環30及び31は夫々巻取カラー群13に着脱自在であり、左側の位置決め環30は、中心駆動軸8の左側の端部付近の段付部8aの外周面に嵌めてあり、その左側の端部は中心駆動軸8に形成した大径部8bの肩に当接している。そのため、位置決め環30は、巻芯アダプター群15に右側の位置決め環31から軸線方向に作用する押圧力に抗して巻芯アダプター群15の左側への移動を阻止することができる。左側の位置決め環30と巻芯アダプター群15との間にはスペーサ32が着脱可能に嵌めてある。
【0022】
右側の位置決め環31は、巻取カラー群13の外周に装着してあり、その左側の端部には、
図2に示すように巻芯アダプター14と同様にころがり軸受33が装着してあり、
図4に示すように巻取中、スペーサ34を介して、環状の押圧部材35から押圧力を受け、巻芯アダプター群15を押圧した状態を維持することができる。押圧部材35は可動腕36の先端部に装着してあり、可動腕36は、流体圧シリンダ装置37により中心駆動軸8の長手方向に押し引き可能に設けてある。流体圧シリンダ装置37により可動腕36を所定の力で押すと、スペーサ34を介して位置決め環31が巻芯アダプター群15に押付けられる。それによって、位置決め環30と位置決め環31は巻芯アダプター群15を所定の位置に位置決めすると共に、所定の押圧力を巻芯アダプター群15に付与することができる。なお巻取条件等によってはスペーサ32やスペーサ34が不要の場合もあり得る。
【0023】
図2及び
図3に示すように回転力伝達手段12は、中心駆動軸8の中空部に、ゴム等の伸縮可能な材料からなる密封性のあるチューブ38を配置し、チューブ38内に圧縮空気を導入してそのチューブ38を膨張させ、その膨張力によって、摩擦部材11を巻取カラー10の内周面に押付け、摩擦部材11と巻取カラー10の内周面との間に生ずる摩擦力に応じた回転力を中心駆動軸8から巻取カラー10に伝達することができるように構成してある。この実施例の場合、巻取カラー2の装着間隔が狭いので、各巻取カラー10に摩擦部材11を個別に押付けるために、1個の巻取カラー10に押付ける摩擦部材11を1個とし、各摩擦部材11を夫々円柱状の保持部材11aによって保持し、その保持部材11aを、中心駆動軸8の長手方向に90度ずつ回転角度を隔てて配置した、中心駆動軸8の外周面から中空部に通じる孔に挿入している。
【0024】
図2に示すフリクション巻軸1から巻取ロールRを取外すには、中心駆動軸8を巻取ロールRに対して巻取時と反対方向に回転させるか、又は巻取ロールRを中心駆動軸8に対して巻取時と同じ方向に回転させることにより、巻芯アダプター14の環状本体17に対して巻取カラー10を、
図3の矢印A1が指す方向の反対方向に回転させて、球体26を細溝25の深い部分に移動させる。その後、中心駆動軸8を右端が自由端となる片持ち支持状態にして、中心駆動軸8の右端から巻取ロールRを巻芯アダプター14と共に抜取る。この実施例では、巻芯アダプター14を抜取る前に、スペーサ34、右側の位置決め環31を抜取る。また流体圧シリンダ装置37により押圧部材35を右方へ後退させておく。巻芯アダプター14を巻取カラー群13から抜取るとき、環状本体17の内周面に係合する球体26は細溝25に直交する方向にも回転し得るので巻芯アダプター14を抜取り易い。
【0025】
帯状シートSを巻取るには、予め各帯状シートSの巻芯Cを夫々巻芯アダプター14に装着しておき、その巻芯アダプター14を、夫々中心駆動軸8の右端から巻取カラー群13の外周に所要位置まで差し込み、その後、更に右側の位置決め環31、スペーサ32を差し込む。次に中心駆動軸8の右端をスピンドル28で支持した状態にする。その後、流体圧シリンダ装置37を作動させて可動腕36を左方へ進出させ、巻取終了までその状態を維持する。それによって、巻芯アダプター群15は、その長手方向の押圧力を受け、巻取カラー群13の長手方向における所定位置に拘束される。そして巻芯アダプター群15において隣り合う関係にある巻芯アダプター14の環状本体17同士は夫々第2のころがり軸受19を挟んで接するので、各巻芯アダプター14は正確に位置決めされると共に、環状本体17はその中心軸線が中心駆動軸8の中心軸線に対して傾かないように姿勢を保持され、巻芯アダプター14上の巻芯Cも適正な姿勢で中心駆動軸8に対して正確に位置決めされる。しかも
図2に示すように1個の環状本体17は1個の巻取カラー10上に配置され、当該環状本体17の内周面に当該巻取カラー10に備えた把持機構24の球体26が係合可能になる。その後、各巻芯Cに狭幅帯状シートの先端を止着して、
図4に示すモータMを起動すると、中心駆動軸8は、
図3において矢印A1が指す方向に回転し、各巻取カラー10には個々に摩擦部材11を介して中心駆動軸8の回転力が伝達される。一方、巻芯Cには帯状シートSの張力に応じた回転抵抗が生じる。そのため、巻取カラー10は、巻芯アダプター14の環状本体17に対して中心駆動軸8と同方向に回転しようとするので、球体26が細溝25の浅い方へ移動すると共に、保持環27が巻取カラー10に対して中心駆動軸8の回転方向と反対の方向に回転し、各球体26は夫々の細溝25の底面によって等量ずつ同時に押上げられて環状本体17の内周面を押圧する。それによって環状本体17は巻取カラー10と同心に把持され、巻芯Cは巻芯アダプター14並びに巻取カラー10を介して当該巻芯Cの中心軸線と中心駆動軸8の中心軸線とが一致するように保持されると共に、環状本体17及び巻取カラー10と一体になって振れ回りしないように回転し、その巻芯Cのまわりに細幅帯状シートSが巻取られる。
【0026】
細幅帯状シートSの巻取中に隣り合う巻取ロールRの巻取半径に差が生じることにより両者の回転数に差が生じ、それによって、巻芯Cを装着した巻芯アダプター14の環状本体17相互間でスリップが生じたとしても、隣り合う関係にある巻芯アダプター14の環状本体17同士は夫々ころがり軸受19を挟んで接するので、環状本体17相互間のスリップによる摩擦損失は比較的小さいものになる。また、環状本体17は1個の巻取カラー10によって把持され、中心駆動軸8に対して第1のころがり軸受9を介して巻取カラー10と一体になって回転するので、巻取カラー10と中心駆動軸8との間の摩擦損失は比較的小さいものになる。それゆえ、摩擦部材11と巻取カラー10との摩擦力によって中心駆動軸8から巻芯Cに伝達される回転力の、摩擦損失による低減は僅かなものになる。
【0027】
したがって、細幅帯状シートSの幅が、巻取カラー10の中心駆動軸8への取付け間隔に相当する幅の半分であっても、その細幅帯状シートSを巻取る巻芯Cは中心駆動軸8に対し、巻芯アダプター14並びに巻取カラー10を介して振れ回りしないように保持されると共に、巻芯Cに伝達される回転力の誤差が小さくなって各細幅帯状シートSに正確な巻取張力を付与することができ、品質の良い巻取ロールを得ることができるようになる。
【0028】
以上、一実施例により本発明を説明したが、本発明の実施態様は発明の要旨を変えることなく必要応じて多様に変わり得る。例えば、巻芯アダプターは、
図2に示す第2のころがり軸受19を備える代わりに、
図6に示すように、環状本体17の一方の端面に該環状本体17と同心に形成した環状溝39と、その環状溝39に収容した複数の球体40とを備え、巻芯アダプター群において隣り合う関係にある巻芯アダプター14の環状本体17同士は夫々球体40を挟んで互い接するようにしてもよい。また
図6に示す巻芯アダプター14の押圧リング21は、
図2に示すような磁石23が固着されていないが、例えば炭素鋼のような磁性体できているので、環状本体17に固着した永久磁石22によって吸引することができる。
図7に示す巻芯アダプター14は、巻芯Cを環状本体5に固定する巻芯固定手段18が、環状本体17の外周面に、その外周面を一回りするように形成した溝41と、該溝41に装着した、例えばゴムのような比較的摩擦係数が高く弾力性のある素材でできた、溝41の深さより僅かに大きい直径のリング(Oリング)42とからなり、巻芯Cを、その端面が鍔20に当たるまで環状本体5の外周面に外挿したとき、リング42が巻芯Cの内面により圧縮され、そのリング42により弾力的に巻芯Cの内周面が押圧されて環状本体17に固定することができるようになっている。
【0029】
また本発明では、巻芯アダプター群位置決め手段として、
図4に示す流体圧シリンダ装置により位置決め環31を押圧するものの代わりに、中心駆動軸に設けた公知の把持手段(例えば特開昭62−51537号公報に開示)により位置決め環を中心駆動軸上に固定するようにしたも等を採用することができる。またフリクション巻軸を3本以上備える場合もあり得る。その場合は、フリクション巻軸を2本備える場合に比べて、品質よく巻取可能な帯状シートの最小幅を更に狭く
することができる。
【符号の説明】
【0030】
S0 広幅の帯状シート
S 細幅帯状シート
K スリッター
C 巻芯
R 巻取ロール
1 フリクション巻軸
8 中心駆動軸
9 第1のころがり軸受
10 巻取カラー
11 摩擦部材
12 回転力伝達手段
13 巻取カラー群
14 巻芯アダプター
15 巻芯アダプター群
16 巻芯アダプター群位置決め手段
17 環状本体
18 巻芯固定手段
19 第2のころがり軸受
20 鍔
21 押圧リング
22 永久磁石
23 永久磁石
24 把持機構
25 細溝
26 球体
27 保持環
30 位置決め環
31 位置決め環
35 押圧部材
36 可動腕
37 流体圧シリンダ装置
39 環状溝
40 球体